特許第5786280号(P5786280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786280
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】尿素水温度センサの妥当性診断システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20150910BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20150910BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   F01N3/20 C
   F01N3/08 B
   F01N3/00 F
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-113760(P2010-113760)
(22)【出願日】2010年5月17日
(65)【公開番号】特開2011-241740(P2011-241740A)
(43)【公開日】2011年12月1日
【審査請求日】2013年4月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘隆
(72)【発明者】
【氏名】浜口 美則
(72)【発明者】
【氏名】水谷 正志
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/098805(WO,A1)
【文献】 特開2009−079584(JP,A)
【文献】 特開2010−180753(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0225950(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるSCRシステムの尿素タンク内に設けられた尿素水温度センサにより測定された尿素水の温度を外気温と比較して、前記尿素水温度センサの故障を診断する妥当性診断部を有する尿素水温度センサの妥当性診断システムにおいて、
尿素タンク内に設けられた尿素水レベルセンサにより測定された尿素水レベルをイグニッションキーOFF直前に記憶部に記憶し、イグニッションキーON後に、前記記憶部に記憶された尿素水レベルと現在の尿素水レベルのレベル差を求め、このレベル差が予め設定した閾値以下のとき、尿素水レベル条件が成立したとして、前記妥当性診断部で温度比較による診断を許可する尿素水レベル条件判断部を有し、
前記妥当性診断部は、前記尿素水温度センサにより測定された尿素水の温度と尿素水レベル条件が成立した後の所定時間内に測定された外気温のうち最低値とを比較することを特徴とする尿素水温度センサの妥当性診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素タンク内に貯留された尿素水の温度を測定する尿素水温度センサの故障を診断する尿素水温度センサの妥当性診断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中のNOxを浄化するための排ガス浄化システムとして、SCR(Selective Catalytic Reduction;選択還元触媒)装置を用いたSCRシステムが開発されている。
【0003】
このSCRシステムは、尿素水をSCRの排気ガス上流に供給し、排気ガスの熱でアンモニアを生成し、このアンモニアによって、SCR触媒上でNOxを還元して浄化するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
SCRシステムでは、尿素タンク内に貯留された尿素水の温度を尿素タンク内に設けられた尿素水温度センサにより測定している。これにより、尿素水の凍結を検出し、必要に応じて解凍制御を行っている。
【0005】
尿素水温度センサが故障すると尿素水の温度が測定できなくなるため、SCRシステムには尿素水温度センサの故障を診断する尿素水温度センサの妥当性診断システムが備えられている。
【0006】
この妥当性診断システムは、尿素水温度センサにより測定された尿素水の温度を外気温と比較して、尿素水温度センサの故障を診断する。具体的には、エンジン始動直後に、尿素水の温度を外気温と比較して、これらの温度差が予め設定した閾値より大きいとき尿素水温度センサを故障と診断する。比較対象の外気温は、外気温を直接測定する温度センサがない(経済的な理由から設けられていない)ため、例えば、インテークマニホールド温度やMAF(Mass Air Flow;マス・エア・フロー)センサに設けられたMAF温度センサにより測定されるMAF温度を外気温として用いる。
