【文献】
H. Tao, A. Kotsopoulos, J.L. Duarte and M.A.M. Hendrix,Family of multiport bidirectional DC-DC converters,Electric Power Applications, IEE Proceedings,2006年 5月,Vol. 153, No. 3,Page(s):451 - 458
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、電力変換回路10を備える電力変換回路システム100を示す図である。電力変換回路システム100は、電力変換回路10と制御回路50とを含んで構成される。電力変換回路10は、4つの入出力ポートのうちから任意の2つの入出力ポートを選択し、当該2つの入出力ポートの間で電力変換を行う機能を有する。電力変換回路10は、1次側変換回路20と、2次側変換回路30とを含んで構成される。なお、1次側変換回路20と2次側変換回路30とは、変圧器400(センタータップ式変圧器)で磁気結合されている。
【0016】
1次側変換回路20は、1次側フルブリッジ回路200と、第1入出力ポート280と、第2入出力ポート290とを含んで構成される。1次側フルブリッジ回路200は、変圧器400の1次側コイル202と、1次側磁気結合リアクトル204と、1次側左上アーム206と、1次側左下アーム208と、1次側右上アーム210と、1次側右下アーム212とを含んで構成される。ここで、1次側左上アーム206と、1次側左下アーム208と、1次側右上アーム210と、1次側右下アーム212は、それぞれMOSトランジスタと、当該MOSトランジスタに並列に接続されるダイオードで構成されている。
【0017】
1次側正極母線298と1次側負極母線299との間には、1次側左上アーム206と、1次側左下アーム208とを直列接続した1次側左側アーム回路207が取り付けられている。さらに、1次側正極母線298と1次側負極母線299との間には、1次側右上アーム210と、1次側右下アーム212とを直列接続した1次側右側アーム回路211が1次側左側アーム回路207と並列に取り付けられている。
【0018】
1次側左側アーム回路207の中点207mと1次側右側アーム回路211の中点211mを接続するブリッジ部分には、1次側コイル202と1次側磁気結合リアクトル204とが設けられている。ブリッジ部分についてより詳細に接続関係について説明すると、1次側左側アーム回路207の中点207mには、1次側磁気結合リアクトル204aの一方端が接続される。そして、1次側磁気結合リアクトル204aの他方端には、1次側コイル202の一方端が接続される。さらに、1次側コイル202の他方端には、1次側磁気結合リアクトル204bの一方端が接続される。それから、1次側磁気結合リアクトル204bの他方端が1次側右側アーム回路211の中点211mに接続される。なお、1次側磁気結合リアクトル204は、1次側磁気結合リアクトル204aと、その1次側磁気結合リアクトル204aと磁気結合する1次側磁気結合リアクトル204bとを含んで構成される。
【0019】
第1入出力ポート280は、1次側正極母線298と1次側負極母線299との間に設けられるポートである。第1入出力ポート280は、端子602と端子604とを含んで構成される。第2入出力ポート290は、1次側負極母線299と1次側コイル202のセンタータップ202mとの間に設けられるポートである。第2入出力ポート290は、端子604と端子606とを含んで構成される。
【0020】
2次側変換回路30は、2次側フルブリッジ回路300と、第3入出力ポート380と、第4入出力ポート390とを含んで構成される。2次側フルブリッジ回路300は、変圧器400の2次側コイル302と、2次側磁気結合リアクトル304と、2次側左上アーム306と、2次側左下アーム308と、2次側右上アーム310と、2次側右下アーム312とを含んで構成される。ここで、2次側左上アーム306と、2次側左下アーム308と、2次側右上アーム310と、2次側右下アーム312は、それぞれバイポーラトランジスタと、当該バイポーラトランジスタに並列に接続されるダイオードで構成されている。
【0021】
