(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786165
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】取水口用スクリーン
(51)【国際特許分類】
E02B 9/04 20060101AFI20150910BHJP
E02B 5/08 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
E02B9/04 E
E02B5/08 101A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-76074(P2013-76074)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-201882(P2014-201882A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150291
【氏名又は名称】株式会社中山鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 美信
(72)【発明者】
【氏名】相森 冨男
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−16636(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3143189(JP,U)
【文献】
特開2008−031878(JP,A)
【文献】
特開2009−228608(JP,A)
【文献】
特開2010−150830(JP,A)
【文献】
実開平02−112720(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/04
E02B 5/08
F03B 1/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力発電機の取水口に設置される取水口用スクリーンにおいて、
川底に固定される板状の基体と、
前記基体に接合され、前記取水口の正面視で当該取水口を包囲して配設される枠体と、
前記枠体の正面視で前記基体上の一端を起点として他端が放射状に前記枠体の外側に配設される複数の支持体と、
を備えることを特徴とする取水口用スクリーン。
【請求項2】
前記請求項1に記載の取水口用スクリーンにおいて、
前記支持体は、前記基体に底辺が接合され、上流側から前記枠体にかけて上向きの斜辺を有する板状体であることを特徴とする取水口用スクリーン。
【請求項3】
前記請求項2に記載の取水口用スクリーンにおいて、
前記複数の支持体は、前記枠体の正面視で当該枠体の中央に前記基体及び枠体に略垂直に接合される一の板状体と、当該一の板状体を基準として左右対称に同一の枚数及び形状で形成される複数の他の板状体と、から構成されることを特徴とする取水口用スクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電機の取水口に設置される取水口用スクリーンに関し、特に、マイクロ水力発電機の取水口に設置される取水口用スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電機は、出力規模により、10万kW以上の大水力と、1〜10万kWの中水力と、1000kW〜1万kWの小水力と、100kW〜1000kWのミニ水力と、100kW以下のマイクロ水力と、1kW以下のピコ水力と、に分類される。
このうち、マイクロ水力発電機は、装置が比較的小さく、ある程度の水量さえあれば設置が可能であり、河川の現状を維持して河川に設置することができるため、大水力発電機と比較して生態系を脅かす心配が少ないという特徴がある。
【0003】
マイクロ水力発電機は、自然の中に設置されるため、当然ながら、枯葉、雑草、枝又は水草等のごみが流入し、場合によっては、ビニール、紐、ペットボトル又は発泡スチロール等の生活ごみが流入することになる。
このため、マイクロ水力発電機は、発電機内の水車の回転を妨げる長尺状のごみが発電機内に流入しないように、格子状のスクリーンが上流側に設置される。
しかし、落ち葉の時期や天候が悪いときには、落ち葉や枝等が通常よりも多く河川を流れることになり、スクリーンの目詰まりを起こし、発電機内に水が流れなくなり、発電機による所望の発電量が得られなくなる。
このため、マイクロ水力発電機に対して、水処理場のような可動式スクリーンやスクリーンに溜まったごみ(塵芥)を除去する除塵装置を設置することも考えられるが、コストアップとなり、マイクロ水力発電機の出力規模に見合わない。
【0004】
