(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786244
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】車載指向性平板アンテナ、かかるアンテナを含む車両、およびかかる車両を含む衛星通信システム
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/22 20060101AFI20150910BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20150910BHJP
H01Q 21/08 20060101ALI20150910BHJP
H01Q 13/28 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
H01Q13/22
H01Q3/26 Z
H01Q21/08
H01Q13/28
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-551580(P2012-551580)
(86)(22)【出願日】2011年1月27日
(65)【公表番号】特表2013-519281(P2013-519281A)
(43)【公表日】2013年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2011051105
(87)【国際公開番号】WO2011095425
(87)【国際公開日】20110811
【審査請求日】2014年1月20日
(31)【優先権主張番号】1000474
(32)【優先日】2010年2月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505157485
【氏名又は名称】テールズ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】ルノルマン、レジス
(72)【発明者】
【氏名】ドニ、グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥクロワ、ジャケ
(72)【発明者】
【氏名】シュベル、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】リーガル、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ガルニエ、ジル
(72)【発明者】
【氏名】アルメイダ、ジャン−リュック
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−358405(JP,A)
【文献】
特開平11−103201(JP,A)
【文献】
特開2003−066134(JP,A)
【文献】
特開平05−063469(JP,A)
【文献】
米国特許第07379029(US,B2)
【文献】
米国特許第06351244(US,B1)
【文献】
米国特許第05638079(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/18
H01Q 3/26
H01Q 13/10
H01Q 13/20
H01Q 21/06
H03F 3/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射スロット導波管のアレイ(5)を少なくとも1つ含む車載指向性平面アンテナにおいて、
−放射スロット導波管の前記アレイ(5)は、交互に連続した、それぞれ下部(M1)、中間(M2)および上部(M3)の3つの重ね合わされた金属板と、連続した2つの金属板の間に挿入された、それぞれ下部(Sub1)および上部(Sub2)の2つの誘電体基板とを含み、
−前記2つの下部(Sub1)および上部(Sub2)の基板はそれぞれ、少なくとも4つの隣接した導波管(10、11)を含み、前記下部基板および前記上部基板の前記導波管は、同一方向に平行な長手方向軸に沿って位置し、数が同一で、対で対応し、前記中間金属板(M2)を貫通する結合スロット(13)を経由して、対で互いに連通し、
−前記上部基板(Sub2)の各導波管(10)は、前記上部金属板(M3)を貫通する複数の放射スロット(20)をさらに含み、同一の導波管(10)の全ての前記放射スロット(20)は互いに平行で、かつ、同一方向に配向しており、2つの隣接した導波管の前記放射スロットは、山形に配置され、
前記中間金属板(M2)は、前記下部基板(Sub1)の各導波管(11)の上部の金属壁および前記上部基板(Sub1)の各導波管(10)の下部の金属壁を形成しており、
−前記下部基板(Sub1)の各導波管(11)は、導波管の長手方向に沿って、導波管の内部に直列に配置された、移相(21)および増幅(22)のための個々の内部電子回路を含む個々の内部給電回路(25)を含む、
