(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786153
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】成形クッション要素
(51)【国際特許分類】
A42B 3/12 20060101AFI20150910BHJP
B62J 1/26 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
A42B3/12
B62J1/26
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-551554(P2012-551554)
(86)(22)【出願日】2011年2月4日
(65)【公表番号】特表2013-518998(P2013-518998A)
(43)【公表日】2013年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2011000522
(87)【国際公開番号】WO2011095346
(87)【国際公開日】20110811
【審査請求日】2013年2月20日
(31)【優先権主張番号】102010007145.5
(32)【優先日】2010年2月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510241878
【氏名又は名称】オーペーエーデー アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ボッチュ, ユリアン
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−241915(JP,A)
【文献】
特開平11−348706(JP,A)
【文献】
特表2005−510332(JP,A)
【文献】
特開2005−177370(JP,A)
【文献】
特開2008−284163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/00 − 7/00
A47C 1/00 − 37/00
B62J 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー(11,20)内に存した複数の弾性追従成形体からなり、前記各成形体が前記カバーの形状を保持するように前記カバーを満たす成形体充填物を形成する成形クッション要素(10,19)において、
前記カバーは布地構造(25)を有し、
前記布地構造(25)は、成形クッション要素における第1軸線方向での弾性追従性が第2軸線方向での弾性追従性よりも低くするように構成する抗変形装置を含み、
前記布地構造(25)は、互いに異なる弾性追従性を実現すべく第1軸線方向に延びる第1繊維(12)と、第2軸線方向に延びる第2繊維(13)とに特色をなし、前記第1繊維がその繊維方向にて、前記第2繊維よりもより小さい弾性追従性を示し、
前記成形体充填物の個々の前記成形体に前記成形体充填物の過充填による予テンションを付与することなく前記カバーを満たす一方、前記カバー(11)に加わる外力が無い場合には前記成形体充填物における個々の前記成形体の相対移動を制限して前記カバー(11,20)の形状を保持する充填が実現されるべく、前記カバー(11,20)内の充填量が選択されていることを特徴とする成形クッション要素。
【請求項2】
前記抗変形装置は、前記第1繊維(12)における軸線方向の変形を抑制する繊維コア又は繊維カバーによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成形クッション要素。
【請求項3】
前記布地構造(25)の少なくとも前記第1繊維(12)は熱可塑性材料の母材に特色をなすことを特徴とする請求項1又は2に記載の成形クッション要素。
【請求項4】
前記抗変形装置は、前記布地構造(25)における前記第1繊維(12)の熱可塑的な固着によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の成形クッション要素。
【請求項5】
前記カバー(11,20)は、少なくとも幾つかの部分にて通気可能に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の成形クッション要素。
【請求項6】
前記カバー(11)の前記構造(25)は、少なくとも幾つかの部分にて網状に構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の成形クッション要素。
【請求項7】
前記抗変形装置は、外側又は内側から前記布地構造(25)に働く支持装置(22)によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成形クッション要素。
【請求項8】
前記抗変形装置は、前記カバー(20)における面の一部の熱可塑的な固着によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成形クッション要素。
【請求項9】
前記カバー(20)は、少なくとも幾つかの部分が熱可塑性材料によって形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の成形クッション要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形クッション要素に関し、この成形クッション要素はカバー内に
