(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリカーボネート樹脂中の、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物の合計量が金属量として20ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の成形品の製造方法。
前記長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物がマグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であることを特徴とする請求項3に記載の成形品の製造方法。
前記ポリカーボネート樹脂中の芳香環に結合した水素原子(H)の当量数を(A)、芳香環以外に結合した水素原子(H)の当量数を(B)とした場合に、A/(A+B)≦0.05 であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
前記ポリカーボネート樹脂が、前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上であるものであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
前記ポリカーボネート樹脂が、前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長320nmにおける光線透過率が30%以上であるものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
前記ポリカーボネート樹脂が、前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の初期のイエローインデックス(YI)値と、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nm、放射照度1.5kW/m2で、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値との差の絶対値が6以下であるものであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
(1)ポリカーボネート樹脂及びそれに基づく樹脂組成物
以下、本発明の樹脂成形品の製造方法に用いるポリカーボネート樹脂及びそれに基づく樹脂組成物について詳述する。
[ポリカーボネート樹脂]
<原料>
(ジヒドロキシ化合物)
本発明で使用する樹脂(以下、「本発明に用いる樹脂」と称することがある。)は、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(以下、「本発明に用いるジヒドロキシ化合物」と称することがある。)に由来する構造単位(a)を少なくとも含む。 即ち、本発明に用いるジヒドロキシ化合物は、2つのヒドロキシル基と、更に構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を少なくとも含むものである。
【0028】
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH
2−O−Hの一部である場合を除く。)
本発明に用いるジヒドロキシ化合物としては、構造の一部に上記一般式(1)で表される部位を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記一般式(5)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられるが、中でも、入手のし易さ、ハンドリング、重合時の反応性、得られる樹脂の色相の観点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、耐熱性の観点からは、無水糖アルコール、環状エーテル構造を有する化合物が好ましい。
【0029】
これらは得られる樹脂の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることが樹脂の耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
【0033】
本発明に用いる樹脂は、上記特定のジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよく、その他のジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、等の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0034】
また、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類を使用することもできる。
【0035】
中でも、樹脂の耐光性の観点からは、分子構造内に芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物、即ち脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましく、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましく、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
【0036】
これらのその他のジヒドロキシ化合物を用いることにより、樹脂の柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善などの効果を得ることも可能であるが、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が多過ぎると、機械的物性の低下や、耐熱性の低下を招くことがあるため、全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する本発明に用いるジヒドロキシ化合物に由来する、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有する構造単位の割合が、好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、特に好ましくは45モル%以上、一方、好ましくは95モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは78モル%以下、特に好ましくは75モル%以下である。
【0037】
本発明の樹脂成形品の製造方法(以下「本発明の成形方法」と記す場合がある)、すなわち、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂に基づく成形品の製造方法であって、該樹脂組成物を射出成形して樹脂成形品を製造するに際し、シリンダー温度と金型温度との差を50〜110℃とすることを特徴とする成形品の製造方法を、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位とを含むポリカーボネート樹脂に適用することにより、前述の各種特性に優れた成形品を得ることができる。
【0038】
