特許第5786184号(P5786184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5786184IFFTクロック調整装置、デジタルテレビジョン放送装置およびIFFTクロックの調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786184
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】IFFTクロック調整装置、デジタルテレビジョン放送装置およびIFFTクロックの調整方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 11/00 20060101AFI20150910BHJP
   H04H 20/44 20080101ALI20150910BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20150910BHJP
   H03L 1/02 20060101ALI20150910BHJP
   H03L 7/181 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   H04J11/00 Z
   H04H20/44
   H04B1/04 F
   H03L1/02
   H03L7/06 C
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-39376(P2013-39376)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-168164(P2014-168164A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】502340756
【氏名又は名称】ヒロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098350
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 睦彦
(72)【発明者】
【氏名】栗須 基弘
(72)【発明者】
【氏名】盛田 真司
【審査官】 藤江 大望
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−079998(JP,A)
【文献】 特開2011−114469(JP,A)
【文献】 特開平09−162939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 11/00
H03L 1/00−7/26
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送TSを受けてOFDM変調を行うOFDM変調器とその出力を放送RF信号に変換するアップコンバータとを有するデジタルテレビジョン放送装置に用いられるOFDM変調器用のIFFTクロックを調整するIFFTクロック調整装置であって、
設定されたDACデータをアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換器と、
前記デジタルアナログ変換器から出力されたアナログ信号に応じた周波数の発振出力を発生し、前記OFDM変調器へクロック信号として供給する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器から出力される発振出力に基づいてその発振周波数または発振周期に依存して変化するデジタル値を生成するデジタル値生成手段と、
前記放送RF信号に基づいて、そのMERを測定するMER測定器によるMER測定を行いながら、前記DACデータを更新し、測定値のほぼ最大値が得られたときの前記デジタル値を目標デジタル値として不揮発的に記録するデータ記録手段と、
制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記DACデータの設定・更新、前記MER測定器によるMER測定および前記データ記録手段の動作を制御するとともに、
前記データ記録手段により前記デジタル値が記録された後、前記デジタル値生成手段から得られるデジタル値と前記目標デジタル値とを逐次比較し、
両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで前記DACデータを更新する
IFFTクロック調整装置。
【請求項2】
前記データ記録手段は、前記MER測定器により測定値のほぼ最大値が得られたときの前記DACデータを基準DACデータとして不揮発的に記録し、