2次側正極母線398と2次側負極母線399との間には、2次側左上アーム306と、2次側左下アーム308とを直列接続した2次側左側アーム回路307が取り付けられている。さらに、2次側正極母線398と2次側負極母線399との間には、2次側右上アーム310と、2次側右下アーム312とを直列接続した2次側右側アーム回路311が2次側左側アーム回路307と並列に取り付けられている。
【0022】
2次側左側アーム回路307の中点307mと2次側右側アーム回路311の中点311mを接続するブリッジ部分には、2次側コイル302と2次側磁気結合リアクトル304とが設けられている。ブリッジ部分についてより詳細に接続関係について説明すると、2次側右側アーム回路311の中点311mには、2次側磁気結合リアクトル304aの一方端が接続される。そして、2次側磁気結合リアクトル304aの他方端には、2次側コイル302の一方端が接続される。さらに、2次側コイル302の他方端には、2次側磁気結合リアクトル304bの一方端が接続される。それから、2次側磁気結合リアクトル304bの他方端が2次側左側アーム回路307の中点307mに接続される。なお、2次側磁気結合リアクトル304は、2次側磁気結合リアクトル304aと、その2次側磁気結合リアクトル304aと磁気結合する1次側磁気結合リアクトル304bとを含んで構成される。
【0023】
第3入出力ポート380は、2次側正極母線398と2次側負極母線399との間に設けられるポートである。第3入出力ポート380は、端子608と端子610とを含んで構成される。第4入出力ポート390は、2次側負極母線399と2次側コイル302のセンタータップ302mとの間に設けられるポートである。第4入出力ポート390は、端子610と端子612とを含んで構成される。
【0024】
制御回路50は、1次側変換回路20と2次側変換回路30のスイッチング素子(MOSトランジスタあるいはバイポーラトランジスタ)のスイッチング制御を行う機能を有する。制御回路50は、電力変換モード決定処理部502と、位相差φ決定処理部504と、オン時間δ決定処理部506と、1次側スイッチング処理部508と、2次側スイッチング処理部510とを含んで構成される。
【0025】
電力変換モード決定処理部502は、図示しない外部信号や後述する制御回路50の外部充電処理部514(
図3参照)からの信号に基づいて、次に述べる電力変換回路10の電力変換モードA〜Lの中から動作モードを選択して決定する。電力変換モードは、第1入出力ポート280から入力された電力を変換して第2入出力ポート290へ出力するモードAと、第1入出力ポート280から入力された電力を変換して第3入出力ポート380へ出力するモードBと、第1入出力ポート280から入力された電力を変換して第4入出力ポート390へ出力するモードCがある。
【0026】
そして、第2入出力ポート290から入力された電力を変換して第1入出力ポート280へ出力するモードDと、第2入出力ポート290から入力された電力を変換して第3入出力ポート380へ出力するモードEと、第2入出力ポート290から入力された電力を変換して第4入出力ポート390へ出力するモードFがある。
【0027】
さらに、第3入出力ポート380から入力された電力を変換して第1入出力ポート280へ出力するモードGと、第3入出力ポート380から入力された電力を変換して第2入出力ポート290へ出力するモードHと、第3入出力ポート380から入力された電力を変換して第4入出力ポート390へ出力するモードIがある。
【0028】
それから、第4入出力ポート390から入力された電力を変換して第1入出力ポート280へ出力するモードJと、第4入出力ポート390から入力された電力を変換して第2入出力ポート290へ出力するモードKと、第4入出力ポート390から入力された電力を変換して第3入出力ポート380へ出力するモードLがある。
【0029】
位相差φ決定処理部504は、電力変換回路10をDC−DCコンバータ回路として機能させるために、1次側変換回路20と2次側変換回路30との間のスイッチング素子のスイッチング周期の位相差φを設定する機能を有する。
【0030】
オン時間δ決定処理部506は、1次側変換回路20と2次側変換回路30をそれぞれ昇降圧回路として機能させるために、1次側変換回路20と2次側変換回路30のスイッチング素子のオン時間δを設定する機能を有する。
【0031】
1次側スイッチング処理部508は、電力変換モード決定処理部502と位相差φ決定処理部504とオン時間δ決定処理部506の出力に基づいて、1次側左上アーム206と、1次側左下アーム208と、1次側右上アーム210と、1次側右下アーム212の各スイッチング素子(MOSトランジスタ)をスイッチング制御する機能を有する。