上記樹脂の製造に用いるジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよく、特に酸性下で本発明のジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが多い。塩基性安定剤としては、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2ナトリウム、亜リン酸水素2ナトリウムが好ましい。
【0039】
これら塩基性安定剤のジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、少なすぎると上記ジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎるとジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、通常、本発明のジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
【0040】
また、これら塩基性安定剤を含有したジヒドロキシ化合物を本発明に用いるポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるだけでなく、初期色相の悪化を招き、結果的に成形品の耐光性を悪化させるため、樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換や蒸留等で除去することが好ましい。
【0041】
本発明に用いるジヒドロキシ化合物がイソソルビド等、環状エーテル構造を有する場合には、酸素によって酸化されやすいので、保管時や製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱ったりすることが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合があり、このような分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られる樹脂の着色を招いたり、物性を著しく劣化させたりする可能性があるだけではなく、重合反応に影響して高分子量の重合体が得られなくなる場合もあり、好ましくない。
【0042】
本発明に用いるジヒドロキシ化合物は、上記酸化分解物や前述の塩基性安定剤を除去するために、蒸留精製を行うことが好ましい。この場合の蒸留は単蒸留であっても連続蒸留であってもよく、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、250℃以下、好ましくは200℃以下、特には180℃以下の条件で行うことが好ましい。
【0043】
このような蒸留精製で、本発明に用いるジヒドロキシ化合物中の蟻酸含有量を20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm以下、特に好ましくは5重量ppm以下にすることにより、前記本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物を樹脂の製造原料として使用した際に、重合反応性を損なうことなく色相や熱安定性に優れた樹脂の製造が可能となる。蟻酸含有量の測定はイオンクロマトグラフィーで行うことができる。
【0044】
(炭酸ジエステル)
本発明に用いる樹脂は、上述した本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
(一般式(3)において、A1及びA2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数18の脂肪族基、または、置換若しくは無置換の芳香族基であり、A1とA2とは同一であっても異なっていてもよい。)
前記一般式(3)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られる樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
【0047】
<エステル交換反応触媒>
本発明の成形方法に用いるポリカーボネート樹脂は、上述のように本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、通常、エステル交換反応触媒存在下でエステル交換反応させて製造される。この時、エステル交換により副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去しつつ重縮合を進めることが一般的である。
【0048】
本発明に用いる樹脂の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」、「重合触媒」と言うことがある。)は、特に波長350nmにおける光線透過率や、イエローインデックス値に影響を与えることがある。
用いられる触媒としては、耐光性を満足させ得る、即ち上記した波長350nmにおける光線透過率や、イエローインデックスを所定の値にし得るものであれば、限定されないが、長周期型周期表における第1族または第2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、具体的には塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
【0049】
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
【0050】
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ナトリウムのアルコレート若しくはフェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩等のナトリウム化合物、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸カリウム、水素化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素カリウム、安息香酸カリウム、リン酸水素2カリウム、フェニルリン酸2カリウム、カリウムのアルコレート若しくはフェノレート、ビスフェノールAの2カリウム塩等のカリウム化合物、水酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素リチウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2リチウム、リチウムのアルコレート若しくはフェノレート、ビスフェノールAの2リチウム塩等のリチウム化合物、水酸化セシウム、炭酸水素セシウム、炭酸セシウム、酢酸セシウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2セシウム、セシウムのアルコレート若しくはフェノレート、ビスフェノールAの2セシウム塩等のセシウム化合物等が挙げられ、中でもリチウム化合物が好ましい。
【0051】
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等のカルシウム化合物、水酸化バリウム、炭酸水素バリウム、炭酸バリウム、酢酸バリウム、ステアリン酸バリウム等のバリウム化合物、水酸化マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、水酸化ストロンチウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸ストロンチウム等のストロンチウム化合物等が挙げられ、中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物が好ましく、重合活性と得られる樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
