特許第5786287号(P5786287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786287
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】連結材及びパーティションシステム
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   E04B2/74 541P
   E04B2/74 501S
   E04B2/74 541Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-148054(P2010-148054)
(22)【出願日】2010年6月29日
(65)【公開番号】特開2012-12789(P2012-12789A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2013年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 肇
(72)【発明者】
【氏名】吉泉 聡
(72)【発明者】
【氏名】勝又 良宏
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3001343(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3077975(JP,U)
【文献】 特開平10−317554(JP,A)
【文献】 特開2006−188885(JP,A)
【文献】 特開2007−303224(JP,A)
【文献】 特開2006−316499(JP,A)
【文献】 特開平06−175666(JP,A)
【文献】 実開平04−130618(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を仕切るための複数のパーティションを連結する連結材であって、
可視光を前記複数のパーティションにより仕切られる空間の一方から他方へと透過する透過部材と、
前記パーティションが有する第1接続部材に接続される第2接続部材とを備え、
前記連結材が備える前記第2接続部材は、他の連結材が備える第2接続部材に接続されない
ことを特徴とする連結材。
【請求項2】
剛性を有し、前記透過部材を支持する支持部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の連結材。
【請求項3】
前記支持部材の少なくとも1つは、前記透過部材を支持する側からパーティションと接続する側に向けて幅が広くなる部材であることを特徴とする請求項に記載の連結材。
【請求項4】
前記透過部材は、特定の波長の透過率を変化させることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の連結材。
【請求項5】
前記透過部材は、表面の形状が凹凸を有しまたは曲面であることを特徴とする請求項1からまでのいずれか1項に記載の連結材。
【請求項6】
前記パーティションよりも小さいことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の連結材。
【請求項7】
第1のパーティションと第2のパーティションとに対してそれぞれ所定の角度をなすように接続されることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の連結材。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の連結材と、
空間を仕切るための複数のパーティションであって、前記連結材によって連結される複数のパーティションとを備える
ことを特徴とするパーティションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結材及びパーティションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のパーティションを連結する連結材にパーティションの連結以外の機能を持たせる技術が知られている。特許文献1には、仕切面材の端部に沿う支持体の外面形状を工夫することにより、目地を表出させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−232778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ホワイトボードに書き込まれた文字やプロジェクタで映し出された画像など視覚情報が漏洩することを防ぐため、不透明素材からなるパーティションにより外部からの視界を遮る場合がある。この場合に、パーティションの内部にいる者は、外部への視界が遮られているため圧迫感を感じることがある。また、隙間をあけると声などの聴覚情報が漏洩する。
