特許第5786309号(P5786309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786309
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20150910BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20150910BHJP
   H04N 1/46 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   H04N1/04 D
   H04N1/04 101
   H04N1/40 D
   H04N1/46 Z
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-248688(P2010-248688)
(22)【出願日】2010年11月5日
(65)【公開番号】特開2012-100225(P2012-100225A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2013年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(72)【発明者】
【氏名】後野 晋一
【審査官】 宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−136249(JP,A)
【文献】 特開2009−141872(JP,A)
【文献】 米国特許第05767991(US,A)
【文献】 特開2011−24135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 − 1/207
H04N 1/40 − 1/409
H04N 1/46 − 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる発光体からの光を合成して被照射体に照射する光源と、
前記光源により照射され前記被照射体で反射した光を受光し、前記被照射体に関する第1の色空間の画像情報を読み取る読取部と、
前記第1の色空間の画像情報を前記光源の目標の色温度に対応する色度からずれた色度に対応する判定用の色変換係数群、又は設定された色変換係数群を用いて色空間の画像情報に変換する色変換回路と、
前記光源の前記異なる発光体の何れか1つが発生する光の色からなる色見本と、
前記色見本を前記被照射体としたときに前記読取部により読み取られた前記第1の色空間の画像情報を、前記判定用の色変換係数群を用いて前記色変換回路により変換された前記色見本に関する前記色空間の画像情報のうちのb成分の画像情報に基づいて前記光源の色温度に対応する色度を判定する判定部と、
前記判定部により判定された前記色度に対応する前記色変換係数群を前記色変換回路に設定する色変換係数群設定部とを備え
前記色変換回路は、前記判定用の色変換係数群は、光源の色温度の各々に対応する色度に対応して複数の色変換係数群を記憶する記憶部に記憶されている前記複数の色変換係数群のうち、光源の目標の色温度に対応する色度からの色度のずれ量に対してL色空間の画像情報の変化量が最も大きいものを用いた画像読取装置。
【請求項2】
異なる発光体からの光を合成して被照射体に照射する光源と、
前記光源により照射され前記被照射体で反射した光を受光し、前記被照射体に関する第1の色空間の画像情報を読み取る読取部と、
前記第1の色空間の画像情報を前記光源の目標の色温度に対応する色度からずれた色度に対応する判定用の色変換係数群、又は設定された色変換係数群を用いてL色空間の画像情報に変換する色変換回路と、
前記光源の前記異なる発光体の何れか1つが発生する光の色からなる色見本と、
前記色見本を前記被照射体としたときに前記読取部により読み取られた前記第1の色空間の画像情報を、前記判定用の色変換係数群を用いて前記色変換回路により変換された前記色見本に関する前記L色空間の画像情報のうちのb*成分の画像情報に基づいて前記光源の色温度に対応する色度を判定する判定部と、
前記判定部により判定された前記色度に対応する前記色変換係数群を前記色変換回路に設定する色変換係数群設定部とを備え、
前記光源は、第1の発光体が発生する第1の色の光と第2の発光体が発生する第2の色の光とを合成して白色光を生成するか、または前記第1の色の光と第2の発光体が発生する光及び第3の発光体が発生する光からなる第2の色の光とを合成して白色光を生成する白色発光ダイオードであり、
前記色変換回路は、前記色見本として前記第1の色からなるものを用いたときは、前記光源の目標の色温度から前記第2の色側にずれた色度に対応する色変換係数群を前記判定用の色変換係数群とし、前記色見本として前記第2の色からなるものを用いたときは、前記光源の目標の色温度から前記第1の色側にずれた色度に対応する色変換係数群を前記判定用の色変換係数群とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置の前記色変換係数群設定部により設定された前記色変換係数群を用いて前記色変換回路により変換された色空間の画像情報を前記第1の色空間及び前記L色空間以外の他の色空間の画像情報に変換する画像処理部と、
前記の色空間の画像情報に基づいて感光体を露光することにより前記感光体上に各色の静電潜像を形成する露光部と、
前記各色の静電潜像を現像して各色のトナー像を形成する現像部と、
前記各色のトナー像を用紙に転写する転写部と、
前記用紙に転写された前記各色のトナー像を定着させる定着部とを備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機等の画像形成装置に搭載される画像読取装置やコンピュータの画像入力用に使用される画像読取装置において、原稿面を照明する光源として白色LED(Light Emitting Diode)を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
白色LEDは、一般に、青色LEDチップとそれに積層される黄色の蛍光物質を含有させた透明樹脂とで構成される。そして、青色LEDチップの放つ青色光によりチップ周囲の蛍光物質を励起させて黄色の蛍光を発生させ、それにより補色関係にある青色と黄色とを足し合わせて、白色光を生成する。そのため、蛍光物質の分散状態等に関する製造ばらつき等により白色LEDにて生成される光の色温度が黄色方向や青色方向に変動し、画像読取装置での色に関する読取精度が低下することがある。
【0004】
特許文献1には、光源における色調のランクをXYZ測色系色度図上で所定の面積を占める領域ごとに設定し、設定したランクに従って入力マスキング手段のパラメータを切り換える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−008911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、本構成を採用しない場合と比べて、色に関する読取精度の低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]異なる発光体からの光を合成して被照射体に照射する光源と、
