(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、中間軸受をすべり軸受や転がり軸受で構成した場合は、依然として筒状ケーシングと回転部分との隙間から被運搬物が軸受側に流入する可能性は否めず、ダストシールやオイルシール等のシール類のメンテナンスが必要不可欠となってしまう。また、供給される潤滑剤の戻りラインがない場合は、潤滑剤は隙間から軸受に混入したダスト等と共に被運搬物に混入する状態で排出されることがある。このような場合は、潤滑剤の混入が許されない被運搬物にはスクリュコンベヤを用いることができなくなってしまう。
【0007】
更に、被運搬物を大量に運搬するために筒状ケーシングやスクリュが大型化する場合には、軸受部の回転周速が速くなるため、シール類の損傷の可能性が大きくなり、同様にメンテナンスが必要となる。そして、シール類の破損により潤滑剤が被運搬物に混入することも想定されるため、被運搬物の種類に制限がかけられることとなる。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、多様な被運搬物をスムーズに運搬することができると共に、メンテナンス等のコストを削減しつつ大型化が可能なスクリュコンベヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るスクリュコンベヤは、筒状ケーシングと、この筒状ケーシング内に回転軸を中心として回転自在に収容されたスクリュと、前記筒状ケーシングに装着されて前記スクリュを外周側から回転可能に軸支する軸受部とを備えたスクリュコンベヤであって、前記軸受部は、前記スクリュの外周部に接続されると共に前記回転軸と同心配置された回転リングと、この回転リングを収容し前記筒状ケーシングに固定された軸受ケーシングと、前記軸受ケーシング内で前記回転リングの周方向に沿って前記回転リングと対向配置され、前記回転リングとの対向面に前記回転リングの回転運動による荷重を受ける複数の圧力発生部を形成する固定部材と、前記各圧力発生部に軸受作動媒体を供給する軸受作動媒体供給手段とを備え、前記複数の圧力発生部に供給された軸受作動媒体の圧力で前記回転リングを無接触で回転可能に支持する流体軸受部であることを特徴とする。
【0010】
前記筒状ケーシング及び前記スクリュは、例えばコンベヤユニットを構成し、複数の前記コンベヤユニットが前記スクリュの回転軸方向に連結され、前記軸受部は、前記コンベヤユニットの連結部の近傍に配置される。
【0011】
前記回転リングは、例えば円筒状に形成され、前記固定部材は、前記回転リングの外周面に対向する面に前記複数の圧力発生部を形成し、前記回転リングのラジアル方向の荷重を受けるように構成される。
【0012】
前記スクリュの回転軸は、例えば垂直方向に配置され、前記回転リングは、前記回転軸と直交する方向に延出形成された鍔状の回転フランジ部を有し、前記固定部材は、前記回転フランジ部の回転軸方向の少なくとも一方の面と対向する面に前記複数の圧力発生部を形成し、前記回転リングの回転軸方向の少なくとも一方に向かうスラスト方向の荷重を受けるように構成される。
【0013】
前記複数の圧力発生部は、例えば複数の固定部材にそれぞれ個別に形成されて前記回転リングの周方向に沿って等間隔に配置される。
【0014】
前記軸受作動媒体は、前記軸受作動媒体供給手段から前記各圧力発生部に対応して設けられた軸受作動媒体供給通路を介して供給されると共に、前記筒状ケーシングの内側及び前記軸受ケーシングに設けられた排出口から排出されるとよい。
【0015】
前記軸受作動媒体は、前記圧力発生部毎に流量を制御する流量制御弁を介して個別に供給されてもよい。
【0016】
前記軸受作動媒体は、前記流量制御弁の代わりに、前記圧力発生部毎に上限流量を制限する制限オリフィスを介して個別に供給されてもよい。
【0017】
前記軸受作動媒体は、前記排出口から前記軸受ケーシング内の圧力を所定の条件に保つための圧力制御弁を介して排出されることが好ましい。
【0018】
