(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786602
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20150910BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20150910BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/32 101
B32B27/00 E
B29C45/14
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-212683(P2011-212683)
(22)【出願日】2011年9月28日
(65)【公開番号】特開2013-71342(P2013-71342A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2014年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】593173840
【氏名又は名称】株式会社トッパン・コスモ
(72)【発明者】
【氏名】高崎 裕
【審査官】
岸 進
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−262337(JP,A)
【文献】
特開2001−225350(JP,A)
【文献】
特表2000−502964(JP,A)
【文献】
特開平11−216819(JP,A)
【文献】
特開2009−179063(JP,A)
【文献】
特開平11−240116(JP,A)
【文献】
特開2010−163576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂射出成形品の表面に一体化して設けるポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートにおいて、前記化粧シートの原反をポリエチレンフィルムとし、その裏面に少なくとも無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層を設けたことを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シート。
【請求項2】
前記ポリエチレンフィルムと無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層との間に熱硬化性ポリウレタン樹脂層を設けたことを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装用部品や住宅等建築物の内装部材に使用される射出成形品において表面に絵付けされている成形品に関する。特には、絵付け方法が化粧シートを射出と同時に表面に貼りつけるインサート成形によるもので、その表面シートとなるインサート用化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンフィルム原反の化粧シートにポリエチレン樹脂を射出成形したり、ポリプロピレンフィルム原反の化粧シートにポリプロピレン樹脂を射出成形したりする場合、射出樹脂が溶融射出される際の樹脂熱で原反を一部溶融させることで同素材であるために溶融一体化して密着力を確保することが可能であった。しかし、ポリエチレンフィルム原反の化粧シートとポリプロピレン樹脂との射出成形では、異素材であることから溶融一体化することはない。強度や耐熱性から成形品の樹脂をポリプロピレンにしなければならない場合には、ポリエチレン原反の化粧シートは使用できないといった問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところはポリプロピレン樹脂の射出成形品の表面に一体化して設ける化粧シートとしてポリエチレン原反を用いても密着性が維持できるポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記問題点を解決したものであり、すなわちその請求項1の発明は、ポリプロピレン系樹脂射出成形品の表面に一体化して設けるポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートにおいて、前記化粧シートの原反をポリエチレンフィルムとし、その裏面に少なくとも無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層を設けたことを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートである。
【0005】
またその請求項2の発明は、前記ポリエチレンフィルムと無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層との間に熱硬化性ポリウレタン樹脂層を設けたことを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートである。
【発明の効果】
【0006】
本願発明はその請求項1記載の発明により、ポリエチレンフィルムの原反の裏面の最外側に少なくとも無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層を設けたことにより、射出樹脂であるポリプロピレン樹脂との密着を向上させ、ポリエチレンフィルム原反のインサートシートで絵付けしたポリプロピレン射出成形品を得ることが可能となった。
【0007】
また、請求項2記載の発明により、ポリエチレンフィルムの原反と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層と間に熱硬化性ポリウレタン樹脂層を設けたことにより、ポリエチレンフィルムと無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層との密着も向上し、更に密着の良好なポリエチレンフィルム原反のインサートシートで絵付けしたポリプロピレン射出成形品を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートについて図面に基づき詳細に説明する。
図1に本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。ポリエチレンフィルム11を原反とした化粧シート1は、原反の表面側に印刷インキによる印刷などによって絵柄模様層12、透明樹脂などからなる表面保護層13などが設けられてなる。必要であれば透明または半透明の樹脂層(図示せず)を適宜中間に設けても良い。前記ポリエチレンフィルム11の裏面側がポリプロピレン系樹脂射出成形品側となるが、その裏面側に適宜設ける熱硬化性ポリウレタン樹脂層2と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層3を設けてなる。
【0010】
本発明における原反となるポリエチレンフィルム11としては、絵柄模様層12を積層することを考えるとコロナ放電処理等濡れ性を向上させる処理を事前に施したものが望ましい。層厚は50〜100μmが好適である。
【0011】
適宜設ける熱硬化性ポリウレタン樹脂層2としては、前記ポリエチレンフィルム11と後述の無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン層3の双方に密着が良好なものであれば特に限定するものではないが、後に無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層を均一に設けるために表面が平滑であることが好ましい。また、層厚は1〜10μmが好適である。
【0012】
本発明における無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン層3としては、分散重合され印刷適性のある塗液を用いるのが好ましい。層厚は1〜20μmが好適であり、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等、塗液の性状によって適宜選択して行えば良い。表面は、射出成形においてポリプロピレン系樹脂射出成形品となる溶融樹脂側に接するように配されるために表面を均一にして設けるようにする。
【実施例1】
【0013】
原反となるポリエチレンフィルム11としてリケンテクノス製「FZ」(120μm)を用い、表裏ともコロナ処理を施した。このポリエチレンフィルム11の表面に絵柄模様層12として東洋インキ製造(株)製ウレタンインキ「V351」を用い、木目柄の印刷を施した。同時にこのポリエチレンフィルム11の裏面に、熱硬化性ポリウレタン樹脂層2として、前記インキと同種のレジンで顔料を添加せずシリカビーズを添加した東洋インキ製造(株)製「V324URLSメジウム」を用い、これを1μm塗布厚でグラビア法にて印刷した。
その後、前記絵柄模様層12の表面側に表面保護層13として、DICグラフィックス(株)製2液硬化型アクリル樹脂「W480」を用い、これをグラビア方式にて10μm塗布厚で塗工した。
最後に、以上のようにして得たシートを枚葉に切り出し、前記熱硬化性ポリウレタン樹脂層2の裏面側に無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層3として、日本シーマ(株)製「B502」を用い、シルクスクリーン方式にて3μm塗布厚に塗工し、80℃で1分間乾燥させ、本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートを作成した。
【実施例2】
【0014】
前記熱硬化性ポリウレタン樹脂層2を設けない以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートを作成した。
【0015】
<比較例1>
前記無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層3を設けない以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートを作成した。
【0016】
<比較例2>
前記無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層3を設けない以外は実施例2と同様にしてポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートを作成した。
【0017】
<射出成形>
以上のようにして得た実施例1、2、比較例1、2のポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートを射出成形型と同形に予備成形し、射出成形金型にセッティングした後、樹脂温度210℃で溶融された(株)プライムポリマー製ブロックポリプロピレン樹脂を射出して上記化粧シートと一体化させることにより化粧シート付き射出成形品を作成した。
【0018】
<性能比較>
ミネベア株式会社製「TCM−10kNB型引張圧縮試験機」を用い、25℃の雰囲気中において引張速度50mm/分、射出成形品と化粧シート間の開き角180°の条件で引っ張り剥離強度で常態剥離強度を測定した。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のポリプロピレン系樹脂射出成形品用インサート化粧シートは、自動車内装用部品や住宅等建築物の内装部材に使用される射出成形品において表面の絵付けとして利用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1…化粧シート
11…原反となるポリエチレンフィルム
12…絵柄模様層
13…表面保護層
2…熱硬化性ポリウレタン樹脂層
3…無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン樹脂層