(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の方向は、前記第1の方向に対して直交する方向であり、前記第3の方向は、前記第1の方向と前記第2の方向のそれぞれに対して45度傾斜した方向であることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法。
前記検査光を導入する面は、前記ガラス基板の4つの端面のいずれかの端面であり、前記ガラス基板を撮影する面は、前記ガラス基板の2つの主表面のいずれかの主表面であることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法。
前記第2の方向は、前記第1の方向に対して直交する方向であり、前記第3の方向は、前記第1の方向と前記第2の方向のそれぞれに対して45度傾斜した方向であることを特徴とする請求項8に記載のマスクブランクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CCDカメラで内部欠陥から発生する蛍光の発生部形状を撮像する場合、内部欠陥がどこに存在しているかは予め判明しておらず、また、CCDカメラ等の画素数は限られているので、ガラス基板の主表面全体を低倍率で一度に撮像する方法か、ガラス基板の主表面を複数領域に分割して高倍率で撮像する方法のいずれかを用いる必要がある。ところが、低倍率でガラス基板の主表面全体を一度に撮像する場合、内部欠陥から発する蛍光の光量が基本的に小さいので、全体に対する内部欠陥の相対的な蛍光領域および蛍光量が非常に小さくなり内部欠陥を検出できない場合がある。従って、一般的に複数領域に分割して高倍率で撮像する方法が用いられる。
【0008】
また、撮像した画像を画像解析装置で解析して内部欠陥を検出する際には、画像に写っている内部欠陥のなるべく正確な形状を認識する必要がある。しかし、内部欠陥に混入した蛍光を発生させる不純物は、密度が高く集中して混入している場合ばかりでなく、密度が低く拡散して混入している場合がある。その場合の内部欠陥の領域は、ぼやけたモヤ状の画像となる。また、密度が高く混入した不純物についても、その蛍光の発光箇所に撮像した画像のフォーカスが合っていない場合には、その内部欠陥の領域は、ぼやけたモヤ状の画像となる。
【0009】
内部欠陥の形状を認識するには、従来から、検出された各処理対象画素と隣接する画素との光量差を細かく微分処理(近接差分の微分処理)し、所定値のスライスレベル(しきい値)以上の差のある画素を判別することで内部欠陥のエッジを求め、内部欠陥の領域を認識している。しかし、内部欠陥から発する蛍光の光量が基本的に少ないことから近接差分の微分処理による光量差は非常に少なく、また、撮像した画像が上記したぼやけたモヤ状の欠陥画像である場合もある。そのため、特許文献1に記載の発明を用いてガラス基板の内部欠陥を検査する場合、近接差分の微分処理による光量差では、内部欠陥のエッジを認識できず、内部欠陥を検出できない場合があった。
【0010】
また、ガラス基板の内部欠陥の存在箇所は、基板の表層に限らず内部にも存在し得ることに加え、画像解析のためのカメラの焦点深度は所定範囲に限られている。従って、内部欠陥の形状を把握するために近接差分の微分処理を行う際には、焦点深度の範囲に応じて、基板の厚さ方向に数段階に階層的に分割し、階層毎にフォーカスを合わせて撮像する必要があった。そのため、特許文献1に記載の発明を用いてガラス基板の内部欠陥を検査する場合、ガラス基板の主表面を複数領域に分割した上に、数段階に分けて各々フォーカスを合わせて撮像することになり、ガラス基板の検査の処理速度を悪化させてしまう場合があった。
【0011】
従って、本発明の目的は、上記の問題を解決するために、ガラス基板の内部欠陥を検査する場合に検査の処理速度を改善し、蛍光の発光箇所が隣接領域との光量差が少ないぼやけたモヤ状の欠陥画像の場合でも内部欠陥のエッジを検出して内部欠陥の検出精度を高めたマスクブランク用ガラス基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係るマスクブランク用ガラス基板の製造方法の一態様では、2つの主表面と4つの端面を有するガラス基板を準備する基板準備工程と、いずれかの面から波長200nm以下の検査光を前記ガラス基板内に導入して内部欠陥を検出する欠陥検査工程とを有するマスクブランク用ガラス基板の製造方法であって、前記欠陥検査工程は、いずれかの面から前記ガラス基板を撮影し、当該撮影画像に対して遠隔差分により光量差を求める処理を含む画像処理を行うことで、前記検査光によって、前記ガラス基板の内部欠陥から発生する蛍光の有無を判定し、前記蛍光が無いと判定されたガラス基板を選定することを特徴とする。
【0013】
上記した本態様では、撮像した画像を解析する際の処理に、従来の近接差分をとる微分処理ではなく、遠隔差分をとる処理を採用する。従来の近接差分の微分処理では、撮像した画像の隣接する画素間の光量差を算出していたのに対して、本態様の遠隔差分をとる処理では、第1の処理対象画素と、その第1の処理対象画素に対して所定画素だけ離れた第2の画素との間の光量差を求める。一般的に撮像した画像における内部欠陥の領域、すなわち蛍光の発光箇所は複数の画素に跨り、蛍光の発光箇所のエッジも複数の画素に跨り段階的に減光する。
【0014】
従って、そのようなエッジ部における一つの処理対象画素に対して所定画素だけ離れた画素との間の光量差を求める遠隔差分をとる処理では、マスクブランク用ガラス基板の蛍光発光箇所に対物レンズのフォーカスが合っていない場合でも、あるいは、例え隣接する各画素間の近接差分の微分結果の光量差が少ない場合でも、それら隣接する各画素間の近接差分の微分結果の光量差を合計した光量差となり、離れた画素までの画素数に対応して光量差が増加する。これにより、本態様では、撮像した画像面内の光量分布の従来の近接差分の微分を用いた画像解析では、検出困難であった蛍光の発光箇所のエッジ部を検出しやすくなり、画像面内の光量分布のピークも検出しやすくなるので、内部欠陥の領域を特定しやすくできる。
【0015】
(2)本発明に係るマスクブランク用ガラス基板の製造方法のその他の手段では、前記画像処理は、前記撮影画像の処理対象画素と、該画素とは隣接しない画素との間の光量差を算出することで、撮像画像の光量分布を作成する処理であることを特徴とする。
本手段では、光量差を算出する2画素を、撮影画像の処理対象画素と、その画素とは隣接しない画素とし、撮像画像の光量分布を作成することで、隣接画素間での光量差を算出して光量分布を作成する場合と比べて光量差が大きくなるので、蛍光の発光箇所のエッジ部を検出しやすくなり、画像面内の光量分布のピークも検出しやすくなるので、内部欠陥の領域を特定しやすくできる。
【0016】
(3)本発明に係るマスクブランク用ガラス基板の製造方法のその他の手段では、前記画像処理は、前記撮影画像の処理対象画素から20画素以上離れた画素との光量差を算出することで、撮像画像の光量分布を作成する処理であることを特徴とする。
本手段では、光量差を算出する2画素を、撮影画像の処理対象画素と、その画素から20画素以上離れた画素とし、撮像画像の光量分布を作成することで、隣接画素間での光量差を算出して光量分布を作成する場合と比べて明確に光量差が大きくなるので、蛍光の発光箇所のエッジ部を検出しやすくなり、画像面内の光量分布のピークも検出しやすくなるので、内部欠陥の領域を特定しやすくできる。
【0017】
(4)本発明に係るマスクブランク用ガラス基板の製造方法のその他の手段では、前記検査光を導入する面は、前記ガラス基板の4つの端面のいずれかの端面であり、前記ガラス基板を撮影する面は、前記ガラス基板の2つの主表面のいずれかの主表面であることを特徴とする。
本手段では、ガラス基板の端面から検査光を導入し、主表面から撮影することで、ガラス基板の厚み方向が限定されるため、作動距離の短い高倍率の撮像が可能となる。そのため、微小な内部欠陥に起因する蛍光の受光量を増やすことができ、検出しやすくできる。
【0018】
(5)本発明に係るマスクブランク用ガラス基板の製造方法のその他の手段では、前記検査光を導入する面と、前記ガラス基板を撮影する面は、鏡面に研磨されていることを特徴とする。
