特許第5786286号(P5786286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5786286色素増感型太陽電池用対向電極及び色素増感型太陽電池、並びに対向電極の製造方法
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  • 特許5786286-色素増感型太陽電池用対向電極及び色素増感型太陽電池、並びに対向電極の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786286
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】色素増感型太陽電池用対向電極及び色素増感型太陽電池、並びに対向電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   H01G9/20 115A
   H01G9/20 113B
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2010-143652(P2010-143652)
(22)【出願日】2010年6月24日
(65)【公開番号】特開2012-9252(P2012-9252A)
(43)【公開日】2012年1月12日
【審査請求日】2013年5月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】門田 敦志
(72)【発明者】
【氏名】繁田 徳彦
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−014411(JP,A)
【文献】 特開2003−297446(JP,A)
【文献】 特開2008−071605(JP,A)
【文献】 特開2010−033815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
H01M 14/00
H01L 51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性表面を有する基体と、該導電性表面上の少なくとも一部に設けられたカーボン触媒層とを有し、
前記カーボン触媒層は、導電性炭素粒子及びリン酸基を有するポリマー型アニオン系界面活性剤を含有し、
前記リン酸基を有するポリマー型アニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエーテルリン酸から選択され、
前記導電性炭素粒子が凝集及び/又は結合した多孔質構造を有する、
色素増感型太陽電池用対向電極。
【請求項2】
前記リン酸基を有するポリマー型アニオン系界面活性剤は、前記導電性炭素粒子に対し0.5〜30wt%含まれる、
請求項1に記載の色素増感型太陽電池用対向電極。
【請求項3】
導電性表面を有する基体と該導電性表面上の少なくとも一部に設けられた色素担持金属酸化物層とを有する作用電極、
導電性表面を有する基体と該導電性表面上の少なくとも一部に設けられたカーボン触媒層とを有する対向電極、及び、
前記作用電極と前記対向電極との間に設けられた電解質、を備え、
前記カーボン触媒層は、導電性炭素粒子及びリン酸基を有するポリマー型アニオン系界面活性剤を含有し、
前記リン酸基を有するポリマー型アニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエーテルリン酸から選択され、
前記導電性炭素粒子が凝集及び/又は結合した多孔質構造を有する、
色素増感型太陽電池。
【請求項4】
導電性表面を有する基体と該導電性表面上に設けられたカーボン触媒層とを有する対向電極の製造方法であって、
電性炭素粒子及びリン酸基を有するポリマー型アニオン系界面活性剤を含有する調合物を準備する工程と、
前記調合物を前記基体の導電性表面を有するに付与する工程と、
50〜150℃の低温処理工程と、 を有し、
前記リン酸基を有するポリマー型アニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエーテルリン酸から選択される、
対向電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池用対向電極及び色素増感型太陽電池、並びに対向電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質酸化チタン電極を用いることにより、アモルファスシリコン太陽電池に匹敵する性能を有する色素増感型太陽電池が得られる旨の報告がグレッツェルらによって既になされている(J. Am. Chem. Soc. 115 (1993) 6382参照)。また、近時、色素増感型太陽電池の応用開発研究が、国内外を問わず、様々な研究機関で盛んに行われている。
【0003】
色素増感型太陽電池の一般的な構造としては、導電性基板上に増感色素を担持した金属酸化物層(金属酸化物半導体)を有する作用電極と、導電性基板上に触媒層を有する対向電極(対極)との間に、電解液(電解質)を挟み込んだ構造が広く知られている。
【0004】
従来、対向電極の触媒層としては、Ptのスパッタ膜やメッキ膜などの薄膜が用いられている。しかしながら、貴金属であるPtの使用は、コストの面で大きな問題となる。そこで最近では、カーボンを触媒層として使用する試みがなされている。触媒層にカーボンを用いた対向電極(以降、「カーボン対向電極」ともいう。)の製法としては、例えば、炭素粒子と有機金属化合物又は金属塩とを含有するペースト又はスラリーをガラス基板上に印刷法等で塗布した後、300〜600℃に加熱して焼結することにより、製膜する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
この種のカーボン対向電極がその機能を充分に発揮するためには、炭素粒子同士の強い結合、及び、炭素粒子と導電性基板の表面との強い結合が非常に重要となる。この目的を達成するため、従来においては、ポリエチレングリコールなどの有機バインダー成分を適量添加したペースト又はスラリー等の塗布液を調製し、この塗布液を基板上に塗布し、しかる後、400℃以上の高温で焼成することにより触媒層を成膜することが一般的であった。
【0006】
しかしながら、このような高温焼成処理を必須とする方法では、基板の損傷が生じ得るため、事実上、樹脂材料を含む基板を用いることができず、その結果、得られる電極の用途が限定される問題があった。また、印加エネルギー量が大きいので、環境負荷が大きいという問題もあった。