ことを特徴とする車載指向性平面アンテナ。
【請求項2】
各山形が90°に等しい角度を形成していることを特徴とする、請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】
放射スロットの導波管の前記アレイ(5)が方位角方向に回転する台(7)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項4】
前記2つの下部(Sub1)および上部(Sub2)の基板はそれぞれ、4つの隣接した導波管(10、11)を含み、
前記平面アンテナが、放射スロット導波管の前記アレイによって放射された波の円形偏光を確立するための外部移相電子回路をさらに含み、前記外部移相電子回路は、放射スロット導波管のアレイの入力部に配置され、前記外部移相電子回路が、180°に等しい位相値を有し、前記下部基板(Sub1)の隣接する2つの導波管(11)を逆位相で給電し、前記下部基板(Sub1)の隣接する他の2つの導波管(11)を同位相で給電する第1の外部移相器(23)と、90°に等しい位相値を有し、同位相で給電された前記隣接する他の2つの導波管(11)および逆位相で給電された前記隣接する2つの導波管(11)の間で位相直交を確立するための第2の外部移相器(27)とをさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の平面アンテナ。
【請求項5】
前記平面アンテナが、同一構造で、それぞれ送信および受信に専用のための放射スロット導波管の2つのアレイを含むことを特徴とする、請求項4に記載の平面アンテナ。
【請求項6】
前記平面アンテナが、複数のL周波帯放射ダイポール(41、42)をさらに含み、前記放射ダイポールが、前記回転台(7)に取り付けられた放射スロット導波管の前記アレイの前記金属板(M1、M2、M3)のうちの1つの上に設置されていることを特徴とする、請求項5に記載の平面アンテナ。
【請求項7】
前記平面アンテナが、全ての前記導波管の前記放射スロットが全て同一方向に配向している、放射スロット導波管のアレイをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の平面アンテナ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のアンテナを少なくとも1つ含む車両。
【請求項9】
請求項8に記載の車両を少なくとも1つ含む衛星通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載指向性平面アンテナ、かかるアンテナを含む車両、およびかかる車両を含む衛星通信システムに関する。本発明は、顕著に、衛星に基づいた通信の分野、およびより具体的には、衛星に設置された中継器を経由して移動端末と地上局との双方向Ka周波帯接続を確保するために、地上、海上または航空の輸送手段などの移動車両に設置された通信設備に適用される。特定の実施形態によれば、本発明はまた、Ka周波帯およびL周波帯でそれぞれ作動する、2つの別個の衛星の同時追跡に適用される。
【背景技術】
【0002】
列車、バスおよび飛行機などの輸送手段において、広帯域インターネットサービスへの接続の点での要求および高性能で安価な小型アンテナの点での要求が高まっている。現在、例えば、列車またはバスの乗客のインターネット接続を確保するために、L周波帯で作動する無指向性の高いアンテナを使用して、移動端末と地上局との間の衛星リンクを達成することが知られている。問題は、L周波帯において、利用可能な周波数がほとんどなく、そのため、通信の送信ビットレートが非常に低いことである。ビットレートを増加させるために、Ku周波帯(10.5GHz〜14.5GHz)またはKa周波帯(20〜30GHz)で作動する衛星とのリンクを確立し、かつ、指向性アンテナを製造することが必要である。しかしながら、指向性アンテナでは、車両の位置に関わらず、連続して衛星を指向する必要がある。さらに、KuまたはKa周波帯では衛星に基づいた送信は、衛星を指向する方向にある障害物に遮蔽される可能性がある。障害物は、植物または、建物あるいは橋のような構造基盤である可能性がある。したがって、衛星との無線周波数リンクの利用可能性を高めるために、2つの衛星を同時に追跡可能な空間的多様性を用いることが必要である。2つの衛星は指向方向が異なるため、2つの衛星を同時に追跡するには、電子走査アンテナのような独立した指向を有するデュアルビームアンテナ、または2つの機械式指向アンテナが要求される。
【0003】
電子走査アンテナの場合には、ヨーロッパのような領域を網羅するために、送信および受信の際、アンテナは、方位角方向に0°から360°、仰角方向に平均20°から60°に位置する角度領域において確実に指向できなければならない。
