(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786202
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】半導体モジュール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20150910BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20150910BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20150910BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20150910BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L33/00 400
H01L23/12 C
H01L21/56 J
H01L23/28 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-82566(P2011-82566)
(22)【出願日】2011年4月4日
(65)【公開番号】特開2012-221974(P2012-221974A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 努
【審査官】
小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−267545(JP,A)
【文献】
特開平04−065848(JP,A)
【文献】
特開2002−170857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 21/56
H01L 23/13
H01L 23/28
H01L 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子搭載領域及び該半導体素子搭載領域の外側の周囲領域を含む所定領域全体に亘って複数の通気孔を有する基板を準備する工程と、
前記通気孔の裏面側より吸引して前記基板の前記半導体素子搭載領域に半導体素子を吸着して仮固定する半導体素子仮固定工程と、
前記半導体素子を前記基板に仮固定した状態で、前記半導体素子と前記基板上に設けられた導電部との間に給電ワイヤを接合するワイヤボンディング工程と、
前記半導体素子を前記基板に仮固定した状態で、前記半導体素子及び前記給電ワイヤを被覆部材で封止すると共に、該封止により前記半導体素子と前記基板を本固定する封止兼半導体素子本固定工程と
を具備し、
前記封止兼半導体素子本固定工程において、前記被覆部材が前記周囲領域の上面側開口がある通気孔の上方の一部に充填される半導体モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記基板は多孔質基板を具備する請求項1に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記基板は、開口を有する第1の基板と、該第1の基板上に配置され、前記通気孔を有する多孔質基板からなる第2の基板とを含み、
前記第1の基板上に前記導電部が形成され、前記第2の基板上に前記半導体素子搭載領域が形成され、
前記開口上に前記半導体素子搭載領域が配置され、
前記半導体素子仮固定工程において、前記開口を介して、前記多孔質基板の裏面より吸引して前記半導体素子を吸着する請求項1に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記基板の通気孔のうち少なくとも前記半導体素子直下に存在する通気孔は前記基板上面に対して略垂直である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項5】
半導体素子搭載領域及び該半導体素子搭載領域の外側の周囲領域を含む所定領域全体に亘って形成された複数の通気孔を有する基板と、
前記基板上に形成された導電部と、
前記半導体素子搭載領域上に配置された半導体素子と、
前記半導体素子と前記導電部とを接続する給電ワイヤと、
前記半導体素子及び前記給電ワイヤを被覆する封止層と
を具備し、