【0007】
一方、高温焼成処理を省略するために、有機バインダーを塗布液に比較的多めに配合する試みもなされている。このようにすると触媒層の機械的強度の向上効果は認められるものの、膜中の有機バインダー成分が電解液に溶け出す等して、電池特性を著しく悪化させるという問題が生じ得る。
【0008】
そこで、直径がナノメートルサイズの繊維状炭素、より具体的には、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーからなる群より選択された少なくとも1種の炭素材料からなるナノカーボン膜を電極として構成することにより、バインダー等の添加物を用いることなく、機械的強度に優れる薄膜を得ようとする試みがなされている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−302390号公報
【特許文献2】特開2004−111216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載された技術によれば、確かに、バインダーフリーでも、繊維状炭素材料の絡み合いによって機械的強度を向上させることができることは理解できる。しかしながら、繊維状炭素材料、特にシングルウォールカーボンナノチューブなどは非常に高価なため、Ptの代替による低コスト化という本来の目的から大きく外れてしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カーボン触媒層の機械強度(膜強度、密着強度)に優れ、色素増感型太陽電池の電池特性を過度に損なうことなく耐久性(長期信頼性)を向上させることが可能な、色素増感型太陽電池用対向電極を提供することにある。また、本発明の他の目的は、電池特性及び耐久性に優れる色素増感型太陽電池を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、カーボン触媒層の機械強度(膜強度、密着強度)に優れる対向電極を簡易且つ低コストで再現性よく安定して製造可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリマー型アニオン系界面活性剤を導電性炭素粒子と併用することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の色素増感型太陽電池用対向電極は、導電性表面を有する基体と、該導電性表面上の少なくとも一部に設けられたカーボン触媒層とを有し、前記カーボン触媒層は、導電性炭素粒子及びポリマー型アニオン系界面活性剤を含有する、ものである。
【0014】
本発明者らが、このように構成された色素増感型太陽電池用対向電極と作用電極とを対向配置し、両者の間に電解質を設けた色素増感型太陽電池の特性を測定したところ、上記従来の有機バインダー成分を使用したものに比して、耐久性(長期信頼性)が格別に高められており、その上さらに、有機バインダー成分を配合する場合に不可避的に付随する電池特性の低下までもが格別に抑制されていることが判明した。かかる効果が奏される作用機構の詳細は、未だ明らかではないものの、例えば、以下のとおり推定される。
【0015】
上記構成の色素増感型太陽電池用対向電極においては、導電性炭素粒子にポリマー型アニオン系界面活性剤を併用しているため、導電性炭素粒子同士、及び、導電性炭素粒子と導電性表面の構成元素(例えば、透明導電膜の場合は、通常、InやSn等の金属元素)とが、強固に結合或いは相互作用し得る。したがって、カーボン触媒層の機械強度及び密着強度が格別に高めら得る。しかも、ポリマー型アニオン系界面活性剤の配合により導電性炭素粒子の分散性が高められるので、導電性炭素粒子及びポリマー型アニオン系界面活性剤を含有するカーボン触媒層は、上記従来の有機バインダー成分を用いた場合に比して、機械強度及び密着強度に優れる微細な多孔質構造を採り得る。その上さらに、アニオン基の導電性炭素粒子の表面への相互作用により、導電性炭素粒子の表面が帯電した状態となり、上記従来の有機バインダー成分を用いた場合に比して、導電性炭素粒子の表面の電解質の濡れ性が向上され、多孔質構造内への電解質の引き込みが高められているとも考えられる。これは、電解質がイオン性物質或いは極性物質を含む場合に、殊に顕著になると考えられる。これらの作用が相まった結果、上記構成の色素増感型太陽電池用対向電極においては、上記従来技術で述べた有機バインダー成分を用いた場合とは異なり、電池特性を過度に損なうことなく、耐久性(長期信頼性)が格別に高められたものと考えられる。但し、作用はこれらに限定されない。
【0016】
上記において、前記カーボン触媒層は、前記導電性炭素粒子が凝集及び/又は結合した多孔質構造を有することが好ましい。このような多孔質構造のカーボン触媒層を構成することにより、表面積が飛躍的に増大し、カーボン触媒層への電解質の引き込みが高められ、その結果、光電変換(酸化還元反応)の反応点が増大するため、電池特性が格別に高められる。
【0017】
さらに、上述した前記ポリマー型アニオン系界面活性剤は、前記導電性炭素粒子に対し0.5〜30wt%含まれることが好ましい。ポリマー型アニオン系界面活性剤の含有量をこの範囲に調整することにより、従来では為し得なかった、電池特性及び耐久性(長期信頼性)の両立が図られる。
【0018】
本発明の色素増感型太陽電池は、上記本発明の色素増感型太陽電池用対向電極を有効に利用可能なものであって、導電性表面を有する基体と該導電性表面上の少なくとも一部に設けられた色素担持金属酸化物層とを有する作用電極、導電性表面を有する基体と該導電性表面上の少なくとも一部に設けられたカーボン触媒層とを有する対向電極、及び、前記作用電極と前記対向電極との間に設けられた電解質、を備え、前記カーボン触媒層は、導電性炭素粒子及びポリマー型アニオン系界面活性剤を含有する、ものである。上記と同様の理由で、前記カーボン触媒層は、導電性炭素粒子が凝集及び/又は結合した多孔質構造を有することが好ましく、前記ポリマー型アニオン系界面活性剤は、前記導電性炭素粒子に対し0.5〜30wt%含まれることが好ましい。
【0019】
