(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の調湿装置では、循環路を常に液体吸収剤が循環している。従って、この調湿装置は、吸湿後の低温の液体吸収剤を加熱する動作と、放湿後の高温の液体吸収剤を冷却する動作とを、常に行う必要がある。このため、従来の調湿装置には、液体吸収剤の加熱と冷却に要する電力等のエネルギが嵩むという問題があり、その運転効率の点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体吸収剤を用いた調湿装置の運転効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、液体吸収剤が流れる吸収剤回路(30)と、それぞれが上記吸収剤回路(30)に設けられて該吸収剤回路(30)の液体吸収剤を空気へ放湿させ又は空気から吸湿させる第1調湿部(40a)及び第2調湿部(40b)と、上記第1調湿部(40a)と上記第2調湿部(40b)の一方において空気へ放湿する液体吸収剤を加熱し、他方において空気から吸湿する液体吸収剤を冷却する熱源部(35)とを備え、上記第1調湿部(40a)を通過した空気を室内へ供給して上記第2調湿部(40b)を通過した空気を室外へ排出する調湿装置を対象とする。そして、上記吸収剤回路(30)は、上記第1調湿部(40a)が設けられた第1循環路(80)と、上記第2調湿部(40b)が設けられた第2循環路(85)と、上記第1循環路(80)と上記第2循環路(85)のそれぞれにおいて上記液体吸収剤が循環するように上記第1循環路(80)と上記第2循環路(85)の間を遮断する第1状態と、上記第1調湿部(40a)から上記第2調湿部(40b)へ上記液体吸収剤が送られ且つ上記第2調湿部(40b)から上記第1調湿部(40a)へ上記液体吸収剤が送られるように上記第1循環路(80)と上記第2循環路(85)を連通させる第2状態とに交互に切り換わる切換機構(95)とを備えており、上記第1循環路(80)と上記第2循環路(85)のうちの少なくとも上記第1循環路(80)に、蓄熱媒体を上記液体吸収剤と熱交換させることによって冷熱または温熱を蓄える蓄熱部(82)が設けられるものである。
【0008】
第1の発明の吸収剤回路(30)では、切換機構(95)が第1状態である場合、第1循環路(80)と第2循環路(85)のそれぞれにおいて液体吸収剤が循環する。また、この吸収剤回路(30)では、切換機構(95)が第2状態である場合、第1調湿部(40a)から第2調湿部(40b)へ液体吸収剤が送られ、第2調湿部(40b)から第1調湿部(40a)へ液体吸収剤が送られる。
【0009】
第1の発明の調湿装置(10)の動作について、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が空気から吸湿し、第2調湿部(40b)において液体吸収剤が空気へ放湿する場合を例に説明する。
【0010】
この場合に切換機構(95)が第1状態であるときは、第1循環路(80)を循環する液体吸収剤が熱源部(35)によって冷却され、第2循環路(85)を循環する液体吸収剤が熱源部(35)によって加熱される。第1循環路(80)を循環する液体吸収剤は、第1調湿部(40a)において空気から吸湿し、その濃度が次第に低下する。一方、第2循環路(85)を循環する液体吸収剤は、第2調湿部(40b)において空気へ放湿し、その濃度が次第に上昇する。このため、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が空気から吸収する水分の量と、第2調湿部(40b)において液体吸収剤が空気へ放出する水分の量とは、時間が経過するにつれて次第に減少してゆく。また、この場合において、第1循環路(80)に設けられた蓄熱部(82)は、その蓄熱媒体が液体吸収剤と熱交換することによって冷熱を蓄える。
【0011】
この場合に切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わると、第1循環路(80)の低温で低濃度の液体吸収剤が第2循環路(85)へ流入し、第2循環路(85)の高温で高濃度の液体吸収剤が第1循環路(80)へ流入する。その後、切換機構(95)が第2状態から第1状態に戻ると、吸収剤回路(30)では、第1循環路(80)と第2循環路(85)のそれぞれにおいて液体吸収剤が循環する。切換機構(95)が第2状態から第1状態に戻ってから暫くの間、第1循環路(80)に設けられた蓄熱部(82)の蓄熱媒体は、第2循環路(85)から第1循環路(80)へ流入した高温の液体吸収剤から吸熱する。切換機構(95)が第2状態から第1状態に戻った後は、切換機構(95)が第1状態から第2状態へ切り換わる直前に比べて、第1調湿部(40a)へ供給される液体吸収剤の濃度が高くなり、第2調湿部(40b)へ供給される液体吸収剤の濃度が低下する。このため、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が空気から吸収する水分の量と、第2調湿部(40b)において液体吸収剤が空気へ放出する水分の量とが回復する。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記第1循環路(80)では、上記切換機構(95)が上記第2状態であるときに上記第2調湿部(40b)から上記第1調湿部(40a)へ向かう上記液体吸収剤が流れる部分に、上記蓄熱部(82)が配置されるものである。
【0013】
第2の発明の第1循環路(80)では、切換機構(95)が第2状態であるときにおける第1調湿部(40a)の上流に、蓄熱部(82)が配置される。上述したように、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わると、第2循環路(85)の液体吸収剤が第1循環路(80)へ流入する。その際、第2循環路(85)から第1循環路(80)へ流入した液体吸収剤は、蓄熱部(82)を通過する際に温熱または冷熱を供給され、その後に第1調湿部(40a)へ流入する。例えば、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が空気から吸湿し、第2調湿部(40b)において液体吸収剤が空気へ放湿する場合、第2循環路(85)から第1循環路(80)へ流入した高温の液体吸収剤は、蓄熱部(82)を通過する際に冷却されてから第1調湿部(40a)へ流入する。また、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が空気へ放湿し、第2調湿部(40b)において液体吸収剤が空気から吸湿する場合、第2循環路(85)から第1循環路(80)へ流入した低温の液体吸収剤は、蓄熱部(82)を通過する際に加熱されてから第1調湿部(40a)へ流入する。
【0014】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記第1循環路(80)と上記第2循環路(85)のそれぞれに上記蓄熱部(82,87)が設けられており、上記第2循環路(85)では、上記切換機構(95)が上記第2状態であるときに上記第1調湿部(40a)から上記第2調湿部(40b)へ向かう上記液体吸収剤が流れる部分に、上記蓄熱部(87)が配置されるものである。
【0015】
第3の発明では、第1循環路(80)と第2循環路(85)のそれぞれに蓄熱部(82,87)が設けられる。この発明の第2循環路(85)では、切換機構(95)が第2状態であるときにおける第2調湿部(40b)の上流に、蓄熱部(87)が配置される。上述したように、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わると、第1循環路(80)の液体吸収剤が第2循環路(85)へ流入する。その際、第1循環路(80)から第2循環路(85)へ流入した液体吸収剤は、蓄熱部(87)を通過する際に温熱または冷熱を供給され、その後に第2調湿部(40b)へ流入する。例えば、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が空気から吸湿し、第2調湿部(40b)において液体吸収剤が空気へ放湿する場合、第1循環路(80)から第2循環路(85)へ流入した低温の液体吸収剤は、蓄熱部(87)を通過する際に加熱されてから第2調湿部(40b)へ流入する。また、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が空気へ放湿し、第2調湿部(40b)において液体吸収剤が空気から吸湿する場合、第1循環路(80)から第2循環路(85)へ流入した高温の液体吸収剤は、蓄熱部(87)を通過する際に冷却されてから第2調湿部(40b)へ流入する。
【0016】
第4の発明は、上記第1〜第3のいずれか一つの発明において、上記蓄熱部(82,87)の蓄熱媒体は、上記液体吸収剤と熱交換することによって相変化するものである。
【0017】
第4の発明において、蓄熱部(82,87)の蓄熱媒体は、相変化することによって温熱または冷熱を蓄える。つまり、蓄熱部(82,87)は、蓄熱媒体の顕熱と潜熱の両方として、温熱または冷熱を蓄える。
【0018】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記第1調湿部(40a)において上記液体吸収剤が吸湿して上記第2調湿部(40b)において上記液体吸収剤が放湿する除湿運転を実行可能であり、上記熱源部(35)は、上記液体吸収剤を所定の目標放湿温度以上にまで加熱し、上記液体吸収剤を所定の目標吸湿温度以下にまで冷却する一方、上記第1循環路(80)に設けられた上記蓄熱部(82)は、融点が上記目標放湿温度よりも上記目標吸湿温度に近い低融点の潜熱蓄熱剤を、上記蓄熱媒体として備えるものである。
【0019】
第6の発明は、上記第4の発明において、上記第1調湿部(40a)において上記液体吸収剤が放湿して上記第2調湿部(40b)において上記液体吸収剤が吸湿する加湿運転を実行可能であり、上記熱源部(35)は、上記液体吸収剤を所定の目標放湿温度以上にまで加熱し、上記液体吸収剤を所定の目標吸湿温度以下にまで冷却する一方、上記第1循環路(80)に設けられた上記蓄熱部(82)は、融点が上記目標吸湿温度よりも上記目標放湿温度に近い高融点の潜熱蓄熱剤を、上記蓄熱媒体として備えるものである。