【0032】
2次側スイッチング処理部510は、電力変換モード決定処理部502と位相差φ決定処理部504とオン時間δ決定処理部506の出力に基づいて、2次側左上アーム306と、2次側左下アーム308と、2次側右上アーム310と、2次側右下アーム312の各スイッチング素子(バイポーラトランジスタ)をスイッチング制御する機能を有する。
【0033】
上記電力変換回路システム100の動作について、
図1を用いて説明する。電力変換回路10の電力変換モードをモードFとして動作させることを要求する外部信号が入力されてきた場合には、制御回路50の電力変換モード決定処理部502は、電力変換回路10の電力変換モードをモードFとして決定する。このとき、第2入出力ポート290に入力された電圧が1次側変換回路20の昇圧機能によって昇圧され、その昇圧された電圧が電力変換回路10のDC−DCコンバータ回路としての機能によって第3入出力ポート側へと伝送され、さらに、2次側変換回路30の降圧機能によって降圧されて第4入出力ポートから出力される。
【0034】
ここで、1次側変換回路20の昇降圧機能について詳細に説明する。第2入出力ポート290と第1入出力ポート280について着目すると、第2入出力ポート290の端子606は、1次側コイル202aと、1次側コイル202aに直列接続される1次側磁気結合リアクトル204aを介して、1次側左側アーム回路207の中点207mに接続される。そして、1次側左側アーム回路207の両端は、第1入出力ポート280に接続されているため、第2入出力ポート290の端子606と第1入出力ポート280との間には昇降圧回路が取り付けられていることとなる。
【0035】
さらに、第2入出力ポート290の端子606は、1次側コイル202bと、1次側コイル202bに直列接続される1次側磁気結合リアクトル204bを介して、1次側右側アーム回路211の中点211mに接続される。そして、1次側右側アーム回路211の両端は、第1入出力ポート280に接続されているため、第2入出力ポート290の端子606と第1入出力ポート280との間には、昇降圧回路が並列に取り付けられていることとなる。なお、2次側変換回路30は、1次側変換回路20とほぼ同様の構成を有する回路であるため、第4入出力ポート390の端子612と第3入出力ポート380との間には、2つの昇降圧回路が並列に接続されていることとなる。したがって、2次側変換回路30は、1次側変換回路20と同様に昇降圧機能を有する。
【0036】
次に、電力変換回路10のDC−DCコンバータ回路としての機能について詳細に説明する。第1入出力ポート280と第3入出力ポート380について着目すると、第1入出力ポート280には、1次側フルブリッジ回路200が接続され、第3入出力ポート380は、2次側フルブリッジ回路300が接続されている。そして、1次側フルブリッジ回路200のブリッジ部分に設けられる1次側コイル202と、2次側フルブリッジ回路300のブリッジ部分に設けられる2次側コイル302とが磁気結合することで、変圧器400(巻き数が1:Nのセンタータップ式変圧器)として機能する。したがって、1次側フルブリッジ回路200と2次側フルブリッジ回路300のスイッチング素子のスイッチング周期の位相差を調整することで、第1入出力ポート280に入力された電力を変換して第3入出力ポート380に伝送し、あるいは、第3入出力ポート380に入力された電力を変換して第1入出力ポート280に伝送させることができる。
【0037】
図2は、制御回路50の制御によって、電力変換回路10に与えられる供給電圧に関するタイミングチャートを示す図である。ここで、V
u1は、1次側左側アーム回路207の中点207mの電位であり、V
v1は、1次側右側アーム回路211の中点211mの電位であり、V
u2は、2次側左側アーム回路307の中点307mの電位であり、V
v2は、2次側右側アーム回路311の中点311mの電位である。
【0038】
ここで、V
u1とV
v1とV
u2とV
v2の各オン時間δを変更することで、1次側変換回路20と2次側変換回路30の昇降圧比を変更することができる。また、V
u1とV
v1との位相差は、180度(π)で動作させ、V
u2とV
v2との位相差も180度(π)で動作させる。さらに、V
u1とV