本発明の対向電極の製造方法は、上記本発明の色素増感型太陽電池用対向電極を有効に製造可能なものであって、導電性表面を有する基体と該導電性表面上に設けられたカーボン触媒層とを有する対向電極の製造方法であって、導電性炭素粒子及びポリマー型アニオン系界面活性剤を含有する調合物を準備する工程と、前記調合物を前記基体の導電性表面を有するに付与する工程と、を有するものである。この製造方法によれば、カーボン触媒層の機械強度(膜強度、密着強度)に優れる対向電極を簡易且つ低コストで再現性よく安定して製造可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、カーボン触媒層の機械強度に優れ、色素増感型太陽電池の電池特性を過度に損なうことなく耐久性を向上させることが可能な、色素増感型太陽電池用対向電極が実現され、また、電池特性及び耐久性に優れる色素増感型太陽電池が実現される。しかも、そのような作用電極を、従来技術の如く高温焼成プロセスを必須とせず、簡易且つ低コストで再現性よく安定して製造可能なので、生産性及び経済性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】色素増感型太陽電池100及び対向電極14の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。
【0023】
図1は、本実施形態の色素増感型太陽電池の概略構成を示す断面図である。
色素増感型太陽電池100は、作用電極11(色素担持電極、光電変換電極)と、対向電極21と、これら作用電極11及び対向電極21の間に設けられた電解質31を備える。作用電極11と対向電極21とは、スペーサー41を介して対向配置され、これら作用電極11、対向電極21及びスペーサー41並びに図示しない封止部材によって画成される封止空間内に、電解質31が封入されている。
【0024】
作用電極11は、導電性表面12aを有する基体12と、導電性表面12a上に形成された多孔性の金属酸化物層13とを備え、金属酸化物層13に増感色素が担持(吸着)されることにより、色素担持金属酸化物層14が形成されている。換言すれば、本実施形態の作用電極11は、色素担持金属酸化物層14、すなわち、増感色素が金属酸化物の表面に担持(吸着)された複合構造体が、基体12の導電性表面12a上に積層された構成となっている。
【0025】
基体12としては、少なくとも金属酸化物層13を支持可能なものであればその種類や寸法形状は特に制限されず、例えば、板状或いはシート状の物が好適に用いられる。その具体例としては、例えば、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のプラスチック基板、金属基板或いは合金基板、セラミックス基板又はこれらの積層体等が挙げられる。また、基体12は、透光性を有することが好ましく、可視光領域における透光性に優れるものがより好ましい。さらに、基体12は、可撓性を有することが好ましい。この場合、その可撓性を生かした種々の形態の構造物を提供できる。
【0026】
導電性表面12aは、例えば、導電性PETフィルムのように基体12上の一部に又は全面に透明導電膜を形成する等して、基体12に付与することができる。また、導電性を有する基体12を用いることで、基体12に導電性表面12aを付与する処理を省略することができる。透明導電膜の具体例としては、例えば、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、SnO、InOの他、SnOにフッ素をドープしたFTO等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、各々を単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。透明導電膜の形成方法は、特に限定されず、例えば、蒸着法、CVD法、スプレー法、スピンコート法、或いは浸漬法等、公知の手法を適用できる。また、透明導電膜の膜厚は、適宜設定可能である。なお、基体12の導電性表面12aは、必要に応じて、適宜の表面改質処理が施されていてもよい。その具体的としては、例えば、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液等による脱脂処理、機械的研磨処理、水溶液への浸漬処理、電解液による予備電解処理、水洗処理、乾燥処理等公知の表面処理が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0027】
金属酸化物層13は、TiO、ZnO、SnO、ZrO、SiO、Al、WO、Nb等の金属酸化物を主成分とする多孔性の半導体層である。金属酸化物層13は、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、鉛、アンチモン、ビスマス等の金属、これらの金属酸化物及びこれらの金属カルコゲニドを含んでいてもよい。なお、金属酸化物層13の厚みは、特に限定されないが、0.05〜50μmであることが好ましい。
【0028】
金属酸化物層13の形成方法は、特に限定されず、公知の手法が適用可能である。例えば、金属酸化物粒子を含有する調合物(スラリーやゾル等)を基体12の導電性表面12a上に付与した後に焼結する方法や、かかる調合物を基体12の導電性表面12a上に付与した後に50〜150℃程度、好ましくは70〜150℃程度の低温処理を行う方法が挙げられる。これらの手法によると、金属酸化物の粒子が凝集及び/又は結合した多孔質構造を有する金属酸化物層13を簡易に得ることができる。これらの中でも、樹脂を含む基板が使用可能となるとともに印加エネルギー量を減らして環境負荷を低減できる観点から、後者の50〜150℃程度の低温処理を行う方法が好ましい。なお、調合物の基体12の導電性表面12aへの付与方法は、特に限定されず、従来公知の塗布法等が適用可能である。
【0029】
上記の金属酸化物粒子を含有する調合物は、分散媒を含む調合液(例えば、分散液、ゾル液又はスラリー液等)であることが好ましい。分散媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、エトキシエタノール、シクロヘキサノン等の各種の有機溶媒が挙げられる。なお、これらは、各々を単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、他の界面活性剤、酸、キレート剤等の助剤を含むものであってもよい。
【0030】
