(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体に吸込口と吹出口とを備え、前記吸込口と前記吹出口とを結ぶ空気通路に熱交換器とクロスフローファンとを配置し、前記熱交換器で冷媒と熱交換された調和空気を前記吹出口から吹き出す空気調和機であって、
前記吹出口の下縁部に、上面の後端部に前記吹出口の前方に向けた噴出口を備え同噴出口の前方にコアンダ面とディフューザ面とを連続して設けた中空で板状の吹出ノズルを回動自在に設け、前記本体内の一側部に送風機を配置し、前記吹出ノズルと前記送風機とを結び、同送風機からの空気を前記吹出ノズルに供給する送風ダクトを設けたことを特徴とする空気調和機。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機は、
図6に示すように、吸込口102と吹出口103とを結ぶ本体101内の空気通路104に熱交換器105とクロスフローファン106とを備え、吹出口103に左右方向の風向を偏向する左右風向板107と、上下方向の風向を偏向する上下風向板108とが配置される一方、吹出口103の上側位置には風向制御用送風ファン109が配置されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
これにより、吸込口102から吸い込まれた空気が熱交換器105で冷媒と熱交換され、熱交換された調和空気がクロスフローファン106によって吹出口103に送出され、左右風向板107および上下風向板108によって吹出風向が偏向され、さらに、風向制御用送風ファン109によって吹出風向が微調整されて吹出口103から吹き出されるようにしている。
【0004】
クロスフローファン106で吹出口103に送出された調和空気は、上下方向の風向が上下風向板108に当たることで偏向される。また、風向制御用送風ファン109によって噴出口110から噴出される空気も、上下風向板108に当たって前方に吹き出される。
【0005】
そのため、吹出口103で上下方向の風向が偏向される際、クロスフローファン106による調和空気および風向制御用送風ファン109によって前方に噴出される空気は、上下風向板108に当たることで空気抵抗を受けることになって、送風性能を低下させずに広範囲に風向を偏向することができなかった。
【0006】
また、風向制御用送風ファン109が吹出口103の上部であって本体101の前面下部に設置されていることから、風向を微調整できる風速が得られる大きさの風向制御用送風ファン109を設置するスペースを確保する必要があり、本体101の前後寸法が大型化してしまうという問題点があった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【0014】
本発明による空気調和機は、
図1乃至
図5に示すように、開閉パネル1bを有する前面パネル1aで覆われた本体1に吸込口2と吹出口3とを備え、吸込口2と吹出口3とを結ぶ空気通路に、吸込口2から吸い込まれた吸込空気を冷媒と熱交換する熱交換器4と、熱交換された調和空気を吹出口3に送出するクロスフローファン5とを配置している。
【0015】
なお、
図2は、本体1内に配置される構成品の概略を示す概念図で、熱交換器4と、ファンケーシング7に収納したシロッコファン8と、吹出口3の上縁部3aに設けた上側の吹出ノズル12と、下縁部3bに設けた下側の吹出ノズル13と、ファンケーシング7と上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13とを結ぶ送風ダクト14,15とを正面側から見た時の配置を示している。
【0016】
図2により、本体1内に配置された熱交換器4と、熱交換器4で冷媒と熱交換した空気を吹き出すクロスフローファン5と、熱交換器4の側部に配置されるファンケーシング7に収納されたシロッコファン8と、シロッコファン8から送風ダクト14により空気が送られ吹出口3の上縁部3aに設置した上側の吹出ノズル12(
図3および
図4参照)と、上側の吹出ノズル12の一側を支持するエアカプラ141と、送風ダクト15により空気が送られ吹出口3の下縁部3bに設置した下側の吹出ノズル13(
図3および
図4参照)と、下側の吹出ノズル13の一側を支持するエアカプラ151と、上側の吹出ノズル12の他側に連係されて上側の吹出ノズル12を駆動する駆動モータ121および歯車122からなる連係部123と、下側の吹出ノズル13の他側に連係されて下側の吹出ノズル13を駆動する駆動モータ131および歯車132からなる連係部133とを示している。
【0017】
吸込口2から吸い込まれた吸込空気は、熱交換器4で冷媒と熱交換されたのち、フロントガイダ9およびリヤガイダ10と、フロントガイダ9およびリヤガイダ10間の両側壁11a,11bとでガイドされて、ファンモータ6で駆動されるクロスフローファン5により、調和空気として吹出口3から吹き出されることで被空調室の空気調和が行われる。