本手段では、マスクブランク用ガラス基板における検査光を導入する面(例えば、いずれかの端面)と撮影する面(例えば、いずれかの主表面)を鏡面に研磨することで、それらの境界面における検査光及び蛍光の散乱を抑制することができる。
【0019】
(6)本発明に係るマスクブランクの製造方法は、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法で製造されたマスクブランク用ガラス基板の主表面に、パターン形成用薄膜を形成する工程を有することを特徴とする。
本手段では、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法で製造されたマスクブランク用ガラス基板の主表面上にパターン形成用薄膜を形成してマスクブランクを製造するので、マスクブランク用ガラス基板に波長200nm以下のレーザー光でのみ発現する内部欠陥がなく、高品質のマスクブランクを提供できる。また、波長200nm以下のレーザー光を検査光に用いてマスクを検査する場合に歩留まりを悪化させることがない。
【0020】
(7)本発明に係る転写用マスクの製造方法は、上記(6)に記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクの前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする。
本手段では、上記(6)に記載のマスクブランクを用いるので、波長200nm以下のレーザー光を検査光に用いて転写パターンを検査する場合に歩留まりを悪化させることがない。
【0021】
(8)本発明に係る半導体デバイスの製造方法は、上記(7)に記載の転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする。
本手段では、上記(7)に記載の転写用マスクを用いるので、波長200nm以下のレーザー光を露光光に用いて半導体ウェハ上に回路パターンを形成する場合に歩留まりを悪化させることがない。
【0022】
(9)本発明に係るマスクブランクの製造方法は、2つの主表面と4つの端面を有するガラス基板の一方の主表面にパターン形成用薄膜を備えたマスクブランクを準備するマスクブランク準備工程と、いずれかの面から波長200nm以下の検査光を前記ガラス基板内に導入して内部欠陥を検出する欠陥検査工程とを有するマスクブランクの製造方法であって、前記欠陥検査工程は、パターン形成用薄膜が形成されている面以外のいずれかの面から前記ガラス基板を撮影し、当該撮影画像に対して遠隔差分により光量差を求める処理を含む画像処理を行うことで、前記検査光によって前記ガラス基板の内部欠陥から発生する蛍光の有無を判定し、前記蛍光が無いと判定されたマスクブランクを選定することを特徴とする。
【0023】
本手段では、マスクブランクを検査する際に、パターン形成用薄膜が形成されていない側の主表面から前記ガラス基板を撮影し、その撮影画像に対して遠隔差分により光量差を求めて蛍光の有無を判定し、マスクブランクを選定するので、主表面にパターン形成用薄膜を備えたマスクブランクについても、波長200nm以下のレーザー光でのみ発現するモヤ状の内部欠陥を検査で発見することができる。また、波長200nm以下のレーザー光を検査光に用いてマスクを検査する場合に歩留まりを悪化させることがない。
【0024】
(10)本発明に係るマスクブランクの製造方法のその他の手段は、前記画像処理は、前記撮影画像の処理対象画素と、該画素とは隣接しない画素との間の光量差を算出することで、撮像画像の光量分布を作成する処理であることを特徴とする。
【0025】
本手段では、光量差を算出する2画素を、撮影画像の処理対象画素と、その画素とは隣接しない画素とし、撮像画像の光量分布を作成することで、隣接画素間での光量差を算出して光量分布を作成する場合と比べて光量差が大きくなるので、蛍光の発光箇所のエッジ部を検出しやすくなり、画像面内の光量分布のピークも検出しやすくなるので、内部欠陥の領域を特定しやすくできる。
【0026】
(11)本発明に係るマスクブランクの製造方法のその他の手段は、前記画像処理は、前記撮影画像の処理対象画素から20画素以上離れた画素との光量差を算出することで、撮像画像の光量分布を作成する処理であることを特徴とする。
本手段では、光量差を算出する2画素を、撮影画像の処理対象画素と、その画素から20画素以上離れた画素とし、撮像画像の光量分布を作成することで、隣接画素間での光量差を算出して光量分布を作成する場合と比べて明確に光量差が大きくなるので、蛍光の発光箇所のエッジ部を検出しやすくなり、画像面内の光量分布のピークも検出しやすくなるので、内部欠陥の領域を特定しやすくできる。
【0027】
(12)本発明に係る転写用マスクの製造方法は、上記(9)〜(11)のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクの前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする。
本手段では、上記(9)〜(11)のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクを用いるので、波長200nm以下のレーザー光を検査光に用いてパターン形成用薄膜の転写パターンを検査する場合に歩留まりを悪化させることがない。
【0028】
(13)本発明に係る半導体デバイスの製造方法は、上記(12)に記載の転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする。
本手段では、上記(12)に記載の転写用マスクを用いるので、波長200nm以下のレーザー光を露光光に用いて半導体ウェハ上に回路パターンを形成する場合でも歩留まりを向上させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の製造方法によれば、ガラス基板の内部欠陥を検査する場合に検査の処理速度を改善でき、当該領域と隣接する領域との光量差が少ない場合及び蛍光の発光箇所にフォーカスが合っていないぼやけたモヤ状の欠陥画像の場合でも内部欠陥のエッジを検出して内部欠陥の検出精度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の合成石英ガラス基板内の欠陥検査を実施するマスクブランク用ガラス基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、および半導体デバイスの製造方法についての実施の形態を説明する前に、
図1に基づき、各工程の概要について簡単に一例を示す。尚、以下の説明では、露光光及び検査光を、露光波長及び検査光波長が200nm以下のArFエキシマレーザー光25(波長:193nm、パルスレーザー)とする。
【0032】
<<転写用マスクの製造方法>>
転写用マスクは、例えば、以下のように透光性の合成石英ガラス基板が、マスクブランク用ガラス基板、マスクブランクとなるように加工され、そのマスクブランク上の薄膜に、フォトリソグラフィ技術により転写パターンを形成して製造される。
【0033】
<基板準備工程> 透光性の合成石英ガラスインゴットから、
図1(a)に示す合成石英ガラス基板4が切り出されて製造される。合成石英ガラス基板4の寸法は、たとえば、約152mm×約152mm×約6.5mm、又は、約152.4mm×約152.4mm×約6.85mmである。合成石英ガラス基板4の上下の表面が、主表面5及び6であり、後工程において、薄膜パターン13を形成するため薄膜(遮光膜)8が形成される。また、合成石英ガラス基板4の上下の主表面5及び6と、直交する各側面2、3、18、19(
図2参照)との間に面取り加工が施されて面取り面(
図3の52及び53)形成される。
【0034】
次に、合成石英ガラス基板4の各側面2、3、18、19のうち、少なくとも1つの端面(例えば、
