特許第5786240号(P5786240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786240
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】電動式レンズ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   G02B7/08 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-89890(P2011-89890)
(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公開番号】特開2012-220915(P2012-220915A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】391044915
【氏名又は名称】株式会社コシナ
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】坂本 桂一
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−003100(JP,A)
【文献】 特開平11−119080(JP,A)
【文献】 特開2001−119899(JP,A)
【文献】 特開平07−049523(JP,A)
【文献】 特開2000−347093(JP,A)
【文献】 特開2001−141990(JP,A)
【文献】 特開2007−206650(JP,A)
【文献】 特開2002−258139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡筒の外周部に回動可能に設け、かつレンズを移動させる調整用リングのラックに対して駆動モータ部により回転するピニオンを噛合させた、フォーカスレンズを移動させるフォーカスレンズ移動機構及びズームレンズを移動させるズームレンズ移動機構を備える電動式レンズ装置において、前記レンズ鏡筒の外周部に装着可能な筒形に形成し、かつ外面に少なくとも前記駆動モータ部を取付けるモータ取付部及びレンズ側マウント部を一体に形成した取付用筒部と、この取付用筒部の後端に、中心方向に向いたリング形に一体に形成し、かつ前記レンズ鏡筒の後端面に取付可能なフランジ部を有することにより、前記レンズ鏡筒の外周部に装着した際に前記レンズ鏡筒に固定する固定部,又は前記レンズ鏡筒の外周部に前記取付用筒部を装着した際に当該取付用筒部の前部外周面を前記レンズ鏡筒に固定する固定部とを備えてなることを特徴とする電動式レンズ装置。
【請求項2】
前記フォーカスレンズ移動機構の前記モータ取付部と前記ズームレンズ移動機構の前記モータ取付部は、近接させて配し、かつ前記取付用筒部の外面から同一方向に突出形成することを特徴とする請求項1記載の電動式レンズ装置。
【請求項3】
前記取付用筒部の外面には、前部が固定された駆動モータ部の後部を支持して当該駆動モータ部を保持する突起状のモータ規制部を一体形成することを特徴とする請求項1又は2記載の電動式レンズ装置。
【請求項4】
前記取付用筒部の外面には、前記駆動モータ部のリード配線を接続する接続端子を取付けるための突起状の端子台部を一体形成することを特徴とする請求項1,2又は3記載の電動式レンズ装置。
【請求項5】
前記取付用筒部の外面には、前記駆動モータ部のリード配線の引回し位置を規制する突起状の配線規制部を一体形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動式レンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動モータ部によりレンズを移動させるレンズ移動機構を備えるプロジェクタ等に用いて好適な電動式レンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロジェクタは投射用のレンズ装置を搭載するが、特に、リモートコントロール(リモコン)等によりフォーカシングやズーミングを行う電動式レンズ装置では、レンズ鏡筒の外周部に回動可能に設けた調整用リングのラックに、駆動モータ部により回転するピニオンを噛合させたレンズ移動機構を備えている。
【0003】