【0004】
これらのアレイアンテナは、平面であること、そしてこれによって高さ方向に小型であるという長所を持つ。しかしながら、網羅すべき角度領域が非常に大きいため、良好な性能を得て、かつアンテナ放射パターンにアレイローブが現れないようにするには、非常に多くの数の位相制御を含む、高額のビーム形成アレイを使用する必要がある。例えば、約1m
2の面積を有するKu周波帯のアンテナでは、アンテナの放射素子の数は15000を超えなければならず、これはアンテナのコストおよび複雑さの点から輸送手段の用途には使えない。
【0005】
機械式指向を備えた2重アンテナを使用する場合、各アンテナは、独立機械式指向システムを使用することにより、ビームを作り、2つの衛星を同時に指向する。この種のアンテナでは、2つの機械的運動を組み合わせることにより、衛星の方向に各アンテナを指向させることができる。第1の機械的運動は、平面XY内に配置され、かつ、アンテナを方位角方向に確実に方向づける回転台によって得られる。仰角方向の第2の運動は、回転台に固定された例えば平面鏡などの補助装置によって達成される。各アンテナは従来、放物面反射器および、その反射器を照らす放射ソースを含む。反射器の寸法を縮小し、かつアンテナを低背化するために、その周囲は円ではなく楕円である。典型的には、現在高速列車に設置されているこのような簡易アンテナの高さは約45cmである。この高さは今日の列車には適合するが、列車の屋根とカテナリとの間のアンテナの設置に利用できる高さがずっと低い将来の2階建て高速列車には大きすぎる。
【0006】
同様に、航空分野での用途については、アンテナの高さは、燃料消費量と同様に飛行機によって生成される抗力に影響を及ぼす。例えば、飛行機に設置された今日の反射器型アンテナは、高さが約30cmで、8人の乗客を追加したのと等しい追加の燃料消費量を生じさせる。
【0007】
機械式指向アンテナを低背化できる構造が存在する。第1の構造によれば、アンテナは、その間で電流の縦成分が循環する2つの平行平板、および、エネルギーを結合し、宇宙へ放射する横方向に連続する溝の一次元アレイからなる。2つの平板および溝のアレイは、互いに独立して機械的に回転する、同一平面上の2つの取付板に取り付けられており、2つの回転運動は重ね合わせられ、取付板の同一面内で実行される。下側取付板の向きにより、方位角方向に指向する方向を調整することが可能になり、上側取付板の向きにより、溝を可変的に傾斜でき、このようにして、アンテナによって生成されたビームの仰角方向の指向方向を修正することができる。しかしながら、このアンテナは最初に直線偏光下で作動するため、アンテナの偏光面を制御するために、アンテナの上面に取り付けられた付加的で方向づけ可能な偏光グリッドを補うことが必要であり、それによって実行がより複雑になり、アンテナの高さが高くなり平面ではなくなる。
【0008】
低背化した平面アンテナの第2の構造によれば、アンテナは、いくつか交互に上下に重ね合わせられた、基板面および金属面の面を含む。アンテナは、第1の下側金属面、そしていくつかのソースを含む第1の基板面を含む。第1の基板面はソースによって放射された波が反射する放物面を形成している側面端部を含む。第1の基板面上には、反射した波面を結合するためのスロットを含む第2の金属面があり、各結合スロットは、同一の第2の基板面において、互いに平行に並んで配置されているそれぞれのスロット導波管内に現れる。その後、導波は、第3の上部金属面内に作られた複数の放射開口部を通って放射されたビームの形で放射される。アンテナの面に垂直な平面において、仰角方向のビームを走査し斜視することは、様々なソースを切り替えることにより得られるが、方位角方向の指向を修正することはできない。さらに、この種の非常にコンパクトなアンテナは、高電力のスイッチング手段を必要とする欠点があり、これは簡単には達成できない。さらに、ソースの切り替えは個別であり、そのため、ビームを連続的に指向することはできない。最後に、この非常にコンパクトなアンテナは、唯一の電源によって給電され、それによって、アンテナをかなり嵩張らせる嵩高い電力増幅器を使用することが必要となり、輸送手段の用途には大きくなりすぎる。
【0009】