図3の端面51)は、露光波長の光でもある検査光(ArFエキシマレーザー光25)を導入できる程度に鏡面になるように研磨される。また、内部欠陥から発せられる蛍光を検出するためにカメラで撮影される面についても、鏡面に研磨される。検査光を導入する面は、4つの端面および2つの主表面のいずれでもよい。いずれかの端面から検査光を導入する構成であると、導入された検査光が到達する基板の内部領域が広いため、検査光の光源を移動するステップ数が少なくできて好ましい。一方、いずれかの主表面から検査光を導入する構成であると、後述のとおり、いずれかの端面から検査光を導入した場合に面取り面によって検査光が到達しない領域が生じることを考慮する必要がなくなる。また、内部欠陥から発せられる蛍光をカメラで撮影する面も、4つの端面および2つの主表面のいずれでもよいが、いずれかの主表面から撮影した方が撮影した画像の鮮明度が高いため好ましい。なお、検査光がカメラに入射することで、カメラが破損するようなことがないように、検査光の光源とカメラの配置を調整したり、カメラと撮像する面との間に、検査光の波長をカットするが、内部欠陥から発せられる蛍光は透過する波長フィルタを設けるなどの対策を講じた装置構成も好ましい。
【0035】
内部欠陥を検出する欠陥検査工程を行う目的のみを考慮するのであれば、合成石英ガラス基板4の前記の2つの面を鏡面に研磨すればよい。しかし、欠陥検査工程で内部欠陥が存在しないものとして選定された合成石英ガラス基板4を、マスクブランク用基板7として適用可能とするには、主表面5、6、各端面および各面取り面の全てを鏡面に研磨する必要がある。欠陥検査工程の前に、鏡面研磨されていなかった3つの端面を鏡面研磨する際、既に鏡面研磨されている端面の表面が荒らされる恐れがあるため、結局4つの端面全てを鏡面研磨することになる。また、カメラで撮影される面をいずれかの主表面とする場合、片方の主表面のみを高い平坦度であり、かつ鏡面に研磨することは困難であり、両方の主表面を同時に研磨する必要がある。さらに、欠陥検査の検出精度を考慮すると、内部欠陥から発せられる蛍光を検出するためにカメラで撮影される面は、いずれかの主表面とすることが望ましい。これらのことから、欠陥検査工程前に、2つの主表面5、6、各端面および各面取り面を全て鏡面に研磨することが望ましい。合成石英ガラス基板4の主表面5及び6の表面粗さRa(算術平均粗さ)を約0.5nm以下とし、端面2、3及び各面取り面の表面粗さRa(算術平均粗さ)を約0.03μm以下とする。また、主表面5、6の表面粗さは、自乗平均平方根粗さ(Rq)で0.2nm以下が好ましい。
【0036】
<欠陥検査工程>
合成石英ガラス基板4に対して転写精度に問題が生じる恐れのある内部欠陥(光学的不均一領域)を検出する欠陥検査を
図2(a)〜(c)で示した装置により行ない、内部欠陥が検出されなかった基板を選定し、マスクブランク用ガラス基板7(
図1(b)参照)を得る。なお、先の基板準備工程で、欠陥検査を行う合成石英ガラス基板4に鏡面に研磨されていない主表面、端面及び面取り面が存在する場合においては、内部欠陥が検出されなかったものとして選定された合成石英ガラス基板4に対し、主表面に対する精密研磨や超精密研磨や端面等の鏡面研磨を行って、マスクブランク用ガラス基板7を得る。
【0037】
一般に、合成石英ガラスからなるマスクブランク用基板7のArFエキシマレーザー光に対する理論透過率は100%(実際には表面反射等の影響があるため、実効透過率は91%程度)である。上記したような露光光を吸収する内部欠陥が局所的に存在すると、露光光の透過光量が大きく低下する。そのため、転写用マスク14のパターン形成用薄膜の透光部上に内部欠陥が存在すると、合成石英ガラス基板4に入射した露光光の透過光量が内部欠陥で大きく低下し、透光部から出射される露光光の光量も大きく低下する。その結果、露光転写先のウェハ上等に付加されたレジスト膜10上の感光部分の露光量が不足し、露光転写不良を発生させる。このため、転写用マスク14に使用される合成石英ガラス基板4には、そのような露光光の低下を発生させる内部欠陥が無いものを使用する必要があり、内部欠陥が存在しない合成石英ガラス基板4を選定する欠陥検査が行われる。
【0038】
<マスクブランク9形成工程>
前記の欠陥検査工程で、内部欠陥がないと判定されたマスクブランク用ガラス基板7の主表面5にパターン形成用の薄膜(遮光膜)8を形成し、
図1(c)に示すマスクブランク9とする。薄膜(遮光膜)8は、例えばクロム、遷移金属シリサイド、又はタンタルを主成分とする材料などをスパッタリング(DCスパッタ、RFスパッタ、イオンビームスパッタ等)することにより形成する。
【0039】
<レジスト膜10形成工程>
マスクブランク9のパターン形成用の薄膜8の表面に、フォトレジスト液をスピン塗布した後、乾燥処理してレジスト膜10を形成し、
図1(d)に示すレジスト膜付きマスクブランク11とする。
【0040】
<レジストパターン12形成工程>
レジスト膜付きマスクブランク11のレジスト膜に対し、所定の転写パターンを電子線描画・露光し、その後、露光されたレジスト膜10に対して所定の露光後ベーク処理、現像処理、洗浄処理等を行なって、
図1(e)に示すようにレジストパターン12を形成する。
【0041】
<レジストパターン12形成工程>
形成されたレジストパターン12をマスクにしてドライエッチングを行ない、マスクで覆われていない領域の薄膜8を除去し、
図1(f)に示すようにレジストパターン12の下に薄膜パターン13を形成する。
【0042】
<転写用マスク14形成工程>
上部のレジストパターン12を除去して、所定の洗浄処理を行い、マスクブランク用ガラス基板7上に薄膜パターン13が形成された
図1(g)に示す転写用マスク14を得る。
【0043】
本発明に係るマスクブランク用ガラス基板7の製造方法、マスクブランク9の製造方法、転写用マスク14の製造方法、および半導体デバイスの製造方法では、基板欠陥検査により、転写精度に問題が生じる恐れがある内部欠陥のないマスクブランク9用基板を選定できる。従って、それを用いて作製した転写用マスク14でウェハ上のレジスト膜10に転写パターンの露光転写を行うことができ、動作不良欠陥のない高品質の半導体デバイスを製造することができる。
【0044】
<本実施形態の内部欠陥(光学的不均一領域)を検出する欠陥検査>
本実施形態の内部欠陥検査装置20は、空気中に汚染物質の無い環境に設置される必要があるため、
図2(a)に示すようにクリーンルーム41内に設置されることが望ましい。これにより、マスクブランク9の製造時に大気(雰囲気)中に汚染物質が無い環境にでき、特に本実施形態における合成石英ガラス基板4の周辺の雰囲気から汚染物質を排除できる。合成石英ガラス基板4の表面(特に主表面5及び6)にレーザー光を吸収し発熱する原因物質が付着すると、本実施形態のように検査工程で合成石英ガラス基板4の端面へArFエキシマレーザー光25を導入した場合、原因物質の発熱により合成石英ガラス基板4にダメージを生じさせる場合があるが、クリーンルーム41内で製造することで、そのようなダメージを無くすことができる。
【0045】
クリーンルーム41は、フィルタ室42の内部に形成される。クリーンルーム41の内部空間Aとフィルタ室42とを区画する一方側の隔壁45の上下方向の略中央位置にフィルタ(例えば活性炭を使用したケミカルフィルタ44)が設置される。クリーンルーム41の隔壁45に対向する壁面には例えば格子形状の対向壁46が設けられる。フィルタ室42の底部とクリーンルーム41の間には空気流通路47が形成される。クリーンルーム41の外側でフィルタ室42の底部にはファン43が設けられている。
【0046】
ファン43により空気流が発生して、フィルタ室42の空気は隔壁45のケミカルフィルタ44を通過してクリーンルーム41の内部空間Aに入る。内部空間Aに入った空気は、対向壁46を通過して、クリーンルーム41底部の空気流通路47を通り、フィルタ室42に戻されて循環する。クリーンルーム41の内部空間Aは、空気がケミカルフィルタ44を通過して流入するので、汚染物質等の合成石英ガラス基板4に付着する原因物質が除去され、清浄な空気の雰囲気となって循環する。
【0047】