【0020】
第7の発明は、上記第4の発明において、上記第1調湿部(40a)において上記液体吸収剤が吸湿して上記第2調湿部(40b)において上記液体吸収剤が放湿する除湿運転と、上記第1調湿部(40a)において上記液体吸収剤が放湿して上記第2調湿部(40b)において上記液体吸収剤が吸湿する加湿運転を実行可能であり、上記熱源部(35)は、上記液体吸収剤を所定の目標放湿温度以上にまで加熱し、上記液体吸収剤を所定の目標吸湿温度以下にまで冷却する一方、上記第1循環路(80)に設けられた上記蓄熱部(82)は、融点が上記目標放湿温度よりも上記目標吸湿温度に近い低融点の潜熱蓄熱剤と、融点が上記目標吸湿温度よりも上記目標放湿温度に近い高融点の潜熱蓄熱剤とを、上記蓄熱媒体として備えるものである。
【0021】
第5及び第7の各発明では、調湿装置(10)が除湿運転を行う。この除湿運転について説明する。切換機構(95)が第1状態になっているときは、第1循環路(80)を循環する液体吸収剤が熱源部(35)によって冷却され、第2循環路(85)を循環する液体吸収剤が熱源部(35)によって加熱される。第1循環路(80)に設けられた蓄熱部(82)では、低融点の潜熱蓄熱剤である蓄熱媒体が、液体吸収剤と熱交換して凝固する。切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わると、第1循環路(80)には、それまで第2循環路(85)を循環していた液体吸収剤が流入する。切換機構(95)が第2状態から第1状態へ戻ると、第1循環路(80)では、第2循環路(85)から流入した液体吸収剤が循環し、蓄熱部(82)の蓄熱媒体が液体吸収剤から吸熱して融解する。そして、第1循環路(80)を循環する液体吸収剤の温度が蓄熱部(82)の蓄熱媒体の融点を下回ると、蓄熱部(82)の蓄熱媒体が再び凝固し始める。
【0022】
第6及び第7の各発明では、調湿装置(10)が加湿運転を行う。この加湿運転について説明する。切換機構(95)が第1状態になっているときは、第1循環路(80)を循環する液体吸収剤が熱源部(35)によって加熱され、第2循環路(85)を循環する液体吸収剤が熱源部(35)によって冷却される。第1循環路(80)に設けられた蓄熱部(82)では、高い融点の潜熱蓄熱剤である蓄熱媒体が、液体吸収剤と熱交換して融解する。切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わると、第1循環路(80)には、それまで第2循環路(85)を循環していた液体吸収剤が流入する。切換機構(95)が第2状態から第1状態へ戻ると、第1循環路(80)では、第2循環路(85)から流入した液体吸収剤が循環し、蓄熱部(82)の蓄熱媒体が液体吸収剤へ放熱して凝固する。そして、第1循環路(80)を循環する液体吸収剤の温度が蓄熱部(82)の蓄熱媒体の融点を上回ると、蓄熱部(82)の蓄熱媒体が再び融解し始める。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、調湿装置(10)の吸収剤回路(30)に切換機構(95)が設けられ、この切換機構(95)が第1状態と第2状態に交互に切り換わる。このため、調湿装置(10)の運転中に熱源部(35)が液体吸収剤に付与する温熱と冷熱の量を削減することができ、液体吸収剤の加熱と冷却に要するエネルギを削減して調湿装置(10)の運転効率を向上させることができる。ここでは、この効果が得られる理由を、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が空気から吸湿し、第2調湿部(40b)において液体吸収剤が空気へ放湿する場合を例に説明する。
【0024】
この場合において、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わると、第1循環路(80)の低温で低濃度の液体吸収剤が第2循環路(85)へ流入し、第2循環路(85)の高温で高濃度の液体吸収剤が第1循環路(80)へ流入する。その後、切換機構(95)が第2状態から第1状態に戻ると、第1循環路(80)と第2循環路(85)のそれぞれにおいて液体吸収剤が循環する。切換機構(95)が第2状態から第1状態に切り換わった後には、第1循環路(80)を流れる液体吸収剤の温度を例えば50℃程度から20℃程度にまで低下させる必要があり、第2循環路(85)を流れる液体吸収剤の温度を例えば20℃程度から50℃程度にまで上昇させる必要がある。従って、切換機構(95)が第2状態から第1状態に切り換わってから暫くの間において、熱源部(35)は、液体吸収剤の温度を速やかに変化させるために、比較的多くの温熱と冷熱を液体吸収剤に供給しなければならない。
【0025】
一方、切換機構(95)が第2状態から第1状態に切り換わってからある程度の時間が経過すると、第1循環路(80)を流れる液体吸収剤の温度が例えば20℃程度に達し、第2循環路(85)を流れる液体吸収剤の温度が例えば50℃程度に達する。このため、その後において、熱源部(35)は、第1循環路(80)の液体吸収剤を例えば20℃程度に保つのに必要な量の冷熱だけを発生させ、第2循環路(85)の液体吸収剤を例えば50℃程度に保つのに必要な量の温熱だけを発生させればよい。
【0026】
このように、本発明の調湿装置(10)によれば、切換機構(95)が第2状態から第1状態に切り換わってからある程度の時間が経過した後において、熱源部(35)が液体吸収剤に供給する温熱と冷熱の量を削減することができる。従って、本発明によれば、液体吸収剤の加熱と冷却に要するエネルギを削減することができ、その結果、調湿装置(10)の運転効率を向上させることができる。
【0027】
ところで、本発明の調湿装置(10)では、何の対策も講じなければ、切換機構(95)の動作に起因して、第1調湿部(40a)を通過した空気の温度や湿度が変動し、室内の快適性を損なうおそれがある。ここでは、この問題点について、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が空気へ吸湿し、第2調湿部(40b)において液体吸収剤が空気から放湿する場合を例に説明する。
【0028】
この場合において、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わる直前には、第1循環路(80)の第1調湿部(40a)へ、低温(例えば20℃程度)の液体吸収剤が供給される。このため、第1調湿部(40a)を通過した空気は、温度と湿度が比較的低い状態となる。ところが、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わると、第1循環路(80)の第1調湿部(40a)には、それまで第2循環路(85)を循環していた高温(例えば50℃程度)の液体吸収剤が流入する。このため、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わると、第1調湿部(40a)を通過した空気の温度と湿度が急激に上昇する。そして、切換機構(95)が第2状態から第1状態に戻った後も、第1循環路(80)を循環する液体吸収剤の温度が充分に低下するまでの間は、第1調湿部(40a)を通過して室内へ供給される空気の温度と湿度が高いままとなる。このため、在室者に不快感を与えるおそれがある。
【0029】
これに対し、本発明の調湿装置(10)では、吸収剤回路(30)の第1循環路(80)に蓄熱部(82)が設けられている。この蓄熱部(82)は、切換機構(95)が第1状態となっているときに温熱または冷熱を蓄える。そして、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わり、その後に切換機構(95)が第2状態から第1状態に戻ってからある程度の時間が経過するまでの間、蓄熱部(82)は、蓄えている温熱または冷熱を液体吸収剤に対して供給する。このため、切換機構(95)が切り換わった後に第1循環路(80)内の液体吸収剤の温度が元に戻るまでの時間が短縮される。その結果、切換機構(95)が切り換わった後に第1調湿部(40a)から室内へ供給される温度と湿度が元に戻るまでの時間を短縮でき、室内の快適性の低下を抑えることができる。
【0030】
第2の発明の第1循環路(80)では、切換機構(95)が第2状態であるときにおける第1調湿部(40a)の上流に、蓄熱部(82)が配置される。このため、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わった場合、第2循環路(85)から第1循環路(80)へ流入した液体吸収剤は、蓄熱部(82)を通過する際に温熱または冷熱を供給され、その後に第1調湿部(40a)へ流入する。従って、この発明によれば、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わったときに第1調湿部(40a)へ供給される液体吸収剤の温度変化を抑制できる。その結果、第1調湿部(40a)から室内へ供給される空気の温度と湿度の変動を抑えることができ、室内の快適性の低下を一層抑えることができる。
【0031】
上記第3の発明では、第1循環路(80)だけでなく第2循環路(85)にも蓄熱部(87)が設けられる。この発明の第2循環路(85)では、切換機構(95)が第2状態であるときにおける第2調湿部(40b)の上流に、蓄熱部(87)が配置される。このため、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わった場合、第1循環路(80)から第2循環路(85)へ流入した液体吸収剤は、蓄熱部(87)を通過する際に温熱または冷熱を供給され、その後に第2調湿部(40b)へ流入する。従って、この発明によれば、切換機構(95)が第1状態から第2状態に切り換わったときに第2調湿部(40b)へ供給される液体吸収剤の温度変化を抑制できる。その結果、第2調湿部(40b)において液体吸収剤と空気の間で授受される水分量の変動を抑えることができ、調湿装置(10)の能力を向上させることができる。