前記光源により照射され前記被照射体で反射した光を受光し、前記被照射体に関する第1の色空間の画像情報を読み取る読取部と、
前記第1の色空間の画像情報を前記光源の目標の色温度に対応する色度からずれた色度に対応する判定用の色変換係数群、又は設定された色変換係数群を用いて色空間の画像情報に変換する色変換回路と、
前記光源の前記異なる発光体の何れか1つが発生する光の色からなる色見本と、
前記色見本を前記被照射体としたときに前記読取部により読み取られた前記第1の色空間の画像情報を、前記判定用の色変換係数群を用いて前記色変換回路により変換された前記色見本に関する前記色空間の画像情報のうちのb成分の画像情報に基づいて前記光源の色温度に対応する色度を判定する判定部と、
前記判定部により判定された前記色度に対応する前記色変換係数群を前記色変換回路に設定する色変換係数群設定部とを備え
前記色変換回路は、前記判定用の色変換係数群は、光源の色温度の各々に対応する色度に対応して複数の色変換係数群を記憶する記憶部に記憶されている前記複数の色変換係数群のうち、光源の目標の色温度に対応する色度からの色度のずれ量に対してL色空間の画像情報の変化量が最も大きいものを用いた画像読取装置。
【0009】
異なる発光体からの光を合成して被照射体に照射する光源と、
前記光源により照射され前記被照射体で反射した光を受光し、前記被照射体に関する第1の色空間の画像情報を読み取る読取部と、
前記第1の色空間の画像情報を前記光源の目標の色温度に対応する色度からずれた色度に対応する判定用の色変換係数群、又は設定された色変換係数群を用いてL色空間の画像情報に変換する色変換回路と、
前記光源の前記異なる発光体の何れか1つが発生する光の色からなる色見本と、
前記色見本を前記被照射体としたときに前記読取部により読み取られた前記第1の色空間の画像情報を、前記判定用の色変換係数群を用いて前記色変換回路により変換された前記色見本に関する前記L色空間の画像情報のうちのb成分の画像情報に基づいて前記光源の色温度に対応する色度を判定する判定部と、
前記判定部により判定された前記色度に対応する前記色変換係数群を前記色変換回路に設定する色変換係数群設定部とを備え、
前記光源は、第1の発光体が発生する第1の色の光と第2の発光体が発生する第2の色の光とを合成して白色光を生成するか、または前記第1の色の光と第2の発光体が発生する光及び第3の発光体が発生する光からなる第2の色の光とを合成して白色光を生成する白色発光ダイオードであり、
前記色変換回路は、前記色見本として前記第1の色からなるものを用いたときは、前記光源の目標の色温度から前記第2の色側にずれた色度に対応する色変換係数群を前記判定用の色変換係数群とし、前記色見本として前記第2の色からなるものを用いたときは、前記光源の目標の色温度から前記第1の色側にずれた色度に対応する色変換係数群を前記判定用の色変換係数群とする画像読取装置。
【0010】
]前記[1]又は[2]に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置の前記色変換係数群設定部により設定された前記色変換係数群を用いて前記色変換回路により変換された色空間の画像情報を前記第1の色空間及び前記L色空間以外の他の色空間の画像情報に変換する画像処理部と、
前記の色空間の画像情報に基づいて感光体を露光することにより前記感光体上に各色の静電潜像を形成する露光部と、
前記各色の静電潜像を現像して各色のトナー像を形成する現像部と、
前記各色のトナー像を用紙に転写する転写部と、
前記用紙に転写された前記各色のトナー像を定着させる定着部とを備えた画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、に記載の発明によれば、本構成を採用しない場合と比べて、色に関する読取精度の低下を抑制することができる。
【0013】
請求項に記載の発明によれば、本構成を採用しない場合と比べて、光源の白色光が目
標の色温度からずれても読取精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像読取装置の構成例を示す図である。
図2図2は、信号処理部の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、色変換係数群設定回路の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、xy色度図上にて白色LEDの色温度に対応する色度のばらつきを説明するための図である。
図5図5は、各DLUTの特性を説明するための図である。
図6図6は、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像読取装置の構成例を示す図である。
【0017】
この画像読取装置1は、後述する原稿配置台36に原稿20を搬送する原稿搬送部2と、原稿20の表面20aの画像を光学的に読み取る表面画像読取部3と、原稿搬送部2に設けられ、原稿20の裏面20bの画像を光学的に読み取る裏面画像読取部4と、画像読取装置1の各部を制御する読取制御部10と、表面画像読取部3及び裏面画像読取部4によって読み取られた信号を処理する信号処理部11とを備える。
【0018】
原稿搬送部2及び裏面画像読取部4は、原稿配置台36に対して開閉可能な原稿カバー24に設けられている。原稿搬送部2は、ADF(Aoto Document Feeder:自動原稿送り装置)とも呼ばれている。
【0019】
また、画像読取装置1は、読取方式として、原稿配置台36上の原稿20に対して、光学系のキャリッジ37A、37Bを副走査方向Aに移動させて原稿20から画像を読み取る「第1の読取方式」と、表面画像読取部3の光学系のキャリッジ37A、37Bに対して原稿20を原稿搬送部2により副走査方向Aに搬送させて原稿20から画像を読み取る「第2の読取方式」とを有する。第1の読取方式は、プラテンスキャン方式とも呼ばれ、第2の読取方式は、CVT(Constant Velocity Transport:原稿定速搬送)方式とも呼ばれている。
【0020】
また、画像読取装置1は、読取モードとして、原稿20から白黒画像を読み取る「白黒モード」、原稿20からカラー画像を読み取る「カラーモード」、原稿20の表面20aから画像を読み取る「片面モード」、及び原稿20の表面20aと裏面20bの両方から画像を読み取る「両面モード」を有する。通常は「白黒モード」及び「片面モード」が初期設定されていることが多い。
【0021】
(原稿搬送部)
原稿搬送部2は、画像が記録された原稿20が配置される給紙台21と、搬送された原稿20が排出される排紙台22と、原稿20を給紙台21から排紙台22へ搬送する搬送機構23と、給紙台21上の原稿20を検出する紙センサ25とを備える。
【0022】
