(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5786185
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】消防ホース収納箱、それを組み込んだ消防ホース用キャリーカート
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
A62C27/00 508
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-19779(P2015-19779)
(22)【出願日】2015年2月3日
【審査請求日】2015年2月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313003130
【氏名又は名称】紅葉 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(72)【発明者】
【氏名】紅 葉 淳 一
【審査官】
三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−155972(JP,A)
【文献】
特開平11−192319(JP,A)
【文献】
特開平10−263103(JP,A)
【文献】
特開平10−118213(JP,A)
【文献】
特開平08−193700(JP,A)
【文献】
特開平08−318859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00
A62C 33/00
B65H 75/36 − 75/40
B62B 1/00 − 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納対象となる消防ホースおよび結合金具の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法で、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースを収納可能とする適宜奥行き寸法と高さ寸法とに設定した、平面状底壁、該底壁に直角の背壁、左右側壁を有し、正面および天面開放状とした棚口の複数を、左右隣接状、且つ隣接する左右側壁同士を共通の中仕切り壁とするよう一体化して収納棚とした上、該収納棚を後傾状に支持する後傾自立機構を設けてなるものとしたことを特徴とする消防ホース収納箱。
【請求項2】
収納対象となる消防ホースおよび結合金具の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法で、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースの1本分を収納可能とする適宜奥行き寸法と高さ寸法とに設定した、平面状底壁、該底壁に直角の背壁、左右側壁を有し、正面および天面開放状とした棚口の複数を、左右隣接状、且つ隣接する左右側壁同士を共通の中仕切り壁とするよう一体化した収納棚とし、少なくとも左右最外壁の夫々適所に把持部を設けた上、底部に後傾状に支持する後傾自立機構用の脚部を設けてなるものとしたことを特徴とする消防ホース収納箱。
【請求項3】
収納対象となる消防ホースおよび結合金具の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法の略整数倍の左右幅、および、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースを収納可能とする適宜奥行き寸法に設定し、載置面を矩形平面状とした底壁に、収納対象となる消防ホースおよび結合金具の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法の略整数倍の左右幅、および、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースを収納可能とする高さ寸法に設定し、該底壁に直角な背壁を立設し、該底壁と背壁との左右端に、把持部を設けた左右最外壁を一体化すると共に、同左右最外壁間であって当該単位間口幅寸法置き毎となる底壁と背壁との左右間中途箇所夫々に中仕切り壁を設け、左右隣接状複数の棚口を配し収納棚とした上、該収納棚を後傾状に支持する後傾自立機構を設けてなるものとしたことを特徴とする消防ホース収納箱。
【請求項4】
背壁に、搭載姿勢を適宜規制可能な形状としたスペーサーを設けてなるものとした、請求項1ないし3何れか一項記載の消防ホース収納箱。