【0032】
上記第4の発明の蓄熱部(82,87)は、蓄熱媒体の顕熱と潜熱の両方として、温熱または冷熱を蓄える。このため、蓄熱部(82,87)に設けられる蓄熱媒体の量を削減でき、蓄熱部(82,87)の小型化を図ることができる。
【0033】
第5及び第7の各発明では、調湿装置(10)が除湿運転を行う。除湿運転中の調湿装置(10)において、切換機構(95)が第2状態から第1状態へ戻ると、第1循環路(80)では、第2循環路(85)から流入した液体吸収剤が循環し、蓄熱部(82)の蓄熱媒体が液体吸収剤から吸熱して融解する。蓄熱媒体が融解する過程では、蓄熱媒体の温度がその融点に保たれる。一方、蓄熱部(82)に蓄熱媒体として設けられた低融点の潜熱蓄熱剤の融点は、目標放湿温度よりも目標吸湿温度に近い。このため、切換機構(95)が第2状態から第1状態へ戻ったときから暫くの間は、第1循環路(80)を循環する液体吸収剤と蓄熱部(82)の蓄熱媒体との温度差が確保され、単位時間当たりに蓄熱部(82)が液体吸収剤から奪う熱の量が多くなる。
【0034】
従って、第5及び第7の各発明によれば、切換機構(95)が第2状態から第1状態へ戻った後に液体吸収剤の温度を速やかに引き下げることができ、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が吸収する水分の量を速やかに回復させることができる。その結果、調湿装置(10)の除湿能力を向上させることができる。
【0035】
上記第6及び第7の各発明では、調湿装置(10)が加湿運転を行う。加湿運転中の調湿装置(10)において、切換機構(95)が第2状態から第1状態へ戻ると、第1循環路(80)では、第2循環路(85)から流入した液体吸収剤が循環し、蓄熱部(82)の蓄熱媒体が液体吸収剤へ放熱して凝固する。蓄熱媒体が凝固する過程では、蓄熱媒体の温度がその融点(=凝固点)に保たれる。一方、蓄熱部(82)に蓄熱媒体として設けられた高融点の潜熱蓄熱剤の融点は、目標吸湿温度よりも目標放湿温度に近い。このため、切換機構(95)が第2状態から第1状態へ戻ったときから暫くの間は、第1循環路(80)を循環する液体吸収剤と蓄熱部(82)の蓄熱媒体との温度差が確保され、単位時間当たりに蓄熱部(82)が液体吸収剤へ与える熱の量が多くなる。
【0036】
従って、第6及び第7の各発明によれば、切換機構(95)が第2状態から第1状態へ戻った後に液体吸収剤の温度を速やかに引き上げることができ、第1調湿部(40a)において液体吸収剤が放出する水分の量を速やかに回復させることができる。その結果、調湿装置(10)の加湿能力を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0039】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態は、空気の除湿と加湿を行う調湿装置(10)である。
【0040】
〈調湿装置の全体構成〉
図1及び
図2に示すように、本実施形態の調湿装置(10)は、ケーシング(20)を備えている。このケーシング(20)には、吸収剤回路(30)と、冷媒回路(35)と、給気ファン(27)と、排気ファン(28)とが収容されている。
【0041】
図1に示すように、ケーシング(20)は、直方体の箱状に形成されている。ケーシング(20)では、その一方の端面に外気吸込口(21)と排気口(24)とが形成され、その他方の端面に内気吸込口(23)と給気口(22)とが形成されている。ケーシング(20)の内部空間は、給気通路(25)と排気通路(26)に仕切られている。給気通路(25)は、外気吸込口(21)及び給気口(22)に連通している。給気通路(25)には、給気ファン(27)と、第1調湿部である給気側モジュール(40a)とが配置されている。一方、排気通路(26)は、内気吸込口(23)及び排気口(24)に連通している。排気通路(26)には、排気ファン(28)と、第2調湿部である排気側モジュール(40b)とが配置されている。給気側モジュール(40a)及び排気側モジュール(40b)の詳細は後述する。
【0042】
〈吸収剤回路の構成〉
図2に示すように、吸収剤回路(30)は、第1循環路である給気側循環路(80)と、第2循環路である排気側循環路(85)とを備えている。また、吸収剤回路(30)は、給気側循環路(80)と排気側循環路(85)を互いに接続するための第1接続配管(91)及び第2接続配管(92)を備えている。吸収剤回路(30)には、液体吸収剤として塩化リチウム水溶液が充填されている。
【0043】
給気側循環路(80)は、給気側ポンプ(81)と、給気側蓄熱部(82)と、給気側モジュール(40a)と、給気側三方弁(83)とが設けられた閉ループ状の回路である。この給気側循環路(80)では、給気側ポンプ(81)の吐出口から吸込口へ向かって順に、給気側蓄熱部(82)と、給気側モジュール(40a)と、給気側三方弁(83)とが配置されている。給気側モジュール(40a)は、その吸収剤通路(41a)が吸収剤回路(30)に接続されている。給気側三方弁(83)は、第1のポートが給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)に接続され、第2のポートが給気側ポンプ(81)の吸込口に接続されている。
【0044】
排気側循環路(85)は、排気側ポンプ(86)と、排気側蓄熱部(87)と、排気側モジュール(40b)と、排気側三方弁(88)とが設けられた閉ループ状の回路である。この排気側循環路(85)では、排気側ポンプ(86)の吐出口から吸込口へ向かって順に、排気側蓄熱部(87)と、排気側モジュール(40b)と、排気側三方弁(88)とが配置されている。排気側モジュール(40b)は、その吸収剤通路(41b)が吸収剤回路(30)に接続されている。排気側三方弁(88)は、第1のポートが排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)に接続され、第2のポートが排気側ポンプ(86)の吸込口に接続されている。
【0045】
第1接続配管(91)は、一端が排気側三方弁(88)の第3のポートに接続され、他端が給気側循環路(80)における給気側三方弁(83)と給気側ポンプ(81)の間に接続されている。第2接続配管(92)は、一端が給気側三方弁(83)の第3のポートに接続され、他端が排気側循環路(85)における排気側三方弁(88)と排気側ポンプ(86)の間に接続されている。
【0046】
給気側三方弁(83)及び排気側三方弁(88)は、切換機構(95)を構成している。給気側三方弁(83)と排気側三方弁(88)のそれぞれは、第1のポートが第2のポートと連通して第3のポートから遮断される第1連通状態(
図2に実線で示す状態)と、第1のポートが第3のポートと連通して第2のポートから遮断される第2連通状態(
図2に破線で示す状態)とに切り換わる。切換機構(95)が第1状態であるときは、給気側三方弁(83)と排気側三方弁(88)の両方が第1連通状態となる。また、切換機構(95)が第2状態であるときは、給気側三方弁(83)と排気側三方弁(88)の両方が第2連通状態となる。
【0047】
〈冷媒回路の構成〉
冷媒回路(35)は、圧縮機(36)と、四方切換弁(37)と、膨張弁(38)と、給気側モジュール(40a)と、排気側モジュール(40b)とが接続された閉回路である。冷媒回路(35)は、充填された冷媒を循環させることによって、蒸気圧縮冷凍サイクルを行う。この冷媒回路(35)は、液体吸収剤の加熱と冷却とを行う熱源部である。
【0048】
冷媒回路(35)では、圧縮機(36)の吐出側が四方切換弁(37)の第1のポートに、圧縮機(36)の吸入側が四方切換弁(37)の第2のポートに、それぞれ接続される。また、この冷媒回路(35)では、四方切換弁(37)の第3のポートから第4のポートへ向かって順に、排気側モジュール(40b)の伝熱部材(46b)と、膨張弁(38)と、給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)とが配置されている。
【0049】
四方切換弁(37)は、第1のポートが第3のポートに連通し、第2のポートが第4のポートに連通する第1状態(
図2に実線で示す状態)と、第1のポートが第4のポートに連通し、第2のポートが第3のポートに連通する第2状態(同図に破線で示す状態)とに切り換わる。
【0050】
〈調湿用モジュールの構成〉
給気側モジュール(40a)と排気側モジュール(40b)は、何れも調湿用モジュール(40)によって構成されている。ここでは、調湿用モジュール(40)について、
図3〜
図7を適宜参照しながら説明する。
【0051】
調湿用モジュール(40)は、液体吸収剤によって空気の湿度を調節するためのものである。この調湿用モジュール(40)は、一つの外側ケース(50)と、複数の内側部材(60)と、二つの伝熱部材(46)とを備えている。内側部材(60)及び伝熱部材(46)は、外側ケース(50)に収容されている。また、外側ケース(50)及び内側部材(60)は、空気が流れる空気通路(42)と液体吸収剤が流れる吸収剤通路(41)を仕切る仕切り部材(45)を構成している。
【0052】
図3に示すように、外側ケース(50)は、中空の直方体状に形成されており、底板(51)と、天板(52)と、一対の側板(53,54)と、一対の端板(55)とを備えている。なお、
図3は、天板(52)と手前側の端板(55)とを省略した状態を示している。各側板(53,54)には、側板(53,54)を厚さ方向に貫通する通風孔(56)が複数形成されている。各通風孔(56)は、縦長の長方形状となっている。
図4にも示すように、複数の通風孔(56)は、側板(53,54)の長手方向に一定の間隔で一列に配置されている。
【0053】
図5及び
