特許第5786196号(P5786196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5786196ダイナミック型氷蓄熱によるクールビズ対応空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786196
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】ダイナミック型氷蓄熱によるクールビズ対応空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   F24F5/00 101Z
   F24F5/00 102K
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-175915(P2010-175915)
(22)【出願日】2010年8月5日
(65)【公開番号】特開2012-37101(P2012-37101A)
(43)【公開日】2012年2月23日
【審査請求日】2013年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191319
【氏名又は名称】新菱冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】福井 雅英
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 佳洋
(72)【発明者】
【氏名】本間 博司
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−002162(JP,A)
【文献】 特開2000−310433(JP,A)
【文献】 特開平11−108526(JP,A)
【文献】 特開平11−294832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象室内に向けて外気を除湿処理した低温低湿空気を送給する潜熱処理ラインと、空調対象室から排出される発熱空気の暑い熱を冷却処理して涼しい空気を空調対象室へと送給する顕熱処理ラインとを備える空調システムであって、
ブライン冷凍機で過冷却状態にまで冷却された水を氷に変化させることにより、シャーベット状の氷を製氷して蓄熱するダイナミック型氷蓄熱槽と、
ヒートポンプチラーや冷温水発生器などの冷熱源機器と、
ファンと冷却除湿コイルとを含む外調機と、
ファンと冷却コイルとを含むファン付き冷却コイルユニットと、各種の配管設備及び制御機器とを包含し、
前記ダイナミック型氷蓄熱槽は、氷蓄熱槽の底部付近から0℃近傍の冷水を汲み上げる第1のポンプと、汲み上げた冷水の冷熱で前記外調機からの戻り低温水を冷却する熱交換器と、熱交換器で冷却された冷水を前記外調機へと送給する第2のポンプとを包含しており、
前記ファン付き冷却コイルユニットは空調対象室に隣接して配置され空調対象室へと冷気を送給しかつ空調対象室からの還気を受け入れるように配置されており、
前記外調機は前記ダイナミック型氷蓄熱槽からの低温冷水の供給を受けて外気を約9℃まで冷却除湿し、低温低湿空気を各フロアの低温低湿配管を通じて各フロアの前記ファン付き冷却コイルユニットへと送給することができ、
前記ファン付き冷却コイルユニットは、前記冷熱源機器からの低温冷媒の供給を冷媒配管を通じて受けると同時に前記外調機からの低温低湿空気の供給を受けて、空調対象室へと除湿されかつ冷却された空気を供給できるようになっており、前記ファン付き冷却コイルユニット内で処理された後の冷媒は冷媒配管を通じて冷熱源機器へと戻されることを特徴とするダイナミック型氷蓄熱によるクールビズ対応空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス空間における空調システムに関し、特に夏期冷房時にクールビズを実施した場合の不快感(蒸し暑さ)を改善することが可能な空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の防止という観点から、オフィス空間の空調システムにおいても夏期はクールビズを採用することが求められ、従来よりも高い室温に設定することが必要になってきた。一般に冷房は、「温度を下げる冷却」と「空気中の湿度を下げる除湿」により行われており、除湿と冷却は1つの空調機で処理されるのが普通である。空調機では、外気と還気を混合して冷水コイルを通過させることにより、最初に「冷却(顕熱処理)」が行われ、次に冷却と同時に空気中の水分を除去する「冷却除湿(潜熱処理)」が実行される。しかしながら、クールビズでは設定温度が高いため、冷却除湿が不充分なまま冷却が完了し、湿度が高くなって不快感が高まることになる。
