【実施例】
【0046】
実施例1
実施例1の発光トランジスタ
本発明に係る発光トランジスタの一の態様の断面図である
図3を参照しながら、実施例1に係るトランジスタ及びその製造方法を説明する。
ゲート絶縁膜14として酸化膜を設けたシリコン基板を準備した。このシリコン基板はゲート電極15として機能する。昇華再結晶法(非特許文献1参照)で成長させたn型有機半導体材料であるAC5−CF
3(上述の化6(x))の平板状結晶11n−cを、上述の酸化膜14の上に配置した。この結晶材料AC5−CF
3のキャリア移動度は、1.5cm
2/V・sであった。尚、AC5−CF
3のキャリア移動度の測定は、T. Yamao, Y. Shimizu, H. Kuriki, T. Katagiri, and S. Hotta, Jpn. J. Appl. Phys. 49 (2010) 01AB01.に記載の方法により行った。
【0047】
この結晶11n−cの上に、タングステンワイヤー(幅約50μm)を、
図3の紙面と垂直方向に配置した。そのワイヤーの両側から、AC5−CF
3の結晶11n−cと酸化シリコン14の上に、マグネシウムと銀を質量比1:10となるように、マグネシウム銀の電極12b及び13bを真空蒸着して形成した。このタングステンワイヤーの幅が、トランジスタの電極間隔(チャンネル長)を形成する。タングステンワイヤーを除去した後、n型有機半導体材料11n−cと11n−cを覆う電極12b及び13bの上に、昇華再結晶法(非特許文献1参照)で成長させたp型有機半導体材料であるAC5(上述の化4(m))の平板状結晶11p−cを配置した。この結晶材料AC5のキャリア移動度は、0.040cm
2/V・sであった。尚、AC5のキャリア移動度の測定は、T. Yamao, K. Juri, A. Kamoi, and S. Hotta, Organic Electronics, 10 (2009) 1241-1247.に記載の方法により行った。
【0048】
結晶11p−cの上に再びタングステンワイヤー(幅約50μm)を、
図3の紙面と垂直方向に配置した。タングステンワイヤーの上から片側に金を電極12aとして蒸着し、もう片側にマグネシウム銀(質量比1:10)を電極13aとして蒸着した。タングステンワイヤーを除去して、チャンネル16が形成された、実施例1に係るトランジスタ10を得ることができた。尚、電極12a及び12bが一体となって正孔注入電極、電極13a及び13bが一体となって電子注入電極となる。
【0049】
このようにして得られたトランジスタを、結晶11p−c及び11n−cの結晶表面と垂直方向から撮影した顕微鏡写真を
図4に示す。真ん中に上下に延びるチャンネル16がAC5結晶11p−c上の電極12aと電極13aの間の間隔と対応し、その間隔は28μmである。チャンネル16の長さ(電極12aと13aの間隔の形成する長さ)は211μmである。チャンネル16の横方向に延びる結晶は、AC5の結晶11p−cであり、チャンネル16と平行に延びる結晶は、AC5−CF
3の結晶11n−cである。チャンネル16の左に薄く電極12aが認められ、チャンネル16の右に薄く電極13aが認められる。
【0050】
このようにして得られたトランジスタの発光を測定した(発光測定法は、T. Yamao, Y. Shimizu, K. Terasaki and S. Hotta, Adv. Mater. 20 (2008) 4109−4112. 参照)。尚、発光は、トランジスタの結晶11p−c及び11n−c内から結晶面と平行方向(即ち、
図4では、紙面と平行方向)に主に生じており、結晶面と垂直方向(即ち、
図4では、紙面と垂直方向)は弱いので、発光測定も、結晶11p−c及び11n−cの結晶面と平行方向で
図4で薄く認められる電極12a、13aとも平行に行った。上述のトランジスタからの発光スペクトルを、
図5に示す。接地電位に対し電極12aに直流電圧+70V、電極13aに直流電圧−70V、ゲート電極15に振幅90V、周波数100kHzの矩形波の交流電圧を、各々印加した。波長に対して発光強度をプロットした。縦軸の発光強度は1秒当たりの強度を示しており、約512nmの波長で発光は最大となり、その強度は、約478カウントであった。