この平面アンテナの個別指向の問題を解決するために、単一のソースだけを使用し、かつ、方位角方向の指向を調整可能にする回転台に平面アンテナを配置することが提案されてきた。この回転台は、その上に関節接合されたミラーを含み、回転台の面に対するミラーの傾斜角度は、回転によって変えることができる。ソースによって放射された平面波は、この波を選択された指向方向に沿って反射するミラーを照らし、ミラーの傾斜角度により、放射されたビームの仰角を調整することができる。このアンテナは長楕円で、回転台上に関節接合された領域のミラーの寸法は、回転台上方の傾斜した領域のミラーの寸法より、はるかに大きい。そのことによって、アンテナの高さを20または30cmに低くできるが、この高さは輸送手段の用途にはまだ高すぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の目的は、既存アンテナの欠点を含まず、移動輸送手段に設置できる車載指向性平面アンテナを製造することである。特に、本発明の目的は、Ka周波帯で作動して、高さ方向に非常にコンパクトで、簡単に実行でき、低コストで、輸送手段の位置に関わらず、衛星を連続的に指向し続けることができ、方向付けが可能なグリッドを追加せずに偏光面を制御できる車載指向性平面アンテナを製造することである。
【0011】
本発明の第2の目的は、Ka周波帯およびL周波帯で作動し、2つの衛星を同時に追跡可能な、非常にコンパクトな車載ハイブリッド平面アンテナを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、放射スロット導波管の少なくとも1つのアレイを含み、放射スロット導波管のアレイは、交互に連続した、それぞれ下部、中間および上部の3つの重ね合わされた金属板と、2つの連続した金属板の間に挿入された、それぞれ下部および上部の2つの誘電体基板とを含む、車載指向性平面アンテナに関する。下部および上部の2つの基板はそれぞれ、少なくとも4つの隣接した導波管を含み、下部基板および上部基板の導波管は同一の数で、対で対応し、中間金属板を貫通する結合スロットを経由して、対で互いに連通している。上部基板の各導波管は、上部金属板を貫通する複数の放射スロットをさらに含み、同一の導波管の全ての放射スロットは互いに平行で、同一方向に配向し、2つの隣接した導波管の放射スロットは山形に配置されている。下部基板の各導波管は、移相および増幅のための個々の内部電子回路を含む個々の内部給電回路を含む。
【0013】
好ましくは、各山形は90°に等しい角度を形成している。
【0014】
有利には、放射スロット導波管のアレイは、方位角方向に回転する台に取り付けられている。
【0015】
好ましくは、平面アンテナは、放射スロット導波管のアレイによって放射された波の円形偏光を確立するための外部移相電子回路をさらに含み、外部移相電子回路は、180°に等しい位相値を有し、2つの導波管を逆位相で給電し、他の2つの導波管は同位相で給電するための第1の外部移相器と、90°に等しい位相値を有し、同位相で給電された2つの導波管と逆位相で給電された2つの導波管との間の直角位相を確立するための第2の外部移相器とを含む。
【0016】
好ましくは、平面アンテナは、同一の構造で、それぞれ送信および受信に専用のための、放射スロット導波管の2つのアレイを含む。
【0017】
有利には、平面アンテナは複数のL周波帯放射ダイポールをさらに含み、放射ダイポールは、回転台に取り付けられた放射スロット導波管のアレイの金属板のうちの1つに設置されている。
【0018】
本発明はさらに、そのような平面アンテナを少なくとも1つ含む車両、およびそのような車両を少なくとも1つ含む衛星通信システムに関する。
【0019】
本発明の他の特定の特徴および利点は、添付の概略図面を参照して、単に例示的であって非限定的な実施例によって、以下の記述において明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】本発明による平面アンテナの例示的内部構造の部分斜視図を示す。
【
図1b】本発明による平面アンテナの例示的内部構造の部分断面図を示す。
【
図2】本発明による、別々の送信および受信の機能を含む、円形偏光を備えた平面アンテナの例示的構造の設置のブロック図を示す。
【
図3】本発明による、別々に送信および受信の機能を含み、KaまたはKu周波帯で交互に作動する、2周波数帯平面アンテナの一実施例の設置図を示す。
【
図4】本発明による、別々の送信および受信の機能を含み、L周波帯と、KaまたはKu周波帯とで同時に作動する、3周波数帯平面アンテナの一実施例の設置図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1aおよび
図1bに部分的に示した平面アンテナは、3層の平板構造である。これは、交互に連続した、上下に重ね合わされた、それぞれ下部、中間および上部の3つの金属板M1、M2、M3と、2つの連続した金属板の間に挿入された、それぞれ下部および上部の2つの誘電体基板Sub1、Sub2とを含む、放射スロット導波管のアレイ5を含む。アンテナの様々な層の面は平面XYと平行である。アンテナの高さはXY平面に直交する軸Zに沿っている。上部誘電体基板Sub2は放射スロット導波管10を支持し、下部基板Sub1は、マイクロ波信号によって各放射スロット導波管10に個々に給電するための導波管11を支持している。アンテナは、Ka周波帯で作動しなければならず、この作動領域内で課された標準に準拠するためには円形偏光下で波を放射しなければならない。したがって、本発明によれば、アレイ5は、上部基板中の考案された少なくとも4つの放射スロット導波管と、下部基板中の考案された4つの対応する給電導波管とを含む。上部基板の放射スロット導波管10および下部基板の導波管11は、同一の数で、対で対応し、中間金属板M2を貫通する結合スロット13を経由して、対で互いに連通している。このように、
