(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786268
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】固体塩基触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 31/26 20060101AFI20150910BHJP
C07C 209/36 20060101ALI20150910BHJP
C07C 209/38 20060101ALI20150910BHJP
C07C 211/54 20060101ALI20150910BHJP
B01J 25/02 20060101ALI20150910BHJP
C07C 209/02 20060101ALN20150910BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20150910BHJP
【FI】
B01J31/26 Z
C07C209/36
C07C209/38
C07C211/54
B01J25/02 Z
!C07C209/02
!C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-511522(P2013-511522)
(86)(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公表番号】特表2013-532055(P2013-532055A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】CN2011074599
(87)【国際公開番号】WO2011147308
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2012年11月28日
(31)【優先権主張番号】201010187702.7
(32)【優先日】2010年5月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512303909
【氏名又は名称】ジャンスー シノーグケム テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ, ジャンリャン
【審査官】
西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−155195(JP,A)
【文献】
特表2004−500981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機塩基と、
(b)無機塩基と、及び
(c)酸化アルミニウム、シリカゲル、珪藻土、分子篩、マクロポーラス吸着樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選択される担体と、を含むことを特徴とするアニリンとニトロベンゼンの縮合を触媒して4−アミノジフェニルアミンを製造する固体塩基触媒。
【請求項2】
前記有機塩基は、メチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、フェニルジアミン、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム、4−ジメチルアミノピリジン、クラウンエーテル、及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の固体塩基触媒。
【請求項3】
前記無機塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、水酸化アルミニウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の固体塩基触媒。
【請求項4】
前記有機塩基は、水酸化テトラメチルアンモニウム又は水酸化テトラエチルアンモニウムであり、前記無機塩基は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項2に記載の固体塩基触媒。
【請求項5】
前記マクロポーラス吸着樹脂は、スチリル強塩基性陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の固体塩基触媒。
【請求項6】
前記担体は、D201樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の固体塩基触媒。
【請求項7】
前記有機塩基と前記担体を重合させて、有機塩基を含有する担体を生成するステップと、及び
前記有機塩基を含有する担体と無機塩基の水溶液を反応させて、前記固体塩基触媒を生成するステップと、を含むことを特徴とする請求項1乃至6の中のいずれか一項に記載の固体塩基触媒を製造する方法。
