(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体上にロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を備えた感熱記録体において、感熱記録層が少なくとも第1感熱記録層及び第1感熱記録層上に形成された第2感熱記録層からなる多層構造を有しており、前記第1感熱記録層が近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料を含有し、前記第2感熱記録層が含有するロイコ染料が近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料からなり、前記第2感熱記録層が芳香族第2級アミン系老化防止剤を含有し、前記芳香族第2級アミン系老化防止剤の含有割合が前記第2感熱記録層の全固形量中2〜50質量%であり、前記支持体と感熱記録層との間に有機中空粒子を含有する下塗り層を備えることを特徴とする感熱記録体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0018】
本発明における支持体としては、特に限定しないが、例えば、中性または酸性の上質紙、合成紙、透明または半透明のプラスチックフィルム、白色のプラスチックフィルム等が挙げられる。支持体の厚みは、特に限定されないが、通常、20〜200μm程度である。
【0019】
本発明における感熱記録層は、ロイコ染料及び呈色剤を含有し、支持体上に形成されている。更に、感熱記録層は、少なくとも第1感熱記録層及び第1感熱記録層上に形成された第2感熱記録層からなる多層構造を有している。また、第1感熱記録層は、近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料を含有し、第2感熱記録層は、近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料を含有している。
【0020】
ここで、近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料とは、呈色剤と反応して近赤外領域に吸収性を有する染料を形成するロイコ染料である。近赤外領域とは、700〜1600nm程度の波長領域である。すなわち、近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料は、この波長領域に吸収を有する染料を形成するため、この波長領域での機械的な読取りが可能である。一方、近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料とは、呈色剤と反応して近赤外領域に実質的に吸収性を有しない染料を形成するロイコ染料であり、吸収をもたない染料は、この波長領域にほとんど吸収を有せず、この波長領域の機械的な読取りをなんら阻害しないものである。
【0021】
近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。かかるロイコ染料の具体例としては、例えば、3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ピロジリノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3,3−ビス〔1−(4メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ピロジリノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロリドフタリド、ビス〔p−(ジメチルアミノスチリル)−o−メチルスルホニル〕メタン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3′−(6−ジメチルアミノ)フタリド、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3′−(6−ジエチルアミノ)フタリド、3−〔1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリド、3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−3−ジエチルアミノフェニル−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メトキシフェニル)−3−〔4−(4−ジメチルアミノフェニル)−4−(4−クロロフェニル)−1,3−ブタンジエニル〕ベンゾフタリド、3−p−(p−アニリノアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−p−〔ジ(n−ブチル)アミノアニリノ〕−6−メチルフルオラン、3−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ−6−メチルフルオラン等が挙げられる。これらのロイコ染料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、白色度と耐光性を向上する観点から、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリドを使用することが好ましい。
【0022】
近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料の含有量としては、特に限定されないが、感熱記録層中に1m
2当たり好ましくは0.01〜2g程度、より好ましくは0.05〜1g程度である。
【0023】