そこで、本発明は、情報の漏洩を防ぐためのパーティションにより仕切られた空間の一部から、他方の空間が見えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る連結材は、空間を仕切るための複数のパーティションを連結する連結材であって、可視光を前記複数のパーティションにより仕切られる空間の一方から他方へと透過する透過部材と、前記パーティションが有する第1接続部材に接続される第2接続部材とを備え、前記連結材が備える前記第2接続部材は、他の連結材が備える第2接続部材に接続されない構成を有する。
【0006】
また、本発明に係る連結材は、剛性を有し、前記透過部材を支持する支持部材を備えてもよい。
また、本発明に係る連結材は、前記支持部材の少なくとも1つは、前記透過部材を支持する側からパーティションと接続する側に向けて幅が広くなる部材であってもよい。
また、本発明に係る連結材の前記透過部材は、特定の波長の透過率を変化させるものであってもよい。
【0007】
また、本発明に係る連結材の前記透過部材は、表面の形状が凹凸を有しまたは曲面であってもよい。
また、本発明に係る連結材の前記連結材は前記パーティションよりも小さくてもよい。
【0008】
た、本発明に係る連結材は、第1のパーティションと第2のパーティションとに対してそれぞれ所定の角度をなすように接続されるものであってもよい。
【0009】
また、本発明に係るパーティションシステムは、上記の連結材と、空間を仕切るための複数のパーティションであって、前記連結材によって連結される複数のパーティションとを備える構成を有する
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、情報の漏洩を防ぐためパーティションにより仕切られた空間から、他方の空間が見えるようにすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るパーティションシステムの外観を示す斜視図
図2】パーティションシステムの平面図
図3】連結材を示す図
図4】連結材を含む断面図
図5】連結材を含む断面図
図6】パーティションを示す図
図7】接続部材を説明するための図
図8】パーティションを示す図
図9】スピーカ及び放音制御装置の構成を示すブロック図
図10】パーティションシステムが会話の内容の漏洩を防ぐための仕組みを説明する図
図11】連結材を通して見える内部空間の領域を説明する図
図12】連結材を通して見える内部空間の領域を説明する図
図13】変形例に係るパーティションシステムの平面図
図14】連結材を含む断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るパーティションシステム10の外観を示す斜視図である。パーティションシステム10は、複数のパーティション20と、複数の連結材30とを備える。パーティション20は、空間を仕切るための器具であり、板状の部材を有する。連結材30a、30b(以下、区別しない場合は「連結材30」という。)は、複数のパーティション20を連結する器具である。パーティションシステム10は、オフィス等の床の上に設置されて、床と天井の間の空間を仕切る。本実施形態においては、パーティションシステム10が設置される床は平らとする。また、消防法の関係で、パーティション20の上端は天井には届いていない。
【0013】
パーティションシステム10においては、連結材30により連結された複数のパーティション20が並んだ状態で設置されている。パーティション20及び連結材30は、床面に垂直で天井側に向かう方向D1に沿ってそれぞれ床面上に立てられている。本実施形態においては、パーティションシステム10は、複数のパーティション20と複数の連結材30とにより囲まれた内部の空間(以下「内部空間S1」という。)と、内部空間S1からパーティション20及び連結材30を挟んだ反対側の外部の空間(以下「外部空間S2」という。)とに空間を仕切っている。内部空間S1は、利用者が打ち合わせなどを行う空間であり、出入り口G1を介して外部空間S2とつながっている。出入り口G1は、パーティション20及び連結材30を設置せずに利用者が通れるようにした空間である。
【0014】
