【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
1.作用電極の作製
まず、以下の手順で酸化チタンゾル液を調製した。
125mlのチタンイソプロポキシドを0.1M硝酸水溶液750mlに攪拌しながら添加し、さらにこれを80℃で8時間激しく攪拌した。得られた液体をテフロン(登録商標)製の圧力容器内で230℃、16時間オートクレーブ処理した。次いで、得られたゾル液を攪拌し、沈殿物を再懸濁させた。その後、吸引濾過により、再懸濁しなかった沈殿物を取り除き、エバポレーターで酸化チタン濃度が11wt%になるまでゾル液を濃縮した。得られたゾル液にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(商品名:フオスフアノールML−220、東邦化学工業製)を酸化チタン重量に対し5wt%添加し、その後、1時間攪拌した。
かくして得られたゾル液を酸化チタン濃度が2wt%となるようにメタノールで希釈することで、実施例1の酸化チタンゾル液を得た。
【0045】
次に、上記の実施例1の酸化チタンゾル液を用い、以下の手順で酸化チタン電極(金属酸化物層)を作製した。
まず、ポリカーボネートフィルム基板の表面に透明導電膜として厚さ約600nmのITOをスパッタ成膜することで、可撓性を有する導電性ポリカーボネートフィルム樹脂基板(サイズ:縦2.0cm、横1.5cm、厚さ0.1mm、シート抵抗:30Ω/□)を作製した。次に、得られた導電性ポリカーボネートフィルム樹脂基板の透明導電膜上に、縦0.5cm、横0.5cmの四角穴を設けた厚さ70μmのマスキングテープを貼り、その四角穴に向けて実施例1の酸化チタンゾル液をスプレー塗布することで、その四角穴の内側で露出する透明導電膜上に酸化チタンゾル液を付与した。その後、マスキングテープを剥がし、電気炉を用いて100℃で30分間加熱することで、金属酸化物及びリン酸系界面活性剤を含有する金属酸化物層(酸化チタン膜)を形成した。なお、加熱時の昇温速度は2℃/minとした。
次いで、得られた金属酸化物層中に含まれる硝酸成分を除去するため、金属酸化物層をアルカリ溶液で処理した。具体的には、アルカリ溶液として2wt%のアンモニア水/メタノール希釈溶液を用い、この溶液中に金属酸化物層を30分浸漬し、その後、金属酸化物層を取り出してメタノールで洗浄し、さらに80℃で10分間乾燥させた。
以上の操作により、基体の導電性表面上に金属酸化物及びリン酸系界面活性剤を含有する金属酸化物層(酸化チタン膜)を有する実施例1の酸化チタン電極を得た。この金属酸化物層の膜厚を測定したところ、約6μmであった。
【0046】
次に、以下の手順で作用電極を作製した。
増感色素として(4,4’−ジカルボン酸−2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)ジイソチアネートを3×10
−4M濃度で添加した無水エタノール溶液20mlに、実施例1の酸化チタン電極を浸漬し、12時間放置した。放置後、電極を取り出して無水アセトニトリルで洗浄し自然乾燥させた。得られた電極は、金属酸化物層がルテニウム色素の担持(吸着)によって深紅色となっていることが確認された。
以上の操作により、金属酸化物の表面に増感色素が担持された金属酸化物層を基体の導電性表面上に有する、実施例1の作用電極(色素担持金属酸化物層)を得た。
【0047】
2.対向電極の作製
次に、以下の手順で対向電極(カーボン対向電極)を作製した。
導電性炭素粒子として、導電性カーボンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン株式会社製)を準備し、これをメタノールに5重量%となるよう添加した。次に、ポリマー型アニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(商品名:フオスフアノール ML-220、東邦化学工業製)を導電性炭素粒子の総量に対し1wt%添加し、1時間攪拌した。さらに、導電性炭素粒子濃度が2重量%となるようにメタノールで希釈し、スプレー塗布に好適な濃度とした、実施例1のスラリー液(調合物)を調製した。
【0048】
次いで、上記のように調製した実施例1のスラリー液を用いて、以下の要領で対向電極 (カーボン対向電極)を作製した。
まず、作用電極と同様に、ポリカーボネートフィルム基板の表面に透明導電膜として厚さ約600nmのITOをスパッタ成膜することで、可撓性を有する導電性ポリカーボネートフィルム樹脂基板(サイズ:縦2.0cm、横1.5cm、厚さ0.1mm、シート抵抗:30Ω/□)を作製した。この導電性ポリカーボネートフィルム樹脂基板の透明導電膜上に、縦0.5cm、横0.5cmの四角穴を設けた厚さ70μmのマスキングテープを貼り、その四角穴に向けて、実施例1のスラリー液をスプレー塗布した。塗布後、マスキングテープを剥がし、電気炉を用いて100℃で30分間加熱した。昇温速度は2℃/minとした。
以上の操作により、基体の導電性表面上に導電性炭素粒子及びポリマー型アニオン系界面活性剤を含有するカーボン触媒層を有する実施例1の対向電極を得た。
【0049】
また、分析用に上記と同様に実施例1の対向電極を作製し、そのカーボン触媒層を採取して熱重量分析(TGA)を行ったところ、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸が導電性カーボンブラックに対して0.8wt%含まれていることが確認された。この熱重量分析の測定条件は以下の通りである。セイコー電子社製のTG/DTA22装置を用い、試料2mgを採取して試料ホルダーにセットするとともに参照ホルダーに参照試料をセットし、試料周囲の雰囲気ガスとしてHeガスを流量300mL/分で装置内に流通開始した後、昇温速度10℃/分の昇温プログラムの下、室温から昇温を開始して、そのときの試料の質量変化を測定した(室温〜500℃)。
【0050】
3.色素増感型太陽電池の作製
そして、上記の作用電極及びカーボン対向電極を用い、以下の手順で色素増感型太陽電池を作製した。
まず、縦0.5cm、横0.5cmの四角穴を有する縦1.5cm、横1.5cm、厚さ70μmのスペーサーを、作用電極上に載置して密着させた。このとき、スペーサーの四角穴の部分と増感色素が担持された金属酸化物層(色素担持金属酸化物層)の部分とが一致するように、スペーサーを作用電極上に置いた。次いで、四角穴の開口から電解質(電解液)を注ぎ込み、四角穴内に電解質を充填した。ここで、電解液としては、テトラプロピルアンモニウムヨウジド(0.4M)とヨウ素(0.04M)を含むメトキシプロピオニトリル溶液を用いた。その後、四角穴の開口上に対向電極を載置した。このとき、四角穴の開口と対向電極のカーボン触媒層の部分とが一致するように対向電極を置いた。そして、周囲をエポキシ樹脂で封止することにより、実施例1の色素増感型太陽電池を作製した。
【0051】
4.評価
得られた実施例1の色素増感型太陽電池の電池特性を、AM−1.5(1000W/m
2)のソーラーシミュレーターを用いて測定した。