【0018】
本体1の前面下部に備えた吹出口3の上縁部3aには、フロントガイダ9に連続して空気通路を延長するように中空で板状の上側の吹出ノズル12が、吹出口3の下縁部3bには、リヤガイダ10に連続して空気通路を延長するように中空で板状の下側の吹出ノズル13がそれぞれ設置されている。
【0019】
そして、上側の吹出ノズル12に設けられた後述する噴出口12aおよび下側の吹出ノズル13に設けられた後述する噴出口13aから噴出した空気の流れを、上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13の表面に沿わせることにより、吹出口3から吹き出される調和空気が、上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13に直接当たらないようにすることで空気抵抗によるロスが生じないようにしている。
【0020】
上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13は上下に回動可能とすることで、上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13の表面に沿って流れる空気で吹出口3から吹き出される調和空気を誘引することにより、上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13による空気抵抗を抑えて、吹出口3から吹き出される調和空気の風向を偏向できるようにしている。
【0021】
また、後述するシロッコファン8と吸気部71および吐出部72を有してシロッコファン8を収納するファンケーシング7とからなる送風機と、吹出ノズル12,13とファンケーシング7とを結び、送風機により生成された圧送空気を吹出ノズル12,13に供給する送風ダクト14,15とを本体1の側部に配設することで、本体1の奥行き寸法が大型化しないようにしている。
【0022】
次に、吹出口3から吹き出される調和空気が、吹出口3の上縁部3aに配置された上側の吹出ノズル12および吹出口3の下縁部3bに配置された下側の吹出ノズル13から噴出される空気流によって抵抗を減らし、且つ風向を偏向する構成について、添付図に基づいて以下に説明する。
【0023】
上側の吹出ノズル12は、
図1乃至
図5に示すように、ファンケーシング7の吸気部71から吸い込まれた室内空気を、シロッコファン8により送風ダクト14で導いて吹出ノズル12の下面に形成した噴出口12aから噴出することにより、コアンダ面12fによるコアンダ効果により下面のディフューザ部12gをなすディフューザ面12g1に沿うように流出する。
【0024】
同様に、下側の吹出ノズル13は、吸気部71から吸い込まれた室内空気を、送風ダクト15で導いて吹出ノズル13の上面に形成した噴出口13aから噴出することにより、コアンダ面13fによるコアンダ効果により上面のディフューザ部13gをなすディフューザ面13g1に沿うように流出する。
【0025】
シロッコファン8は、吸込口2から吸い込まれた空気の一部を吸気する吸気部71と、送風ダクト14,15に夫々接続される吐出部72,73とを備えて、本体1内の側部に設けられたファンケーシング7内に収納されている。そのため、
図3および
図4に破線で示す風向制御用送風ファン109が、上述した背景技術と同様に本体1内の前面下部に設置される場合に較べて、この風向制御用送風ファン109を設置するスペースが不要になるため、本体1の奥行き寸法は
図3および
図4に示す寸法Aだけ小型化できる。なお、ファンケーシング7内に収納されたシロッコファン8は、本体1内の側部に設けられる構成に限らず、本体1外の側部に設けられてもよい。
【0026】
シロッコファン8は、本体1内の一側部に設けられたファンモータ81によって駆動される。なお、シロッコファン8は、クロスフローファン5と同軸状に配置されることで、シロッコファン8用のファンモータ81に代えて、クロスフローファン5を駆動するファンモータ51によって駆動されるようにしてもよい。
【0027】
図5に示すように、上側の吹出ノズル12は、中空で板状に形成されその下面のディフューザ部12gおよびコアンダ面12fの後部から吹出口3の前方に向けた噴出口12aを有して、フロントガイダ9に連続した送風路を構成し、下側の吹出ノズル13は、中空で板状に形成されその上面のディフューザ部13gおよびコアンダ面13fの後部から吹出口3の前方に向けた噴出口13aを有して、リヤガイダ10に連続した送風路を構成している。
【0028】