【0052】
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
【0053】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0054】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
【0055】
上記重合触媒の使用量は、好ましくは、重縮合に用いる全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、好ましくは0.5μmol〜100μmolであり、中でもリチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合、特にマグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合は、用いる全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、金属量として、通常0.1μmol以上、好ましくは0.5μmol以上、特に好ましくは0.7μmol以上である。またその上限としては、通常20μmol、好ましくは10μmol、さらに好ましくは3μmol、特に好ましくは1.5μmol、中でも1.0μmolが好適である。
【0056】
触媒量が少なすぎると、重縮合速度が遅くなるため、所望の分子量の樹脂を得るためには反応温度を高くせざるを得なくなり、得られる樹脂の色相や耐光性が悪化したり、未反応の原料が揮発して反応時のジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのモル比が変動して、所望の組成・分子量の樹脂が得られなくなったりする可能性がある。一方、触媒の使用量が多すぎると、得られる樹脂の色相の悪化を招き、樹脂の耐光性が悪化する可能性がある。
【0057】
また、1族金属、中でもリチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム、特にはナトリウム、カリウム及びセシウムは、樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があり、該金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合があるため、樹脂中のこれらの化合物の合計量は、金属量として、通常1重量ppm以下、好ましくは0.8重量ppm以下、より好ましくは0.7重量ppm以下である。
樹脂中の金属量は、湿式灰化などの方法で樹脂中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
【0058】
<製造方法>
本発明の成形方法に用いるポリカーボネート樹脂は、本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に原料調製槽等において、均一に混合することが好ましい。又、原料調製槽等において均一に混合された原料は、原料貯槽等に貯め置いた後に、エステル交換反応に供してもよい。
【0059】
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足したりする可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂の色相が悪化し、耐光性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0060】
本発明に用いる樹脂の原料である本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと混合する操作は、酸素濃度10vol%以下、更には0.0001vol%〜10vol%、中でも0.0001vol%〜5vol%、特には0.0001vol%〜1vol%の雰囲気下で行うことが、色相悪化防止の観点から好ましい。
【0061】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂を得るためには、前記一般式(3)で表される炭酸ジエステルを、反応に用いる本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.20のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.95〜1.10のモル比率である。
このモル比率が小さくなると、製造された樹脂の末端水酸基量が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、成型時に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望する高分子量体が得られない可能性がある。
【0062】
一方、このモル比率が大きくなると、エステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量の樹脂の製造が困難となったりする場合がある。エステル交換反応速度の低下は、重縮合反応中の熱履歴を増大させ、結果的に得られる樹脂の色相や耐光性を悪化させる可能性がある。
更には、本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、前記一般式(3)で表される炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得られる樹脂中の残存炭酸ジエステル量が増加し、これらが紫外線を吸収して樹脂の耐光性を悪化させる場合があり、好ましくない。 本発明に用いる樹脂に残存する前記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの濃度は、好ましくは60重量ppm以下、更に好ましくは50重量ppm以下、特に好ましくは40重量ppm以下が好適である。現実的に樹脂は未反応の炭酸ジエステルを含むことがあり、濃度の下限値は通常1重量ppmである。
【0063】
本発明に用いる樹脂の製造方法において、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮合させる方法は、上述の触媒存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
重縮合反応の初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、反応の後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を高くすることが好ましいが、各反応段階での加熱温度と内温、及び反応系内の圧力を適切に選択することが色相や耐光性の観点から重要である。例えば、重縮合反応率が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが系外に留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が変化して、反応速度が低下したり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本願発明の目的を達成することができなくなる可能性がある。
【0064】