前記制御手段は、両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで、前記誤差に応じて前記基準DACデータを増減する
請求項1に記載のIFFTクロック調整装置。
【請求項3】
前記デジタル値生成手段は、前記電圧制御発振器から出力される発振出力を単位時間カウントしたカウント値を前記デジタル値として出力するカウンタを有する請求項1または2に記載のIFFTクロック調整装置。
【請求項4】
前記デジタル値生成手段は、前記電圧制御発振器から出力される発振出力の所定個数のパルスをカウントする期間内に、基準クロックをカウントしたカウント値を前記デジタル値として出力するカウンタを有する請求項1または2に記載のIFFTクロック調整装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記MERの最大値を検出するために、まず、広い周波数範囲で粗い周波数インターバルでMERの計測を行い、ついで、粗い周波数インターバルで見つかった最大値を含む狭い周波数範囲でより細かい周波数インターバルでMERの計測を行う請求項1〜4のいずれかに記載のIFFTクロック調整装置。
【請求項6】
放送TSを受けてOFDM変調を行うOFDM変調器とその出力を放送RF信号に変換するアップコンバータとを有する放送装置と、
前記OFDM変調器に用いられるOFDM変調器用のIFFTクロックを調整するIFFTクロック調整装置とを備え、
前記IFFTクロック調整装置は、
設定されたDACデータをアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換器と、
前記デジタルアナログ変換器から出力されたアナログ信号に応じた周波数の発振出力を発生し、前記OFDM変調器へクロック信号として供給する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器から出力される発振出力に基づいてその発振周波数または発振周期に依存して変化するデジタル値を生成するデジタル値生成手段と、
前記放送RF信号に基づいて、そのMERを測定するMER測定器によるMER測定を行いながら前記DACデータを更新し、測定値のほぼ最大値が得られたときの前記デジタル値を目標デジタル値として不揮発的に記録するデータ記録手段と、
制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記DACデータの設定・更新、前記MER測定器によるMER測定および前記データ記録手段の動作を制御するとともに、
前記データ記録手段により前記デジタル値が記録された後、前記デジタル値生成手段から得られるデジタル値と前記目標デジタル値とを逐次比較し、
両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで前記DACデータを更新する
デジタルテレビジョン放送装置。
【請求項7】
前記データ記録手段は、前記MER測定器により測定値のほぼ最大値が得られたときの前記DACデータを基準DACデータとして不揮発的に記録し、
前記制御手段は、両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで、前記誤差に応じて前記基準DACデータを増減する
請求項6に記載のデジタルテレビジョン放送装置。
【請求項8】
放送TSを受けてOFDM変調を行うOFDM変調器とその出力を放送RF信号に変換するアップコンバータとを有するデジタルテレビジョン放送装置に用いられるOFDM変調器用のIFFTクロックを調整するIFFTクロック調整方法であって、
設定されたDACデータをデジタルアナログ変換器に入力してアナログ信号に変換するステップと、
前記アナログ信号を電圧制御発振器に印加することにより、当該アナログ信号に応じた周波数の発振出力を前記OFDM変調器へクロック信号として供給するステップと、
MER測定器を用いて、前記アップコンバータから出力される放送RF信号に基づいて、そのMERを測定するステップと、
前記電圧制御発振器から出力される発振出力に基づいてその発振周波数または発振周期に依存して変化するデジタル値を生成するデジタル値生成手段を用いて、MERの測定を行いながら前記DACデータを更新し、測定値のほぼ最大値が得られたときの前記デジタル値を目標デジタル値として不揮発的に記録するステップと、
前記デジタル値が不揮発的に記録された後、前記デジタル値生成手段から得られるデジタル値と前記目標デジタル値とを逐次比較するステップと、
両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで前記DACデータを更新するステップと