図1aでは、下部基板Sub1の各導波管11は、それぞれ下部M1および中間M2の金属板によって形成された下部および上部の2つの金属壁と、下部M1および中間M2の2つの金属板に連結している側面金属壁とを含む。下部基板Sub1の各導波管11は、中間金属板M2を貫通し、上部基板Sub2の導波管10に現れる結合スロット13をさらに含む。上部基板Sub2の各導波管10は、それぞれ中間M2および上部M3の金属板によって形成された下部および上部の2つの金属壁と、中間M2および上部M3の2つの金属板に連結している側面金属壁とを含む。導波管10、11は、同一方向に平行な、例えばX軸と一致してもよい長手軸に沿って位置し、この軸上の2つの対向する端部15、16を含む。
図1bに示したように、上部基板Sub2の導波管は、3つの金属板M1、M2、M3と一緒に連結している第1および第2の横断金属壁17、18によって、導波管の2つの端部15、16で閉鎖されている。一方、下部基板の導波管は、第1の横断壁17によって、1つの端部16のみで閉鎖されており、導波管の開口端部15は信号入力19に対応している。上部基板Sub2の各導波管10は、上部金属板M3を貫通する複数の放射スロット20をさらに含む。同一の導波管中の考案された全ての放射スロット20は、互いに平行で、XおよびYの方向に関して例えば45°で同一方向に配向しており、それらの配向と平行に偏光された波面を放射している。2つの隣接した導波管10の放射スロット20は山形に配置され、各山形は例えば90°に等しい、ゼロでない角度を形成している。
図1aでは、全てのスロットは、XおよびYの方向に関して45°で配向しているが、2つの隣接した導波管の放射スロット20は、山形に配置され、それらの間は90°の角度を形成している。
【0022】
下部基板Sub1の各導波管11は、その開口端部で印加された到来マイクロ波信号19を受信できる個々の内部給電回路25を含み、この個々の内部給電回路25は、送信すべき信号の位相を制御するための内部移相器21およびアンテナによって放射される放射線を制御可能にする到来信号を増幅するための内部増幅装置22とを含む、個々の内部電子移相増幅回路を含む。到来信号19は、例えば外部ソース24によって放射されてもよく、そして次いで、例えば1つが、下部基板Sub1の各導波管11の入力部で連結された分割器26で分割されてもよい。移相21および増幅22の後、下部基板Sub1の導波管11のうちの1つに入る到来信号19は、中間金属板M2中の結合スロット13を経由して上部基板Sub2の対応する導波管10内に送信され、次いで、放射スロット20によって放射される。アンテナの平面XYに垂直な平面ZXにおける、仰角方向のビームの走査および斜視は、放射スロット導波管10の各々に対応する下部基板の各導波管11の個々の内部給電回路によって電子的に適用される位相および振幅の法則を制御することで行われる。
【0023】
下部基板Sub1の各導波管11は、内部回路25によって個々に給電され、かつ移相21および増幅22のための個々の内部電子回路を含むため、位相制御は連続的な方法で行われ、それによって、仰角方向でのアンテナの放射方向を連続的に制御することが可能となる。さらに、増幅は各導波管11中で分布していることにより、低電力増幅器を使用し、複雑で嵩高い外部増幅回路を省くことができる。その上、ビームの連続的な走査を達成するために、高エネルギー源スイッチング手段は必要ない。
【0024】
放射された波が円形偏光を有するために、放射スロット導波管のアレイ5は、アレイ5の入力部に配置された第2の外部移相電子回路をさらに含み、この第2の外部移相電子回路は、180°に等しい位相値を有し、第1の放射スロット導波管に関して逆位相で第2の放射スロット導波管に給電するための第1の外部移相器23と、90°に等しい位相値を有し、第1の2つの導波管11に給電する信号ならびに、第3および第4の導波管11に給電する信号の間に位相直交を確立するための第2の外部移相器27とを含む。
【0025】