クリーンルーム41内で内部欠陥の検査をすることで、内部空間Aにおいて汚染物質が除去され、合成石英ガラス基板4の表面、特に鏡面研磨された主表面5及び6に汚染物質が付着したり、堆積した付着物や堆積物が高エネルギーの光であるArFエキシマレーザー光25を吸収して加熱され、合成石英ガラス基板4の表面を局所的に高温状態としてその表面にダメージを与える不具合を回避することができる。
【0048】
クリーンルーム41の内部空間A内には、後述する内部欠陥検査装置20の一部であるレーザー照射装置21、XYZステージ22及びCCDカメラ23、XYZステージ22に載置された被検査体としての合成石英ガラス基板4が収容される。
【0049】
内部欠陥検査装置20は、レーザー照射装置21、XYZステージ22、CCDカメラ23、コンピュータ27とを有し、内部欠陥16(パターン転写時に局部的な光学特性の変化を生じさせる光学的不均一領域)を感知または検出する。
【0050】
<内部欠陥検査装置20の構成>
レーザー照射装置21は、露光波長の光(つまり、露光波長と同一波長の光)であるArFエキシマレーザー光25を合成石英ガラス基板4の一方の端面51から導入する光導入手段である。レーザー照射装置21は、XYZステージ22が合成石英ガラス基板4をY方向に移動させている間に、ArFエキシマレーザー光25を合成石英ガラス基板4の端面51におけるY方向(つまり端面51の長手方向)の各位置から順次導入する。なお、合成石英ガラス基板4の側面2には、
図3(a)、(b)に記載したように、主表面5または6に直交する端面51と、この端面51と主表面5、6との間の面取り面52及び53とが設けられている。側面2の幅Wは、端面51の幅W1、面取り面52の幅W2、及び、面取り面53の幅W3の和であり、例えばW=6.35mmである。
【0051】
面取り面52および53は端面51に対して大きく傾斜した面であるため平行光のArFエキシマレーザー光を端面51に対して垂直に当てても、面取り面52および53からはArFエキシマレーザー光を基板内部に導入させることはできない。すなわち、合成石英ガラス基板4の厚さ方向の面取り面52および53の部分の基板内部に対して内部欠陥の検査ができないことになる。通常の入射の仕方ではArFエキシマレーザー光が導入できない基板内部領域にArFエキシマレーザー光が当たるようにするには、例えば、特開2010−160450に示すように、平行光のArFエキシマレーザー光をシリンドリカルで所定の発散角度の発散光にしてから端面51から基板内部に導入する方法や、特開2010−175655に示すように、ArFエキシマレーザー光を端面51の法線方向から主表面5、6のいずれかに傾けた方向で、端面51から基板内部に導入する方法などを適用するとよい。このレーザー照射装置21は、光源として、ビーム断面形状が7.0mm×4.0mm、1パルス当たりのエネルギーが6mJ、単位面積あたりのエネルギーが21.4mJ/cm
2、波長λ
1(193nm)、周波数が1000HzのパルスレーザーであるArFエキシマレーザー光25を使用するものであり、複数枚のシリンドリカルレンズを組み合わせた構成となっている。これにより、ArFエキシマレーザー光25は、最適な発散角度、最適なビーム断面形状に調整されて、この側面2の端面51に対し垂直に導入される。
【0052】
XYZステージ22は、
図2(b)に示したように合成石英ガラス基板4を載置し、載置された合成石英ガラス基板4を、レーザー照射装置21から発せられるレーザー光に対してX方向、Y方向、Z方向にそれぞれ移動させることができる。
【0053】
CCDカメラ23は、
図2(b)、(c)に示すように、XYZステージ22に載置された合成石英ガラス基板4の主表面5側に設置され、CCD素子とこのCCD素子に撮像対象物からの蛍光15を入力させる対物レンズ61とを備え、
図3(c)に示すように合成石英ガラス基板4の一部領域91〜99の何れか一つを検出可能な検出視野24を有する受光手段である。検出視野24は、XYZステージ22により合成石英ガラス基板4上を一部領域91〜96に沿って幅方向(つまり、レーザー照射装置21から照射されるレーザー光の照射方向)に横方向走査され、その後、端面51の幅方向とは直角方向に、次の横方向走査のために、一部領域99の段まで縦方向走査される。CCDカメラ23は、ArFエキシマレーザー光25(波長λ
1:193nm)によって合成石英ガラス基板4の内部欠陥16等が発した波長λ
1よりも長い波長の蛍光15及び17を、合成石英ガラス基板4のY方向の各位置で、合成石英ガラス基板4の主表面5側から受光する。
【0054】
なお、本実施の形態のCCDカメラ23はカラー画像を取得可能なカメラであり、蛍光15及び17の明暗を三原色に分割して受光する。蛍光15及び17は、対物レンズ61により集光され、分光プリズム62により3つに分けられて、各々R(赤)のCCDイメージセンサ63、G(緑)のCCDイメージセンサ64、B(青)のCCDイメージセンサ65に入射する。各CCDイメージセンサ63〜65の出力は信号処理回路66で増幅、A/D変換、合成等が実施されて画像信号になりコンピュータ27に出力される。また、対物レンズ61は、合成石英ガラス基板4の厚み方向にフォーカスを合わせる機能を有している。
【0055】
CCDイメージセンサ63〜65は、不図示の受光面に結像させた像の蛍光の明暗を電荷の量に光電変換し、信号処理回路66でそれを順次読み出して電気信号に変換し、制御装置であるコンピュータ27へ送信する。なお、本実施形態に係るCCDカメラ23では、受光素子をCCDイメージセンサとしたが、本発明はそれに限られるものではなく、フォトレジスタ(photoresistor)をはじめとするその他の任意の光センサを用いることができる。
【0056】
コンピュータ27は、内部欠陥検査装置20全体を制御すると共に、CCDカメラ23にUSBケーブル26を用いて接続され、入力した画像信号から内部欠陥を検出する検出手段でもある。コンピュータ27は、CCDカメラ23から入力した画像信号を記憶回路72に記憶する。その際には、例えば、画像の各画素の輝度値(光量値)を表示画像における各画素の並びと同様となるように蛍光の輝度分布画像データをチャート化して記憶する。その後コンピュータ27は、記憶した画像信号を後述する
図5(a)、(b)に示したような所定のしきい値と比較し、輝度がしきい値のラインを上回るX座標の領域を検出し、その領域を合成石英ガラス基板4の内部欠陥16の領域と判定する。なお、
図5(a)、(b)の横軸は、X方向(
図2(b)参照)の座標を示し、縦軸に輝度を示す。
【0057】
なお、従来の方法で内部欠陥の領域判定をする場合、コンピュータ27は、画素選択部73により、記憶された各画素の値から一つを選択し、さらに例えば、その画素の隣の画素と、上の画素と、斜め上の画素の値も選択し、それらの隣接画素間の値に差を用いて微分回路74で微分(近接差分)して光量の差を得ていた。CCDで取得した画像や、近接差分して得られた値のデータやグラフ等は、液晶画面等のディスプレイ77に出力される。制御回路71は、コンピュータ27内の各部を制御すると共に、レーザー照射装置21の出力と、XYZステージ22の動作を制御するためのステージ制御部81を制御する。
【0058】
コンピュータ27によるステージ制御部81の制御方法としては、例えば、合成石英ガラス基板4の一部領域91〜99の各画像を順に取得するようにXYZステージ22を制御する。そして、一部領域91〜99の何れか一つの各位置においてCCDカメラ23が受光する蛍光15及び17の光量(輝度)を、合成石英ガラス基板4のX方向位置との関係で解析する。その際にコンピュータ27は、蛍光15及び17の光量が所定しきい値以上の局所的な光量を有するかを判断し、蛍光15が所定しきい値以上の局部的な光量であるなら、その蛍光15の領域を内部欠陥16と判断して、この内部欠陥16の位置(合成石英ガラス基板4におけるX方向及びY方向の位置)を特定することで検出する。
【0059】
<内部欠陥検査装置20の動作>