【0003】
前述した顕熱処理と潜熱処理とを分離して実行する空調システムとして以下の空調システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−294832「空気調和装置」には、在室者1名当たりに必要な最小限度の外気量で在室者1名分の潜熱を打ち消すことができる以上の除湿能力を持つように取り入れ外気の露点を約7℃まで下げて室内へ供給し、室内では顕熱だけを冷却する空調装置が記載されている。その構成として、スタティック型の氷蓄熱槽を包含するチラーユニットでキャピラリーチューブを氷蓄熱用蒸発器に使用して直接冷媒ガスで製氷し、エネルギー消費効率の向上を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、夏期冷房時にクールビズを実施した場合の不快感(蒸し暑さ)を改善することが可能な空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空調対象室内に向けて外気を除湿処理した乾燥空気(以下、低温低湿空気という)を送給する潜熱処理ラインと、空調対象室から排出される発熱空気の暑い熱を冷却処理して涼しい空気を空調対象室へと送給する顕熱処理ラインとを備える空調システムであって、その基本構成として、ブライン冷凍機で過冷却状態にまで冷却された水を氷に変化させることにより、シャーベット状の氷を製氷して蓄熱するダイナミック型氷蓄熱槽と、ヒートポンプチラーや冷温水発生器などの冷熱源機器と、ヒートポンプチラーなどの冷熱源機器と、ファンと冷却除湿コイルとを含む外調機と、ファンと冷却コイルとを含むファン付き冷却コイルユニットと、各種の配管設備及び制御機器とを包含する。
【0007】
前記ダイナミック型氷蓄熱槽は、氷蓄熱槽の底部付近から0℃近傍の冷水を汲み上げる第1のポンプと、汲み上げた冷水の冷熱で前記外調機からの戻り低温水を冷却する熱交換器と、熱交換器で冷却された冷水を前記外調機へと送給する第2のポンプとを包含しており、前記ファン付き冷却コイルユニットは空調対象室に隣接して配置され空調対象室へと冷気を送給しかつ空調対象室からの還気を受け入れるように配置されており、前記外調機は前記ダイナミック型氷蓄熱槽からの低温冷水の供給を受けて外気を約9℃まで冷却除湿し、低温低湿空気を各フロアの低温低湿配管を通じて各フロアの前記ファン付き冷却コイルユニットへと送給することができる。
【0008】
これにより、前記ファン付き冷却コイルユニットは、前記冷熱源機器からの低温冷媒の供給を冷媒配管を通じて受けると同時に前記外調機からの低温低湿空気の供給を受けて、空調対象室へと除湿されかつ冷却された空気を供給できるようになっており、前記ファン付き冷却コイルユニット内で処理された後の冷媒は冷媒配管を通じて冷熱源機器へと戻される
【0009】
すなわち、本発明によるダイナミック型氷蓄熱によるクールビズ対応空調システムでは、外調機がダイナミック型氷蓄熱槽からの低温冷水の供給を受けて外気を約9℃まで冷却除湿し、低温低湿空気をファン付き冷却コイルユニットへと送給する配管が潜熱処理ラインを構成し、ファン付き冷却コイルユニットが冷熱源機器からの低温冷媒の供給を受けて空調対象室へと冷却された空気を供給する配管が顕熱処理ラインを構成しており、潜熱処理ラインと顕熱処理ラインとが合流することにより、ファン付き冷却コイルユニットから空調対象室へと除湿されかつ冷却された空気が供給されることになる。
【0010】
ダイナミック型氷蓄熱システムとしては、例えば特許第4514804号(特開2009−198105)に開示されているようなシステムを採用することができ、スタティック型の氷蓄熱システムに比べて解氷特性が優れ、外気の潜熱負荷変動に対し追従性が良いという利点がある。
【発明の効果】
【0011】