図7にも示すように、内側部材(60)は、両端が開口した中空の直方体状に形成されている。この内側部材(60)は、支持枠(61)と、透湿膜(62)とを備えている。支持枠(61)は、その下面と上面が板状に形成されている。つまり、支持枠(61)は、その下面と上面が閉塞されている。透湿膜(62)は、支持枠(61)の側面を覆うように設けられている。従って、内側部材(60)に設けられた透湿膜(62)は、平面状となっている。透湿膜(62)は、液体吸収剤を透過させずに水蒸気を透過させる膜である。この透湿膜(62)としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、四ふっ化エチレン樹脂)等のふっ素樹脂から成る疎水性多孔膜を用いることができる。
【0054】
外側ケース(50)には、各側板(53,54)に形成された通風孔(56)と同数の内側部材(60)が収容されている。外側ケース(50)の内部において、内側部材(60)は、それぞれの側面を覆う透湿膜(62)が互いに向かい合う姿勢で、外側ケース(50)の長手方向に一列に配列されている。
【0055】
図4に示すように、内側部材(60)の端面の開口部(63)と、外側ケース(50)の側板(53,54)の通風孔(56)とは、形状と大きさが一致している。内側部材(60)は、開口部(63)が側板(53,54)の通風孔(56)と重なるように、外側ケース(50)に固定される。つまり、
図4において、内側部材(60)の支持枠(61)の左端面は、左側に配置された側板(53)の内側面における通風孔(56)の周縁部に接合される。また、同図において、内側部材(60)の支持枠(61)の右端面は、右側に配置された側板(54)の内側面における通風孔(56)の周縁部に接合される。
【0056】
図4に示すように、内側部材(60)の内側の空間は、外側ケース(50)の通風孔(56)を介して外部と連通しており、空気が流れる空気通路(42)となっている。空気通路(42)では、調湿装置(10)の給気通路(25)又は排気通路(26)を流れる空気が流通する。また、内側部材(60)の外側で且つ外側ケース(50)の内側の空間は、液体吸収剤が流れる吸収剤通路(41)となっている。吸収剤通路(41)では、吸収剤回路(30)を循環する液体吸収剤が流通する。従って、透湿膜(62)は、その表面が空気通路(42)を流れる空気と接触し、その裏面が吸収剤回路(30)を流れる液体吸収剤と接触する。
【0057】
上述したように、外側ケース(50)に収容された複数の内側部材(60)は、それぞれの側面を覆う透湿膜(62)が互いに向かい合う姿勢で一列に並んでいる。このため、外側ケース(50)と内側部材(60)によって構成された本実施形態の仕切り部材(45)では、平面状の透湿膜(62)が互いに向かい合う姿勢で一定の間隔をおいて配置されており、透湿膜(62)の配列方向(本実施形態では外側ケース(50)の長手方向)に空気通路(42)と吸収剤通路(41)とが交互に形成されている。なお、吸収剤通路(41)において、両側を透湿膜(62)に挟まれた部分は、内側部材(60)の上側と下側の部分を介して互いに連通している。
【0058】
図6に示すように、伝熱部材(46)は、複数本の伝熱管(70)と、一つの第1ヘッダ(71)と、一つの第2ヘッダ(72)とを備えている。
【0059】
各伝熱管(70)は、アルミニウム製の多穴扁平管である(
図4を参照)。即ち、伝熱管(70)は、断面が扁平な長円状に形成され、その内部空間が複数の流路に仕切られている。各伝熱管(70)に形成された流路は、冷媒回路(35)の冷媒が流れる熱媒体通路(43)となっている。伝熱部材(46)において、複数の伝熱管(70)は、それぞれの平坦面が互いに向かい合う姿勢で、互いに一定の間隔をおいて一列に配置されている。また、各伝熱管(70)は、それぞれの軸方向が上下方向となっている。
【0060】
第1ヘッダ(71)及び第2ヘッダ(72)のそれぞれは、両端が閉塞された円管状に形成されている。第1ヘッダ(71)は、一列に配置された各伝熱管(70)の上端に接合されている。第2ヘッダ(72)は、一列に配置された各伝熱管(70)の下端に接合されている。第1ヘッダ(71)及び第2ヘッダ(72)の内部空間は、伝熱管(70)内に形成された流路と連通しており、この伝熱管(70)内の流路と共に熱媒体通路(43)を構成している。
【0061】
外側ケース(50)内において、二つの伝熱部材(46)は、その一方が第1の側板(53)寄りに配置され、他方が第2の側板(54)寄りに配置されている。また、各伝熱部材(46)の伝熱管(70)は、隣り合う内側部材(60)の間に一本ずつ配置されている。従って、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、隣り合う内側部材(60)の間に、一方の伝熱部材(46)の伝熱管(70)と、他方の伝熱部材(46)の伝熱管(70)とが配置されている。上述したように、隣り合う内側部材(60)の間の空間は、吸収剤通路(41)となっている。従って、伝熱部材(46)の伝熱管(70)は、吸収剤通路(41)に配置され、その表面が吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤と接触する。つまり、伝熱部材(46)の伝熱管(70)は、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤に囲まれている。
【0062】
調湿用モジュール(40)の各伝熱部材(46)は、冷媒回路(35)に接続される。調湿用モジュール(40)によって構成された給気側モジュール(40a)では、各伝熱部材(46)の第1ヘッダ(71)が四方切換弁(37)の第4のポートに接続され、各伝熱部材(46)の第2ヘッダ(72)が膨張弁(38)に接続される。一方、調湿用モジュール(40)によって構成された排気側モジュール(40b)では、各伝熱部材(46)の第1ヘッダ(71)が四方切換弁(37)の第3のポートに接続され、各伝熱部材(46)の第2ヘッダ(72)が膨張弁(38)に接続される。
【0063】
〈蓄熱部の構成〉
給気側蓄熱部(82)及び排気側蓄熱部(87)について説明する。給気側蓄熱部(82)及び排気側蓄熱部(87)の構造は、互いに同じである。
【0064】
図8及び
図9に示すように、これら蓄熱部(82,87)は、外側筒部(101)と、内側管部(102)とを備えている。外側筒部(101)は、両端が閉塞された中空の円筒状に形成されている。内側管部(102)は、その外径が外側筒部(101)の内径よりも小さい円管であって、外側筒部(101)と同軸に配置されている。また、内側管部(102)の端部は、外側筒部(101)の端部を貫通して外側筒部(101)の外部に露出している。蓄熱部(82,87)では、外側筒部(101)と内側管部(102)の間に蓄熱室(104)が形成される。この蓄熱室(104)は、その軸方向の中央に配置された仕切板(103)によって、第1室(105)と第2室(106)に仕切られている。
図8では、仕切板(103)の左側の空間が第1室(105)となり、仕切板(103)の右側の部分が第2室(106)となっている。
【0065】
各蓄熱部(82,87)の蓄熱室(104)には、潜熱蓄熱剤が蓄熱媒体として充填されている。具体的に、各蓄熱部(82,87)の第1室(105)には、冷熱を蓄えるための低融点の潜熱蓄熱剤が充填されている。低融点の潜熱蓄熱剤としては、例えば、パラフィン系潜熱蓄熱材料(例えば、n−ヘプタデカン(C
17H
36、融点22.0℃)、n−オクタデカン(C
18H
38、融点28.2℃))を用いることができる。これらの物質の融点は、後述する除湿運転時の目標放湿温度(50℃)と目標吸湿温度(20℃)の中間の温度(35℃)よりも低く、従って、除湿運転時の目標放湿温度よりも目標吸湿温度に近い値である。更に、n−ヘプタデカンの融点は、後述する加湿運転時の目標放湿温度(40℃)と目標吸湿温度(5℃)の中間の温度(22.5℃)よりも低く、従って、加湿運転時の目標放湿温度よりも目標吸湿温度に近い値である。
【0066】
なお、加湿運転時には冷熱を蓄えるが除湿運転時には冷熱を蓄えない場合は、融点が除湿運転時の目標吸湿温度(20℃)よりも低い物質(例えば、n−ペンタデカン(C
15H
32、融点9.9℃)、n−ヘキサデカン(C
16H
34、融点18.2℃))を、低融点の潜熱蓄熱剤として用いることができる。
【0067】
一方、各蓄熱部(82,87)の第2室(106)には、温熱を蓄えるための高融点の潜熱蓄熱剤が充填されている。高融点の潜熱蓄熱剤としては、例えば、パラフィン系潜熱蓄熱材料(例えば、n−イコサン(C
20H
42、融点36.8℃))を用いることができる。n−イコサンの物質の融点は、後述する除湿運転時の目標放湿温度(50℃)と目標吸湿温度(20℃)の中間の温度(35℃)よりも高く、従って、除湿運転時の目標吸湿温度よりも目標放湿温度に近い値である。また、n−イコサンの物質の融点は、後述する加湿運転時の目標放湿温度(40℃)と目標吸湿温度(5℃)の中間の温度(22.5℃)よりも高く、従って、加湿運転時の目標吸湿温度よりも目標放湿温度に近い値である。
【0068】
なお、除湿運転時には温熱を蓄えるが加湿運転時には温熱を蓄えない場合は、融点が加湿運転時の目標放湿温度(40℃)よりも高い物質(例えば、硝酸カルシウム4水和物(Ca(NO
3)
2・4H
2O、融点45℃)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(Na
2S
2O
3・5H
2O、融点48℃)等の無機塩水和物系潜熱蓄熱材料)を、高融点の潜熱蓄熱剤として用いることができる。
【0069】
各蓄熱部(82,87)は、その内側管部(102)が吸収剤回路(30)に接続される。各蓄熱部(82,87)では、第1室(105)及び第2室(106)の潜熱蓄熱剤が、内側管部(102)を流れる液体吸収剤と熱交換する。
【0070】
−運転動作−
調湿装置(10)の運転動作を説明する。調湿装置(10)は、室内への給気を除湿する除湿運転と、室内への給気を加湿する加湿運転とを行う。
【0071】
〈除湿運転〉
調湿装置(10)の除湿運転について、
図10を参照しながら説明する。
【0072】
除湿運転中の調湿装置(10)では、給気ファン(27)及び排気ファン(28)が作動する。外気吸込口(21)から給気通路(25)へ吸い込まれた室外空気は、給気側モジュール(40a)を通過後に、給気口(22)を通って室内へ供給される。一方、内気吸込口(23)から排気通路(26)へ吸い込まれた室内空気は、排気側モジュール(40b)を通過後に、排気口(24)を通って室外へ排出される。