前記スクリュの回転軸は、垂直方向に配置されていてもよい。これにより、垂直スクリュコンベヤを構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多様な被運搬物をスムーズに運搬することができ、メンテナンス等のコストを削減しつつ大型化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付の図面を参照して、この発明に係るスクリュコンベヤの実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るスクリュコンベヤの全体構成を示す図である。
図2は、同スクリュコンベヤの中間軸受部を示す断面図である。
図3は、同中間軸受部の一部拡大断面図である。また、
図4は
図2のA−A’断面図、
図5は
図2のB−B’断面図、
図6は
図2のC−C’断面図、
図7は
図2のD−D’断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るスクリュコンベヤ100は、被運搬物として粉体物、細粒物、塊状物及び高水分物などを垂直方向に運搬可能に構成される。スクリュコンベヤ100は、垂直方向に連結された複数のコンベヤユニット2と、これらコンベヤユニット2の連結部近傍に設けられた中間軸受部としての第1及び第2の流体軸受部10,20とを備えて構成されている。
【0023】
コンベヤユニット2は、筒状のケーシング2aと、ケーシング2a内に回転自在に配置された回転軸3aを有するスクリュ3とを備えて構成されている。複数のコンベヤユニット2は、隣接するケーシング2aがそれらの端部で各流体軸受部10,20を介して垂直方向に接続され、隣接するスクリュ3が、それらの回転軸3aの接続端3b部にて垂直方向に連結されることにより、全体が垂直方向に連結されている。ケーシング2aには、接続端3b部をケーシング2aの外部から点検可能とするための点検口2bが設けられている。
【0024】
また、最下部のコンベヤユニット2には、被運搬物を水平方向に運搬する既知の水平コンベヤユニット101が接続されている。水平コンベヤユニット101から最下部のコンベヤユニット2に搬送された被運搬物は、複数のコンベヤユニット2により垂直方向の上方に運搬される。最上部のコンベヤユニット2には、スクリュ3を回転させるための駆動機1及びスクリュ3をスラスト方向及びラジアル方向に軸支する転がり軸受が配置された軸受部1aと、ケーシング2a内の被運搬物を次工程機器1cに送り出すための送出口1dとが設けられている。
【0025】
第1の流体軸受部10は、複数のコンベヤユニット2のうち、中央部分の連結部に設けられ、スクリュ3をスラスト方向及びラジアル方向に軸支する。また、第2の流体軸受部20は、第1の流体軸受部10の上下に配置され、スクリュ3をラジアル方向に軸支する。これら流体軸受部10,20の詳細な構造については後述するが、内部に無接触軸受のための圧力発生部としての複数の圧力室を有している。
【0026】
また、スクリュコンベヤ100は、作動媒体供給源5からフィルタ6aを通して供給された軸受作動媒体を各流体軸受部10,20に供給するための軸受作動媒体供給機5aと、軸受作動媒体供給機5aから供給される軸受作動媒体を各流体軸受部10,20に設けられた複数の圧力室に流量を制御して個別に供給するための軸受作動媒体流量制御ユニット5bとを備えて構成されている。なお、軸受作動媒体は、例えば気体や液体などの流体からなる。
【0027】
軸受作動媒体流量制御ユニット5bは、例えばそれぞれ各圧力室に対応した流量制御弁5cを有している。各流体軸受部10,20に供給された軸受作動媒体は、後述する排出口を通ってフィルタ6bに集められる。上記フィルタ6bに集められた軸受作動媒体は、ダストが除去されて圧力制御弁7を通過する。ダストは、水平コンベヤユニット101に戻される。
【0028】
フィルタ6bを通った軸受作動媒体は、圧力制御弁7で第1及び第2流体軸受部10,20内の圧力を所定の条件に保つ調整が行われた上で、水平コンベヤユニット101に排出される。なお、水平コンベヤユニット101に排出する代わりに、軸受作動媒体供給源5に排出することもできる。また、水平コンベヤユニット101として、上述したコンベヤユニット2を垂直方向ではなく水平方向に配置して適用することも可能である。
【0029】
次に、第1の流体軸受部10の詳細について説明する。
スクリュ3には、
図2及び
