【0005】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2009−194747号明細書(2009年8月25日出願)の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
1.アポトーシス誘導剤
本発明のアポトーシス誘導剤(以下、本発明の誘導剤という。)は、先に述べた通り、下記(a)のペプチドを含むものである。
(a)下記式(I):
で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
上記(a)のペプチド中、式(I)のアミノ酸配列は、アミノ酸の1文字表記を用いて示したものであり、例えば、Cはシステイン(Cys)、Dはアスパラギン酸(Asp)、Yはチロシン(Tyr)を意味する。また、Xは任意のアミノ酸残基を表し、任意のアミノ酸残基は、通常、20種類のアミノ酸残基、すなわちA(アラニン;Ala)、R(アルギニン;Arg)、D(アスパラギン酸;Asp)、N(アスパラギン;Asn)、C(システイン;Cys)、Q(グルタミン;Gln)、E(グルタミン酸;Glu)、G(グリシン;Gly)、H(ヒスチジン;His)、I(イソロイシン;Ile)、L(ロイシン;Leu)、K(リジン;Lys)、M(メチオニン;Met)、F(フェニルアラニン;Phe)、P(プロリン;Pro)、S(セリン;Ser)、T(スレオニン;Thr)、W(トリプトファン;Trp)、Y(チロシン;Tyr)、V(バリン;Val)から選択することができる。本明細書では、他のアミノ酸配列を示す場合も、式(I)と同様に1文字表記で表すことがある。
前記式(I)のアミノ酸配列としては、例えば、以下の配列番号2及び配列番号3に示されるアミノ酸配列が好ましく挙げられ、なかでも配列番号2に示されるアミノ酸配列がより好ましい。
本発明において、「ペプチド」とは、少なくとも2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合して構成されたものを意味し、オリゴペプチド、ポリペプチドなどが含まれる。さらに、ポリペプチドが一定の立体構造を形成したものはタンパク質と呼ばれるが、本発明においては、このようなタンパク質も上記「ペプチド」に含まれるものとする。従って、本発明の誘導剤に含まれるペプチドは、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質のいずれをも意味し得るものである。
また本発明の誘導剤は、先に述べた通り、下記(b)のペプチドを含むものであってもよい。
(b)前記式(I)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、アポトーシス誘導活性を有するペプチド。
ここで、上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1個〜5個程度、好ましくは1個〜2個程度のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が挙げられ、限定はされない。ただし本発明においては、前記式(I)で示されるアミノ酸配列における第1番目、第3番目、第8番目、第10番目、第12番目のアミノ酸残基(それぞれ順に、C、D、Y、C、C)が欠失、置換又は付加されていないもの、及び/又は、前記式(I)で示されるアミノ酸配列における第2番目、第4〜7番目、第9番目、第11番目のアミノ酸残基(いずれもX)が欠失又は付加されていないものが好ましい。上記欠失、置換、付加等の変異の導入は、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えば、GeneTailor
TM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社)、及びTaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。また、上記欠失、置換又は付加の変異が導入されたペプチドであるかどうかは、各種アミノ酸配列決定法、並びにX線及びNMR等による構造解析法などを用いて確認することができる。
本発明において、アポトーシス誘導活性とは、細胞内の核の破壊を伴う細胞死をもたらす活性を意味し、当該活性は、例えば、DNAラダーの検出、クロマチン染色、アネキシンV染色等により測定することができる。
本発明の誘導剤に含まれる前記(a)又は(b)のペプチドは、前記式(I)のアミノ酸配列を含むペプチド、又は前記欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むペプチドである限り、その構成アミノ酸の残基数は限定されず、好ましくは12残基以上であり、例えば12〜100残基であってもよいし、12〜50残基であってもよいし、12〜30残基であってもよい。
前記(a)又は(b)のペプチドは、天然物由来のペプチドであってもよいし、人工的に化学合成して得られたものであってもよく、限定はされないが、天然物由来のペプチドである場合は、アポトーシス誘導の目的とする細胞以外の細胞に対する細胞毒性等の悪影響がない場合が多いため好ましい。