【0073】
また、除湿運転中の調湿装置(10)では、冷媒回路(35)において冷凍サイクルが行われる。具体的に、冷媒回路(35)では、圧縮機(36)が作動し、四方切換弁(37)が第1状態となり、膨張弁(38)の開度が適宜調節される。そして、排気側モジュール(40b)の伝熱部材(46b)が凝縮器となり、給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)が蒸発器となる。熱源部である冷媒回路(35)は、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)の液体吸収剤を、その温度が所定の目標放湿温度(例えば50℃)以上となるように加熱し、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)の液体吸収剤を、その温度が所定の目標吸湿温度(例えば20℃)以下となるように冷却する。
【0074】
冷媒回路(35)における冷媒の流れを説明する。圧縮機(36)から吐出された冷媒は、四方切換弁(37)を通過して排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流入し、吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤へ放熱して凝縮する。排気側モジュール(40b)から流出した冷媒は、膨張弁(38)を通過する際に減圧されて気液二相状態の低圧冷媒となり、その後に給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)へ流入し、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤から吸熱して蒸発する。給気側モジュール(40a)から流出した冷媒は、四方切換弁(37)を通過し、圧縮機(36)へ吸入される。圧縮機(36)は、吸入した冷媒を圧縮してから吐出する。
【0075】
また、除湿運転中の調湿装置(10)は、
図10(A)に示す個別循環動作と、
図10(B)に示す入れ替え動作とを、交互に繰り返し行う。具体的に、調湿装置(10)は、個別循環動作の継続時間が例えば10〜15分間程度に達すると個別循環動作を休止し、例えば30秒〜1分間程度に亘って入れ替え動作を行い、その後に入れ替え動作を停止して個別循環動作を再開する。その間、給気側ポンプ(81)と排気側ポンプ(86)は作動し続ける。
【0076】
図10(A)に示すように、個別循環動作中には、切換機構(95)が第1状態となる。つまり、給気側三方弁(83)と排気側三方弁(88)のそれぞれが、第1連通状態となる。そして、給気側循環路(80)を液体吸収剤が循環し、排気側循環路(85)を液体吸収剤が循環する。
【0077】
給気側モジュール(40a)では、室外空気に含まれる水蒸気が、透湿膜(62)を透過して吸収剤通路(41a)の液体吸収剤に吸収される。つまり、給気側モジュール(40a)では、室外空気が除湿される。このため、給気側循環路(80)を循環する液体吸収剤は、その濃度が次第に低下してゆく。個別循環動作の終盤において、給気側循環路(80)を循環する液体吸収剤の温度は、概ね目標吸湿温度以下となっている。液体吸収剤が水蒸気を吸収すると、吸収熱が発生する。そこで、給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤の温度が目標吸湿温度以下に保たれるように、伝熱部材(46a)を流れる冷媒が液体吸収剤を冷却する。また、個別循環動作の終盤において、給気側蓄熱部(82)の第1室(105)及び第2室(106)の潜熱蓄熱剤は、固体となって冷熱を蓄えた状態となる。
【0078】
一方、排気側モジュール(40b)では、吸収剤通路(41b)の液体吸収剤に含まれる水が、水蒸気となって透湿膜(62)を透過し、室内空気に付与される。つまり、排気側モジュール(40b)では、室内空気が加湿される。このため、排気側循環路(85)を循環する液体吸収剤は、その濃度が次第に上昇してゆく。個別循環動作の終盤において、排気側循環路(85)を循環する液体吸収剤の温度は、概ね目標放湿温度以上となっている。液体吸収剤に含まれる水分の一部は、残りの液体吸収剤から蒸発熱を奪って水蒸気となる。そこで、排気側モジュール(40b)では、吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤の温度が目標放湿温度以上に保たれるように、伝熱部材(46b)を流れる冷媒が液体吸収剤を加熱する。また、個別循環動作の終盤において、排気側蓄熱部(87)の第1室(105)及び第2室(106)の潜熱蓄熱剤は、液体となって温熱を蓄えた状態となる。
【0079】
給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤の濃度が低くなると、液体吸収剤が室外空気から吸収する水蒸気の量が減少する。そこで、個別循環動作の継続時間がある程度以上に達すると、調湿装置(10)は、個別循環動作を停止して入れ替え動作を行う。
【0080】
図10(B)に示すように、入れ替え動作中には、切換機構(95)が第2状態となる。つまり、給気側三方弁(83)と排気側三方弁(88)のそれぞれが、第2連通状態となる。そして、給気側循環路(80)の液体吸収剤と排気側循環路(85)の液体吸収剤が入れ替わる。
【0081】
具体的に、給気側循環路(80)には、排気側循環路(85)を循環していた高温で高濃度の液体吸収剤が、第1接続配管(91)を通って流入する。第1接続配管(91)を通って給気側循環路(80)へ流入した液体吸収剤は、給気側蓄熱部(82)を通過する際に第1室(105)及び第2室(106)の潜熱蓄熱剤と熱交換して冷却され、その後に給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)へ流入する。
【0082】
一方、排気側循環路(85)には、給気側循環路(80)を循環していた低温で低濃度の液体吸収剤が、第2接続配管(92)を通って流入する。第2接続配管(92)を通って排気側循環路(85)へ流入した液体吸収剤は、排気側蓄熱部(87)を通過する際に第1室(105)及び第2室(106)の潜熱蓄熱剤と熱交換して加熱され、その後に排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流入する。
【0083】
入れ替え動作は、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)が排気側循環路(85)から流入した高濃度の液体吸収剤で満たされ、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)が給気側循環路(80)から流入した低濃度の液体吸収剤で満たされるまで行われる。
【0084】
調湿装置(10)は、入れ替え動作が終了すると、個別循環動作を再開する。
【0085】
個別循環動作の序盤において、給気側蓄熱部(82)の潜熱蓄熱剤は、液体吸収剤から吸熱して次第に融解してゆく。つまり、給気側循環路(80)を循環する液体吸収剤は、給気側蓄熱部(82)の潜熱蓄熱剤と、給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)を流れる冷媒の両方によって冷却される。このため、給気側循環路(80)では、排気側循環路(85)から流入した高濃度の液体吸収剤の温度が速やかに低下し、給気側モジュール(40a)において液体吸収剤が室外空気から吸収する水蒸気の量が速やかに増加する。
【0086】
また、個別循環動作の序盤において、排気側蓄熱部(87)の潜熱蓄熱剤は、液体吸収剤へ放熱して次第に凝固してゆく。つまり、排気側循環路(85)を循環する液体吸収剤は、排気側蓄熱部(87)の潜熱蓄熱剤と、排気側モジュール(40b)の伝熱部材(46b)を流れる冷媒の両方によって加熱される。このため、排気側循環路(85)では、給気側循環路(80)から流入した低濃度の液体吸収剤の温度が速やかに上昇し、排気側モジュール(40b)において液体吸収剤が室外空気へ放出する水蒸気の量が速やかに増加する。
【0087】
〈加湿運転〉
調湿装置(10)の加湿運転について、
図11を参照しながら説明する。
【0088】
加湿運転中の調湿装置(10)では、給気ファン(27)及び排気ファン(28)が作動する。外気吸込口(21)から給気通路(25)へ吸い込まれた室外空気は、給気側モジュール(40a)を通過後に、給気口(22)を通って室内へ供給される。一方、内気吸込口(23)から排気通路(26)へ吸い込まれた室内空気は、排気側モジュール(40b)を通過後に、排気口(24)を通って室外へ排出される。
【0089】
また、除湿運転中の調湿装置(10)では、冷媒回路(35)において冷凍サイクルが行われる。具体的に、冷媒回路(35)では、圧縮機(36)が作動し、四方切換弁(37)が第2状態となり、膨張弁(38)の開度が適宜調節される。そして、給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)が凝縮器となり、排気側モジュール(40b)の伝熱部材(46b)が蒸発器となる。熱源部である冷媒回路(35)は、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)の液体吸収剤を、その温度が所定の目標放湿温度(例えば40℃)以上となるように加熱し、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)の液体吸収剤を、その温度が所定の目標吸湿温度(例えば5℃)以下となるように冷却する。
【0090】