を備えたIFFTクロック調整方法。
【請求項9】
前記MER測定器により測定値のほぼ最大値が得られたときの前記DACデータを基準DACデータとして不揮発的に記録するステップをさらに含み、
前記DACデータを更新するステップでは、両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで、前記誤差に応じて前記基準DACデータを増減する
請求項8に記載のIFFTクロック調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IFFTクロック調整装置、例えば、自主放送コンテンツを複数の配信先に配信する自主放送装置等のデジタルテレビジョン放送装置に用いられるOFDM変調器用のIFFTクロック調整装置およびIFFTクロックの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDM変調器に用いられるIFFTクロック周波数の精度はOFDM変調器の基本的性能である変調誤差(MER)特性を決定する。すなわち、IFFTクロック周波数の精度が高ければ高いほど、MER特性が良好となる。MERは、OFDM変調器によるOFDM変調の変調誤差比(Modulation Error Ratio)であり、デジタル変調において放送局から送信された振幅・位相と実際の振幅・位相との差を数値で表したものである。MERの値(dB値)は大きいほど信号品質が高いと言える。
【0003】
そのため、従来、放送局内でOFDM変調器を使用するときには非常に精度の高い10MHzのクロック源(周波数誤差±0.25ppm程度の発振器)からフェーズロックループ(PLL)を用いてIFFTクロックを生成することにより、MER特性を高めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、簡易自主放送装置などでは、そのような精度の高い10MHzクロック源を実装することはコスト高となり、好ましくない。そこで、IFFTクロックを生成する電圧制御発振器(VCO)の一種であるVCXO(Voltage Controlled Xtal Oscillator)発振器に対してデジタルアナログ変換器(DAC)を用いて、VCXO発振器に直接電圧をかけ、この電圧を微調整することによりIFFTクロックを微調整し、これによりMER特性を改善している。VCXO発振器は、LC−VCOのコイル(L)を水晶発振子(XTAL)に置き換えたもので、周波数安定度が高くなる。
【0005】
この方法によれば、比較的簡単な構成でIFFTクロックの精度を高めることが容易となる。しかし、VCXO発振器の温度特性が問題となる。放送RF信号のMER特性は、VCXOから発生するIFFTクロックの周波数に依存して大きく左右される。既存のVCXO発振器の温度特性は良好ではなく、調整したDAC電圧が一定であっても、温度変動によりVCXO発振器の特性が変動してしまう。その結果、MER特性が悪化する結果となっていた。
【0006】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、IFFTクロックの基となる電圧制御発振器の発振出力の温度変動等の影響を受けることなく、放送RF信号のMERを良好に維持することができるIFFTクロック調整装置、デジタルテレビジョン放送装置およびIFFTクロックの調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるIFFTクロック調整装置は、放送TSを受けてOFDM変調を行うOFDM変調器とその出力を放送RF信号に変換するアップコンバータとを有するデジタルテレビジョン放送装置に用いられるOFDM変調器用のIFFTクロックを調整するIFFTクロック調整装置である。このIFFTクロック調整装置は、設定されたDACデータをアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換器と、前記デジタルアナログ変換器から出力されたアナログ信号に応じた周波数の発振出力を発生し、前記OFDM変調器へクロック信号として供給する電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器から出力される発振出力に基づいてその発振周波数または発振周期に依存して変化するデジタル値を生成するデジタル値生成手段と、前記放送RF信号に基づいて、そのMERを測定するMER測定器によるMER測定を行いながら、前記DACデータを更新し、測定値のほぼ最大値が得られたときの前記デジタル値を目標デジタル値として不揮発的に記録するデータ記録手段と、制御手段とを備える。前記制御手段は、前記DACデータの設定・更新、前記MER測定器によるMER測定および前記データ記録手段の動作を制御するとともに、前記データ記録手段により前記デジタル値が記録された後、前記デジタル値生成手段から得られるデジタル値と前記目標デジタル値とを逐次比較し、両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで、前記誤差に応じて前記DACデータを更新する。