天然物由来のペプチドとしては、天然に存在するオリゴペプチド、ポリペプチド及びタンパク質、又はこれらを断片化した状態のもの等が挙げられる。天然物由来のペプチドは、天然物から公知の回収法及び精製法により直接得てもよいし、又は、公知の遺伝子組換え技術により、当該ペプチドをコードする遺伝子を各種発現ベクター等に組込んで細胞に導入し、発現させた後、公知の回収法及び精製法により得てもよい。あるいは、市販のキット、例えば、試薬キットPROTEIOS
TM(東洋紡)、TNT
TM System(プロメガ)、合成装置のPG−Mate
TM(東洋紡)及びRTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)等を用いた無細胞タンパク質合成系により当該ペプチドを産生し、公知の回収法及び精製法により得てもよく、限定はされない。
また、化学合成ペプチドは、公知のペプチド合成方法を用いて得ることができる。合成方法としては、例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法及び酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。市販のペプチド合成装置を使用してもよい。合成反応後は、クロマトグラフィー等の公知の精製法を組み合わせてペプチドを精製することができる。
ここで、前記(a)又は(b)のペプチドであって天然物由来のペプチドに該当するものとして、(i)内皮細胞遺伝子座−1(Del−1;developmentally endothelial locus−1)タンパク質及びその部分断片、並びに(ii)血液凝固因子 第IX因子を、以下に例示説明する。
Del−1タンパク質は、上皮増殖因子(EGF;epidermal growth factor)類似ドメイン及びジスコイジンI類似ドメインを有する細胞外基質沈着タンパク質であり、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。このDel−1タンパク質のEGF類似ドメインとしてはEGF1、EGF2及びEGF3があり、ジスコイジンI類似ドメインとしてはDiscoidin1及びDiscoidin2があることが知られている。本発明者は、上記各種ドメインのうちEGF3に着目し、さらにEGF3を構成するアミノ酸配列(配列番号7)中の特定の12アミノ酸残基からなる領域:C−T−D−L−V−A−N−Y−S−C−E−C(配列番号2)に着目した。そして、この特定領域からなる又はこの特定領域を含むペプチドが、高いアポトーシス誘導活性を有することを見出した。すなわち、前記(a)又は(b)のペプチドであって天然物由来のペプチドに該当するものとしては、例えば、Del−1タンパク質全長(配列番号5)、並びにEGF3からなる部分断片(配列番号7)、及びEGF3を一部に含む各種部分断片(配列番号9、11、13、15、17及び19(下記表1参照)、並びに配列番号42)を挙げることができる。特に、前記(a)のペプチドとしてDel−1タンパク質全長(配列番号5)、EGF3からなる部分断片(EGF3を構成するペプチド;配列番号7)、及びEGF3とDiscoidin1との融合ペプチド(配列番号42)が好ましい。なお、Del−1タンパク質及びその部分断片に関する詳細については、WO 2005/0001093に記載の内容を全て参酌することができ、下記表1に示したアミノ酸配列を有する部分断片以外の部分断片についても本発明の例示として含むことができる。例えば、下記表1中の「Del−1全長」のうちシグナルペプチド部分を除いたアミノ酸配列を有する部分断片も、本発明の例示として含まれる。
【表1】
また、血液凝固因子 第IX因子は、配列番号23に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、N末端から順に、Glaドメイン、EGFドメイン及びプロテアーゼドメインを有する一本鎖糖タンパク質である。ここで、第IX因子のEGFドメインは、配列番号23に示されるアミノ酸配列のうちの第90番目〜第123番目のアミノ酸からなる配列(配列番号25)で構成される。本発明者は、第IX因子のEGFドメインを構成するアミノ酸配列中には、前述したDel−1タンパク質のEGF3(EGF類似ドメイン)と同様に、特定の12アミノ酸残基からなる領域:C−K−D−D−I−S−S−Y−E−C−W−C(配列番号3)が含まれていることに着目し、この領域を含むペプチドが、遺伝子導入効率を高めることができることを見出した。すなわち、前記(a)又は(b)のペプチドであって天然物由来のペプチドに該当するものとしては、例えば、第IX因子全長のほか、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片又は当該断片を一部に含む各種部分断片、及びEGFドメインからなる部分断片又は当該EGFドメインを一部に含む各種部分断片を挙げることができる。なお、第IX因子全長をコードするDNAの塩基配列は、配列番号22に示されるものであり、第IX因子のEGFドメインをコードするDNAの塩基配列は、配列番号24に示されるものである。