冷媒回路(35)における冷媒の流れを説明する。圧縮機(36)から吐出された冷媒は、四方切換弁(37)を通過して給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)へ流入し、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤へ放熱して凝縮する。給気側モジュール(40a)から流出した冷媒は、膨張弁(38)を通過する際に減圧されて気液二相状態の低圧冷媒となり、その後に排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流入し、吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤から吸熱して蒸発する。排気側モジュール(40b)から流出した冷媒は、四方切換弁(37)を通過し、圧縮機(36)へ吸入される。圧縮機(36)は、吸入した冷媒を圧縮してから吐出する。
【0091】
また、加湿運転中の調湿装置(10)は、
図11(A)に示す個別循環動作と、
図11(B)に示す入れ替え動作とを、交互に繰り返し行う。具体的に、調湿装置(10)は、個別循環動作の継続時間が例えば15〜20分間程度に達すると個別循環動作を休止し、例えば30秒〜1分間程度に亘って入れ替え動作を行い、その後に入れ替え動作を停止して個別循環動作を再開する。その間、給気側ポンプ(81)と排気側ポンプ(86)は作動し続ける。
【0092】
図11(A)に示すように、個別循環動作中には、切換機構(95)が第1状態となる。つまり、給気側三方弁(83)と排気側三方弁(88)のそれぞれが、第1連通状態となる。そして、給気側循環路(80)を液体吸収剤が循環し、排気側循環路(85)を液体吸収剤が循環する。
【0093】
給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)の液体吸収剤に含まれる水が、水蒸気となって透湿膜(62)を透過し、室外空気に付与される。つまり、給気側モジュール(40a)では、室外空気が加湿される。このため、給気側循環路(80)を循環する液体吸収剤は、その濃度が次第に上昇してゆく。個別循環動作の終盤において、給気側循環路(80)を循環する液体吸収剤の温度は、概ね目標放湿温度以上となっている。液体吸収剤に含まれる水分の一部は、残りの液体吸収剤から蒸発熱を奪って水蒸気となる。そこで、給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤の温度が目標放湿温度以上に保たれるように、伝熱部材(46a)を流れる冷媒が液体吸収剤を加熱する。また、個別循環動作の終盤において、給気側蓄熱部(82)の第1室(105)及び第2室(106)の潜熱蓄熱剤は、液体となって温熱を蓄えた状態となる。
【0094】
一方、排気側モジュール(40b)では、室内空気に含まれる水蒸気が、透湿膜(62)を透過して吸収剤通路(41b)の液体吸収剤に吸収される。つまり、排気側モジュール(40b)では、室内空気が除湿される。このため、排気側循環路(85)を循環する液体吸収剤は、その濃度が次第に低下してゆく。個別循環動作の終盤において、排気側循環路(85)を循環する液体吸収剤の温度は、概ね目標吸湿温度以下となっている。液体吸収剤が水蒸気を吸収すると、吸収熱が発生する。そこで、排気側モジュール(40b)では、吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤の温度が目標吸湿温度以下に保たれるように、伝熱部材(46b)を流れる冷媒が液体吸収剤を冷却する。また、個別循環動作の終盤において、排気側蓄熱部(87)の第1室(105)及び第2室(106)の潜熱蓄熱剤は、固体となって冷熱を蓄えた状態となる。
【0095】
給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤の濃度が高くなると、液体吸収剤が室外空気へ放出する水蒸気の量が減少する。そこで、個別循環動作の継続時間がある程度以上に達すると、調湿装置(10)は、個別循環動作を停止して入れ替え動作を行う。
【0096】
図11(B)に示すように、入れ替え動作中には、切換機構(95)が第2状態となる。つまり、給気側三方弁(83)と排気側三方弁(88)のそれぞれが、第2連通状態となる。そして、給気側循環路(80)の液体吸収剤と排気側循環路(85)の液体吸収剤が入れ替わる。
【0097】
具体的に、給気側循環路(80)には、排気側循環路(85)を循環していた低温で低濃度の液体吸収剤が、第1接続配管(91)を通って流入する。第1接続配管(91)を通って給気側循環路(80)へ流入した液体吸収剤は、給気側蓄熱部(82)を通過する際に第1室(105)及び第2室(106)の潜熱蓄熱剤と熱交換して加熱され、その後に給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)へ流入する。
【0098】
一方、排気側循環路(85)には、給気側循環路(80)を循環していた高温で高濃度の液体吸収剤が、第2接続配管(92)を通って流入する。第2接続配管(92)を通って排気側循環路(85)へ流入した液体吸収剤は、排気側蓄熱部(87)を通過する際に第1室(105)及び第2室(106)の潜熱蓄熱剤と熱交換して冷却され、その後に排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流入する。
【0099】
入れ替え動作は、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)が排気側循環路(85)から流入した低濃度の液体吸収剤で満たされ、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)が給気側循環路(80)から流入した高濃度の液体吸収剤で満たされるまで行われる。
【0100】
調湿装置(10)は、入れ替え動作が終了すると、個別循環動作を再開する。
【0101】
個別循環動作の序盤において、給気側蓄熱部(82)の潜熱蓄熱剤は、液体吸収剤へ放熱して次第に凝固してゆく。つまり、給気側循環路(80)を循環する液体吸収剤は、給気側蓄熱部(82)の潜熱蓄熱剤と、給気側モジュール(40a)の伝熱部材(46a)を流れる冷媒の両方によって加熱される。このため、給気側循環路(80)では、排気側循環路(85)から流入した低濃度の液体吸収剤の温度が速やかに上昇し、給気側モジュール(40a)において液体吸収剤が室外空気へ放出する水蒸気の量が速やかに増加する。
【0102】
また、個別循環動作の序盤において、排気側蓄熱部(87)の潜熱蓄熱剤は、液体吸収剤から吸熱して次第に融解してゆく。つまり、排気側循環路(85)を循環する液体吸収剤は、排気側蓄熱部(87)の潜熱蓄熱剤と、排気側モジュール(40b)の伝熱部材(46b)を流れる冷媒の両方によって冷却される。このため、排気側循環路(85)では、給気側循環路(80)から流入した高濃度の液体吸収剤の温度が速やかに低下し、排気側モジュール(40b)において液体吸収剤が室外空気から吸収する水蒸気の量が速やかに増加する。
【0103】
−液体吸収剤の温度変化−
調湿装置(10)の個別循環動作の開始から終了までの間において、給気側モジュール(40a)と排気側モジュール(40b)のそれぞれでは、吸収剤通路(41a,41b)内の液体吸収剤の温度が、
図12に示すように変化する。ここでは、各モジュール(40a,40b)における液体吸収剤の温度変化を、調湿装置(10)が除湿運転を行っている場合を例に説明する。
【0104】
先ず、除湿運転中において、給気側モジュール(40a)では、伝熱部材(46a)が蒸発器として機能し、吸収剤通路(41a)の液体吸収剤が冷媒によって冷却される。このため、個別循環動作中には、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤の温度が次第に低下してゆく。
【0105】
仮に、給気側蓄熱部(82)が設けられていなかったとすると、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤の温度は、
図12(A)に破線で示すように変化する。つまり、個別循環動作の開始時刻t
Sにおいて、給気側モジュール(40a)の液体吸収剤の温度は、入れ替え動作中に排気側循環路(85)から給気側循環路(80)へ流入した液体吸収剤の温度T
1'と同程度となる。そして、給気側モジュール(40a)の液体吸収剤の温度は、徐々に低下して時刻t
2に目標吸湿温度T
abに達し、その後も更に低下し続け、個別循環動作の終了時刻t
Eには温度T
2'に達する。
【0106】
一方、本実施形態では、給気側モジュール(40a)の上流側に給気側蓄熱部(82)が設けられている。このため、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤の温度は、
図12(A)に実線で示すように変化する。つまり、入れ替え動作中に排気側循環路(85)から給気側循環路(80)へ流入した液体吸収剤は、給気側蓄熱部(82)を通過する際に冷却され、その後に給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)へ流れ込む。このため、個別循環動作の開始時刻t
Sにおける給気側モジュール(40a)の液体吸収剤の温度T
1は、給気側蓄熱部(82)が設けられていない場合の温度T
1'よりも低くなる。
【0107】
上述したように、個別循環動作中に給気側循環路(80)を循環する液体吸収剤は、給気側蓄熱部(82)の潜熱蓄熱剤と、伝熱部材(46a)を流れる冷媒との両方によって冷却される。このため、給気側モジュール(40a)の液体吸収剤の温度は、給気側蓄熱部(82)が設けられていない場合に比べて速やかに低下し、時刻t
2よりも前の時刻t
1において目標吸湿温度T
abに達する。給気側モジュール(40a)の液体吸収剤の温度は、その後も低下し続け、個別循環動作の終了時刻t
Eには温度T
2に達する。
【0108】
ところで、給気側蓄熱部(82)へ流入する液体吸収剤の温度が給気側蓄熱部(82)の潜熱蓄熱剤の融点を下回ると、給気側蓄熱部(82)の潜熱蓄熱剤が凝固し始める。従って、給気側モジュール(40a)の液体吸収剤の温度が目標吸湿温度T
abに達する時刻t
1を過ぎた後には、給気側モジュール(40a)において冷媒が液体吸収剤に付与した冷熱の一部が、給気側蓄熱部(82)に蓄えられる。