近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。かかるロイコ染料の具体例としては、たとえば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等のトリアリルメタン系染料、4,4’−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリルベンジルエーテル、N−ハロフェニル−ロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等のジフェニルメタン系染料、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等のチアジン系染料、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−フェニル−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジル−スピロ−ジナフトピラン、3−メチル−ナフト(6’−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等のスピロ系染料、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン(o−クロロアニリノ)ラクタム等のラクタム系染料、3−ジメチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−N−アセチル−N−メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−N−メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−N−メチル−N−ベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−N−クロロエチル−N−メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジエチルアミノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−カルボメトキシ−フェニルアミノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロペンチル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−(p−ブチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−n−アミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−n−アミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−n−ヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−n−ヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−β−エチルヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等のフルオラン系染料等が挙げられる。これらのロイコ染料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、白色度と耐光性を向上する観点から、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランを使用することが好ましい。
【0024】
近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料の含有量としては、特に限定されないが、感熱記録層中に1m
2当たり好ましくは0.01〜2g、より好ましくは、0.05〜1g程度である。
【0025】
本発明における感熱記録層の少なくとも1層は、芳香族第2級アミン系老化防止剤を含有している。これにより、近赤外吸収画像を形成する感熱記録体の曝光による画像の退色防止効果を著しく向上し、優れた耐光性を得ることができる。別言すると、近赤外領域における記録部の反射率を下げて、記録部と未記録部(地肌部)との識別が明瞭になり、この波長領域での機械的な読取り適性を向上することができる。しかも、耐可塑剤性を向上する効果も得ることができる。
【0026】
芳香族第2級アミン系老化防止剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。芳香族第2級アミン系老化防止剤の具体例としては、たとえば、フェニル−1−ナフチルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。これらの芳香族第2級アミン系老化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、p−フェニレンジアミン誘導体が好ましく、特に、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンが光暴露後の地肌部カブリが少ないこと、適当な融点を持つことから、好ましく用いられる。
【0027】
本発明では、第1感熱記録層が近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料を含有し、第2感熱記録層が含有するロイコ染料が近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料からなり、第2感熱記録層が芳香族第2級アミン系老化防止剤を含有するか、または第1感熱記録層が含有するロイコ染料が近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料からなり、第1感熱記録層が芳香族第2級アミン系老化防止剤を含有し、第2感熱記録層が近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料を含有することが好ましい。これにより、多層構造を有する感熱記録層のうち、芳香族第2級アミン系老化防止剤が存在する層において、近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料と近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料が共存することによって生じる地肌カブリを防止して白色度を向上でき、より優れた耐光性、耐可塑剤性及び白紙外観性を得ることができる。また、芳香族第2級アミン系老化防止剤は、耐光性をより一層高める観点から、支持体から遠い側の第2感熱記録層に含有させることが好ましい。
【0028】