u2の位相差φを変更することで、1次側変換回路20と2次側変換回路30の間の電力送電量を調整することができ、位相差φ>0であれば、1次側変換回路20から2次側変換回路30に伝送し、位相差φ<0であれば、2次側変換回路30から1次側変換回路20に伝送することができる。
【0039】
したがって、電力変換回路10の電力変換モードをモードFとして動作させることを要求する外部信号が入力されてきた場合に、電力変換モード決定処理部502はモードFを選択することを決定する。そして、オン時間δ決定処理部506は、1次側変換回路20を第2入出力ポート290に入力された電圧を昇圧して第1入出力ポート280に出力する昇圧回路として機能させる場合の昇圧比を規定するオン時間δを設定する。なお、2次側変換回路30では、オン時間δ決定処理部506によって設定されたオン時間δによって規定された降圧比で第3入出力ポート380に入力された電圧を降圧して第4入出力ポート390に出力する降圧回路として機能する。さらに、位相差φ決定処理部504は、第1入出力ポート280に入力された電力を所望の電力送電量で第3入出力ポート290に伝送するための位相差φを設定する。
【0040】
1次側スイッチング処理部508は、1次側変換回路20を昇圧回路として、かつ、1次側変換回路20をDC−DCコンバータ回路の一部として機能させるように、1次側左上アーム206と、1次側左下アーム208と、1次側右上アーム210と、1次側右下アーム212の各スイッチング素子をスイッチング制御する。
【0041】
2次側スイッチング処理部510は、2次側変換回路30を降圧回路として、かつ、2次側変換回路30をDC−DCコンバータ回路の一部として機能させるように、2次側左上アーム306と、2次側左下アーム308と、2次側右上アーム310と、2次側右下アーム312の各スイッチング素子をスイッチング制御する。
【0042】
上記のように、1次側変換回路20および2次側変換回路30を昇圧回路あるいは降圧回路として機能させることができ、かつ、電力変換回路10を双方向DC−DCコンバータ回路としても機能させることができる。したがって、電力変換モードA〜Fの全てのモードの電力変換を行うことができ、換言すれば、4つの入出力ポートのうちから選択された2つの入出力ポート間で電力変換をすることができる。
【0043】
次に、電力変換回路10の各ポートに二次電池等が接続された電力変換回路システム101について説明する。
図3は、電力変換回路システム101を示す図である。電力変換回路システム101は、電力変換回路10と、制御回路50aと、第1入出力ポート280に接続されたキャパシタ51と、第2入出力ポート290に接続された二次電池55と、第3入出力ポート380に接続された二次電池60と、第4入出力ポートに接続される電流センサ71、切替回路72、キャパシタ74、ダイオードブリッジ76、外部交流電源78とを含んで構成される。電力変換回路システム101と電力変換回路システム100との相違は、キャパシタ51、二次電池55、二次電池60、電流センサ71、切替回路72、キャパシタ74、ダイオードブリッジ76、外部交流電源78、負荷65、負荷66、負荷67を有する点と、制御回路50aのSOC読取処理部512、外部充電処理部514、昇温処理部516、リレー切替処理部518の機能であるため、その相違点を中心に説明する。
【0044】
負荷65は、車両駆動用の負荷装置であり、例えば、力行回生が可能なモータジェネレータを用いて構成される。二次電池60は、負荷65の要求電力に対して電力供給を行う車両駆動用バッテリであり、例えば、200v〜300vの電圧を出力するリチウムイオン二次電池を用いて構成される。
【0045】
負荷66は、42v〜46v程度の電圧で動作する負荷装置であり、例えば、電動パワーステアリングを用いて構成される。負荷67は、制御システム用の負荷装置である。キャパシタ51は、1次側変換回路20によって昇圧された電圧を蓄積する容量素子である。二次電池55は、負荷66と負荷67の要求電力に対して電力を供給する制御システム用バッテリであり、例えば、12vの電圧を出力する鉛蓄電池を用いて構成される。そして、二次電池55から出力された12vの電圧が負荷67に供給されるとともに、1次側変換回路20によって昇圧(昇圧比4倍)され、キャパシタ51を介して負荷66に供給される。
【0046】
電流センサ71は、第4入出力ポート390の端子612と切替回路72の第1端子721との間に設けられる電流計である。