【請求項8】
(a)請求項1乃至6の中のいずれか一項に記載の固体塩基触媒が存在する状況で、アニリンとニトロベンゼンを縮合させ、4−ニトロソジフェニルアミンと4−ニトロジフェニルアミンを生成するステップと、及び
(b)4−ニトロソジフェニルアミンと4−ニトロジフェニルアミンを水素化させ、4−アミノジフェニルアミンを生成するステップと、を含み、
前記固体塩基触媒の有機塩基は、メチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、フェニルジアミン、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム、4−ジメチルアミノピリジン、クラウンエーテル、及びこれらの混合物からなる群より選択されたものであり、
前記固体塩基触媒の無機塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、水酸化アルミニウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、及びこれらの混合物からなる群より選択されたものであることを特徴とする4−アミノジフェニルアミンを製造する方法。
【請求項9】
前記固体塩基触媒は、直接に循環利用されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用触媒に関し、具体的には、固体塩基触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
4-アミノジフェニルアミンは、ゴムを含む各種重合体のパラフェニレンジアミン(PPD) 老化防止剤を生産することに利用され、4-アミノジフェニルアミンは以下のような様々な方法により生産することができる。1)酸受容体が存在する状況で、p-クロロニトロベンゼンとアニリン誘導体を反応させて、ニトロ基を還元し、4-アミノジフェニルアミンを得る(米国特許:第4,187,248号、第4,683,332号);2)P-ニトロジフェニルヒドロキシルアミンの水素化(米国特許番号: 第4,178,315号、第4,404,401号);3)アニリンの端と端の接続(米国特許:第4,760,186号);4)アセトアニリドとニトロベンゼンをDMSOで反応させ、その後、生成したニトロソジフェニルアミンを還元する;5) 水素添加触媒、水素化抑制剤、酸触媒が存在する状況で、ニトロベンゼンを水素とアニリンに接触させるワンステップ反応などがある。現在商業上での4-ADPAを生産する好ましい方法は、アニリンとニトロベンゼンを縮合して、4-ニトロソジフェニルアミン(4-NODPA)と4-ニトロジフェニルアミン(4-NDPA)を生成し、その後、それらは水素化ステップを経て4-ADPAを生成することにより実現される(米国特許:第5,117,063号と第5,453,541号)。
【0003】
相間移動触媒、一般的に水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH、有機塩基を使用してもよい)が存在する状況で、直接にニトロベンゼンとアニリンを縮合して、ニトロソジフェニルアミン(4-NODPA)とニトロジフェニルアミン(4-NDPA)とを生成する。反応過程では少量のアゾベンゼン、フェナジン及び他の副産物が生成される。その後、ニトロソジフェニルアミン(4-NODPA)とニトロジフェニルアミン(4-NDPA)は触媒水素化を経て、4-ADPAを生成する。
【0004】
現在の合成プロセスは大量の有機塩基水溶液を触媒とする必要がある。縮合反応後、反応産物は、例えば水酸化テトラメチルアンモニウムと緊密に結合されるから、TMAHは、縮合産物から分離し出すことができないし、原位置(in situ)再生することができない。縮合産物、即ち4-NDPAと4-NODPAが水素化されて、4-ADPAを生成した後に解放される。だから、該有機塩基触媒は水素化反応を必ず経過する。有機塩基触媒の非安定性により、水素化過程及びその後の濃縮、回収ステップで分解が発生する。比較的に高い温度、増加された反応時間、比較的に多い触媒の使用量は全て有機塩基触媒が大量に分解するようにする。
【0005】
該水溶液型の相間移動触媒を使用して4-ADPAを生産する既存のプロセスは、触媒を保護し、触媒を循環利用するために大量のエネルギを消耗する必要がある。アニリンとニトロベンゼンの縮合は低い水分含量を要求する。縮合反応で使用される有機塩基触媒は、水素化反応後に抽出されることができるが、抽出された水相中の触媒濃度は比較的に低い。有機相と水相を分離するためのメチルアルコールを入れた後、反応系で抽出し出すことができる触媒濃度は更に低い。該有機塩基触媒を回収及び再利用するために、有機塩基触媒に対して必ず濃縮を行う必要があるが、これは追加のエネルギが必要される。
【0006】