【0008】
この構成において、DACデータを更新することにより電圧制御発振器の発振周波数を調整して、MERを測定することによって、MERがほぼ最大値を示す発振周波数または発振周期が特定される。このときの発振周波数または発振周期は前記デジタル値生成手段が生成するデジタル値として得られる。このデジタル値生成手段には、比較的温度特性の良い外部の基準クロックを利用することにより、温度変動に対しても比較的高精度のデジタル値生成を行うことができる。そこで、この記録したデジタル値を、以降の目標デジタル値として利用する。温度変化や経年変化等の要因により電圧制御発振器の発振出力の周波数が変動したときにはデジタル値生成手段のデジタル値が目標デジタル値からずれる。この場合、両デジタル値の誤差は電圧制御発振器の発振周波数の変動量に比例すると考えられる。そこで、両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで、この誤差に応じてDACデータを更新することにより、電圧制御発振器の発振出力の所期の周波数が維持される。
【0009】
このようにして、IFFTクロックの基となる電圧制御発振器出力の温度変動等による周波数変動を自動的に補償することができる。その結果、IFFTクロック周波数の変動を最小限に抑え、MERを良好に維持することができる。
【0010】
また、前記データ記録手段は、前記MER測定器により測定値のほぼ最大値が得られたときの前記DACデータを基準DACデータとして不揮発的に記録し、前記制御手段は、両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで、前記誤差に応じて前記基準DACデータを増減するようにしてもよい。この構成により、基準DACデータを前記誤差に応じて増減させれば、比較的迅速かつ確実に、誤差が0に近づく方向に電圧制御発振器の発振出力の周波数が調整される。
【0011】
前記デジタル値生成手段としては、前記電圧制御発振器から出力される発振出力を単位時間カウントしたカウント値を前記デジタル値として出力するカウンタを採用することができる。あるいは、前記電圧制御発振器から出力される発振出力の所定個数のパルスをカウントする期間内に、基準クロックをカウントしたカウント値を前記デジタル値として出力するカウンタを採用することができる。
【0012】
また、前記制御手段は、前記MERの最大値を検出するために、まず、広い周波数範囲で粗い周波数インターバルでMERの計測を行い、ついで、粗い周波数インターバルで見つかった最大値を含む狭い周波数範囲でより細かい周波数インターバルでMERの計測を行うようにしてもよい。この構成により、比較的迅速に最大値を求めることができる。
【0013】
本発明によるデジタルテレビジョン放送装置は、放送TSを受けてOFDM変調を行うOFDM変調器とその出力を放送RF信号に変換するアップコンバータとを有する放送装置と、前記OFDM変調器に用いられるOFDM変調器用のIFFTクロックを調整するIFFTクロック調整装置とを備える。前記IFFTクロック調整装置は、設定されたDACデータをアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換器と、前記デジタルアナログ変換器から出力されたアナログ信号に応じた周波数の発振出力を発生し、前記OFDM変調器へクロック信号として供給する電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器から出力される発振出力に基づいてその発振周波数または発振周期に依存して変化するデジタル値を生成するデジタル値生成手段と、前記放送RF信号に基づいて、そのMERを測定するMER測定器によるMER測定を行いながら前記DACデータを更新し、測定値のほぼ最大値が得られたときの前記デジタル値を目標デジタル値として不揮発的に記録するデータ記録手段と、制御手段とを備える。前記制御手段は、前記DACデータの設定・更新、前記MER測定器によるMER測定および前記データ記録手段の動作を制御するとともに、前記データ記録手段により前記デジタル値が記録された後、前記デジタル値生成手段から得られるデジタル値と前記目標デジタル値とを逐次比較し、両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで、前記DACデータを更新する。