かかる構成に基づき、本発明による空調システムでは、クールビズに対応しつつ除湿された冷気を空調対象室へと送給できることになり、蒸し暑い不快感を感じることなく、快適なオフィス環境が実現できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による空調システムの概念を表す概略図。
図2】本発明による空調システムの冷房運転時を表す配管図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明による空調システムの概念を表しており、外気の湿気を取り除いた低温低湿空気を空調対象室10内に向けて送給する潜熱処理ラインAと、空調対象室10から排出される発熱空気の暑い熱を冷却処理して涼しい空気を空調対象室10へと送給する顕熱処理ラインBとを備える空調システムであり、除湿・冷却分離空調システムということもできる。
【0014】
図2は本発明による空調システムの冷房運転時を表す配管図である。本発明は基本的にクールビズが適用される夏期冷房時期に向けて設計されたシステムであり、その他の時期においては必要に応じて配管の接続方法を変えるなどの対策をとることができる。
【0015】
図2のシステムは、過冷却水からシャーベット状の氷を製氷して蓄熱するダイナミック型氷蓄熱槽20と、空冷式ヒートポンプチラーや冷温水発生機などの冷熱源機器12と、ファンと冷却除湿コイルとを含む外調機14と、ファンと冷却コイルとを含むファン付き冷却コイルユニット16と、各種の配管設備及び制御機器とを包含する。
【0016】
ダイナミック型氷蓄熱槽20は、図示しないブライン冷凍機で過冷却状態にまで冷却された水を氷に変化させることにより、シャーベット状の氷22が槽内に蓄積されている。このダイナミック型氷蓄熱槽20には、氷蓄熱槽の底部付近から0℃近傍の冷水を汲み上げる第1のポンプ40と、汲み上げた冷水の冷熱で外調機14からの戻り低温水(戻り配管30)を冷却する熱交換器42と、熱交換器42で冷却された冷水を外調機14へと(冷水配管28を通じて)送給する第2のポンプ44とが付設されている。
【0017】
ファン付き冷却コイルユニット(ドライコイルユニット)16は、空調対象室10に隣接して配置され、空調対象室10へと冷気(SA)を送給しかつ空調対象室からの還気(RA)を受け入れるように配置されている。
外調機14はダイナミック型氷蓄熱槽20からの低温冷水(冷水配管28を通じて供給される)の供給を受けて、外気を約9℃まで冷却除湿し、低温低湿空気配管18を通じて低温低湿空気をファン付き冷却コイルユニット16へと送給する。低温低湿空気は各フロア毎の低温低湿配管(ドライコイルダクトシャフト)18a,18b,18cを通じて各フロアのファン付き冷却コイルユニット16へと送給される。
【0018】
またファン付き冷却コイルユニット16は、冷熱源機器12からの低温冷媒(冷媒配管24を通じて)の供給を受けると同時に外調機14からの低温低湿空気の供給を受けて、空調対象室10へと除湿されかつ冷却された空気を供給できるようになっている。コイルユニット16内で処理された後の冷媒は冷媒配管26を通じて冷熱源機器12へと戻される。
【0019】
なお、図2のシステムでは床吹出し方式を採用しているが、配管の接続方法を変えることにより、天井吹出し方式にも本発明を適用することができる。
【0020】
かくして、本発明による空調システムでは、外気の湿気を取り除いた低温低湿空気を空調対象室10内に向けて送給する潜熱処理ラインAと、空調対象室10から排出される発熱空気の暑い熱を冷却処理して涼しい空気を空調対象室10へと送給する顕熱処理ラインBとが有機的に結合され、クールビズに対応した快適な除湿・冷却分離空調システムが実現できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上詳細に説明した如く、本発明による空調システムによれば、クールビズに対応しつつ除湿された冷気を空調対象室へと送給できることになり、蒸し暑い不快感を感じることなく、快適なオフィス環境が実現できるようになるなど、その技術的価値には極めて顕著なものがある。
【符号の説明】
【0022】
A 潜熱処理ライン B 顕熱処理ライン
10 空調対象室 12 冷熱源機器
14 外調機 16 コイルユニット
18 低温低湿空気配管 20 氷蓄熱槽
24,26 冷媒配管 28 冷水配管
40,44 ポンプ 42 熱交換器
図1
図2