尚、ゲート電極に矩形波の交流電圧を印加する方法は、WO2009/099205A1に開示されている。
【0051】
実施例2
実施例2の発光トランジスタ
本発明に係る発光トランジスタの他の態様の断面図である
図6を参照しながら、実施例2に係るトランジスタ及びその製造方法を説明する。
実施例2のトランジスタは、p型有機半導体材料11p−cとして、AC’7(化5(v))の平板状結晶を使用したことと、n型有機半導体材料11n−cを酸化シリコン14の上に配置する前に、クロム及び金の順番で酸化シリコン14の上に真空蒸着して、クロムの電極12d及び13dと、金の電極12c及び13cを形成したことを除いて、上述した実施例1のトランジスタと同様の方法を用いて製造した。p型有機半導体材料AC’7のキャリア移動度は、0.098cm
2/V・sであった。AC’7のキャリア移動度の測定は、2009 International Conference on Solid State Devices and MaterialsのExtended Abstracts集、2009年発行、第1166-1167頁に記載の方法を用いて行った。尚、電極12a、12b、12c及び12dが一体となって正孔注入電極になり、電極13a、13b、13c、13dが一体となって電子注入電極になる。
【0052】
このようにして得られたトランジスタ10を、結晶11p−cおよび11n−cの結晶表面と垂直方向から撮影した顕微鏡写真を
図7に示す。真ん中に上下に延びるチャンネル16がAC’7結晶11p−c上の電極12aと電極13aの間の間隔と対応し、その間隔は23μmである。チャンネル16の長さ(電極12aと13aの間隔の形成する長さ)は90μmである。チャンネル16に対して斜め方向に延びる結晶は、AC’7の結晶11p−cであり、チャンネル16と重なる丸い結晶は、AC5−CF
3の結晶11n−cである。チャンネル16の右に薄く電極12aが認められ、チャンネル16の左に薄く電極13aが認められる。
【0053】
このようにして得られたトランジスタの発光を、実施例1のトランジスタと同様の方法を用いて測定した。実施例2のトランジスタからの発光スペクトルを、
図8に示す。接地電位に対し電極12aに直流電圧+170Vを印加し、電極13aに直流電圧−170Vを印加し、ゲート電極15を開放してスペクトルを測定した。波長に対して発光強度をプロットした。縦軸の発光強度は1秒当たりの強度を示しており、約524nmの波長で発光は最大となり、その強度は、約3035カウントであった。
【0054】
比較例1
比較例1の発光トランジスタ
比較例1のトランジスタの断面図である
図9を参照しながら、比較例1のトランジスタ及びその製造方法を説明する。
比較例1のトランジスタは、p型有機半導体材料11p−cとして、AC’7を使用したことと、電極12b及び13bとn型有機半導体材料11n−cを配置しなかったことを除いて、上述した実施例1のトランジスタと同様の方法を用いて製造した。尚、電極12aが正孔注入電極、電極13aが電子注入電極になる。
【0055】
このようにして得られたトランジスタを、平板状結晶11p−cの結晶表面と垂直方向から撮影した顕微鏡写真を
図10に示す。真ん中に上下に延びるチャンネル16がAC’7結晶11p−c上の電極12aと電極13aの間の間隔と対応し、その間隔は46μmである。チャンネル16の長さ(電極12aと13aの間隔の形成する長さ)は242μmである。チャンネル16に対して横方向に延びる結晶は、AC’7の結晶11p−cである。チャンネル16の左に薄く電極12aが認められ、チャンネル16の右に薄く電極13aが認められる。
【0056】
このようにして得られたトランジスタの発光を、実施例1のトランジスタと同様の方法を用いて測定した。比較例1のトランジスタからの発光スペクトルを、
図11に示す。接地電位に対し電極12aに直流電圧+80Vを印加し、電極13aに直流電圧−80Vを印加し、ゲート電極15に振幅100V、周波数20kHzの矩形波の交流電圧を印加した。波長に対して発光強度をプロットした。縦軸の発光強度は1秒当たりの強度を示しており、約559nmの波長で発光は最大となり、その強度は、約108カウントであった。
【0057】