電池特性は、開放電圧(Voc)、光電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)の4項目を測定した。なお、開放電圧(Voc)は、太陽電池セル・モジュールの出力端子を開放したときの両端子間の電圧を表す。光電流密度(Jsc)は、太陽電池セル・モジュールの出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる電流(1cm
2当たり)を表す。また、形状因子(FF)は、最大出力Pmaxを開放電圧(Voc)と光電流密度(Jsc)の積で除した値(FF=Pmax/Voc・Jsc)であり、太陽電池としての電流電圧特性曲線の特性を表すパラメータである。さらに、光電変換効率(η)は、光電変換素子の電圧をソースメータにて掃引して応答電流を測定することで得られる、電圧と電流との積である最大出力を1cm
2あたりの光強度で除した値に100を乗じてパーセント表示したものであり、(最大出力/1cm
2あたりの光強度)×100で表される。これらの結果を表1に示す。
【0052】
また、得られた実施例1の色素増感型太陽電池の耐久性(長期信頼性)を評価するために、60℃95%RHで100hr放置した後の光電変換効率、及び、60℃〜−20℃の温度サイクル試験(1サイクル6時間×10回)を実施した後の光電変換効率を各々測定し、先に測定した(初期の)光電変換効率からの変動率(%)を各々算出した。これらの結果を、表1に併せて示す。
【0053】
さらに、カーボン触媒層の膜強度を評価するために、メタノールを入れた洗瓶を用意し、作用電極のカーボン触媒層の表面から20cmほど離した位置からカーボン触媒層の表面へメタノールを掛け流し、その際のカーボン触媒層の剥離状態を観察した。評価基準は以下の通りとした。
○:剥離無し
△:一部剥離
×:完全剥離
【0054】
(実施例2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を導電性炭素粒子の総量に対し5wt%添加すること以外は、実施例1と同様に行い、実施例2のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例2のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例2の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例2の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例3)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を導電性炭素粒子の総量に対し10wt%添加すること以外は、実施例1と同様に行い、実施例3のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例3のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例3の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例3の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例4)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を導電性炭素粒子の総量に対し20wt%添加すること以外は、実施例1と同様に行い、実施例4のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例4のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例4の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例4の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例5)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を導電性炭素粒子の総量に対し30wt%添加すること以外は、実施例1と同様に行い、実施例5のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例5のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例5の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例5の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例6)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(商品名:ポイズ 520、ライオン株式会社製、カルボキシル基もしくはその塩を有するポリマー型高分子活性剤)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、実施例6のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例6のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例6の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例6の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例7)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(商品名:エマール20C、ライオン株式会社製)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、実施例7のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例7のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例7の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例7の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例8)
導電性カーボンブラックをグラファイト(商品名:燐片状黒鉛 Z−5F、伊藤黒鉛工業株式会社製)に変更すること以外は、実施例3と同様に行い、実施例8のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例8のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例8の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例8の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例9)
