特許第5786605号(P5786605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786605
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】フォトマスク
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20150910BHJP
   G03F 1/58 20120101ALI20150910BHJP
   G03F 1/40 20120101ALI20150910BHJP
【FI】
   G03F1/24
   G03F1/58
   G03F1/40
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-213242(P2011-213242)
(22)【出願日】2011年9月28日
(65)【公開番号】特開2013-74194(P2013-74194A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 原太
(72)【発明者】
【氏名】坂田 陽
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−212220(JP,A)
【文献】 特開2011−044520(JP,A)
【文献】 特開2010−141338(JP,A)
【文献】 特開2002−353123(JP,A)
【文献】 特開2011−151202(JP,A)
【文献】 特開2003−270773(JP,A)
【文献】 特開平6−120125(JP,A)
【文献】 特開2009−147200(JP,A)
【文献】 特開2013−187412(JP,A)
【文献】 特開2013−206936(JP,A)
【文献】 特開2012−190979(JP,A)
【文献】 特開2013−074268(JP,A)
【文献】 特開2011−176127(JP,A)
【文献】 特開2012−209481(JP,A)
【文献】 特開2012−209398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長5から15nmの光を露光光とするリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクであって、
基板と、
前記基板上部の一部に形成された犠牲膜と、
前記基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、
前記多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収膜とを有し、
前記基板は石英(SiO)を主成分とし酸化チタン(TiO)を含む材料で形成され、
前記犠牲膜はシリコン(Si)を主成分とした酸化膜(SiO)もしくは窒化膜(SiN)又は、Al膜で形成され、
前記多層反射膜は前記基板上にモリブデン(Mo)と珪素(Si)を材料とし、交互に複数積層した多層構造で形成され、
前記吸収膜は、タンタル(Ta)及びその酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料で形成された単層構造、または、タンタル(Ta)及びその酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料が積層され、最上層がタンタル(Ta)の酸化物、窒化物、酸窒化物または珪素(Si)の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料が積層されて形成された積層構造である、反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記反射型マスクブランクは、
前記多層反射膜と前記吸収膜との間に形成され、前記多層反射膜を保護する保護膜をさらに有し、
前記保護膜は、ルテニウム(Ru)またはシリコン(Si)のいずれかを含む材料で形成された単層構造、または、ルテニウム(Ru)またはシリコン(Si)のいずれかを含む材料が積層され、最上層がルテニウム(Ru)の酸化物、窒化物、酸窒化物または珪素(Si)の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料が積層されて形成された積層構造である、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記反射型マスクブランクは、
前記基板の多層反射膜とは反対側の面上に、導電膜をさらに有し、