尚、上記実施例ではn型半導体の上にp型半導体を積層した例を示したが、この順序を逆にしてp型半導体の上にn型半導体を積層した積層体も有効に使用できる。
【0058】
実施例3
実施例3の発光トランジスタ
本発明に係る更なる態様の断面図である
図12を参照しながら、実施例3に係るトランジスタ及びその製造方法を説明する。
ゲート絶縁膜14として酸化膜を設けたシリコン基板を準備した。このシリコン基板はゲート電極15として機能する。酸化シリコン14の上に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のトルエン溶液をスピンコートしてPMMA膜18を形成した。PMMA膜18の上に、タングステンワイヤー(幅約50μm)を、
図12の紙面と垂直方向に配置した。そのワイヤーの両側から、PMMA膜18の上に、マグネシウムと銀を質量比1:10となるように、マグネシウム銀の電極12b及び13bを真空蒸着して形成した。これに引き続きマグネシウム銀電極の上に、ワイヤーの両側から、銀電極12e及び13eを真空蒸着して形成した。このタングステンワイヤーの幅が、トランジスタの電極間隔(チャンネル長)を形成する。タングステンワイヤーを除去した後、n型有機半導体材料であるAC5−CF
3の薄膜11n−a、AC5−CF
3とp型有機半導体材料であるAC5が質量比1:1となるようにした混合薄膜11c−a、AC5の薄膜11p−aを、電極12e及び13eの上および電極12e及び13eの間(トランジスタの電極の間)に、順番に真空蒸着した。尚、薄膜11n−a、混合薄膜11c−a及び薄膜11p−aは、真空蒸着によって作製しているので、いずれも結晶ではなく、アモルファス固体であると考えられる。
【0059】
薄膜11p−aの上に再びタングステンワイヤー(幅約50μm)を、
図12の紙面と垂直方向に配置した。タングステンワイヤーの両側から、p型有機半導体薄膜11p−aの上に、金を電極12c及び13cとして蒸着した。タングステンワイヤーを除去して、チャンネル16が形成されたトランジスタを得ることができた。尚、電極12b、12c及び12eが一体となって正孔注入電極、電極13b、13c及び13eが一体となって電子注入電極となる。
【0060】
このようにして得られたトランジスタを、薄膜11p−a、11c−a及び11n−aの表面と垂直方向から、顕微鏡で写真撮影をした。チャンネル16の幅(電極12cと電極13cの間の間隔)は、50μmであった。チャンネル16の長さ(電極12cと13cの間隔の形成する長さ)は1.5mmであった。
【0061】
このトランジスタの電流電圧特性を測定した。電流電圧特性を
図13に示す。
図13Aは、接地した電極12cに対し、電極13cに0から−45Vまでの直流電圧(ドレイン−ソース間電圧:横軸)を印加したときの電極13cと電極12cの間を流れる電流(ドレイン電流:縦軸)を、ゲート電極15の電圧を接地電位に対し0から−45Vまで−5V毎に変化させながら測定したものである。この特性から求められる正孔移動度は、5.15×10
−4cm
2/Vsである。
図13Bは、接地した電極13cに対し、電極12cに0から+45Vまでの直流電圧(ドレイン−ソース間電圧:横軸)を印加したときの電極12cと電極13cの間を流れる電流(ドレイン電流:縦軸)を、ゲート電極15の電圧を接地電位に対し0から+45Vまで+5V毎に変化させながら測定したものである。この特性から求められる電子移動度は、6.06×10
−4cm
2/Vsである。
【0062】
尚、このトランジスタの電極12cに正の直流電圧を印加し、電極13cに負の直流電圧を印加し、ゲート電極15に矩形波の交流電圧を印加したところ、発光は観測されなかった。
【0063】
このトランジスタのp型有機半導体薄膜11p−aの上に、金電極12c及び13cの上の一部も覆うように、p型有機半導体材料として、昇華再結晶法で成長させたAC5の平板状結晶11p−cを配置して、
図12に示す実施例3に係る発光トランジスタを得た。
【0064】
このようにして得られた実施例3のトランジスタの発光を、実施例1のトランジスタと同様の方法を用いて測定した。実施例3のトランジスタからの発光スペクトルを、
