(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[背景とコンセプト]
コンセントが多岐の機能を備えることは単価・工賃・システム導入に渡って費用の向上を招くため、従来の計器のようにひとつあれば限られた目的のみその場で達する使用方法と比べ、多くのコンセントを備えた現代家屋に一括導入する際には、コストパフォーマンスを低下させる要素となる。
また、法令や安全規格に反しないよう諸耐電圧・放熱・ノイズ対策を施す必要があるが、結線、測定及び制御に加え、有線/無線通信、回路開閉、表示など機能部品が増えることで、既定された容積内では安全距離の追加や放熱、耐圧ギャップの確保に窮する。
回路遮断用のリレーを組み込むには、大電流に対応した大型のメカニカルリレーか放熱を考慮したうえで半導体リレーを組み込むか、いずれかを選ぶ必要があり、製品容積をおさえる上では大きな障壁となる。また、大電力向け半導体リレーは、制御不能時に閉接点となるものが一般的であり、安全面ではリスクを残している。
リレーによる回路の開閉機能は、安全や節電を目的とした制御回路の動作ロジック、または外部からの開閉指示によって相乗的にメリットが生ずる機能であるため、電子制御や通信機能を併用することが望ましい。しかし、計測のみを目的とし単体で機能完結している従来の世代の機器設計でリレーを搭載しても、スイッチやヒューズで代替できる程度の機能にとどまり、コストやサイズの割に利用価値は乏しいものであった。
【0013】
大電力に対応した大型のリレーを組み込む場合には、リレーを駆動するために比較的大きな電力が必要であり、結果的に大型の電源回路を必要とする。
通信への対応を行なうには、単独で自律制御のみする設計よりも通信機器に対して大きな電力を割く必要があり、結果的に大型の電源回路を必要とする。
機器自身が高効率電源設計のないままに自動制御、通信やリレー駆動、表示など多岐の機能を備えると、機器自身が大きな電力を常時消費して節電志向に矛盾する機器となり、製品価値を失する。
既存の電力監視の通信制御は信頼性やコストの面からシステムやネットワークの仕様が独自あるいは単独であるほうが実効性が高く、より大規模で高機能の情報インフラに親和性の高いものではなかったが、現時点では上位の通信ネットワークであるIP網やクラウド技術などがひろく普及しつつあり、これらに接続可能である設計とすることに大きなメリットが期待できる。
【0014】
機器単独で専用の筐体内にパッケージされる場合には、機器の絶縁は筐体で完結するが、外部からの操作や制御を受けるシステムとする場合には、電源、通信網いずれにも絶縁のための機構を要し、絶縁しない回路構成と異なって数多くの機構部品を要する。
大電流の通過部は発熱などを防ぐため定格容量を満たす結線方法によって安全を確保する必要があるが、専用の接続機構や配線部品を多数作成することは、設計・製造・保守そして規格認証手続にわたり製品コストを押し上げる要因となる。
上記の課題を改善あるいは解決した、埋め込みコンセント1を本発明の実施形態として説明する。
【0015】
本実施形態の埋め込みコンセント1は、電流通過部の構造を工夫することによって全体を小さくしている。具体的には、スペースを必要とするプリント基板のパターン上でなく、電気的規格をも満たす構造材兼用の支柱によって配線と電流検出と基板固定を兼ねる構造となっている。
また、埋め込みコンセント1は、既存の化粧パネル106を使っていても、ある程度の表示機能を担保する。具体的には、透過視認できる輝度のLEDをパネル裏から発光させて判別可能なレベルとするか、パネル隙間の光漏れを積極的に使って情報を伝達する手法をとっている。
また、埋め込みコンセント1は、絶縁距離と可処分空間と稼ぎつつ工程を簡略化する構成となっている。具体的には、実装方向を配慮することで容積効率を向上させ、現場での組立工程を「基本ははめ込むだけ」としている。
【0016】
既設家屋ならびに業界標準の規格で設置される埋め込みコンセントに追加する様式で利用可能な、通信対応の電力管理機能付きコンセントの構成であり、標準的な一般配電設備(コンセント)が設置済であるいわゆる既設住宅に対し、壁面の既存コンセントの占有容積に収まるように設計することで、設置工事を容易にする。