前記導電膜はクロム(Cr)またはタンタル(Ta)のいずれかもしくはクロム(Cr)またはタンタル(Ta)の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料で形成される、請求項1または2に記載の反射型マスクブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型露光用マスク及びその製造方法並びに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体デバイスの微細化に伴い、フォトリソグラフィ技術の微細化に対する要求が高まっている。既に、フォトリソグラフィ技術の微細化への対応の一環として、リソグラフィの露光方式においては、従来の波長が193nmのArFエキシマレーザー光を用いた露光から、波長が13.5nmのEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外線)領域の光を用いた露光に置き換わりつつある。
【0003】
EUV領域の光に対しては、ほとんどの物質が高い光吸収性をもつため、従来の透過型のマスクを、EUV露光用のマスクとして用いることはできず、反射型のマスクを、EUV露光用のマスク(EUVマスク)として用いる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ガラス基板上にモリブデン(Mo)層及びシリコン(Si)層を交互に積層して多層膜からなる光反射膜を形成し、その上にタンタル(Ta)を主成分とする光吸収体によりパターンを形成する技術が開示されている。
【0004】
また、EUV光は上述の通り、光の透過を利用する屈折光学系が使用できないことから、露光機の光学系も反射型となる。このため、透過型のビームスプリッターを利用した偏向が不可能である。従って、反射型マスクでは、マスクへの入射光と反射光が同軸上に設計できない欠点があり、このため、EUVマスクは6度程度光軸を傾けてマスクへ入射した光の反射光を半導体基板に導く手法が採用されている。この手法では、マスクパターンに対する光の入射方向に依存して半導体基板上でマスクの配線パターンがマスクパターンとは異なる線幅となる射影効果と呼ばれる問題が指摘されている。そこで、この射影効果を抑制ないし軽減するために、マスクパターンを形成している吸収膜の膜厚を薄膜化することが提案されている。
【0005】
この光吸収膜の薄膜化の手法では、EUV光を吸収するのに必要な光の減衰量が不足するため、半導体基板への反射光が増加し、半導体基板上に塗布されたレジスト膜を感光させてしまう問題が発生する。さらに半導体基板ではチップを多面付で露光するため、隣接するチップにおいてはその境界領域において多重露光が発生する。
【0006】
このような問題を解決するために、反射型マスクの吸収膜から多層反射膜までを掘り込んだ溝を形成することや、回路パターン領域の吸収膜の膜厚よりも厚い膜を形成することや、反射型マスク上にレーザ照射もしくはイオン注入することで多層反射膜の反射率を低下させることにより、露光光源波長に対する遮光性の高い遮光枠を設けた反射型マスクが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−212220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、マスクパターン作製後の多層反射膜の掘り込みはSiとMoを交互に設けて一組の層としたとき、40層を加工する必要があり、上層の吸収膜を除去した後に、多層反射膜を除去することから、多層反射膜が僅か数層残留した場合は、逆に反射率を高くすることが懸念される。
【0009】
また、反射型マスク上にレーザ照射もしくはイオン注入することで遮光枠を形成する場合、多層反射膜以外によるレーザ光もしくはイオンの損失があるため、この損失分を考慮したレーザ光もしくはイオンを照射しなくてはならない。また多層反射膜以外の膜にはレーザ光もしくはイオンの照射によるダメージが生じ、吸収膜の露光光源波長の吸収率の低下が懸念される。
【0010】
そこで、本発明は遮光枠の形成において、多層反射膜の掘り込みの際、遮光枠の両側それぞれをドライエッチングした後、掘り込み溝にウェットエッチング液を満たすことで多層反射膜の下層の犠牲膜を削り、その上層の多層反射膜から吸収膜までをリフトオフさせることにより、多層反射膜を残留させることなく、且つ容易に、高い遮光性を有する反射型マスクを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は、波長5から15nmの光を露光光とするリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクであって、基板と、基板上部の一部に形成された犠牲膜と、基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収膜とを有し、基板は石英(SiO2)を主成分とし酸化チタン(TiO2)を含む材料で形成され、犠牲膜はシリコン(Si)を主成分とした酸化膜(SiO)もしくは窒化膜(SiN)又は、Al膜で形成され、多層反射膜は基板上にモリブデン(Mo)と珪素(Si)を材料とし、交互に複数積層した多層構造で形成され、吸収膜は、タンタル(Ta)及びその酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料で形成された単層構造、または、タンタル(Ta)及びその酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料が積層され、最上層がタンタル(Ta)の酸化物、窒化物、酸窒化物または珪素(Si)の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料が積層されて形成された積層構造である。