図2は、パーティションシステム10を天井側から床側に向かって示す平面図である。パーティションシステム10は、パーティション20と、連結材30a、30bとを備えている。本実施形態においては、各パーティション20は、全体として長方形を形成している。説明の便宜上、この長方形の辺の部分を辺部、角の部分を角部という。連結材30aは、辺部に設けられ、連結材30bは、角部に設けられている。連結材30aは、2つのパーティション20が直線状となるように互いを連結している。
【0015】
図3は、連結材30aを示す図である。図3(a)は、連結材30aを内部空間S1側から見た図である。本実施形態においては、連結材30aは、方向D1を高さとし、矢印A1の方向を幅とする。連結材30aは、高さがH1であり、幅がW1である。連結材30aは、透過部材310と支持部材320aとを備える。透過部材310は、例えば透明なガラスや透明なプラスチックなどの、可視光を透過する部材である。透過部材310は、本実施形態においては、平らで滑らかな表面を有する板状のガラスである。透過部材310は、パーティションシステム10が設置された場合に、内部空間S1と外部空間S2との間に位置し、これらの複数のパーティション20により仕切られる空間の一方から他方へと光を透過する。
【0016】
支持部材320aは、透過部材310を支持する部材である。支持部材320aは、第1支持部3210a、第2支持部3220a及び第3支持部3230aを有する。第1支持部3210a、第2支持部3220a及び第3支持部3230aは、例えば鉄やアルミニウムなどを含んで成形され、透過部材310を支持することが可能な剛性を有する。第1支持部3210aは、透過部材310の幅方向(矢印A1の方向)の端部を挟んでいる。第2支持部3220aは、透過部材310の天井側の端部を挟んでいる。第3支持部3230aは、透過部材310の床側の端部を挟んでいる。図3(b)は、図3(a)において幅方向に連結材30aを見た図である。連結材30aは、第1支持部3210aのそれぞれにひとつずつ取り付けられた接続部材330を有する。接続部材330は、各々が複数のパーティション20のいずれかに接続する部材である。
【0017】
図4は、連結材30aを含む断面図である。図4(a)は、図3の切断線I−Iによる切断面を示している。図4(a)においては、説明の便宜上、連結材30aが接続した場合のパーティション20の断面を示している。第1支持部3210aは、透過部材310を支持する側からパーティション20と接続する側に向けて幅が広くなる中空の部材である。第1支持部3210aは、透過部材310側の幅が狭いため、この幅が広い場合に比べて透過部材310を斜めから見た場合に視界を遮りにくく、透過部材310を多く見えるようにすることができる。また、第1支持部3210aは、透過部材310側に凹みを有し、この凹みにより透過部材310の端部を充填材3211aを介して挟んでいる。充填材3211aは、ゴムや樹脂などの変形する柔らかい部材で、第1支持部3210aと透過部材310との間を充填して透過部材310の破損やがたつきを抑制する。
【0018】
図4(b)は、図3の切断線II−IIによる切断面を示している。第2支持部3220a及び第3支持部3230aは、透過部材310を支持する側に透過部材310を挟むための凹みを有する長方形の形状をした中空の部材である。第2支持部3220a及び第3支持部3230aは、この凹みにより透過部材310の端部をそれぞれ充填材3221aを介して挟んでいる。第3支持部3230aは、連結材30を床に固定する金具(例えばL字金具)を取り付けるためのねじ穴を有している。なお、第3支持部3230aは、他の方法で床に固定されてもよいし、ゴムなどを床側の端部に貼り付けて動きにくくさせてもよい。
【0019】
図5は、連結材30bを天井側から床側に向かって示す透過部材310を含む断面図である。図5では、説明の便宜上、連結材30bが接続した場合のパーティション20の断面を示している。本実施形態においては、連結材30bは、方向D1を高さとし、矢印A2の方向を幅とする。連結材30bの幅はW2である。連結材30bは、透過部材310と支持部材320bとを有し、支持部材320bは、第1支持部3210bを有する。2つの第1支持部3210bは、透過部材310の端部をそれぞれ充填材3211bを介して挟んで支持すると共に、それぞれがパーティション20と接続している。連結材30bは、2つのパーティション20に対してそれぞれ所定の角度θ1、θ2をなすように互いを連結する。本実施形態においては、角度θ1、θ2は、それぞれ135度である。
【0020】