前記半導体素子搭載領域において、前記基板と前記半導体素子の底面とが、直接接触しており、
前記封止層は前記周囲領域の上面側開口がある通気孔の上方の一部に充填している半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体モジュールたとえば光半導体モジュールとしての発光ダイオード(LED)モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光半導体モジュールの製造方法を
図7、
図8、
図9、
図10を参照して説明する。
【0003】
始めに、
図7の(A)の基板、リード端子及びキャビティ壁部組立工程を参照すると、エポキシ樹脂等よりなる基板1の上面、下面及び側面にたとえば銅等よりなるリード端子2−1、2−2を電解めっき法あるいは無電解めっき法により形成する。次いで、基板1の上面周囲に枠状のキャビティ壁部3を接着剤(図示せず)等を用いて装着する。
【0004】
次に、
図7の(B)の発光素子本固定工程を参照すると、組立てられた基板1の上面の発光素子5が固定される位置にエポキシあるいはシリコーンを主成分とする接着剤6を塗布する。次いで、発光素子5をコレット7を用いて基板1の接着剤6の位置に本固定する。尚、
図7の(B)の発光素子本固定工程において、基板1の真空ステージ4への吸引固定の代わりに、他の押え手段を用いてもよい。また、接着剤6の代わりに、金、銀等の半田を用いることもできる。
【0005】
次に、
図8の(A)の接着剤硬化工程を参照すると、発光素子5が本固定された基板1を加熱炉(図示せず)に移し、加熱して接着剤6を硬化させる。このとき、接着剤6から有機ガスが蒸発して基板1、リード端子2−1,2−2、発光素子5特にそのパッド(導電部)等の上に汚染物層6aが付着する。接着剤6の代わりに、半田を用いた場合にも、フラックスによる汚染物層が同様に付着する。
【0006】
次に、
図8の(B)の表面洗浄工程を参照すると、後述のワイヤボンディング工程に先立ち、基板1、リード端子2−1、2−2、発光素子5等の上に付着した汚染物層6aを除去する表面洗浄たとえばプラズマクリーニングを行い、後述のボンディングワイヤの接合強度の低下あるいは不接合を防止する。すなわち、
図8の(A)に示す光半導体モジュールをプラズマエッチング装置の真空チャンバ801内のホルダ802に搬入し、真空ポンプ803による真空排気後、プラズマ発生ガスたとえばアルゴンガスを供給すると共に、高周波電源804をオンする。尚、805は接地電極である。この結果、アルゴンプラズマにより汚染物層6aを除去できる。プラズマクリーニング工程については特許文献1を参照されたし。尚、プラズマクリーニングの代わりに、紫外線クリーニングを行うこともある。
【0007】
次に、
図9の(A)のワイヤボンディング工程を参照すると、発光素子5のパッドたとえばp側パッド5a及びn側パッド5bをボンディングワイヤ(給電ワイヤ)8−1,8−2によってリード端子2−1、2−2に接合する。このとき、表面洗浄工程において、基板1、発光素子5のp側パッド5a及びn側パッド5b、リード端子2−1,2−2の表面から汚染物層6aは既に除去されているので、ボンディングワイヤ8−1,8−2は良好に接合される。
【0008】
次に、
図9の(B)の樹脂封止工程を参照すると、エポキシ樹脂等を注入後硬化させて樹脂層9で封止する。尚、白色光を発光させる必要があるときには、樹脂層9にイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系酸化物等の蛍光体を含有させることもできる。
【0009】
最後に、
図10を参照すると、光半導体モジュール30が完成する。光半導体モジュール30においては、発光素子5の底面は接着剤6を介して基板1に接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−307819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の従来の光半導体モジュールの製造方法においては、発光素子本固定工程において接着剤6あるいは半田を用い、また、接着剤あるいは半田硬化工程において、汚染物層6aが付着されるので、表面洗浄工程を必要とし、この結果、製造コストの上昇を招くという課題がある。また、表面洗浄工程により基板1やキャビティ壁部3を始めとした各構成部材の変色あるいは劣化を招くという課題がある。さらに、汚染物層6aを除去するまでの強い洗浄を行えない場合もある。特に、プラズマクリーニングを用いた場合、発光素子5の致命的な破壊を招く場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために、本発明に係る光半導体モジュールの製造方法は、半導体素子搭載領域