【請求項5】
請求項1ないし4何れか一項記載の消防ホース収納箱を搭載可能な車輪付き荷台、および、押し引き操作用のハンドルを設け、該荷台上に、後傾自立機構を介して後傾姿勢とするよう当該消防ホース収納箱を搭載してなるものとしたことを特徴とする消防ホース用キャリーカート。
【請求項6】
請求項1ないし4何れか一項記載の消防ホース収納箱を搭載可能な車輪付き荷台、および、押し引き操作用のハンドルを設け、該荷台上に、開放正面をハンドルとは反対がわとなる牽引進行方向後方に向けた当該消防ホース収納箱を、同消防ホース収納箱背壁が牽引進行方向に向け傾斜した姿勢に後傾自立機構が支持するよう、着脱自在に搭載してなるものとしたことを特徴とする消防ホース用キャリーカート。
【請求項7】
請求項1ないし3何れか一項記載の消防ホース収納箱を搭載可能な車輪付き荷台、折り畳み収納機構を有するフットレスト、および、押し引き操作用のハンドルを設け、該荷台上に、当該消防ホース収納箱を積み降ろし自在な搭載状に組み込んでなるものとした消防ホース用キャリーカート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、消防ホースの収納および利用に関連するものであり、特に、消防ホースを収納・保管し、火災発生時や訓練に際し、迅速に展開、利用可能とする収納箱、その収納箱を搭載して自走可能としたキャリーカート、および、当該収納箱に消防ホースを効率的に収納可能とするホース折り畳み器を製造、提供する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
消防ホースは一般に、二重巻き、島田折り、狭所巻き、四重折りなど、消火活動に適するよう折畳み保管してあり、消火活動に際し、消防士や消防団員が、ロール状や蛇腹状などに折畳まれた消火ホースを担いでポンプや消火栓付近に運搬し、二重巻きの場合には、消火ホースの端を掴んで地上に転がすよう展長して基端をポンプや消火栓に接続し、先端を掴んで放水位置に向けて走り、さらに、別の展長した消防ホースの基端に接続するか、または、ノズルを接続して放水するようにしたり、また、島田折り、狭所巻き、四重折りなどの消火ホースでは、ポンプや消火栓付近まで担いで運搬した後、地上に置き、基端をポンプや消火栓に接続し、先端がわ適所を掴んで火災現場に向けて数歩ずつ進みながら延長して別に延長した消防ホースの基端に接続するか、またはノズルを接続して放水するようにしている。
しかし、1本または複数本の消防ホースを担いで走り、手際良く延長してから接続して放水を開始するまでに多大な労力を要することから、これを1〜2人という少人数で行おうとすると体力を大きく消耗してしまい、その後の放水や救助などといった厳しい消火活動に支障を来すこととなるため、その体力を維持していなければならず、日頃から日課として体力強化が勤務内容となっている消防署(常備消防機関)勤務の消防士なら未だしも、普段は他の勤務をして、非常時に非常備消防機関として組織、活動することになる消防団員の場合には、放水など本格的な消火活動に入る前のホース取扱いによる体力消耗が大きな課題となっている。
【0003】
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、葛折りとした消防ホースを前後壁解放型のショルダーバッグ状に吊り下げ可能なものとし、消防士や消防団員が、容易に運搬できるようにした消防ホース収納バッグや、同特許文献1(2)に見られるような、前面および上面が開いた箱型の左右部に車輪、上部中央にハンドルを設けた収納部内に、葛折りとした消防ホースを前後2列に収納し、ポンプや消火栓に消防ホース基端を接続して引き動かすことにより、放水位置まで移動容易としてなる消防ホースキャリヤや、同特許文献1(3)のように、2重巻きとした消防ホースを収納可能とするよう半円形の底部を内蔵した方形外枠を設け、上部に取り外し可能な手提げハンドルを設け、手提げ運搬可能な上、背負器に外枠毎装填し、背負って運搬できるようにし、さらに、荷台に車輪やハンドルを設けたホースカーに複数個搭載し、まとめて運搬できるようにした消防用ホースカートリッジ、同特許文献1(4)の葛折りとした上、複数本接続した消防ホースを延伸容易に収容し、左右車輪の外、必要時に展開・露出可能な橇を設け、ぬかるみや雪上も容易に運搬可能とした消防用ホース運搬車、さらにまた、同特許文献1(5)に見るように、垂直な円板型ずれ防止板の一側面中央にクランクハンドルを結合し、同ずれ防止板のクランクハンドルを結合したのとは反対がわとなる他側面中央付近に、夫々オフセット配置とした水平姿勢の係止軸および巻取軸を突設し、係止軸に消防ホースの重ね折部を係止してクランクハンドルを一方向に回転操作し、消防ホースを二重巻きに巻き取る作業を容易にし、収納作業の負担を軽減可化するものとした消防用ホースの巻取装置構造などが散見される。