図3に示すように、回転軸3aの接続端3b近傍の外周側に、ケーシング2aの接続端間に配置されると共に回転軸3aと同心配置された筒状の回転リング30が接続されている。第1の流体軸受部10は、この回転リング30と、回転リング30のラジアル方向及びスラスト方向の荷重を無接触に受ける固定側の部材とを備えて構成されている。
【0030】
ラジアル方向及びスラスト方向の荷重を受けるため、回転リング30は、ラジアル軸受用の筒状体32と、この筒状体32の上端に径方向外側に延びるスラスト軸受用の鍔状の回転フランジ部31とを有する。そして、第1の流体軸受部10は、固定側の部材として、リング状の上部フランジ部14、L字断面を有するリング状の下部フランジ部15及びこれらの外周縁部を連結する外周リング12により形成される軸受ケーシング16を備える。軸受ケーシング16は、内部に回転リング30を収容する。軸受ケーシング16の内部には、回転リング30の筒状体32の外周面と対向する垂直固定リング11と、回転リング30の回転フランジ部31の下面と対向する水平固定リング13とが配置されている。垂直固定リング11と水平固定リング13とは、それぞれ作動媒体供給通路19a,19bをそれぞれ介して外周リング12に固定されている。なお、第1の流体軸受部10を構成するこれら各部は、例えばボルト等によりそれぞれ所定位置に固定されている。
【0031】
垂直固定リング11の筒状体32の外周面30aに対向する面11aには、複数のラジアル軸受圧力室11bが形成されている。ラジアル軸受圧力室11bは、筒状体32の外周面30aに向かった開口を有する。そして、ラジアル軸受圧力室11bの周壁11c先端と筒状体32の外周面30aとの間には、軸受作動媒体流量制御ユニット5bから軸受作動媒体供給通路19aを通って供給された軸受作動媒体がラジアル軸受圧力室11bに導入されることにより、所定の隙間が形成されるようになっている。これにより、ラジアル軸受圧力室11bは、回転リング30のラジアル方向の荷重を無接触で受けることができる。
【0032】
また、水平固定リング13の回転フランジ部31の下面31aに対向する面13aには、複数のスラスト軸受圧力室13bが形成されている。スラスト軸受圧力室13bは、回転フランジ部31の下面31aに向かった開口を有する。そして、スラスト軸受圧力室13bの周壁13c先端と回転フランジ部31の下面31aとの間には、軸受作動媒体流量制御ユニット5bから軸受作動媒体供給通路19bを通って供給された軸受作動媒体がスラスト軸受圧力室13bに導入されることにより、所定の隙間が形成されるようになっている。これにより、スラスト軸受圧力室13bは、回転リング30の下方に向かうスラスト方向の荷重を無接触で受けることができる。
【0033】
更に、上部フランジ部14の回転フランジ部31の上面31bに対向する面14aには、複数のスラスト軸受圧力室14bが形成されている。スラスト軸受圧力室14bは、回転フランジ部31の上面31bに向かった開口を有する。そして、スラスト軸受圧力室14bの周壁14c先端と回転フランジ部31の上面31bとの間には、軸受作動媒体流量制御ユニット5bから上部フランジ部14を貫通するように形成された軸受作動媒体供給通路19cを通って供給された軸受作動媒体がスラスト軸受圧力室14bに導入されることにより、所定の隙間が形成されるようになっている。これにより、スラスト軸受圧力室14bは、回転リング30の上方に向かうスラスト方向の荷重を無接触で受けることができる。
【0034】
回転リング30の上方に向かうスラスト方向の荷重が作用しない場合は、スラスト軸受圧力室14bの周壁14c先端と回転フランジ部31の上面31bとの間には、後述するように、上記所定の隙間よりも大きな隙間が形成されるように設定される。
【0035】
なお、ラジアル軸受圧力室11b及びスラスト軸受圧力室13b,14bの周壁11c,13c,14cは、その先端に向かって周壁外周側から周壁内周側へテーパ状に狭まる断面形状となるように構成されている。各圧力室11b,13b,14bは、
図4〜
図6に示すように、例えば回転リング30の周方向に沿って等間隔に8箇所ずつ形成されている。
【0036】
これらの圧力室11b,13b,14bから上記所定の隙間を通過した軸受作動媒体は、第1の流体軸受部10の軸受ケーシング16内に流出し、下部フランジ部15に設けられた排出口18から排出される。また、軸受ケーシング16内の軸受作動媒体の一部は、軸受ケーシング16と回転リング30との間、具体的には上部フランジ部14と回転リング30との間の隙間、及び下部フランジ部15の周壁部15aと回転リング30の筒状体32との間の隙間から、ケーシング2aの内側に排出される。