搬送機構23は、給紙台21に配置された複数の原稿20の束から原稿20を1枚ずつ分離する分離ロール230と、分離した原稿20を搬送する搬送ロール231と、原稿20を第1の読取領域3aに搬送する読取ロール232と、原稿20を裏面画像読取部4に案内する案内ロール233と、原稿20を排紙台22に排出する排出ロール234とを備える。
【0023】
(表面画像読取部)
表面画像読取部3は、照明光を発生する左右一対の白色LEDランプによる光源30A、30Bと、光源30A、30Bからの照明光を第1又は第2の読取領域3a、3bに導く導光体31と、光源30A、30Bからの照明光が第1又は第2の読取領域3a、3bにおける原稿20の表面20aで反射した反射光を反射する第1乃至第3のミラー32A〜32Cと、第1乃至第3のミラー32A〜32Cに導かれた反射光を集光する縮小光学系のレンズ33と、レンズ33により集光された光を受光する受光部の一例である表面用イメージセンサ34とを備える。
【0024】
表面用イメージセンサ34は、例えば3ライン構成のCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサを用いることができるが、これに限られるものではなく、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の他の固体撮像素子でもよい。
【0025】
また、表面画像読取部3は、光源30A、30B、導光体31、第1乃至第3のミラー32A〜32C、レンズ33及び表面用イメージセンサ34を収容する筐体35を有し、筐体35の上部にはガラス等の光透過性部材からなる原稿配置台36を設けている。
【0026】
光源30A、30B、導光体31及び第1のミラー32Aは、副走査方向Aに移動可能な第1のキャリッジ37Aに固定され、第2のミラー32B及び第3のミラー32Cは、第2のキャリッジ37Bに固定されている。原稿配置台36上の原稿面から表面用イメージセンサ34の受光面までの光路長が常に一定に保持されるように、第2のキャリッジ37Bは、第1のキャリッジ37Aの1/2の移動量で副走査方向Aに移動可能に構成されている。また、第1及び第2のキャリッジ37A、37Bは、原稿配置台36に配置された原稿20の表面20aの画像を読み取る場合には、図1に示す位置をホームポジションとし、不図示のモータにより副走査方向Aに移動するように構成されている。
【0027】
原稿配置台36の第2の読取領域3bの近傍には主走査方向Bに沿って白色基準板38Wと黄色基準板38Yが設けられている。白色基準板38Wは、主走査方向Bに亘って反射率が一様な白色基準面を有し、例えば白色の樹脂板、白塗装された金属板等を用いて形成することができる。黄色基準板38Yは、主走査方向Bに亘って反射率が一様な黄色基準面を有し、例えば黄色の樹脂板、黄塗装された金属板等を用いることができる。白色基準板38Wは、後述するシェーディング補正のために使用され、黄色基準板38Yは、色見本として用いられる。
【0028】
(裏面画像読取部)
裏面画像読取部4は、照明光を発生する光源40と、光源40からの照明光が原稿20の裏面20bで反射した反射光を集光する等倍光学系のロッドレンズアレイ41と、ロッドレンズアレイ41により集光された反射光を受光する受光部の一例である裏面用イメージセンサ42と、裏面用イメージセンサ42が実装された基板43と、搬送路を介してロッドレンズアレイ41に対向して配置された白色基準板44とを備える。
【0029】
光源40は、例えば蛍光ランプ、キセノンランプや、主走査方向に沿って配列された複数のLED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。
【0030】
裏面用イメージセンサ42は、例えば表面用イメージセンサ34と同様に3ライン構成のCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサを用いることができるが、これに限られるものではなく、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の他の固体撮像素子でもよい。
【0031】
白色基準板44は、副走査方向Aに直交する主走査方向に亘って反射率が一様な白色基準面を有し、例えば白色の樹脂板、白塗装された金属板等を用いることができる。白色基準板44は、シェーディング補正のために使用される。
【0032】
(表面用イメージセンサ)
表面用イメージセンサ34は、基板を有し、この基板上に、原稿20からカラー画像を読み取る赤用ラインセンサ、緑用ラインセンサ及び青用ラインセンサとを備える。赤用ラインセンサ、緑用ラインセンサ及び青用ラインセンサは、受光素子列の一例である。
【0033】
赤用ラインセンサは、複数の光電変換素子を主走査方向に沿って配置し、各光電変換素子の受光側に赤色成分の光を透過させるフィルタを設けている。赤用ラインセンサは、光電変換素子が受光した光の赤色成分の光量に応じて蓄積した電荷を信号Sとして外部に出力する。
【0034】
緑用ラインセンサは、複数の光電変換素子を主走査方向に沿って配置し、各光電変換素子の受光側に緑色成分の光を透過させるフィルタを設けている。緑用ラインセンサは、光電変換素子が受光した光の緑色成分の光量に応じて蓄積した電荷を信号Sとして外部に出力する。
【0035】
青用ラインセンサは、複数の光電変換素子を主走査方向に沿って配置し、各光電変換素子の受光側に青色成分の光を透過させるフィルタを設けたものである。青用ラインセンサは、光電変換素子が受光した光の青色成分の光量に応じて蓄積した電荷を信号Sとして外部に出力する。
【0036】
(信号処理部)
図2は、信号処理部の構成例を示すブロック図である。ここでは、表面用イメージセンサ34にて生成された各色画像信号S、S、Sを処理する信号処理部11について説明する。
【0037】
信号処理部11は、サンプルホールド回路110、黒レベル調整回路111、増幅回路112、A/D変換回路113、シェーディング補正回路114、遅延回路115、色変換手段の一例としての色変換回路116、色変換係数群設定手段の一例としての色変換係数群設定回路117、及び信号処理制御回路118を備えている。
【0038】
サンプルホールド回路110は、表面用イメージセンサ34から転送された各色のアナログ画像信号S、S、Sをサンプリング(標本化)するとともに一定期間ホールド(保持)するサンプリングホールドを行う。
【0039】
黒レベル調整回路111は、サンプルホールド回路110によりサンプリングホールドされたアナログ画像信号S、S、Sについて、読み取られた原稿(以下、「読取原稿」ともいう。)20の黒の出力レベルが予め定められた黒レベル(ゼロレベル)になるように補正処理(以下、「黒レベル処理」という。)を行う。
【0040】
増幅回路112は、黒レベル調整された後のアナログ画像信号S、S、Sを増幅する。
【0041】
A/D変換回路113は、増幅回路112により増幅されたアナログ画像信号S、S、SをA/D変換し、デジタルデータである画像データ(R,G,B)に変換する。
【0042】