【0004】
前記特許文献1(1)に示されているようなショルダーバッグ状収納バッグは、消防ホースを整然と保管、管理して緊急時に運び出すのに有利なものとなっているが、複数本の消防ホースを急いで運搬、延長して接続する作業に伴い、複数の収納バッグを一定の場所に集めて置くなど、整理しながら消防作業を進めなければならず、さもなければ延長した消防ホース周辺に複数の収納バッグが散乱状となってしまい、反って消火活動の妨げになる虞があり、特許文献1(2)に示されるキャリヤなどは、収納部内に葛折りとした消防ホースを前後2列に収納してあるから、後列に配した消防ホースのみ取り出してメンテナンスや交換を行うことができず、必ず前列の消防ホースを取り出さなければならないという欠点があり、特許文献1(3)の消防用ホースカートリッジなどのように、2重巻きとした消防ホース専用に収納するものとしたものは、葛折りとした消防ホースを整然と収納することが困難なものであり、特許文献1(4)に示される消防用ホース運搬車などのように、葛籠折りとした消防ホースを、前後方向に重ね合わせた状態に収納するものは、複数本の消防ホースを接続したまま収納可能とする場合、平面積を大きく設定しなければならず、大型化してしまう虞があり、特許文献1(3)に示された消防用ホースの巻取装置構造などは、2重巻きとすることが可能であるが、葛折りとすることができないという欠点があった。
【特許文献1】(1)特開2013−39380号公報 (2)特開平10−263103号公報 (3)特開平11−155972号公報 (4)実用新案登録第3090749号公報 (5)実開平6−3971号公報 (6)特開2014−189088
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある手提げ型、ショルダーバッグ型、背負い型などの各種収納バッグや収納箱類は、何れも消防ホースを目的の位置まで運搬し、延長した後に、地上に放置したままにすると足下を不安定にする虞があり、各種消防ホースの運搬車などは、複数本収納した消防ホース中、奥がわに配した1本だけを取り出すことができず、メンテナンスや交換作業などの際には、全ての消防ホースを取り出し、再度畳んで収納し直さなければならず、また、2重折専用のホースカートリッジ類や巻き取り装置などは、消防ホースを葛折りに収納することができないという欠点があり、葛折りとした消防ホースであっても荷姿を崩すことなく整然と収納・保管することが可能であり、1人でも複数本の消防ホースをまとめて容易に運搬することができ、しかも円滑に延伸して速やかに放水可能とした消防ホース用の収納箱、および該収納箱を労せず運搬できるようにするなど一連の技術においては、更なる改善の必要性を痛感するに至ったものである。
【0006】
(発明の目的)
そこで、この発明は、消防士や消防団員が、1人であっても、葛折りとした複数本の消防ホースを接続した状態に効率的且つ整然と収納し、容易に運搬することができる上、速やかに延長して放水可能なものとすることができる新たな消防ホース収納技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の消防ホース収納箱、新規な構造の消防ホース用キャリーカート、および、新規な構造のホース折り畳み器を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の消防ホース収納箱は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、収納対象となる消防ホースおよび結合金具の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法で、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースを収納可能とする適宜奥行き寸法と高さ寸法とに設定した、平面状底壁、該底壁に直角の背壁、左右側壁を有し、正面および天面開放状とした棚口の複数を、左右隣接状、且つ隣接する左右側壁同士を共通の中仕切り壁とするよう一体化して収納棚とした上、該収納棚を後傾状に支持する後傾自立機構を設けてなるものとした構成を要旨とする消防ホース収納箱である。
【0008】