導電性カーボンブラックをフラーレン(商品名:ナノムミックスST、フロンティアカーボン株式会社製)に変更すること以外は、実施例3と同様に行い、実施例9のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例9のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例9の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例9の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を添加しないこと以外は、実施例1と同様に行い、比較例1のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例1のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例1の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例1の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を、表1に示す。
【0063】
(比較例2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をポリエチレングリコール(分子量4000、和光純薬製)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、比較例2のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例2のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例2の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例2の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例3)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をポリエチレングリコール(分子量4000、和光純薬製)に変更すること以外は、実施例5と同様に行い、比較例3のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例3のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例3の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例3の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を、表1に示す。
【0065】
(比較例4)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:サニゾール B−50、ライオン株式会社製)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、比較例4のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例4のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例4の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例4の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を、表1に示す。
【0066】
(比較例5)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をステアリルアミンアセテート(商品名:アセタミン86、ライオン株式会社製)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、比較例5のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例5のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例5の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例5の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を、表1に示す。
【0067】
(比較例6)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をポリオキシエチレンアルキルアミン(商品名:アミート102、ライオン株式会社製)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、比較例6のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例6のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例6の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例6の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を、表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例1〜7及び比較例1に示す通り、ポリマー型アニオン系界面活性剤をカーボン触媒層中に含有させることで、色素増感型太陽電池の耐久性(長期信頼性)が格別に向上することが確認された。また、ポリマー型アニオン系界面活性剤の含有量を調整することで、従来では為し得なかった、優れた電池特性及び優れた耐久性(長期信頼性)を両立することが可能であることが確認された。
【0070】
一方、実施例1〜7と比較例2〜6との対比から、従来の有機バインダー成分、非ポリマー型の界面活性剤、アニオン系以外の界面活性剤を用いた場合には、色素増感型太陽電池の耐久性(長期信頼性)の向上効果が不十分であるばかりか、そもそも良好な電池特性が発揮されていないことが確認された。
【0071】
また、実施例2と実施例6及び7との対比より、リン酸基を有するポリマー型界面活性剤は、他のポリマー型アニオン系界面活性剤とは異なり、電池性能及び色素増感型太陽電池の耐久性(長期信頼性)をより効果的に高めることができる特異な添加物であることが確認された。
【0072】
さらに、実施例1〜7と実施例8及び9との対比より、上述の効果は導電性炭素粒子の種別を問わず、発揮されることが確認された。
【0073】
なお、上述したとおり、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。