及びこの半導体素子搭載領域の外側の周囲領域を含む所定領域全体に亘って複数の通気孔を有する基板を準備する工程と、通気孔の裏面側より吸引して基板の半導体素子搭載領域に半導体素子を吸着して仮固定する半導体素子仮固定工程と、半導体素子を基板に仮固定した状態で、半導体素子と基板上に設けられた導電部との間に給電ワイヤを接合するワイヤボンディング工程と、半導体素子を基板に仮固定した状態で、半導体素子及び給電ワイヤを被覆部材で封止すると共に、封止により半導体素子と基板を本固定する封止兼半導体素子本固定工程とを具備
し、封止兼半導体素子本固定工程において、被覆部材が周囲領域の上面側開口がある通気孔の上方の一部に充填されるものである。
【0013】
また、本発明に係る半導体モジュールは、半導体素子搭載領域
及びこの半導体素子搭載領域の外側の周囲領域を含む所定領域全体に亘って形成された
複数の通気孔を有する基板と、基板上に形成された導電部と、半導体素子搭載領域上に配置された半導体素子と、半導体素子と導電部とを接続する給電ワイヤと、半導体素子及び給電ワイヤを被覆する封止層とを具備し、半導体素子搭載領域において、基板と半導体素子の底面とが
直接接触し、封止層は周囲領域の上面側開口がある通気孔の上方の一部に充填しているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の接着層あるいは半田の硬化工程及びそれによる汚染物層の表面洗浄工程がないので、製造コストを低減できると共に、各構成部材の変色や劣化及び発光素子の破壊もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る光半導体モジュールの製造方法の第1の実施の形態を説明するための断面図である。
【
図2】本発明に係る光半導体モジュールの製造方法の第1の実施の形態を説明するための断面図である。
【
図3】
図1、
図2に示す光半導体モジュールの製造方法によって製造された光半導体モジュールを示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【
図4】本発明に係る光半導体モジュールの製造方法の第2の実施の形態を説明するための断面図である。
【
図5】本発明に係る光半導体モジュールの製造方法の第2の実施の形態を説明するための断面図である。
【
図6】
図4、
図5に示す光半導体モジュールの製造方法によって製造された光半導体モジュールを示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【
図7】従来の光半導体モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【
図8】従来の光半導体モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【
図9】従来の光半導体モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【
図10】
図7、
図8、
図9に示す光半導体モジュールの製造方法によって製造された光半導体モジュールを示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る光半導体モジュールの製造方法の第1の実施の形態を
図1、
図2、
図3を参照して説明する。
【0017】
始めに、
