【実施例】
【0038】
次に、実施例および比較例を用いて本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例に記載の評価方法は以下の通りである。
【0039】
(1)耐ガス浸透性試験
この試験の説明図を
図2に示す。内容積350ccの2つのガラスセル(上方セル6と下方セル11)で試験品9を挟み込み、周囲をパラフィン10により密閉する。この試験容器の上方セル6から酢酸3メトキシブチル20μLを試験品9の上に滴下する。これを25±2℃に設定した恒温ボックスに入れ、下方セル11側のガス濃度を所定時間ごと(4,8,12,24,48間経過後)にサンプリング口7からサンプリングし、ガスクロマトグラフィにより試験品9を透過したガス濃度を測定する。
【0040】
(2)耐液浸透性試験
この試験の説明図を
図3に示す。ガラスプレート16上に濾紙15を置き、更にその上に試験品14を置き、試験液13(赤色染料を溶解したフタル酸ジプロピル)10μLを滴下し、所定時間ごと(4,8,12,24,36,48時間経過後)に濾紙の呈色の程度により液の浸透性を判定した。呈色無しは○、わずかに呈色有りは△、呈色有りは×で表示した。
【0041】
(3)溶剤系接着剤の塗布面積の割合(溶剤系接着剤面積率)
溶剤系接着剤を保護層に塗布して、いったんガス吸着層へ貼り合わせた後、両者を剥がし、画像処理機を用いて塗布後の布帛表面の観察を行った。溶剤系接着剤が塗布された部分の面積の総和を、保護層とガス吸着層が積層されている領域の全面積で除して溶剤系接着剤の塗布面積の割合とした。
【0042】
(4)ガス吸着層に対する残存溶剤量の分析方法
ソックスレー抽出装置を用いて、常法によりアセトンで抽出を行った後、ガスクロマトグラフィーで定量分析を実施し、ガス吸着層に対する残存溶剤率を算出した。
【0043】
(4)質量
JIS−L−1018.8.4及びJIS−L−1096.8.4に準拠して測定した。
【0044】
(5)剛軟性(柔軟性)
JIS−L−1096.8.19.2 B法(スライド法)に準拠して測定した。
【0045】
(6)通気性
JIS−L−1096.8.27.1 A法(フラジール形法)に準拠して測定した。
【0046】
(7)比表面積
窒素の吸着等温線を求め、これを基にしてBET法により算出した。
【0047】
(8)ガス平衡吸着量
JIS−K−1477に準拠して測定した。
【0048】
(9)剥離強度
JIS−L−1089.6.10に準拠し、保護層と接着層の界面での剥離強度を測定した。
【0049】
<ガス吸着層の作製>
ガス吸着層として、編物の形態の繊維状活性炭を以下の方法で作製した。単糸繊度2.2dtex、20番手のノボラック系フェノール樹脂繊維紡績糸からなる質量220g/m
2の丸編物を410℃の不活性雰囲気中で30分間加熱し、次に不活性雰囲気中で880℃まで20分間加熱して炭化を進行させ、次に水蒸気を12容量%含有する雰囲気中で890℃の温度で2時間賦活した。得られたガス吸着層は、質量が100g/m
2、比表面積が1400m
2/g、厚さが0.80mm、通気性が水位計1.27cmの圧力差で200cm
3/cm
2・s、トルエン吸着性能(トルエンガス平衡吸着量)が53g/m
2であった。
【0050】
<保護層の作製>
保護層として、トリコット編地を以下の方法で作製した。28ゲージ2枚筬トリコット機により、フロント筬にポリエステルフィラメント(82.5dtex、36フィラメント)を、またバック筬にポリエステルフィラメント(22dtex、モノフィラメント)を各々セットして、フロント1−2/1−0、バック1−0/2−3の組織で経編地を編成した後、定法により精練し、更に分散染料により染色した。得られた保護層は、厚さが0.28mm、質量が80g/m
2、通気性が水位計1.27cmの圧力差で500cm
3/cm
2・sであった。
【0051】
(実施例1)
上記のガス吸着層の一方の面に上記保護層を重ね合わせた後、撥油性ポリエステル糸を用いて2inchピッチでダイヤ柄にキルティング縫合し、2層構造の積層体とした。一方、別の上記の保護層にウレタン樹脂系溶剤系接着剤(DIC株式会社製、クリスボンAH−420 固形分49%)10g/m
2をグラビア方式により接着剤面積率が7%となるように塗布した後、上記の2層構造のガス吸着層の他方の面に保護層の接着剤面を重ね合わせて、全材料をロールにて圧着させた。その後、150℃のオーブンで30分間乾燥させた。そして、さらに積層体を3wt%のフッ素系撥水剤(明成化学工業株式会社製 アサヒガードAG970)の加工浴に浸漬して乾燥した後、170℃で固着処理を施し、撥水剤をバインダー樹脂固形分で0.5wt%付着させた。得られた吸着シートの耐ガス浸透性試験結果、耐液浸透性試験結果、残存溶剤率、剛軟性(柔軟性)、通気性、剥離強度の評価結果をそれぞれ表1から表3に示す。
【0052】
(実施例2)