【0014】
本発明によるIFFTクロック調整方法は、放送TSを受けてOFDM変調を行うOFDM変調器とその出力を放送RF信号に変換するアップコンバータとを有するデジタルテレビジョン放送装置に用いられるOFDM変調器用のIFFTクロックを調整するIFFTクロック調整方法である。このIFFTクロック調整方法は、設定されたDACデータをデジタルアナログ変換器に入力してアナログ信号に変換するステップと、前記アナログ信号を電圧制御発振器に印加することにより、当該アナログ信号に応じた周波数の発振出力を前記OFDM変調器へクロック信号として供給するステップと、MER測定器を用いて、前記アップコンバータから出力される放送RF信号に基づいて、そのMERを測定するステップと、前記電圧制御発振器から出力される発振出力に基づいてその発振周波数または発振周期に依存して変化するデジタル値を生成するデジタル値生成手段を用いて、MERの測定を行いながら前記DACデータを更新し、測定値のほぼ最大値が得られたときの前記デジタル値を目標デジタル値として不揮発的に記録するステップと、前記デジタル値が不揮発的に記録された後、前記デジタル値生成手段から得られるデジタル値と前記目標デジタル値とを逐次比較するステップと、両デジタル値の誤差が所定範囲内になるまで、前記DACデータを更新するステップとを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、IFFTクロックの基となる電圧制御発振器の発振出力の温度変動等の影響を受けることなく、放送RF信号のMERを良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態におけるデジタルテレビジョン放送装置(単にデジタル放送装置ともいう)の構成例を示すブロック図である。
図2図1に示したデジタル放送装置の初期動作として、MERの測定、ならびに、DACデータおよびカウント値の不揮発性メモリへの記録を行うMER測定処理の説明用のブロック図である。
図3】本発明の実施の形態におけるMER測定制御の処理フローを表すフローチャートである。
図4図1に示したデジタル放送装置の運用時の動作としての周波数自動調整制御の説明用のブロック図である。
図5図2で説明した周波数自動調整制御の処理フローを表すフローチャートである。
図6図3で説明したMER測定制御のための具体的な処理手順を説明するための図である。
図7図1に示した実施の形態の変形例に係るデジタルテレビジョン放送装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1に、本実施の形態におけるデジタルテレビジョン(TV)放送装置(単にデジタル放送装置ともいう)の構成例を示す。
【0019】
このデジタル放送装置は、大略、TV放送装置70とMER測定器80とIFFTクロック調整装置100とにより構成される。
【0020】
放送装置70は、OFDM変調器71およびアップコンバータ73を含む。
【0021】
OFDM変調器71は、例えばSD/HD−MPEG2信号およびデータ放送信号を含むトランスポート信号(放送TS)を受けてOFDM変調を行い、OFDM変調出力を生成する。アップコンバータ73は、このOFDM変調出力をVHF/UHF/CATVなどの所望のチャンネルのRF信号(放送RF信号)に変換する。このRF信号は、必要に応じて混合器等を介してテレビ受信機(通常、複数台)へ伝送され、あるいは、アンテナ90を介して電波として送信される。
【0022】
IFFTクロック調整装置100は、制御部10、デジタルアナログコンバータ(DAC)20、不揮発性メモリ30、電圧制御発振器40、カウンタ50、およびタイマ60を含む。
【0023】
制御部10は、中央制御装置(CPU)およびメモリ等(図示せず)からなり、IFFTクロック調整装置の各部の制御および本デジタル放送装置に必要な機能を実現するためのソフトウェア処理を実行する。本実施の形態ではそのような機能として、MER測定制御部11および周波数調整制御部14を含む。
【0024】
デジタルアナログコンバータ(DAC)20は、制御部10(内のMER測定制御部11)から与えられたデジタルデータであるDACデータを対応するアナログ信号に変換する回路である。
【0025】
不揮発性メモリ30は、電源が切断された状態でも記憶しているデータを保持する例えばEEPROM等の記憶装置(データ記録手段)であり、本実施の形態では、DACデータを不揮発的に記憶(記録)する記憶エリア31と、デジタル値を不揮発的に記憶(記録)する記憶エリア33とを有する。