金属酸化物層13に担持させる増感色素は、特に限定されず、水溶性色素、非水溶性色素、油溶性色素のいずれであっても構わない。光電変換素子として要求される性能に応じて、所望の光吸収帯・吸収スペクトルを有するものを適宜選択できる。増感色素の具体例としては、例えば、エオシンY等のキサンテン系色素、クマリン系色素、トリフェニルメタン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ポリピリジン金属錯体色素等の他、ルテニウムビピリジウム系色素、アゾ色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリウム系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、オキソノール系色素、ポリメチン系色素、リボフラビン系色素等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらは、各々を単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。また、色素担持量を増大させる観点から、増感色素は、金属酸化物と相互作用する吸着性基を有することが好ましい。吸着性基の具体例としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基或いはリン酸基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
増感色素を金属酸化物層13に担持させる方法は、特に限定されず、公知の形成方法を適用することができる。具体的には、例えば、増感色素を含む溶液に金属酸化物層13を浸漬する方法、増感色素を含む溶液を金属酸化物層13に塗布する方法等が挙げられる。ここで用いる増感色素含有溶液の溶媒は、使用する増感色素の溶解性又は相溶性等に応じて、例えば、水、エタノール系溶媒、ニトリル系溶媒、ケトン系溶媒等の公知の溶媒から適宜選定することができる。
【0032】
なお、作用電極11は、基体12の導電性表面12aと金属酸化物層13(色素担持金属酸化物層14)との間に、中間層を有していてもよい。中間層の材料は、特に限定されないが、例えば、上記の導電性表面12aの透明導電膜で説明した金属酸化物等が好ましい。中間層は、例えば、蒸着法、CVD法、スプレー法、スピンコート法、浸漬法或いは電析法等の公知の手法によって、基体12の導電性表面12aに金属酸化物を析出或いは堆積することで形成することができる。なお、中間層は、透光性を有することが好ましく、さらに導電性を有することが好ましい。また、中間層の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1〜5μm程度が好ましい。
【0033】
対向電極21は、導電性表面22aを有する基体22と、導電性表面22a上に形成された多孔性のカーボン触媒層23とを備え、カーボン触媒層23が作用電極11の金属酸化物層13(色素担持金属酸化物層14)と対面するように対向配置されている。基体22及び導電性表面22aは、上述した基体12及び導電性表面12aに対応するものであり、これらと同様に公知のものを適宜採用することができ、また、基体12及び導電性表面12aにおいて説明したものを好適に用いることができる。導電性表面22aを有する基体22の具体例としては、例えば、導電性を有する基体12の他、透明導電膜を形成する等して基体12上の一部に又は全面に導電性表面12aを有するもの、さらに、基体12の導電性表面12a上にさらに導電層として、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、モリブデン、チタン等の金属、導電性ポリマー等の膜を形成したもの等が挙げられる。
【0034】
カーボン触媒層23は、導電性炭素粒子及びポリマー型アニオン系界面活性剤を含有する。カーボン触媒層23は、導電性炭素粒子を主成分とする多孔質構造を有することが好ましい。多孔質構造を有するカーボン触媒層23は、表面積が大きく電池特性に優れる傾向にある。
【0035】
カーボン触媒層23を構成する導電性炭素粒子の具体例としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、ガラス炭素、アモルファス炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンホイスカー、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、各々を単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。なお、カーボン触媒層23の厚みは、特に限定されないが、0.05〜50μmであることが好ましい。
【0036】
カーボン触媒層23に含まれるポリマー型アニオン系界面活性剤は、分子内にアニオン性の官能基又その塩を少なくとも1つ以上有する界面活性剤であって、繰り返し構造単位を有するものを意味する。カーボン触媒層23にポリマー型アニオン系界面活性剤を含ませることにより、機械強度(膜強度、密着強度)が飛躍的に向上し、有機バインダーを添加する上記従来の手法とは異なり、耐久性(長期信頼性)及び電池特性(特に、初期特性)に優れる色素増感型太陽電池が実現可能となる。ここで、アニオン性の官能基又はその塩の具体例としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基等の吸着性基及びそのエステル塩などが挙げられる。また、繰り返し構造単位及びその繰り返し数については、特に限定されないが、ポリマー型アニオン系界面活性剤の分子量は1000以上10000以下であることが好ましい。ポリマー型アニオン系界面活性剤の分子量が小さいと、機械強度(膜強度、密着強度)及び耐久性(長期信頼性)の向上効果が小さくなる傾向にあり、ポリマー型アニオン系界面活性剤の分子量が大きいと、電池特性が悪化する傾向にある。なお、アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、アルキルポリオキシエチレンリン酸塩等が知られている。
【0037】
好ましいポリマー型アニオン系界面活性剤は、リン酸基を有するポリマー型アニオン性界面活性剤である。リン酸基を有するポリマー型界面活性剤は、界面活性剤の中でも低気泡性の特性を有する。したがって、導電性炭素粒子及びリン酸基を有するポリマー型界面活性剤を含有する調合物を用いてカーボン触媒層23を形成する場合において、導電性炭素粒子を含む調合物(スラリーやゾル等)における気泡の発生を抑制することができ、その結果、カーボン触媒層23の機械強度をより一層高めることができる。一般に、導電性炭素粒子を含む調合物中に混入した気泡は、塗膜(導電性炭素粒子膜、カーボン触媒層23)中にも取り込まれるため、形成されるカーボン触媒層23の機械強度の低下を引き起こし得る。したがって、ポリマー型アニオン系界面活性剤として、リン酸基を有するポリマー型界面活性剤等のように低気泡性のものを用いることが好ましい。また、リン酸基は、透明電極の構成元素(例えば、InやSn等の金属元素)とも強い結合を形成し得るので、リン酸基を有するポリマー型界面活性剤を用いることにより、密着強度がより一層高められる。