シェーディング補正回路114は、A/D変換回路113により変換された画像データ(R、G、B)に対して、光源30A、30Bや表面用イメージセンサ34に起因する読取出力のムラを補正するとともに、読取原稿の白レベルと画像読取装置1の出力の白レベルとが一致するように調整する、シェーディング補正処理を行う。
【0043】
遅延回路115、表面用イメージセンサ34を構成するR用,G用,B用の1次元ラインセンサの副走査方向Aにおける位置のずれに起因して生じる各画像データ間の読取り時間差を、画像データ(R)を基準に補正する。
【0044】
色変換回路116は、色変換係数群(色変換パラメータ)を用いて、RGB色空間(第1の色空間:デバイス依存色空間)の画像データ(R,G,B)を輝度色差色空間であるL色空間(第2の色空間:デバイス非依存色空間)の画像データ(L,a,b)に変換する。色変換回路116にて色変換処理された画像データ(L,a,b)は、本体部5Aに備えられた画像処理部51に転送され、出力色空間でるCMYK色空間(第3の色空間:デバイス依存色空間)の画像データ(C,M,Y,K)への色変換処理等が行われる。なお、この出力色空間の画像データ(C,M,Y,K)への色変換処理等を行う画像処理部51を画像読取装置1の内部に設けた構成としてよい。
【0045】
ここで、「色変換係数群」とは、例えばRGB色空間の画像データ(R,G,B)をL色空間の画像データ(L,a,b)に変換する際に、画像データ(R,G,B)と画像データ(L,a,b)との対応関係を規定するものをいう。本実施の形態では、色変換係数群の一例として、「(R,G,B)→(L,a,b)」に変換する多次元(3次元)ルックアップテーブル(DLUT:Direot Look-Up Table)を用いる。
【0046】
色変換係数群(DLUT)は、例えば、次のように生成される。まず、各種のカラーチャートを測色装置により測色した測色データと、カラーチャートを印刷する際の出力画像データである実データ(R,G,B)とからなる色データ対を作成する。そして、例えば、色データ対に対して加重(重み)を施し回帰分析等の統計処理を行う方法、色データ対について単純に加重平均を行って補間処理する方法、色データ対を学習したニューラルネットワークを用いて統計処理する方法等により、色変換係数群(DLUT)を生成する。
【0047】
色変換係数群設定回路117は、白色LEDにて生成された光の色温度に対応する色度に応じて色変換回路116において使用する色変換係数群を決定し、決定した色変換係数群を色変換回路116に設定する。それにより、色変換回路116では、色変換係数群設定回路117によって設定された色変換係数群を用いて、画像データ(R,G,B)を画像データ(L,a,b)に変換する。
【0048】
信号処理制御回路118は、本体部5Aの主制御部50による制御の下で、サンプルホールド回路110、黒レベル調整回路111、増幅回路112、シェーディング補正回路114、遅延回路115、色変換回路116及び色変換係数群設定回路117の動作を制御する。
【0049】
信号処理部11では、表面用イメージセンサ34から転送された3つのアナログ画像信号S、S、Sが、サンプルホールド回路110によりサンプリングされた後、黒レベル調整回路111によって黒レベルが調整され、さらに、増幅回路112によって予め定めた信号レベルに増幅される。増幅されたアナログ画像信号S、S、Sは、A/D変換回路113によりA/D変換され、デジタルデータである画像データ(R,G,B)が生成される。シェーディング補正回路114は、これらの画像データ(R,G,B)に対し、白色基準板38Wを読み取った画像データに基づいて表面用イメージセンサ34を構成する1次元ラインセンサの感度ばらつきや光学系の光量分布特性に対応させた補正を施す。
【0050】
そして、画像データ(R,G,B)は、遅延回路115により副走査方向Aおける位置ズレが補正された後、色変換回路116によってL色空間の画像データ(L,a,b)に変換される。その際に、色変換係数群設定回路117は、光源30A、30Bの白色LEDの色温度に対応する色度に応じて色変換係数群を定め、定めた色変換係数群を色変換回路116に設定する。その後、色変換回路116によって色変換処理された画像データ(L,a,b)は、本体部5Aに備えられた画像処理部51に転送される。
【0051】
(色変換係数群設定回路)
次に、信号処理部11に備えられた色変換係数群設定回路117について説明する。本実施の形態の画像読取装置1においては、画像形成装置の電源が投入されると、読取制御部10は、まず、キャリッジ37Aを黄色基準板38Yを読み取る位置に移動させ、静止させる。そして、読取制御部10は、光源30A、30Bを制御して白色LEDを発光させる。それにより黄色基準板38Yからの反射光は、表面用イメージセンサ34に導かれ、表面用イメージセンサ34にて得られた黄色基準板38Yに関する読取画像信号(R,G,B)は信号処理部11に転送される。
【0052】
信号処理部11では、上記した各処理を順次行って、色変換回路116にて色変換処理された黄色基準板38Yに関する画像データ(L,a,b)が色変換係数群設定回
路117に送られる。色変換回路116には、色変換係数群の一例としての標準色変換係数群(以下、「標準DLUT」という。)と判定用の色変換係数群の一例としての区分け用色変換係数群(以下、「区分け用DLUT」という。)が標準設定(デフォルト)として予め設定されている。色変換回路116は、工場出荷時又は光源30A、30B交換時に区分け用DLUTを用いて黄色基準板38Yに関する画像データ(L,a,b)を生成し、その後、標準DLUT又は設定されたDLUTを用いて黄色基準板38Yに関する画像データ(L,a,b)を生成する。
【0053】
「標準DLUT」は、目標色度(色度の目標値)からなる白色LEDを光源として使用して生成した色変換係数群(DLUT)である。すなわち、白色LEDの色温度に対応する色度が目標色度である場合に、標準DLUTを用いることにより、目標とする「(R,G,B)→(L,a,b)」の色変換処理が実行される。また、「区分け用DLUT」は、目標とする「(R,G,B)→(L,a,b)」の色変換処理を実行するためのDLUTの選択に用いる。区分け用DLUTの詳細については後述する。
【0054】
色変換係数群設定回路117は、区分け用DLUTによって色変換処理が実行された黄色基準板38Yに関する画像データ(L,a,b)を取得し、取得した画像データ(L,a,b)から白色LEDの色温度に対応する色度を判定する。そして、その判定結果に基づき、色変換回路116にて使用する色変換係数群を決定し、決定した色変換係数群を色変換回路116に設定する。それにより、信号処理部11は、読取原稿に関する画像データを取得した場合には、白色LEDの色温度に対応する色度に応じて設定された色変換係数群を用いて色変換処理を行う。
【0055】
色変換係数群としてのDLUTは、DLUTの各グリッドを構成する色変換係数を色領域毎、色座標毎に設定することができる。そのため、白色LEDの色温度に対応する色度に応じて色領域毎、色座標毎の色変換係数を予め設計しておくことにより、白色LEDの色温度に対応する色度毎に目標とする色変換処理を実現することができる。そこで、本実施の形態の信号処理部11では、白色LEDの色温度に対応する色度に応じて、その色度において目標とする色変換処理を実現するDLUTを色変換回路116に設定することにより、色に関する読取精度の低下を抑制している。