図6は、内部空間S1側から見たパーティション20を示した図である。本実施形態においては、パーティション20は、方向D1を高さとし、矢印A3の方向を幅とする。パーティション20は、高さがH3であり、幅がW3である。パーティション20は、下部部材210、上部部材220及び接続部材230を有する。下部部材210は、例えば、鉄やアルミニウムを含んで成形された所定厚さの平板の形状をした部材である。本実施形態においては、下部部材210は、平らで滑らかな表面を有し、中空の内部に吸音性を有するグラスウールを充填している。下部部材210は、下部部材210に到達する音声を、平板の表面により反射するとともに、内部のグラスウールにより吸収する。下部部材210は、床側の端部に、パーティション20を床に固定する金具(例えばL字金具)を取り付けるための図示せぬねじ穴を有している。なお、下部部材210は、他の方法で床に固定されてもよいし、ゴムなどを床側の端部に貼り付けて動きにくくさせてもよい。上部部材220は、下部部材210の天井側に取り付けられている部材である。接続部材230は、下部部材210の横側に設けられており、パーティション20と連結材30とを接続させる部材である。
【0021】
図7は、接続部材230、330を説明するための図である。図7(a)は、接続部材230、330を内部空間S1側から外部空間S2に向かって示す断面図である。図7(a)においては、パーティション20と連結材30とが接続された状態が示されている。接続部材230は、フック部2310とストッパ2320とを有する。フック部2310は、回転軸C1を中心に回転可能に支持されている鉤形の金具である。ストッパ2320は、フック部2310の回転可能な範囲を制限する金具である。本実施形態においては、ストッパ2320は、回転軸C1よりも床側に設けられている。フック部2310は、図7(a)において二点鎖線で示された位置よりも左回りに回転しないようにストッパ2320により回転を制限される。
【0022】
接続部材330は、通過部3310と引掛部3320とを有する。図7(b)は、図7(a)において矢印A4の方向に見た接続部材330を示す図である。通過部3310は、接続部材330に開いている2つの穴であり、フック部2310を通過させるための穴である。引掛部3320は、通過部3310を通過したフック部2310が引っ掛かる部分である。
【0023】
フック部2310は、接続部材230と接続部材330とが密着した状態で回転することで、接続部材330と着脱可能に係り合う。パーティション20は、フック部2310を接続部材330の引掛部3320に引っ掛けて互いに外れないように係り合わせることで、連結材30と接続する。このように、パーティション20と連結材30とは、フック部2310と引掛部3320との局所的な係り合いにより接続されている。このため、例えば、パーティション20又は連結材30で振動が生じた場合であっても、フック部2310と引掛部3320とが係り合っている部分からしかその振動が伝わらないため、他方に伝わる振動が小さくなる。
【0024】
図8は、図6において矢印A3の方向に見たパーティション20を示す図である。本実施例は、特に、聴覚情報の漏洩を防止するパーティションを用いている。図8では、上部部材220が部分断面図で示されている。また、図8においては、説明の便宜上、パーティション20の右側が内部空間S1、左側が外部空間S2であるとする。上部部材220は、パーティション20を接続部材230が取り付けられている側から見たときに、下部から上部にかけて幅が広がる曲面を有する側板と、この側板の上部を塞ぐ蓋とを備える中空の部材である。上部部材220は、中空の内部から外部まで貫通する穴を複数有する。上部部材220は、この穴により、中空の内部と外部との間で音を伝達しやすくしている。また、上部部材220は、音を吸収する吸音部2210を有する。吸音部2210は、グラスウール等の吸音材を有し、上部部材220の中空の内部の内部空間S1側に取り付けられている。上部部材220は、このように構成されることで、内部空間S1側から上部部材220に到達する音を吸音部2210により吸収させて外部空間S2に伝達しにくくする一方、上部部材220の内部で発生する音を内部空間S1には伝達しにくくしつつ外部空間S2には伝達しやすくしている。
【0025】