【0038】
リン酸基を有するポリマー型アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリマー主鎖にリン酸を有するアルキル基を側鎖として有するもの、より具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸やポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸等が挙げられる。これらに含まれるアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、12〜20程度が好ましく、分子内に含まれるアルキル基の長さは単一でも異なっていてもよい。その代表例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエーテルリン酸等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0039】
カーボン触媒層23に含まれるポリマー型アニオン系界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、導電性炭素粒子の総量に対し0.5〜30wt%であることが好ましく、より好ましくは0.8〜20wt%である。ポリマー型アニオン系界面活性剤の含有量が多いほど機械強度及び耐久性に優れる傾向にあり、一方、ポリマー型アニオン系界面活性剤の含有量が少ないほど初期特性に優れる傾向にある。したがって、これらのバランスを考慮して、ポリマー型アニオン系界面活性剤の含有量を適宜設定すればよい。
【0040】
カーボン触媒層23の形成方法は、特に限定されず、公知の手法が適用可能である。例えば、導電性炭素粒子を含有する調合物(スラリーやゾル等)を基体22の導電性表面22a上に付与した後に焼結する方法や、かかる調合物を基体22の導電性表面22a上に付与した後に50〜150℃程度、好ましくは70〜150℃程度の低温処理を行う方法が挙げられる。これらの手法によると、導電性炭素粒子が凝集及び/又は結合した多孔質構造を有するカーボン触媒層23を簡易に得ることができる。これらの中でも、樹脂を含む基板が使用可能となるとともに印加エネルギー量を減らして環境負荷を低減できる観点から、後者の50〜150℃程度の低温処理を行う方法が好ましい。なお、調合物の基体22の導電性表面22aへの付与方法は、特に限定されず、従来公知の塗布法等が適用可能である。
【0041】
上記の導電性炭素粒子及びポリマー型アニオン系界面活性剤を含有する調合物は、分散媒を含む調合液(例えば、分散液、ゾル液又はスラリー液等)であることが好ましい。ここで用いる分散媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、エトキシエタノール、シクロヘキサノン等の各種の有機溶媒が挙げられる。なお、これらは、各々を単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、他の界面活性剤、キレート剤等の助剤を含むものであってもよい。
【0042】
電解質31としては、レドックス電解質溶液やこれをゲル化した半固体電解質或いはp型半導体固体ホール輸送材料を成膜したもの等、一般に電池や太陽電池等において使用されているものを適宜用いることができる。色素増感型太陽電池の代表的な電解質溶液としては、例えば、ヨウ素及びヨウ化物又は臭素及び臭化物を含む、アセトニトリル溶液、エチレンカーボネート溶液、又はプロピレンカーボネート溶液、及びそれらの混合溶液等が挙げられる。電解質の濃度や各種添加剤等は、要求性能に応じて適宜設定及び選択することができる。添加剤の具体例としては、例えば、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン及びそれらの誘導体等のp型導電性ポリマー;イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、トリアゾリウムイオン及びそれらの誘導体とハロゲンイオンとの組み合わせからなる溶融塩;ゲル化剤;オイルゲル化剤;分散剤;界面活性剤;安定化剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
1.作用電極の作製
まず、以下の手順で酸化チタンゾル液を調製した。
125mlのチタンイソプロポキシドを0.1M硝酸水溶液750mlに攪拌しながら添加し、さらにこれを80℃で8時間激しく攪拌した。得られた液体をテフロン(登録商標)製の圧力容器内で230℃、16時間オートクレーブ処理した。次いで、得られたゾル液を攪拌し、沈殿物を再懸濁させた。その後、吸引濾過により、再懸濁しなかった沈殿物を取り除き、エバポレーターで酸化チタン濃度が11wt%になるまでゾル液を濃縮した。得られたゾル液にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(商品名:フオスフアノールML−220、東邦化学工業製)を酸化チタン重量に対し5wt%添加し、その後、1時間攪拌した。
かくして得られたゾル液を酸化チタン濃度が2wt%となるようにメタノールで希釈することで、実施例1の酸化チタンゾル液を得た。
【0045】
次に、上記の実施例1の酸化チタンゾル液を用い、以下の手順で酸化チタン電極(金属酸化物層)を作製した。
まず、ポリカーボネートフィルム基板の表面に透明導電膜として厚さ約600nmのITOをスパッタ成膜することで、可撓性を有する導電性ポリカーボネートフィルム樹脂基板(サイズ:縦2.0cm、横1.5cm、厚さ0.1mm、シート抵抗:30Ω/□)を作製した。次に、得られた導電性ポリカーボネートフィルム樹脂基板の透明導電膜上に、縦0.5cm、横0.5cmの四角穴を設けた厚さ70μmのマスキングテープを貼り、その四角穴に向けて実施例1の酸化チタンゾル液をスプレー塗布することで、その四角穴の内側で露出する透明導電膜上に酸化チタンゾル液を付与した。その後、マスキングテープを剥がし、電気炉を用いて100℃で30分間加熱することで、金属酸化物及びリン酸系界面活性剤を含有する金属酸化物層(酸化チタン膜)を形成した。なお、加熱時の昇温速度は2℃/minとした。