上側の吹出ノズル12は、一側を吹出口3の上部に設けた枢支部124で回動可能に枢支し、他側を送風ダクト14に連結されたエアカプラ141で回動可能に枢支して、上下方向に回動できるようにしている。下側の吹出ノズル13は、一側を吹出口3の下部に設けた枢支部134で回動可能に枢支し、他側を送風ダクト15に連結されたエアカプラ151で回動可能に枢支して、上下方向に回動できるようにしている。
【0029】
上側の吹出ノズル12は、
図2および
図3(B)に示すように、枢支部124およびエアカプラ141で回動可能に枢支され、歯車122からなる連係部123に連係された駆動モータ121で駆動されて上下方向に回動し、下側の吹出ノズル13は、
図2および
図4(B)に示すように、枢支部134およびエアカプラ151で回動可能に枢支され、歯車132からなる連係部133に連係された駆動モータ131で駆動されて上下方向に回動する。
【0030】
上側の吹出ノズル12の後端部には、
図5に示すように、内壁12bと外壁12cとが互いに近づくようにループ状または折曲げ形状で配置されている。内壁12bと外壁12cとの間には、空気を高速で噴出させるための噴出口12aが、中空になっている吹出ノズル12の内部から下方のコアンダ面12fに向かって入口側12dから徐々に狭くなる間隙が形成され、その間隙はこのコアンダ面12fで出口側12eが開口するように形成されている。
【0031】
上側の吹出ノズル12の中空部より狭く形成された噴出口12aの出口側12eは、コアンダ面12fを含む外壁12cの表面に連続して形成されている。噴出口12aの外壁12cは、コアンダ面12fの下流側に配置されたディフューザ部12gと、ディフューザ部12gの下流側に配置されたガイド部12hに連続している。
【0032】
シロッコファン8によって、上側の吹出ノズル12に形成された噴出口12aからコアンダ面12fおよびディフューザ部12gに沿うように噴出される噴出空気は、吹出口3からクロスフローファン5によって吹き出される調和空気流よりも速い速度で噴出されることで、この調和空気流がディフューザ部12gの表面寄りに誘引される。
【0033】
下側の吹出ノズル13の後端部には、
図5に示すように、内壁13bと外壁13cとが互いに近づくようにループ状または折曲げ形状で配置されている。内壁13bと外壁13cとの間には、空気を高速で噴出させるための噴出口13aが、中空になっている吹出ノズル13の内部から上方のコアンダ面13fに向かって入口側13dから徐々に狭くなる間隙が形成され、その間隙はこのコアンダ面13fで出口側13eが開口するように形成されている。
【0034】
下側の吹出ノズル13の中空部より狭く形成された噴出口13aの出口側13eは、コアンダ面13fを含む外壁13cの表面に連続して形成されている。噴出口13aの外壁13cは、コアンダ面13fの下流側に配置されたディフューザ部13gと、ディフューザ部13gの下流側に配置されたガイド部13hに連続している。
【0035】
シロッコファン8によって、下側の吹出ノズル13に形成された噴出口13aからコアンダ面13fおよびディフューザ部13gに沿うように噴出される噴出空気は、吹出口3からクロスフローファン5によって吹き出される調和空気流よりも速い速度で噴出されることで、この調和空気流がディフューザ部13gの表面寄りに誘引される。
【0036】
上側の吹出ノズル12は、吹出口3の側に向けた噴出口12aに連続して凸曲面状に形成されたコアンダ面12fを有しており、噴出口12aは、噴出空気をコアンダ面12fに沿って噴出するように配置されている。
【0037】
下側の吹出ノズル13は、吹出口3の側に向けた噴出口13aに連続して凸曲面状に形成されたコアンダ面13fを有しており、噴出口13aは、噴出空気をコアンダ面13fに沿って噴出するように配置されている。
【0038】
上側の吹出ノズル12のコアンダ面12fおよび下側の吹出ノズル13のコアンダ面13fは、これらコアンダ面12fおよびコアンダ面13fの表面に近接して設けられた噴出口12aおよび噴出口13aを出た空気(流体)の流れがコアンダ効果を示す、既知の形状になっている。噴出口12aおよび噴出口13aから噴出された空気(流体)は、コアンダ効果によって、コアンダ面12fおよびコアンダ面13fに沿ってほぼ「くっついて」または「貼りついて」流れようとする。
【0039】
ここで、熱交換器4で冷媒と熱交換されて吹出口3から吹き出される調和空気を一次空気流とし、コアンダ面12fおよびコアンダ面13fによってコアンダ効果を示す噴出空気を二次空気流として、空気の流れについて以下に説明する。
【0040】
「一次空気流の速度」<「二次空気流の速度」とすることで、一次空気流が二次空気流に誘引されて風向偏向される。そのため、
図3(A)および