上部部材220の中空の内部には、スピーカ410が設置されている。スピーカ410は、後述する放音制御装置420と接続して、放音制御装置420から出力される信号に基づき、内部空間S1で生じる音をマスクするためのマスキング音を放音する。ここにおいて、マスキング音とは、ある音と同時に聞こえた場合にその音を聞こえなくし、又は聞こえにくくする音をいう。マスキング音は、同時に異なる二つの音が耳に届いた場合に,一方の音が他方の音と区別しにくくなり、又は他方の音によりかき消されるマスキング効果を利用したものである。このマスキング効果は、二つの音の周波数が近いほど効果が大きくなる。例えば、マスクする対象の音声に基づいて生成したその音声の周波数に近いマスキング音であれば、その音声と同じ程度の音量でマスキング効果を得ることが可能である。本実施形態においては、スピーカ410は、内部空間S1において発せられた音声を収音して生成されたマスキング音を放音する。スピーカ410は、本発明に係る「放音部」の一例に相当する。
【0026】
図9は、スピーカ410及び放音制御装置420の構成を示すブロック図である。放音制御装置420は、制御部4210、操作部4220、変換部4230、音生成部4240及び信号処理部4250を備える。制御部4210は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んで構成されており、制御部4210に接続されている各部を制御する。操作部4220は、放音制御装置420の電源やスピーカ410に放音させるマスキング音のボリュームを操作する操作子を有する。操作部4220は、操作子が操作されると、操作の内容を示す操作信号を制御部4210へ供給する。変換部4230は、音声を音声信号に変換するマイクロフォン等の収音手段を有し、収音手段に到達する音声を音声信号に変換する。本実施形態においては、収音手段は、吸音部2210の隙間に設置されて上部部材220の有する穴から内部空間S1で発生する音声を収音する。変換部4230は、変換した音声信号を制御部4210に供給する。
【0027】
音生成部4240は、予め定められた方法でマスキング音を生成し、生成した音信号を制御部4210に供給する。本実施形態においては、音生成部4240は、変換部4230が変換した音声信号に基づき、その音声信号に対応する音声をマスクするマスキング音を生成する。マスキング音を生成する技術には公知の技術を適宜用いればよいから、この技術についての詳細な処理の説明は省略する。信号処理部4250は、制御部4210から供給されたマスキング音を示す音信号に所定の処理を施し、そのマスキング音の音信号とマスキング音のボリューム値を示す信号とを各スピーカ410に出力する。スピーカ410は、アンプを含んで構成されており、放音制御装置420から出力された音信号に対してボリューム値に応じて増幅させる処理を施して放音する。
【0028】
図10は、パーティションシステム10が会話の内容の漏洩を防ぐための仕組みを説明する図である。パーティションシステム10は、オフィス等に設置されると、パーティション20と天井との間に隙間ができる場合がある。この場合に、内部空間S1にいる利用者が会話をすると、発せられた音声がこの隙間を通って外部空間S2に伝達して会話の内容が漏洩するおそれがある。そこで、パーティションシステム10においては、内部空間S1から音声が発せられると、放音制御装置420が収音手段に到達した音声V1からマスキング音M1を生成し、生成したマスキング音M1をスピーカ410が外部空間S2に向けて放音する。本実施形態では、スピーカ410は、マスキング音M1を外部空間S2側の天井に向けた斜め上の方向と外部空間S2側に向けた斜め下の方向とに向けて放音する。スピーカ410から放音されたマスキング音M1は、天井で反射した音声V1とともに外部空間S2に伝達される。このとき、外部空間S2にいる第三者は、音声V1がマスキング音M1によってマスクされるため、会話の内容を理解することが困難になる。また、下部部材210に向かった音声V1は、下部部材210により反射、吸収又は減衰するため、外部空間S2にいる者が会話の内容を理解することは困難である。以上のとおり、パーティションシステム10は、内部空間S1で行われる会話の内容が漏洩する危険を軽減させることができる。
【0029】
パーティションシステム10からマスキング音が放音されている場合、外部空間S2にいる者は、内部空間S1に利用者がいるか否かが音からは確認できないときがある。このようなときに、パーティションシステム10は、外部空間S2から連結材30を通して内部空間S1に利用者がいるか否かを確認することができる。この確認をする際、連結材30の形状及び位置によって内部空間S1の見える領域が異なる。
【0030】