図1の(A)の基板、リード端子及びキャビティ壁部組立工程を参照すると、通気孔1’aを有する多孔質アルミナ等よりなる多孔質基板1’の上面、下面及び側面にたとえば銅等よりなるリード端子2−1、2−2を電解めっき法あるいは無電解めっき法により形成する。通気孔1’aは、多孔質基板1’の表面から裏面へ連続して形成された貫通孔である。次いで、多孔質基板1’の上面周囲に枠状のキャビティ壁部3を接着剤(図示せず)等を用いて装着する。本第1の実施の形態では、通気孔1’aが基板全体に亘り形成されている多孔質基板1’を用いたが、通気孔1’aは、少なくとも後述の発光素子5を搭載する予定の領域(以下、発光素子搭載領域)、すなわち少なくとも発光素子5直下に形成されていればよく、従って、通気孔が基板上に部分的に形成されているものを用いることができる。尚、後述の樹脂封止兼発光素子本固定工程において、樹脂が硬化前に発光素子下の通気孔1’aに流れ込んで発光素子5の吸引が阻害されないように、通気孔1’aのうち、発光素子搭載領域に上面側開口を有する通気孔と、発光素子搭載領域の外側に上面側開口を有する通気孔とは独立していることが好ましく、また、特に、少なくとも発光素子5直下の通気孔1’aは多孔質基板1’の上面に対して垂直となっていることが好ましい。
【0018】
次に、
図1の(B)の発光素子仮固定工程を参照すると、組立てられた多孔質基板1’を真空ステージ4上に載置し、真空ポンプ(図示せず)によって多孔質基板1’の裏面から吸引して固定する。次いで、発光素子5をコレット7を用いて多孔質基板1’の上面に載置する。この結果、発光素子5は多孔質基板1’の通気孔1’aを介して吸引されて多孔質基板1’に吸着され、仮固定される。
【0019】
次に、
図2の(A)のワイヤボンディング工程を参照すると、発光素子5を多孔質基板1’に仮固定したままで、発光素子5のパッドたとえばp側パッド5a及びn側パッド5bをボンディングワイヤ8−1,8−2によってリード端子2−1、2−2に接合する。このとき、多孔質基板1’、発光素子5のp側パッド5a及びn側パッド5b、リード端子2−1,2−2の表面は汚染されていないので、ボンディングワイヤ8−1,8−2は良好に接合される。従って、従来の発光素子本固定工程で用いられた接着剤6もしくは半田は用いられていないので、接着剤6もしくは半田による発光素子5のp側パッド5a及びn側パッド5b、リード端子2−1,2−2の汚染はない。この結果、従来の接着剤もしくは半田の加熱硬化工程及び表面洗浄工程は不要となる。
【0020】
次に、
図2の(B)の樹脂封止兼発光素子本固定工程を参照すると、発光素子5を多孔質基板1’に仮固定したままで、シリコーン樹脂等を注入及び硬化して樹脂層9で封止する。このとき、樹脂層9を構成する樹脂は真空ステージ4中に設けられたヒータ(図示せず)によって加熱されて硬化する。また、樹脂封止中も吸引による仮固定は継続するので、樹脂層9を形成するために注入する樹脂は高粘度のものあるいはフィラ入りものとし、基板1’の裏面への浸透を抑止する。注入樹脂は、通気孔1’aの上部にも充填されるが、多孔質基板1’の裏面まで回り込まないように粘度調整されることが好ましい。この結果、発光素子5は樹脂層9によって多孔質基板1’に本固定される。注入樹脂は、発光素子搭載領域に上面側開口がある通気孔には充填されないが、発光素子搭載領域の外側に上面側開口のある通気孔の上方の一部に充填されるため、樹脂層9は、発光素子搭載領域の外側に上面側開口のある通気孔の上方の一部まで及ぶ。このように、発光素子搭載領域の外側に上面側開口を有する通気孔1’aが形成されている場合、通気孔1’aに樹脂が充填されることにより、樹脂層9と多孔質基板1’との接着強度、発光素子5の多孔質基板1’との接合強度を高めることができる。尚、白色光を発光させる必要があるときには、樹脂層9にイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系酸化物等の蛍光体を含有させることもできる。
【0021】
最後に、
図3を参照すると、真空ポンプ(図示せず)による吸引動作を停止し、
図2の(B)に示す光半導体モジュールを真空ステージ4から取り出すと、光半導体モジュール10が完成する。光半導体モジュール10においては、発光素子5は、多孔質基板1’に封止樹脂により固定され、発光素子5の底面は、従来のように接着剤や半田を介さずに、多孔質基板1’に直接に接触している。また、多孔質基板1’の通気孔1’aのうち、発光素子搭載領域の外側に存在する通気孔1’aの上部は樹脂層9の一部が充填されている。
【0022】
このように、上述の第1の実施の形態によれば、発光素子5を多孔質基板1’に吸引による仮固定したまま、ボンディングワイヤ8−1,8−2を施し、発光素子5を多孔質基板1’に樹脂封止によって本固定しているので、従来方法における接着剤あるいは半田の硬化工程及びそれによる汚染物層の表面洗浄工程が不要となり、この結果、製造コストを低減できる。また、表面洗浄工程による各構成部材の変色や劣化及び発光素子5の破壊もない。
