【実施例】
【0023】
(実験例1乃至64)
寒天(カリコリカン:伊那食品工業社製)20gを水1000gに加え10分間沸騰溶解させた。この溶液の凝固温度は38℃であった。表1乃至3に示すように、この溶液を80℃乃至45℃の範囲内で調整し、各100mLを40℃乃至5℃の範囲内の水1000mLの中に、直径2.5mmの円形ノズル(注射筒)から注入した。水は、循環ポンプを使用して温度が常に一定になるように調整した。また、別に各温度における寒天溶液の粘度を測定し、表4に示した。粘度測定は、B型粘度計(ビスメトロン:芝浦システム社製)を使用して測定した。回転数は6回転とし、ローターは、0〜1000mPa・sにおいて1号ローター、1001〜5000mPa・sにおいて2号ローター、5001〜20000mPa・sにおいて3号ローター、20001〜100000mPa・sにおいて4号ローターを適宜使用した。注入後の寒天溶液の状態は、表5に示す評価表に基づいて評価を行なった。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
以上から、ハイドロコロイドゲル溶液として寒天溶液を用いた場合、良溶媒に接触した時の接触面の粘度が205Pa・sにおいては、ハイドロコロイドゲル溶液が、水に混ざることなく、麺状のゲルを形成することができたが、189Pa・sにおいては、ハイドロコロイドゲル溶液が、水に混ざり不定形なゲルしかできなかったことが分かる。
【0030】
(実験例65乃至88)
κタイプのカラギーナン(イナゲルE−150:伊那食品工業社製)15g、ローカストビーンガム(イナゲルL−85:伊那食品工業株式会製)10g、塩化カリウム(赤穂化成社製)2gを水1000gに加え1分間沸騰溶解させた。この溶液の凝固温度は40℃であった。表6に示すように、この溶液を55℃乃至45℃の範囲内で調整し、各100mLをそれぞれ40℃乃至5℃の範囲内の水1000mLの中に、直径2.5mmの円形ノズル(注射筒)から注入した。水は、循環ポンプを使用して温度が常に一定になるように調整した。また、別に各温度におけるカラギーナン溶液の粘度を測定し、表7に示した。粘度測定は、B型粘度計(ビスメトロン:芝浦システム社製)を使用して測定した。回転数は6回転とし、ローターは、実験例1乃至64と同様に適正範囲のものを適宜使用した。注入後のカラギーナン溶液の状態は、表5に示す評価表に基づいて評価を行なった。
【0031】
【表6】
【0032】
【表7】
【0033】
以上から、ハイドロコロイドゲル溶液として、カラギーナン溶液を用い、良溶媒に接触した時の接触面の粘度が210Pa・sであり、かつ水の温度が35℃の場合においては、ハイドロコロイドゲル溶液が、水に混ざることなく、麺状のゲルを形成することができたが、粘度が195Pa・s、又は水の温度が40℃の場合においては、ハイドロコロイドゲル溶液が、水に混ざり不定形なゲルしかできなかったことが分かる。
【0034】
(実験例89乃至115)
ジェランガム(ケルコゲル:CPケルコ社製)8g、ローカストビーンガム(イナゲルL−85:伊那食品工業社製)3g、キサンタンガム(ケルトロール:CPケルコ社製)3gを水800gに加え1分間沸騰溶解させた。この溶液に砂糖200g、乳酸カルシウム(昭和化工社製)1gを水10gに加熱溶解したものを加え、撹拌混合した。この溶液の凝固温度は46℃であった。表8に示すように、この溶液を55℃乃至45℃の範囲内で調整し、各100gをそれぞれ45℃乃至5℃の範囲内の水800gの中に砂糖200gを溶解した溶液中に、直径2.5mmの円形ノズル(注射筒)から注入した。水は、循環ポンプを使用して温度が常に一定になるように調整した。また、別に各温度におけるジェランガム溶液の粘度を測定し、表9に示した。粘度測定は、B型粘度計(ビスメトロン:芝浦システム社製)を使用して測定した。回転数は6回転とし、ローターは、実験例1乃至64と同様に適正範囲のものを適宜使用した。注入後の溶液の状態は、表5に示す評価表に基づいて評価を行なった。