次いで、得られた金属酸化物層中に含まれる硝酸成分を除去するため、金属酸化物層をアルカリ溶液で処理した。具体的には、アルカリ溶液として2wt%のアンモニア水/メタノール希釈溶液を用い、この溶液中に金属酸化物層を30分浸漬し、その後、金属酸化物層を取り出してメタノールで洗浄し、さらに80℃で10分間乾燥させた。
以上の操作により、基体の導電性表面上に金属酸化物及びリン酸系界面活性剤を含有する金属酸化物層(酸化チタン膜)を有する実施例1の酸化チタン電極を得た。この金属酸化物層の膜厚を測定したところ、約6μmであった。
【0046】
次に、以下の手順で作用電極を作製した。
増感色素として(4,4’−ジカルボン酸−2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)ジイソチアネートを3×10−4M濃度で添加した無水エタノール溶液20mlに、実施例1の酸化チタン電極を浸漬し、12時間放置した。放置後、電極を取り出して無水アセトニトリルで洗浄し自然乾燥させた。得られた電極は、金属酸化物層がルテニウム色素の担持(吸着)によって深紅色となっていることが確認された。
以上の操作により、金属酸化物の表面に増感色素が担持された金属酸化物層を基体の導電性表面上に有する、実施例1の作用電極(色素担持金属酸化物層)を得た。
【0047】
2.対向電極の作製
次に、以下の手順で対向電極(カーボン対向電極)を作製した。
導電性炭素粒子として、導電性カーボンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン株式会社製)を準備し、これをメタノールに5重量%となるよう添加した。次に、ポリマー型アニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(商品名:フオスフアノール ML-220、東邦化学工業製)を導電性炭素粒子の総量に対し1wt%添加し、1時間攪拌した。さらに、導電性炭素粒子濃度が2重量%となるようにメタノールで希釈し、スプレー塗布に好適な濃度とした、実施例1のスラリー液(調合物)を調製した。
【0048】
次いで、上記のように調製した実施例1のスラリー液を用いて、以下の要領で対向電極 (カーボン対向電極)を作製した。
まず、作用電極と同様に、ポリカーボネートフィルム基板の表面に透明導電膜として厚さ約600nmのITOをスパッタ成膜することで、可撓性を有する導電性ポリカーボネートフィルム樹脂基板(サイズ:縦2.0cm、横1.5cm、厚さ0.1mm、シート抵抗:30Ω/□)を作製した。この導電性ポリカーボネートフィルム樹脂基板の透明導電膜上に、縦0.5cm、横0.5cmの四角穴を設けた厚さ70μmのマスキングテープを貼り、その四角穴に向けて、実施例1のスラリー液をスプレー塗布した。塗布後、マスキングテープを剥がし、電気炉を用いて100℃で30分間加熱した。昇温速度は2℃/minとした。
以上の操作により、基体の導電性表面上に導電性炭素粒子及びポリマー型アニオン系界面活性剤を含有するカーボン触媒層を有する実施例1の対向電極を得た。
【0049】
また、分析用に上記と同様に実施例1の対向電極を作製し、そのカーボン触媒層を採取して熱重量分析(TGA)を行ったところ、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸が導電性カーボンブラックに対して0.8wt%含まれていることが確認された。この熱重量分析の測定条件は以下の通りである。セイコー電子社製のTG/DTA22装置を用い、試料2mgを採取して試料ホルダーにセットするとともに参照ホルダーに参照試料をセットし、試料周囲の雰囲気ガスとしてHeガスを流量300mL/分で装置内に流通開始した後、昇温速度10℃/分の昇温プログラムの下、室温から昇温を開始して、そのときの試料の質量変化を測定した(室温〜500℃)。
【0050】
3.色素増感型太陽電池の作製
そして、上記の作用電極及びカーボン対向電極を用い、以下の手順で色素増感型太陽電池を作製した。
まず、縦0.5cm、横0.5cmの四角穴を有する縦1.5cm、横1.5cm、厚さ70μmのスペーサーを、作用電極上に載置して密着させた。このとき、スペーサーの四角穴の部分と増感色素が担持された金属酸化物層(色素担持金属酸化物層)の部分とが一致するように、スペーサーを作用電極上に置いた。次いで、四角穴の開口から電解質(電解液)を注ぎ込み、四角穴内に電解質を充填した。ここで、電解液としては、テトラプロピルアンモニウムヨウジド(0.4M)とヨウ素(0.04M)を含むメトキシプロピオニトリル溶液を用いた。その後、四角穴の開口上に対向電極を載置した。このとき、四角穴の開口と対向電極のカーボン触媒層の部分とが一致するように対向電極を置いた。そして、周囲をエポキシ樹脂で封止することにより、実施例1の色素増感型太陽電池を作製した。
【0051】
4.評価
得られた実施例1の色素増感型太陽電池の電池特性を、AM−1.5(1000W/m)のソーラーシミュレーターを用いて測定した。
電池特性は、開放電圧(Voc)、光電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)の4項目を測定した。なお、開放電圧(Voc)は、太陽電池セル・モジュールの出力端子を開放したときの両端子間の電圧を表す。光電流密度(Jsc)は、太陽電池セル・モジュールの出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる電流(1cm当たり)を表す。また、形状因子(FF)は、最大出力Pmaxを開放電圧(Voc)と光電流密度(Jsc)の積で除した値(FF=Pmax/Voc・Jsc)であり、太陽電池としての電流電圧特性曲線の特性を表すパラメータである。さらに、光電変換効率(η)は、光電変換素子の電圧をソースメータにて掃引して応答電流を測定することで得られる、電圧と電流との積である最大出力を1cmあたりの光強度で除した値に100を乗じてパーセント表示したものであり、(最大出力/1cmあたりの光強度)×100で表される。これらの結果を表1に示す。
【0052】
また、得られた実施例1の色素増感型太陽電池の耐久性(長期信頼性)を評価するために、60℃95%RHで100hr放置した後の光電変換効率、及び、60℃〜−20℃の温度サイクル試験(1サイクル6時間×10回)を実施した後の光電変換効率を各々測定し、先に測定した(初期の)光電変換効率からの変動率(%)を各々算出した。これらの結果を、表1に併せて示す。
【0053】