【0109】
このため、時刻t
1を過ぎた後には、給気側モジュール(40a)の液体吸収剤の温度の低下割合が、給気側蓄熱部(82)が設けられていない場合に比べて小さくなる。その結果、個別循環動作の終了時刻t
Eにおける給気側モジュール(40a)の液体吸収剤の温度T
2は、給気側蓄熱部(82)が設けられていない場合の温度T
2'よりも高くなる。
【0110】
次に、除湿運転中において、排気側モジュール(40b)では、伝熱部材(46b)が凝縮器として機能し、吸収剤通路(41b)の液体吸収剤が冷媒によって加熱される。このため、個別循環動作中には、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤の温度が次第に上昇してゆく。
【0111】
仮に、排気側蓄熱部(87)が設けられていなかったとすると、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤の温度は、
図12(B)に破線で示すように変化する。つまり、個別循環動作の開始時刻t
Sにおいて、排気側モジュール(40b)の液体吸収剤の温度は、入れ替え動作中に給気側循環路(80)から排気側循環路(85)へ流入した液体吸収剤の温度T
3'と同程度となる。そして、排気側モジュール(40b)の液体吸収剤の温度は、徐々に上昇して時刻t
4に目標吸湿温度T
abに達し、その後も更に上昇し続け、個別循環動作の終了時刻t
Eには温度T
4'に達する。
【0112】
一方、本実施形態では、排気側モジュール(40b)の上流側に排気側蓄熱部(87)が設けられている。このため、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤の温度は、
図12(B)に実線で示すように変化する。つまり、入れ替え動作中に給気側循環路(80)から排気側循環路(85)へ流入した液体吸収剤は、排気側蓄熱部(87)を通過する際に加熱され、その後に排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流れ込む。このため、個別循環動作の開始時刻t
Sにおける排気側モジュール(40b)の液体吸収剤の温度T
3は、排気側蓄熱部(87)が設けられていない場合の温度T
3'よりも高くなる。
【0113】
上述したように、個別循環動作中に排気側循環路(85)を循環する液体吸収剤は、排気側蓄熱部(87)の潜熱蓄熱剤と、伝熱部材(46b)を流れる冷媒との両方によって加熱される。このため、排気側モジュール(40b)の液体吸収剤の温度は、排気側蓄熱部(87)が設けられていない場合に比べて速やかに上昇し、時刻t
4よりも前の時刻t
3において目標吸湿温度T
abに達する。排気側モジュール(40b)の液体吸収剤の温度は、その後も上昇し続け、個別循環動作の終了時刻t
Eには温度T
4に達する。
【0114】
ところで、排気側蓄熱部(87)へ流入する液体吸収剤の温度が排気側蓄熱部(87)の潜熱蓄熱剤の融点を上回ると、排気側蓄熱部(87)の潜熱蓄熱剤が融解し始める。従って、排気側モジュール(40b)の液体吸収剤の温度が目標吸湿温度T
abに達する時刻t
3を過ぎた後には、排気側モジュール(40b)において冷媒が液体吸収剤に付与した温熱の一部が、排気側蓄熱部(87)に蓄えられる。
【0115】
このため、時刻t
3を過ぎた後には、排気側モジュール(40b)の液体吸収剤の温度の上昇割合が、排気側蓄熱部(87)が設けられていない場合に比べて小さくなる。その結果、個別循環動作の終了時刻t
Eにおける排気側モジュール(40b)の液体吸収剤の温度T
4は、排気側蓄熱部(87)が設けられていない場合の温度T
4'よりも低くなる。
【0116】
なお、調湿装置(10)が加湿運転を行っている場合は、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤が冷媒によって加熱され、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤が冷媒によって冷却される。このため、個別循環動作中には、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)における液体吸収剤の温度が
図12(B)に示すように変化し、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)における液体吸収剤の温度が
図12(A)に示すように変化する。
【0117】
−実施形態1の効果−
本実施形態の調湿装置(10)は、除湿運転と加湿運転のそれぞれにおいて、個別循環動作と入れ替え動作とを交互に繰り返し行う。このため、冷媒回路(35)の圧縮機(36)の消費電力を削減することができ、調湿装置(10)の運転効率を向上させることができる。ここでは、この効果が得られる理由を、調湿装置(10)が除湿運転を行っている場合を例に説明する。
【0118】
この場合において、調湿装置(10)の動作が個別循環動作から入れ替え動作にに切り換わると、給気側循環路(80)の低温で低濃度の液体吸収剤が排気側循環路(85)へ流入し、排気側循環路(85)の高温で高濃度の液体吸収剤が給気側循環路(80)へ流入する。その後、調湿装置(10)が個別循環動作を再開すると、給気側循環路(80)と排気側循環路(85)のそれぞれにおいて液体吸収剤が循環する。個別循環動作の再開後には、給気側モジュール(40a)を流れる液体吸収剤の温度を速やかに低下させる必要があり、排気側モジュール(40b)を流れる液体吸収剤の温度を速やかに上昇させる必要がある。従って、個別循環動作の開始から暫くの間において、冷媒回路(35)は、液体吸収剤の温度を速やかに変化させるために、比較的多くの温熱と冷熱を液体吸収剤に供給しなければならない。
【0119】
一方、個別循環動作の開始からある程度の時間が経過すると、給気側モジュール(40a)を流れる液体吸収剤の温度が例えば概ね目標吸湿温度となり、排気側モジュール(40b)を流れる液体吸収剤の温度が概ね目標放湿温度となる。このため、その後において、冷媒回路(35)は、給気側モジュール(40a)の液体吸収剤を概ね目標吸湿温度に保つのに必要な量の冷熱だけを発生させ、排気側モジュール(40b)の液体吸収剤を概ね目標放湿温度に保つのに必要な量の温熱だけを発生させればよい。
【0120】
このように、本実施形態の調湿装置(10)によれば、個別循環動作の開始からある程度の時間が経過した後において、冷媒回路(35)が液体吸収剤に供給する温熱と冷熱の量を削減することができる。冷媒回路(35)において発生する温熱と冷熱の量が少なければ、圧縮機(36)の消費電力も少なくて済む。従って、本実施形態によれば、冷媒回路(35)の圧縮機(36)の消費電力を削減することができ、その結果、調湿装置(10)の運転効率を向上させることができる。
【0121】
ところで、本実施形態の調湿装置(10)では、何の対策も講じなければ、個別循環動作と入れ替え動作が交互に実行されることに起因して、給気側モジュール(40a)を通過して室内へ供給される空気の温度や湿度が変動し、室内の快適性を損なうおそれがある。ここでは、この問題点について、調湿装置(10)が除湿運転を行う場合を例に説明する。
【0122】
この場合において、個別循環動作が終了する直前には、比較的低温の液体吸収剤が給気側モジュール(40a)へ供給される。このため、給気側モジュール(40a)を通過した空気は、温度と湿度が比較的低い状態となる。ところが、個別循環動作が終了して入れ替え動作が開始されると、給気側モジュール(40a)には、それまで排気側循環路(85)を循環していた比較的高温の液体吸収剤が流入する。このため、入れ替え動作が始まると、給気側モジュール(40a)を通過した空気の温度と湿度が急激に上昇する。そして、個別循環動作が再開された後も、給気側循環路(80)を循環する液体吸収剤の温度が充分に低下するまでの間は、給気側モジュール(40a)を通過して室内へ供給される空気の温度と湿度が高いままとなる。このため、在室者に不快感を与えるおそれがある。
【0123】
これに対し、本実施形態の調湿装置(10)の吸収剤回路(30)では、給気側循環路(80)に給気側蓄熱部(82)が設けられている。給気側蓄熱部(82)は、個別循環動作中に温熱または冷熱を蓄える。そして、入れ替え動作が行われ、その後に個別循環動作が再開されてからある程度の時間が経過するまでの間、給気側蓄熱部(82)は、蓄えている温熱または冷熱を液体吸収剤に対して供給する。このため、入れ替え動作が実行された後に給気側循環路(80)内の液体吸収剤の温度が元に戻るまでの時間が短縮される。その結果、入れか動作が行われた後に給気側モジュール(40a)から室内へ供給される温度と湿度が元に戻るまでの時間を短縮でき、室内の快適性の低下を抑えることができる。
【0124】
また、本実施形態の調湿装置(10)の吸収剤回路(30)では、給気側循環路(80)に給気側蓄熱部(82)が設けられると共に、排気側循環路(85)に排気側蓄熱部(87)が設けられている。排気側循環路(85)は、個別循環動作中に温熱または冷熱を蓄える。そして、入れ替え動作が行われ、その後に個別循環動作が再開されてからある程度の時間が経過するまでの間、排気側循環路(85)は、蓄えている温熱または冷熱を液体吸収剤に対して供給する。このため、給気側循環路(80)と排気側循環路(85)の両方において、入れ替え動作が実行された後に液体吸収剤の温度が元に戻るまでの時間が短縮される。その結果、給気側モジュール(40a)と排気側モジュール(40b)の両方において、入れ替え動作が実行された後に液体吸収剤が空気との間で授受する水蒸気の量を、短時間で回復させることができる。従って、本実施形態によれば、調湿装置(10)の除湿能力と加湿能力を向上させることができる。
【0125】