そして、アニリンとニトロベンゼンを利用して、4-ADPAを生産する既存の生産プロセスは安定ではない。縮合触媒は、回収利用される前、後続ステップで持続的に分解と反応をするから不純物が形成され、効率を降下させ、生産を妨げる。反応系の状況は、このような不純物の量によって持続的に変化し、従って縮合反応、水素化反応、特に相分離の条件を変化させる。だから、4-ADPAを生産する過程は予想、制御することが難しくなる。
【0007】
4-ADPAを生産する既存のプロセスは、厳格な条件の下で水素化反応を実施する必要があり、最終的には4-ADPAの生産過程を遅くする。例えば、縮合触媒が水素化反応過程で分解が発生することを防止するために、水素化反応の温度を90℃又はその以下に制限する必要がある。だから、低い温度で高い活性を備える水素化反応触媒を使用する必要があり、一般的には貴金属触媒である。貴金属触媒は価格が高く、また経常的に有機溶剤を使用して該反応を加速化する必要がある。最後に、また反応系でこのような溶剤を回収する必要がある、だからエネルギコストが増える。
【0008】
米国特許第6,395,933号では、強塩基と相間移動触媒が存在する状況で、制御される温度でニトロベンゼンとアニリンを反応させて4-ADPAを製造するプロセスを公開した。該プロセスは、生産量が降下し、副反応が増える。該プロセスのコストは高いし、また酸化剤を使用する必要があるから商業生産には適さない。
【0009】
米国特許第6,495,723号では、アニリンとニトロベンゼンを縮合するための組成物を説明した。該組成物は固体担体(一般的には沸石である)により構成され、該担体は内部通路を備え、また塩基を含有する。通路の断面寸法は反応選択性を改善する環境を提供し、従って、例えばフェナジン又はアゾベンゼン等の現れないことを望む副産物を制限する。US6495723で説明する沸石担体は、該担体の内部通路が多い制限を受けるように内径が非常に小さい。内表面の利用が制限されるから有機触媒のいずれかの再生反応は主に外表面で発生する。そして、沸石内部通路の小さい直径は有機触媒の高ローディング量に影響を与える。だから、比較的に高い触媒活性を維持するように縮合反応で更に多い触媒を入れる必要がある。また該触媒系は粉末液より形成された懸濁反応液であるから、連続的な工業化生産に不適し、工業用価値が低い。
【0010】
米国特許公開第2009/0048465号では、複合塩基触媒を説明した。該複合塩基触媒はテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩水溶液より組成され、該第四級アンモニウム塩は、縮合反応でプロトン物質の使用量を厳格に制御する必要がないようにする。該複合塩基触媒は、またテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドが炭酸テトラアルキルアンモニウムに変換することを減らし、従って、反応過程で触媒を補充する必要がなくなる。しかし、該複合塩基触媒は固相ではないため、依然として分離、再生と回収利用を行わなければならない。
【0011】
だから、アニリンとニトロベンゼンの縮合反応において、有機塩基触媒を利用して4-ADPAを生成する既存のプロセスは、大量の触媒が必要され、いくつかの反応ステップ後に触媒を回収する必要があり、反応過程の迅速な完成を阻害し、エネルギ消耗が高い、溶剤の使用量を増加する必要があるから溶剤を回収するステップが増加され、また4-ADPA生産過程の効率と品質の降下を招く不純物が増加される。だから、4-ADPAを生産する既存プロセスの欠陥を克服する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、4-アミノジフェニルアミン(4-ADPA)を生産することに使用される新型の触媒を提供し、既存触媒の回収しにくく、分解しやすい欠陥を克服することをその目的とする。
【0013】
本発明の固体塩基触媒は、担体と、該担体にローディングされる有機塩基と無機塩基とを含む。該有機塩基は縮合反応で触媒の役割を果たし、無機塩基は該有機塩基を再生させる役割を果たす。担体は、例えば酸化アルミニウム、シリカゲル、珪藻土、分子篩等の無機担体であってもよく、またマクロポーラス樹脂であってもよく、イオン交換樹脂、特に強塩基性イオン交換樹脂を含む。担体は、多くの内部通路と非常に大きい内表面を備え、縮合反応は、該内表面で行うことができる。内表面は十分な無機塩基を積載することができ、無機塩基を再生し、その活性を降下させない。一般的に、該担体は比較的に高い量の触媒を積載することができ、これは本発明の固相触媒として高い活性を維持することができるようにし、また沸石にローディングされた触媒より、同じ量の反応物を縮合することに必要される触媒は少ない。
【0014】
本発明は、固体塩基触媒を製造する方法を含み、その方法は以下のようである。有機塩基と担体は重合して有機塩基を含む担体を生成し、また該有機塩基を含む担体を無機塩基の水溶液と反応させて、固体塩基触媒を取得する。