これに対し、従来の取水口カバーは、スクリーンが取り付けられた取水口に、流水が通過可能な隙間をあけて配置された竹材からなり、所定の高さより下方に位置する部位は、各部の表面と、各部と取水口の下端とを結ぶ直線との角度が45°以下となるように形成され、所定の高さより上方に位置する部位は、各部の表面と、各部と取水口の下端とを結ぶ直線との角度が45°以上となるように形成されたスクリーンカバーを、一端を取水口の上部に、他端を取水口の上流側の水底に固定して取り付ける(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−150830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の取水口カバーは、スクリーンカバー上部に停留した木片等を適宜なタイミングで作業員が回収する必要があり、維持メンテナンスのコストアップになるという課題がある。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解消するためになされたもので、簡易な形状で自浄効果のある取水口用スクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る取水口用スクリーンにおいては、川底に固定される板状の基体と、基体に接合され、取水口の正面視で当該取水口を包囲して配設される枠体と、枠体の正面視で基体上の一端を起点として他端が放射状に枠体の外側に配設される複数の支持体と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
開示の取水口用スクリーンは、板状の部材の組み合わせであるため、作製が容易であると共に、スクリーンでのごみの停留を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は第1の実施形態に係る取水口用スクリーンの概略構成を示す斜視図であり、(b)はマイクロ水力発電機の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】(a)は
図1(a)に示す取水口用スクリーンの正面図であり、(b)は
図1(a)に示す取水口用スクリーンの背面図である。
【
図3】(a)は
図1(a)に示す取水口用スクリーンの左側面図であり、(b)は
図1(a)に示す取水口用スクリーンの右側面図である。
【
図4】(a)は
図1(a)に示す取水口用スクリーンの平面図であり、(b)は
図1(a)に示す取水口用スクリーンの底面図である。
【
図5】(a)は取水口用スクリーンをマイクロ水力発電機に装着した状態を示す正面図であり、(b)は第1の実施形態に係る他の取水口用スクリーンの概略構成を示す斜視図である。
【
図6】(a)は
図1(a)に示す取水口用スクリーンの作用効果を説明するための斜視図であり、(b)は
図3(b)に示す取水口用スクリーンの作用効果を説明するための右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
取水口用スクリーン100は、
図1及び
図5(a)に示すように、マイクロ水力発電機200の取水口201近傍に設置され、マイクロ水力発電機200内の水車202の回転を妨げるごみの取水口201内への流入を防止するものである。
取水口用スクリーン100は、川底に固定される板状の基体1と、基体1に対して略垂直に溶接や螺子止めなどで接合され、取水口201の正面視(
図2(a)参照)で当該取水口201を包囲して配設される板状の枠体2と、枠体2の正面視(
図2(a)参照)で基体1上の一端3aを起点として他端3bが放射状に枠体2の外側に配設される複数の支持体3と、を備える。
【0012】
なお、本実施形態に係る基体1は、
図4(b)に示すように、等脚台形の内部を当該等脚台形より小さい等脚台形で切除した平面形状であり、鉄板で形成されているが、枠体2及び支持体3を接合できる面積を有するであれば、この平面形状及び材質に限られるものではない。
【0013】
また、本実施形態に係る枠体2は、
図2(b)及び
図1(b)に示すように、取水口201の外枠201aの上辺及び両側辺に一致する略コの字の平面形状であり、鉄板で形成されているが、所望の水量の水を取水口201に流入することができ、支持体3を接合できる面積を有するのであれば、この平面形状及び材質に限られるものではない。
また、枠体2は、図示しないボルト及びナットにより、取水口201の外枠201aに締着されている。
【0014】
また、本実施形態に係る支持体3は、
図3に示すように、略直角三角形(例えば、正三角形)の平面形状であり、底辺31aが基体1に溶接や螺子止めなどで接合され、上流側から枠体2にかけて上向きの斜辺31bを有する板状体(鉄板)であるが、枠体2の正面視(
図2(a)参照)で一端3aが基体1上に配設され他端3bが枠体2の外側に配設されるのであれば、この平面形状及び材質の板状体に限られるものではない。例えば、支持体3は、他端3bを屈曲部分とし、板状体の斜辺31b及び垂辺31cに対応した直線部分を有し、両端を基体1に接合する棒状体であってもよい。
【0015】
また、複数の支持体3は、枠体2の正面視(
図2(a)参照)で当該枠体2の中央に基体1及び枠体2に略垂直に溶接や螺子止めなどで接合される一の板状体(以下、中央板状体32と称す)と、当該中央板状体32を基準として左右対称に同一の枚数及び形状で形成される複数の他の板状体(以下、側方板状体33と称す)と、から構成される。
【0016】
なお、本実施形態に係る支持体3は、
図1及び
図2に示すように、側方板状体33が左右各6枚計12枚の板状体であり、隣り合う支持体3(中央板状体32、側方板状体33)の各底辺31a間のなす角が、基体1の平面視(
図5(a)参照)で同一である(例えば、各側方板状体33が中央板状体32に対して6°置きにそれぞれ開いている)、扇状に配設される。
【0017】
例えば、各支持体3(中央板状体32、側方板状体33)が河川の流れに沿って互いに平行に並設されている場合に、河川の流れに沿った長尺状のごみは、隣り合う支持体3間をすり抜けて、枠体3(取水口201)内に流入することになる。