【0026】
電圧制御発振器(VCXO発振器)40は、DAC20から与えられたアナログ信号の大きさ(ここでは電圧値)に比例した周波数の発振出力を発生する回路である。このVCXO発振器40の発振出力がIFFTクロックの基となるクロック信号としてOFDM変調器71に供給される。本実施の形態では、上述したVCXO発振器を用いている。本発明を特に限定するものではないが、本例でのVCXO発振器40の発振出力(クロック信号)の目的の周波数は、IFFTクロックの8倍の周波数(65MHz)である。VCXO発振器40から得られるクロック信号はOFDM変調器71のシステムクロックとして利用される。
【0027】
タイマ60は、制御部10により起動され、所定の単位時間に相当する基準クロックのパルス数をカウントする毎に(すなわち単位時間の満了時に)出力信号(タイムアウト信号)を発生する時限回路である。本実施の形態における単位時間は1秒程度の時間であり、基準クロックとしては、外部の例えば27MHzの温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature-Compensated Crystal Oscillator)から得られたクロックを利用する。但し、本発明において使用する基準クロックは27MHzに限られるものではない。本発明において基準クロックの周波数精度は必ずしも高くなくてもよい。すなわち、基準クロックを発生する個々の温度補償型水晶発振器の発振周波数のばらつき(公称値に対する誤差)は問題とならない。その公称値に対する実際の周波数値の誤差が大きくても、実際の周波数値の温度変化や経年変化が小さければ足りる。
【0028】
カウンタ50およびタイマ60は、本発明におけるデジタル値生成手段として機能する。すなわち、カウンタ50は、タイマ60の出力(タイムアウト信号)に従って、単位時間内のVCXO発振出力の出力パルス数をカウントして、そのカウント値をデジタル値として生成する。単位時間内のカウント値はVCXO発振出力の発振周波数に相当する。カウンタ50のビット数は単位時間内の目標周波数(この例では65MHz)のクロック信号を十分にカウントできるビット数(例えば32ビット)とする。
【0029】
MER測定器80は、アップコンバータ73から出力されるRF信号のMERを測定する装置である。上述したように、OFDM変調器によるOFDM変調の変調誤差比(Modulation Error Ratio)であるMERは、デジタル変調において放送局から送信された振幅・位相と、実際の振幅・位相との差を数値で表したものであり、MERの値(dB値)は大きいほど信号品質が高いと言える。
【0030】
制御部10内のMER測定制御部11は、DACデータの設定・更新、MER測定器80によるMER測定、カウンタ50によるカウント動作(デジタル値生成動作)および前記データ記録手段の動作を制御する機能を有する。より具体的には、デジタル放送装置の初期動作として、MER測定器80を利用したMER測定処理を実行し、その処理結果に応じて決まる特定の時点において、カウンタ50によるVCXO発振器40の発振出力をカウントしたカウント値を、目標カウント値(目標デジタル値)として不揮発性メモリ30内の記憶エリア33に記録する。制御部10内のMER測定処理のさらなる詳細については後述する。また、同時点のDACデータを記憶エリア31に記録する。
【0031】
制御部10内の周波数調整制御部14は、不揮発性メモリ30にカウント値(デジタル値)が記録された後、VCXO発振器40の発振出力をカウントする単位時間内のカウント値と目標カウント値とを逐次比較し、両カウント値の誤差が所定範囲内になるまで、DACデータを更新する機能を有する。
【0032】
なお、制御部10内の各部はCPUによるソフトウェア処理で実現されるものとして示したが、それらの一部または全部はハードウェアによって実現されてもよい。
【0033】
以下、このような構成の本実施の形態の具体的な動作を説明する。
【0034】
図2は、図1に示したデジタル放送装置の初期動作として、MERの測定、ならびに、DACデータおよびカウント値の不揮発性メモリへの記録を行うMER測定処理の説明用のブロック図である。この処理を制御部10(内のMER測定制御部11)が実行する場合の処理フローを図3に示す。このようなMER測定処理は、デジタル放送装置の運用開始時および必要時に行うことができる。
【0035】