複数の弾性追従成形体を含み、
これら成形体はカバーの形状を保持すべく、カバー内を満たす成形体充填物を形成している。
【背景技術】
【0002】
上述したタイプの成形クッション要素はバックパックの支持フレーム内に用いられ、キャリーストラップと身体接触ゾーンとの間に配置されることで、快適な着用を増進させるものと考えられる。このような状況において、そのクッション性にも拘らず、身体接触ゾーンへの限定された力の伝達をなお一層可能にするため、成形クッション要素の追従性を作用力の大きさに適合させることが既に実現されている。この目的のためには、また、身体接触ゾーンへの力の伝達の形態を十分に制御するため、成形クッション要素がストレスを受けたとき、成形クッション要素が限定された形状及び対応する変形抵抗を示すことが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この点に関し、公知の成形クッション要素は不満足な解答のみを提供する。何故なら、良好な力伝達特性は、得られるべき快適な着用に一定不変の不利な影響を及ぼす。
本発明の目的は、形状保持特性及び力伝達特性を著しく損なうことなく、クッションの快適性を向上する効果に関し、成形クッション要素を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的を達成するため、本発明の成形クッション要素は請求項1の特色を示す。
【0005】
発明の成形クッション要素は、カバー内に存する
複数の弾性追従成形体を
含み、
これら成形体がカバーの形状を保持すべくカバー内を満たす成形体充填物を形成し、そして、カバーが布地構造を有し、この布地構造が成形クッション要素における第1軸線方向での弾性追従性を第2軸線方向の弾性追従性よりもより低くする
抗変形装置を含
む一方、布地構造は、互いに異なる弾性追従性を実現すべく第1軸線方向に延びる第1繊維と、第2軸線方向に延びる第2繊維とに特色をなし、前記第1繊維がその繊維方向にて、前記第2繊維よりもより小さい弾性追従性を示し、そして、成形体充填物に成形体充填物の過充填によって予テンションを付与することなくカバーを完全に満たす一方、成形体充填物における個々の成形体の相対移動を制限するようなカバーの成形保持充填が実現されるべく、カバー内の充填量が選択されていることを特徴とする。
【0006】
「布地構造」の語句は、その構造を形成する繊維の実際上の材料特性を限定する点から解釈されるべきものではなく、代わりに単に例示的な構造について言及したものであり、ここでの構造は好適な軸線方向に特色をなし、これら軸線方向は繊維方向又は材料の分子配向によって規定され、これにより、異なる弾性追従性を示す。例えば、これは、構造の第1軸線方向に作用する張力が構造の異なる軸線方向に作用する張力又はテンションストレスと比較して、構造に異なる変形又は伸びを引き起こすことを意味する。
【0007】
発明の成形クッション要素は、多様な実施例にて実現可能である。特に、成形クッション要素は、例えば支持ストラップと身体接触ゾーンとの間に介在して配置される分野にて適用可能である。このような状況においては、身体接触ゾーンへの適合による弾性的な減衰や、同時に大きな形状保持効果を示すことに加えて、成形クッション要素は均一な負荷分布を可能にする。同様に、防護要素の形態で構成される分野にも、成形クッション要素の適用が考えられ、この場合、成形クッション要素は外部の衝撃保護シェルの有無を問わない。この目的のため、防護ヘルメット内に対応した成形クッション要素を配置する1つの適用が可能であり、この場合、特に成形クッション要素は付加的な外部シェル(ヘルメットシェル)を備えることができる。また、成形クッション要素を身体防護要素として使用することも考えられ、この場合、成形クッション要素は例えば背面プロテクタとして構成可能である。成形クッション要素の使用に関する他の例は、特に均一な負荷分布がストレスを受けた面の通気とともに実現されることが好ましいのであれば、サドルパッドとして対応した構成の成形クッション要素の利用である。この場合、馬の背に適合した成形クッション要素を有した乗馬用鞍の詰め物は、自転車のサドルの詰め物のように同様に可能となり、ここでは、例えば対応した構成の成形クッション要素は所謂「ゲルパッド」のように用いることができる。
【0008】
発明の成形クッション要素の好適な実施例は従属請求項の主題である。
【0009】
異なる弾性追従性を実現する布地構造が第1軸線方向に延びる第1繊維と第2軸線方向に延びる第2繊維とに特色をなし、ここで、その繊維方向の第1繊維の弾性追従性が第2繊維のものよりもより小さく、選択された繊維及び/又は各軸線方向での繊維の量が構造及びカバーの特性をそれぞれ規定するために役立つものであるならば特に好適する。
例えば、
抗変形装置は、第1繊維の軸線方向の変形を抑制する繊維コア又は繊維カバーによって形成可能である。
【0010】
布地構造の少なくとも第1繊維は熱可塑性材料の母材に特色をなす。
【0011】
抗変形装置は、特に布地構造における第1繊維の熱可塑的な固着によって形成可能である。
【0012】
快適な着用を更に増進させるため、少なくとも幾つかの部分が通気性を有するようにカバーを構成することは好都合である。
【0013】
この目的のため、カバーの構造は少なくとも幾つかの部分を網状に構成することも可能である。
【0014】
これに対し、特有な実施例において、異なる軸線方向での異なる弾性追従性の形成は、構造自体の対応した構成で弾性追従性の差が得られるのではなく、