【0056】
図3は、色変換係数群設定回路117の構成を説明するブロック図である。図3に示したように、本実施の形態の色変換係数群設定回路117は、判定部1170、色変換係数群決定部1171、記憶手段の一例としての色変換係数群記憶部1172、色変換係数群設定部1173を備えている。
【0057】
(白色LEDの色温度に対応する色度の判定)
判定部1170は、区分け用DLUTを用いて変換された黄色基準板38Yに関する画像データ(L,a,b)の中のb成分を取得する。そして、b成分の大きさに基づいて白色LEDの色温度に対応する色度を判定する。本実施の形態の光源30A、30Bとして使用する白色LEDは、第1の発光体の一例である青色LEDチップと第2の発光体の一例である黄色の蛍光物質を含有させた透明樹脂とが積層されて構成されている。そして、青色LEDチップの放つ第1の色の光の一例である青色光によりチップ周囲の黄色蛍光物質を励起させて、第2の色の光の一例である黄色の蛍光を発生させる。それにより、補色関係にある青色と黄色とを足し合わせて(合成させて)、白色光を生成する。そのため、例えば製造時に黄色蛍光物質の特性や添加量や分散状態等にばらつき等が生じると、白色LEDにて生成される光の色温度が、黄色方向や青色方向に変動することがある。なお、白色LEDは、上記の青色LEDチップと黄色の蛍光物質に限られず、他のLEDチップと蛍光物質の組合せでもよい。例えば、青色LEDチップと赤と緑の化合物を合成した黄色の蛍光体との組合せ、青色LEDチップと赤色の蛍光体と緑色の蛍光体との組合せ、紫外LEDと青色の蛍光体と赤色の蛍光体と緑色の蛍光体との組合せを用いてもよい。
【0058】
図4は、xy色度図上にて白色LEDの色温度に対応する色度のばらつきを説明する図である。図4に示したように、白色LEDでは、青色LEDチップの色温度に対応する色度と黄色蛍光物質の各色温度に対応する各色度(図中「蛍光物質の色度軌跡」上の色度)とを結ぶライン(図中1点鎖線)上の色度(図中「白色LEDの色度軌跡」上の色度)が実現される。すなわち、光源30A、30Bに使用される白色LEDの色温度に対応する色度には、例えば黄色蛍光物質の特性や添加量や分散状態等に応じて、白色LEDの色度軌跡上の一定領域(図中、「zone」)内でばらつきが生じる。
【0059】
そこで、本実施の形態では、白色LEDの色温度に対応する色度を、目標色度(色度の目標値)を中心として、白色LEDの色度軌跡上の領域(zone)を複数の色度領域(zone(n):n=整数)に区分する。図4に示したように、例えば、目標色度を中心として予め定めた色度範囲内に設定される色度領域zone(0)、色度領域zone(0)よりも黄色側に近い色度領域zone(1)、さらに黄色側に近い色度領域zone(2)、また、色度領域zone(0)よりも青色側に近い色度領域zone(−1)、さらに青色側に近い色度領域zone(−2)、の5つの色度領域に区分けすることとする。
【0060】
(判定部)
本実施の形態の判定部1170は、白色LEDにて生成された光の色温度に対応する色度が上記した色度領域(zone(n))の何れに該当するかを判定する。そのために、画像読取装置1は、上記したように、画像読取装置1の電源が投入されると、第2の色の光の一例である黄色からなる黄色基準板38Yからの反射光を表面用イメージセンサ34にて読み取り、信号処理部11にて表面用イメージセンサ34からの黄色基準板38Yに関する画像データを処理して、L,a,b色空間の画像データ(L,a,b)を生成する.この場合の色変換処理は、上記した区分け用DLUTが用いられる。そして、色変換係数群設定回路117は、区分け用DLUTにより色変換処理された黄色基準板38Yに関する画像データ(L,a,b)に基づいて、白色LEDの色温度に対応する色度が上記した色度領域(zone(n))の何れに該当するかを判定する。
【0061】
ここで、L,a,b色空間の画像データ(L,a,b)におけるb成分は、プラス側に大きい程、黄(Y)色が強い色彩を表し、マイナス側に大きい程、青(B)色が強い色彩を表す。そのため、画像データ(L,a,b)におけるb成分を判定すれば、白色LEDの色温度に対応する色度は、黄(Y)色が強いか青(B)色が強いかを判定できる。そこで、判定部1170は、L,a,b色空間の画像データ(L,a,b)におけるb成分を用いて、白色LEDの色温度に対応する色度が上記した色度領域(zone(n))の何れに属するかを判定する。
【0062】
図5は、各DLUTの特性を説明するための図である。同図において、縦軸は黄色基準板38Yに関する画像データ(L,a,b)のうちのb成分の値を示し、横軸は白色LEDの色温度を示す。同図中、DLUT(1)は、色温度が黄色側にシフトしている色度領域zone(1)の白色LEDを使用した場合に目標とする色変換処理を実現するための色変換係数群である。DLUT(2)は、同図では示されていないが、色温度がさらに黄色側にシフトしている色度領域zone(2)の白色LEDを使用した場合に目標とする色変換処理を実現するための色変換係数群である。DLUT(0)は、色温度が目標の色度領域zone(−0)の白色LEDを使用した場合に目標とする色変換処理を実現するための色変換係数群である。DLUT(−1)は、色温度が青色側にシフトしている色度領域zone(−1)の白色LEDを使用した場合に目標とする色変換処理を実現するための色変換係数群である。DLUT(−2)は、色温度がさらに青色側にシフトしている色度領域zone(−2)の白色LEDを使用した場合に目標とする色変換処理を実現するための色変換係数群である。
【0063】
同図に示すように、DLUT(0)及びDLUT(1)では、色度が小さい側のbの変化が少ない(2以下)であるため、zone(−2)とzone(−1)とを区分けするのが容易でないことが分かる。DLUT(−1)でも、色度が小さい側のbの変化が少ない(4以下)であるため、zone(−2)とzone(−1)とを区分けするのが容易でないことが分かる。一方、DLUT(−2)は、bの変化が隣り合うzoneの中心間で10程度(5以上)あり、他のDLUT(0)、DLUT(1)、DLUT(−1)と比べてzoneの区分けが容易であることが分かる。
【0064】
そこで、本実施の形態では、色度領域(zone(n))は、例えばb成分に関して次のように設定している。DLUT(−2)を区分け用DLUTとして用い、zone(2)とzone(1)との境に第1の閾値bth1を設定し、zone(1)とzone(0)との境に第2の閾値bth2を設定し、zone(0)とzone(−1)との境に第3の閾値bth3を設定し、zone(−1)とzone(−2)との境に第4の閾値bth4を設定する。そして、b≦bth1を色度領域zone(2)とし、bth1<b≦bth2を色度領域zone(1)とし、bth2<b≦bth3を色度領域zone(0)とし、bth3<b≦bth4を色度領域zone(−1)とし、bth4<bを色度領域zone(−2)とする。