また、埋め込みコンセント1は、これを経由して家電機器が消費する電力を測定し、現在の状態や電力量を所定の通信方式によって伝達することで、ネットワーク化された電力の集計制御システムを構築、あるいは既存ネットワークシステムに参加することができる。測定だけでなく、埋め込みコンセント1の電流を切断及び再接続する機能を有し、任意の機器に対して使いすぎや消し忘れの防止、計画的な節電、一定電力を計量した給電、接続機器の自動制御といった所定の応用動作を実現する。
【0017】
通信制御については、例えばECHONETのように高い汎用性と普及率を期待しうるネットワーク規格に接続が可能な設計マージンを持つことで、将来にわたり情報通信網への接合性を高める。
また、通信方式について、現存の屋内家電制御配線に対応しうる有線規格、あるいはISMバンドを利用した無線通信を選択して実装することが可能なハードウエア・ソフトウエア設計とする。
無線通信について、現存の計測無線機器に見られるアンテナ部の張り出しをおさえるため、屋内(部屋間)で充分なネットワークを確保できるゲインを持った、機器内蔵アンテナを採用する。
配電部と機器本体の制御回路電源、および通信網について三者を所定の耐電圧性能で絶縁することで、感電や漏電事故を防止し、システムの信頼性を担保する。
【0018】
埋め込みコンセント1の設置後は、通常の埋め込み型コンセント同様に、工事資格を持たない一般のユーザーが任意に取り外すことができず、またシステムの管理権限なく本埋め込みコンセント1の動作に干渉することが困難となるため、正常動作中及び監視下にあること、あるいはなんらかの設備異常があって解決すべき状態にあることを通知する状態表示部を持つ。
また、本体部品を合理化することで、計測および制御を行なう基板の組立て製造ならびに設置配線工事の工程をいずれも簡略化し、かつ大電流が通過する機器としての信頼性を高める。
本体の外殻を構成する部品について独自の容積や外形・規格を備えた専用の筐体および給電部の部品をあえて採用しないことで、計測制御回路を除く電工設備部分については既存部品の流用が可能な設計とし、これにより製造原価を下げ、同時に設置工事時の汎用性や保守性を向上させる。
【0019】
以下、図面を参照して、埋め込みコンセント1の具体的な構成を説明する。なお、以下の説明において、埋め込みコンセント1が壁に埋め込まれた場合に、露出している面を「表側」と呼び、壁面内の最も奥に位置する面を「裏側」と呼ぶ。
図1は、埋め込みコンセント1の断面を模式的に示す。
図1に例示するように、埋め込みコンセント1は、コンセント基板100と、計測部基板104と、制御部基板102とを有する。コンセント基板100、計測部基板104及び制御部基板102は、互いに略平行に離間して設置されている。具体的には、表側から、コンセント基板100、計測部基板104、制御部基板102の順に並んでおり、構造材(支柱など)によって固定されている。
【0020】
図2〜
図5は、埋め込みコンセント1の表側から裏側の各面における平面図である。
コンセント基板100の表側には、化粧パネル106が設けられ、コンセント基板100の裏側には、通信モジュール112と、表示部基板116とが設けられている。さらに、第1のコンセント108及び第2のコンセント110が、化粧パネル106及びコンセント基板100を貫通して、コンセント基板100に固定されている。第1のコンセント108は、供給電力の切断機能を有しないコンセントであり、第2のコンセント110は、供給電力の切断可能なコンセントである。第1のコンセント108及び第2のコンセント110には、外部結線120と、合体部品134(後述)とが接続される。
通信モジュール112は、アンテナを含み、無線通信により、計測結果を外部に送信したり、制御信号を外部から受信したりする。
表示部基板116には、発光部(LEDなど)が設けられており、埋め込みコンセント1の状態に応じて、発光する。例えば、表示部基板116は、第1のコンセント108の近傍に設置された発光部と、第2のコンセント110の近傍に設置された発光部とを有し、それぞれのコンセントの状態(電力供給の有無、又は、累積消費電力の多寡)に応じた色又はパターンで、それぞれの発光部を点灯させる。発光部からの発光は、例えば、コンセントの隙間から漏れることで、ユーザーに視認可能となる。
