特許第5786405号(P5786405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786405
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】シェル形ころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20150910BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20150910BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20150910BHJP
   F16J 15/32 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   F16C33/78 E
   F16C19/26
   F16C33/58
   F16J15/32 311T
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-72999(P2011-72999)
(22)【出願日】2011年3月29日
(65)【公開番号】特開2012-112518(P2012-112518A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2014年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-247081(P2010-247081)
(32)【優先日】2010年11月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】早稲田 義孝
(72)【発明者】
【氏名】岩田 孝
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−069336(JP,A)
【文献】 米国特許第03666334(US,A)
【文献】 特公昭49−041232(JP,B1)
【文献】 実開平02−132173(JP,U)
【文献】 特開2007−085446(JP,A)
【文献】 特開2002−188652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/72−33/82
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
F16J 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル形の外輪と、この外輪に組込まれる複数のころと、環状のシールとを備え、
前記外輪は、
内周面を前記ころの外輪軌道部とする円筒部と、
前記円筒部の軸方向の一方側に隣接し、前記円筒部よりも大径の内周面を有するシール装着部と、
前記シール装着部が周方向の少なくとも1箇所に前記円筒部の軸心に向けて突設された凸部と、を有し、
前記シールは、
前記凸部に対応する位置のシール外周部に凹設された凹部を有し、
前記凸部に前記凹部を嵌合し、前記凸部及び前記凹部が周方向に係止した状態で前記シール装着部に装着していることを特徴とするシェル形ころ軸受。
【請求項2】
前記シールは、
前記シールの内径側に形成されてころの内輪軌道部に接触するリップと、
軸方向の一方側の端面の径方向中間に形成されて軸方向の他端側に窪む環状の窪み部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のシェル形ころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェル形ころ軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シェル形ころ軸受には、シールの固定方法として、シェル形外輪の円筒部よりも大径の本体部を有するシール装着部の内径に比べて、わずかに大きく設定されたシールを、その弾性復元力により装着されるものが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4380262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術は、シェル形ころ軸受の使用時に、シールの形状又は径の大きさによってはシールが外輪に対して回動し、シールによる密封性が低下する可能性があり、シールの回動防止が課題となっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、シェル形ころ軸受のシールの回動防止を確実にできることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係るシェル形ころ軸受の構成上の特徴は、シェ
ル形の外輪と、この外輪に組込まれる複数のころと、環状のシールとを備え、
前記外輪は、
内周面を前記ころの外輪軌道部とする円筒部と、
前記円筒部の軸方向の一方側に隣接し、前記円筒部よりも大径の内周面を有するシール装着部と、
前記シール装着部が周方向の少なくとも1箇所に前記円筒部の軸心に向けて突設された凸部と、を有し、
前記シールは、
前記凸部に対応する位置のシール外周部に凹設された凹部を有し、
前記凸部に前記凹部を嵌合し、前記凸部及び前記凹部が周方向に係止した状態で前記シール装着部に装着していることを特徴とすることである。
【0007】
請求項1のシェル形ころ軸受によれば、シェル形外輪の周方向の少なくとも1箇所に突設された凸部と、凸部に対応する位置のシール外周部に凹設された凹部とが嵌合し、凸部及び凹部が周方向に係止した状態である。
【0008】
これにより、シールの外輪に対する回動を確実に防止できる。
【0009】
請求項2に係るシェル形ころ軸受の構成上の特徴は、前記シールは、
前記シールの内径側に形成されてころの内輪軌道部に接触するリップと、
軸方向の一方側の端面の径方向中間に形成されて軸方向の他端側に窪む環状の窪み部と、を有することである。
【0010】
請求項2のシェル形ころ軸受によれば、シールの窪み部により弾性復元力が増大される。