保護層の接着剤の塗布においてウレタン樹脂系溶剤系接着剤(DIC株式会社製、クリスボンAH−420 固形分49%)25g/m
2をグラビア方式により接着剤面積率が15%となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法により吸着シートを作製した。得られた吸着シートの耐ガス浸透性試験結果、耐液浸透性試験結果、残存溶剤率、剛軟性(柔軟性)、通気性、剥離強度の評価結果をそれぞれ表1から表3に示す。
【0053】
(実施例3)
保護層の接着剤の塗布においてウレタン樹脂系溶剤系接着剤(DIC株式会社製、クリスボンAH−420 固形分49%)40g/m
2をグラビア方式により接着剤面積率が21%となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法により吸着シートを作製した。得られた吸着シートの耐ガス浸透性試験結果、耐液浸透性試験結果、残存溶剤率、剛軟性(柔軟性)、通気性、剥離強度の評価結果をそれぞれ表1から表3に示す。
【0054】
(実施例4)
保護層の接着剤の塗布においてウレタン樹脂系溶剤系接着剤(DIC株式会社製、クリスボンAH−420 固形分49%)40g/m
2をグラビア方式により接着剤面積率が70%となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法により吸着シートを作製した。得られた吸着シートの耐ガス浸透性試験結果、耐液浸透性試験結果、残存溶剤率、剛軟性(柔軟性)、通気性、剥離強度の評価結果をそれぞれ表1から表3に示す。
【0055】
(実施例5)
保護層の接着剤の塗布において酢酸ビニル樹脂系溶剤系接着剤(セメダイン株式会社製、198L 固形分35%)25g/m
2をグラビア方式により接着剤面積率が15%となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法により吸着シートを作製した。得られた吸着シートの耐ガス浸透性試験結果、耐液浸透性試験結果、残存溶剤率、剛軟性(柔軟性)、通気性、剥離強度の評価結果をそれぞれ表1から表3に示す。
【0056】
(比較例1)
保護層の接着剤の塗布においてウレタン樹脂系溶剤系接着剤(DIC株式会社製、クリスボンAH−420 固形分49%)55g/m
2をグラビア方式により接着剤面積率が40%となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法により吸着シートを作成した。得られた吸着シートの耐ガス浸透性試験結果、耐液浸透性試験結果、残存溶剤率、剛軟性(柔軟性)、通気性、剥離強度の評価結果をそれぞれ表1から表3に示す。
【0057】
(比較例2)
保護層の接着剤の塗布においてウレタン樹脂系溶剤系接着剤(DIC株式会社製、クリスボンAH−420 固形分49%)3g/m
2をグラビア方式により接着剤面積率が4%となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法により吸着シートを作製した。得られた吸着シートの耐ガス浸透性試験結果、耐液浸透性試験結果、残存溶剤率、剛軟性(柔軟性)、通気性、剥離強度の評価結果をそれぞれ表1から表3に示す。
【0058】
(比較例3)
保護層の接着剤の塗布においてウレタン樹脂系溶剤系接着剤(DIC株式会社製、クリスボンAH−420 固形分49%)25g/m
2をコンマコーターにより接着剤面積率が100%(全面塗布)となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法により吸着シートを作製した。得られた吸着シートの耐ガス浸透性試験結果、耐液浸透性試験結果、残存溶剤率、剛軟性(柔軟性)、通気性、剥離強度の評価結果をそれぞれ表1から表3に示す。
【0059】
(比較例4)
上記のガス吸着層の両面に上記の保護層をそれぞれ重ね合わせた後、撥油性ポリエステル糸を用いて2inchピッチでダイヤ柄にキルティング縫合することによって3層構造の積層体を作成した以外は、実施例1と同様の方法により吸着シートを作製した。得られた吸着シートの耐ガス浸透性試験結果、耐液浸透性試験結果、残存溶剤率、剛軟性(柔軟性)、通気性、剥離強度の評価結果をそれぞれ表1から表3に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
表1〜3の結果から明らかなように、実施例1〜5の吸着シートは、耐ガス浸透性、耐液浸透性、残存溶剤率、剛軟性(柔軟性)、通気性、及び剥離強度の全てにおいて良好であるのに対して、比較例1の吸着シートは、耐ガス浸透性能、剛軟性が低く、比較例2の吸着シートは、はく離強さが低く、比較例3の吸着シートは、通気性が低く、比較例4の吸着シートは、耐液浸透性能が低く、比較例1〜4の吸着シートは、いずれかの評価項目で実施例のものよりも劣るものであった。