【0015】
本発明は、4-ADPAを製造する方法を更に含み、その方法は以下のようである。アニリンとニトロベンゼンは、固体塩基触媒が存在する状況で縮合して4-ニトロソジフェニルアミンと4-ニトロジフェニルアミンを生成し、その後、生成物を水素化して4-アミノジフェニルアミンを生成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の固相触媒は回収、濃縮又は再循環する必要がないから、効率が更に高く、予測することができ、速度が更に速く、コストが更に低く、また環境保護に更に有利な4-ADPAを生産する方法を提供する。本発明の触媒を利用して4-ADPAを合成する時、有機塩基触媒の使用量を顕著に減少することができ、これは有機塩基の分解による空気汚染を降下することができて環境保護に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に使用される担体はさまざまであって、無機担体であることができる。一般的には、例えば活性酸化アルミニウム、多孔質シリカゲル、珪藻土等の極性無機担体であり、このような担体は、大きい比表面積を備え、また表面には豊富な酸素原子があるので、有機塩基又は無機塩基とよく結合されることができる。該担体はマクロポーラス吸着樹脂であってもよく、その中、スチレン陰イオン交換樹脂が更に好ましい。該スチレン樹脂は、直径が約0.1mm乃至約5.0mmである粒子寸法を備え、密度が約0.3g/ml乃至約1.2g/mlであり、交換容量が1mmol/g以上(比表面積は200〜1000m
2/gであり、ホール径は0.5〜500nmである)であることが好ましい。
【0018】
固体塩基縮合触媒は、縮合反応に使用されるデュアルアクティブグループを含む。一つのアクティブグループは、縮合に使用される触媒グループであり、アニリンとニトロベンゼンを触媒により縮合させることに使用される有機塩基である。該有機塩基は、メチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン、及び他の脂肪族アミン、アニリン、フェニルジアミン、及び他の芳香族アミン、第四級アンモニウム塩、又は塩基から選択することができるが、これに限定されない。ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム、4-ジメチルアミノピリジン、及び相間移動触媒としてのクラウンエーテルを例とすることができる。本発明の一つの好ましい実施方式で、該有機塩基はテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドであり、水酸化テトラメチルアンモニウムであることが好ましい。
【0019】
もう一つのアクティブグループは再生グループであり、前記有機塩基を再生することに使用される無機塩基を含む。該無機塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、水酸化アルミニウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等であることができるが、これに限定されない。触媒の活性成分が担体に固定されるから、その耐熱性と耐分解能力は全て改善され、その活性は更に安定である。本発明の一つの好ましい実施方式において、該再生の無機塩基は水酸化カリウムである。
【0020】
該固体塩基触媒は、縮合反応に使用され、アニリンとニトロベンゼンの縮合を効果的に触媒して、中間体(4-ニトロソジフェニルアミンと4-ニトロジフェニルアミン)と一部他の副産物(例えば、アゾベンゼン)を生成することに使用される。その後、中間体である4-ニトロソジフェニルアミンと4-ニトロジフェニルアミンを直接に水素化して4-ADPAを生成する。副産物(例えば、アゾベンゼンと、過量のアニリン)は前蒸留分として回収、再利用される。本発明の固体塩基性触媒を使用すると、反応過程で生成される廃棄物の量を大幅に減少することができる。
【0021】
固相触媒を製造する方法は、該有機塩基を担体と重合させ、有機塩基を含有する担体を生成することを含む。その後、該有機塩基を含有する担体を無機塩基水溶液と反応させ、本発明の固相触媒を生成する。該固相触媒を製造する一つの好ましい方法において、水酸化テトラメチルアンモニウムとスチレン樹脂を水が存在する状況で重合させ、水酸化テトラメチルアンモニウムを含有するスチレン樹脂を生成する。その後、水酸化テトラメチルアンモニウムを含有するスチレン樹脂を水酸化カリウムと反応させ、本発明の固体塩基触媒を生成する。
【0022】