以上のような内部欠陥検査装置20の構成で、上記したようなコンピュータ27による制御により、合成石英ガラス基板4中にArFエキシマレーザー光25が導入されると、合成石英ガラス基板4中に内部欠陥(光学的な不均一性)16が存在する場合、その内部欠陥16からは、ArFエキシマレーザー光25よりも長い波長の蛍光15が、合成石英ガラス基板4の主表面5から放出される。一方、合成石英ガラス基板4の内部欠陥16以外の領域からも、ArFエキシマレーザー光25の波長よりも長い波長の蛍光17が、合成石英ガラス基板4の主表面5から放出されるが、その量は蛍光15のように多くなく、例えばこれが蛍光15を検出する際のノイズレベルとなる。この蛍光15及び17をCCDカメラ23で受光し、コンピュータ27でこの受光した蛍光15及び17の光量(輝度)の相違に基づき、内部欠陥16を検出する。
【0060】
<内部欠陥16:光学的不均一領域について>
内部欠陥16は、マスクブランク用ガラス基板7にArFエキシマレーザー光25を導入したときに、欠陥となる局所に局部的な光学特性の変化を引き起こす。内部欠陥16は、ArFエキシマレーザー光25の波長よりも長い波長の蛍光15を発する。
【0061】
合成石英ガラス基板4に存在する内部欠陥16(光学的不均一領域)のうち、露光波長が200nm超の露光光源(例えば、KrFエキシマレーザー(露光波長:248nm))の場合には問題とならないが、ArFエキシマレーザー光25(露光波長:193.4nm)のように露光波長が200nm以下の露光光源の場合に問題となる内部欠陥16がある。
【0062】
これらの内部欠陥16は、合成石英ガラス基板4からマスクブランク用ガラス基板7及びマスクブランク9を経て製造された転写用マスク14と、露光波長が200nm以下の上記露光光とを用いて、当該転写用マスク14の薄膜パターン13を被転写体に転写するパターン転写時に、いずれも局所又は局部的な光学特性の変化(例えば透過率の低下や位相差の変化)を生じさせ、パターン転写に悪影響を及ぼして転写精度を低下させるものとなる。そして最終的には、上記内部欠陥16が原因で、被転写体(例えば、半導体装置)の転写パターン欠陥(半導体装置においては、回路パターン欠陥)となる。
【0063】
それらの内部欠陥16は、「局所脈理」、「内容物」、「異質物」等によって発生する。「局所脈理」は、合成石英ガラスの合成時に金属元素が合成石英ガラス中に微量に混入された領域である。転写用マスク14のマスクブランク用ガラス基板7に当該局所脈理が存在すると、パターン転写時に約10〜30%の透過率低下が生じ、転写精度を低下させ、最終的には転写パターン欠陥となる。また、「内容物」は、金属元素が合成石英ガラス中に、局所脈理の場合よりも多く混入された領域である。転写用マスク14のマスクブランク用ガラス基板7に当該内容物が存在すると、パターン転写時に約30〜80%の透過率低下が生じ、転写精度を低下させ、最終的には転写パターン欠陥となる。
【0064】
「異質物」は、合成石英ガラス中に酸素が過剰に混入された酸素過剰領域であり、高エネルギーの光が照射された後は回復しない。転写用マスク14のマスクブランク用ガラス基板7に異質物が存在すると、パターン転写時に約5〜15%の透過率の低下が生じ、転写精度を低下させ、最終的には転写パターン欠陥となる。
【0065】
パターン転写の際、転写パターン欠陥となる局部的で光学的な不均一性である内部欠陥16は、「局所脈理」、「内容物」、「異質物」に限られるものではない。内部欠陥16としては、検査光や露光光である200nm以下の波長を有する光をマスクブランク用ガラス基板7に導入したとき、基板内部で局所又は局部的に発する蛍光による損出が8%/cmを超える光学的な不均一性の部分とするとよい。従って、内部欠陥の検査工程では、マスクブランク用ガラス基板7内部の光の損失が8%/cm以下であるマスクブランク用ガラス基板7を選定すると良い。特に、位相シフトマスク用に使われるマスクブランク用ガラス基板7の場合は、マスクブランク用ガラス基板7内部の光の損失が3%以下であるものを検査工程で選定すると良い。
【0066】
内部欠陥16が発する蛍光15の波長としては、200nm超600nm以下であり、この蛍光15の色としては、紫(波長400〜435nm)、青(波長435〜480nm)、緑青(480〜490nm)、青緑(490〜500nm)、緑(500〜560nm)、黄緑(500〜580nm)、黄(580〜595nm)等が挙げられる。
【0067】
<内部欠陥16が高密度異物による場合>
混入異物による光学的不均一領域は、大きく分けて2種類に分類できる。その一つの種類が、
図4(a)、
図5(a)に示したように合成石英ガラス基板4内に高密度で混入異物が比較的小さな欠陥領域101に集中した状態の内部欠陥16aとして存在する場合である。その場合、ArFエキシマレーザー光25を合成石英ガラス基板4に導入すると、内部欠陥16aの欠陥領域101からは
図5(a)に示すように、所定しきい値よりも極端に多い局所的な光量の蛍光15aが発せられる。なお、
図5(a)の横軸は合成石英ガラス基板4におけるX方向の画素位置を示し、縦軸は蛍光15a及び17の輝度を示す。この場合の発光領域151と、合成石英ガラス基板4の発光領域151以外の領域からの蛍光17との光量差は、蛍光15aの光量が所定しきい値よりも大きくなる程度が大きいことから光量差も大きくなる。
【0068】
コンピュータ27は、蛍光15a及び17に基づく画像信号を微分回路74等により画像処理して蛍光15aの隣接画素毎の光量差により発光領域151の外周端部を求めて、蛍光15aの発生部形状を解析すると共に、蛍光15aを発生する発光領域151の位置を検出し、且つ、その位置に欠陥領域101(光学的不均一領域:内部欠陥16a)が存在することを検出する。そしてコンピュータ27は、更に発光領域151内の局部的な光量が所定しきい値以上であることを検出し、内部欠陥16aが高密度異物による光学的不均一領域であることを判断する。この場合の微分回路74における演算では、発光領域151内の局部的な光量が所定しきい値よりも非常に大きいことから、発光領域151の外周端部における画素毎の光量差も大きくなるので、隣同士の画素間の輝度値を微分(近接差分)した場合に、充分な光量差(変化率)を得ることができる。従って、蛍光による内部欠陥16aの特定、及び、光学的不均一領域の検出は容易である。
【0069】
<内部欠陥16が低密度異物による場合>
混入異物による光学的不均一領域のもう一種類が、
図4(b)、
図5(b)に示したように合成石英ガラス基板4内に低密度で混入異物が比較的大きな欠陥領域102に拡散した状態の内部欠陥16bとして存在する場合である。その場合、ArFエキシマレーザー光25を合成石英ガラス基板4に導入すると、内部欠陥16bの欠陥領域102からは
図5(b)に示すように、所定しきい値よりも少しだけ多い局所的な光量の蛍光15bが発せられる。なお、
図5(b)の横軸は合成石英ガラス基板4におけるX方向の画素位置を示し、縦軸は蛍光15b及び17の輝度を示す。この場合の発光領域152と、合成石英ガラス基板4の発光領域152以外の領域からの蛍光17との光量差は、蛍光15bの光量が所定しきい値よりも大きくなる程度が小さいことから光量差も小さくなる。
【0070】
コンピュータ27は、蛍光15b及び17に基づく画像信号を微分回路74等により画像処理して蛍光15bの隣接画素毎の光量差(例えば、
図5(b)の画素間隔D1の両端に位置する画素の各光量の差)により発光領域152の外周端部を求めて、蛍光15bの発生部形状を解析すると共に、蛍光15bを発生する発光領域152の位置を検出する。これによりコンピュータ27は、その位置に欠陥領域102(光学的不均一領域:内部欠陥16b)が存在することを検出できる。そしてコンピュータ27は、更に発光領域152内の局部的な光量が所定しきい値以上であることから、内部欠陥16bが低密度異物による光学的不均一領域であると判断する。この場合の微分回路74における演算では、発光領域152内の局部的な光量が所定しきい値よりも大きいがその差は小さいことから、発光領域152の外周端部における画素毎の光量差も小さくなる。従って、隣同士の画素間の輝度値を微分(近接差分)した場合に、光量差(変化率)も小さくなる。このため、蛍光による内部欠陥16bの特定、及び、光学的不均一領域の検出は、上記した蛍光15aの発光領域151と比較して容易ではない。
【0071】