本発明の誘導剤は、前記(a)又は(b)のペプチドとともに又はそれに代えて、当該ペプチドの誘導体を含むことができる。当該誘導体とは、前記(a)又は(b)のペプチドに由来して調製され得るものをすべて含む意味であり、例えば、構成アミノ酸の一部が非天然のアミノ酸に置換されたものや、構成アミノ酸(主にその側鎖)の一部に化学修飾が施されたもの等が挙げられる。
本発明の誘導剤は、前記(a)或いは(b)のペプチド、及び/又は当該ペプチドの誘導体とともに又はそれに代えて、当該ペプチド及び/又は当該誘導体の塩を含むことができる。当該塩としては、生理学的に許容される酸付加塩又は塩基性塩が好ましい。酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩、あるいは酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウムなどの無機塩基との塩、あるいはカフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジンなどの有機塩基との塩が挙げられる。
塩は、塩酸などの適切な酸、又は水酸化ナトリウムなどの適切な塩基を用いて調製することができる。例えば、水中、又はメタノール、エタノール若しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製することができる。
本発明の誘導剤は、上述した(a)若しくは(b)のペプチド、その誘導体又はこれらの塩からなるものであってもよいし、当該ペプチド、その誘導体又はこれらの塩と他の成分とを含むものであってもよく、限定はされない。他の成分としては、例えば、PBS及びTris−HCl等の緩衝液、並びにアジ化ナトリウム及びグリセロール等の添加剤などが挙げられる。他の成分を含む場合、その含有割合は、上記ペプチド、その誘導体又はこれらの塩によるアポトーシス誘導効率の上昇活性が著しく妨げられない範囲で、適宜設定することができる。具体的には、上記ペプチドの溶液で用いる場合、ペプチド濃度は、限定はされないが、0.3ng/ml以上であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5ng/ml、さらに好ましくは0.3〜2ng/ml、さらにより好ましくは0.4〜1.5ng/ml、特に好ましくは0.6〜1ng/ml、最も好ましくは0.8〜1ng/mlである。
本発明の誘導剤によるアポトーシス誘導の対象となる細胞としては、限定はされず、腫瘍細胞等を含む各種細胞が挙げられるが、特に接着細胞が好ましい。例えば、Cos細胞、CRL細胞(ヒトメラーノマ細胞株)、P5細胞(血管内皮細胞株)、KN細胞(ヒト扁平上皮がん細胞株)等が挙げられる。本発明においては、腫瘍細胞をアポトーシス誘導の目的の細胞とすることが好ましく、腫瘍細胞としては、具体的には、上記CRLの他、Cos細胞、P5細胞、KN細胞(ヒト扁平上皮がん細胞株)等が好ましく挙げられる。
本発明の誘導剤は、目的の細胞にアポトーシスを誘導させるために当該細胞内に導入する必要は必ずしもなく、当該細胞外から添加することでその細胞のアポトーシスを誘導することができる。そのため、各種腫瘍細胞等のアポトーシス誘導を、従来にない簡便さで、且つより広い範囲の細胞腫(癌種)に対して行うことができ、例えば、癌の治療やその研究等において極めて有用なものである。
また、本発明の誘導剤は、上述した(a)又は(b)のペプチド等が、アポトーシスを起こさせる目的細胞の周辺(癌の病巣等)に残存し得るという特徴を有するものである。また、上述した(a)又は(b)のペプチド等は、細胞への遺伝子導入効率を向上させ得るという特徴を有するものでもある。従って、例えば、癌の治療において、本発明の誘導剤の使用と遺伝子治療とを併用すれば、残存する病的細胞に繰り返し遺伝子導入を行う必要が生じた場合などに、病巣に残存している本発明の誘導剤(上述した(a)又は(b)のペプチド等)が、病的細胞への遺伝子導入効率を向上させるという効果をもたらす。その結果、治療効果の高い遺伝子治療を行うことができる。
本発明においては、本発明の誘導剤を用いるアポトーシス誘導方法も提供することができる。当該誘導方法は、目的の細胞又は細胞集団(組織、臓器)に対して本発明の誘導剤を作用させる工程を含む方法であり、それ以外にどのような工程を含むものであってもよく、限定はされない。本発明の誘導剤を作用させるとは、目的の細胞又は細胞集団に対して本発明の誘導剤を接触させる(すなわち当該細胞等に添加してその外部に接触させる)ことや、目的の細胞内に本発明の誘導剤を導入することを意味し、中でも前者の添加の態様が好ましい。なお、目的の細胞内に本発明の誘導剤を導入する場合は、本発明の誘導剤の有効成分である前述の(a)又は(b)のペプチドを、当該細胞内に直接導入してもよいし、あるいは当該ペプチドをコードするDNAの状態で導入(遺伝子導入)してもよく、限定はされない。DNAの導入は、リポソーム法(リポプレックス法)、ポリプレックス法、ペプチド法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、及びウイルスベクター法などの公知の各種遺伝子導入方法を用いて行うことができる。