【0007】
エンジン始動直後に診断をするのは、エンジン始動直後であれば、尿素タンク内の尿素水の温度と外気温とが略同一となっていると考えられ、これら温度に大きなズレがあるかどうかを見ることで尿素水温度センサの故障を診断できるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−303826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の妥当性診断システムでは、尿素水温度センサが故障していないのにもかかわらず、故障と誤診断してしまう場合があった。例えば、低外気温時に部屋などに保存されていた暖かい尿素水が補充された場合、尿素タンク内の尿素水の温度が上昇し、補充された量によっては尿素水温度センサで測定される尿素水の温度と外気温との温度差が大きくなり、尿素水温度センサが故障していると誤診断してしまうと言う問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、尿素タンク内に尿素水が補充された場合の誤診断を防止することができる尿素水温度センサの妥当性診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、車両に搭載されるSCRシステムの尿素タンク内に設けられた尿素水温度センサにより測定された尿素水の温度を外気温と比較して、前記尿素水温度センサの故障を診断する妥当性診断部を有する尿素水温度センサの妥当性診断システムにおいて、尿素タンク内に設けられた尿素水レベルセンサにより測定された尿素水レベルをイグニッションキーOFF直前に記憶部に記憶し、イグニッションキーON後に、前記記憶部に記憶された尿素水レベルと現在の尿素水レベルのレベル差を求め、このレベル差が予め設定した閾値以下のとき、尿素水レベル条件が成立したとして、前記妥当性診断部で温度比較による診断を許可する尿素水レベル条件判断部を有し、前記妥当性診断部は、前記尿素水温度センサにより測定された尿素水の温度と尿素水レベル条件が成立した後の所定時間内に測定された外気温のうち最低値とを比較する尿素水温度センサの妥当性診断システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、尿素タンク内に尿素水が補充された場合の誤診断を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用するSCRシステムを示す概略図である。
図2】DCUの入出力構成を示す図である。
図3】本発明に係る尿素水レベル条件判断部の構成を示す図である。
図4】本発明に係る尿素水レベル条件判断部の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明に係る尿素水温度センサの妥当性診断システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0015】
まず、車両に搭載されるSCRシステムについて説明する。
【0016】
図1に示すように、SCRシステム100は、エンジンEの排気管102に設けられたSCR装置103と、SCR装置103の上流側(排気ガスの上流側)で尿素水を噴射するドージングバルブ(尿素噴射装置、ドージングモジュール)104と、尿素水を貯留する尿素タンク105と、尿素タンク105に貯留された尿素水をドージングバルブ104に供給するサプライモジュール106と、ドージングバルブ104やサプライモジュール106等を制御するDCU(Dosing Control Unit)126とを主に備える。
【0017】
エンジンEの排気管102には、排気ガスの上流側から下流側にかけて、DOC(Diesel Oxidation Catalyst;酸化触媒)107、DPF(Diesel Particulate Filter)108、SCR装置103が順次配置される。DOC107は、エンジンEから排気される排気ガス中のNOを酸化してNO2とし、排気ガス中のNOとNO2の比率を制御してSCR装置103における脱硝効率を高めるためのものである。また、DPF108は、排気ガス中のPM(Particulate Matter)を捕集するためのものである。
【0018】
SCR装置103の上流側の排気管102には、ドージングバルブ104が設けられる。ドージングバルブ104は、高圧の尿素水が満たされたシリンダに噴口が設けられ、その噴口を塞ぐ弁体がプランジャに取り付けられた構造となっており、コイルに通電することによりプランジャを引き上げることで弁体を噴口から離間させて尿素水を噴射するようになっている。コイルへの通電を止めると、内部のバネ力によりプランジャが引き下げられて弁体が噴口を塞ぐので尿素水の噴射が停止される。