さらに、カーボン触媒層の膜強度を評価するために、メタノールを入れた洗瓶を用意し、作用電極のカーボン触媒層の表面から20cmほど離した位置からカーボン触媒層の表面へメタノールを掛け流し、その際のカーボン触媒層の剥離状態を観察した。評価基準は以下の通りとした。
○:剥離無し
△:一部剥離
×:完全剥離
【0054】
(実施例2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を導電性炭素粒子の総量に対し5wt%添加すること以外は、実施例1と同様に行い、実施例2のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例2のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例2の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例2の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例3)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を導電性炭素粒子の総量に対し10wt%添加すること以外は、実施例1と同様に行い、実施例3のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例3のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例3の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例3の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例4)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を導電性炭素粒子の総量に対し20wt%添加すること以外は、実施例1と同様に行い、実施例4のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例4のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例4の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例4の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例5)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を導電性炭素粒子の総量に対し30wt%添加すること以外は、実施例1と同様に行い、実施例5のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例5のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例5の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例5の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例6)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(商品名:ポイズ 520、ライオン株式会社製、カルボキシル基もしくはその塩を有するポリマー型高分子活性剤)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、実施例6のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例6のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例6の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例6の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例7)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(商品名:エマール20C、ライオン株式会社製)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、実施例7のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例7のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例7の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例7の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例8)
導電性カーボンブラックをグラファイト(商品名:燐片状黒鉛 Z−5F、伊藤黒鉛工業株式会社製)に変更すること以外は、実施例3と同様に行い、実施例8のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例8のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例8の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例8の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例9)
導電性カーボンブラックをフラーレン(商品名:ナノムミックスST、フロンティアカーボン株式会社製)に変更すること以外は、実施例3と同様に行い、実施例9のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた実施例9のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、実施例9の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
