(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5786253
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】車両進入阻止用可搬型バリケード
(51)【国際特許分類】
E01F 13/00 20060101AFI20150910BHJP
E01F 13/04 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
E01F13/00 301
E01F13/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-242285(P2014-242285)
(22)【出願日】2014年11月11日
【審査請求日】2014年12月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501098061
【氏名又は名称】株式会社サンエイ
(72)【発明者】
【氏名】石上 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村上 裕一
(72)【発明者】
【氏名】東 利光
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−154417(JP,A)
【文献】
実開平01−160012(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00−9/012
E01F 13/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突材付き水平長軸の2種の組み合わせにより構成され、水平長軸は、パイプ状の外軸と、この外軸の内部に軸方向への進退動作と回転とが可能に通された内軸とで内外二重軸構造とされるとともに、外軸と内軸との間には、内軸を外軸に対して常に一定方向に弾発する付勢手段が設けられ、突材は、外軸用と内軸用の2種でなり、外軸用の突材は、その長手中途が外軸に挿通された状態で外軸の長手方向に離間した複数個所に互いに平行をなす関係で固定配備され、内軸用の突材は、内軸側に連結されてその長手中途が外軸に対し軸方向と垂直な面方向である外軸回りに回転し得る状態で外軸用の突材と対応する複数本で構成されて互いに平行をなす関係で配備されるとともに、外軸用と内軸用の突材は、外軸回りにおいて平行な面内で回転可能なように付勢手段を介して隣接する折畳状態と該折畳状態から相対的回転によりX字状をなす関係において相対回転不能に弾接的に咬み合う拡開状態との2つの状態に折畳および拡開各操作により切換可能で、付勢手段に抗した外力の付与により内軸用と外軸用突材の咬み合いを解除し折畳状態に復帰可能に構成されていることを特徴とする車両進入阻止用可搬型バリケード。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、折畳状態から拡開状態への変換が、突材への開き操作の付加によりなされ、拡開状態から折畳状態への変換が、少なくとも内軸へのシフト操作の付加に応じてなされるように構成されている車両進入阻止用可搬型バリケード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両進入阻止用可搬型バリケードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、暴走を強行しようとする車両に対しては、車両阻止トライアングルとか車両阻止アングルなどと称されるバリケードの複数基を想定される現場まで搬送して路上に適宜配列をもって設置しておくことで転倒や喰い込み障害などを起こさせて進入阻止に繋げるように対処している。
そうしたバリケードの従来技術として最も基本的かつ簡易なものに特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭56−9690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されたバリケードは、車両阻止架と称される器具で、水平長軸の両端及び両端間に該長軸に固定するX状部材を設けるとともに、両端のX状部材の下端に長軸方向にのみ移動可能に固定キャスタを取付けて構成されることを特徴とするものである。
ところで、このバリケード(車両阻止架)は、水平長軸に対しX状部材の複数を一体に固着してなるものであるため、現場まで搬送し設置し持ち帰るなどの一連の作業が非常に手間で作業員への損傷のおそれも多分にあった。
【0005】