2.DNA、組換えベクター、形質転換体
(1)DNA
本発明においては、前記(a)又は(b)のペプチドを構成するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNAも包含される。当該DNAは、前記(a)又は(b)のペプチドをコードする塩基配列からなるDNAであってもよいし、あるいは、当該塩基配列を一部に含み、その他に遺伝子発現に必要な公知の塩基配列(転写プロモーター、SD配列、Kozak配列、ターミネーター等)を含んでなるDNAであってもよく、限定はされない。なお、前記(a)又は(b)のペプチドをコードする塩基配列では、コドンの種類は限定されず、例えば、転写後、ヒト等の哺乳類において一般的に使用されているコドンを用いたものであってもよいし、大腸菌や酵母等の微生物や、植物等において一般的に使用されているコドンを用いたものであってもよく、適宜選択又は設計することができる。
また本発明においては、前記(a)又は(b)のペプチドをコードする塩基配列を含むDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAであってアポトーシス誘導活性を有するタンパク質をコードするDNAも包含される。ここで、ストリンジェントな条件とは、例えば、塩(ナトリウム)濃度が150〜900mMであり、温度が55〜75℃、好ましくは塩(ナトリウム)濃度が150〜200mMであり、温度が60〜70℃での条件をいう。
(2)DNAを含む組換えベクター
本発明においては、適当なベクターに上記本発明のDNAを連結(挿入)することにより得られる組換えベクターも包含される。本発明のDNAを挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA、ウイルス等が挙げられる。
プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミドなどが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ等が挙げられる。またウイルスとしてはアデノウイルスやレトロウイルスなどが挙げられる。
本発明の組換えベクターには、プロモーター、本発明のDNAのほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、選択マーカー遺伝子、レポーター遺伝子などを連結することができる。なお、選択マーカー遺伝子としては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。レポーター遺伝子としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はその変異体(EGFP、BFP、YFP等の蛍光タンパク質)、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ、LacZ等の遺伝子が挙げられる。
(3)形質転換体
本発明においては、上記本発明の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入して得ることができる形質転換体も包含される。宿主としては、本発明のDNAを発現し得るものであれば限定されず、例えば、当該分野において周知の細菌、酵母等を用いることができる。
細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明のDNA、転写終結配列を含めることができる。細菌としては、大腸菌(Escherichia coli)などが挙げられる。プロモーターとしては、例えばlacプロモーターなどが用いられる。細菌へのベクター導入法としては、公知の各種導入方法、例えばカルシウムイオン法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などが用いられる。この場合、プロモーターとしては酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばgal1プロモーター等が挙げられる。酵母へのベクター導入法としては、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法等が挙げられる。
3.医薬組成物
本発明の誘導剤(前述した(a)及び(b)のペプチドと言うこともできる。)は、医薬組成物に含まれる有効成分として有用である。
当該医薬組成物は、癌(腫瘍)の治療用の医薬組成物として有用である。特に、本発明の誘導剤は、腫瘍細胞等に対してアポトーシス誘導活性を有するものであるため、腫瘍の治療用に使用されることが好ましい。すなわち、本発明の誘導剤は、腫瘍治療剤に含まれる有効成分として有用なものである。