この基本的な構成からなる消防ホース収納箱は、より具体的なものとして示すと、収納対象となる消防ホースおよび結合金具の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法で、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースの1本分を収納可能とする適宜奥行き寸法と高さ寸法とに設定した、平面状底壁、該底壁に直角の背壁、左右側壁を有し、正面および天面開放状とした棚口の複数を、左右隣接状、且つ隣接する左右側壁同士を共通の中仕切り壁とするよう一体化した収納棚とし、少なくとも左右最外壁の夫々適所に把持部を設けた上、底部に後傾状に支持する後傾自立機構用の脚部を設けてなるものとした構成からなる消防ホース収納箱となる。
【0009】
さらに、表現を変えて示すならば、収納対象となる消防ホースおよび結合金具の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法の略整数倍の左右幅、および、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースを収納可能とする適宜奥行き寸法に設定し、載置面を矩形平面状とした底壁に、収納対象となる消防ホースおよび結合金具の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法の略整数倍の左右幅、および、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースを収納可能とする高さ寸法に設定し、該底壁に直角な背壁を立設し、該底壁と背壁との左右端に、把持部を設けた左右最外壁を一体化すると共に、同左右最外壁間であって当該単位間口幅寸法置き毎となる底壁と背壁との左右間中途箇所夫々に中仕切り壁を設け、左右隣接状複数の棚口を配し収納棚とした上、該収納棚を後傾状に支持する後傾自立機構を設けてなるものとした構成からなる消防ホース収納箱と言うことができる。
【0010】
(関連する発明1)
上記した消防ホース収納箱に関連し、この発明には、それを組み込んだ消防ホース用キャリーカートも包含している。
即ち、この発明の基本をなす消防ホース収納箱を搭載可能な車輪付き荷台、および、押し引き操作用のハンドルを設け、該荷台上に、後傾自立機構を介して後傾姿勢とするよう当該消防ホース収納箱を搭載してなるものとした構成からなる消防ホース用キャリーカートである。
【0011】
より具体的なものとして示すと、この発明の基本をなす消防ホース収納箱を搭載可能な車輪付き荷台、および、押し引き操作用のハンドルを設け、該荷台上に、開放正面をハンドルとは反対がわとなる牽引進行方向後方に向けた当該消防ホース収納箱を、同消防ホース収納箱背壁が牽引進行方向に向け傾斜した姿勢に後傾自立機構が支持するよう、着脱自在に搭載してなるものとした構成からなる消防ホース用キャリーカートとなる。
【0012】
(関連する発明2)
上記した消防ホース収納箱に関連し、この発明には、それに利用するホース折り畳み器も包含している。
即ち、板状または適宜枠状とした縦支持体を有し、この発明の基本をなす消防ホース収納箱の収納棚の奥行き寸法より僅かに短い水平間隔を隔て、消防ホース幅を僅かに超える露出長さとした複数本の支持棒を、互いに水平状且つ平行姿勢とし、上下に適宜間隔を隔てた左右縦2列に配列するよう突設し、消防ホースを左右支持棒間に交互に巻掛けるよう掛け渡し、上方から下方、または、下方から上方に向けて葛折り積層状に折り畳み可能なものとした構成からなる、この発明の基本をなす消防ホース収納箱に利用可能なホース折り畳み器である。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、この発明の消防ホース収納箱によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、葛折り積層状とした複数本の消防ホースを、互いの結合金具が接続したまま整然と収納・保管することが可能となり、後傾自立機構が、収納した消防ホースの荷重を後方寄りに誘導し、振動などによる荷崩れを確実に防止可能とする上、左右最外壁に設けた把持部を把持し、協力者の集合を待つことなく、1人の消防隊員や消防団員が、複数本の消防ホースを一まとめにして結合金具の接続作業を省略し、順次延長しながら容易に放水位置まで運搬するようになるから、格段に迅速な消火活動を実現化することができるものになるという秀でた特徴が得られるものである。
【0014】