【0065】
この場合に、判定部1170が白色LEDの色度を判定する際に、黄色基準板38Yからの反射光を用いることで、判定部1170での判定精度が高まる。まず、信号処理部11では、白色基準板38Wからの反射光のアナログ画像信号(R,G,B)の各成分値が予め定めた目標値となるように、増幅回路112での増幅率が設定される。そのため、白色LEDの色温度が黄色方向にずれているために、白色基準板38Wからの反射光におけるB成分値がR成分値やG成分値に比べて小さい光であった場合には、B成分値に対する増幅率がR成分値やG成分値に対する増幅率よりも大きく設定される。その状態で黄色基準板38Yからの反射光を読み取ると黄色基準板38Yに備えられた黄色基準面により成分の光が吸収され、小さいはずのB成分の光が大きく増幅される。そのために、黄色基準板38Yからの反射光のY成分(R成分+G成分)の値が相対的に小さく計測されることとなる。それにより黄色基準板38Yを用いることで、光全体の中でR成分およびG成分が加色されて生成される黄(Y)色成分の相対的な割合が小さくなる。
【0066】
このように、白色LEDで生成された光を黄色基準板38Yの黄色基準面にて反射させることで、B成分がフィルタリングされ、反射光における黄(Y)色成分の相対的な割台が低下する。それにより白色LEDにて生成された光に含まれる黄(Y)色成分の検出精度が向上し、白色LEDの色温度に関する判定精度が高まる。なお、B成分の光に対する吸収効率を高めるため、黄色基準板38Yの黄色基準面は、例えば265階調で各色成分の濃度階調を表現するとした場合に、例えば(R,G,B)=(0,0,255)で表せる純粋な黄色、またはそれに近似した色を設定することが好ましい。
【0067】
(色変換係数群の決定についての説明)
次に、色変換係数群決定部1171は、判定部1170にて判定された白色LEDの色温度に対応する色度が属する色度領域(zone(n))から、色変換回路116にて設定する色変換係数群の一例であるDLUTを決定する。色変換係数群決定部1171では、例えば、白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(0)に属する場合には、原稿を読み取って生成された画像データ(L,a,b)における色の変動(ずれ量)は少ないと判断して、色変換回路116に既に設定されている標準DLUTを使用することを決定する。また、白色LEDの色温度に対応する色度が黄色側に近い色度領域zone(1)、さらに黄色側に近い色度領域zone(2)に属する場合には、原稿20を読み取って生成された画像データ(L,a,b)は青色側にずれを生じていると判断して、画像データ(L,a,b)におけるb成分を高くする色変換を行うDLUTを使用することを決定する。
【0068】
一方、白色LEDの色温度に対応する色度が青色側に近い色度領域zone(−1)、さらに青色側に近い色度領域zone(−2)に属する場合には、原稿20を読み取って生成された画像データ(L,a,b)は黄色側にずれを生じていると判断して、画像データ(L,a,b)におけるb成分を低くする色変換を行うDLUTを使用することを決定する。
【0069】
(色変換係数群記憶部)
色変換係数群記憶部1172は、白色LEDの色温度に対応する色度が属する色度領域(zone(n))に応じて目標とする色変換処理を実現するDLUTを予め記憶している。すなわち、色変換係数群記憶部1172は、DLUT(1)、DLUT(2)、DLUT(−1)、DLUT(−2)を予め記憶している。
【0070】
DLUT(1)は、色度が黄色側にシフトしている色度領域zone(1)に属する白色LEDを使用した場合において目標とする色変換処理を実現するためのものである。DLUT(2)は、色度がさらに黄色側にシフトしている色度領域zone(2)に属する白色LEDを使用した場合において目標とする色変換処理を実現するためのものである。DLUT(−1)は、色度が青色側にシフトしている色度領域zone(−1)に属する白色LEDを使用した場合において目標とする色変換処理を実現するためのものである。DLUT(−2)は、色度がさらに青色側にシフトしている色度領域zone(−2)に属する白色LEDを使用した場合において目標とする色変換処理を実現するためのものである。
【0071】
DLUT(1)は、画像データ(L,a,b)におけるb成分を標準DLUTよりも高くする色変換を行う。また、DLUT(2)は、画像データ(L,a,b)におけるb成分をDLUT(1)よりもさらに高くする色変換を行う。また、DLUT(−1)は、画像データ(L,a,b)におけるb成分を標準DLUTよりも低くする色変換を行う。また、DLUT(−2)は、画像データ(L,a,b)におけるb成分をDLUT(−1)よりもさらに低くする色変換を行う。
【0072】
そして、色変換係数群決定部1171は、判定部1170にて判定された色度領域(zone(n))に応じて、標準DLUT、DLUT(1)、DLUT(2)、DLUT(−1)、およびDLUT(−2)の何れか一つを決定する。色変換係数群(DLUT)に関する決定結果は、色変換係数群設定部1173に送られる。
【0073】
色変換係数群設定部1173は、色変換係数群決定部1171から色変換係数群(DLUT)に関する決定結果を取得する。そして、色変換係数群決定部1171が標準DLUTの使用を決定した場合には、色変換係数群設定部1173は、色変換回路116に新たにDLUTを設定する処理は行わない。
【0074】
一方、色変換係数群決定部1171が標準DLUT以外のDLUTの使用を決定した場合には、色変換係数群決定部1171からの決定結果に基づき、色変換係数群記憶部1172からDLUTを読み出す。そして、色変換係数群設定部1173は、読み出したDLUTを標準DLUTに代えて色変換回路116に設定する。
【0075】
(色変換係数群(DLUT)に関する設定処理の内容の説明)
ここで、色変換係数群設定回路117が行う色変換係数群(DLUT)を色変換回路116に設定する処理の内容を説明する。
【0076】
(1)区分け用DLUTを用いた画像データ(L,a,b)の取得
色変換係数群設定回路117の判定部1170は、色変換回路116から区分け用DLUTによって色変換された黄色基準板38Yからの反射光に関する画像データ(L,a,b)を取得する。
【0077】
(2)色度領域(zone(n))の判定
そして、判定部1170は、画像データ(L,a,b)からb成分を抽出し、色度領域(zone(n))のいずれに属するかを判定する。
【0078】