【0047】
キャパシタ74は、一方側端子が第4入出力ポート390の端子610と接続され、他方側端子が切替回路72の第2端子722と接続される容量素子である。
【0048】
ダイオードブリッジ76は、ダイオード762,764,766,768を含んで構成されるブリッジ型全波整流回路であり、一方側端子が第4入出力ポートの端子610と接続され、他方側端子が切替回路72の第3端子723と接続される。
【0049】
外部交流電源78は、一方側端子がダイオードブリッジ76のダイオード762とダイオード764との接続点に接続され、他方側端子がダイオードブリッジ76のダイオード766とダイオード768との接続点に接続される。外部交流電源78は、電力会社等の系統電力から供給される商用電源を用いることができ、例えば100vの交流電源が用いられる。
【0050】
切替回路72は、制御回路50aによって切替制御がなされ、第1端子721が第2端子722と接続されたときは第4入出力ポート390にはキャパシタ74が接続されることとなり、第1端子721が第3端子723と接続されたときは第4入出力ポート390にはダイオードブリッジ76を介して外部交流電源78が接続されていることとなる。
【0051】
SOC読取処理部512は、各二次電池の蓄電量SOC(State Of Charge)(ここで、二次電池55のSOCをSOC(S)とし、二次電池60のSOCをSOC(V)とする)を読み取る機能を有する。また、SOC読取処理部512は、二次電池55のSOC(S)が所定の下限蓄電量(SOC
min(S))よりも大きいか否かを判断する機能を有する。さらに、二次電池60のSOC(V)が所定の下限蓄電量(SOC
min(V))よりも大きいか否かを判断する機能を有する。そして、二次電池60のSOC(V)が所定の上限蓄電量(SOC
max(V))よりも小さいか否かを判断する機能を有する。
【0052】
外部充電処理部514は、外部交流電源78からの電力によって二次電池60に対して充電すべき充電電力に関する指令値を算出し、電力変換回路10がモードLとして動作するように電力変換モード決定処理部502に対して指令を与える機能を有する。また、外部充電処理部514は、外部交流電源78からの電力を二次電池60を介して二次電池55を充電する場合にも、充電すべき充電電力に関する指令値を算出し、電力変換回路10がモードHとして動作するように電力変換モード決定処理部502に対して指令を与える機能を有する。さらに、外部充電処理部514は、外部交流電源78の位相変化に応じて電流センサ71によって計測される電流値Iを適宜制御することで、力率改善制御(PFC制御)しながら2次側変換回路30を昇圧回路として動作させる機能を有する。また、外部充電処理部514は、外部交流電源78を用いて二次電池60、二次電池55を充電する2つのモードである充電モード1,2のうち、いずれの充電モードとなるかを設定し、設定した後はいずれの充電モードが設定されているかについて判断する機能を有する。
【0053】
昇温処理部516は、2次側変換回路30に対して昇温制御を行い、二次電池60自身が発生する熱を利用して二次電池60の温度を上昇させる機能を有する。ここで、昇温処理部516によって昇温制御がなされる前には、リレー切替処理部518によって切替回路72の第1端子721の接続先が第2端子722に切り替えられているため、第4入出力ポート390にはキャパシタ74が接続されていることとなる。そして、このときの2次側変換回路30を切り出した図を
図4として記載する。また、二次電池60の内部等価回路を
図5に示す。また、昇温処理部516は、二次電池60の電池温度TBが所定の閾値温度Txよりも大きいか否かを判断する機能を有する。
【0054】
図5に示されるように、二次電池60の内部インピーダンスは、抵抗成分606,610、リアクトル成分608、キャパシタ成分604を有しており、それぞれが変化すると二次電池60の内部インピーダンスも変化する。したがって、二次電池60の内部インピーダンスが最も小さくなるような周波数で2次側変換回路30を動作させることで、二次電池60を流れる電流のピーク値も大きくなり、これにより、二次電池60からの発熱量が大きくなる。
【0055】
このように、内部インピーダンスが最も小さくなるような周波数であり、2次側左側アーム回路307と2次側右側アーム回路311のデューティ比が50%となるようなオン時間δを設定するようにオン時間δ決定処理部506に指令を与え、V