【0035】
【表8】
【0036】
【表9】
【0037】
以上から、ハイドロコロイドゲル溶液として、ジェランガム溶液を用い、良溶媒に接触した時の接触面の粘度が210Pa・sであり、かつ水の温度が40℃の場合においては、ハイドロコロイドゲル溶液が、水に混ざることなく、麺状のゲルを形成することができたが、粘度が191Pa・s、又は水の温度が45℃の場合においては、ハイドロコロイドゲル溶液が、水に混ざり不定形なゲルしかできなかったことが分かる。
【0038】
(実験例116乃至130)
ネイティブジェランガム(ケルコゲルLT−100:CPケルコ社製)10gを水1000gに加え1分間沸騰溶解させた。この溶液の凝固温度は63℃であった。表10に示すように、この溶液を80℃乃至70℃の範囲内で調整し、各100gをそれぞれ60℃乃至20℃の範囲内の水1000mLの中に、直径2.5mmの円形ノズル(注射筒)から注入した。水は、循環ポンプを使用して温度が常に一定になるように調整した。また、別に各温度におけるネイティブジェランガム溶液の粘度を測定し、表11に示した。粘度測定は、B型粘度計(ビスメトロン:芝浦システム社製)を使用して測定した。回転数は6回転とし、ローターは、実験例1乃至64と同様に適正範囲のものを適宜使用した。注入後の溶液の状態は、表5に示す評価表に基づいて評価を行なった。
【0039】
【表10】
【0040】
【表11】
【0041】
以上から、良溶媒の温度が50℃においては、ハイドロコロイドゲル溶液が、水に混ざることなく、麺状のゲルを形成することができたが、良溶媒の温度が60℃においては、ハイドロコロイドゲル溶液が、水に混ざり不定形なゲルしかできなかったり、水に混ざり全体的にゲル化してしまったことが分かる。
【0042】
(実施例1乃至3、比較例1及び2)
寒天麺を作製した。具体的には、寒天(伊那寒天T−1:伊那食品工業社製)15gを水1000gに分散し沸騰溶解した。この溶液の凝固温度は42℃であった。この溶液を47℃に冷却し、各温度に調整した水1000gに注入した。ノズル出口の形は、3mm×3mmの正方形とし、麺の長さは、約150mmとした。水は、循環ポンプを使用して冷却しながら行い、常に温度が一定になるようにして行った。また、比較として同配合にて溶解した液を放冷して(18時間)ゲル化させ、その後3mm×3mmの面で長さ150mmに切断した麺を作製した。これらについて状態を比較し、表11に示した。注入後の溶液の状態は、表5に示す評価表に基づいて評価を行なった。
【0043】
また、この麺状のゲルを形成したものについては麺をラーメンスープ溶液(80℃)に入れて食感を比較し表11に示した。
【0044】
【表12】
【0045】
以上のように、本発明の方法で作製した寒天麺は、放冷で固めてから成形したものと同等の食感であり、短時間に麺状の寒天ゲルを作製する方法として有効であった。
【0046】
(実施例4乃至6、比較例3及び4)
ゲル入り飲料を作製した。具体的には、寒天(伊那寒天Z−10:伊那食品工業社製)8g、タラガム(タラガムA:伊那食品工業社製)3gを水900gに分散し沸騰溶解した。この溶液を80℃に冷却し、砂糖100g、クエン酸(磐田化学社製)3g、クエン酸3ナトリウム(磐田化学社製)1.5gを溶解した。この溶液の凝固温度は35℃であった。この溶液を40℃に冷却し、各温度に調整したオレンジ果汁(市販の100%オレンジ果汁、例えばポンジュース等)1000gに注入した。ノズル出口の形は3mm×3mmの正方形とし、サイコロ状のゲルになるように切断しながら注入した。オレンジ果汁は、循環ポンプを使用して冷却しながら行い、常に温度が一定になるようにして行った。また、比較として同配合にて作製したゲルを放冷して(18時間)ゲル化させ、その後3mm×3mm×3mmの立方体に切断し、サイコロ状のゲルを作製した。これらについて状態を比較し、表13に示した。注入後の溶液の状態は、表5に示す評価表に基づいて評価を行なった。
