(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した送り爪とブレーキ部材とを用いた送り出しの態様においては、大幅な送り過ぎや、大幅な戻りずれは抑制できるものの、連続端子の送り出しの距離を高精度に制御することは難しい。このため、圧着対象の端子が、金型の中央から微小にずれた位置におかれてしまうことも多かった。
【0007】
ここで、端子が、金型の中央から僅かでもずれた位置で加締められると、端子に対して適切な圧着処理が施されない。
図16には、金型の中央からずれた位置で加締められた端子の断面形状の一例が模式的に示されている。ここに例示されるように、金型の中央からわずかでもずれた位置で加締められると、端子のバレル部は左右非対称の形状となってしまい、端子が理想形状に変形されない。その結果、圧着不良、通電不良等の不都合が生じる可能性が高くなってしまう。
【0008】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、端子に対して適切な圧着処理を施せるような技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、端子圧着装置であって、連続端子に連ねられる複数の端子のうちの一つの端子を、金型で加締めることによって、前記端子を電線に圧着する圧着部と、前記圧着部における圧着動作に連動して、ステージに載置された前記連続端子の送り孔に引っ掛けられた送り爪を移動させることによって、前記連続端子を前記端子ひとつ分ずつ前記圧着部に向けて送出する送出部と、前記連続端子の送出方向への移動を制動せずに、前記送出方向と逆向きの戻り方向への移動を制動する片側制動部と、を備える。
【0010】
また、第1の態様は、前記片側制動部が、前記連続端子と対向配置された本体部と、前記本体部を付勢して、前記本体部を前記連続端子に押しあてる付勢部材と、を備え、前記本体部が、前記本体部における前記連続端子と対向する側の面に設けられた、断面V字状の押圧刃、を備え、前記押圧刃が、前記V字状の頂部が前記送出方向と直交する方向に延在するように配置され、前記頂部を挟んだ両斜面のうち、前記送出方向の下流側に配置される面が、前記連続端子に対して垂直であり、前記送出方向の上流側に配置される面が、前記連続端子に対して傾斜するような姿勢で、前記連続端子に押しあてられる。
前記付勢部材は、前記本体部に対する付勢力の作用位置が、前記連続端子に対して前記押圧刃が押しあてられる位置よりも前記送出方向下流側に位置するように設けられている。
【0011】
第
2の態様は、第
1の態様に係る端子圧着装置であって、前記本体部が、前記押圧刃の前記下流側に配置される面を通る仮想面よりも前記送出方向の上流側に配置され、前記頂部の延在方向と平行に延在する揺動軸を中心に、揺動可能に軸支される。
【0012】
第
3の態様は、第
2の態様に係る端子圧着装置であって、前記本体部における前記連続端子と対向する側の面が弧状面領域を含み、前記本体部が、前記弧状面領域の弧方向を前記送出方向に沿わせる姿勢で配置され、前記押圧刃が複数個設けられ、当該複数の押圧刃が、前記弧状面領域に、前記弧方向に沿って配列される。
【0013】
第
4の態様は、第
3の態様に係る端子圧着装置であって、複数の前記押圧刃それぞれの先端位置が、仮想円の円周上に配列され、複数の前記押圧刃のそれぞれにおける、前記送出方向の下流側に配置される面が、前記仮想円の半径方向に沿う面である。
【0014】
第
5の態様は、第
2から第
4のいずれかの態様に係る端子圧着装置であって、前記片側制動部が、前記本体部における、前記揺動軸よりも前記送出方向の上流側の位置に着設された、解除レバー、をさらに備える。
【0015】
第
6の態様は、第
1から第
5のいずれかの態様に係る端子圧着装置であって、前記押圧刃の前記頂部の延在方向に沿う両端部のそれぞれが、角丸形状とされる。
【0016】
第
7の態様は、第1から第
6のいずれかの態様に係る端子圧着装置であって、前記送り爪が前記送り孔に引っ掛けられた状態において、前記送り爪の先端が、前記送り孔の前記送出方向に沿う幅の全体を塞いだ状態とされる。
【0017】
第
8の態様は、第1から第
7のいずれかの態様に係る端子圧着装置であって、前記圧着部において前記端子が前記金型に拘束されてから加締められるまでの間、前記送り爪が前記連続端子と非接触の状態とされる。
第9の態様は、端子圧着装置であって、連続端子に連ねられる複数の端子のうちの一つの端子を、金型で加締めることによって、前記端子を電線に圧着する圧着部と、前記圧着部における圧着動作に連動して、ステージに載置された前記連続端子の送り孔に引っ掛けられた送り爪を移動させることによって、前記連続端子を前記端子ひとつ分ずつ前記圧着部に向けて送出する送出部と、前記連続端子の送出方向への移動を制動せずに、前記送出方向と逆向きの戻り方向への移動を制動する片側制動部と、を備え、前記送り爪が前記送り孔に引っ掛けられた状態において、前記送り爪の先端が、前記送り孔の前記送出方向に沿う幅の全体を塞いだ状態とされる。
【発明の効果】
【0018】