【0023】
本発明に係る光半導体モジュールの製造方法の第2の実施の形態を
図4、
図5、
図6を参照して説明する。
【0024】
始めに、
図4の(A)の基板、リード端子及びキャビティ壁部組立工程を参照すると、円孔(開孔)1A−0を有する基板1Aの上面、下面及び側面にたとえば銅等よりなるリード端子2−1、2−2を電解めっき法あるいは無電解めっき法により形成する。次いで、基板1Aの上面周囲に枠状のキャビティ壁部3を接着剤(図示せず)等を用いて装着する。
【0025】
次に、
図4の(B)の発光素子仮固定工程を参照すると、組立てられた基板1Aを真空ステージ4上に載置し、通気孔1B−0を有する多孔質アルミナ等よりなる多孔質基板1Bを真空ポンプ(図示せず)によって多孔質基板1Bの裏面から吸引して仮固定する。この場合、多孔質基板1Bは基板1Aの円孔1A−0より大きい。次いで、発光素子5をコレット7を用いて多孔質基板1Bの上面に載置する。この結果、発光素子5は多孔質基板1Bの通気孔1B−0を介して吸引されて多孔質基板1Bに吸着され、仮固定される。尚、多孔質基板1Bは予め基板1Aに接着剤によって固定しておくこともできる。また、後述の樹脂封止兼発光素子本固定工程において、樹脂が硬化前に発光素子5下の通気孔1B−0に流れ込んで発光素子5の吸引が阻害されないように、通気孔1B−0のうち、発光素子搭載領域に上面側開口を有する通気孔と、発光素子搭載領域の外側に上面側開口を有する通気孔とは独立していることが好ましく、また、特に、少なくとも発光素子5直下の通気孔1B−0は多孔質基板1Bの上面に対して垂直となっていることが好ましい。
【0026】
次に、
図5の(A)のワイヤボンディング工程を参照すると、発光素子5を多孔質基板1Bに仮固定したままで、発光素子5のパッドたとえばp側パッド5a及びn側パッド5bをボンディングワイヤ8−1,8−2によってリード端子2−1、2−2に接合する。このとき、多孔質基板1B、発光素子5のp側パッド5a及びn側パッド5b、リード端子2−1,2−2の表面は汚染されていないので、ボンディングワイヤ8−1,8−2は良好に接合される。従って、従来の発光素子本固定工程で用いられた接着剤6もしくは半田は用いられない。この結果、従来の接着剤もしくは半田の加熱硬化工程及び表面洗浄工程は不要となる。
【0027】
次に、
図5の(B)の樹脂封止兼発光素子本固定工程を参照すると、発光素子5を多孔質基板1Bに仮固定したままで、シリコーン樹脂等を注入後硬化させて樹脂層9で封止する。このとき、樹脂層9は真空ステージ4中に設けられたヒータ(図示せず)によって加熱されて硬化する。また、樹脂封止中も吸引による仮固定は継続するので、樹脂層9は高粘度のものあるいはフィラ入りものとし、多孔質基板1Bの裏面への浸透を抑止する。注入樹脂は、通気孔1B−0の上部にも充填されるが、基板1Aの裏面まで回り込まないように粘度調整されることが好ましい。この結果、発光素子5は樹脂層9によって多孔質基板1Bに本固定される。注入樹脂は、発光素子搭載領域に上面側開口がある通気孔には充填されないが、発光素子搭載領域の外側に上面側開口のある通気孔の上方の一部に充填されるため、樹脂層9は、発光素子搭載領域の外側に上面側開口のある通気孔の上方の一部まで及ぶ。このように、発光素子搭載領域の外側に上面側開口を有する通気孔1B−0が形成されている場合、通気孔1B−0に樹脂が充填されることにより、樹脂層9と多孔質基板1Bとの接着強度、発光素子5の多孔質基板1Bとの接合強度を高めることができる。尚、この場合も、白色光を発光させる必要があるときには、樹脂層9にイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系酸化物等の蛍光体を含有させることもできる。また、本第2の実施の形態においても、基板1A、多孔質基板1B、ボンディングワイヤ8−1、8−2、及び発光素子5を封止する被覆部材として樹脂を用いたが、本発明は、樹脂に限るものではなく、ガラスなどの他の透光性部材を用いることができる。
【0028】
最後に、
図6を参照すると、真空ポンプ(図示せず)による吸引動作を停止し、