また、本実施形態の調湿装置(10)の吸収剤回路(30)では、給気側循環路(80)における給気側モジュール(40a)の上流側に給気側蓄熱部(82)が配置され、排気側循環路(85)における排気側モジュール(40b)の上流側に排気側蓄熱部(87)が配置される。このため、個別循環動作が終了して入れ替え動作が開始されたときには、排気側循環路(85)から給気側循環路(80)へ流入した液体吸収剤を、給気側蓄熱部(82)で予め冷却し又は加熱してから給気側モジュール(40a)へ導入することができ、給気側循環路(80)から排気側循環路(85)へ流入した液体吸収剤を、排気側蓄熱部(87)で予め冷却し又は加熱してから排気側モジュール(40b)へ導入することができる。従って、本実施形態によれば、入れ替え動作が実行された後に液体吸収剤の温度が元に戻るまでの時間を、一層短縮することができる。
【0126】
ここで、
図12(A)に破線で示すように、給気側循環路(80)に給気側蓄熱部(82)が設けられていない場合、例えば除湿運転中の給気側モジュール(40a)における液体吸収剤の温度は、個別循環動作の終盤には目標吸湿温度T
abよりもかなり低くなる。つまり、この場合、個別循環動作の終盤には、液体吸収剤に対して必要以上の冷熱が供給される。
【0127】
これに対し、本実施形態の調湿装置(10)では、給気側循環路(80)に給気側蓄熱部(82)が設けられている。例えば除湿運転中において、給気側蓄熱部(82)は、個別循環動作の終盤に冷熱を蓄え、入れ替え動作中と個別循環動作の序盤に冷熱を液体吸収剤へ供給する。従って、本実施形態によれば、個別循環動作の終盤に液体吸収剤に過剰に供給された冷熱を、入れ替え動作中と個別循環動作の序盤に液体吸収剤を冷却するために利用することができる。
【0128】
また、
図12(B)に破線で示すように、排気側循環路(85)に排気側蓄熱部(87)が設けられていない場合、例えば除湿運転中の排気側モジュール(40b)における液体吸収剤の温度は、個別循環動作の終盤には目標放湿温度T
rgよりもかなり高くなる。つまり、この場合、個別循環動作の終盤には、液体吸収剤に対して必要以上の温熱が供給される。
【0129】
これに対し、本実施形態の調湿装置(10)では、排気側循環路(85)に排気側蓄熱部(87)が設けられている。例えば除湿運転中において、排気側蓄熱部(87)は、個別循環動作の終盤に温熱を蓄え、入れ替え動作中と個別循環動作の序盤に温熱を液体吸収剤へ供給する。従って、本実施形態によれば、個別循環動作の終盤に液体吸収剤に過剰に供給された温熱を、入れ替え動作中と個別循環動作の序盤に液体吸収剤を加熱するために利用することができる。
【0130】
従って、本実施形態によれば、個別循環動作中に冷媒回路(35)の冷媒が液体吸収剤へ付与する温熱と冷熱の量を増やすことなく、入れ替え動作が実行された後に液体吸収剤の温度が元に戻るまでの時間を短縮することができる。
【0131】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態の調湿装置(10)は、実施形態1の調湿装置(10)において、給気側蓄熱部(82)及び排気側蓄熱部(87)の位置を変更したものである。ここでは、本実施形態の調湿装置(10)について、実施形態1と異なる点を説明する。
【0132】
図13に示すように、本実施形態の給気側循環路(80)において、給気側蓄熱部(82)は、給気側三方弁(83)と、給気側循環路(80)に接続する第1接続配管(91)の一端との間に配置されている。また、本実施形態の排気側循環路(85)において、排気側蓄熱部(87)は、排気側三方弁(88)と、排気側循環路(85)に接続する第2接続配管(92)の一端との間に配置されている。本実施形態の給気側蓄熱部(82)及び排気側蓄熱部(87)は、実施形態1の給気側蓄熱部(82)及び排気側蓄熱部(87)と同じ動作を行う。
【0133】
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。本実施形態の調湿装置(10)は、実施形態1の調湿装置(10)において、吸収剤回路(30)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の調湿装置(10)について、実施形態1と異なる点を説明する。
【0134】
図14に示すように、本実施形態の吸収剤回路(30)は、給気側三方弁(83)、排気側三方弁(88)、第1接続配管(91)、及び第2接続配管(92)に代えて液用四方切換弁(96)を備えている。本実施形態の調湿装置(10)では、液用四方切換弁(96)が切換機構(95)を構成している。
【0135】
液用四方切換弁(96)は、給気側循環路(80)と排気側循環路(85)の両方に接続している。具体的に、液用四方切換弁(96)は、第1のポートが給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)に接続され、第3のポートが給気側ポンプ(81)の吸込口に接続されている。また、液用四方切換弁(96)は、第2のポートが排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)に接続され、第4のポートが排気側ポンプ(86)の吸込口に接続されている。
【0136】
液用四方切換弁(96)は、第1のポートが第3のポートに連通し、第2のポートが第4のポートに連通する第1連通状態(
図14に実線で示す状態)と、第1のポートが第4のポートに連通し、第2のポートが第3のポートに連通する第2連通状態(同図に破線で示す状態)とに切り換わる。切換機構(95)が第1状態であるときは、液用四方切換弁(96)が第1連通状態となる。また、切換機構(95)が第2状態であるときは、液用四方切換弁(96)が第2連通状態となる。
【0137】
調湿装置(10)が個別循環動作を行う場合は、液用四方切換弁(96)が第1連通状態(
図14に実線で示す状態)となる。そして、吸収剤回路(30)では、給気側循環路(80)と排気側循環路(85)のそれぞれにおいて、液体吸収剤が循環する。
【0138】
一方、調湿装置(10)が入れ替え動作を行う場合は、液用四方切換弁(96)が第2連通状態(
図14に破線で示す状態)となる。そして、吸収剤回路(30)では、排気側循環路(85)の液体吸収剤が液用四方切換弁(96)を通って給気側循環路(80)へ流入し、給気側循環路(80)の液体吸収剤が液用四方切換弁(96)を通って排気側循環路(85)へ流入する。
【0139】
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4について説明する。本実施形態の調湿装置(10)は、実施形態1の調湿装置(10)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の調湿装置(10)について、実施形態1と異なる点を説明する。
【0140】
図15に示すように、本実施形態の調湿装置(10)では、給気側モジュール(40a)と排気側モジュール(40b)のそれぞれにおいて伝熱部材(46a,46b)が省略され、その代わりに給気側熱交換器(84)及び排気側熱交換器(89)が追加されている。
【0141】
給気側熱交換器(84)は、液体吸収剤と冷媒を熱交換させる熱交換器である。具体的に、給気側熱交換器(84)は、液体吸収剤の流路が吸収剤回路(30)の給気側循環路(80)に接続され、冷媒の流路が冷媒回路(35)に接続されている。給気側循環路(80)では、給気側蓄熱部(82)と給気側モジュール(40a)の間に給気側熱交換器(84)が配置されている。冷媒回路(35)では、四方切換弁(37)の第4のポートと膨張弁(38)の間に給気側熱交換器(84)が配置されている。
【0142】
排気側熱交換器(89)は、液体吸収剤と冷媒を熱交換させる熱交換器である。具体的に、排気側熱交換器(89)は、液体吸収剤の流路が吸収剤回路(30)の排気側循環路(85)に接続され、冷媒の流路が冷媒回路(35)に接続されている。排気側循環路(85)では、排気側蓄熱部(87)と排気側モジュール(40b)の間に排気側熱交換器(89)が配置されている。冷媒回路(35)では、四方切換弁(37)の第3のポートと膨張弁(38)の間に排気側熱交換器(89)が配置されている。
【0143】
−運転動作−
調湿装置(10)の除湿運転中において、冷媒回路(35)では、四方切換弁(37)が第1状態となり、排気側熱交換器(89)が凝縮器として機能し、給気側熱交換器(84)が蒸発器として機能する冷凍サイクルが行われる。個別循環動作中において、給気側循環路(80)を循環する液体吸収剤は、給気側熱交換器(84)で冷媒によって冷却され、その後に給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)へ流入し、室外空気から吸湿する。また、排気側循環路(85)を循環する液体吸収剤は、排気側熱交換器(89)で冷媒によって加熱され、その後に排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流入し、室内空気へ放湿する。
【0144】
調湿装置(10)の加湿運転中において、冷媒回路(35)では、四方切換弁(37)が第2状態となり、給気側熱交換器(84)が凝縮器として機能し、排気側熱交換器(89)が蒸発器として機能する冷凍サイクルが行われる。個別循環動作中において、給気側循環路(80)を循環する液体吸収剤は、給気側熱交換器(84)で冷媒によって加熱された後に給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)へ流入し、室外空気へ放湿する。また、排気側循環路(85)を循環する液体吸収剤は、排気側熱交換器(89)で冷媒によって冷却された後に排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流入し、室内空気から吸湿する。
【0145】
《その他の実施形態》
上記の各実施形態では、給気側蓄熱部(82)と排気側蓄熱部(87)のそれぞれにおいて、仕切板(103)を省略してもよい。
図16に示すように、本変形例の蓄熱部(82,87)では、外側筒部(101)と内側管部(102)の間に形成された蓄熱室(104)が一つの空間となっている。この蓄熱室(104)には、冷熱を蓄えるための低融点の潜熱蓄熱剤と、温熱を蓄えるための高融点の潜熱蓄熱剤との混合物が、蓄熱媒体として充填されている。
【0146】
また、上記の各実施形態では、排気側蓄熱部(87)を省略し、給気側蓄熱部(82)だけを設けてもよい。