加えて、葛折り積層状とした消防ホースの1本分を1つの棚口に収容し、隣接する棚口間に結合金具の接続部分を配するよう収納可能としたものでは、収納状態を一目しただけで、複数本接続してある消防ホースの、ポンプや消火栓に接続すべき末端と、ノズルに接続可能な先端とを素早く確認可能なものとし、災害時にも誤認することなく正確且つ迅速な放水活動を実現化でき、また、日頃のメンテナンスや交換作業などに際し、消防ホース1本毎を棚口から取り出して個別に作業することができるから、従前までの全ての消防ホースを取り出さなければならなかった収納装置類に比較し、点検・整備の作業工数を格段に削減することができるという大きな効果を発揮するものとなる。
【0015】
さらに、消防ホース収納箱背壁に、搭載姿勢を適宜規制可能な形状としたスペーサーを設けてなるものは、消防ホース用キャリーカートに、より安定した搭載を可能として走行中に消防ホース収納箱に加わる振動を抑制し、一段と確実に消防ホースの荷崩れを防止することが可能なものとしている。
【0016】
この発明の消防ホース用キャリーカートは、当該消防ホース収納箱を搭載し、消防隊員や消防団員が1人であっても容易に押し引き操作して運搬作業および消防ホースの延長作業を安全、迅速、確実に行うことができ、しかも運搬労力を大幅に軽減するものとなり、その後の放水活動や救助活動などに充分な体力を温存することができる上、当該消防ホース収納箱の後傾自立機構を介して後傾姿勢とするよう搭載可能なものとし、走行中の消防ホースの収納箱への収納状態を安定に保持し、不用意な荷崩れや脱落を防止することができ、特に、消防ホース収納箱開放正面をハンドルとは反対がわとなる牽引進行方向後方に向けて搭載したものでは、キャリーカートを走行させながら、消防ホースを延長する際の作業性を格段に高め、より効率的且つ迅速な延長作業を実現化するものになるという大きな効果が得られることとなる。
【0017】
さらに、折り畳み収納機構を有するフットレストを設けた消防ホース用キャリーカートは、荷台に搭載した消防ホース収納箱を下ろした荷台を座面として利用し、該フットレストに着座者の足を乗せるのに利用可能となることから、負傷者の救助や、高齢者、身障者などを津波から非難させる場合など、非難渋滞によって自動車等を利用できないような事態であっても、1人の押し引き操作によって容易に1人を救助し、長距離非難させることが可能なものになるという極めて実用的且つ有効な効果が得られるものとなる。
【0018】
そして、この発明のホース折り畳み器によれば、誰でも簡単且つ速やかに、当該消防ホース収納箱収納棚の奥行き寸法に収まる大きさに、効率的に消防ホースを葛折り積層状に折畳むことができる上、正確な一定寸法に折畳んだ消防ホースは、収納棚に効率的且つ整然と安定に収納することができるから、荷崩れを防止して緊急時にも滞りなく延長することができるものになるという秀でた効果を発揮するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
収納対象となる消防ホースは、消防活動送水用のホースや屋内外消火栓のホースなどであって、例えば、消防用ゴム引きホース、消防用麻ホース、消防用濡れホース、消防用保形ホースまたは大容量泡放水砲用ホースと言うことができ、換言すると、外面塗装ホース、外面被覆ホース、ダブルジャケットホース、麻ホース、濡れホース、保形ホースなどであるとすることができ、両端に結合金具を設けたものであり、より具体的なものとして示すと、呼び径が、150,125,100,90,75,65,50,40,30,25,20、長さが、10m,15m,20m,30mのものなどを想定する。
【0020】
収納棚は、適宜長さ毎に葛折り積層状とした少なくとも1本の消防ホースを収納・保管可能とし、災害の発生などに伴い即座に運搬した後、消防ホースを延長して使用可能とする機能を担い、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースを収納可能とする適宜奥行き寸法および高さ寸法に設定した棚口の複数を、左右隣接状に配してなるものとしなければならず、倉庫などの床面上に安定に設置して消防ホースを安全に保管して置くことができ、災害発生時などには、1人で容易に運搬できる程度の大きさおよび重量に抑えたものとすべきであり、各棚口は、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースを、収納可能とする適宜奥行き寸法および高さ寸法に設定した、平面状底壁、該底壁に直角の背壁、左右側壁を有し、正面および天面開放状としたものとすべきであり、換言すると、消防ホースおよび結合金具の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法の略整