このMER測定処理において、制御部10内のMER測定制御部11は、まず、初期的に設定されたDACデータをDAC20へ出力して、当該DACデータを対応するアナログ信号に変換させる(S11)。このDAC20から出力されたアナログ信号はVCXO発振器40(電圧制御発振器)に印加され、当該アナログ信号に応じた周波数の発振出力が出力され、OFDM変調器71へIFFTクロックの基となるクロック信号として与えられる。
【0036】
OFDM変調器71は、IFFTクロックに従って、外部から受けた放送TSをOFDM変調する。その出力はアップコンバータ73により放送RF信号に変換されて出力される。
【0037】
MER測定器80は、放送RF信号を受けて、そのMERを測定する。MER測定制御部11は、MER測定器80から測定結果のMER値を確認するとともに(S12)、その最大値(ピーク値)の判定を行う(S13)。さらに、最大値が検出されるまで、DACデータを更新し(S14)、最大値の判定処理を続行する。
【0038】
MERの最大値が検出されたとき、すなわち測定値のほぼ最大値が得られたとき(S13,Yes)、この判定処理を抜け出して、現時点のカウンタ50のカウント値を目標カウント値として不揮発性メモリ30の記憶エリア33に記録する(S15)。これと共に、現時点のDACデータを基準DACデータとして不揮発性メモリ30の記憶エリア31に記録する(S16)。ステップS15とS16の順序は逆であってもよい。
【0039】
図4は、図1に示したデジタル放送装置の運用時の動作としての周波数自動調整制御の説明用のブロック図である。この処理を制御部10(内の周波数調整制御部14)が実行する場合の処理フローを図5に示す。
【0040】
周波数調整制御部14は、まず、不揮発性メモリ30から目標カウント値を読み出して、比較部12の一方の入力端へ入力する(S21)。ついで、不揮発性メモリ30から基準DACデータを読み出してDAC20を介してVCXO発振器40へ入力する(S22)。実際上、基準DACデータは、図4に示すように加減算部13でその値を増減できるように構成されている。加減算部13は初期的には0を加算(またはスルー)する状態とする。
【0041】
ついで、タイマ60を起動する(S23)。タイマ60は、単位時間(ここでは1秒)毎に設定時間の満了のタイミングを表すタイムアウト信号を発生する。周波数調整制御部14は、このタイムアウト信号に同期して求まる単位時間内のVCXO発振出力のカウント値を目標カウント値と比較する(S24)。このカウントは複数回連続して実行し、複数回の測定結果の平均値を求めるようにしてもよい。周波数調整制御部14は、両カウント値の誤差が予め設定された所定範囲内にあるかどうかを監視する(S25)。所定範囲内にある場合には、ステップS24へ戻って単位時間内の誤差の監視を継続する。この場合、DAC20に与えられるDACデータはそのまま維持される。
【0042】
誤差が予め設定された所定範囲から外れたとき(S25,No)、その誤差に応じて、加減算部13により基準DACデータを所定量増加または減少させる(S26)。増加させるか減少させるかは、誤差の符号に基づいて定まる。例えば、カウント値が目標カウント値よりも低い側に所定範囲を外れた場合には、DACデータを所定量増加させることによりVCXO発振出力の周波数を高める。反対にカウント値が目標カウント値よりも高い側に外れた場合には、DACデータを所定量減少させることによりVCXO発振出力の周波数を低下させる。このようにして、両カウント値の誤差が所定範囲内に入るまで、誤差に応じてDACデータを更新していく。
【0043】
その後、ステップS24へ戻って上記の処理を繰り返す。これにより、VCXO発振器40の発振出力の周波数が誤差要因により変動しても、MER測定処理時にほぼ最大のMER値が得られたときの目標カウント値をターゲットとしてDACデータが微調整されることになる。したがって、この周波数自動調整制御により所望のVCXO発振出力の周波数ひいてはIFFTクロックの周波数を高精度に目標周波数に合わせて維持することができる。その結果、VCXO発振器の温度特性や経年変化等の誤差要因の存在に拘わらず、MER値をほぼ最大に維持することができる。
【0044】
基準クロックとしての比較的温度特性の良好な例えば27MHzのクロックは既存のOFDM変調器などに実装されており、このクロックを利用することはコスト高にならない。また、VCXO発振器も既存のOFDM変調器の基本機能なので、実装されている。不揮発性メモリなども通常、デジタル放送装置に搭載されている。簡易変調器にはVCXO発振器に電圧を印加するためのDACも実装されている。このように、本実施の形態において利用する部品はいずれも特別に追加することが必要なものではなく、デジタル放送装置のコスト増を招来するものではない。また、VCXO発振器の良好な温度特性は本発明では特に必要としない。MER調整の精度を高精度に設定すれば、VCXO発振器の経年変化や温度特性による変動を、デジタル値生成手段としてのカウンタのカウント値というデジタル値で管理できるので、OFDM変調特性を格段に向上させることができる。