【0012】
また、反射型マスクブランクは、多層反射膜と吸収膜との間に形成され、多層反射膜を保護する保護膜をさらに有し、保護膜は、ルテニウム(Ru)またはシリコン(Si)のいずれかを含む材料で形成された単層構造、または、ルテニウム(Ru)またはシリコン(Si)のいずれかを含む材料が積層され、最上層がルテニウム(Ru)の酸化物、窒化物、酸窒化物または珪素(Si)の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料が積層されて形成された積層構造であることが好ましい。
【0013】
また、反射型マスクブランクは、基板の多層反射膜とは反対側の面上に、導電膜をさらに有し、導電膜はクロム(Cr)またはタンタル(Ta)のいずれかもしくはクロム(Cr)またはタンタル(Ta)の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料で形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、遮光枠の形成において、多層反射膜の掘り込みの際、遮光枠の両側それぞれをドライエッチングした後、掘り込み溝にウェットエッチング液を満たすことで多層反射膜の下層の犠牲膜を除去し、その上層の多層反射膜から吸収膜までをリフトオフさせることにより、多層反射膜を残留させることなく、且つ容易に、高い遮光性を有する反射型マスクを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の反射型マスクブランクスを説明する断面図
図2】本発明の反射型マスクを説明する平面図
図3】本発明の反射型マスクの製造方法を説明する図
図4】本発明の反射型マスクの製造方法の実施例を示す断面図
図5】本発明の反射型マスクの製造方法の実施例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
先ず、本発明のマスクブランクについて説明する。図1(a)は反射型マスクブランクス10の断面図であり、より具体的には、EUV光を用いた露光に使用するマスク用のブランクスである。このEUV光の波長は、例えば13.5nmである。基板11上部の一部に犠牲膜12と、基板一面上に、多層反射膜13、保護膜14、吸収膜15を形成する。吸収膜15は吸収膜(単層)15a(図1(a))もしくは吸収膜(積層)15b(図1(b))である。基板11の多層反射膜13とは反対面側には裏面導電膜16を形成する。犠牲膜12は遮光枠領域Aをエッチングして溝を形成した後、公知のプラズマCVDやスパッタリング法、イオンプレーティング法を用いて蒸着させることにより形成する。多層反射膜13、保護膜14、吸収膜15、裏面導電膜16は公知のスパッタリング法を用いることができる。
【0019】
各構成の一例として、以下を挙げることができる。これらはマスクブランクまたはマスクに所望の性能・性質を与えるために公知の材料や技術を用いて適宜変更することができる。
【0020】
基板11は石英(SiO2)を主成分とし酸化チタン(TiO2)を含む材料で形成することができる。この他に合成石英やシリコンや金属などを使用することができる。基板11は、低熱膨張の材料を使用することが好ましい。
【0021】
以下の各膜(層)は、上述したように公知の蒸着方法を使用して形成することができる。
【0022】
犠牲膜12はシリコン(Si)を主成分とした酸化膜(SiO)もしくは窒化膜(SiN)又は、アルミニウム(Al)膜で形成することができる。犠牲膜12は、基板の遮光枠領域とする任意の場所に、予め基板をNaOHやCsOH、HF、KOHなどのウェットエッチングや、フッ素系ガスを用いたガスプラズマによるドライエッチングによってエッチングしておき、そこに上記材料を用いて犠牲膜を形成することができる。
【0023】
犠牲膜12の膜厚が1nmよりも薄い場合においては、成膜が困難となる可能性があるため好ましくない。また、1.5μmよりも厚い場合は、リフトオフに時間を要することとなるため、スループットの観点から好ましくない。そのため、犠牲膜12の膜厚は、1nm〜1.5μmとすることが好ましい。
【0024】