本発明の一つの典型的な操作例において、マクロポーラス強塩基性陰イオン交換樹脂(例えばD201、D202)をTMAH水溶液(20〜25wt%)と重量比1:0.1〜10、好ましくは1:0.5〜5、更に好ましくは1:0.5〜1.0の比例で混合する。例えば、攪拌器と凝縮器が設置されている1000mlの四つ口フラスコに200gのD201樹脂と400gの25wt%のTMAH水溶液を入れる。混合物を攪拌しながら加熱し、約50〜100℃の温度で還流を維持し、70〜90℃であることが好ましく、70〜80℃であることが更に好ましい。還流反応を5〜8時間持続し、6〜7時間であることが好ましい。反応混合物が室温まで冷却した後、フラスコに移動させる。濾過、水洗を経た後、水酸化テトラメチルアンモニウムを含有する樹脂が生成される。反応フラスコに200gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有する樹脂を入れ、また50wt%の水酸化カリウム水溶液を入れる。一般的に、樹脂と水酸化カリウム水溶液の重量比は1:0.1〜5であり、1:0.5〜1であることが好ましい。反応混合物は攪拌しながら5〜100℃まで加熱し、10〜50℃であることが好ましく、30〜40℃であることが更に好ましい。還流反応を1〜8時間持続し、2〜3時間であることが好ましい。その後、該混合物を冷却する。湿っている固相触媒をオーブンで50℃より低い温度で乾燥するまでゆっくり加熱する。これにより、二重反応基を含む乾燥固相触媒を生産する。
【0023】
アニリンとニトロベンゼンの縮合反応は、タンク型反応器、タワー型反応器、流動層反応器、固定層反応器で行うことができ、その中、触媒は反応混合物に固定されることができ、又は反応混合物で自由に流動することもできる。縮合反応は、どんな圧力条件下でも行うことができ、真空、間欠的な真空、大気圧、又は増圧を含む。縮合反応は約0〜105℃の温度で行うことができる。
【0024】
アニリンとニトロベンゼンの縮合反応において、有機塩基を触媒として例えば4-NDPAと4-NDOPAの中間体を触媒作用により得る。該中間体はまた有機塩基とコンプレックス(complex)が発生する。4-ADPAを生産する既存方法において、4-NDPAと4-NDOPAが水素化されて4-ADPAを生成した後、有機塩基は複合物から釈放されることができる。しかし、本発明では無機塩基が存在するから、有機塩基は釈放、回収されることができる。本発明の組成物と方法において、固体触媒の一部としての無機塩基は、有機塩基にコンプレックスされた4-NDPA、4-NDOPAと反応し、また4-NDPAと4-NDOPA及び有機塩基を釈放して、有機塩基がアニリンとニトロベンゼン間の他の縮合を触媒することができるようにし、また4-NDPAと4-NDOPAは水素化ステップを経て4-ADPAを生成することができる。
【0025】
だから、有機塩基触媒は縮合反応で連続再生され、縮合産物は触媒から持続釈放されるので、縮合触媒は縮合反応器に保留され、水素化と相移動のステップまで持っていかない。それで、プロセスの効率を改善することができ、より良い制御と、4-ADPA合成の予測可能性とを提供することができる。
【0026】
他の一方面において、前記担体を利用し、また触媒は基本的に水がない環境で使用される(反応で生成される少量の水はすぐに分離されて出す) から、担体表面に結合された有機塩基と無機塩基は担体から析出しにくい。このように、本発明で取得した固相触媒は複数回反復使用することができ、よい触媒効率を維持することができる。
【0027】
有機塩基触媒が水素化反応まで連れて行かないから、水素化反応は比較的に広い温度範囲内で行うことができる。だから、異なる条件では異なる触媒を使用することができて水素化反応速度を速くすることができる。水素化反応には有機塩基触媒が存在しないから溶剤に対する需要も減少される。例えば、水素化反応に有機塩基触媒が存在しない時、50〜140℃の高温でニッケル触媒を使用し、溶剤は必要としないことができる。
【0028】
有機塩基触媒は、縮合反応で再生することができるから、触媒の回収、濃縮、再循環を実施する必要がない。また4-ADPAの製造で使用される主な原料はほとんど全て予想産物に転換され、望まない副産物は生成されない。該プロセスは環境に優しい。縮合反応と水素化反応過程において、少量の水が生成されることを除いて、該プロセスでは少量の残留材料だけ生成される。他の材料も排出されなければ、ガスも排出されない。
【0029】
反応過程は比較的に低いエネルギ消耗が必要される。反応温度を維持し、産物純化のための必要な蒸留と精製ステップを除いて、大量の材料に対して加熱、回収又は除去する必要がない。もし水素化反応中で生成される熱を利用することができれば、全体のプロセス過程で必要されるエネルギは更に少ない。
【0030】
以下のような非限定的な実施例によって、本発明について例を挙げて更に説明する。
【0031】
[実施例1]
固体塩基性触媒の製造