従来、このようなレンズ移動機構としては、特許文献1で開示されるズームレンズ鏡胴及び特許文献2で開示されるレンズ駆動装置が知られている。特許文献1で開示されるズームレンズ鏡胴は、光軸方向にカム作用をなすカム筒と、レンズを保持しカム筒により光軸方向に相対的に移動して変倍動作を行う複数のレンズ移動枠と、複数のレンズ移動枠のうち先端に位置する第1レンズ移動枠に対し回転により光軸方向に移動可能に連結されかつレンズを保持して合焦動作を行うフォーカス用移動枠と、カム筒を回動自在に支持しかつ複数のレンズ移動枠を光軸方向に案内する固定筒と、カム筒に回転駆動力を及ぼす第1モータと、を備えたズームレンズ鏡胴であって、フォーカス用移動枠及び固定筒には、光軸方向の所定位置での回転力に連動させてフォーカス用移動枠を光軸方向に移動させる連動機構と、連動機構に回転駆動力を及ぼす第2モータと、を備えたものである。また、特許文献2で開示されるレンズ駆動装置は、光学系を格納し、光学系を駆動するための操作リングが外周部に形成されたレンズ鏡胴を駆動するためのレンズ駆動装置であって、レンズ鏡胴の外周部に装着され、操作リングに連結されるモーターと、レンズ鏡胴の外周面に固定される第1平面部と、レンズ鏡胴の外周面に沿うように第1平面部に対して屈曲部を介して連続するモーター取付部とを含むモーター保持板とを備え、モーターは、モーター取付部のレンズ鏡胴とは反対側の面に取り付けて構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−240030号公報
【特許文献2】特開2009−003100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したレンズ移動機構を備える従来の電動式レンズ装置は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、レンズ鏡筒の外周部に、直接、駆動モータ部の取付けを行うとともに、レンズ鏡筒の外周部に取付けた駆動モータ部から導出されるリード配線の引回し及び接続等を行う必要があるため、取付作業性の低下及び組付能率の低下を招くとともに、レンズ鏡筒を無用に傷付けてしまうなどの二次的な不具合も生じやすい。特に、このような問題はレンズ鏡筒が大型化するほど大きくなるため、大型のレンズ鏡筒では無視できない。
【0007】
第二に、レンズ鏡筒の外周部に設けた調整用リングを駆動モータ部により回動させるため、駆動モータ部はレンズ鏡筒の外周部に取付ける必要がある。したがって、別途の取付用の金属金具を用意する必要があるとともに、通常、フォーカシング及びズーミングのための二つのレンズ移動機構を備えるため、少なくとも二つの金属金具或いは二つモータを取付ける大型サイズの金属金具が必要になり、部品点数の増加,取付工数の増加及びこれらに伴うコストアップを招く。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した電動式レンズ装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、レンズ鏡筒2の外周部2sに回動可能に設け、かつレンズを移動させる調整用リング3f,3zのラック4f,4zに対して駆動モータ部5f,5zにより回転するピニオン6f,6zを噛合させた、フォーカスレンズを移動させるフォーカスレンズ移動機構Mf及びズームレンズを移動させるズームレンズ移動機構Mzを備える電動式レンズ装置1を構成するに際して、レンズ鏡筒2の外周部2sに装着可能な筒形に形成し、かつ外面7eに少なくとも駆動モータ部5f,5zを取付けるモータ取付部8f,8z及びレンズ側マウント部16を一体に形成した取付用筒部7と、この取付用筒部7の後端に、中心方向に向いたリング形に一体に形成し、かつレンズ鏡筒2の後端面に取付可能なフランジ部26を有することにより、レンズ鏡筒2の外周部2sに装着した際にレンズ鏡筒2に固定する固定部9,又はレンズ鏡筒2の外周部に取付用筒部7を装着した際に当該取付用筒部7の前部外周面をレンズ鏡筒2に固定する固定部9とを備えてなることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、フォーカスレンズ移動機構Mfのモータ取付部8fとズームレンズ移動機構Mzのモータ取付部8zは、近接させて配し、かつ取付用筒部7の外面7eから同一方向に突出形成することができる。一方、取付用筒部7の外面7eには、前部が固定された駆動モータ部5f,5zの後部を支持して当該駆動モータ部5f,5zを保持する突起状のモータ規制部11f,11zを一体形成することができる。さらに、取付用筒部7の外面7eには、駆動モータ部5f,5zのリード配線12f,12zを接続する接続端子13…を取付けるための突起状の端子台部14を一体形成することができるとともに、取付用筒部7の外面7eには、駆動モータ部5f,5zのリード配線12f,12zの引回し位置を規制する突起状の配線規制部15を一体形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る電動式レンズ装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 予め取付用筒部7に駆動モータ部5f,5zを取付けた後、この取付用筒部7をレンズ鏡筒2の外周部2sに装着できるため、レンズ鏡筒2の外周部2sに対して駆動モータ部5f,5zを直接組付ける必要が無くなる。したがって、組付作業性の向上及び組付能率の向上を図ることができるとともに、レンズ鏡筒2を無用に傷付けてしまうなどの二次的弊害を回避できる。