図5の(B)に示す光半導体モジュールを真空ステージ4から取り出すと、光半導体モジュール20が完成する。光半導体モジュール20においては、発光素子5は多孔質基板1Bに封止樹脂により固定され、多孔質基板1Bは基板1Aに封止樹脂により固定されており、発光素子5の底面は、従来のように接着剤や半田を介さずに、多孔質基板1Bに直接に接触している。また、多孔質基板1Bの通気孔1B−0のうち、発光素子搭載領域の外側に存在する通気孔1B−0の上部は樹脂層9の一部が充填されている。
【0029】
このように、上述の第2の実施の形態においても、発光素子5を多孔質基板1Bに吸引による仮固定したまま、ボンディングワイヤ8−1,8−2を施し、発光素子5を多孔質基板1Bに樹脂封止によって本固定しているので、従来方法における接着剤あるいは半田の硬化工程及びそれによる汚染物層の表面洗浄工程が不要となり、この結果、製造コストを低減できる。また、表面洗浄工程による発光素子5の変色及び劣化もない。さらに、基板1Aに円孔1A−0を設けるが、多孔質基板1Bを設けた分、大きい基板1Aは多孔質である必要はないので、リード端子2−1、2−2の形成が第1の実施の形態の多孔質基板1’上と比較して容易となる、等により、製造コストをさらに低減できる。
【0030】
次に、多孔質基板1’の通気孔1’a及び多孔質基板1Bの通気孔1B−0の形成方法について説明する。尚、本発明においては、通気孔の形成方法は、以下の形成方法に限られるものではない。
【0031】
通気孔の一形成方法として、複数の粒子径のアルミナ粒子を組合わせたアルミナ焼結体を用いることができる。たとえば、平均粒子径が2〜5μmの粗粒アルミナ粒子と、平均粒子径が1μm以下の微粒アルミナ粒子とを所定比で充分に混合し、加圧して成型し、高温たとえば1700℃かつ大気雰囲気で焼結する。この結果、直径2μm以下の通気孔を有するアルミナ焼結体が多孔質基板1’もしくは多孔質基板1Bとして形成される。
【0032】
通気孔の他の形成方法として、アルミニウム基板表面を陽極酸化して多数の窪みを有する陽極酸化皮膜を形成し、酸あるいはアルカリを用いて陽極酸化皮膜を部分的に溶解させ、さらに窪みを陽極酸化して窪みを深さ方向に成長させて通気孔としての貫通孔を形成する。
【0033】
尚、空気を利用した吸引の場合、多孔質基板1’の通気孔1’a及び多孔質基板1Bの通気孔1B−0の直径は数10nm〜数100nmが好ましく、LED素子等の発光素子を吸引する場合には、光漏れの程度、吸引力に応じて、上記直径は0.1〜0.2μmが好ましい。また、多孔質基板1’及び多孔質基板1Bの平坦度、突孔率についても、LED素子等の発光素子の大きさ、吸引力、求める強度に応じて、適宜選択される。
【0034】
また、上述の多孔質基板1’及び多孔質基板1Bの形状は円形、矩形等に適宜変更され得る。
【0035】
上述の第1、第2の実施の形態では、通気孔が基板全体に亘り形成されている多孔質基板を用いたが、通気孔は、少なくとも発光素子搭載領域に形成されていればよく、基板上に部分的に形成されているものを用いることができる。また、発光素子搭載領域の外側には、樹脂層との接着強度を向上するための表面凹凸構造(基板を貫通するもの、貫通しないものも含む)を形成することもできる。
【0036】
さらに、上述の第1、第2の実施の形態は光半導体モジュールに関するものであるが、本発明は光半導体モジュール以外の半導体モジュールにも適用できる。この場合には、発光素子5は半導体素子となる。
【0037】
上述の第1、第2の実施の形態では、半導体素子等を封止する被覆部材として、樹脂を用い、封止層として樹脂層を形成したが、上述のごとく、本発明における被覆部材は、樹脂に限定されるものではなく、ガラスなどの他の被覆部材を用いることができ、封止層としてガラス層などを形成することができる。被覆部材は、半導体素子が受光素子あるいは発光素子である場合には、透光性部材であればよい。
【符号の説明】
【0038】
1:基板
1’:多孔質基板
1’a:通気孔
1A:基板
1A−0:円孔
1B:多孔質基板
1B−0:通気孔
2−1,2−2:リード端子
3:キャビティ壁部
4:真空ステージ
5:発光素子
6:接着剤
6a:汚染物層
7:コレット
8−1,8−2:ボンディングワイヤ
9:樹脂層
10、20、30:光半導体モジュール
801:真空チャンバ
802:ホルダ
803:真空ポンプ
804:高周波電源
805:接地電極