攪拌器と凝縮器が設置されている1000mlの四つ口フラスコに200gのD201樹脂と400gの25wt%TMAH水溶液を入れる。混合物を攪拌しながら加熱し、約75℃の温度で還流を維持する。還流反応は6時間持続する。反応混合物が室温まで冷却した後、フラスコに移動させて待機させる。濾過、水洗を経た後、水酸化テトラメチルアンモニウムを含有する樹脂が生成される。攪拌器と凝縮器が設置されている500mlの三つ口フラスコに200gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有する樹脂と200mlの50wt%水酸化カリウム水溶液を入れる。該混合物を攪拌しながら加熱し、約50〜100℃の温度で還流を2時間維持する。その後、該混合物を冷却させる。濾過を経た後、湿っている固相触媒をオーブンで(50℃より低い、0.098MPA) 乾燥するまでゆっくり加熱する。乾燥している固体塩基触媒を乾燥器に保存させる。
【0032】
[実施例2]
固体塩基性触媒の製造
攪拌器と凝縮器が設置されている1000mlの四つ口フラスコに300gの活性酸化アルミニウム(粒子直径2〜3mm、中国萍郷市天力化工填料有限公司で生産)と400gの25wt%TMAH水溶液を入れる。混合物を攪拌しながら加熱し、約75℃の温度で還流を維持する。還流反応は6時間持続する。反応混合物が室温まで冷却した後、フラスコに移動させて待機させる。200gを攪拌器と凝縮器が設置されている500mlの三つ口フラスコに入れ、また200mlの50wt%水酸化カリウム水溶液を入れる。該混合物を攪拌しながら加熱し、約50〜100℃の温度で還流を2時間維持する。その後、該混合物を冷却させる。濾過を経た後、湿っている固相触媒をオーブンで(50℃より低い、0.098MPA) 乾燥するまでゆっくり加熱する。
【0033】
[実施例3]
触媒を利用して4-ADPAを合成する
攪拌器と凝縮器が設置されている500mlの三つ口フラスコに50gの実施例1で製造した固体塩基触媒と150mlのアニリンを入れる。混合物を75℃まで加熱し、圧力を約0.095MPaに維持する。温度が70〜75℃間に制御された時、50mlのニトロベンゼンを入れ、縮合反応を行う。混合物から反応過程で生成した水を分離し出す。10時間反応後、ニトロベンゼンの残留量に対して持続的に分析を行う。残留したニトロベンゼンが1%より少ない時、反応を停止させる。
【0034】
該反応混合物を濾過して固相を回収し、また280mlの縮合液を得る。該液体を分析して、ニトロベンゼンの転換率は約99%であり、4-NDPAと4-NDOPAの含有量は縮合液に基いて18%であることを確定する。反応では少量のアゾベンゼンと他の副産物が生成された。
【0035】
該280mlの縮合液を70mlの水で希釈し、5wt%のRaneyニッケル触媒と共に高圧水素化反応器に入れる。水素を入れて反応器に空気が存在しないように確保する。反応混合物を加熱し、圧力を約1.5MPaに制御する。反応物を約60℃まで加熱し、また攪拌器を開き、水素化反応が始まる。反応温度を80〜120℃に維持し、2時間持続する。水素が吸収されない時、反応を停止させる。
【0036】
濾過後、Raneyニッケル触媒を回収する。化合物から水相を分離し出し、260ml水素化材料を得る。化学分析結果によると、反応転換率は98%である。目標生成物4-ADPAの含有量は20%である。少量の副産物が生成される。
【0037】
水素化材料からアニリンと副産物を蒸留し出した後、蒸留又は精製を介して精製した4-ADPA産物を得る。回収したアニリンと副産物は重複利用される。
【0038】
[実施例4]
固定触媒を利用して4-ADPAを合成する 60メッシュの網状物で50gの実施例2で製造した固相触媒を包み、実施例3と同様な反応条件を利用して4-ADPAを合成する。反応が完了された後、固相触媒を回収せず、反応装置に保留する。
【0039】
反応は280mlの縮合液を生成した。化学分析の結果、ニトロベンゼンの転換率は96%であり、縮合液に基く4-NDPAと4-NDOPAの含有量は25%である。反応では少量のアゾベンゼンと他の副産物が生成される。化学分析の結果によると、反応転換率は98%である。目標生成物4-ADPAの含有量は20%である。少量の副産物が生成される。
【0040】
[実施例5]
実施例1で製造した触媒を実施例3の方法により重複して15回利用し、第15回目に縮合反応を触媒する時のニトロベンゼン転換率は依然として98.5%である。
【0041】
[実施例6]
実施例2で製造した触媒を実施例3の方法により重複して15回利用し、第15回目に縮合反応を触媒する時のニトロベンゼン転換率は68%である。
【0042】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者であれば本発明に様々な修正や変形が可能である。本発明の精神や原則内での如何なる修正、置換、改良などは本発明の保護範囲内に含まれる。