【0019】
ドージングバルブ104の上流側の排気管102には、SCR装置103の入口における排気ガスの温度(SCR入口温度)を測定する排気温度センサ109が設けられる。また、SCR装置103の上流側(ここでは排気温度センサ109の上流側)には、SCR装置103の上流側でのNOx濃度を検出する上流側NOxセンサ110が設けられ、SCR装置103の下流側には、SCR装置103の下流側でのNOx濃度を検出する下流側NOxセンサ111が設けられる。
【0020】
サプライモジュール106は、尿素水を圧送するSMポンプ112と、サプライモジュール106の温度(サプライモジュール106を流れる尿素水の温度)を測定するSM温度センサ113と、サプライモジュール106内における尿素水の圧力(SMポンプ112の吐出側の圧力)を測定する尿素水圧力センサ114と、尿素水の流路を切り替えることにより、尿素タンク105からの尿素水をドージングバルブ104に供給するか、あるいはドージングバルブ104内の尿素水を尿素タンク105に戻すかを切り替えるリバーティングバルブ115とを備えている。ここでは、リバーティングバルブ115がONのとき、尿素タンク105からの尿素水をドージングバルブ104に供給するようにし、リバーティングバルブ115がOFFのとき、ドージングバルブ104内の尿素水を尿素タンク105に戻すようにした。
【0021】
リバーティングバルブ115が尿素水をドージングバルブ104に供給するように切り替えられている場合、サプライモジュール106は、そのSMポンプ112にて、尿素タンク105内の尿素水を送液ライン(サクションライン)116を通して吸い上げ、圧送ライン(プレッシャーライン)117を通してドージングバルブ104に供給するようにされ、余剰の尿素水を、回収ライン(バックライン)118を通して尿素タンク105に戻すようにされる。
【0022】
尿素タンク105には、SCRセンサ119が設けられる。SCRセンサ119は、尿素タンク105内の尿素水の液面高さ(レベル)を測定するレベルセンサ120と、尿素タンク105内の尿素水の温度を測定する温度センサ121と、尿素タンク105内の尿素水の品質を測定する品質センサ122とを備えている。品質センサ122は、例えば、超音波の伝播速度や電気伝導度から、尿素水の濃度や尿素水に異種混合物が混合されているか否かを検出し、尿素タンク105内の尿素水の品質を検出するものである。
【0023】
尿素タンク105とサプライモジュール106には、エンジンEを冷却するための冷却水を循環する冷却ライン123が接続される。冷却ライン123は、尿素タンク105内を通り、冷却ライン123を流れる冷却水と尿素タンク105内の尿素水との間で熱交換するようにされる。同様に、冷却ライン123は、サプライモジュール106内を通り、冷却ライン123を流れる冷却水とサプライモジュール106内の尿素水との間で熱交換するようにされる。
【0024】
冷却ライン123には、尿素タンク105とサプライモジュール106に冷却水を供給するか否かを切り替えるタンクヒーターバルブ(クーラントバルブ)124が設けられる。なお、ドージングバルブ104にも冷却ライン123が接続されるが、ドージングバルブ104には、タンクヒーターバルブ124の開閉に拘わらず、冷却水が供給されるように構成されている。なお、図1では図を簡略化しており示されていないが、冷却ライン123は、尿素水が通る送液ライン116、圧送ライン117、回収ライン118に沿って配設される。
【0025】
図2に、DCU126の入出力構成図を示す。
【0026】
図2に示すように、DCU126には、上流側NOxセンサ110、下流側NOxセンサ111、SCRセンサ119(レベルセンサ120、温度センサ121、品質センサ122)、排気温度センサ109、サプライモジュール106のSM温度センサ113と尿素水圧力センサ114、およびエンジンEを制御するECM(Engine Control Module)125からの入力信号線が接続されている。ECM125からは、外気温、エンジンパラメータ(エンジン回転数など)の信号が入力される。
【0027】
また、DCU126には、タンクヒーターバルブ124、サプライモジュール106のSMポンプ112とリバーティングバルブ115、ドージングバルブ104、上流側NOxセンサ110のヒータ、下流側NOxセンサ111のヒータ、への出力信号線が接続される。なお、DCU126と各部材との信号の入出力に関しては、個別の信号線を介した入出力、CAN(Controller Area Network)を介した入出力のどちらであってもよい。
【0028】