【0013】
(2) 駆動モータ部5f,5zをレンズ鏡筒2の外周部2sに取付けるための別途の金具が不要になるとともに、金具をねじ止め等によりレンズ鏡筒2に取付けるための取付工程が不要になる。したがって、部品点数の削減及び組立工数の低減を図れるとともに、これらに伴うコストダウンを図ることができる。
【0014】
(3) レンズ鏡筒2の外周部2sに装着可能な筒形に形成した取付用筒部7を備えるため、取付用筒部7は、レンズ鏡筒2の外周部2sを覆う外部カバーに兼用することが可能となり、レンズ鏡筒2を外的に保護することができる。
【0015】
(4) レンズ移動機構(Mf,Mz)として、フォーカスレンズを移動させるフォーカスレンズ移動機構Mf及びズームレンズを移動させるズームレンズ移動機構Mzを含ませたため、一つの取付用筒部7を二つの移動機構Mf,Mzに共用でき、取付用筒部7の利用性をより高めることができる。
【0016】
(5) 取付用筒部7には、レンズ側マウント部16を一体形成したため、レンズ鏡筒2側の形状(構成)をより単純化でき、レンズ鏡筒2の製造性(成形性)をより高めることができるとともに、レンズ鏡筒2の精度向上にも寄与できる。
【0017】
(6) 好適な態様により、フォーカスレンズ移動機構Mfのモータ取付部8fとズームレンズ移動機構Mzのモータ取付部8zを、近接させて配し、かつ取付用筒部7の外面7eから同一方向に突出形成すれば、二つの移動機構Mf,Mzに適用し、取付用筒部7を金型により一体成形する場合であっても、型開方向を単純化できるため、金型設計及び製造(成形)の容易化に寄与できる。
【0018】
(7) 好適な態様により、取付用筒部7の外面7eに、前部が固定された駆動モータ部5f,5zの後部を支持して当該駆動モータ部5f,5zを保持する突起状のモータ規制部11f,11zを一体形成すれば、ピニオン6f,6zが浮上がりラック4f,4zに対する噛合が外れる不具合を回避できるため、ピニオン6f,6zとラック4f,4zの噛合を確実に維持できる。
【0019】
(8) 好適な態様により、取付用筒部7の外面7eに、駆動モータ部5f,5zのリード配線12f,12zを接続する接続端子13…を取付けるための突起状の端子台部14を一体形成すれば、取付用筒部7の外面7eに対して、別途の端子台部14を固定ネジ等により取付ける必要が無くなるため、更なる部品点数の削減,組立工数の低減及びコストダウンに寄与できる。
【0020】
(9) 好適な態様により、取付用筒部7の外面7eに、駆動モータ部5f,5zのリード配線12f,12zの引回し位置を規制する突起状の配線規制部15を一体形成すれば、各駆動モータ部5f,5zにおけるリード配線12f,12zの接続端子13…に対する誤接続防止に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の好適実施形態に係る電動式レンズ装置に備えるレンズ鏡筒と取付用筒部の斜視図、
図2】同取付用筒部におけるモータ取付部を示す断面背面図、
図3】同取付用筒部における端子台部及び接続端子を示す断面側面図、
図4】同取付用筒部及びこの取付用筒部をレンズ鏡筒に装着した状態を示す一部断面側面図、
図5】同取付用筒部に駆動モータ部を取付け、かつレンズ鏡筒に装着した状態を示す平面図、
図6】同取付用筒部におけるモータ取付部に駆動モータ部を取付けた状態を示す平面図、
図7】同取付用筒部におけるモータ取付部に駆動モータ部を取付けた状態を示す背面図、
図8】同取付用筒部の変更例であってレンズ鏡筒に装着した状態を示す一部断面側面図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係る電動式レンズ装置1の主要構成部品について、図1図7を参照して説明する。
【0024】