【0011】
これにより、シール装着部とシールとの嵌合がより強固になり、シェル形ころ軸受の外輪に対する回動がより確実に防止できる。
また、シールによる密封性を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シェル形ころ軸受のシールの回動防止を確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態のシェル形ころ軸受の全体構成を示す断面図である。
図2図1のA矢視図である。
図3】(a)は図2のB−B断面図であり、(b)は図3(a)のA矢視図である。
図4図2でのシール単体の概略図である。
図5図2の要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のシェル形ころ軸受を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態のシェル形ころ軸受1の全体構成を示す断面図である。シェル形ころ軸受1は、シェル形の外輪2、この外輪2に組込まれる複数のころ5、ころ5を保持する保持器6、及び環状のシール8を備える。
外輪2は、内周面をころ5の外輪軌道部4とする円筒部3、この円筒部3に対し軸方向外端側で軸心に向けて形成される鍔部7、及び円筒部3と鍔部7との間に設けられ円筒部3よりも薄肉に形成されてシール8を装着するシール装着部9を備える。
【0015】
図2は、図1のA矢視図である。シェル形ころ軸受1は、外輪2の円筒部3の軸方向の一方側の端部が円筒部3の軸心に向けて突設された円弧状の凸部(本実施例では2箇所)10を備える。シール8は、凸部10に対応して、シール外周部に凹設された円弧状の凹部12を備え、凸部10にシール8の凹部12が嵌合してシール装着部9に装着される。
【0016】
図3(a)は、図2のB−B断面図である。凸部10は、シール装着部9と等しい肉厚でもって、円筒部3の軸心に向けて突設される。シール8は、所定の弾力性を有するゴムや樹脂等から形成されている。シール8はまた、径方向中間に形成されて軸方向内側に窪む環状の窪み部11、及び窪み部11の内径側に形成されてころ5の内輪軌道部を有する軸体14に接触するリップ15を備える。
【0017】
リップ15は、軸方向外側に向けて縮径するように傾斜して形成され、緩やかな曲率を有する楕円形状にて形成される接触部21が内周部に形成され、この接触部21が、軸体14の外周面に所定の緊迫力で接触して、軸受内外を密封する。
図3(b)が、図3(a)のA矢視図である。
【0018】
図4は、図2でのシール単体の概略図である。シール8は、図2の凸部10に対応してシール外周部に凹設された円弧状の凹部12を備え、凹部12の底面が断面円弧状となっている。凸部10にシール8の凹部12が嵌合してシール装着部9に装着される。凹部12は、等配となるように2箇所形成されている。図4では、凹部12が等配に形成されているが、等配に形成されていなくても良く、凹部も1箇所以上で形成されていればよい。しかし、等配にすることで、シール8を外輪2に組み付ける際、両者の組み付け前の位置合わせと、組み付け後の位置決めが容易になる。
【0019】
シール8の外径D1は、図1に示すシール装着部9の内径D2に比べてわずかに大きく設定されている。シール8の凹部12の外径D3は、図3(a)に示すシール8を装着する凸部10の内径D4に比べてわずかに大きく設定されている。これらの弾性復元力と窪み部11との作用により、シール装着部9の内周面に嵌合された状態となる。
これにより、シェル形ころ軸受1のシールの外輪に対する回動を防止できる。
【0020】
次に、凸部10にシール8の凹部12が嵌合される要部について図面を参照しつつ説明する。図5は、図2の要部を示す拡大図である。外輪2の円筒部3から突設された凸部10にシール8の凹部10が弾性復元力の作用により嵌合される。
これにより、シール8が外輪2に対して回動するような力が作用したとき、凸部10と凹部12とが嵌合されて係止した状態になり回動を防ぐことができる。
【0021】
上記構成のシェル形ころ軸受1の製造に際して、外輪2は低炭素鋼薄板をベースに有底円筒形状にプレス成型する。このとき、外輪2の開口部は、内径を大きくして段付の薄肉に形成する。そして外輪2は、開口側端部の薄肉部分を屈曲して鍔部7を形成し、また開口側端部の円周上の一部をプレス成型して円筒部3の軸心に向けて凸部10を形成し、浸炭焼入を行って硬化する。ここで、外輪2の凸部10は、開口側端部の円周上の一部を加締めて円筒部3の軸心に向けて形成するとしてもよい。
このようにして形成された外輪2には、内部にころ5と保持器6との組品が装着される。またこの組品に続いて、シール8を外輪2のシール装着部9に装着する。
【0022】
以上のように、本実施の形態に係るシェル形ころ軸受1によれば、シェル形外輪2の円筒部3がその軸心に向けて突設された凸部10に、シール外周部の凹部12を嵌合してシール装着部9に装着するので、シェル形ころ軸受1のシール8の回動を確実に防止できる。
また、本実施の形態に係るシェル形ころ軸受1によれば、シール8の窪み部11により弾性復元力が増大されるので、シール装着部9とシール8との嵌合がより強固になり、シェル形ころ軸受1の回動がより確実に防止できる。さらには、シール8による密閉性を向上できる。
【0023】
なお、上記実施形態では、外輪2の円筒部3の凸部10及びそれに対応したシール外周部の凹部12の配置数は本実施例では2箇所としたが、これに限るものではない。
また、上記実施形態では、外輪2の円筒部3の凸部10に対応したシール外周部の凹部12を嵌合してシール装着部9に装着するとしたが、凹凸の配置が反対の場合、即ち、外輪の円筒部の凹部に対応したシール外周部の凸部を嵌合してシール装着部に装着するとしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1:シェル形ころ軸受、 2:外輪、 3:円筒部、 4:外輪軌道部、 5:ころ、 6:保持器、 7:鍔部、 8:シール、 9:シール装着部、 10:凸部、 11:窪み部、 12:凹部、 14:軸体、 15:リップ、 21:接触部
図1
図2
図3
図4
図5