DCU126は、ECM125からのエンジンパラメータの信号と、排気温度センサ109からの排気ガス温度とを基に、排気ガス中のNOxの量を推定すると共に、推定した排気ガス中のNOxの量を基にドージングバルブ104から噴射する尿素水量を決定するようにされ、さらに、ドージングバルブ104にて決定した尿素水量で噴射したとき、上流側NOxセンサ110の検出値に基づいてドージングバルブ104を制御して、ドージングバルブ104から噴射する尿素水量を調整するようにされる。
【0029】
SCRシステム100では、尿素タンク105内に貯留された尿素水の温度を尿素水温度センサ(本実施の形態ではSCRセンサ119に設けられた温度センサ121)により測定し、尿素水の凍結を検出した場合に必要に応じて解凍制御を行うようにしている。尿素水温度センサとしての温度センサ121が故障すると尿素水の温度が測定できなくなるため、SCRシステム100には温度センサ121の故障を診断する尿素水温度センサの妥当性診断システム(以下、単に妥当性診断システムと言う)が備えられている。
【0030】
図3に示すように、妥当性診断システム129は、温度センサ121により測定された尿素水の温度を外気温と比較して、温度センサ121の故障を診断する妥当性診断部127を有する。この妥当性診断部127は、DCU126に実装される。
【0031】
妥当性診断部127は、CANを介してECM125から送られるデータ(CANデータ)である外気温関連の異常がないこと、尿素水のレベルを測定するレベルセンサ120関連の異常がないこと、温度センサ121の回路異常がないこと、を確認した上で、DCU126に持っている変数であるバッテリ電圧と、エンジンランタイマーで測定した経過時間とによってエンジン始動直後であるか否かを判断するようにされる。
【0032】
ここで、エンジンランタイマーとは、エンジンが始動してからの経過時間を測定するものである。例えば、エンジンランタイマーは、エンジン回転数が予め設定した回転数(rpm)以上になったときにエンジン始動と判断してカウントを開始し、エンジン回転数が上記設定した回転数(rpm)−所定の回転数(例えば、25rpm)以下になったときにカウントをリセットするようにされる。
【0033】
なお、通常は外気温を直接測定する温度センサがない(経済的な理由から設けられていない)ため、例えば、インテークマニホールド温度やMAFセンサに設けられたMAF温度センサにより測定されるMAF温度を外気温として用いる。
【0034】
また、妥当性診断部127は、エンジン始動直後であると判断した場合には、温度センサ121により得られた尿素水の温度を外気温と比較し、またエンジン始動直後でないと判断した場合には、温度センサ121の故障の診断は行わないようにされる。
【0035】
さらに、妥当性診断部127は、尿素水の温度を外気温と比較した結果、その温度差が予め設定した閾値より大きいとき、温度センサ121を故障と診断するようにされる。
【0036】
妥当性診断システム129は、このようにして温度センサ121の故障を診断するようにされるが、エンジン始動直後と言う条件だけで診断を許可していたのでは、例えば、低外気温時に部屋などに保存されていた暖かい尿素水が補充された場合、尿素タンク105内の尿素水の温度が上昇し、補充された量によっては温度センサ121で測定される尿素水の温度と外気温との温度差が大きくなり、温度センサ121が故障していると誤診断してしまうと言う問題が生じる。
【0037】
そこで、本発明者らは、妥当性診断システム129に、尿素タンク105内の尿素水レベルに基づいて妥当性診断部127による診断を許可する尿素水レベル条件判断部128を実装した。
【0038】
この尿素水レベル条件判断部128は、尿素タンク105内に設けられた尿素水レベルセンサ(本実施の形態ではSCRセンサ119に設けられたレベルセンサ120)により測定された尿素水レベルをキーOFF(イグニッションオフ;車両停止)直前に記憶部130に記憶し、キーON(イグニッションオン;車両始動)後に、記憶部130に記憶された尿素水レベルと現在の尿素水レベルのレベル差を求め、このレベル差が予め設定した閾値以下のとき、妥当性診断部127で温度比較による診断を許可するようにされる。キーOFF直前に記憶部130に記憶するのは、キーOFFによりSCRセンサ119がOFFとなってしまい、その後は尿素水レベルを測定することができないためである。また、記憶部130は、例えばEEPROMなど書き換え可能な媒体からなる。
【0039】
尿素水レベル条件判断部128の動作をまとめたフローチャートを図4に示す。
【0040】