図14に示す。接地電位に対し電極12cに直流電圧70Vを印加し、電極13cに直流電圧−70Vを印加し、ゲート電極15に振幅80V、周波数20kHzの正弦波および矩形波の交流電圧を、それぞれ印加した。波長に対して発光強度をプロットした。縦軸の発光強度は1秒当たりの強度を示しており、約542nmの波長と610nmの波長に鋭いピークが観測された。
【0065】
参考例4
参考例4の発光トランジスタ
本
明細書に記載の発光トランジスタの更に別の態様の断面図である
図15を参照しながら、
参考例4に係るトランジスタ及びその製造方法を説明する。
実施例3のトランジスタの製造方法と同様の方法を用いて、酸化シリコン上にPMMA膜18を形成した。PMMA膜18の上に、昇華再結晶法で成長させたp型有機半導体材料のAC5平板状結晶11p−cを配置した。AC5結晶11p−cの上に、タングステンワイヤー(幅約50μm)を、
図15の紙面と垂直方向に配置した。そのワイヤーの片側のAC5結晶11p−c上に、PMMA膜18の一部も覆うように、n型有機半導体材料であるAC5−CF
3薄膜11n−aを30nmの厚さとなるように真空蒸着した。続けてワイヤーの片側からAC5−CF
3薄膜11n−a上に、銀電極13eを真空蒸着して形成した。またワイヤーの反対側のAC5結晶11p−c上に、PMMA膜18の一部も覆うように、金電極12aを真空蒸着して形成した。このタングステンワイヤーの幅が、トランジスタのチャンネル長を形成する。タングステンワイヤーを除去して、チャンネル16が形成された、
参考例4に係るトランジスタ10を得ることができた。尚、電極13e及びAC5−CF
3薄膜11n−aが一体となって電子注入電極となる。電極12aは正孔注入電極となる。
【0066】
このようにして得られたトランジスタ10を、結晶11p−cの結晶表面と垂直方向から、顕微鏡で写真撮影をした。チャンネル16の幅(電極12aと電極13eの間の間隔)は、50μmであった。チャンネル16の長さ(電極12aと13eの間隔の形成する長さ)は230μmであった。
【0067】
このようにして得られた
参考例4のトランジスタの電流電圧特性を測定した。電流電圧特性を
図16に示す。
図16は、接地した電極12aに対し、電極13eに0から−60Vまでの直流電圧(ドレイン−ソース間電圧:横軸)を印加したときの電極13eと電極12aの間を流れる電流(ドレイン電流:縦軸)を、ゲート電極15の電圧を0から−50Vまで−5V毎に変化させながら測定したものである。この特性から求められる正孔移動度は、1.3×10
−2cm
2/Vsである。
【0068】
このようにして得られた
参考例4のトランジスタの発光を、実施例1のトランジスタと同様の方法を用いて測定した。
参考例4のトランジスタからの発光を示す写真を
図17に示す。接地電位に対し電極12aに直流電圧60Vを印加し、電極13eに直流電圧−60Vを印加し、ゲート電極15に振幅70V、周波数20kHzの矩形波の交流電圧を印加した。白丸で囲まれた中に、デバイスからの発光が見て取れる。
参考例4のトランジスタからの発光スペクトルを
図18に示す。接地電位に対し電極12aに直流電圧80Vを印加し、電極13eに直流電圧−80Vを印加し、ゲート電極15に振幅100V、周波数20kHz、50kHz及び100kHzの矩形波の交流電圧を印加した。波長に対して発光強度をプロットした。縦軸の発光強度は1秒当たりの強度を示しており、周波数が20kHzから100kHzへと増加するに伴い、発光強度が増加している。
【0069】
実施例5
実施例5の発光トランジスタ
実施例5に係るトランジスタ及びその製造方法を説明する。
実施例5のトランジスタは、基板にガラス板を用いたこと、ゲート電極15としてクロム及び金の順番でガラス基板の上に真空蒸着して、クロム及び金の電極を形成したが、このゲート電極15の幅は約0.5mmであり、チャンネル16の幅の約10倍の幅となるように、実施例1のゲート電極と比較して狭くしたこと、ゲート絶縁膜14としてPMMAのトルエン溶液をスピンコートしてPMMA膜を形成したこと、p型有機半導体材料11p−cとして、BP1T(化4(n))の平板状結晶(昇華再結晶法を用いて得た)を使用したこと、p型有機半導体材料11p−cがn型有機半導体材料11n−cを上面に加えて側面まで完全に覆い、p型有機半導体材料11p−cは一部、直接ゲート絶縁膜14と接すること、n型有機半導体材料11n−cはp型有機半導体材料11p−cに覆われているので、マグネシウム銀電極12b及び13bを、n型有機半導体材料11n−cの上に形成せず、p型有機半導体材料11p−cの上に、チャンネル16がゲート電極15と対向するように形成したこと、金の電極12aとマグネシウム銀の電極13aを形成しなかったことを除いて、上述した実施例1のトランジスタと同様の方法を用いて製造した。