u1とV
u2との位相差φ及びV
v1とV
v2との位相差φも180度(π)で動作するように位相差φ決定処理部504に指令を与える。これにより、キャパシタ74を介して2次側左側アーム回路307と2次側右側アーム回路311には、それぞれ
図6に示される電流307i、311iが流れ、二次電池60には
図6に示されるように60iのように、のこぎり波状の電流が流れるため二次電池60の昇温制御が行える。
【0056】
なお、このとき、内部インピーダンスが最も小さくなる周波数としての周波数を負荷65のモータジェネレータによって走行する動作周波数よりも低く設計することで、変圧器400が飽和して無効化し空芯リアクトルとなるため、1次側変換回路20と2次側変換回路30との間での電力の授受は行われない。これにより、1次側変換回路20の二次電池55の電圧や蓄電量を考慮する制御は必要がない。
【0057】
リレー切替処理部518は、切替回路72の第1端子721の接続先を、第2端子722あるいは第3端子723に切り替える機能を有する。切替回路72の第1端子721の接続先が第2端子722に切り替えられたときは、第4入出力ポート390には、キャパシタ74が接続されていることとなり、切替回路72の第1端子721の接続先が第3端子723に切り替えられたときは、第4入出力ポート390には、ダイオードブリッジ76を介して外部交流電源78が接続されていることとなる。
【0058】
ところで、二次電池55、二次電池60に蓄積された電力を各負荷に対して供給していると、それぞれの二次電池55、二次電池60の蓄電量SOCが少なくなるが、電力変換回路システム101によれば、外部交流電源78の電力を用いて、好適に二次電池55,60を充電することができる。以下に、電力変換回路システム101の動作について説明する。
図7は、外部交流電源78を用いて二次電池55と二次電池60の双方を充電する手順を示すフローチャートである。
【0059】
まず、制御回路50aは、二次電池55,60の蓄電量SOC(S),SOC(V)を読み取る(S10)。この工程は、制御回路50aのSOC読取処理部512の機能によって実行される。
【0060】
次に、二次電池55のSOC(S)が所定の下限蓄電量(SOC
min(S))よりも大きいか否かが判断される(S12)。この工程は、制御回路50aのSOC読取処理部512の機能によって実行される。二次電池55のSOC(S)が所定の下限蓄電量(SOC
min(S))よりも大きいと判断されると、S22の工程へと進む。
【0061】
二次電池55のSOC(S)が所定の下限蓄電量(SOC
min(S))よりも小さいと判断されると、二次電池60のSOC(V)が所定の下限蓄電量(SOC
min(V))よりも大きいか否かが判断される(S14)。この工程は、制御回路50aのSOC読取処理部512の機能によって実行される。
【0062】
S14の工程において、二次電池60のSOC(V)が所定の下限蓄電量(SOC
min(V))よりも大きいと判断されると、二次電池60から二次電池55に電力が伝送されるように、電力変換回路10をモードHとして動作させる(S16)。この工程は、制御回路50aの外部充電処理部514と電力変換モード決定処理部502の機能によって実行される。S16の工程の後は、S12の工程へと進む。
【0063】
S14の工程において、二次電池60のSOC(V)が所定の下限蓄電量(SOC
min(V))よりも小さいと判断されると、充電モードを1として設定する(S18)。この工程は、制御回路50aの外部充電処理部514の機能によって実行される。
【0064】
S18の工程の後は、二次電池60に対して必要な充電電力の最大指令値を算出する(S28)。この工程は、制御回路50aの外部充電処理部514の機能によって実行される。そして、切替回路72の第1端子721の接続先を第3端子723に切り替える(S30)。この工程は、リレー切替処理部518の機能によって実行される。
【0065】
S30の工程の後は、外部交流電源78の交流電力がダイオードブリッジ76によって全波整流され、その電力が2次側変換回路30によって昇圧されて二次電池60に充電される。ここで、電力変換回路10をモードLとして動作するため、2次側変換回路30は昇圧回路として機能するが、このとき力率改善制御(PFC制御)が行われるように制御される。この工程は、制御回路50aの外部充電処理部514、電力変換モード決定処理部502の機能によって実行される。