判定部1170は、b成分値がbth2<b≦bth3であれば、白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(0)に属すると判定する。また、判定部1170は、b成分値がb≦bth1であれば、白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(2)に属すると判定し、b成分値がbth1<b≦bth2であれば、白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(1)に属すると判定し、b成分値がbth3<b≦bth4であれば、白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(−1)に属すると判定し、b成分値がbth4<bであれば、白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(−2)に属すると判定する。
【0079】
(3)色変換係数群の決定
判定部1170が白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(0)に属すると判定すると、色変換係数群設定回路117の色変換係数群決定部1171は、標準DLUTの使用を決定する。この場合には、色変換回路116に既に設定されている標準DLUTをそのまま使用するので、色変換回路116に対するDLUTの設定処理を終了する。
【0080】
色変換係数群決定部1171は、判定部1170から白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(−1)に属するとの判定結果の場合には、DLUT(−1)の使用を決定する。色変換係数群決定部1171は、判定部1170から白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(−2)に属するとの判定結果の場合には、DLUT(−2)の使用を決定し、判定部1170から白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(1)に属するとの判定結果の場合には、DLUT(1)の使用を決定し、判定部1170から白色LEDの色温度に対応する色度が色度領域zone(2)に属するとの判定結果の場合には、DLUT(2)の使用を決定する。
【0081】
(4)色変換係数群の設定
色変換係数群設定部1173は、色変換係数群決定部1171からDLUTに関する決定結果を取得して、色変換係数群記憶部1172からDLUTを読み出す。そして、色変換係数群設定部1173は、読み出したDLUTを標準DLUTに代えて色変換回路116に設定し、色変換回路116に対するDLUTの設定処理を終了する。
【0082】
このように、本実施の形態の信号処理部11に備えられた色変換係数群設定回路117は、光源30A、30Bとして使用する白色LEDの色温度に対応する色度が黄色方向や青色方向に変動することに対応させて、色変換回路116にて使用する色変換係数群(DLUT)を設定する。それにより、白色LEDの色温度に対応する色度のばらつきに起因する色のずれが補正された読取画像データが生成される。
【0083】
なお、本実施の形態では、信号処理部11の色変換係数群設定回路117にて白色LEDの色温度に対応する色度を判定するに際し、黄色基準板38Yを使用する構成について説明した。このような構成の他に、信号処理部11の色変換係数群設定回路117にて白色LEDの色温度に対応する色度を判定するに際し、青色基準板を使用してもよい。この場合には、区分け用DLUTは、DLUT(2)を用いる。L,a,b色空間に色変換された画像データ(L,a,b)におけるb成分は、マイナス側に大きい程、青(B)色が強い色彩を表す。そのため、青色基準板からの反射光に関する画像データ(L,a,b)におけるb成分を判定しても、白色LEDの色温度に対応する色度について黄(Y)色が強いか青(B)色が強いかを判定することができる。それにより、本実施の形態の判定部1170において、青色基準板からの反射光に関するL,a,b色空間の画像データ(L,a,b)におけるb成分を用いて、白色LEDの色温度に対応する色度が上記した色度領域(zone(n))の何れに属するかを判定してもよい。またこの場合に、黄色基準板および青色基準板の双方を用いてもよい。さらには、黄色基準板や青色基準板を固定的に配置する構成の他に、例えば原稿配置台上に、黄色基準板や青色基準板と同じ色で構成される用紙上の色見本を置き、これを読み取るように構成してもよい。
【0084】
また、信号処理部11の色変換係数群設定回路117では、画像データ(L,a,b)におけるb成分から白色LEDの色温度に対応する色度が一義的に定まることを利用し、b成分値を用いて白色LEDの色度領域(zone(n))を判定した後、色変換回蕗116にて使用する色変換係数群の決定を行った。このような方法の他に、画像データ(L,a,b)におけるb成分において、白色LEDの色温度に対応する色度に応じたばらつきが発生することを利用し、b成分値のばらつき状態から色変換回路116にて使用する色変換係数群の決定を行ってもよい。
【0085】
また、本実施の形態では、白色LEDの色温度に対応する色度に応じて,色変換回路116に設定する色変換係数群としてのDLUTを換えるように構成した。このような構成
の他に、DLUTによって色変換された画像データ(L,a,b)を調整するために使用する「調整用変換係数群(キャリブレーションプロファイル)」を設定し、DLUTは換えずに、白色LEDの色温度に対応する色度に応じて、使用するキャリブレーションプロファイルを換えるように構成してよい。ここでのキャリブレーションプロファイルとは、色変換回路116にて色変換された画像データ(L,a,b)を、白色LEDの色温度に対応する色度に応じて「(L,a,b)→(Lm,am,bm)に色調整する1次元または多次元(例えば、3次元)のルックアップテーブル(LUT)である。
【0086】
さらには、白色LEDの色温度に対応する色度に応じて、例えば、画像処理部51に備えられた画像データ(L,a,b)を出力色空間の画像データ(C,M,Y,K〕に色変換する色変換係数群としてのDLUTを、白色LEDの色温度に対応する色度に応じて換えるように構成してもよい。
【0087】
さらにまた、「(R.G,B)→(L,a,b)」の色変換処理においてマトリックス演算を行う構成とし、白色LEDの色温度に対応する色度に応じて、使用するマトリックスを換えるように構成してもよい。例えば、次の(1)式は、「(R,G,B)→(L,a,b)」の色変換処理において用いられるマトリックス演算の一例を示したものである。白色LEDの色温度に対応する色度に応じて、(1)式におけるマトリックスM((2)式)を換えるように構成することによっても白色LEDの色温度に対応する色度のばらつきに起因する色のずれが補正された読取画像データを生成することができる。
【0088】
【数1】

【0089】
(信号処理部の内部構成)