【0047】
また、このようにして得られたゲル入りオレンジ飲料、または放冷して作製して得られたゲルを果汁に添加したゲル入りオレンジ飲料について10℃にて飲み心地を比較し、表13に示した。
【0048】
【表13】
【0049】
以上のように、本発明の方法で作製したゲル入り飲料は、放冷で固めてから成形したものと同等の飲み口であり、短時間に一定形状のサイコロゲルを作製する方法として有効であった。
【0050】
(実施例7乃至9、比較例5及び6)
葛きりを作製した。具体的には、寒天(伊那寒天M−7:伊那食品工業社製)8g、κタイプカラギナン(イナゲルE−150:伊那食品工業社製)5g、ローカストビーンガム(イナゲルL−85:伊那食品工業社製)3g、キサンタンガム(ケルトロール:CPケルコ社製)1g、葛粉(葛粉A:伊那食品工業社製)10gを水600gに分散し沸騰溶解した。この溶液に砂糖400gを徐々に加え溶解した。この溶液の凝固温度は44℃であった。この溶液を50℃に冷却し、各温度に調整した水600gに砂糖を400g溶解した液にノズルから注入した。ノズルの形は2mm×5mmとし長さ100mm出たところで切断した。水に砂糖を溶解した液は、循環ポンプを使用して冷却しながら行い、常に温度が一定になるようにして行った。また、比較として同配合にて溶解した液を放冷して(24時間)ゲル化させ、その後2mm×5mm×長さ100mmに切断したゲルを作製した。これらについて状態を比較し、表14に示した。注入後の溶液の状態は、表5に示す評価表に基づいて評価を行なった。
【0051】
また、このようにして得られた葛きりについて食感を10℃にて比較し表14に示した。
【0052】
【表14】
【0053】
以上のように、本発明の方法で作製した葛きりは、放冷で固めてから成形したものと同等の食感であり、短時間に一定形状の葛きりゲルを作製する方法として有効であった。
【0054】
(実施例10及び11、比較例7乃至9)
高糖度ゼリーを作製した。具体的には寒天(即溶性寒天UP−16:伊那食品工業社製)10g、ιタイプカラギナン(イナゲルV−120:伊那食品工業社製)0.5gを水300gに分散し沸騰溶解した。この溶液に砂糖500g、果糖ブドウ糖液糖(昭和産業社製)200gを加温しながら徐々に加え溶解した。この溶液の凝固温度は36℃であった。この溶液を45℃に冷却し、各温度に調整した水300gに砂糖を500g、果糖ブドウ糖液糖を200g溶解した溶液にノズルから注入した。ノズルの形は直径5mmとし、20mm注入して切断した。糖液の入った容器は、温度を一定にした水槽に入れゴムベラで撹拌しながら行い、常に温度が一定になるようにして行った。また比較として同配合にて溶解した液を放冷して(24時間)ゲル化させ、その後、実施例10及び11と類似形状に切断したゲルを作製した。これらについて状態を比較し、表15に示した。注入後の溶液の状態は、表5に示す評価表に基づいて評価を行なった。
【0055】
また、このようにして得られた高糖度ゼリーについて食感を10℃にて比較し、表15に示した。
【0056】
【表15】
【0057】
以上のように、本発明の方法で作製した高糖度ゼリーは、放冷で固めてから成形したものと同等の食感であり、短時間に高糖度ゼリーを大量に作製する方法として有効であった。