【0066】
S32の工程の後は、切替回路72の第1端子721の接続先を第2端子722に切り替える(S33)。この工程は、リレー切替処理部518の機能によって実行される。それから、充電モードが1であるか2(充電モードが2の場合についてはS26の工程で説明する)であるかを判断する(S20)。この工程は、制御回路50aの外部充電処理部514の機能によって実行される。S20の工程において、充電モードが1と判断されたときは、S12の工程へと進む。また、S20の工程において、充電モードが2と判断されたときは、S22の工程へと進む。
【0067】
S22の工程では、二次電池60のSOC(V)が所定の上限蓄電量(SOC
max(V))よりも小さいか否かが判断される(S22)。この工程は、制御回路50aのSOC読取処理部512の機能によって実行される。S22の工程において、二次電池60のSOC(V)が所定の上限蓄電量(SOC
max(V))よりも小さいと判断されたときは、二次電池60の電池温度TBが所定の閾値温度Txよりも大きいか否かが判断される(S24)。この工程は、制御回路50aの昇温処理部516の機能によって実行される。S24の工程において、二次電池60の電池温度TBが所定の閾値温度Txよりも大きいと判断されたときは、充電モードを2として設定する(S26)して、S28の工程へと進む。この工程は、制御回路50aの外部充電処理部514の機能によって実行される。
【0068】
S24の工程において、二次電池60の電池温度TBが所定の閾値温度Txよりも小さいと判断されたときは、二次電池60のSOC(V)が所定の下限蓄電量(SOC
min(V))よりも小さいか否かが判断される(S40)。この工程は、制御回路50aのSOC読取処理部512の機能によって実行される。S40の工程において、二次電池60のSOC(V)が所定の下限蓄電量(SOC
min(V))よりも大きいと判断されたときは、S26の工程へと進む。
【0069】
S40の工程において、二次電池60のSOC(V)が所定の下限蓄電量(SOC
min(V))よりも小さいと判断されたときは、切替回路72の第1端子721の接続先を第2端子722に切り替える(S38)。この工程は、リレー切替処理部518の機能によって実行される。
【0070】
S38の工程の後は、2次側変換回路30に対して昇温制御を行い、二次電池60自身が発生する熱を利用して二次電池60の温度を上昇させる(S34)。この工程は、昇温処理部516の機能によって実行される。S34の工程の後は、S24の工程へと進む。
【0071】
S22の工程において、二次電池60のSOC(V)が所定の上限蓄電量(SOC
max(V))よりも大きいと判断されたときは、切替回路72の第1端子721の接続先を第2端子722に切り替える(S36)。この工程は、リレー切替処理部518の機能によって実行される。S36の工程の後はEND処理へと進む。
【0072】
上記のように、電力変換回路システム101によれば、制御システム用バッテリである二次電池55の蓄電量SOC(S)が不足している場合に、車両駆動用バッテリである二次電池60の蓄電量SOC(V)が十分であれば、二次電池60から二次電池55に電力が伝送されるように制御することで二次電池55の蓄電量SOC(S)を補充することができる。
【0073】
そして、二次電池55の蓄電量SOC(S)が不足している場合に、二次電池60の蓄電量SOC(V)も不足していれば、一旦外部交流電源78を用いて二次電池60を充電し二次電池60の蓄電量SOC(V)を十分な状態とし、その後二次電池60から二次電池55に電力が伝送されるように制御することで二次電池55の蓄電量SOC(S)を補充することができる。
【0074】
また、電力変換回路システム101によれば、二次電池55と二次電池60のうち、二次電池55の充電を優先的に行い、二次電池55の蓄電量SOC(S)が十分であることが確認されてから、二次電池60の充電の必要性について判断されている。このとき、二次電池60の蓄電量SOC(V)が不足していると判断され、二次電池60の温度TBが低温状態で、かつ、蓄電量SOC(V)が所定の下限蓄電量(SOC
min(V))よりも下回っている場合には、2次側変換回路30を昇温制御して二次電池60の温度を上昇させることで、外部交流電源78を用いる充電を好適に行わせることができる。