さらに、上記したように本実施の形態のCCDカメラ23はカラーカメラであり、蛍光15bの明暗が三原色に分割して受光されることから、例えば黄色又は橙色のような三原色の中間色である場合、その蛍光を蛍光15cとすると、その蛍光15cの輝度は、
図5(b)に示したようにしきい値よりも低いレベルに低下する場合がある。これは、例えば、蛍光15cが黄色とすると、R(赤)のCCDセンサ63と、G(緑)のCCDセンサ64に分割受光され、各々のセンサで光が各色にフィルタリング、及び光電変換され、さらにA/D変換されてから合成されて画像信号として出力される際に、各段階の処理において損失が発生しているためである。従って、合成信号の黄色の画像信号の出力レベルは、例えば三原色の青色で同じ条件の画像信号の出力レベルよりも低くなり、発光領域の外周端部における画素毎の光量差も小さくなり、隣同士の画素間の輝度値を微分(近接差分)した場合に、光量差(変化率)が小さくなる場合がある。
【0072】
また、混入異物による光学的不均一領域が蛍光15aのように高密度で混入異物が比較的小さな欠陥領域101に集中した状態の内部欠陥16aとして存在する場合であっても、その内部欠陥16aに対物レンズ61のピントが合っておらず、対物レンズ61の被写界深度のスペックにも入っていない場合、CCDカメラ23から出力される画像信号は、ピントが合っていないことから、蛍光15cと同様に発光領域の外周端部における画素毎の光量差も小さくなり、隣同士の画素間の輝度値を微分(近接差分)した場合に、光量差(変化率)が小さくなる場合がある。
【0073】
<本実施形態の特徴>
本実施形態では、従来は検出が不可能であるか難しかった内部欠陥に対する欠陥検査に特に適している。例えば、(a)CCDカメラ23で取得された内部欠陥から発する蛍光を含んだ画像が、低密度異物の内部欠陥から発している蛍光であることに起因し、発光領域の外周端部における画素毎の光量差が小さいモヤ状の欠陥画像になっている場合、(b)CCDカメラ23で取得された内部欠陥から発する蛍光を含んだ画像が、高密度異物の内部欠陥から発する蛍光ではあるが、その内部欠陥が存在する深度が対物レンズ61の被写界深度のスペック外にあるため像がぼやけ、発光領域の外周端部における画素毎の光量差が小さいモヤ状の欠陥画像になっている場合、(c)CCDカメラ23から内部欠陥から発する蛍光を含んだ画像が、カラーCCDで取得されたカラー画像であり、蛍光が黄色や橙色のような三原色の中間色であり、発光領域の外周端部における画素毎の光量差が比較的小さい欠陥画像である場合、などが挙げられる。これらの欠陥画像の場合、蛍光15cの発光領域を検出することは、従来と同様に隣同士の画素間の輝度値を微分(近接差分)しても、光量差が少ないため困難である。そこで、本実施形態では、隣同士の画素間の輝度値で差分をとる(近接差分)するのではなく、
図5(b)及び
図6のD40で示したように、例えば、一つの画素に対して40画素程度離れた画素との間で輝度値の差分をとる(遠隔差分をとる)ようにした。また、その際には、
図6に示したように、X軸に沿う横方向に40画素離れた画素と、Z軸に沿う縦方向に40画素離れた画素と、さらにX軸とZ軸の双方に対して45度の斜め方向に40画素離れた画素の各3画素との間で輝度値の差分(遠隔差分)をとり、その差の最大値を求めることとした。
【0074】
この遠隔差分をとる処理を行う際、差分をとる対象(光量差を取る比較対象)となる画素は、処理対象画素に対して少なくとも20画素以上離すことが必要である。また、蛍光が黄色や橙色のような三原色の中間色であり、画素間の光量差が比較的小さい場合における検出精度も考慮すると、30画素以上離すことが好ましく、40画素以上離すと様々な種類の蛍光を高精度に検出できて最適である。
このように低密度異物か対物レンズの被写界深度のスペック外で青色の蛍光15cをカラーカメラで検出する場合でも、本実施形態の20画素以上離れた画素間で輝度値の遠隔差分をとることにより、しきい値以上の光量差(変化率)を得ることができる。
【0075】
以上のように本実施形態のマスクブランク用ガラス基板7の製造方法では、基板を準備する工程で、2つの主表面と4つの端面を有する合成石英ガラス基板4を準備し、欠陥を検査する工程で、いずれかの面から波長200nm以下の検査光を合成石英ガラス基板4内に導入し、内部欠陥を検出している。そして欠陥を検査する工程は、いずれかの面から合成石英ガラス基板4を撮影し、その撮影画像に対する画像処理を行う際に、遠隔差分により光量差を求める処理を行っている。この検査光が欠陥に吸収されて発生する蛍光の遠隔差分による光量差により、合成石英ガラス基板4の内部欠陥から発生する蛍光を判別する。この発生した蛍光の判別を蛍光領域の端部に対して実施し、蛍光領域の範囲を検出し、それを内部欠陥の領域と認識することで、内部欠陥の有無を判定する。そして、そのような蛍光が無い、すなわち蛍光領域(=内部欠陥領域)が無いと判定された合成石英ガラス基板4を選定する。
【0076】
上記したように内部欠陥には点状とモヤ状があり、点状の場合には、撮像した画像を解析する際の処理に、従来の近接差分の微分処理を用いても検出可能であるが、モヤ状の場合(特に黄色又は橙色系の蛍光をカラーのカメラで撮像する場合)には、検出画像のモヤ状内部欠陥の輝度が検出しきい値以下になることがある。その場合、従来の近接差分の微分処理では検出できない場合がある。そのため本実施形態のマスクブランク用ガラス基板の製造方法では、遠隔差分による処理を採用する。つまり、本実施形態の遠隔差分による処理では、第1の処理対象画素と、その第1の処理対象画素に対して所定画素だけ離れた第2の画素との間の光量差を求める。一般的に蛍光の発光箇所のエッジは複数の画素に跨り段階的に減光するので、遠隔差分による処理により、検出される画素間の光量差を大きくすることができる。
【0077】
また、マスクブランク用ガラス基板7中の蛍光発光箇所に対物レンズのフォーカスが合っておらず、被写界深度のスペックから外れている場合、例え内部欠陥が点状であっても、内部欠陥のエッジがぼやけて不明確になることがある。この場合も、隣接する各画素間の近接差分の微分結果の光量差が少なくなり、モヤ状の内部欠陥の場合と同様に、従来の近接差分の微分処理では検出が難しくなる。これに対して、被写界深度のスペック内となるように、フォーカシングを基板の厚み方向に複数段階に分けて撮像することも考えられるが、段階を増やす毎に検査工数が倍増するため現実的ではない。また、特に内部欠陥が存在することで問題が大きくなるのは、薄膜が形成される主表面に近い範囲であるので、フォーカシングは主表面に近い範囲に固定されることが多く、被写界深度のスペックから外れた内部欠陥はぼやけて撮像される。従って、そのようなぼやけた撮像画像に対しても本実施形態の遠隔差分の処理を用いることで、従来は検出困難であった蛍光の発光箇所のエッジ部を検出しやすくなり、画像面内の光量分布のピークも検出しやすくなるので、内部欠陥の領域を特定しやすくできる。
【0078】
また、本実施形態のマスクブランク用ガラス基板7の製造方法における内部欠陥検査装置20に載置されるマスクブランク用ガラス基板7は、合成石英ガラス基板4の4つの端面のうちの検査光を導入する端面と、合成石英ガラス基板4を撮影する側の主表面が鏡面に研磨されている。マスクブランク用ガラス基板7の検査光を導入する端面が鏡面に研磨されていない場合、その端面では検査光が散乱し、合成石英ガラス基板4内部に導入される検査光量が減少する。端面を鏡面に研磨した場合、合成石英ガラス基板4内部に導入される検査光量は増加する。一方、マスクブランク用ガラス基板7の蛍光が放出される主表面が鏡面に研磨されていない場合、その主表面では蛍光が散乱し、合成石英ガラス基板4から放出される検査光量が減少する。主表面を鏡面に研磨した場合、合成石英ガラス基板4から放出される蛍光量は増加する。本実施形態では、マスクブランク用ガラス基板7における検査光を導入する端面と撮影する主表面を鏡面に研磨することで、それらの境界面における検査光及び蛍光の散乱を抑制している。
【0079】