数倍の左右幅で、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースを収納可能とする適宜奥行き寸法になるものに設定し、載置面を矩形平面状とした底壁に、収納対象となる消防ホースおよび結合金具の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法の略整数倍の左右幅、および、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホースを収納可能とする高さ寸法に設定し、該底壁に直角な背壁を立設し、該底壁と背壁との左右端に、把持部を設けた左右最外壁を一体化すると共に、同左右最外壁間であって当該単位間口幅寸法置き毎となる底壁と背壁との左右間中途箇所間夫々に中仕切り壁を設け、左右隣接状複数の棚口を配してなるものであると言うことができる。
【0021】
消防ホース収納箱は、倉庫内に設置、保管する場合に、地震による転倒を防止可能としたり、消防ホース用キャリーカートの適所に固定したりすることができる、仮止め金具類や仮止めベルト類などを適所に設けたものとすることができる外、背壁や左右最外壁、中仕切り壁の適所などに、手提げ用ハンドルや背負い用のベルトなどを一体か着脱自在に設けたものとすることができる。
【0022】
後傾自立機構は、収納棚それ自体を安定に自立可能な角度範囲内に後傾支持し、収納した葛折り積層状の消防ホースが、棚口奥がわ寄りに重心を誘導し、運搬中の揺れなどによって荷崩れ、脱落などしないよう収納状態を維持可能とする機能を担っており、充分な強度をもって収納棚を支持可能なものとしなければならず、着脱機能を有するものとしたり、後傾角度を段階的または無段階的の何れか一方に調節可能としたもの、キャリーカートの荷台上に仮固定可能とする仮固定機構を有するものなど適宜選択採用することができる外、後述する実施例にも示しているように、収納棚底部に一体化した枠状の脚部とすることが可能である。
【0023】
スペーサーは、キャリーカートの荷台上に当該消防ホース収納箱を搭載した場合に、キャリーカートのハンドルと収納棚背壁との間に生じる隙間を埋め、搭載した消防ホース収納箱をより安定して運搬可能なものとする機能を担い、ある程度の衝撃吸収機能を有した高摩擦素材からなるものとするのが望ましく、後述する実施例にも示すように、側面視形状が、直角三角形または台形のブロック状のものとすることができる外、消防ホース収納箱およびキャリーカートのハンドルなどの夫々適所に連結可能な着脱機構を設けたものとすることが可能である。
【0024】
消防ホース用キャリーカートは、この発明の消防ホース収納箱を簡便且つ安定に搭載し、軽快に運搬・走行可能なものとなる機能を担っていて、消防ホース収納箱を搭載可能な車輪付き荷台、および押し引き操作用のハンドルを設け、該荷台上に、後傾自立機構を介して後傾姿勢とするよう当該消防ホース収納箱を搭載してなるものとしなければならず、車輪付き荷台を有するものであれば、様々なカート類を利用したものとすることが可能であり、例えば後述する実施例の中にも採用してあるように、本願出願人によって既に開発済みである、特許文献1(6)に公開したキャリーカートを活かし、この発明の消防ホース収納箱を搭載してなるものとすることができ、さらに、消防ホース収納箱を荷台上に仮固定可能とする仮止め用金具類や仮止め用ベルト類を有するもの等とすることが可能である。
【0025】
フットレストは、消防ホース収納箱を降ろしたキャリーカートの荷台に負傷者や歩行困難者などを座らせ、非常事態時などに避難移動するときなどに簡便且つ安全に活用可能となる機能を担うもので、荷台に着座した人の足を充分な強度をもって安定支持可能な形状および強度を有するものとしなければならず、着脱機構または折り畳み収納機構を有して普段は収納しておくことができるものとするのが望ましい。
【0026】
ホース折り畳み器の縦支持体は、複数本の支持棒を夫々所望の配置に固定するよう突設状に支持し、消防ホースをこの発明の消防ホース収納箱に収納可能な大きさ毎に葛折り積層状とする作業を補助可能とする機能を担い、当該消防ホース収納箱の収納棚の奥行き寸法よりも僅かに短い水平間隔を隔て、消防ホース幅を僅かに超える露出長さとした複数本の支持棒を、互いに水平且つ平行姿勢とし、上下に適宜間隔を隔てた左右縦2列に配列・突設するよう支持したものとしなければならず、例えば、起立用の折り畳みスタンド機能などを有した板状、網板状、または、後述する実施例にも取り入れてあるように、矩形枠状のものとするなど、適宜採択することができる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面は、この発明の消防ホース収納箱、それを組み込んだ消防ホース用キャリーカート、およびそれに利用するホース折り畳み器の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【