これに対し、本実施形態に係る各支持体3(中央板状体32、側方板状体33)は、扇状に配設されているため、河川の流れに沿った長尺状のごみは、支持体3の主面に衝突し、長尺状のごみの先端を支点として水流により回転し、隣の支持体3の斜辺31bに乗り上げる。そして、長尺状のごみは、斜辺31bに沿って下流側に流され、枠体2(取水口201)の外側に押し出されることになる。
【0018】
また、各側方板状体33は、主面が基体1に対して傾斜しており、基体1に対する各側方板状体33の主面の傾斜角が、最外側の側方板状体33(以下、第1の板状体33aと称す)から中央板状体32にかけて、一定の割合で大きくなる(例えば、各側方板状体33が基体1に対して6°置きにそれぞれ立ち上がっている)。
【0019】
例えば、側方板状体33の主面が基体1に対して傾斜していない場合に、長尺状のごみは、斜辺31bに沿って枠体2の上方に全て向かい、一体となったごみが、マイクロ水力発電機200の上部の発電機203に絡み付く虞がある。
これに対し、本実施形態に係る側方板状体33は、主面が基体1に対して傾斜しているために、長尺状のごみは、斜辺31bに沿って枠体2の上方のみならず、枠体2の側方に向かうことになり、ごみが分散され、マイクロ水力発電機200の上部の発電機203での絡み付きを抑制することができる。
【0020】
なお、
図1(b)に示すマイクロ水力発電機200は、取水口201の上方に発電機203が突出しているため、枠体2の正面視(
図2(a)参照)において、取水口201の外枠201aの上方に位置する支持体3の他端3bを、発電機203の高さを越えるように位置させることにより、発電機203でのごみの絡み付きを防止することができる。
また、枠体2の正面視(
図2(a)参照)において、左右の第1の板状体33a間の間隔は、取水口201の幅よりも広く、マイクロ水力発電機200を設置する河川の川幅より狭くすることにより、支持体3の斜辺31bに沿って押し出されたごみを枠体2及び川岸間に通過させることができる。
【0021】
また、支持体3(中央板状体32、側方板状体33)は、
図1(a)、
図2(b)及び
図3に示すように、第1の板状体33aを除き、垂辺31cが枠体2に溶接や螺子止めなどで接合され、第1の板状体33a及び第1の板状体33aに隣り合う側方板状体33(以下、第2の板状体33bと称す)を除き、各支持体3の外縁を縮尺した略直角三角形(例えば、正三角形)の開口部3cを各支持体3に有する。
【0022】
なお、開口部3cは、水を下流側に流す水路となるが、第1の板状体33a及び第2の板状体33bに開口部3cを配設しないことにより、ごみが取水口用スクリーン100の両側から枠体2(取水口201)内に流入することを防止している。
また、開口部3cを配設することは、ごみが開口部3cの下流側の縁部に引っ掛かり、ごみが取水口用スクリーン100内に停留する虞がある。このため、支持体3(中央板状体32、側方板状体33)は、
図5(b)に示すように、開口部3cの下流側の縁部を切除することにより、ごみの停留を防止する構造であってもよい。また、支持体3(中央板状体32、側方板状体33)は、隣り合う支持体3間における水の流れの円滑さは失われるのであるが、開口部3cを形成しない構造であってもよい。
【0023】
つぎに、本実施形態に係る取水口用スクリーン100の作用効果について、
図6を用いて説明する。
河川を流れるごみは、第1の板状体33a又は第2の板状体33bの主面又は斜辺31bに接触すると、主面又は斜辺31bに沿って枠体2の側方の下流側に移動し、枠体2の外側にある他端3b側から押し出され、下流に流れることになり、枠体2(取水口201)内へのごみの流入を防止することができる。
【0024】
また、河川を流れるごみは、第1の板状体33a及び第2の板状体33b以外の側方板状体33又は中央板状体32に接触すると、斜辺31bに沿って枠体2の上方の下流側に移動し、河川の水面と斜辺31bとの交点近傍に停留する。そして、停留したごみは、雨天時に河川が増水して水位が上がることにより、枠体2の外側にある他端3bから押し出され、マイクロ水力発電機200を越流し、枠体2(取水口201)内に流入することなく、支持体3上(取水口用スクリーン100)での停留を防止することができる。
【0025】
以上のように、本実施形態に係る取水口用スクリーン100は、枠体2の正面視で基体1上の一端3aを起点として他端3bが放射状に枠体2の外側に配設される複数の支持体3を備えることにより、所望の水量の水を取水口201に取り込みつつ、上流側からマイクロ水力発電機200に到達するごみを効率よく下流側に越流させることができ、マイクロ水力発電機200内へのごみの流入を防止することができるという作用効果を奏する。
【0026】
特に、本実施形態に係る取水口用スクリーン100は、鉄板の組み合わせのみにより製造することができ、製造工程が簡易であり、製造コストを安価にすることができるという作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0027】
1 基体
2 枠体
3 支持体
3 枠体
3a 一端
3b 他端
3c 開口部
31a 底辺
31b 斜辺
31c 垂辺
32 中央板状体
33 側方板状体
33a 第1の板状体
33b 第2の板状体
100 取水口用スクリーン
200 マイクロ水力発電機
201 取水口
201a 外枠
202 水車
203 発電機