【0045】
ここで、MERの最大値を比較的迅速に求める手法について説明する。MERの測定では、必要な周波数分解能での所定の周波数インターバルで、DACデータの可変範囲内でDACデータの値を更新していき、各値でのMERの値を測定していけば足りる。しかし、このようなシーケンシャルなスキャン処理は処理時間を要する。
【0046】
図6は、処理時間を短縮可能なMER測定制御のための具体的な処理手順を説明するための図である。
【0047】
効率的にMERの最大値を検出するために、まずは図6(a)に示すように、広い周波数範囲で粗い周波数インターバルでMERの計測を行う。ついで、図6(b)に示すように、粗い周波数インターバルで見つかった最大値を含む狭い周波数範囲(局所周波数範囲)でより細かい周波数インターバルでMERの計測を行う。ここでは2段階の周波数インターバルを使用したが、1段階または3段階以上であってもよい。
【0048】
図7に、図1に示した実施の形態の変形例に係るデジタルテレビジョン放送装置の構成例を示す。図1の構成と異なる点についてのみ説明する。
【0049】
この構成では、カウンタ50に代えてカウンタ50aを用い、タイマ60に代えてカウンタ65を用いる。図1の構成におけるカウンタ50は、単位時間内のVCXO発振出力の出力パルス数をカウントしたのに対して、図7の構成におけるカウンタ50aは、VCXO発振出力の所定の個数(n個)のパルスをカウントする。カウンタ50aは、n個のパルスをカウントしたとき、nパルスカウント出力を発生する。カウンタ65はカウンタ50aがVCXO発振出力のカウントを開始してからnパルスカウント出力を発生するまでの時間を、逐次、基準クロックに基づいて測定する。基準クロックは上記と同じく27MHzクロックでよいが、これに限るものではない。数値nは、例えば、VCXO発振器の目標とする発振周波数の値に応じて設定することができる。この測定された時間は、カウンタ65のカウント値であるデジタル値として出力され、VCXO発振出力のnパルス周期、すなわち、1周期のn倍の時間に相当する。カウンタ65により得られるデジタル値は、VCXO発振出力の発振周期に依存して変化する。この構成では、カウンタ50aおよびカウンタ65がデジタル値生成手段として機能する。
【0050】
また、図7の構成では、誤差に応じて、加減算部13により基準DACデータを所定量増加または減少させる際、誤差の符号とDACデータの増減の関係が図1の構成と逆になる。すなわち、カウント値が目標カウント値よりも低い側に所定範囲を外れた場合には(すなわち、発振周期が短くなった場合には)、DACデータを所定量減少させることによりVCXO発振出力の周波数を低下させる。反対にカウント値が目標カウント値よりも高い側に外れた場合には(すなわち、発振周期が長くなった場合には)、DACデータを所定量増加させることによりVCXO発振出力の周波数を高くする。
【0051】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。例えば、タイマ60のタイムアウト時間は1秒としたが、必ずしも1秒に限るものではない。DACデータを基準DACデータとして不揮発的に記録し、その後、この基準DACデータを利用する構成は必ずしも本発明において必須ではない。電圧制御発振器としてVCXOを用いたが、必ずしもVCXOに限るものではない。
【0052】
上記実施の形態で説明した機能(または方法のステップ)をコンピュータで実現するためのコンピュータプログラムおよびプログラムをコンピュータ読み取り可能に格納した記録媒体も本願発明に含みうる。
【符号の説明】
【0053】
10…制御部
11…MER測定制御部
12…比較部
13…加減算部
14…周波数調整制御部
20…デジタルアナログ変換器(DAC)
30…不揮発性メモリ(データ記録手段)
31…DACデータの記憶エリア
33…カウント値の記憶エリア
40…電圧制御発振器(VCXO)
50,50a…カウンタ(デジタル値生成手段)
60…タイマ(デジタル値生成手段)
65…カウンタ (デジタル値生成手段)
70…TV放送装置
71…OFDM変調器
73…アップコンバータ
80…MER測定器
90…アンテナ
100…IFFTクロック調整装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7