留出するモノマーの量を制御するために、重縮合反応器に還流冷却器を用いることが有効であり、特に未反応モノマー成分が多い反応初期においてその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択されるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45〜180℃であり、好ましくは、80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。冷媒の温度が高すぎると還流量が減少して、必要なモノマーまで留出することになり、逆に低すぎると、除去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、中でも蒸気、熱媒オイルが好ましい。
【0065】
重縮合反応速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的な樹脂の色相や熱安定性、耐光性等を損なわないようにするためには、前述の触媒の種類と量の選定が重要である。
本発明に用いる樹脂の製造方法においては、複数の反応器を用い、多段階で重縮合を行うことが好ましい。これは、重縮合反応の初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いので、必要な反応速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制することが重要であり、反応後期においては、平衡をポリマー側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去することが重要になるためである。このように、異なった反応条件を設定するためには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが生産効率の観点から好ましい。
【0066】
上記の製造方法において使用される反応器は、上述の通り少なくとも2基あることが好ましいが、生産効率の観点からは、3基以上、好ましくは3〜5基、特に好ましくは4基の反応器を用いることが好適である。
また複数の反応器において、個々の反応器内で更に条件の異なる反応段階を複数設定したり、連続的に温度・圧力を変えたりしてもよい。
【0067】
重合触媒は原料調製槽や原料貯槽において添加することもでき、また反応器に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御性の観点からは、反応器への原料供給ラインの途中に触媒供給ラインを接続・設置して供給することが好ましい。供給する重合触媒の性状は固体のものや液体のものがあるが、定量供給性の観点から液体の触媒を用いるか又は固体触媒を溶媒等に溶解した溶液として供給することが好ましい
重縮合反応の温度は、低すぎると反応速度が低下したり、反応時間が長くなったりして生産性が低下し、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、生成した樹脂の分解や着色を助長する可能性がある。
【0068】
具体的には、第1段目の反応は、反応器の内温の最高温度として、140℃〜270℃、好ましくは180℃〜240℃、更に好ましくは200℃〜230℃で、110kPa〜1kPa、好ましくは70kPa〜5kPa、更に好ましくは30kPa〜10kPa(絶対圧力)の圧力下、0.1時間〜10時間、好ましくは0.5時間〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。
【0069】
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除去しながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧)を200Pa以下にして、内温の最高温度210℃〜270℃、好ましくは220℃〜250℃で、通常0.1時間〜10時間、好ましくは、1時間〜6時間、特に好ましくは0.5時間〜3時間行う。
【0070】
特に樹脂の着色や熱劣化を抑制し、色相や耐光性の良好な樹脂を得るには、全反応段階における内温の最高温度が250℃未満、特に225〜245℃であることが好ましい。
また、反応後半の重縮合速度の低下を防止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、反応の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
【0071】
なお、分子量を高くするために、重合温度を高く、また重合時間を長くし過ぎると、得られる樹脂の紫外線透過率が低下し、イエローインデックス(YI)値が大きくなる傾向となる。
副生したモノヒドロキシ化合物は、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂は、重縮合反応終了後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
【0072】
ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終段の反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化する方法、また抜き出された溶融状態の樹脂を、溶融状態のまま一軸または二軸の押出機に供給して押出した後、冷却固化させてペレット化する方法、又は、一旦ペレット化した後に、一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出の後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
【0073】
その際、押出機において、残存モノマーの減圧脱揮や、通常用いられる熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を添加、混練することもできる。
押出機における溶融混練温度は、樹脂のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150℃〜300℃、好ましくは200℃〜270℃、更に好ましくは230℃〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、樹脂の溶融粘度が高くなって押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、樹脂の熱劣化が激しくなり、分子量が低下して、ガスが発生したり、樹脂の着色や機械的強度が低下したりすることがある。
【0074】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の製造においては、異物の混入を防止するため、押出機にフィルターを設置することが望ましい。フィルターの設置位置は押出機の下流側が好ましく、フィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として100μm以下が好ましい。特に、フィルム用途等で微少な異物の混入も避けたい場合は、40μm以下、さらには10μm以下とすることが好ましい。
【0075】
また、押出後の異物混入を防止するために、好ましくはJISB 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で押出・ペレット化等の操作を行うことが望ましい。