各放射スロット導波管は、XおよびYの方向に関して45°で傾斜したスロットを有し、それらの間で90°の角度を形成しているため、各導波管10のスロットは、それぞれXおよびYの方向の2つの偏光成分を含む波面を放射する。第1および第2の導波管は逆位相で給電されるため、それらが放射する波はベクトル的に結合し合い、X方向に偏光された合成波を広範囲に放射し、Y方向の偏光成分は互いに打ち消し合う。第3および第4の導波管は同位相で給電されるため、それらが放射する波はベクトル的に結合し合い、Y方向に偏光された合成波を広範囲に放射し、X方向の偏光成分は互いに打ち消し合う。次いで、それぞれXおよびYの方向に偏光され、直交位相で給電された2つの合成波は結合し合って、放射スロット導波管5のアレイによって放射された広範囲の円偏波になる。
【0026】
このように得られた平面アンテナ6を、方位角方向に回転する台7上に配置することによって、方位角方向でのビームの指向は台を回転させて達成され、仰角方向のビームの指向は到来信号19に適用される位相法則によって得られる。この位相法則は、下部基板Sub1の各導波管11に一体化された、内部移相器21および内部増幅器22を制御することで得られる。有利には、放射スロットを備えた導波管10は、低い通過帯域で作動するため、送信および受信の機能を分けることができ、また、
図2で示したように、送信専用のスロット導波管の第1のアレイと、図示してないが、受信専用のためのスロット導波管の第2のアレイとを含む、平面アンテナ6、8のシステムを使用することができ、スロット導波管の2つのアレイは、同一の構造を有し、方位角方向に回転する同一の台7の上に取り付けられている。回転台に取り付けられた平面アンテナのシステムにおける送信および受信のアンテナそれぞれの仰角方向の指向は、2つのアンテナの放射アレイを形成しているスロット導波管中で循環している各信号の位相を増幅し、電子制御することにより達成される。
【0027】
アンテナが取り付けられる回転台のないアンテナの高さは、数ミリメートルである。回転台7を備えたアンテナの全高は、回転台の高さとほとんど等しく、すなわち約2から3
cmである。
【0028】
このように製造された平面アンテナは、輸送手段、特に将来の高速列車の設置するために課された高さ条件を満たす円偏波を放射する。さらに、このアンテナに給電する信号の位相および振幅の電子制御は、多数の制限された能動素子、典型的には50個未満の要素を含む。
【0029】
用途によっては、特に航空分野では、所望の通信可能区域は非常に広く、飛行機は、Ka周波帯衛星がもはや可視ではないが、Ku周波帯衛星がアクセス可能な区域で作動しなければならない。この場合、衛星回線リンクの破損がないように、
図3で示したように、Ka周波帯で作動する円形偏光の送信アンテナ6および受信アンテナ8を、Ku周波帯において、直線偏光下で作動する送信アンテナ30、31および受信アンテナ32、33と組み合わせ、Ku周波帯の送信および受信のアンテナはKa周波帯アンテナについて記載したのと同一の構造で製造され、方位角方向に回転する同一の台7に取り付けられていることが有利である。この場合、現在施行されている基準に従って、Ku周波帯アンテナは、直線偏光下で作動しなければならない。直線偏光は、上部基板の全ての導波管の放射スロット全てを同一方向に配向させることにより得られる。
【0030】
図4では、Ka周波帯(およびまたはKu周波帯)ならびにL周波帯において作動し、2つの衛星を同時に追跡可能な、非常にコンパクトな車載ハイブリッドアンテナシステムを示す。L周波帯アンテナは、KaおよびまたはKuアンテナと同一の、方位角方向に回転する台7に設置されている。L周波帯アンテナは、2つの直交方向に配向した複数の放射交差ダイポール40を含み、各放射ダイポールは、Ka周波帯で作動するアンテナおよびまたはKu周波帯で作動するアンテナの、上部M3、中間M2または下部M1の金属板のうちの1つに設置された2つの金属付属部41、42を含む。これらの付属部41、42は、L周波帯で作動するような寸法になっているため、それらが設置されているKaまたはKuのアンテナを妨害しない。交差ダイポールは、移相器(図示せず)によって同位相で個々に制御され、台7の方位角方向の向きに追随することによる、かつKaおよびまたはKuのアンテナによって指向された衛星によって課された、それら自身の特定の位相法則に従って放射する。L周波帯アンテナのダイポール41、42の位相法則は、L周波帯で作動する衛星を連続的に指向するように電子的に実行される。このように製造されたアンテナは非常にコンパクトであり、それぞれKa周波帯およびL周波帯またはKu周波帯およびL周波帯で作動する、2つの衛星を同時に追跡可能とする。この同時追跡は、方位台に設置された放射スロット導波管のアレイの種類、および、これらのアレイの放射スロットの配向と組み合わされた位相法則により生成された線形およびまたは円形の偏光に応じて、KaおよびLの2周波帯操作、またはKa、KuおよびLの3周波数帯操作によって行われる
【0031】
本発明は、特定の実施形態と共に記述されるが、それらに決して限定されず記述された手段の全ての技術的均等物を含み、それらの組合せが本発明の範囲内であれば、それらの組合せも同様に含むことは非常に明白である。