図2】消防ホースを収納した消防ホース収納箱を示す三面図である。
【
図3】消防ホース用キャリーカートを示す正面図である。
【
図4】消防ホース用キャリーカートを示す側面図である。
【実施例1】
【0028】
図1および
図2に示す事例は、収納対象となる消防ホース7および結合金具70の何れか一方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法M、適宜長さ毎に葛折り積層状とした消防ホース7の1本分を収納可能とする適宜奥行き寸法Lおよび高さ寸法Hに設定した、平面状底壁21、該底壁21に直角の背壁22、左右側壁23,23,(24,24)を有し、正面および天面開放状とした棚口20の複数を左右隣接状に配し、隣接する左右側壁23,23同士を共通の中仕切り壁23とするよう一体化した収納棚2とし、少なくとも左右最外壁24,24の夫々適所に、把持部25,25を設けた上、底部21に後傾状に支持する後傾自立機構としての脚部3を設けてなるものとした、この発明の消防ホース収納箱における代表的な一実施例を示すものである。
以下では、この発明の消防ホース収納箱1の一例、それを組み込んだ消防ホース用キャリーカート5、およびそれに利用するホース折り畳み器6について順次示して行くこととする。
【0029】
図1および
図2からも明確に把握できるとおり、この発明の消防ホース収納箱1は、収納対象となる消防ホース7および結合金具70の何れか大きい方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法Mの略整数倍(例えば3培:M×整数=W)の左右幅Wで、一定長さ毎に葛折り積層状とした消防ホース7を収納可能とする適宜奥行き寸法Lに設定し、載置面を矩形平面状とした底壁21に、収納対象となる消防ホース7および結合金具70の何れか一方の直径を僅かに超える単位間口幅寸法Mの略整数倍(例えば3培:M×整数=W)の左右幅Wで、一定長さ毎に葛折り積層状とした1本の消防ホース7を収納可能とする高さ寸法Hに設定し、該底壁21に直角な背壁22を立設し、該底壁21と背壁22との左右端には、把持部25,25を設け、各下端に後傾自立機構3としての脚部3の左右脚壁部30,30を側面視横転台形状とするよう一体化した左右最外壁24,24を設けると共に、同左右最外壁24,24間であって略当該単位間口幅寸法M置き毎となる底壁21と背壁22との左右間中途2箇所夫々に中仕切り壁23,23を設け、左右隣接状となる3つの棚口20,20,20を配し収納棚2とした上、前記左右脚壁部30,30の左右前端間を前面脚壁部31にて隠蔽状に連結し、該収納棚2を後傾状に支持可能なものとしてある。
【0030】
図3および
図4に示すように、この発明の消防ホース収納箱1は、各棚口20,20,20夫々に一定長さ毎に葛折り積層状とした1本分ずつの消防ホース7,7,7を収納した上、さらに、特許文献1(6)に公開したキャリーカートに対して、その車輪51,51付き荷台50に着脱自在に搭載するように組み合わせ、消防ホース用キャリーカート5とすることができ、該消防ホース用キャリーカート5は、押し引き操作用のハンドル52を有し、当該消防ホース収納箱1背壁22とハンドル52との隙間に、側面視三角形または台形のブロック状としたスペーサー4を装着したものとし、さらに、左右車輪51,51には、夫々橇板53,53を着自在に装着可能なものとしてあり、また、荷台50のハンドル52とは反対がわとなる接地位置付近には、図示しない折り畳み収納機構を有するフットレストを設けたものとすることができる。
【0031】
図5に示すように、ホース折り畳み器6は、矩形枠状とした縦支持体60を有し、当該消防ホース収納箱1の収納棚2の奥行き寸法Lより僅かに短い水平間隔(L―α)を隔て、平板状に潰すよう畳んだ消防ホース7幅Dを僅かに超える露出長さ(D+β)とした複数本の支持棒61,61,……を、互いに水平且つ平行姿勢とし、上下に適宜間隔を隔てた左右縦2列に配列するよう突設し、少なくとも1本分の消防ホース7の略全長を左右支持棒61,61,……間に交互に巻掛けるよう掛け渡し可能な寸法、および配置関係としたものとしてある。