また、押し出された溶融樹脂を固化してチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で予め異物を取り除いた空気を使用し、異物の再付着を防ぐことが望ましい。水冷法を用いる場合は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除いた上で、フィルターで異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10μm〜0.45μmであることが好ましい。
【0076】
このようにして得られた樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができる。本発明に用いる樹脂の還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さくなる可能性があり、大きすぎると、成形時の流動性が低下し、生産性や成形性(成形金型への追従性)を低下させる傾向となる。
【0077】
なお、上記還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂の濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定したものである。
更に本発明方法に用いるポリカーボネート樹脂の下記一般式(4)で表される末端基の濃度(「末端フェニル基濃度」という)の下限量は、好ましくは20μeq/g、更に好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、一方、上限は好ましくは160μeq/g、更に好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。
【0078】
末端フェニル基濃度が高すぎると、樹脂製造直後や成形時の色相が良くても、成形品の使用による紫外線曝露後の色相の悪化を招く可能性があり、逆に低すぎると熱安定性が低下する恐れがある。
末端フェニル基濃度を制御するためには、原料である本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を制御する他、エステル交換反応時の触媒の種類や量、重縮合反応時の圧力や温度を調整する方法等が挙げられる。
【0080】
一般式(3)で表される炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートを用いて、本発明方法に用いる樹脂を製造する場合は、フェノール、置換フェノールが副生する。これが得られる樹脂中に残存することはある程度避けられないが、フェノール、置換フェノールも芳香環を有するため紫外線を吸収して耐光性の悪化要因となる場合があるだけでなく、成形時の臭気の原因となる場合がある。
ポリカーボネート樹脂中には、通常の重縮合反応後は1000重量ppm以上の副生フェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物が含まれているが、耐光性や臭気低減の観点からは、脱揮性能に優れた横型反応器や真空ベント付の押出機を用いて、好ましくは700重量ppm以下、更に好ましくは500重量ppm以下、特には300重量ppm以下にすることが好ましい。ただし、工業的には、これらのフェノール類を完全に除去することは困難であり、芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の下限値は、通常1重量ppm程度である。
【0081】
また、本発明に用いる樹脂の芳香環に結合した水素原子(H)の当量数を(A)、芳香環以外に結合した水素原子(H)の当量数を(B)とした場合、芳香環に結合した水素原子(H)の当量数の全水素原子(H)の当量数に対する比率は、A/(A+B)で表されるが、耐光性には上述のように、紫外線吸収能を有する芳香族環が影響を及ぼす可能性があるため、A/(A+B)の値は0.05以下であることが好ましく、更に好ましくは0.03以下、特に好ましくは0.02以下、好適には0.01以下である。A/(A+B)は、
1H−NMRで定量することができる。
【0082】
[その他の添加剤]
本発明において用いる樹脂、即ち特定の構造単位を有するポリカーボネート樹脂には、その要旨を損なわない範囲で、用途・目的に応じた添加剤を加えてポリカーボネート樹脂組成物として使用されることが一般的である。
このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、酸性化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、無機充填剤などが挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、フェノール系酸化防止剤及び/またはホスファイト系酸化防止剤が更に好ましい。
【0083】
フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の化合物が挙げられる。
【0084】
これらの化合物の中でも、炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物が好ましく、具体的には、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましく、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが更に好ましい。
【0085】
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、が挙げられる。
【0086】
これらの中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが更に好ましい。
【0087】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などが挙げられる。上記のうち、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、好ましくは、0.001重量部以上、更に好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.05重量部以上、一方、好ましくは1重量部以下、更に好ましくは、0.7重量部以下、特に好ましくは0.5重量部以下である。酸化防止剤の含有量が過度に少ないと、成形時の着色抑制効果が不十分になることがある。また、酸化防止剤の含有量が過度に多いと、射出成形時における金型への付着物が多くなったり、押出成形によりフィルムを成形する際にロールへの付着物が多くなったりすることにより、製品の表面外観が損なわれるおそれがある。
【0088】
酸性化合物としては、例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステル類が挙げられる。これらの酸性化合物又はその誘導体の中でも、スルホン酸類又はそのエステル類が好ましく、中でも、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸ブチルが特に好ましい。
これらの酸性化合物は、上述した樹脂の重縮合反応において使用される塩基性エステル交換触媒を中和する化合物として、樹脂組成物の製造工程において添加することができる。
【0089】