【0021】
計測部基板104の表側には、リレー118が設けられ、計測部基板104の裏側には、計測部136が設けられている。さらに、計測部基板104を貫通する合成部品134が、計測部基板104に固定されている。
リレー118は、第2のコンセント110に供給される電流をON/OFFするスイッチであり、外部からの制御信号に応じて、第2のコンセント110に供給される電流(すなわち、電力)を遮断する。リレー118は、計測部基板104から大きく突出するため、コンセント基板100と計測部基板104との間の空間のうち、第1のコンセント106と、第2のコンセント110との間に配置される。
【0022】
合体部品134は、構造材としての機能と、配電機能とを併せ持つ部品である。本例の合体部品134は、構造材としての機能及び配電機能に加えて、電流を計測する計測機能を有する。すなわち、合体部品134は、第1のコンセント108及び第2のコンセント110と、計測部基板104との間の支柱として機能することにより、コンセント基板100と、計測部基板104との間の空間を確保する。また、合体部品134は、第1のコンセント108及び第2のコンセント110と、計測部136との間の電流経路となる。さらには、合体部品134を流れる電流は、この合体部品134の内部に設けられたホール素子などによって計測され、計測結果が計測部136に出力される。
【0023】
制御基板102の表側には、通信モジュール112と、基板間接続部品126及び140とが設けられている。基板間接続部品140によって、制御基板102と計測部基板104とが電気的に接続される。
制御基板102の裏側には、制御部132と、電源回路138とが設けられている。制御基板102の裏側には、緩衝材128が設けられている。緩衝材128は絶縁物としての機能も有する。
【0024】
制御部132は、埋め込みコンセント1の全体を制御する。
【0025】
図6は、埋め込みコンセント1の製造方法を模式的に説明する図である。なお、本図の埋め込みコンセント1は、説明の便宜上、
図1〜5に例示するものと一部異なる。
図6に例示するように、コンセント108及び110の差込部や化粧パネル106は、既存の位置、構成及び固定方法とほぼ変わらない。
容積を既存の筐体に合わせた制御モジュールを組上げておき、構造的に頑強でかつ電力仕様を満たす主線(AC)を差し込むことで、構造的にも電気的にも固定する。
なお、固定方法としては、別途支持架などを追加してもよい。
【0026】
図7は、埋め込みコンセント1の設置方法を模式的に説明する図である。なお、本図の埋め込みコンセント1は、説明の便宜上、
図1〜5に例示するものと一部異なる。
一体化した埋め込みコンセント1は、既存の壁埋め込みパネルにはめ込む形で固定し、そのまま機能する。壁の中の電源ラインとは予め圧着端子などで結線する。従来の電気工事で用いる工法で配線することができる。
基板と筐体などの間に絶縁や防塵を助けるフィルムなどを設けてもよい。
【0027】
[外観]
次に、埋め込みコンセント1の外観を説明する。上記実施形態の埋め込みコンセント1は、電力管理機能を有しない従来の埋め込みコンセントと同様に、化粧パネルのみを露出して壁に埋め込まれる。
しかしながら、機能追加や仕様変更によって、全機能の詰め込みが困難である場合には、
図8(A)に例示するように、若干厚みを増した埋め込みコンセント12としてもよい。この場合の埋め込みコンセント12において、化粧パネル106から壁面までの間に、エプロン部150が設けられる。エプロン部150は、壁面から突出した埋め込みコンセント12の外周を構成する部材であり、例えば、このエプロン部150の内壁面に、無線通信に対応するためのアンテナを設置する。これにより、アンテナポールが露出しないというメリットを生む。
【0028】
また、
図8(B)に例示するように、4個口(コンセントが4つ)のサイズの埋め込みコンセント14に対して、2つのコンセント108及び110と、ユーザインタフェース部152と設けてもよい。この埋め込みコンセント14は、新設の家屋に対して電源以外の線(例えば、TVアンテナや電話線、LANケーブルなど)もまとめて取り回すための空間容積を若干量確保した設計となっている。また、ユーザインタフェース部152は、例えば、表示部、操作部及び通信機能の全部又は一部を有し、リレー118に対する操作(ON/OFFの指示)の受付や、状態の表示などを行う。