図11は、連結材30を通して見える内部空間S1の領域を説明する図である。図11では、天井側から床側に向かって見た場合の、パーティションシステム10が示されている。図11では、各視点と連結材30a、30bとの距離が同じ場合に、連結材30aを通して見える内部空間S1の領域が二点鎖線で囲まれた領域F1で、連結材30bを通して見える内部空間S1の領域が一点鎖線で囲まれた領域F2で示されている。図11に示すように、連結材30bでは内部空間S1を斜めに見ることになる分、視点から最も離れたパーティション20までの距離が長くなる。このため、領域F2は領域F1よりも大きくなる。すなわち、連結材30bを通して見た方が、連結材30aを通して見る場合に比べて、内部空間S1に人がいるか否かを確認しやすくなる。
【0031】
図12は、連結材30を通して見える内部空間S1の領域を説明する図である。連結材30aを通して内部空間S1を見る場合、連結材30a及びパーティション20の幅に妨げられて内部空間S1のうち見ることができない領域が生じる。例えば、図12に示す領域F3は、見る位置を変えても連結材30aを通しては見ることができない。一方、連結材30bを通して内部空間S1を見る場合は、矢印A5、A6に示すように、見る位置を変えれば内部空間S1の全ての領域を見ることができる。このように、外部空間S2から確認することができる内部空間S1の領域の広さも、連結材30bを通して見たときの方が広くなる。
【0032】
以上のとおり、パーティションシステム10は、光を透過する連結材30によりパーティション20を連結することで、情報の漏洩を防ぐためパーティションにより仕切られた空間から、他方の空間が見えるようにすることができる。また、これにより、パーティションシステム10は、パーティション20に囲まれた内部空間S1にいる者が感じる圧迫感を軽減させることができる。
【0033】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の実施の一例にすぎない。本発明は、上述した実施形態に対して以下の変形を適用した態様で実施することも可能である。なお、以下に示す変形例は、必要に応じて、各々を適当に組み合わせて実施されてもよいものである。
(変形例1)
連結材は、上述の実施形態ではガラスを透過部材として用いたが、可視光を透過するものであれば様々な透過率を有する部材を透過部材として用いてもよい。例えば、透過部材は、プラスチックや天然樹脂などであってもよいし、着色された部材であってもよい。また、透過部材は、表面にセロファン等を貼って特定の波長の透過率が変化するようにしてもよい。連結材は、透過部材の透過率や色を異ならせることによって、透過部材を通して文字などの情報を漏れにくくする度合いと、内部空間S1にいる者の圧迫感を軽減させる度合いとを変化させることができる。
【0034】
(変形例2)
連結材は、上述の実施形態では表面が滑らかで平らなガラスを透過部材として用いたが、可視光を透過するものであれば様々な形状の透過部材を用いてもよい。例えば、連結材は、表面に滑らかでない凹凸を有する部材(すりガラスなど)やレンズのような曲面を有する部材(凹面ガラスなど)を透過部材として用いてもよい。前者の場合、連結材は、表面が滑らかな透過部材を用いる場合に比べて、透過部材の向こうの物がぼやけて見えるため、透過部材を通して文字などの情報がより漏れにくくなる。後者の場合で特に透過部材が凹レンズのような曲面を有するときは、連結材は、凹面が光を屈折させることで、透過部材が平らな場合に比べて、外部空間S2から見える内部空間S1の領域を広くすることができる。
【0035】
(変形例3)
上述の実施形態では、パーティション20の接続部材230がフック部2310を有したが、連結材の接続部材がフック部を有してもよい。この場合は、パーティションの接続部材が、引掛部3320に相当する部材を有して構成される。また、接続部材は、パーティションと連結材とを接続するものであれば、鉤形とは異なる形状の部材を用いてもよい。例えば、ネジ止め用の穴を有する板状の部材をネジによってパーティションと連結材とに固定することで、パーティションと連結材とを接続してもよい。
【0036】
(変形例4)
パーティションは、上述の実施形態では平らな板面を有する板状の部材を有したが、これには限らず、曲面や凸凹面など平らでない面を有する板状の部材を有してもよい。
【0037】
(変形例5)