【0037】
これらの隙間には、軸受ケーシング16内の軸受作動媒体がケーシング2a内に流入する量を制限する流体抵抗部として、回転リング30に形成されたラビリンス部33a,33bが設けられている。ラビリンス部33a,33bは、例えば螺旋状に形成され、上記流体抵抗部としての機能のみならず、回転リング30の回転に伴ってケーシング2a内から隙間へ入ってくる被運搬物をケーシング2a内に押し戻すことができるような構造となっている。従って、第1の流体軸受部10からケーシング2a内に流入する軸受作動媒体の量を制限することができると共に、軸受ケーシング16内に入ってくる被運搬物の量を最小限に止めることができる。
【0038】
なお、
図4に示すように、例えば水平固定リング13には垂直方向に複数の貫通穴13eが形成されており、スラスト軸受圧力室13b,14bから流出した軸受作動媒体やこの軸受作動媒体と同伴されるラビリンス部33aを越えて入ってきた被運搬物などが軸受ケーシング16内の排出口18側に自在に移動できるように構成されている。
【0039】
また、
図4及び
図5に示すように、水平固定リング13及び上部フランジ部14のスラスト軸受圧力室13b,14bの周辺には、スクリュコンベヤ100の組立時やコンベヤユニット2の輸送時などに、回転リング30の回転フランジ部31がスラスト軸受圧力室13b,14bのエッジ状の周壁13c,14cに接して周壁13c,14cを破損させることがないように支持する平軸受13d,14dが形成されている。
【0040】
同様に、
図6に示すように、垂直固定リング11のラジアル軸受圧力室11bの周辺には、上記組立時や輸送時などに、回転リング30の筒状体32がラジアル軸受圧力室11bのエッジ状の周壁11cに接して周壁11cを破損させることがないように支持する平軸受11dが形成されている。
【0041】
また、第1の流体軸受部10の近傍におけるスクリュ3の回転軸3aの接続端3bは、
図2及び
図7に示すように、撓み板継手3dを介して接続されている。撓み板継手3dは、設定された許容範囲内において回転軸3aの軸方向への伸縮とある程度の傾きを許容するために設けられている。これにより、スクリュ3は、第1の流体軸受部10の近傍にて回転軸3aの伸縮と傾きをある程度許容しながら回転することができるように接続された構造を備えている。なお、圧力制御弁7で上述した圧力調整を行うことで、ラビリンス部33a,33bを越えてケーシング2a内に流入する軸受作動媒体の速度を適切に維持することができると共に、軸受ケーシング16と回転リング30との間の隙間に入ってくる被運搬物の量を最小限に止め、ラビリンス部33a,33bの損傷を軽減することができる。
【0042】
次に、第2の流体軸受部20の詳細について説明する。
図8は、スクリュコンベヤ100の中間軸受部を示す断面図である。また、
図9は、
図8のE−E’断面図である。なお、以降において、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を附して説明を省略することがあるとする。第2の流体軸受部20は、回転リング30と、この回転リング30のラジアル方向の荷重のみを複数の圧力室で無接触に受ける固定側の部材とを備えて構成されている。
【0043】
第2の流体軸受部20は、基本的には上述した第1の流体軸受部10と同様に、回転リング30と、垂直固定リング21、外周リング22、上部フランジ部24及び下部フランジ部25とを備えて構成されているが、外周リング22には上述したような水平固定リング13は設けられていない。また、第2の流体軸受部20には、垂直固定リング21の筒状体32の外周面30aに対向する面21aに形成された複数のラジアル軸受圧力室21bのみが設けられている。
【0044】
ラジアル軸受圧力室21bは、筒状体32の外周面30aに向かった開口を有する。そして、ラジアル軸受圧力室21bの周壁21c先端と筒状体32の外周面30aとの間には、軸受作動媒体流量制御ユニット5bから軸受作動媒体供給通路19aを通って供給された軸受作動媒体がラジアル軸受圧力室21bに導入されることにより、所定の隙間が形成されるようになっている。これにより、ラジアル軸受圧力室21bは、回転リング30のラジアル方向の荷重を無接触で受けることができる。