また、本発明の誘導剤は、既存の抗腫瘍剤(腫瘍治療剤)と併用し、癌治療用医薬組成物の有効成分として用いることもできる。この場合、本発明の誘導剤のアポトーシス誘導活性により、結果として、既存の抗腫瘍剤の抗腫瘍効果(抗腫瘍活性)を増強することができる。よって、本発明は、本発明の誘導剤を含む、抗腫瘍剤の抗腫瘍効果増強剤、及び、本発明の誘導剤を用いる、抗腫瘍剤の抗腫瘍効果増強方法等を提供することができる。抗腫瘍剤としては、公知のものが全て含まれ、特に限定はされないが、例えばFasL(Fas ligand)、TNFα、マイトマイシン及びタキソール等が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、本発明の誘導剤を有効成分として含み、さらに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で提供することが好ましい。
本発明の医薬組成物の適用の対象となる癌(腫瘍)としては、具体的には、肺癌(小細胞肺癌等)、大腸癌、乳癌、肝臓癌、腎臓癌、卵巣癌、神経内分泌腫瘍、神経芽細胞腫、神経膠腫、1型神経線維腫症、胃癌、大腸癌、すい臓癌、膀胱癌、皮膚癌等が挙げられ、好ましくは、これらのヒト癌(腫瘍)である。
「薬学的に許容され得る担体」とは、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の1種以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。非経口投与のためのその他の形態としては、1つ以上の活性物質を含み、常法により処方される注射剤などが含まれる。注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水等の薬学的に許容される担体中に溶解または懸濁することにより製造することができる。また、本発明の誘導剤(前述した(a)及び(b)のペプチド)を生体内に投与する場合は、コロイド分散系を用いることもできる。コロイド分散系は、上記ペプチドの生体内の安定性を高めたり、特定の臓器、組織又は細胞へ化合物を効率的に輸送する効果が期待される。コロイド分散系は、通常用いられるものであればよく限定はされないが、ポリエチレングリコール、高分子複合体、高分子凝集体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル及びリポソームを包含する脂質をベースとする分散系を挙げることができ、好ましくは、特定の臓器、組織又は細胞へ化合物を効率的に輸送する効果のある、リポソームや人工膜の小胞である。
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、性別、体重及び症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは医薬組成物に含有される本発明の誘導剤(前述した(a)及び(b)のペプチド)の種類などにより異なっていてもよい。通常、成人一人あたり、一回につき100μg〜5000mgの範囲で投与することができるが、限定はされない。
例えば注射剤により投与する場合は、ヒト患者に対し、1回の投与において1kg体重あたり、100μg〜100mgの量を、1日平均あたり1回〜数回投与することができる。投与の形態としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射あるいは腹腔内注射などが挙げられるが、好ましくは静脈内注射である。また、注射剤は、場合により、非水性の希釈剤(例えばポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもできる。そのような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤の配合等により行うことができる。注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。すなわち、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することができる。
なお、本発明は、癌(腫瘍)を治療する医薬(薬剤)を製造するための、前記本発明の誘導剤(あるいは前述した(a)及び(b)のペプチド)の使用を提供するものでもある。また、本発明は、癌(腫瘍)の治療用の前記本発明の誘導剤(あるいは前述した(a)及び(b)のペプチド)を提供するものでもある。
さらに、本発明は、前記本発明の誘導剤(あるいは前述した(a)及び(b)のペプチド)を用いること(すなわち患者に投与すること)を特徴とする癌(腫瘍)の治療方法を提供するものであり、また、癌(腫瘍)を治療するための、前記本発明の誘導剤(あるいは前述した(a)及び(b)のペプチド)の使用を提供するものでもある。
4.アポトーシス誘導用キット
本発明においては、構成成分として本発明の誘導剤を含むことを特徴とする、アポトーシス誘導用キットも提供される。本発明のキットは、腫瘍細胞等を含む各種細胞に対して、簡便に且つ効果的にアポトーシス誘導を行う場合に用いることができるため、前述した癌の治療の分野に限らず、各種実験・研究等の分野においても極めて有用性が高いものである。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。