信号処理部11は、原稿を読み取って生成した画像信号を処理するに際して、予め定められた処理プログラムに従ってデジタル演算処理を実行するCPU、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAM,CPUでの処理に便用される各種設定値等が格納されるROM、書き換え可能で電源供給が途絶えた場合にもデータを保持できる、電池によりバックアップされたフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ(NVM)、信号処理部11に接続される本体部5Aの主制御部50や画像処理部51等の各構成部との信号の入出力を制御するインターフェース(I/F)部を備えている。そして、CPUが、処理プログラムを本体部5Aの外部記憶装置(不図示)から主記憶装置に読み込み、信号処理部11内の各機能部の機能を実現させる。
【0090】
なお、この処理プログラムに関するその他の提供形態としては、予めROMに格納された状態にて提供され、RAMにロードされる形態がある。さらに、EEPROM等の書き換え可能なROMを備えている場合には、CPUがセッティングされた後に、プログラムだけがROMにインストールされ、RAMにロードされる形態がある。また、インターネット等のネットワークを介して信号処理部11にプログラムが伝送され、信号処理部11のROMにインストールされ、RAMにロードされる形態がある。さらにまた、DVD−ROMやフラッシュメモリ等の外部記録媒体からRAMにロードされる形態がある。
【0091】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置の構成例を示す図である。この画像形成装置5は、上記第1の実施の形態に係る画像読取装置1と、本体部5Aとを備える。
【0092】
本体部5Aは、画像読取装置1によって読み取られた原稿画像を記録媒体としての用紙70に印刷する画像形成部6と、画像形成部6に用紙70を供給するトレイ部7と、画像形成装置5全体を制御する主制御部50と、画像読取装置1から送信された画像情報を処理する画像処理部51とを備える。
【0093】
操作パネル19には、タッチパネル191と、原稿の読取、画像の印刷を指示するスタートボタンや原稿の読取、画像の印刷の停止を指示するストップボタン等の操作ボタン192とが設けられている。
【0094】
画像形成部6は、電子写真方式によって原稿画像を用紙に印刷するものであり、循環移動する無端状の中間転写ベルト60と、中間転写ベルト60にイエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色のトナー画像を転写する第1乃至第4の画像形成ユニット61Y、61M、61C、61Kと、画像情報に基づいて変調されたレーザー光を第1乃至第4の画像形成ユニット61Y、61M、61C、61Kの後述する感光体ドラム610を露光することにより感光体ドラム610上に静電潜像を形成する露光部としての光学走査装置62とを備えている。
【0095】
各画像形成ユニット61Y、61M、61C、61Kは、感光体ドラム610と、感光体ドラム610の表面を一様に帯電する帯電器611と、感光体ドラム610の表面に光学走査装置62によって形成された静電潜像を各色のトナーで現像してトナー画像を形成する現像部としての現像器612と、中間転写ベルト60を感光体ドラム610に押し付ける一次転写ローラ613とを有している。
【0096】
中間転写ベルト60は、不図示のモータに連結された駆動ローラ63によって駆動され、第1の従動ローラ64A、第2の従動ローラ64B及び中間転写ベルト60に張力を付与するテンションローラ65によって形成された循環経路に沿って回転する。
【0097】
また、画像形成部6は、中間転写ベルト60を挟んで第2の従動ローラ64Bと対向する位置に配置され、中間転写ベルト60上に形成されたトナー画像をトレイ部7から供給された用紙に転写する転写部としての二次転写ローラ66と、用紙に転写されたトナー画像を用紙上に転写する定着部としての定着ユニット67と、定着ユニット67を通過した用紙70を排出台69に排出する排出ローラ68とを備えている。
【0098】
定着ユニット67は、ヒータを内蔵する定着ローラ671と、定着ローラ671に対して加圧される加圧ローラ672とを備える。
【0099】
トレイ部7は、向き、大きさ、紙質等の異なる用紙70をそれぞれ収容する第1乃至第3のトレイ71〜73を備える。トレイ部7は、第1乃至第3のトレイ71〜73のそれぞれに対応して、格納された用紙70を取り出すためのピックアップローラ74A〜74Cと、複数の用紙70が取り出された場合にそれらを分離する分離ローラ75A〜75Cと、用紙70さらに下流側へ搬送するレジローラ76A〜76Cとを備えている。レジローラ76A〜76Cは、画像形成部6による画像形成のタイミングに同期して動作し、第1乃至第3のトレイ71〜73から取り出した用紙70を搬送路77に沿って二次転写ローラ66と中間転写ベルト60との間に導くように構成されている。
【0100】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々に変形実施が可能である。例えば、信号処理部をプログラムによって実現したが、ASIC(Application Specific IC)等のハードウェアを用いて実現してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…画像読取装置、2…原稿搬送部、3…表面画像読取部、3a,3b…読取領域、4…裏面画像読取部、5…画像形成装置、5A…本体部、6…画像形成部、7…トレイ部、10…読取制御部、11…信号処理部、19…操作パネル、20…原稿、20a…表面、20b…裏面、21…給紙台、22…排紙台、23…搬送機構、24…原稿カバー、25…紙センサ、30A,30B…光源、31…導光体、32A−32C…ミラー、33…レンズ、34…表面用イメージセンサ、35…筐体、36…原稿配置台、37A,37B…キャリッジ、38W…白色基準板、38Y…黄色基準板、40…光源、41…ロッドレンズアレイ、42…裏面用イメージセンサ、43…基板、44…白色基準板、50…主制御部、51…画像処理部、60…中間転写ベルト、61Y,61M,61C,61K…画像形成ユニット、62…光学走査装置、63…駆動ローラ、64A,64B…従動ローラ、65…テンションローラ、66…二次転写ローラ、67…定着ユニット、68…排出ローラ、69…排出台、70…用紙、71-73…トレイ、74A-74C…ピックアップローラ、75A-75C…分離ローラ、76A-76C…レジローラ、77…搬送路、110…サンプルホールド回路、111…黒レベル調整回路、112…増幅回路、113…A/D変換回路、114…シェーディング補正回路、115…遅延回路、116…色変換回路、117…色変換係数群設定回路、118…信号処理制御回路、191…タッチパネル、192…操作ボタン、230…分離ロール、231…搬送ロール、232…読取ロール、233…案内ロール、234…排出ロール、610…感光体ドラム、611…帯電器、612…現像器、613…一次転写ローラ、671…定着ローラ、672…加圧ローラ、1170…判定部、1171…色変換係数群決定部、1172…色変換係数群記憶部、1173…色変換係数群設定部、A…副走査方向、bth1…第1の閾値、bth2…第2の閾値、bth3…第3の閾値、bth4…第4の閾値、S,S,S…画像信号


図1
図2
図3
図4
図5
図6