図3(B)に示すように、上側の吹出ノズル12を上方に回動することで、この吹出ノズル12の表面a,a1,a2に沿ってほぼ「くっついて」または「貼りついて」流れようとする二次空気流に一次空気流が誘引されて、この一次空気の流れが上方に偏向される。
【0041】
これにより、吹出口3から一次空気流として調和空気を水平に吹き出す際、調和空気の流れが上方に向けて偏向されることで遠方まで届くようになり、被空調室内の広範囲に調和空気を行き届かせて快適な空気調和を実現できるようになる。
【0042】
その際、一次空気流が二次空気流に誘引されることで、例えば、吹出口3に設けられた図示しない上下風向板によって強制的に風向偏向される場合のように、一次空気流が上下風向板に当たって空気抵抗によるロスが生じる虞がないため送風性能が良好になり、また、騒音の原因になる虞がないため静かである。
【0043】
なお、上側の吹出ノズル12を上方に回動するのと同時に、下側の吹出ノズル13を上方に回動して上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13を略平行状態にすることで、吹出口3から一次空気流として吹き出される調和空気を拡散させることなく効率よく遠方まで届かせることができる。
【0044】
また、調和空気を下方に吹き出す際、
図4(A)および
図4(B)に示すように下側の吹出ノズル13を下方に回動することで、この吹出ノズル13の表面b,b1,b2に沿ってほぼ「くっついて」または「貼りついて」流れようとする二次空気流に一次空気流が誘引されて、この一次空気の流れが下方に向けて偏向される。
【0045】
これにより、運転時に吹出口3から一次空気流として調和空気を吹き出す際、調和空気の流れが下方に向けて偏向されることで床面まで届くようになり、床面に調和空気を行き届かせて快適な空気調和を実現できるようになる。
【0046】
その際、一次空気流が二次空気流に誘引されることで、例えば、吹出口3に設けられた図示しない上下風向板によって強制的に風向偏向される場合のように、一次空気流が上下風向板に当たって空気抵抗によるロスが生じる虞がないため送風性能が良好になり、また、騒音の原因になる虞がないため静かである。
【0047】
なお、下側の吹出ノズル13を下方に回動するのと同時に、上側の吹出ノズル12を下方に回動して上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13を略平行状態にすることで、吹出口3から一次空気流として吹き出される調和空気を拡散させることなく効率よく床面まで届かせることができる。
【0048】
吹出口3に設けられた上側の吹出ノズル12のディフューザ部12gは、フロントガイダ9に連続するように形成されたディフューザ面12g1を有し、下側の吹出ノズル13のディフューザ部13gは、リヤガイダ10に連続するように形成されたディフューザ面13g1を有している。
【0049】
上側の吹出ノズル12のガイド部12hは、ディフューザ面12g1に対し角度をなして配置されたガイド面12h1を有しており、ガイド面12h1の下流側は、外方に拡がったフレア面12iで終端している。また、下側の吹出ノズル13のガイド部13hは、ディフューザ面13g1に対し角度をなして配置されたガイド面13h1を有しており、ガイド面13h1の下流側は、外方に拡がったフレア面13iで終端している。
【0050】
上側の吹出ノズル12のディフューザ部12gおよび下側の吹出ノズル13のディフューザ部13gが、フロントガイダ9およびリヤガイダ10に夫々連続するディフューザ面12g1およびディフューザ面13g1を有したことで、熱交換器4で冷媒と熱交換されクロスフローファン5の下流側に送出される調和空気は、フロントガイダ9に連続するディフューザ面12g1およびリヤガイダ10に連続するディフューザ面13g1に沿って被空調室に吹き出される。
【0051】
以上説明したように、本発明の構成によれば、吹出口3に風向を偏向する上側および下側の吹出ノズル12,13を備え、本体1の側部にシロッコファン8を収納したファンケーシング7と、ファンケーシング7と上側および下側の吹出ノズル12,13とを結ぶ送風ダクト14,15とを備えたので、コアンダ効果および誘引の効果により、回動自在な上側および下側の吹出ノズル12,13で噴出した空気流により、吹出口3から吹き出される調和空気を風向偏向できる空気調和機となる。また、本体1内の前面下部に上述した背景技術のような風向制御用送風ファン109を設置した場合に較べて、奥行き寸法の大型化を抑えた空気調和機となる。
【0052】
なお、本発明の実施の形態では、吹出口3の上縁部3aに上側の吹出ノズル12が設けられ、下縁部3bに下側の吹出ノズル13が設けられた構成として説明したが、この構成に限定されることなく、吹出ノズル12または吹出ノズル13の何れか一方が設けられた構成であってもよい。