また、本実施形態のマスクブランク9の製造方法では、上記した本実施形態のマスクブランク用ガラス基板7の少なくとも一方の主表面に、パターン形成用薄膜を形成している。本実施形態のマスクブランク用ガラス基板7は、上記検査で波長200nm以下のレーザー光でのみ発現するモヤ状の内部欠陥を発見し、そのような内部欠陥の無いマスクブランク用ガラス基板7である。従って、それの主表面にパターン形成用薄膜を形成した本実施形態のマスクブランク9は、波長200nm以下のレーザー光を検査光に用いてマスクを検査しても、モヤ状の内部欠陥により歩留まりを悪化させることがない。
【0080】
また、本実施形態の転写用マスク14は、上記した本実施形態のマスクブランク9のパターン形成用薄膜に転写パターンを形成する。本実施形態のマスクブランク9は、上記したように波長200nm以下のレーザー光でのみ発現するモヤ状の内部欠陥の無いものである。従って、波長200nm以下のレーザー光を検査光に用いて転写パターンの検査をする場合に歩留まりを悪化させることがない。
【0081】
また、本実施形態の半導体デバイスの製造方法では、上記した本実施形態の転写用マスク14を用いて半導体ウェハ上に回路パターンを形成する。本実施形態の転写用マスク14は、上記したように波長200nm以下のレーザー光でのみ発現するモヤ状の内部欠陥の無いものである。従って、波長200nm以下のレーザー光を露光光に用いて半導体ウェハ上に回路パターンを形成する場合に歩留まりを悪化させることがない。
【0082】
なお、本実施形態では、
図1(c)に示すように、合成石英ガラス基板4に対して、本実施形態の内部欠陥(光学的不均一領域)を検出する欠陥検査を行ない、内部欠陥が検出されなかった基板をマスクブランク用ガラス基板7として選定しているが、これに限られるものではない。例えば、一方の主表面にパターン形成用薄膜を備えたマスクブランク9に対して内部欠陥を検出する欠陥検査を行なうようにしてもよい。その場合をマスクブランク9の他の製造方法として以下に示す。
【0083】
本実施形態のマスクブランク9の他の製造方法では、マスクブランク9準備工程で、2つの主表面と4つの端面を有する合成石英ガラス基板4の一方の主表面にパターン形成用薄膜を備えたマスクブランク9を準備する。そして欠陥検査工程で、いずれかの面(例えば、いずれかの端面)から波長200nm以下の検査光を合成石英ガラス基板4内に導入して内部欠陥を検出する。そして欠陥を検査する工程は、パターン形成用薄膜が形成されている面以外のいずれかの面(例えば、パターン形成用薄膜が形成されていない側の主表面)から合成石英ガラス基板4を撮影し、その撮影画像に対する画像処理を行う際に、遠隔差分により光量差を求める処理を行っている。この検査光が欠陥に吸収されて発生する蛍光に対して遠隔差分による光量差を求める処理を行うことにより、合成石英ガラス基板4の内部欠陥から発生する蛍光を判別する。この発生した蛍光の判別を蛍光領域の端部に対して実施し、蛍光領域の範囲を検出し、それを内部欠陥の領域と認識することで、内部欠陥の有無を判定する。そして、そのような蛍光が無い、すなわち蛍光領域(=内部欠陥領域)が無いと判定されたマスクブランク9を選定する。
【0084】
また、本実施形態のマスクブランク9の他の製造方法では、マスクブランク9を検査する際に、パターン形成用薄膜が形成されていない側の主表面から合成石英ガラス基板4を撮影する。そして、その撮影画像に対して遠隔差分により光量差を求めて蛍光の有無を判定することで、マスクブランク9を選定する。従って、本実施形態のマスクブランク9の製造方法では、主表面にパターン形成用薄膜を備えたマスクブランク9についても、波長200nm以下のレーザー光でのみ発現するモヤ状の内部欠陥を検査で発見することができ、波長200nm以下のレーザー光を検査光に用いてマスクを検査する場合でも歩留まりを悪化させることがない。その他の点については上記した実施形態の場合と同様である。
【0085】
<実施例1〜4、比較例1,2>
2つの主表面と4つの端面がそれぞれ精密研磨された合成石英ガラス基板4(152.1mm×152.1mm×6.35mm)を準備した。この合成石英ガラス基板4は、基板の内部に青色の蛍光を発する内部欠陥を有するものであり、CCDカメラで撮影した画像がモヤ状の蛍光画像になることが予め確認されているものである。この合成石英ガラス基板4を、前記の
図2等に示した内部欠陥検査装置20のXYZステージ22に設置し、レーザー照射装置21により、ArFエキシマレーザー光を端面51から基板内部に導入し、前記の青色の蛍光を発する内部欠陥16bが存在する部分に照射した。そして、ArFエキシマレーザー光の照射を受けることによって、内部欠陥16bから発生した蛍光15bをカラーCCDカメラ23(CCD画素数:2048×2048,高学倍率:0.7倍)で撮影し、蛍光画像を取得した。取得した画像は、青色でモヤ状の蛍光(内部欠陥)を含んだ画像であった。
【0086】
この青色モヤ状の蛍光画像に対し、本発明の遠隔差分によって光量差を求める処理を行った。具体的には、まず、蛍光画像の各画素の赤の輝度値(
図7〜
図9の折れ線「R」)、緑の輝度値(
図7〜
図9の折れ線「G」)、青の各輝度の輝度値(
図7〜
図9の折れ線「B」)を加算した合計輝度値(
図7〜
図9の折れ線「ALL」)を算出した。次に、各画素の合計輝度値を用い、処理対象画素から20画素離れた画素との光量差(<実施例1>
図7の折れ線「dif20」)、処理対象画素から30画素離れた画素との光量差(<実施例2>
図7の折れ線「dif30」)、処理対象画素から40画素離れた画素との光量差(<実施例3>
図8の折れ線「dif40」)、処理対象画素から50画素離れた画素との光量差(<実施例4>
図8の折れ線「dif50」)、をそれぞれ算出した。また、比較例として、各画素の合計輝度値を用い、処理対象画素の隣の画素との光量差(近接差分による微分、<比較例1>
図9の折れ線「dif1」)、処理対象画素から10画素離れた画素との光量差(<比較例2>
図9の折れ線「dif10」)、もそれぞれ算出した。なお、
図7〜
図9のグラフの縦軸は輝度であり、横軸は画像の画素番号である。
【0087】
次に、各実施例および比較例で求めた光量差を用い、蛍光の有無の判定をおこなった。蛍光の有無を判定する基準値である光量差(輝度)の閾値は、5とした。その結果、処理対象画素から20画素以上離れた画素との間で光量差を求めた場合には、青色のモヤ状の蛍光画像をコンピュータで認識することができていた。これに対し、比較例1のような従来の近接差分の微分で光量差を求めた場合は、青色のモヤ状の蛍光画像をコンピュータで認識することができなかった。また、比較例2の処理対象画素から10画素離れた画素との間で光量差を求めた場合では、光量差が5の画素がごく一部あるが、コンピュータでの認識の再現性が低く、10画素程度の遠隔差分では、実用に適さないことがわかった。
【0088】
これらの結果を基に、マスクブランク用基板、マスクブランク、および転写用マスクを製造した。2つの主表面と4つの端面がそれぞれ精密研磨された合成石英ガラス基板4を50枚×4セット準備(
図1(a))し、実施例1〜4と同様に内部欠陥検査装置20で処理対象画素から20画素(実施例1)、30画素(実施例2)、40画素(実施例3)、50画素(実施例4)だけ離れた画素との間で求めた光量差を用い、内部欠陥の有無を判定する欠陥検査工程を行い、蛍光がないと判定された合成石英ガラス基板4をマスクブランク用基板7として選定した(
図1(b))。次に、実施例1〜4で選定されたマスクブランク用基板7の主表面5に対し、それぞれパターン形成用薄膜8をスパッタリング法によって成膜し、マスクブランク7を製造した(
図1(c))。なお、パターン形成用薄膜は、主表面5側からMoSiN(膜厚47nm、膜組成 Mo:9.9at%,Si:66.1at%,N:24.0at%)、MoSiN(膜厚13nm、膜組成 Mo:7.5at%,Si:50.5at%,N:42.0at%)の2層積層構造の遮光膜と、Crを主成分とするエッチングマスク膜の積層構造とした。
【0089】
製造した実施例1〜4の各マスクブランク7のエッチングマスク膜上に、スピンコート法によって電子線描画露光用化学増幅型のレジスト膜10を形成した(