本発明は上記問題を解決しようとするものであり、折畳式で平枠コンパクト化することができることにより、現場への搬送から設置ならびに持ち帰りまでの一連の作業が簡易かつ身体損傷なく行える車両進入阻止用可搬型バリケードを提供することを目的とする。特に、折畳状態と拡開状態との間の相互切換作業が複雑なロックおよび解除操作などの必要がなく極く簡単な要領でもって行うことができ、しかも拡開状態が突材同士の咬み合いにより確実に得られて対抗力を強力に発揮し得るようにすることができる車両進入阻止用可搬型バリケードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、請求項1に記載の発明は、突材付き水平長軸の2種の組み合わせにより構成され、水平長軸は、パイプ状の外軸と、この外軸の内部に軸方向への進退動作と回転とが可能に通された内軸とで内外二重軸構造とされるとともに、外軸と内軸との間には、内軸を外軸に対して常に一定方向に弾発する付勢手段が設けられ、突材は、外軸用と内軸用の2種でなり、外軸用の突材は、その長手中途が外軸に挿通された状態で外軸の長手方向に離間した複数個所に互いに平行をなす関係で固定配備され、内軸用の突材は、内軸側に連結されてその長手中途が外軸に対し
軸方向と垂直な面方向である外軸回りに回転し得る状態で外軸用の突材と対応する複数本で構成されて互いに平行をなす関係で配備されるとともに、外軸用と内軸用の突材は、外軸回りにおいて
平行な面内で回転可能なように付勢手段を介して隣接する折畳状態と該折畳状態から相対的回転によりX字状をなす関係において相対回転不能に弾接的に咬み合う拡開状態との2つの状態に折畳および拡開各操作により切換可能で、付勢手段に抗した外力の付与により内軸用と外軸用突材の咬み合いを解除し折畳状態に復帰可能に構成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のものにおいて、
折畳状態から拡開状態への変換が、突材への開き操作の付加によりなされ、
拡開状態から折畳状態への変換が、少なくとも内軸へのシフト操作の付加に応じてなされるように構成されている。
尚、前記内軸は、パイプである場合と中実軸である場合とがある。
【発明の効果】
【0007】
上述したように請求項1に記載の発明は、突材付き水平長軸の2種の組み合わせにより構成され、水平長軸は、パイプ状の外軸と、この外軸の内部に軸方向への進退動作と回転とが可能に通された内軸とで内外二重軸構造とされるとともに、外軸と内軸との間には、内軸を外軸に対して常に一定方向に弾発する付勢手段が設けられ、突材は、外軸用と内軸用の2種でなり、外軸用の突材は、その長手中途が外軸に挿通された状態で外軸の長手方向に離間した複数個所に互いに平行をなす関係で固定配備され、内軸用の突材は、内軸側に連結されてその長手中途が外軸に対し
軸方向と垂直な面方向である外軸回りに回転し得る状態で外軸用の突材と対応する複数本で構成されて互いに平行をなす関係で配備されるとともに、外軸用と内軸用の突材は、外軸回りにおいて
平行な面内で回転可能なように付勢手段を介して隣接する折畳状態と該折畳状態から相対的回転によりX字状をなす関係において相対回転不能に弾接的に咬み合う拡開状態との2つの状態に折畳および拡開各操作により切換可能で、付勢手段に抗した外力の付与により内軸用と外軸用突材の咬み合いを解除し折畳状態に復帰可能に構成されていることを特徴とするので、折畳式で
平枠状にコンパクト化することができることにより、現場への搬送から設置ならびに持ち帰りまでの一連の作業が簡易かつ身体損傷なく行える車両進入阻止用可搬型バリケードを提供することができる。特に、折畳状態と拡開状態との間の相互切換作業が複雑なロックおよび解除操作などの必要がなく極く簡単な要領でもって行うことができ、しかも拡開状態が突材同士の咬み合いにより確実に得られて対抗力を強力に発揮し得るようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】 可搬型バリケードの一実施形態を折畳状態として示す平面図。
【
図3】
図2のA方向からみた状態のバリケードを示す矢視図。
【
図6】 咬み合い手段の他の実施形態を示す正面図。
【
図7】 咬み合い手段の他の実施形態を示す正面図。
【
図8】 可搬型バリケードを拡開状態として示す正面図。
【
図10】
図9のバリケードを逆様にして設置した様子を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図5並びに
図8から
図11は本発明の車両進入阻止用可搬型バリケードの一実施形態を示しており、そのうち
図1から
図5は折畳状態とされたバリケードを、