パーティションシステムは、上述の実施形態ではパーティション20及び連結材30を設けない空間を出入り口G1としたが、利用者が出入りできるものであれば、様々な出入り口の形態をとってもよい。例えば、パーティションシステムは、パーティション間に扉を設けてもよいし、パーティション間の隙間の先にさらにパーティション及び連結材を連結させて通路を作ってその通路を含めて出入り口としてもよい。これらのような出入り口を設けることにより、パーティションシステムは、パーティション及び連結材を設けない空間を出入り口とする場合に比べて、出入り口を通って外部空間S2に伝達する音声によって内部空間S1で行われる会話の内容が漏洩する可能性を減らすことができる。
【0038】
(変形例6)
上述の実施形態においては、パーティションシステムは、一つの内部空間を囲むように設置されたが、内部空間の内部をさらに仕切ってもよい。この場合、パーティションシステムは、3つ以上のパーティションを接続する連結材を備えてもよい。
【0039】
図13は、本変形例に係るパーティションシステム10aの平面図である。パーティションシステム10aは、パーティション20及び連結材30によって周囲が囲まれる2つの内部空間S1a、S1bと、内部空間S1a、S1bの外側にある外部空間S2aとに空間を仕切っている。図13の例の場合、外部空間S2aは、利用者が内部空間S1a(S1b)に出入りするための出入り口G1a(G1b)を含んでいる。また、連結材30cは、3つのパーティション20とそれぞれ接続している。
【0040】
図14は、連結材30cを含む断面図である。図14では、連結材30cにおける図4(a)に示された切断面に相当する切断面が示されている。連結材30cは、透過部材310と支持部材320cとを有する。支持部材320cは、充填材3211c、第1支持部3212c及び第1支持部3213cを有する。第1支持部3212cは、透過部材310とパーティション20とを直線状に接続しており、図4(a)に示した第1支持部3210aと同じ形状をしている。第1支持部3213cは、透過部材310と直交する方向に2つのパーティション20を接続している。充填材3211cは、透過部材310と第1支持部3212c、3213cのそれぞれとの間に挟まれている。このように、連結材30cは、3つのパーティション20をT字型に連結する。
【0041】
(変形例7)
パーティションシステムは、上述の実施形態では内部空間S1が概ね長方形の形状となるように空間を仕切ったが、長方形以外の形状となるように空間を仕切ってもよい。例えば、パーティションシステムは、多角形や凹みのある形状となるように空間を仕切ってもよい。これらの場合、連結材は、接続するパーティションの数及びそれぞれの位置に合わせた形状の支持部材を有する。
【0042】
(変形例8)
連結材は、パーティションよりも幅又は高さが小さいものであれば、どのような大きさのものであってもよい。このように連結材の大きさを定めることにより、パーティションに比べて幅又は高さが大きいものである場合に比べて、連結材(特に透過部材)に要する部材の量を減らすことができる。なお、透過部材を通して文字などの情報が漏洩する危険を軽減し、かつ内部空間S1にいる者の圧迫感を軽減させるためには、例えば、透過部材は、幅を50〜200mm程度にするのが適当である。
【0043】
(変形例9)
パーティションシステムは、上述した実施形態においては、マスクする対象の音声に基づいて生成されたマスキング音を用いたが、それ以外のマスキング音を用いてもよい。例えば、パーティションシステムは、空調音や周囲の喧騒といった日常に存在する雑音などを録音又は合成した音をマスキング音として用いてもよい。
【0044】
(変形例10)
パーティションシステムは、上述した実施形態においては、パーティションシステム10の内側にある長方形状の領域の辺及び角に相当する位置にそれぞれ設置される連結材を備えたが、いずれか一方のみを備えてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10,10a…パーティションシステム、20…パーティション、30,30a,30b,30c…連結材、210…下部部材、220…上部部材、2210…吸音部、230,330…接続部材、2310…フック部、2320…ストッパ、310…透過部材、320a,320b,320c…支持部材、3210a,3210b,3212c,3213c…第1支持部、3211a,3211b,3211c,3221a,3231a…充填材、3220a,3230a…第2支持部、3310…通過部、3320…引掛部、410…スピーカ、420…放音制御装置、4210…制御部、4220…操作部、4230…変換部、4240…音生成部、4250…信号処理部
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