【0045】
また、
図9に示すように、垂直固定リング21のラジアル軸受圧力室21bの周辺には、スクリュコンベヤ100の組立時やコンベヤユニット2の輸送時などに、回転リング30の筒状体32がラジアル軸受圧力室21bのエッジ状の周壁21cに接して周壁21cを破損させることがないように支持する平軸受21dが形成されている。その他の構成や作用効果は、上記ラジアル軸受圧力室11bと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0046】
なお、第2の流体軸受部20の近傍におけるスクリュ3の回転軸3aの接続端3bは、
図8に示すように、リジッド継手3eを介して接続されている。リジッド継手3eは、上記撓み板継手3dとは異なり、回転軸3a同士を動かないように固定する。
【0047】
このように構成されたスクリュコンベヤ100では、第1の流体軸受部10でスクリュ3のラジアル方向及びスラスト方向の荷重を無接触で受けると共に、第2の流体軸受部20でスクリュ3のラジアル方向の荷重を無接触で受けることができる。これにより、
図2及び
図8に示すように、公知の軸受ステー等の部材が不要となり、スクリュ3の不連続部3cを最小限にする構成が可能となる。
【0048】
また、軸受作動媒体を窒素ガスなどにより構成すれば、爆発性を有する被運搬物などにも良好に適用することができ、多様な被運搬物をスムーズに運搬することができる。更に、中間軸受部が軸受作動媒体による無接触な流体軸受部10,20により構成されているので、スクリュ3を高速回転させることができると共に油脂類やシール類が不要となりメンテナンス等のコストを削減しつつ大型化が可能となる。
【0049】
ここで、第1及び第2の流体軸受部10,20の各圧力室に供給する軸受作動媒体の流量を制御する理由について説明する。ここでは、説明を簡略化するため、第1の流体軸受部10のラジアル軸受圧力室11bを例に挙げて説明する。まず、垂直固定リング11の中心と回転リング30の中心とが一致している場合は、ラジアル軸受圧力室11bの周壁11c先端と筒状体32の外周面30aとの間の隙間は、理論的に8箇所とも同一の状態となり、供給される軸受作動媒体の流量も全て同一となる。
【0050】
この場合、各ラジアル軸受圧力室11b内の軸受作動媒体による圧力は同一となり、回転リング30には外周側から中心方向に同一の力が加わっていることとなり、回転リング30の中心は移動することができない状態となる。
【0051】
一方、垂直固定リング11の中心と回転リング30の中心とがずれた場合は、回転軸3aがずれたこととなり、ラジアル軸受圧力室11bの周壁11c先端と筒状体32の外周面30aとの間の隙間には、広がるところと狭まるところとの差異が生じることとなる。この隙間が大きいとラジアル軸受圧力室11b内の圧力が低下し、隙間が小さいとラジアル軸受圧力室11b内の圧力は上昇する。この結果、回転リング30には各圧力室の圧力差異により異なった大きさの力が作用することとなる。
【0052】
この場合、上述したように隙間が同一となる方向に回転リング30を移動させるように力が作用する。これを1つのラジアル軸受圧力室11bについて式で示すと次のように表すことができる。
【0053】
[数1]
Q=C・v・Lt・hc・・・式1
v={2g/γ・(Pc−Pa)}^0.5・・・式2
F=S・(Pc−Pa)・・・式3
ただし、
Q:軸受作動媒体の流量(m
3/sec)
C:隙間から流出する軸受作動媒体の縮流係数
v:隙間から流出する軸受作動媒体の速度(m/sec)
Lt:圧力室の周壁の代表周長(m)
hc:隙間(m)
g:重力加速度(9.80665=1.0G)(m/sec
2)
γ:軸受作動媒体の比重量(kg/m
3)
Pc:圧力室内の軸受作動媒体の圧力(kg/m
2)
Pa:圧力室外の雰囲気圧力(kg/m
2)
F:1つの圧力室が回転リングに及ぼす中心方向の力(kgf)
S:圧力室の周壁の代表周により囲まれる面の圧力室の平断面上における中心線に直角な平面への投影面積(m
2)
【0054】
上記式3で示される力以外にケーシング2a内の圧力と雰囲気圧力Paとの差に起因する力が回転リング30の外周側から加わるが、それらの力はお互いに打ち消し合い、外力としては作動しないので無視することができる。そして、上記式1と式2から次のようになる。