図8から
図11は拡開(設置待機)状態とされたバリケードをそれぞれ示している。この実施形態のバリケードは、全体がスチールやステンレスあるいはアルミ合金などの強度のある金属で製作されており、構造としては突材付き水平長軸の2種の組み合わせにより構成されている。
水平長軸は、丸パイプ状の外軸1と、軸方向への進退動作と回転とが可能なように外軸1の内部に通された丸パイプ状の内軸2とで内外二重軸構造とされている。
【0010】
外軸1と内軸2とは共に基端(
図2の右側の端)を閉止し先端(
図2の左側の端)を開放状とした略同じ長さ(例えば、70cm前後)のパイプで直径サイズの異なるものでなっている。
前記外軸1と内軸2の基端同士間には、
図2の右欄に示すように常時反発式のバネである付勢手段3を内蔵してあって内軸2の閉止した基端を介して内軸2を常に先端方向へ弾発するようになっている。
内軸2の先端は、外軸1の先端から常に突き出した状態とされる。その突き出し量は、
図2の折畳状態では短く
図8の拡開状態では長くなる。
【0011】
突材は、外軸用突材5と内軸用突材6の2種でなり、外軸用の突材5は、一端が先鋭状をなす正四角断面のパイプでなり、この実施形態では3本共通のものが用意されて、その長手中途に外軸1と同じ寸法のものとして形成した丸孔に外軸1が挿通された状態で外軸1の長手方向に一定間隔をおいて離間した個所に互いに平行をなす関係で溶接により固定配備されている。
突材5の他端には、
図3に示すように、外軸用突材5の縦中心線よりも左に偏心した位置にボール型第1キャスタ7aが取り付けられている。
また3本の突材5…の一側には、フラットプレートやアングル材などによる第1連結材8が突材5…の全体を一体化するために取り付けられている。
【0012】
内軸用の突材6は、一端が先鋭状をなし他端にボール型第2キャスタ7bを備えた正四角断面のパイプでなり、この実施形態では3本共通のものが用意されて、その長手中途に形成した丸孔に外軸1が通されて外軸1に対し軸方向に進退と回転が可能とされている。第2キャスタ7bは、前記第1キャスタ7aとは逆の側に偏心したものとされ、これにより、
図3の側面からみると第1と第2のキャスタ7a、7bとは互いに一定量離間した関係とされ、そのことから例えば、折畳状態から外軸1を押し下げるように操作すれば、両キャスタ7a、7bは離れようとし、その結果、突材5,6は自動的に開くように作用する。
【0013】
内軸用の突材6は、折畳状態において、外軸用の突材5に平行に近接した関係で配備されるとともに、内軸用の突材6には、
図4に示すような外軸1の外径よりも大きい内径孔をもつ矩形板型の連結板10が固着されるとともに、この連結板10から突設した連結アーム11の先端を内軸2の外周に連結固定してある。この連結アーム11の先端は、
図4および
図5に示すように、外軸1に形成したL字形のスリット12を通じて内軸2に溶接されている。この溶接は後付け溶接とされている。
3本の突材6…の一側には、フラットプレートやアングル材などによる第2連結材13が突材6…の全体を一体化するために取り付けられている。
尚、連結アーム11は、
図4に仮想線11´で示すように、強度を増すため線対称な位置にも設けてもよく、この場合、スリット12も点対称な位置に追加的に設けることとする。
【0014】
外軸用と内軸用の突材5,6は、前記各丸孔に対応する同芯位置に角溝型をした凹欠部(展開ロック手段)15,16を備えている。凹欠部15,16の縦横の辺長さは前記丸孔の内径(外軸1の外径)よりも5ないし10mm程度長くされている。また、凹欠部15,16の溝深さは、突材5,6の断面上の外周辺長Wの1/2とされている。この凹欠部15,16の溝深さは、
図8の矢印Fのように咬み合い解除が少しのシフト量により簡単に行えるように
図6に示すように例えば、突材5,6の幅Wの1/3あるいは1/4の浅いものにしてもよい。
また、凹欠部15,16は、
図7に示すように、そのうちの一方16あるいは15を省略することができる。この場合、前記シフト量はさらに小さいものとなり、咬み合いもしやすいものとなる。
この凹欠部15,16は、
図2のような折畳状態においては外軸1の軸方向に対向する形とされる一方、
図8のような突材5,6がX字状とされる拡開状態においては相対的に90度回転してそれぞれの溝が回転不能な状態に咬み合うものとされる。
尚、突材5,6間には、
図2の折畳状態において吸着し突材5,6を
図3の矢印a、aのように展開操作することで離脱するマグネット(折畳保持手段)18が設けられている。
折畳保持手段の他の例として、
図1および