図4に示すように、尿素水レベル条件判断部128は、キーON後にSCRセンサ119のレベルセンサ120により測定された尿素タンク105内の現在の尿素水レベルと、キーOFF直前に記憶部130に記憶された尿素水レベルとを比較して、これらのレベル差が予め設定した閾値以下であるか否かを判断する(ステップ401)。なお、初回診断時など記憶部130に尿素水レベルが記憶されていない場合には、尿素水レベル条件判断部128は妥当性診断部127による診断を許可することなく動作を終了する。
【0041】
ステップ401にてレベル差が設定した閾値より大きいと判断されたときは、尿素水レベル条件判断部128は妥当性診断部127による診断を許可することなく動作を終了し、また、レベル差が設定した閾値以下であると判断されたときは、尿素水レベル条件判断部128は妥当性診断部127による診断を許可する(ステップ402)。
【0042】
このような動作により、尿素水レベル条件判断部128は、尿素タンク105内の尿素水レベルがほぼ変化していない場合のみに尿素水温度センサの診断を許可する。
【0043】
この尿素水レベル条件判断部128を備えた尿素水温度センサの妥当性診断システム129の動作を図5により説明する。
【0044】
妥当性診断システム129に備えられた妥当性診断部127は、先ず、CANデータである外気温関連の異常がないこと、尿素水のレベルを測定するレベルセンサ120関連の異常がないこと、温度センサ121の回路異常がないこと、を確認し(ステップ500)、いずれかに異常がある場合は診断を終了する。
【0045】
ステップ500にて各種異常が無いことを確認したら、妥当性診断部127は、DCU126に持っている変数であるバッテリ電圧が予め設定した範囲内であるか否かを判断する(ステップ501)。
【0046】
ステップ501にてバッテリ電圧が予め設定した範囲外であると判断されたときには、妥当性診断部127は温度センサ121の診断を行うことなくプロセスを終了する。
【0047】
また、ステップ501にてバッテリ電圧が予め設定した範囲内であると判断されたときには、妥当性診断部127はエンジンランタイマーで測定した経過時間が予め設定した範囲内であるか否かを判断する(ステップ502)。
【0048】
ステップ502にてエンジンランタイマーで測定した経過時間が予め設定した範囲外であると判断されたときには、妥当性診断部127は温度センサ121の診断を行うことなくプロセスを終了する。
【0049】
また、ステップ502にてエンジンランタイマーで測定した経過時間が予め設定した範囲内であると判断されたときには、尿素水レベル条件判断部128によって図4に示したフローチャートに順って尿素水レベルに基づく診断許可条件(尿素水レベル条件)を満たしているか否かの判断を行う(ステップ503)。
【0050】
ステップ503にて尿素水レベル条件判断部128による尿素水レベル条件を満たしていると判断されたときには、妥当性診断部127は、温度センサ121により得られた尿素水の温度と尿素水レベル条件成立後の所定時間内に測定された外気温のうち最低値とを比較する(ステップ504)。ここで、尿素水レベル条件成立後の所定時間内に測定された外気温のうち最低値を用いるのは、診断結果への影響を最小限に抑えるためである。つまり、本診断中に自動車が走り出したときには、外気温としてのインテークマニホールド温度やMAF温度が上昇する可能性があり、この場合診断結果に大きな影響を与えてしまうが、最低値を用いることでこれらの影響を排除できる。
【0051】
ステップ504にて尿素水の温度と外気温との温度差が予め設定した閾値以下であると判断されたときには、妥当性診断部127は温度センサ121が正常であると判断する(ステップ505)。
【0052】
ステップ504にて尿素水の温度と外気温との温度差が予め設定した閾値より大きいと判断されたときには、妥当性診断部127は温度センサ121が故障していると判断する(ステップ506)。なお、故障の判断は、これらのステップを繰り返し、連続して複数回、故障と判断されたときに初めて行うようにしてもよい。
【0053】
このように、本発明の妥当性診断システム129では、従来のステップ501,502の診断許可条件に加えて、尿素水レベル条件判断部128による尿素水レベル条件を満たしているか否かを判断するため、尿素タンク105内に尿素水が補充された場合に診断を行わず、温度センサ121が故障していないのにもかかわらず、故障と判断する誤診断を防止することができる。
【符号の説明】
【0054】
105 尿素タンク
120 レベルセンサ
121 温度センサ
127 妥当性診断部
128 尿素水レベル条件判断部
129 尿素水温度センサの妥当性診断システム
130 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5