【0032】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の消防ホース収納箱1、それを組み込んだ消防ホース7用キャリーカート5、およびそれに利用するホース折り畳み器6は、
図5に示すように、ホース折り畳み器6を用いて消防ホース7を左右支持棒61,61,……間に交互に巻掛け、上下何れか一方に積み重ねるよう掛け渡し操作すると、誰でも簡単に、当該消防ホース収納箱1の棚口20に収納可能な一定長さ(L―α)毎に葛折り積層状に折畳むことが可能となり、
図2に示すように、互いの結合金具70,70を接続した状態に合計3本の消防ホース7,7,7を左右に隣接する棚口20,20,20に倣って夫々整然と収納し、倉庫などに設置・保管して置く事が可能である。
【0033】
消防ホース7,7,7を収納したこの発明の消防ホース収納箱1は、脚部3が安定且つ後傾姿勢に自立するよう支持し得るものとなり、各消防ホース7,7,7の重心を自動的に後方に移動し、揺れや振動などを受けたときなどにも荷崩れを防止するものとなり、1人だけででも、左右最外壁24,24の把持部25,25を把持した上、容易に運搬することや、消防ホース7用キャリーカート5への積み降ろししたりすることを簡単に行えるものとなり、また、スペーサー4は、消防ホース7用キャリーカート5ハンドル52と、それに搭載した消防ホース収納箱1背壁22との間に介在し、双方の一体化を高めて走行移動中の不要な振動を防止し、より安定且つ安全な運搬を実現化するものとなる。
【0034】
消火活動に際し、1人の消防隊員や消防団員などが、消防ホース収納箱1を搭載した消防ホース7用キャリーカート5のハンドル52を押し引きして容易に走行移動させ、消火用ポンプや消火栓付近まで移動し、末端に収納してある消防ホース7基端の結合金具70を接続し、さらに、消防ホース7用キャリーカート5を放水位置に向けて走行させならが、次々に各棚口20,20,20の3本の消防ホース7,7,7を不要な折れ目など生じることなく円滑に延長し、先頭の消防ホース7先端の結合金具70に、図示しない次の消防ホース7基端を、接続するか、または図示しないノズルを接続するようにし、バルブを操作して放水するようにすることができる。
【0035】
(結 び)
叙述の如く、この発明の消防ホース収納箱、それを組み込んだ消防ホース用キャリーカート、およびそれに利用するホース折り畳み器は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの消防用ホース運搬車、およびその関連技術に比較して大幅に、小型・軽量化して遥かに経済的なものとすることができる上、平常時は消防ホース収納箱を保管棚として利用し、災害時にはそのままキャリーカートに搭載して運搬可能なものとしたから、狭いスペースにも収納可能となり、キャリーカートを多用途化し、火災から津波まで様々な災害に幅広く利用できる外、日常的な人や物の運搬にも幅広く利用することができるものとなり、消防用品業界および消防所、消防団はもとより、消防設備を整備する企業や各種団体においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0036】
1 消防ホース収納箱
2 収納棚
20 同 棚口
21 同 底壁(載置面)
W 同 全幅寸法(M×整数=W)
22 同 背壁
23 同 左右側壁(中仕切り壁)
24 同 左右最外壁
25 同 把持部
3 脚部(後傾自立機構)
30 同 左右脚壁部
31 同 前面脚壁部
M 単位間口幅寸法M
L 奥行き寸法
H 高さ寸法
4 スペーサー
5 消防ホース7用キャリーカート
50 同 荷台
51 同 車輪
52 同 ハンドル
53 同 橇板
6 ホース折り畳み器
60 同 縦支持体
61 同 支持棒
(L−α) 同 水平間隔
(D+β) 同 露出長さ
7 消防ホース
70 同 結合金具
D 消防ホース7の幅
【要約】 (修正有)
【課題】消防士や消防団員が1人であっても、葛折りとした複数本の消防ホースを接続した状態に効率的且つ整然と収納し、容易に運搬することができる上、速やかに延長して放水可能なものとすることができる新たな消防ホース収納技術を提供する。
【解決手段】葛折り積層状とした消防ホース7の1本分を、収納可能とする単位間口幅寸法M、適宜奥行き寸法Lおよび高さ寸法Hに設定した、平面状底壁、該底壁に直角の背壁、左右側壁を有し、正面および天面開放状とした棚口20の複数を左右隣接状に配し、隣接する左右側壁同士を共通の中仕切り壁とするよう一体化した収納棚2とし、少なくとも左右最外壁の夫々適所に、把持部を設けた上、底部に後傾状に支持する後傾自立機構としての脚部を設けてなる消防ホース収納箱1である。
【選択図】
図2