【0055】
[数2]
Q=C・{2g/γ・(Pc−Pa)}^0.5・Lt・hc
Pc−Pa={Q/(C・Lt・hc)}^2・(γ/2g)=α・(1/hc)^2
ただし、α={Q/(C・Lt)}^2・(γ/2g)
【0056】
軸受作動媒体の流量Qは、流量制御弁5cにより一定の流量が保たれる。従って、αは定数として扱うことができる。更に、上記式3より、次式を得ることができる。
【0057】
[数3]
F=S・(Pc−Pa)=S・α・(1/hc)^2・・・式4
【0058】
この式4により1つの圧力室が回転リング30に及ぼす中心方向の力Fを表すことができる。上述した流量制御弁5cを通過し、軸受作動媒体が流量一定に制御されて圧力室に供給される場合には、発生する中心方向の力Fは隙間hcの逆数の2乗に比例する。
【0059】
更に説明を簡略化するため、対向配置された一組のラジアル軸受圧力室11bと回転リング30とを例に挙げて説明する。垂直固定リング11と回転リング30との中心が一致している場合は、隙間hcはそれぞれ同一となる。従って、それぞれのラジアル軸受圧力室11bによる中心方向の力をF1o,F2oとすると、上記式4からF1o=F2oとなる。
【0060】
一方、垂直固定リング11と回転リング30との中心がずれて、ラジアル軸受圧力室11bの一方の中心方向の力をF1、隙間をhc1とし、他方の中心方向の力をF2、隙間をhc2として、回転リング30の中心のずれ量が他方のラジアル軸受圧力室11b側にhc/2だったとすると、各隙間は次のように求められる。
【0061】
[数4]
hc1=hc+hc/2=1.5hc
hc2=hc−hc/2=hc/2
【0062】
また、発生する各中心方向の力は次のように求められる。
【0063】
[数5]
F1=(1/2.25)・S・α・(1/hc)^2
F2=4・S・α・(1/hc)^2
【0064】
従って、回転リング30の中心を戻そうとする復元力は、次のようになる。
【0065】
[数6]
F2−F1=3.56・S・α・(1/hc)^2・・・式5
【0066】
上述したように、垂直固定リング11の中心と回転リング30の中心とが一致した状態(隙間はhcで同一の状態)から回転リング30の中心がずれ量hc/2だけずれを生じた場合は、中心方向の力F1,F2には上記式5で計算される差異が生じることとなる。すなわち、中心が一致している状態で各圧力室が発生している中心方向の力F1o=F2oの3.56倍の復元力が中心のずれを修正する方向に作用する。
【0067】
なお、各圧力室に供給する軸受作動媒体の流量を制御しない場合は、上記式4における隙間hcと定数αは変数となる。垂直固定リング11及び回転リング30の中心がずれて隙間hcが大きくなって上記隙間hc1となった場合、軸受作動媒体の流量Qと圧力室内の圧力との関係は、軸受作動媒体の供給通路系の特性に依存することとなる。
【0068】
従って、この供給通路系の軸受作動媒体の流量に対する抵抗が小さい場合には、隙間が大きくなり軸受作動媒体の流量Qが増加してもラジアル軸受圧力室11b内の圧力があまり低下せず、結果として生じる中心方向の力F1はF1oとあまり変わらなくなる可能性もあり得る。同様に、隙間hcが小さくなって上記隙間hc2となった場合、軸受作動媒体の流量Qが少なくなるだけで、ラジアル軸受圧力室11b内の圧力があまり上昇せず、結果として生じる中心方向の力F2とF2oとにあまり差異が生じなくなる可能性もあり得る。
【0069】
このような場合には、垂直固定リング11と回転リング30との中心がずれたとしても、中心方向の力F1,F2の差異が小さく、十分な復元力が生じなくなるということに他ならない。つまり、この場合は、回転リング30から加わるラジアル方向の力への対抗反力が不足することとなり、ラジアル軸受としては適さないことを意味している。
【0070】
上記事項から、第1の流体軸受部10をラジアル軸受として適用するために、軸受作動媒体を軸受作動媒体流量制御ユニット5bにより流量Qを一定にしてラジアル軸受圧力室11bに供給することは、非常に有効な手段となる。本実施形態に係るスクリュコンベヤ100のように、軸受作動媒体の流量Qを一定に制御して圧力室に供給する場合には、垂直固定リング11と回転リング30の中心のずれに伴い隙間が圧力室毎に異なって各圧力室内の圧力が異なり、結果として各圧力室が回転リング30に与える力は異なることとなる。そして、これらの各力の方向を考慮した分力の総和に等しい復元力が得られるので、軸受としての機能を有効に果たすことが可能となる。