例示は、プロジェクタ用の電動式レンズ装置1を示す。電動式レンズ装置1は、図1に示すレンズ鏡筒2を備える。レンズ鏡筒2の内部は、図示を省略したが、少なくとも、フォーカスレンズ及びズームレンズを含む複数のレンズ(レンズ群)を収容した公知のレンズ鏡筒として構成される。一方、レンズ鏡筒2の外周部2sには、回動可能に設け、かつ外周面に周方向のラック4fを形成したフォーカス調整用リング3fを備えるとともに、回動可能に設け、外周面に周方向のラック4zを形成したズーム調整用リング3zを備える。これにより、後述する駆動モータ部5fによりフォーカス調整用リング3fを回動させれば、内部のフォーカスレンズが前後方向に移動し、フォーカシング調整を行うことができるフォーカスレンズ移動機構Mfが構成されるとともに、後述する駆動モータ部5zによりズーム調整用リング3zを回動させれば、内部のズームレンズが前後方向に移動し、ズーミング調整を行うことができるズームレンズ移動機構Mzが構成される。
【0025】
また、電動式レンズ装置1は、レンズ鏡筒2の外周部2sに対して後部から装着可能な筒形に形成した取付用筒部7を備える。この取付用筒部7は、合成樹脂により一体成形し、外面(外周面)7eの前寄りには、フォーカスレンズ移動機構Mfにおけるモータ取付部8fを一体形成するとともに、ズームレンズ移動機構Mzにおけるモータ取付部8zを一体形成する。
【0026】
この場合、モータ取付部8zは、取付用筒部7の前端における外面7eから直角に起立し、駆動モータ部5zの前部(前面部)を支持する支持壁部8zcと駆動モータ部5fの前部(前面部)を支持する支持壁部8fcを有する。この際、支持壁部8fcは支持壁部8zcに対して所定間隔だけ前側にオフセットした位置に配し、この所定間隔は、ズーム調整用リング3zとフォーカス調整用リング3fの間隔に設定するとともに、支持壁部8fcと支持壁部8zcは周方向に隣接させる。また、支持壁部8fcは、左右に位置する二つのネジ孔部21f,21fと、このネジ孔部21fと21f間に位置し、かつ駆動モータ部5fの出力軸5feを挿通させるU形の切欠収容部22fを形成するとともに、支持壁部8zcには、左右に位置する二つのネジ孔部21z,21zと、このネジ孔部21zと21z間に位置し、かつ駆動モータ部5zの出力軸5zeを挿通させるU形の切欠収容部22zを形成する。さらに、支持壁部8zcの左右両端位置から後方へ、補強を兼ねる側面壁部8zp,8zqを一体形成するとともに、支持壁部8fcの左右両端位置から後方へ、補強を兼ねる側面壁部8fp,8fqを一体形成する。支持壁部8fcと支持壁部8zcは周方向に隣接、即ち、モータ取付部8fと8zは、隣同士として近接させて配するため、側面壁部8zpと8fqは、一部を共通壁部として形成する。
【0027】
モータ取付部8f,8zを構成する、支持壁部8fc、側面壁部8fp,8fq、支持壁部8zc、側面壁部8zp,8zqは、図2に示すように、取付用筒部7の外面7eから同一方向に突出形成する。これにより、フォーカスレンズ移動機構Mfとズームレンズ移動機構Mzの二つの移動機構Mf,Mzを備え、合成樹脂により取付用筒部7を金型により一体成形する場合であっても、型開方向を単純化できる。即ち、図2において、モータ取付部8f,8zを形成する金型の一部を上方へ移動させるのみで型開きを行うことができるなど、金型設計及び製造(成形)の容易化に寄与できる。なお、例示の取付用筒部7は、フォーカスレンズを移動させるフォーカスレンズ移動機構Mf及びズームレンズを移動させるズームレンズ移動機構Mzの双方を含むため、一つの取付用筒部7を二つの移動機構Mf,Mzに共用でき、取付用筒部7の利用性を高めることができる。
【0028】
さらに、取付用筒部7の外面7eであって、各支持壁部8fc,8zcの後方には、当該支持壁部8fc,8zcにより前部(前面部)が支持される駆動モータ部5f,5zのの後部を支持して当該駆動モータ部5f,5zを保持する突起状のモータ規制部11f,11zを一体形成する。一方、取付用筒部7の外面7eであって、支持壁部8fcの後方には、駆動モータ部5f,5zのリード配線12f,12zを接続する接続端子13…を取付けるための突起状の端子台部14を一体形成する。この場合、各駆動モータ部5f,5zから導出されるリード配線12f,12zはそれぞれ二本、計四本となるため、端子台部14には、四つの接続端子13…を取付ける。したがって、端子台部14には、図3及び図5に示すように、固定ネジNc…が螺着して各接続端子13…を固定する四つのネジ孔部25…を有する。このように、取付用筒部7に、端子台部14を一体形成すれば、別途の端子台部14を固定ネジ等により取付ける必要が無くなるため、更なる部品点数の削減,組立工数の低減及びコストダウンに寄与できる。また、端子台部14の前方には、駆動モータ部5f,5zのリード配線12f,12zの引回し位置を規制する突起状(ピン状)の配線規制部15を一体形成する。