本発明では、支持体上にロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を備えた感熱記録体において、感熱記録層が少なくとも第1感熱記録層及び第1感熱記録層上に形成された第2感熱記録層からなる多層構造を有しており、第1感熱記録層が近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料を含有し、第2感熱記録層が含有するロイコ染料が近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料からなり、第2感熱記録層が芳香族第2級アミン系老化防止剤を含有する態様が、本発明の効果を遺憾なく発揮することができるため、好ましい。
【0029】
芳香族第2級アミン系老化防止剤の含有割合としては、特に限定されないが、第1感熱記録層と第2感熱記録層の合計の全固形量中0.05〜40質量%程度が好ましく、0.1〜30質量%程度がより好ましく、0.3〜20質量%程度が更に好ましい。第2感熱記録層中に含有させる場合は、第2感熱記録層の全固形量中0.1〜50質量%程度が好ましく、0.5〜40質量%程度がより好ましく、2〜40質量%程度が更に好ましい。含有割合をこれらの範囲に調節することにより、本発明の効果を遺憾なく発揮することができる。
【0030】
ロイコ染料と反応する呈色剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。かかる呈色剤の具体例としては、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,3−ビス〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、4−tert−ブチルフェノール、4−ヒドロキシジ フェノキシド、α−ナフトール、β−ナフトール、4−ヒドロキシアセトフェノン、4−tert−オクチルカテコール、2,2’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4−フェニルフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、2,2’−メチレンビス(4−クロルフェノール)、ハイドロキノン、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)スルフィド、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−6−tert−ブチルフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−3’,4’−テトラメチルジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、4,4’−メチレンビス(オキシエチレンチオ)ジフェノール、1,5−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸−sec−ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸ペンチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸トリル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニルプロピル、4−ヒドロキシ安息香酸フェネチル、4−ヒドロキシ安息香酸−p−クロロベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸−p−メトキシベンジル、ノボラック型フェノール樹脂、フェノール重合体等のフェノール性化合物、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、3−sec−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3−ベンジルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−クロル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3−フェニル−5−(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらフェノール性化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属との塩、N−p−トルエンスルホニル−N’−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、N−p−トルエンスルホニル−N’−p−ブトキシカルボニルフェニルウレア、N−p−トルエンスルホニル−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のウレア化合物、更にはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体等の有機酸性物質等が挙げられる。これらの呈色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、発色感度を向上する観点から、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを使用することが好ましい。
【0031】
呈色剤の含有量としては、ロイコ染料と呈色剤の種類に応じて適宜選択すべきもので、特に限定するものではないが、一般にロイコ染料1質量部に対して、好ましくは0.5〜7質量部程度、より好ましくは1〜6質量部程度である。
【0032】