抗変形装置が構造又はカバーの軸線方向の変形を抑制又は制限すべく構成されることで得られるという観点から実現可能である。
抗変形装置は、カバーの構造内に組込み可能であるか、又は、構造又はカバーと独立して構成可能であり、カバーの外側又は内側からカバーに単に接触している。
【0015】
抗変形装置が外側又は内側から布地構造に働く支持装置によって形成されるならば、特に利点となる。
【0016】
この点に関し、
抗変形装置はカバーにおける面の一部での熱可塑的な固着によって形成可能である。
【0017】
更にまた、カバーが少なくとも幾つかの部分にて熱可塑性材料で形成されているならば有利である。
故に、例えば、
抗変形装置は外側又は内側からカバーに働く支持装置によって形成可能であり、好ましくは、支持装置は、支持装置に対するカバーの相対移動が支持装置に隣接したカバーの領域にて阻止されるように機能する。
【0018】
特に、また、カバーにおける面の一部の固着が熱可塑的に好適にもたらされることによって
抗変形装置を構成することも可能である。特に、この場合、カバーは少なくとも部分的に熱可塑性材料によって形成され、その固着は、例えばカバーの変形、特に深絞りプロセスと同時に、特に、増加した温度ストレスに晒される領域にて、弾性追従性がその領域に生じる永久的な熱可塑変形によって制限される温度にカバーを晒すことによって熱可塑的に得ることができる。
【0019】
特に快適な着用性の増進に対して、カバーの構造が少なくとも幾つかの部分にて通気可能に構成され、その部分が例えば身体接触ゾーンに規定され且つこの身体接触ゾーンにて通気が可能となるなら、特に有利であることを証明する。
【0020】
以下の図面を参照して発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】成形クッション要素の一実施例を示す図である。
【
図2】成形クッション要素の他の実施例の作用を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は一実施例としての成形クッション要素10を示し、この成形クッション要素10は例えば、防護ヘルメットを部分的に裏張りするために使用される。一実施例の場合、成形クッション要素10はカバー11に特色をなし、このカバー11は網状の布地構造25によって形成されている。布地構造25は第1繊維12及び第2繊維13を有し、これら第1及び第2繊維12,13は2つの主軸方向に延びている。一実施例の場合、第1繊維12は成形クッション要素10の長手方向に対して横断する方向に延び、成形クッション要素10の長手方向に延びる第2繊維13と比べ、その繊維方向の弾性追従性がより小さいことに特色をなす。一実施例の場合、カバー11は、第1及び第2繊維12,13から形成され、カバー11の全外表面を規定する布地構造25に特色をなす。更に、
図1に本質的に見られるように、カバー11が成形クッション要素10の前側接触面に対して限定され、そして、後側結合面15が例えばヘルメットシェル(ここでは詳細に示されていない)との結合のために備えられるとともに異なる材料、特にフォイル材料からなることができ、後側結合面15にカバー11の布地構造25が例えば溶着可能である。この目的のため、溶着結合の生成を可能にするため、カバー11、即ち、第1及び第2繊維12,13が熱可塑性の変形可能材料、例えばポリウレタンのコーティングを特色とするものであるならば好適する。
【0023】
図1に示された一実施例において、シェルモールド16が準備され、このシェルモールド16は成形クッション要素10の基本形状を規定するブラケット形状のデザイン、ここでは半円形のリングの形態をなし、カバー11との結合のため、カバー11自体内に配置可能である。カバー11は弾性追従成形体で満たされ、この成形体は例えばポリスチレンのボールとして構成される。ここで、カバー11への充填量は、カバー11の形状を保持する充填が実現され、過充填によって成形体の充填物
の個々の成形体に予備的なテンションを付与することなくカバー11を完全に満たし、カバー11に加わる外力が無いときには成形
体充填物
の成形体同士の相対的な移動を制限するように選択される。
【0024】
図1に示されるように、カバー11の接触ゾーン14は地形に特色をなし、この地形は交互に並ぶ凹んだ背景ゾーン17及び突出した接触ゾーン18とからなる。前記地形は、背景ゾーン17及び接触ゾーン18が交互に形成される温度に晒されながら、カバー11が深絞りプロセスにて熱可塑的に変形されることで得ることができる。この後、カバー11は弾性追従成形体で満たされ、成形体の支持効果に起因して
図1に示す地形の形状保持がもたらされる。
【0025】
図2は、成形クッション要素19の基本的な効果を再度示している。この場合、成形クッション要素19はカバー20からなり、このカバー20はその形状を保持するように成形体で満たされ、成形体はその容量に関し、外部に配置された
抗変形装置としての支持装置22とともに準備され、この支持装置22は箱形状を有する。力の矢印によって強調された外部ストレス21や、
抗変形装置として働くフレーム装置、即ち、支持装置22に起因して、
図2に示されたカバー20の上面領域のみにて変形が生じる。
【0026】
図2に示された箱形状の支持装置22に代えて、カバー20の側面24の一部に支持装置22と同等の面地形を備えることもでき、この面地形は対応した変形抵抗に特色をなす。この目的のため、カバー20は側面24の領域に熱可塑的な固着コーテンィグを備えることもできる。