【0071】
なお、第1の流体軸受部10のスラスト軸受圧力室13b,14bに加わる荷重は、例えばスクリュコンベヤ100が被運搬物を運搬しているときと無負荷で運転されているときとでは大きく異なる。従って、軸受作動媒体を流量Qを一定に制御して供給することは、スラスト軸受圧力室13b,14bに加わる荷重が大きく異なって例えば荷重が小さくなっても、軸受ケーシング16内への過度の流入を防止することにつなげることができる。
【0072】
また、スラスト軸受の役割は、ほとんどの場合スラスト軸受圧力室13bによって下向きのスラスト方向の荷重を受けることにあるが、スラスト軸受圧力室14bは、スクリュ3に上向きのスラスト方向の力が発生して回転リング30が上昇したときに上部フランジ部14との接触を防止する目的で設けられている。
【0073】
従って、スクリュコンベヤ100が正常な運転状態にあれば、スラスト軸受圧力室14bの圧力は必要最低限の圧力に維持され、この圧力により発生する下向きの回転リング30に加わる力を最小限に維持することが望ましい。このため、スラスト軸受圧力室14bの周壁14c先端と回転フランジ部31の上面31bとの間の隙間は大きくなるように設定される。これにより、軸受作動媒体を流量Qを一定に制御して供給し、スラスト軸受に加わる荷重が小さくなっても軸受ケーシング16内への過度の流入を防止することができる。なお、上記式は、軸受作動媒体の圧力室内における圧力が低い場合に適した式の一例であり、圧力室内における圧力が高い場合は別途異なる式を用いて軸受作動媒体の流量を制御するようにすれば良い。
【0074】
次に、その他の流体軸受部について説明する。
図10は、スクリュコンベヤ100の中間軸受部を示す断面図である。
図11は、
図10のF−F’断面図である。
図12は、
図10のG−G’断面図である。中間軸受部としての第3の流体軸受部40は、
図1等に示した第1の流体軸受部10の代わりに配置することができるものである。
【0075】
すなわち、
図10〜
図12に示すように、第3の流体軸受部40は、外周リング42、上部フランジ部44及び下部フランジ部45を備える点は第1の流体軸受部10と同様であるが、ラジアル軸受圧力室41b、スラスト軸受圧力室43b,44bが、垂直固定リング41、水平固定リング43及び上部フランジ部44にそれぞれ個別に作製されて取り付けられている点が相違している。
【0076】
ラジアル軸受圧力室41bは、例えば外周リング42に作動媒体供給通路19aを介して取り付けられた垂直固定リング41の内周面に取り付けられた圧力室構成部材41eに設けられ、スラスト軸受圧力室43bは、外周リング42に作動媒体供給通路19bを介して取り付けられた水平固定リング43の上面に取り付けられた圧力室構成部材43eに設けられている。また、スラスト軸受圧力室44bは、上部フランジ部44の下面に取り付けられた圧力室構成部材44eに設けられている。各圧力室の周辺には上述したような平軸受も設けられている(
図12にて平軸受43d,44dのみ図示)。また、垂直固定リング41、水平固定リング43及び上部フランジ部44と各圧力室構成部材41e,43e,44eとの軸受作動媒体供給通路19a,19b,19cの周囲の接続箇所には、軸受作動媒体の漏れを防止するためのOリング49がそれぞれ配置されている。このように構成された第3の流体軸受部40によっても、第1の流体軸受部10と同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
なお、上述した実施形態においては、軸受作動媒体流量制御ユニット5bにおいて、各圧力室毎に流量制御弁5cによって軸受作動媒体の流量を制御することを例に挙げて説明したが、この流量制御弁5cの代わりに、例えば上限流量を制限する制限オリフィスを採用するようにしても良い。また、上述した実施形態においては、複数の圧力発生部として周壁を有する凹状断面の圧力室を例に挙げて説明したが、圧力室発生部は、この圧力室の他に、例えば上記圧力室から周壁を除いたような形状のものにより構成されていてもよい。