本発明における感熱記録層は、増感剤を含有していてもよい。これにより、記録感度を高めることができる。増感剤としては、例えば、ステアリン酸アミド、メトキシカルボニル−N−ステアリン酸ベンズアミド、N−ベンゾイルステアリン酸アミド、N−エイコサン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N−メチロールステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジオクチル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、2−ナフチルベンジルエーテル、m−ターフェニル、p−ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、p−トリルビフェニルエーテル、ジ(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メトキシフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−クロロフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(3−メチルフェノキシ)エタン、p−メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4−ジ(フェニルチオ)ブタン、p−アセトトルイジド、p−アセトフェネチジド、N−アセトアセチル−p−トルイジン、ジ(β−ビフェニルエトキシ)ベンゼン、p−ジ(ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1−イソプロピルフェニル−2−フェニルエタン等が挙げられる。
【0033】
増感剤の含有割合は、特に限定されず、増感のために有効な量とすればよいが、通常は、感熱記録層の全固形量中2〜40質量%程度が好ましく、5〜25質量%程度がより好ましい。
【0034】
本発明における感熱記録層は、保存性改良剤を含有していてもよい。これにより、記録部の保存性を高めることができる。保存改良剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、1−〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−チオビス(3−メチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’−ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェイトのナトリウムまたは多価金属塩、ビス(4−エチレンイミノカルボニルアミノフェニル)メタン等が挙げられる。
【0035】
保存性改良剤の含有割合は、特に限定されず、保存性改良のために有効な量とすればよいが、通常は、感熱記録層の全固形量中1〜30質量%程度が好ましく、5〜20質量%程度がより好ましい。
【0036】
感熱記録層は、例えば水を分散媒体とし、ボールミル、アトライター、サンドミル等の撹拌・粉砕機によりロイコ染料、呈色剤及び芳香族第2級アミン系老化防止剤、必要に応じて増感剤及び保存性改良剤と別々にまたは一緒に分散して得られた分散液を用いて、更に接着剤、助剤等を混合することにより調製された感熱記録層用塗液を、支持体上に塗布及び乾燥することにより形成される。感熱記録層用塗液の塗布量は、乾燥重量で2〜12g/m
2程度が好ましく、3〜10g/m
2程度がより好ましい。
【0037】
感熱記録層用塗液に使用される接着剤としては、水溶性接着剤及び水分散性接着剤のいずれの接着剤も使用することができる。水溶性接着剤としては、例えば、完全鹸化または部分鹸化ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール及び珪素変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース及びエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。水分散性接着剤としては、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリル化ウレタン、アクリル−シリコン複合体、アクリル−シリコン−ウレタン複合体等の疎水性重合体のラテックス等が挙げられる。
【0038】
感熱記録層中の接着剤の含有割合は、特に限定されず、感熱記録層の全固形量中5〜50質量%程度が好ましく、10〜40質量%程度がより好ましい。
【0039】
感熱記録層用塗液に使用される助剤としては、慣用されるものの中から適宜選択して使用することができる。助剤としては、例えば界面活性剤、ワックス類、滑剤類、顔料、耐水化剤、消泡剤、蛍光増白剤、着色染料等が挙げられる。界面活性剤としては、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム塩及びステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸アルカリ金属塩、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。ワックス類としては、例えばカルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられる。滑剤類としては、例えばステアリン酸亜鉛及びステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ステアリルリン酸エステルカリウム塩等のアルキルリン酸塩等が挙げられる。顔料としては、例えばカオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、無定形シリカ、水酸化アルミニウム等の無機顔料、スチレン樹脂フィラー、ナイロン樹脂フィラー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂フィラー、生澱粉粒子等の有機顔料が挙げられる。耐水化剤としては、例えばグリオキザール、ホルマリン、グリシン、グリシジルエステル、グリシジルエーテル、ジメチロール尿素、ケテンダイマー、ジアルデヒド澱粉、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ケトン−アルデヒド樹脂、硼砂、硼酸、炭酸ジルコニウムアンモニウム、エポキシ系化合物、ヒドラジン系化合物、オキサゾリン基含有化合物、グリオキシル酸ナトリウム、ジ(グリオキシル酸カルシウム)、グリオキシル酸アンモニウム等が挙げられる。
【0040】