【0070】
従って、
実施例5の発光トランジスタの主な特徴は、
図3に記載した実施例1発光トランジスタと比較すると、下記の通りである:ゲート電極15の幅が、チャンネル16の約10倍の幅に狭められていること(
図3では、チャンネル16の幅は強調されており、実際より幅が広く記載されている);n型有機半導体材料11n−cは、その幅が狭められて、p型有機半導体材料11p−cに、上面と側面(ゲート絶縁膜14と接する面以外の面)が覆われていること;電極12a及び13aは形成されず、一方、電極12b及び13bは、p型有機半導体材料11p−cとn型有機半導体材料11n−cの間に形成されず、p型有機半導体材料11p−cとゲート絶縁膜14の上に形成され、n型有機半導体材料11n−cと接触していない。
p型有機半導体材料BP1Tの飽和領域におけるキャリア移動度は、1.2×10
−3cm
2/V・sであった。BP1Tのキャリア移動度の測定は、T. Katagiri, S. Ota, T. Ohira, T. Yamao, and S. Hotta, J. Heterocyclic Chem., 44 (2007) 853-862.に記載の方法により行った。尚、電極12bが正孔注入電極になり、電極13bが電子注入電極になる。
【0071】
このようにして得られたトランジスタの発光スペクトルを、ゲート電極に印加する交流電圧の波形に矩形波ではなく正弦波を用いたことを除いて、実施例1のトランジスタと同様の方法を用いて測定した。接地電位に対し電極12bに直流電圧+115Vを印加し、電極13bに直流電圧−115V、ゲート電極15に振幅125V、周波数300kHzの正弦波の交流電圧を、各々印加した。約494nmの波長で発光スペクトルは最大となり、その強度は、約171カウントであった。
【0072】
トランジスタの電流電圧特性を、実施例3のトランジスタと同様の方法を用いて測定した。電流電圧特性の結果及び上述の発光スペクトルの結果から算出したトランジスタの外部量子効率は最大で2%であった。尚、外部量子効率はトランジスタに注入されたキャリアの個数N
cに対する、トランジスタから発せられる光子の数N
pの比N
p/N
cで定義される。トランジスタに注入されたキャリア数(単位時間当たり)は、電流電圧特性で観測された電流値から算出でき、トランジスタから発せられる光子の数(単位時間当たり)は、トランジスタの発光スペクトルの強度から算出できる。
【0073】
比較例2
比較例2の発光トランジスタ
比較例2に係るトランジスタ及びその製造方法を説明する。
比較例2のトランジスタは、ゲート絶縁膜14の上にn型有機半導体材料11n−cを形成しなかったことを除いて、上述した
実施例5のトランジスタと同様の方法を用いて製造した。
【0074】
このようにして得られたトランジスタの外部量子効率を、
実施例5のトランジスタと同様の方法を用いて算出した。比較例2に係るトランジスタの外部量子効率は最大で0.41%であった。
【0075】
比較例3
比較例3の発光トランジスタ
比較例3に係るトランジスタ及びその製造方法を説明する。
比較例3のトランジスタは、p型有機半導体材料11p−cの代わりにn型有機半導体材料11n−cを用いたことを除いて、上述した比較例2のトランジスタと同様の方法を用いて製造した。
【0076】
このようにして得られたトランジスタの外部量子効率を、
実施例5のトランジスタと同様の方法を用いて算出した。比較例3に係るトランジスタの外部量子効率は最大で0.016%であった。
【0077】
このように、少なくとも二種類の有機半導体材料が積層された積層体を含み、積層体に含まれる有機半導体材料の少なくとも一種は、平板状結晶である発光トランジスタには、発光強度の増大が認められた。