【0029】
また、
図9に例示するように、埋め込みコンセント16を、コンセント本体160と、制御装置170とで構成してもよい。すなわち、埋め込みコンセント1が有する機能構成を、コンセント本体160と、制御装置170とに分担させ、コンセント本体160及び制御装置170は、可撓性を有する回線を介して互いに接続する。
分離型の埋め込みコンセント16は、
図10(A)に例示するように、200V対応や20A以上など、上位の規格に対応するために余儀なくされる大型の諸部品を搭載可能となる。あるいは、
図10(B)に例示するように、コンセント本体160において、2個口よりも多くのコンセント(本例では、4個口)を監視するために、計測出口を増やし、さらに、全てのコンセントで電流の遮断ができるように複数のリレーを設けて、制御基板を制御装置170A及び制御装置170Bに割り振ってもよい。
【0030】
図9及び
図10に例示した分離型の埋め込みコンセント16は、壁面裏がフリースペースになっている建物に対して、容積の制約に縛られない機能を展開したり、低単価の部品を採用することで導入コストを抑えたりすることが期待できる。追加する機能の例としては、有線LAN対応、天井(規格化された照明器具取り付け部位など)対応などがある。また、コンセントがなく配電経路の電流のみ管理する既存スイッチ裏などの完全埋没型といった応用製品などが考えられる。
【0031】
図11は、埋め込みコンセント1の機能構成を例示する図である。
図11に例示するように、配電機構500は、圧着端子などでAC100V(15A)の電源を結線し分電する。配電機構500を構成する線(外部結線120)が太く、絶縁の要求も厳しい。本例の配電機構500は、従前の規格品に合致する配線工事が可能であり、結線が容易となる構成となっている。
保護回路502は、マイコン回路の保護や耐雷、あるいは防ノイズなど安全機構回路である。AC100Vラインなので各素子が大きい。
一次電源504は、AC電源をマイコン駆動電圧(DC)に変換する。リレー駆動回路に供給するため、従来の計測表示のみの回路よりも多くの電力を供給する必要があるいっぽうで、屋内家電機器に対し電源回路自身から漏出するノイズを低減する防護設計と、商用電源電圧に応じた絶縁距離を確保する耐圧設計が求められる。
制御部電源506は、微弱信号を計測するための電源である。同時に通信にも使用するため、ノイズ対策を要する。また、制御部電源506は、電力計測とネットワーク対応のために、時計機能と充電池を要する。さらにAC側との絶縁が必須なため容積が大きい。
中央制御部508は、マイコン、A/D変換、積算電力乗算器、通信制御を含むアナログ・デジタル回路であり、制御部132の内部に設けられる。
【0032】
通信部電源510は、通信モジュール112の電源で、特に有線回線の場合には高耐圧の絶縁を要する。
通信部512は、無線規格認証済の無線通信モジュールか、信号絶縁された有線通信モジュールを選択して搭載する。選択して結線できる分離機構を要する。また有線配線は外部通信線との接続が容易な端子を持つ。
表示部514は、表示部基板116に実現され、LEDなどで機器状態の表示を行なう。結線にコネクタや構造材などを要し、機能の割に容積を要する。
電力計測部516及び522は、合体部品134及び計測部136により実現され、合体部品134を通過するACの大電力を検知して測定する。機構、配線とも容量を要する。また合体部品134が構造物を兼ねるので、配線が単純になる機構とする必要がある。微弱信号を扱うので、内部ノイズ対策も必須である。
【0033】
リレー電源518は、コンセント回路(第2のコンセント110)を開閉する大容量リレー(リレー118)をON/OFFする接点駆動回路である。自身の消費電力が大きい。
開閉リレー520は、通過するACを任意の設定で開閉する大容量のリレー118である。
第1のコンセント108及び第2のコンセント110は、計測監視下におかれたAC電源出口であり、規格品の部品を採用する。部品は業界標準の規格品であるが、自身が絶縁などの諸機能を完結しているため、とくに大型部品である。