本発明では、支持体と感熱記録層との間にフィラーとして有機中空粒子を含有する下塗り層を備えていることが好ましい。これにより、より一層優れた耐光性と耐可塑剤性を発揮し、近赤外領域における読取適性を向上することができる。耐光性が向上する理由については明らかでないが、下塗り層の有機中空粒子が記録感度を向上する一方で、近赤外領域における未記録部(地肌部)の反射率を高めるという相乗効果によって、記録部と未記録部(地肌部)との識別が明瞭になり、読取適性を高めていると考えられる。
【0041】
有機中空粒子としては、従来公知の熱膨張型中空粒子及び非膨張型中空粒子のいずれの中空粒子も使用できる。有機中空粒子の膜材としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂とアクリロニトリルを主体とする共重合樹脂、イソボニルメタクリレートとアクリロニトリルを主体とする共重合樹脂等が挙げられる。
【0042】
有機中空粒子の体積中空率としては、40〜98%程度が好ましく、40〜95%程度がより好ましい。体積中空率を40%以上とすることにより、近赤外領域における記録感度と地肌部の反射率を向上し、読取適性をより一層高めることができる。一方、98%以下とすることにより、中空粒子の殻の強度を上げて中空状態を保ち、下塗り層の表面強度を向上できる。ここで体積中空率は(d
3/D
3)×100で求められる値である。該式中、dは有機中空粒子の内径を示し、Dは有機中空粒子の外径を示す。なお、有機中空粒子の平均粒子径は、記録部の画質を向上する観点から、レーザ回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.5〜10μm程度が好ましく、0.5〜4μm程度がより好ましく、0.5〜3μm程度が更に好ましい。
【0043】
有機中空粒子の含有割合は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層の全固形量中2〜90質量%程度が好ましく、5〜80質量%程度がより好ましく、5〜70質量%程度が更に好ましい。2質量%以上とすることにより近赤外領域における読取適性、耐可塑剤性及び耐光性を効果的に向上できる。一方、90質量%以下とすることにより、下塗り層の表面強度を高めて、サーマルヘッドへのカス付着を抑制し、耐スティッキング性を向上できる。
【0044】
本発明における下塗り層は、本発明の所望の効果を損なわない限りにおいて、その他のフィラーを含有することもできる。その他のフィラーとしては、無機及び有機のいずれの顔料も使用することができる。特に、サーマルヘッドへのカス付着を抑制し、耐スティッキング性を向上する観点から、吸油度が40ml/100g以上の吸油性顔料が好ましく用いられる。吸油度は、70ml/100g以上がより好ましく、80〜150ml/100g程度が更に好ましい。
【0045】
吸油性顔料としては、各種公知のものが使用できるが、具体例としては、例えば焼成カオリン、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、焼成珪藻土、無定形シリカ、軽質炭酸カルシウム、タルク等の無機顔料が挙げられる。これら吸油性顔料の一次粒子の平均粒子径は0.01〜5μm程度が好ましく、特に0.02〜3μm程度がより好ましい。ここで、吸油度は、JIS K 5101に記載の方法に従い求めることができる。
【0046】
吸油性顔料の含有割合は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層の全固形量中2〜95質量%程度が好ましく、5〜90質量%程度がより好ましい。
【0047】
なお、吸油性顔料を有機中空粒子と併用する場合、吸油性顔料と有機中空粒子とは前記の含有割合の範囲で使用し、且つ吸油性顔料と有機中空粒子の合計量は、下塗り層の全固形量中5〜90質量%程度が好ましく、10〜80質量%程度がより好ましい。
【0048】
本発明では、有機中空粒子と吸油性顔料として焼成カオリンとを併用する態様が、本発明の効果を遺憾なく発揮することができるため、好ましい。有機中空粒子と焼成カオリンを併用する場合の質量比率は、有機中空粒子:焼成カオリンが5:95〜95:5が好ましく、20:80〜95:5がより好ましい。有機中空粒子の質量比率を5%以上とすることにより、近赤外領域における記録感度と地肌部の反射率を向上し、読取適性をより一層高めることができる。一方、95%以下とすることにより、サーマルヘッドへのカス付着を抑制し、耐スティッキング性を向上することができる。
【0049】
下塗り層は、例えば水を媒体として、有機中空粒子、その他のフィラー、接着剤、助剤等を混合することにより調製された下塗り層用塗液を、支持体上に塗布及び乾燥することにより形成される。下塗り層用塗液の塗布量は、乾燥重量で3〜20g/m
2程度が好ましく、4〜12g/m
2程度がより好ましい。
【0050】
下塗り層用塗液に使用される接着剤、助剤等は、感熱記録層に使用できるものの中から適宜選択することができる。接着剤としては、これらの中でも、澱粉−酢酸ビニルグラフト共重合体、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン系ラテックス等が好ましい。
【0051】
下塗り層中の接着剤の含有割合は、広い範囲で選択できるが、一般には下塗り層の全固形量中5〜30質量%程度が好ましく、10〜20質量%程度がより好ましい。
【0052】
本発明においては、感熱記録層上に保護層を備えていてもよい。保護層は、例えば保護層用塗液を感熱記録層上に塗布及び乾燥することにより形成することができる。これにより、可塑剤や油等の薬品に対して記録部の保存性をより一層向上できる。また、記録適性を高めることもできる。
【0053】
保護層用塗液は、特に限定するものではなく、一般に水を分散媒体とし、接着剤、顔料、助剤、カリミョウバンや酢酸アルミニウム等の水溶性多価金属塩等を混合、撹拌して調製することができる。保護層用塗液に使用される接着剤、顔料、助剤等は、感熱記録層に使用できるものの中から適宜選択することができる。接着剤としては、これらの中でも、耐可塑剤性、耐水性を向上する観点から、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
【0054】