酸性化合物の配合量は、樹脂100重量部に対し、少なくとも1種の酸性化合物0.00001重量部以上0.1重量部以下、好ましくは、0.0001重量部以上0.01重量部以下、さらに好ましくは0.0002重量部以上0.001重量部以下である。酸性化合物の配合量が過度に少ないと、射出成形する際に、樹脂組成物の射出成形機内の滞留時間が長くなった場合における着色を十分抑制することができない場合がある。また、酸性化合物の配合量が過度に多いと、樹脂組成物の耐加水分解性が著しく低下する場合がある。
紫外線吸収剤、光安定剤を含有する場合の含有量は、樹脂100重量部に対して0.01重量部〜2重量部が好ましい。
【0090】
無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸カルシウム粉体、石膏、石膏ウィスカー、硫酸バリウム、タルク、マイカ、ワラストナイト等の珪酸カルシウム;カーボンブラック、グラファイト、鉄粉、銅粉、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素、窒化ケイ素繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、チタン酸カリウム繊維、ウィスカー等が挙げられる。これらの中でも、ガラスの繊維状充填材、ガラスの粉状充填材、ガラスのフレーク状充填材;炭素の繊維状充填材、炭素の粉状充填材、炭素のフレーク状充填材;各種ウィスカー、マイカ、タルクが好ましい。より好ましくは、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、ワラストナイト、マイカ、タルクが挙げられる。
【0091】
無機充填材の配合量は、樹脂100重量部に対し、通常1重量部以上100重量部以下であり、好ましくは3重量部以上50重量部以下である。無機充填材の配合量が過度に少ないと補強効果が少なく、また、過度に多いと外観が悪くなる傾向がある。
また、本発明で用いる樹脂組成物は例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混合・混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
【0092】
本発明の成形方法において用いる樹脂組成物は、上記成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。更に、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、無機充填剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料等が含まれても差し支えない。
【0093】
(2)樹脂成形品
<物性・特性>
本発明の成形方法により得られる成形品は、光学用途への使用の観点から板状部を主体とする成形品であって、該成形品の最大投影面積が、好ましくは100〜50,000cm
2、より好ましくは500〜50,000cm
2、更に好ましくは1,000〜20,000cm
2、特に好ましくは1,500〜10,000cm
2である。
本発明の成形方法で用いる樹脂組成物中の下記一般式(4)で表される末端基の濃度(「末端フェニル基濃度」という)の下限量は、好ましくは20μeq/g、更に好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、一方、上限は好ましくは160μeq/g、更に好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。
本発明により得られる樹脂成形品(以下、「本発明方法による樹脂成形品」と称することがある。)は、成形品(厚さ3mmの平板について測定)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上であるのが好ましく、より好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。該波長における光線透過率が60%を下回ると、吸収が大きくなり、耐光性が悪化する場合がある。
【0094】
また、本発明方法による樹脂成形品は、成形品(厚さ3mmの平板について測定)の波長320nmにおける光線透過率が30%以上であることが好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましい。該波長における光線透過率が30%を下回ると、耐光性が悪化する傾向にある。
本発明の成形方法に用いるポリカーボネート樹脂としては、該樹脂から成形された前記成形品(厚さ3mmの平板)の初期のイエローインデックス値(初期のYI値)と、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kW/m
2で、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値との差の絶対値が6以下であることが好ましく、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
【0095】
なお、本発明におけるメタルハライドランプを用いた照射処理の詳細については後述する。
また「初期のイエローインデックス値(初期のYI値)」は、上記の厚さ3mmの平板について、メタルハライドランプでの照射処理等を行わずに、透過光で測定したイエローインデックス値のことを指す。
このような評価方法による照射処理前後のYI値の差が6以下のように小さいポリカーボネート樹脂を用いることで、成形直後には着色がなくても長期間の紫外光曝露によって着色してしまうようなこともなく、安定した色相を保持できる成形品が製造できる。
こうしたポリカーボネート樹脂を得るためには、例えば、エステル交換反応(重縮合反応)で受けた熱履歴や、使用した触媒、含まれる金属成分、特定の分子構造を持つ物質の含有量等を前述のように制御することも重要である。
【0096】
本発明方法により得られる成形品としては、前述の初期のイエローインデックス値として10以下のものが好ましく、より好ましくは7以下、特に好ましくは5以下である。
【0097】
(3)樹脂成形品の製造方法
樹脂成形品の製造は種々の方法で行われており、中でも押出成形は汎用的に使用されるものの、複雑な形状の樹脂成形品の製造に困難を伴うという点で、得られる樹脂成形品の形状に制約がある。
【0098】
本発明においては、樹脂成形品を射出成形法によって製造する。特に、得られる成形品の光学歪みを低くすることができる射出プレス成形法によって行うことが好ましい。
射出成形法を用いることにより、樹脂成形品の形状に応じた金型を使用することで複雑な形状の樹脂成形品を製造することができる。
射出成形は射出成形機を用いて行われ、使用する樹脂組成物および製品形状に応じて適宜好適な成形条件が設定される。成形条件としては、シリンダー温度、金型温度、射出圧、保圧、スクリュー回転数、クッション量、射出速度、射出時間、保圧時間、冷却時間などが挙げられる。
【0099】
本発明の樹脂成形品の製造方法においては、樹脂組成物を射出成形により成形するに際し、シリンダー温度と金型温度との差は50℃〜110℃とする必要がある。より好ましいシリンダー温度と金型温度との差は、60℃〜105℃であり、より好ましくは70℃〜90℃である。
金型温度を一定にした状態で両者の差が110℃を越えるような温度までシリンダー温度を高くすると、樹脂組成物が分解しやすくなり、外観が悪くなる傾向となる。一方シリンダー温度をその差が50℃未満にまで低くすると良好な成形品が得難くなる傾向が現れる。