【0029】
一方、取付用筒部7の後端部には、レンズ側マウント部16を一体形成する。したがって、このレンズ側マウント部16は、不図示のプロジェクタ側マウント部に対して、着脱可能に装着することができる。このように、取付用筒部7にレンズ側マウント部16を一体形成すれば、レンズ鏡筒2側の形状(構成)をより単純化できるため、レンズ鏡筒2の製造性(成形性)をより高めることができるとともに、レンズ鏡筒2の精度向上にも寄与できる利点がある。
【0030】
また、取付用筒部7の後端には、図4に示すように、中心方向に向いたリング形のフランジ部26を一体形成するとともに、このフランジ部26には、複数のネジ挿通孔27…を周方向に沿って等間隔に形成する。このため、前述したレンズ鏡筒2の後端面には、ネジ挿通孔27…の位置に対応するネジ孔部28…を形成する。これにより、複数の固定ネジNx…をそれぞれネジ挿通孔27…に挿通させ、ネジ孔部28…に螺着することができる。即ち、レンズ鏡筒2の外周部2sに装着した取付用筒部7をレンズ鏡筒2に固定する固定部9が構成される。
【0031】
他方、電動式レンズ装置1は、取付用筒部7に取付ける二つの駆動モータ部5f,5zを備える。なお、例示する二つの駆動モータ部5f,5zは同一である。一方の駆動モータ部5zは、図6に示すように、モータ本体31と、このモータ本体31の前端に設けた減速ギアボックス32と、この減速ギアボックス32から前方に突出した出力軸5zeを備える。また、減速ギアボックス32の左右には、取付ネジNs,Nsが挿通する一対のブラケット部34,34を一体形成する。前述したネジ孔部21z,21zは、ブラケット部34,34の位置に対応させて設ける。さらに、出力軸5zeにはピニオン6zを設ける。この場合、ピニオン6zは出力軸5zeに対して回動可能に取付けるとともに、出力軸5zeに設けたスプリング35sにより加圧する加圧機構35を付設する。したがって、ピニオン6zが噛合するラック4zの回動範囲では、出力軸5zeの回転がすべりを生じることなくピニオン6zに対して伝達されるとともに、ラック4zの回動範囲の限界端では、停止したピニオン6zに対して出力軸5zeの回転がすべりにより空転するように設定する。他方の駆動モータ部5fも同じであり、6fは駆動モータ部5fにより回転するピニオンを示す。
【0032】
次に、本実施形態に係る電動式レンズ装置1の組立方法及び各部の機能について、図1図8を参照して説明する。
【0033】
まず、取付用筒部7の単品を用意し、この取付用筒部7に対して二つの駆動モータ部5z,5fを取付ける。この場合、駆動モータ部5zをモータ取付部8zにセットし、図6に示すように、二つの取付ネジNs…を、それぞれブラケット部34,34に挿通させ、ネジ孔部21z,21zに螺着して取付ける。これにより、駆動モータ部5zの前部(前面部)が支持壁部8zcに固定されるとともに、出力軸5zeは切欠収容部22zを通して支持壁部8zcの前方に突出する。そして、ピニオン6zは、ズーム調整用リング3zのラック4zに噛合する。この際、駆動モータ部5zの後部は、図7に示すように、突起状のモータ規制部11zにより支持される。したがって、例示のように、駆動モータ部5zの前部がモータ取付部8zに支持される場合であっても、駆動モータ部5zの位置は保持され、ピニオン6zが浮上がり、ラック4zに対する噛合が外れる不具合は回避され、もって、ピニオン6zとラック4zの噛合は確実に維持される。他方の駆動モータ部5fもモータ取付部8fに対して、上述した駆動モータ部5zと同様に取付けることができる。この場合、ピニオン6fは、フォーカス調整用リング3fのラック4fに噛合するとともに、駆動モータ部5fの後部は、突起状のモータ規制部11fにより支持される。
【0034】
また、四つの接続端子13…を用意し、一方の駆動モータ部5fにおける二本のリード配線12fに二つの接続端子13,13を半田付等により接続するとともに、他方の駆動モータ部5zにおける二本のリード配線12zに二つの接続端子13,13を半田付等により接続する。そして、図3に示すように、各固定ネジNc…をそれぞれ各接続端子13…の取付用孔に挿通させ、端子台部14における四つのネジ孔部25…にそれぞれ螺着する。これにより、端子台部14には、四つの接続端子13…が一定間隔毎に固定される。この際、一方の駆動モータ部5fにおける二本のリード配線12fは、配線規制部15の右側(駆動モータ部5f側)の空間を通して端子台部14に至らせることにより、右側の対応する二つのネジ孔部25…に各接続端子13,13を取付けるとともに、他方の駆動モータ部5zにおける二本のリード配線12zは、配線規制部15の左側(駆動モータ部5z側)の空間を通して端子台部14に至らせることにより、左側の対応する二つのネジ孔部25…に各接続端子13,13を取付ける。このように、端子台部14と駆動モータ部5f,5z間に、リード配線12f,12zの引回し位置を規制する突起状の配線規制部15を設ければ、各駆動モータ部5f,5zにおけるリード配線12f,12zの接続端子13…に対する誤接続防止に寄与できる利点がある。