保護層中の接着剤の含有割合は、特に限定されず広い範囲から適宜選択できるが、一般には、保護層の全固形量中1〜95質量%程度が好ましく、2〜80質量%程度がより好ましい。また、顔料の含有割合も、特に限定されず広い範囲から適宜選択できるが、一般には、保護層の全固形量中1〜95質量%程度が好ましく、2〜90質量%程度がより好ましい。
【0055】
また、保護層中に2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の常温で液体の紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルを含有させることもできる。これにより、光暴露に対して地肌部の黄変や記録部の退色を効果的に抑制できる。紫外線吸収剤の含有割合は、保護層の全固形量中3〜40質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、15〜38質量%程度が更に好ましい。
【0056】
保護層用塗液の塗布量は、特に限定されないが、乾燥重量で0.5〜15g/m
2程度、好ましくは1.0〜8g/m
2程度の範囲で調節される。
【0057】
下塗り層、感熱記録層及び保護層の形成方法については特に限定されず、例えば、エアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の適当な塗布方法により、下塗り層用塗液を支持体上に塗布及び乾燥した後、下塗り層上に感熱記録層用塗液、更に保護層用塗液を塗布及び乾燥する等の方法で形成される。
【0058】
なお、必要に応じて感熱記録体の裏面側にも保護層を設け、保存性をより一層高めたり、また記録面側に強光沢を持たせたりすることも可能である。各層を形成した後、または全ての層を形成し終えた後の任意の過程でスーパーカレンダーによる平滑化処理を施すこともできる。本発明の感熱記録体には、感熱記録体の裏面に粘着剤処理を施して粘着ラベルに加工したり、インクジェット記録適性を付与したり、磁気記録層や印刷用塗被層、更には熱転写記録層を設ける等、感熱記録体の製造分野における各種の公知技術が必要に応じて付加し得るものである。
【実施例】
【0059】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。実施例及び比較例における分散液のメジアン径は、レーザ回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)を用いて測定した。
【0060】
実施例1
・下塗り層用塗液の調製
有機中空粒子分散液(商品名:ローペイクSN−1055、体積中空率:55%、平均粒子径:1.0μm、ダウケミカル社製、固形分濃度26.5%)80部、焼成カオリン(商品名:アンシレックス、BASF社製)の50%水分散液(平均粒子径:0.6μm)140部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1571、旭化成ケミカルズ社製、固形分濃度48%)20部、酸化澱粉の10%水溶液50部、及び水20部からなる組成物を、混合攪拌して下塗り層用塗液を得た。
【0061】
・近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料の分散液(A液)の調製
3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン20部、及び水80部からなる組成物を、サンドミルによりメジアン径が1.5μmとなるように湿式粉砕処理して近赤外領域に吸収性を有するロイコ染料の分散液(以下、A液ともいう)を得た。
【0062】
・近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料の分散液(B液)の調製
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン20部、及び水80部からなる組成物を、サンドミルによりメジアン径が1.0μmとなるように湿式粉砕処理して近赤外領域に吸収性を有しないロイコ染料の分散液(以下、B液ともいう)を得た。
【0063】
・呈色剤の分散液(C液)の調製
3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン10部、及び水90部からなる組成物を、サンドミルによりメジアン径が1.0μmとなるように湿式粉砕処理して呈色剤の分散液(以下、C液ともいう)を得た。
【0064】
・増感剤の分散液(D液)の調製
シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン2部、及び水98部からなる組成物を、サンドミルによりメジアン径が1.0μmとなるように湿式粉砕処理して増感剤の分散液(以下、D液ともいう)を得た。
【0065】
・芳香族第2級アミン系老化防止剤の分散液(E液)の調製
N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン2部、及び水98部からなる組成物を、サンドミルによりメジアン径が1.0μmとなるように湿式粉砕処理して芳香族第2級アミン系老化防止剤の分散液(以下、E液ともいう)を得た。
【0066】
・第1感熱記録層用塗液の調製
A液25部、C液65部、D液50部、E液12.5部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH−42、昭和電工社製)15部、鹸化度98モル%、重合度1000のポリビニルアルコールの12%水溶液125部を混合し、塗液の固形分濃度が30%となるように水を加えて第1感熱記録層用塗液を得た。
【0067】
・第2感熱記録層用塗液の調製
B液25部、C液65部、D液50部、E液12.5部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH−42、昭和電工社製)15部、鹸化度98モル%、重合度1000のポリビニルアルコールの12%水溶液125部を混合し、塗液の固形分濃度が30%となるように水を加えて第2感熱記録層用塗液を得た。
【0068】
・保護層用塗液の調製