また、シリンダー温度を一定にして金型温度を同様に過度に高くすると、成形サイクルが長くなって生産性が悪化し、一方金型温度を過度に低くすると成形歪みが大きくなる。
なお本発明において射出成形時の金型温度とは、樹脂充填時の金型温度のことを言う。
【0100】
特に本発明の成形品の製造方法においては、シリンダー温度は、好ましくは210℃〜270℃、更に好ましくは215℃〜265℃、特に好ましくは220℃〜260℃である。シリンダー温度が高すぎると樹脂組成物が熱分解し、樹脂成形品が着色する傾向にあり、一方低すぎると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、成形不良を生じたり、光学歪みが大きくなったりする傾向にある。
金型温度は、好ましくは90℃〜200℃、更に好ましくは95℃〜180℃、特に好ましくは100℃〜150℃である。金型温度が高すぎると成形品の生産性が低下する傾向にあり、一方、低すぎると光学歪みが大きくなる傾向にある。
金型温度の制御方法としては、金型内に電気ヒーターを埋設し加熱する方法、加圧蒸気を金型内の水管に流し込み金型を加熱する方法、樹脂充填時には金型内の水管に加圧蒸気を流して加熱しておき、充填後は該水管に冷却水を通して急速冷却するヒートアンドクール成形法、金型の表面から1〜2cmの位置にコイルを配置して高周波の電圧を印加し金型を加熱して、コイルを金型から抜き出した後に金型を締めて樹脂を充填し水冷する高周波加熱法、金型内に埋設したコイルに高周波の電圧を印加し金型を加熱する方法等が挙げられる。
本発明の成形方法においては、ヒートアンドクール成形法により金型温度を制御することが好ましい。
【0101】
本発明の成形品の製造方法、すなわち、構造の一部に一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を少なくとも含むポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物を射出成形して光学特性の優れた成形品を製造する方法においては、上記のように射出成形機のシリンダー温度と金型温度との差を50℃〜110℃とすることが必要であるが、この他にシリンダー温度および金型温度を上記の範囲とすることも重要である。
本発明の成形品の製造方法においては、これらの手段を単独で、あるいは適宜組み合わせることが好ましい。
【0103】
本発明によれば、外観、低光学歪み性、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れた樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
以下において、樹脂組成物、樹脂成形品の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)酸素濃度の測定
重縮合反応装置内の酸素濃度を、酸素計(AMI社製:1000RS)を使用し、測定した。
【0105】
(2)還元粘度の測定
ポリカーボネート樹脂のサンプルを塩化メチレンを用いて溶解し、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t
0と溶液の通過時間tとから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t
0
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
【0106】
ηsp=(η−η
0)/η
0=ηrel−1
比粘度ηspを濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
(3)ポリカーボネート樹脂組成物中の金属濃度の測定
株式会社パーキンエルマー・ジャパン製マイクロウェーブ分解容器にポリカーボネート樹脂組成物ペレット約0.5gを精秤し、97%硫酸2mLを加え、密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱した。室温まで冷却後、68%硝酸1.5mLを加えて、密閉状態にして150℃で10分間マイクロウェーブ加熱した後、再度室温まで冷却を行い、更に68%硝酸2.5mLを加え、再び密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱し、内容物を完全に分解させた。室温まで冷却後、上記で得られた液を純水で希釈し、サーモクエスト社製ICP−MSで定量した。
【0107】
(4)ポリカーボネート樹脂組成物中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比及び末端フェニル基濃度の測定
ポリカーボネート樹脂組成物中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比は、ポリカーボネート樹脂組成物30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、溶液とし、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子株式会社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温で
1H NMRスペクトルを測定した。各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナル強度比より各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比を求めた。
【0108】
末端フェニル基濃度は、1,1,2,2−テトラブロモエタンを内部標準として、上記と同様に1H−NMRを測定し、内部標準と末端フェニル基に基づくシグナル強度比より求めた。
(5)ポリカーボネート樹脂組成物中の芳香族モノヒドロキシ化合物含有量、前記一般
式(3)で表される炭酸ジエステル含有量の測定
ポリカーボネート樹脂組成物試料1.25gを塩化メチレン7mlに溶解し溶液とした後、総量が25mlになるようにアセトンを添加して再沈殿処理を行った。次いで、該処理液を0.2μmディスクフィルターでろ過して、液体クロマトグラフィーにて定量を行った。
【0109】
(6)芳香環に結合した水素原子(H)の当量数(A)の全水素原子(H)の当量数(A+B)に対する比(ここで(B)は芳香環に結合していない水素原子(H)の当量数である)
内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)をあらかじめ添加混合した重クロロホルムのみのスペクトルを測定し、TMSと重クロロホルム中に含まれる残存水素原子(H)のシグナル比を求める。次に、ポリカーボネート樹脂30mgを秤取し、前記重クロロホルム約0.7mLに溶解させた。これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温で
1H NMRスペクトルを測定した。得られたNMRチャートの6.5ppm〜8.0ppmに現れるシグナルの積分値から、重クロロホルム中に含まれる残存水素原子(H)のシグナルの積分値(TMSのシグナルの積分値および前記で予め求めたTMSと重クロロホルム中に含まれる残存水素原子(H)との比から求める)を差し引いた値をaとする。一方、0.5ppm〜6.5ppmに現れるシグナルの積分値をbとすると、a/(a+b)=A/(A+B)となるので、これを求めた。
【0110】
(7)外観評価