【0035】
以上の組立工程により、取付用筒部7に、二つの駆動モータ部5f,5z及び四つの接続端子13…を取付けた中間アッセンブリAが得られる。この中間アッセンブリAは、図4に示すように、レンズ鏡筒2の外周部2sに対して後部から装着する。これにより、駆動モータ部5fのピニオン6fは、フォーカス調整用リング3fのラック4fに噛合するとともに、駆動モータ部5zのピニオン6zは、ズーム調整用リング3zのラック4zに噛合する。そして、装着した状態において、複数の固定ネジNx…をそれぞれ各ネジ挿通孔27…に挿通させ、ネジ孔部28…に螺着する。これにより、レンズ鏡筒2の外周部2sに装着した取付用筒部7は、レンズ鏡筒2に固定され、図5に示す電動式レンズ装置1を得ることができる。
【0036】
よって、このような本実施形態に係る電動式レンズ装置1によれば、予め取付用筒部7に駆動モータ部5f,5zを取付けた後、この取付用筒部7をレンズ鏡筒2の外周部2sに装着できるため、レンズ鏡筒2の外周部2sに対して駆動モータ部5f,5zを直接組付ける必要が無くなる。したがって、組付作業性の向上及び組付能率の向上を図ることができるとともに、レンズ鏡筒2を無用に傷付けてしまうなどの二次的弊害を回避できる。また、駆動モータ部5f,5zをレンズ鏡筒2の外周部2sに取付ける従来のような別途の金具が不要になるとともに、この金具をねじ止め等によりレンズ鏡筒2に取付けるための取付工程が不要になる。したがって、部品点数の削減及び組立工数の低減を図れるとともに、これらに伴うコストダウンを図ることができる。しかも、レンズ鏡筒2の外周部2sに装着可能な筒形に形成した取付用筒部7を備えるため、取付用筒部7は、レンズ鏡筒2の外周部2sを覆う外部カバーに兼用することが可能となり、レンズ鏡筒2を外的に保護することができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係る電動式レンズ装置1は、レンズ鏡筒2に対して別体に形成する取付用筒部7を用いるため、図8(a),(b)に示すように、複数の異なるレンズ鏡筒2(2x,2y)に対して共用することも可能となる。なお、図8(a),(b)に例示する取付用筒部7は、図4に示したフランジ部26は設けないとともに、固定部9は取付用筒部7の前部外周面に設けた場合を示す。図8において、図1図7と同一部分には同一符号を付し、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0038】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、フォーカスレンズ移動機構Mfのモータ取付部8fとズームレンズ移動機構Mzのモータ取付部8zは、近接させて配し、かつ取付用筒部7の外面7eから同一方向に突出形成する場合を例示したが、二つのモータ取付部8fと8zを取付用筒部7に対して180゜対向する位置に配するなど、両者の配設位置は問わない。他方、例示したモータ規制部11f,11z,端子台部14及び配線規制部15は、必須のものではなく、必要により設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る電動式レンズ装置は、プロジェクタ及びスチルカメラ等の各種光学機器における電動式レンズ装置として利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1:電動式レンズ装置,2:レンズ鏡筒,2s:レンズ鏡筒の外周部,3f:調整用リング,3z:調整用リング,4f:ラック,4z:ラック,5f:駆動モータ部,5z:駆動モータ部,6f:ピニオン,6z:ピニオン,7:取付用筒部,7e:取付用筒部の外面,8f:モータ取付部,8z:モータ取付部,9:固定部,11f:モータ規制部,11z:モータ規制部,12f:リード配線,12z:リード配線,13…:接続端子,14:端子台部,15:配線規制部,16:レンズ側マウント部,Mf:レンズ移動機構(フォーカスレンズ移動機構),Mz:レンズ移動機構(ズームレンズ移動機構),26:フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8