図2に示すように内軸用突材6に取り付けられた受け19aと外軸用突材5に取り付けられたレバー19bとでなる掛止レバー19を前記マグネット18とは別に構成することがある。
また、各突材5,6は、外軸1を中心として、連結材8,13およびキャスタ7a、7bを備える一方側が重くなっている。
【0015】
折畳状態のバリケードは、
図1ないし
図5に示すように、マグネット18による吸着力により外軸用突材5…の軸方向一側に内軸用突材6…が平行軸状に隣接して保持されるとともに、付勢手段3による弾発により内軸2が
図2の左方向に弾発されることで連結アーム11を介して内軸用突材6が外軸用突材5側に押し付け保持されるようになる。バリケードは、この折畳状態にしたものを複数枠縦あるいは横向きに重ね合わせて搬送することができるので、狭いスペースでもって多くのバリケードを運ぶことができる。また、バリケードを搬送車両内に運び込んだりそこから運び出して現場まで運び付けたりあるいは現場から搬送車両に持ち込む際などには、バリケードを折畳状態にすることができて運びやすくしかも
図9のようなX字状でないため運ぶ人を傷付けたりするおそれがない。折畳状態にして複数を同時に運ぶことができる。キャスタ7はその際に運びやすくするが必須のものではない。
【0016】
折畳状態のバリケードに対し、
図2の矢印Xのように外軸1を押し下げるようにすると、
図3のように両キャスタ7a、7bが互いに偏心した離間位置にあることから、両突材5,6はマグネット18が相手5から外れてのち矢印a、aのように左右に拡開する。この拡開中は、付勢手段3の作用により一方の突材6が他方の突材5側に常に軽く押し付けられながら回転してゆく動作となり、最後に両突材5,6は、
図8ないし
図11に示すように、相対角度が90度になったところで対向する凹欠部15,16同士が直交状をなすように深く咬み合ってそこで回転不能な拡開状態を得、それを保持するようになる。
【0017】
その間、連結アーム11の内軸2側の先端は、
図4および
図5のように、内軸2側に結合を保ちながら回転と軸方向へのシフトを可能にするようになっているので、内軸2の先端は、
図5の矢印のようにスリット12の周溝部分を通って内軸2と外軸1の相対回転を案内したあと、アーム11の先端はスリット12の軸方向溝部分を通ることで外軸1に対し内軸2を軸方向にシフトさせ突材6の突材5側へシフト移動を許すようにする。
尚、前記キャスタ7a、7bは、それぞれ偏心して互いに離間した関係になっているが、
図3においてこれら7a、7bを同一列状に配してもよい。この場合、突材5,6を拡開するには外力により両突材5,6を開き操作する必要がある。
【0018】
拡開状態を得たバリケードは
図8および
図9のようにキャスタ7a、7b側を路盤20上にくるようにして設置し待機態勢とするようにしてもよいが、
図10に示すようにキャスタ7a、7b側を上に突材5,6の先鋭部分を路盤20側にくるようにしてバリケードが転がらずまた滑りにくく対抗機能を発揮するようにしてもよい。
【0019】
拡開状態から折畳状態に戻すには、内軸2を付勢手段3の弾発力に抗して
図8の矢印F方向に戻すとともに外軸1を
図8の矢印Yのように持ち上げるようにすると、凹欠部15,16の咬み合いが外れる同時に突材5,6が下部を重くしてあることから矢印−aのように閉じる方向に自動的に作用する。突材5,6は最後にマグネット18の作用で
図1ないし
図3の折畳状態に戻される。
尚、内軸2と外軸1間には、
図8に示すように、回転リング21付き戻しレバー22を設けて矢印G方向へのレバー操作により内軸2をF方向に押し戻すように構成することもできる。
【符号の説明】
【0020】
1…外軸 2…内軸 3…付勢手段 5…外軸用突材 6…内軸用突材 15,16…凹欠部。
【要約】 (修正有)
【課題】折畳式で平枠コンパクト化することができることにより、現場への搬送から設置ならびに持ち帰りまでの一連の作業が簡易かつ身体損傷なく行える車両進入阻止用可搬型バリケードを提供する。
【解決手段】その長手中途が外軸1に挿通された状態で外軸1の長手方向に離間した複数個所に互いに平行をなす関係で固定配備され、内軸用の突材6は、内軸2側に連結されてその長手中途が外軸1に対し軸方向に進退と回転が可能に挿通された状態で外軸用の突材5と対応する複数本で構成されて互いに平行をなす関係で配備されるとともに、外軸用と内軸用の突材は、外軸回りにおいて互いに平行軸状をなすように付勢手段を介して隣接する折畳状態と拡開状態との2つの状態に折畳および拡開各操作により切換可能で、付勢手段に抗した外力の付与により内軸用と外軸用突材5の咬み合いを解除し折畳状態に復帰可能に構成されていることを特徴とする。
【選択図】
図9