500mmx500mmx3mmの成形プレートにおいて、目視にて外観観察を行い、外観不良なしのものを「○」、シルバーストリーク等の外観不良が発生したものを「×」と表示する。
(8)成形品の位相差の測定
500mmx500mmx3mmの成形プレートを分割して、王子計測機器製の位相差測定装置「KOBRA WWR/XY」により、波長590nmに対する位相差を測定した。
【0111】
(9)ポリカーボネート樹脂組成物の初期色相の評価方法
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、窒素雰囲気下、110℃で10時間乾燥した。次に、乾燥したポリカーボネート樹脂組成物のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度220℃、成形サイクル23秒間の条件で、射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形する操作を繰り返し、10ショット目〜20ショット目で得られた射出成形片の厚み方向での透過光におけるイエローインデックス(初期のYI)値をカラーテスタ(コニカミノルタ社製CM−3700d)を用いて測定し、平均値を算出した。YI値が小さい程、黄色味がなく品質が優れることを示す。
【0112】
(10)メタルハライドランプ照射試験
スガ試験機社製メタリングウェザーメーターM6Tを用いて、63℃、相対湿度50%の条件下、光源として水平式メタリングランプを、インナーフィルターとして石英を、またランプの周囲にアウターフィルターとして#500のフィルターを取り付け、波長300nm〜400nm、放射照度1.5kw/m
2になるように設定し、上記(9)で得られた20ショット目の平板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)の正方形の面に対して、100時間照射処理を行った。照射後のYI値を上記(9)と同様に測定した。
【0113】
以下の実施例の記載の中で用いた化合物の略号は次の通りである。
ISB:イソソルビド (ロケットフルーレ社製、商品名POLYSORB)
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール (新日本理化株式会社製、SKY CHDM)
DPC:ジフェニルカーボネート (三菱化学株式会社製)
(酸化防止剤)
イルガノックス1010:ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製)
イルガフォス168:トリス(2,4−ジ−tertブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン株式会社製)
(離型剤)
NAA−180:ステアリン酸(日油株式会社製)
【0114】
[実施例1]
撹拌翼および還流冷却器を具備した重縮合反応装置に、ISBとCHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.69/0.31/1.00/1.3×10
−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005vol %〜0.001vol %)。続いて熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にし、内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。重縮合反応とともに副生するフェノール蒸気は、還流冷却器への入口温度が100℃になるように制御された蒸気を冷媒として用いた還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
【0115】
このようにしてオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼および上記同様に制御された還流冷却器を具備した別の重縮合反応装置に移し、昇温・減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温228℃、圧力133Pa以下にして、所定の撹拌動力になった時点で復圧し、反応装置出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂を得た。
【0116】
更に3ベントおよび注水設備を備えた二軸押出機に連続的に前記溶融状態のポリカーボネート樹脂を供給し、表1に示した組成となるように酸化防止剤として「イルガノックス1010」及び「イルガフォス168」、離型剤として「NAA−180」を所定の割合で連続的に添加するとともに、二軸押出機に具備された各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を減圧脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行い、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0117】
得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを使って、株式会社名機製作所製の型締め力200トンの射出成形機にヒートアンドクール成形可能な金型急過熱/急冷却システム(株式会社シスコ製)を備えた150mm×200mmの投影面積で厚み3mmのプレートが得られる金型を装着して、シリンダー温度240℃、充填時の金型温度140℃(射出成形時のシリンダー温度と金型温度との差は100℃)、その後の冷却時の金型温度60℃で、射出速度20%(充填時間0.89秒)、冷却時間60秒で成形プレートを成形した。
上記記載の評価方法により、各種物性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0118】
[実施例2]
実施例1の射出プレス成形時のシリンダー温度を220℃とした(射出成形時のシリンダー温度と金型温度との差は80℃)こと以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例3]
仕込みの原料組成をモル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.5/0.5/1.00/1.3×10
−6になるように変更したこと以外は、上記実施例1と同様に、反応(オリゴマー化、重縮合)及び押出機によるペレット化を行い、ペレット状のポリカーボネート樹脂を製造した。
得られたポリカーボネート樹脂を用いて、実施例1と同様にしてプレートを成形し、各種物性を評価した。結果を併せて表1に示す。
【0119】
[比較例1]
実施例1において、金型温度の制御をヒートアンドクール成形ではなく、充填時も冷却時も80℃に保持する(射出成形時のシリンダー温度と金型温度との差は160℃)という条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてプレート成形を行った。
得られた成形プレートについて実施例1と同様にして物性を評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例1において、シリンダー温度を240℃から300℃に変更した(射出成形時のシリンダー温度と金型温度との差は220℃)こと以外は、比較例1と同様にプレート成形を行った。
得られた成形プレートは外観が著しく劣っており、物性の評価ができなかった。結果を表1に示す。
【0120】
【表1】