多層反射膜13は基板上にモリブデン(Mo)と珪素(Si)を材料とし、交互に複数積層(堆積)した多層構造で形成することができる。
【0025】
保護膜14は単層構造もしくは積層構造とすることができ、多層反射膜上に形成され、ルテニウム(Ru)またはシリコン(Si)のいずれかを含む材料で形成することができる。保護膜14を積層構造とする場合は、上記の単層構造の上に、最上層としてルテニウム(Ru)の酸化物、窒化物、酸窒化物や珪素(Si)の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料で形成することができる。また、単層構造と異なる組成の物質を用いる(単層がSi窒化物であれば、最上層はSi酸化物など)ことで積層構造とすることができる。
【0026】
吸収膜15は、単層構造(15a)もしくは積層構造(15b)となっており、保護膜上に形成され、タンタル(Ta)及びその酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料で形成され、積層構造の場合はその最上層がタンタル(Ta)の酸化物、窒化物、酸窒化物や珪素(Si)の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料で形成することができる。
【0027】
裏面導電膜16は、多層反射膜13とは反対の基板面に、クロム(Cr)またはタンタル(Ta)のいずれかの金属もしくはその酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料で形成することができる。
【0028】
裏面導電膜16は、マスクブランクやマスクを固定するためにチャッキングを行う場合に使用することができる。その他の固定方法を用いる場合は、必ずしも裏面導電膜を形成しなくても良い。
【0029】
上記のようなマスクブランクとすることで、次のようにマスク形成を行なって、遮光枠を形成することができる。
【0030】
次に、本発明のマスクの製造方法について説明する。図2は、図1で示した反射型マスクブランクス10を用いた露光用反射型マスクである。回路パターンCの外側に吸収膜15、保護膜14及び、多層反射膜13の一部に遮光枠領域Bを形成した構造である。
【0031】
露光用反射型マスクの製造方法を図3図5に示す。図3は工程を、図4に加工状態の断面図を示す。まず、図1に示したブランクスを用意し、吸収膜15に遮光枠領域Bと回路パターンCとを形成する。電子線に反応を示す化学増幅系や非化学増幅系レジスト21を塗布(S1)し、所定の遮光枠領域Bと回路パターンCを描画(S2)する。
【0032】
その後アルカリ溶液などで現像(S3)を行い、形成したレジスト21のパターンをマスクにフッ素系ガスや塩素系ガスを用いたガスプラズマによるエッチング(S4)を行い、不要なレジスト21のパターンを酸素プラズマによる灰化や硫酸やオゾン水などの酸化薬液による分解、ないしは有機溶剤などで溶解除去(S5)する。
【0033】
その後必要に応じて酸・アルカリ系薬品やオゾンガスや水素ガスなどを溶解した超純水や有機アルカリ系薬品、界面活性剤などによる洗浄処理(S6)と遠心力を利用したスピン乾燥(S7)を行う。以上で遮光枠領域Bと回路パターンCが形成された。
【0034】
次に、遮光枠領域Bの保護膜14と多層反射膜13の部分を形成する。上記のマスクに、紫外線または電子線に反応を示すレジスト21を塗布する(S8)。次に遮光枠領域Bを露光または電子線で描画する(S9)。
【0035】
(S3)、(S4)と同様に、現像(S10)、エッチング(S11)を行い、遮光枠の一部を形成する。次いで、形成された掘り込み溝に、フッ化アンモニウム水溶液、フッ酸と硝酸を混合したもの、燐酸などによるウェットエッチング(S12)を行うことにより犠牲膜12を除去し、その上層の多層反射膜13と保護膜14と吸収膜15とレジスト21までをリフトオフさせる。
【0036】
さらに、レジスト21の除去(S13)、洗浄(S14)、乾燥(S15)を行い遮光枠領域Bを完成する。エッチング工程(S11)ではまず保護膜14の除去をフッ素系ガスプラズマを用い、多層反射膜13は保護膜14と同じくフッ素系ガスプラズマもしくは塩素ガス系プラズマを交互に用いる方法を行う。
【0037】
以上の工程により反射型マスク100が完成する。
【0038】
本発明によれば、遮光枠の形成において、基板に犠牲膜を設けることにより多層反射膜を残留させることなく、且つ容易に、高い遮光性を有する反射型マスクの製造が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、反射型露光用マスク等に有用である。
【符号の説明】
【0040】
10 反射型マスクブランクス
11 基板
12 犠牲膜
13 多層反射膜
14 保護膜
15、15a、15b 吸収膜
16 裏面導電膜
21 レジスト(パターン)
100 反射型マスク
図1
図2
図3
図4
図5