実施例9の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸を添加しないこと以外は、実施例1と同様に行い、比較例1のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例1のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例1の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例1の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を、表1に示す。
【0063】
(比較例2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をポリエチレングリコール(分子量4000、和光純薬製)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、比較例2のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例2のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例2の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例2の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例3)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をポリエチレングリコール(分子量4000、和光純薬製)に変更すること以外は、実施例5と同様に行い、比較例3のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例3のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例3の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例3の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を、表1に示す。
【0065】
(比較例4)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:サニゾール B−50、ライオン株式会社製)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、比較例4のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例4のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例4の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例4の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を、表1に示す。
【0066】
(比較例5)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をステアリルアミンアセテート(商品名:アセタミン86、ライオン株式会社製)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、比較例5のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例5のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例5の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例5の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を、表1に示す。
【0067】
(比較例6)
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸をポリオキシエチレンアルキルアミン(商品名:アミート102、ライオン株式会社製)に変更すること以外は、実施例2と同様に行い、比較例6のスラリー液(調合物)を調製した。
得られた比較例6のスラリー液を用いること以外は、実施例1と同様に行い、比較例6の対向電極、作用電極並びに色素増感型太陽電池を作製した。
比較例6の色素増感型太陽電池につき、実施例1と同様に各種測定を行った。結果を、表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例1〜7及び比較例1に示す通り、ポリマー型アニオン系界面活性剤をカーボン触媒層中に含有させることで、色素増感型太陽電池の耐久性(長期信頼性)が格別に向上することが確認された。また、ポリマー型アニオン系界面活性剤の含有量を調整することで、従来では為し得なかった、優れた電池特性及び優れた耐久性(長期信頼性)を両立することが可能であることが確認された。
【0070】
一方、実施例1〜7と比較例2〜6との対比から、従来の有機バインダー成分、非ポリマー型の界面活性剤、アニオン系以外の界面活性剤を用いた場合には、色素増感型太陽電池の耐久性(長期信頼性)の向上効果が不十分であるばかりか、そもそも良好な電池特性が発揮されていないことが確認された。
【0071】
また、実施例2と実施例6及び7との対比より、リン酸基を有するポリマー型界面活性剤は、他のポリマー型アニオン系界面活性剤とは異なり、電池性能及び色素増感型太陽電池の耐久性(長期信頼性)をより効果的に高めることができる特異な添加物であることが確認された。
【0072】
さらに、実施例1〜7と実施例8及び9との対比より、上述の効果は導電性炭素粒子の種別を問わず、発揮されることが確認された。
【0073】
なお、上述したとおり、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明した通り、電池特性を過度に損なうことなく耐久性を向上させ得る対向電極を実現でき、しかも、生産性、経済性及び汎用性に優れるので、本発明は、電子・電気材料、電子・電気デバイス、及びそれらを備える各種機器、設備、システム等に広く且つ有効に利用可能であり、特に、光電変換素子及び色素増感型太陽電池の分野において有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
11…作用電極、12…基体、12a…導電性表面、13…金属酸化物層、14…金属酸化物電極、21…対向電極、22…基体、22a…導電性表面、23…カーボン触媒層、31…電解質、41…スペーサー、100…色素増感型太陽電池。
図1