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−200、重合度:1000、日本合成化学工業社製)の10%水溶液100部、アクリル樹脂(商品名:バリアスターOT−1035−1、固形分濃度25%、三井化学社製)40部、40%水酸化アルミニウム分散液40部、ステアリン酸亜鉛の30%分散液2部からなる組成物を混合攪拌して保護層用塗液を得た。
【0069】
・感熱記録体の作製
64g/m
2の上質紙(酸性紙)の一方の面に、下塗り層用塗液を乾燥後の塗布量が8g/m
2となるように塗布及び乾燥して下塗り層を形成し、下塗り層上に第1感熱記録層用塗液を乾燥後の塗布量が2.2g/m
2となるように塗布及び乾燥して第1感熱記録層を形成し、第1感熱記録層上に第2感熱記録層用塗液を乾燥後の塗布量が2.2g/m
2となるように塗布及び乾燥して第2感熱記録層を形成し、第2感熱記録層上に保護層用塗液を乾燥後の塗布量が3.0g/m
2となるように塗布及び乾燥して保護層を形成した後、スーパーキャレンダー処理を施し、感熱記録体を得た。
【0070】
実施例2
実施例1の第1感熱記録層用塗液の調製において、E液を使用せず、水酸化アルミニウムの量を15部に代えて20.5部とし、第2感熱記録層用塗液の調製において、E液の量を12.5部に代えて25部とし、水酸化アルミニウムの量を15部に代えて9.5部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0071】
実施例3
(参考例)
実施例1の第1感熱記録層用塗液の調製において、E液の量を12.5部に代えて25部とし、水酸化アルミニウムの量を15部に代えて9.5部とし、第2感熱記録層塗液の調製において、水酸化アルミニウムの量を15部に代えて20.5部とし、E液を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0072】
実施例4
(参考例)
実施例2の第2感熱記録層用塗液の調製において、E液の量を25部に代えて1部とし、水酸化アルミニウムの量を9.5部に代えて20部とした以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0073】
実施例5
(参考例)
実施例2の第2感熱記録層用塗液の調製において、E液の量を25部に代えて2.5部とし、水酸化アルミニウムの量を9.5部に代えて20部とした以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0074】
実施例6
実施例2の第2感熱記録層用塗液の調製において、E液の量を25部に代えて125部とした以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0075】
実施例7
実施例2の第2感熱記録層用塗液の調製において、E液の量を25部に代えて225部とした以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0076】
実施例8
(参考例)
実施例1の下塗り層用塗液の調製において、焼成カオリンの50%水分散液の量を140部に代えて182.4部とし、有機中空粒子分散液を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0077】
比較例1
実施例2の第2感熱記録層塗液の調製において、水酸化アルミニウムの量を9.5部に代えて20.5部とし、E液を用いなかった以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0078】
比較例2
・保存性改良剤の分散液(F液)の調製
1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン2部、及び水98部からなる組成物を、サンドミルによりメジアン径が1.0μmとなるように湿式粉砕処理して保存性改良剤の分散液(以下、F液ともいう)を得た。
【0079】
実施例2の第2感熱記録層用塗液の調製において、E液25部に代えてF液25部を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0080】
比較例3
実施例1の第1感熱記録層用塗液の調製において、A液の量を25部に代えて12.5部とし、更にB液12.5部を用いて、下塗り層上に第1感熱記録層用塗液を乾燥後の塗布量が4.4g/m
2となるように塗布及び乾燥して第1感熱記録層を形成し、第2感熱記録層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0081】
かくして得られた感熱記録体について以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0082】
(白色度)
分光白色度測色計(商品名:SC10−WN、スガ試験機株式会社)を用いて、未記録部(地肌部)の白色度(%)を測定した。白色度が大きいほど未記録部(地肌部)のカブリや変色がなく、白紙外観性に優れる。
【0083】
(近赤外領域の発色性)
感熱記録評価機(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用いて、印加エネルギー0.34mJ/ドットにて各感熱記録体を印字し、記録部及び未記録部(地肌部)の900nmの反射率を分光光度計で測定し、次式から求められるPCS(print contrast signal)値を算出した。
PCS値(%)=[(地肌部の反射率−記録部の反射率)/地肌部の反射率]×100
PCS値が高いほど、記録部と未記録部(地肌部)との識別が明瞭になり、読取適性に優れる。記録像に要求されるPCS値は、使用される光学読取り装置の種類によって異なるため、一概には決められないが、概ね70〜100%の範囲、好ましくは75〜100%の範囲である。
【0084】
(耐光性)
上記の発色性の評価用に発色させた各感熱記録体を、5000Luxの蛍光灯下で24時間放置後、900nmの反射率を分光光度計で測定し、PCS値を算出した。
【0085】
(耐可塑剤性)
ポリカーボネイトパイプ(40mmΦ)上にラップフィルム(商品名:ハイラップKMA−W、三井化学社製)を三重に巻付け、その上に発色性の評価用に発色させた各感熱記録体を載せ、更にその上にラップフィルムを三重に巻き付けて40℃で24時間放置した後、900nmの反射率を分光光度計で測定し、PCS値を算出した。
【0086】
【表1】