図1(d))。次に、電子線描画装置を用い、DRAM hp45nmのL&Sパターンを含んでいる転写パターンをレジスト膜10に露光描画を行い、さらに現像処理、洗浄処理を行い、レジストパターン12を形成した(
図1(e))。次に、レジストパターン12をマスクとし、エッチングマスク膜に対して塩素と酸素の混合ガスを用いたドライエッチングを行い、エッチングマスク膜パターンを形成した。続いて、エッチングマスク膜パターンをマスクとし、遮光膜に対してフッ素系ガス(SF
6)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜パターン(薄膜パターン)13を形成した(
図1(f))。さらに、レジストパターン12を除去し、所定の洗浄処理を行い、マスクブランク用ガラス基板7上に薄膜パターン13を備える実施例1〜4の各転写用マスク14を得た(
図1(g))。
【0090】
次に、作製した実施例1〜4の各転写用マスク14用い、転写対象物である半導体ウェハ上のレジスト膜に対して、転写パターンを露光転写する工程を行った。露光装置には、ArFエキシマレーザーを光源とする輪帯照明(Annular Illumination)が用いられた液浸方式のものが用いられた。具体的には、露光装置のマスクステージに、実施例1〜4の各転写用マスク14をセットし、半導体ウェハ上のArF液浸露光用のレジスト膜に対して、露光転写を行った。露光後のレジスト膜に対して、所定の現像処理を行い、レジストパターンを形成した。さらに、レジストパターンを用いて、半導体ウェハ上にDRAMハーフピッチ(hp)45nmのライン&スペース(L&S)パターンを含む回路パターンを形成した。
【0091】
得られた半導体ウェハ上の回路パターンを電子顕微鏡(TEM)で確認したところ、DRAMハーフピッチ(hp)45nmのL&Sパターンの仕様を十分に満たしていた。すなわち、実施例5〜7の各転写用マスクは、半導体ウェハ上にDRAMハーフピッチ(hp)45nmのL&Sパターンを含む回路パターンを転写することが十分に可能であることが確認できた。
【0092】
<参考例1>
2つの主表面と4つの端面がそれぞれ精密研磨された合成石英ガラス基板4(152.1mm×152.1mm×6.35mm)を準備した。この合成石英ガラス基板4は、基板の内部に青色の蛍光を発する内部欠陥を有するものであり、CCDカメラで撮影した画像が点状の蛍光画像になることが予め確認されているものである。この合成石英ガラス基板4を、前記の
図2等に示した内部欠陥検査装置20のXYZステージ22に設置し、レーザー照射装置21により、ArFエキシマレーザー光を端面51から基板内部に導入し、前記の青色の蛍光を発する内部欠陥16bが存在する部分に照射した。そして、ArFエキシマレーザー光の照射を受けることによって、内部欠陥16bから発生した蛍光15bをカラーCCDカメラ23で撮影し、蛍光画像を取得した。取得した画像は、青色で点状の蛍光(内部欠陥)を含んだ画像であった。
【0093】
この青色点状の蛍光画像に対し、近接差分によって光量差を求める処理を行った。具体的には、まず、蛍光画像の各画素の赤の輝度値(
図10の折れ線「R」)、緑の輝度値(
図10の折れ線「G」)、青の各輝度の輝度値(
図10の折れ線「B」)を加算した合計輝度値(
図10の折れ線「ALL」)を算出した。次に、処理対象画素の隣の画素との光量差(<参考例1>近接差分による微分、
図10の折れ線「dif1」)、を算出した。なお、
図10のグラフの縦軸は輝度であり、横軸は画像の画素番号である。
【0094】
次に、この参考例で求めた光量差を用い、蛍光の有無の判定をおこなった。蛍光の有無を判定する基準値である光量差(輝度)の閾値は、5とした。その結果、青色の点状の蛍光画像の場合、従来の近接差分の微分で光量差を求めても、コンピュータで精度よく認識できていた。
【0095】
<実施例5〜7、比較例3,4>
2つの主表面と4つの端面がそれぞれ精密研磨された合成石英ガラス基板4(152.1mm×152.1mm×6.35mm)を準備した。この合成石英ガラス基板4は、基板の内部に黄色の蛍光を発する内部欠陥を有するものであり、CCDカメラで撮影した画像がモヤ状の蛍光画像になることが予め確認されているものである。この合成石英ガラス基板4を、前記の
図2等に示した内部欠陥検査装置20のXYZステージ22に設置し、レーザー照射装置21により、ArFエキシマレーザー光を端面51から基板内部に導入し、前記の黄色の蛍光を発する内部欠陥16bが存在する部分に照射した。そして、ArFエキシマレーザー光の照射を受けることによって、内部欠陥16bから発生した蛍光15bをカラーCCDカメラ23で撮影し、蛍光画像を取得した。取得した画像は、黄色でモヤ状の蛍光(内部欠陥)を含んだ画像であった。
【0096】
この黄色モヤ状の蛍光画像に対し、本発明の遠隔差分によって光量差を求める処理を行った。具体的には、まず、蛍光画像の各画素の赤の輝度値(
図11〜
図13の折れ線「R」)、緑の輝度値(
図11〜
図13の折れ線「G」)、青の各輝度の輝度値(
図11〜
図13の折れ線「B」)を加算した合計輝度値(
図11〜
図13の折れ線「ALL」)を算出した。次に、各画素の合計輝度値を用い、処理対象画素から30画素離れた画素との光量差(<実施例5>
図11の折れ線「dif30」)、処理対象画素から40画素離れた画素との光量差(<実施例6>
図11の折れ線「dif40」)、処理対象画素から50画素離れた画素との光量差(<実施例7>
図12の折れ線「dif50」)、をそれぞれ算出した。また、比較例として、各画素の合計輝度値を用い、処理対象画素の隣の画素との光量差(近接差分による微分、<比較例3>
図13の折れ線「dif1」)、処理対象画素から10画素離れた画素との光量差(<比較例4>
図13の折れ線「dif10」)、もそれぞれ算出した。なお、
図11〜
図13のグラフの縦軸は輝度であり、横軸は画像の画素番号である。
【0097】
次に、各実施例および比較例で求めた光量差を用い、蛍光の有無の判定をおこなった。蛍光の有無を判定する基準値である光量差(輝度)の閾値は、5とした。その結果、処理対象画素から30画素以上離れた画素との間で光量差を求めた場合には、黄色のモヤ状の蛍光画像をコンピュータで認識することができていた。これに対し、比較例3のような従来の近接差分の微分で光量差を求めた場合や、比較例4の処理対象画素から10画素離れた画素との間で光量差を求めた場合では、黄色のモヤ状の蛍光画像をコンピュータで認識することができなかった。
【0098】
これらの結果を基に、マスクブランク用基板、マスクブランク、および転写用マスクを製造した。2つの主表面と4つの端面がそれぞれ精密研磨された合成石英ガラス基板4を50枚×3セット準備(
図1(a))し、実施例5〜7と同様に内部欠陥検査装置20で処理対象画素から30画素(実施例5)、40画素(実施例6)、50画素(実施例7)だけ離れた画素との間で求めた光量差を用い、内部欠陥の有無を判定する欠陥検査工程を行い、蛍光がないと判定された合成石英ガラス基板4をマスクブランク用基板7として選定した(
図1(b))。次に、実施例5〜7で選定されたマスクブランク用基板7を用い、実施例1と同様の手順で、実施例5〜7の各マスクブランク7を製造した。続いて、製造した実施例5〜7の各マスクブランク7を用い、実施例1と同様の手順で、実施例5〜7の各転写マスク14を作製した。さらに、 次に、作製した実施例5〜7の各転写用マスク14用い、転写対象物である半導体ウェハ上のレジスト膜に対して、転写パターンを露光転写する工程を行った。その結果、得られた半導体ウェハ上の回路パターンを電子顕微鏡(TEM)で確認したところ、DRAMハーフピッチ(hp)45nmのL&Sパターンの仕様を十分に満たしていた。すなわち、実施例5〜7の各転写用マスクは、半導体ウェハ上にDRAMハーフピッチ(hp)45nmのL&Sパターンを含む回路パターンを転写することが十分に可能であることが確認できた。
【0099】
本発明に係るマスクブランク用ガラス基板7の製造方法、マスクブランク9の製造方法、転写用マスク14の製造方法、および半導体デバイスの製造方法の実施形態は、上記の実施形態に限られるものではなく、その他の様々な実施形態が本発明に含まれる。