第1の態様によると、片側制動部が、連続端子の送出方向への移動を制動せずに、戻り方向への移動を制動する。この構成によると、圧着対象となる端子が、金型に対する理想圧着位置よりも送出方向の上流側に位置ずれした位置に送出されていたとしても、当該端子は金型の成型面に導かれて理想圧着位置まで自然に移動する。したがって、圧着対象となる端子が、理想圧着位置よりも送出方向の上流側の位置に送出されている場合であっても、端子は、最終的には理想圧着位置で加締められ、適切な圧着処理が行われる。
【0019】
また、第1の態様によると、押圧刃が、送出方向の下流側に配置される面が連続端子に対して垂直であり、送出方向の上流側に配置される面が連続端子に対して傾斜するような姿勢で、連続端子に押しあてられ、これによって、連続端子の戻り方向への移動だけが制動される。この構成によると、簡易な構成で、連続端子の送出方向への移動を制動せずに戻り方向への移動を制動することができる。
【0020】
第
2の態様によると、本体部が、押圧刃の送出方向の下流側に配置される面を通る仮想面よりも上流側に配置された揺動軸を中心に、揺動可能に軸支されている。この構成によると、連続端子の戻り方向への移動を確実に制動しつつ、連続端子の送出方向への移動をスムースに行わせることができる。
【0021】
第
3の態様によると、複数個の押圧刃が、本体部の弧状面領域に、その弧方向に沿って配列されて設けられる。この構成によると、厚みが異なる各種の連続端子に対応することができる。すなわち、厚みが異なる各種の連続端子のそれぞれについて、その送出方向への移動を制動せずに戻り方向への移動を制動することができる。
【0022】
第
4の態様によると、複数の押圧刃それぞれの先端位置が、仮想円の円周上に配列され、各押圧刃の送出方向の下流側に配置される面が、当該仮想円の半径方向に沿う面とされる。この構成によると、厚みが異なる各種の連続端子のそれぞれについて、確実に、その送出方向への移動を制動せずに戻り方向への移動を制動することができる。
【0023】
第
5の態様によると、解除レバーを操作して、本体部を、押圧刃の先端を連続端子から離間させる方向に揺動させることができる。したがって、必要に応じて、片側ブレーキ部の制動を簡単に解除することができる。
【0024】
第
6の態様によると、押圧刃の頂部が、送出方向と直交する方向に延在するように配置されるところ、当該頂部の延在方向に沿う両端部のそれぞれが、角丸形状とされる。この構成によると、連続端子に押しあてられた押圧刃の頂部の角で連続端子が削られてしまう、といった事態が生じにくく、削り屑等のパーティクルの発生が抑制される。
【0025】
第
7又は第9の態様によると、送り爪が送り孔に引っ掛けられた状態において、送り爪の先端が、送り孔の前記送出方向に沿う幅の全体を塞いだ状態とされる。この構成によると、送り孔に引っ掛けられた状態で移動した送り爪が停止した時に、連続端子が慣性運動によって送出方向に微小に位置ずれしてしまうといった事態が生じにくくなる。すなわち、端子の送り過ぎが生じにくくなる。
【0026】
第
8の態様によると、圧着部において端子が金型に拘束されてから加締められるまでの間、送り爪が連続端子と非接触の状態とされる。この構成によると、端子が金型に拘束されてから加締められるまでの間、圧着対象となる端子の送出方向への移動が完全にフリーの状態となるので、金型に対する理想圧着位置よりも送出方向の上流側に送出された端子が、理想圧着位置まで特にスムースに移動できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0029】
<1.連続端子9>
はじめに、端子圧着装置1が対象とする連続端子9について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、連続端子9を示す平面図である。
【0030】
連続端子9は、複数の端子91が連ねられた帯状の部材であり、具体的には、帯状の連鎖帯92の片側に複数の端子91が等間隔で並列状に連鎖されて形成されている。連鎖帯92には、各端子91に対応して等間隔に送り孔93が形成されている。各端子91の基部(バレル部)911は、電線の端部と圧着可能なように、断面略U字状に開放して形成されている。
【0031】
<2.端子圧着装置1>
端子圧着装置1の構成について、
図2、
図3を参照しながら説明する。
図2は、端子圧着装置1の概略正面図である。
図3は、経路規定部4および片側ブレーキ部7の一部分解図である。なお、
図2、
図3および後に参照する一部の図には、説明の便宜上、連続端子9の送出方向が+X方向に一致し、鉛直上方が+Z方向に一致するようなXYZ座標系が適宜付されている。
【0032】
端子圧着装置1は、連続端子9に連ねられる端子91(具体的には、端子91のバレル部911)に電線の端部を圧着固定する圧着部2と、リール状に巻回された長尺の連続端子9を繰り出して圧着部2に送給する送給部3と、を含んでおり、これらの各部2,3が連動して、連続的に圧着工程を行う構成となっている。送給部3は、より具体的には、連続端子9の送出経路を規定する経路規定部4と、送出経路に沿って連続端子9を送出する送出部5と、圧着部2の動きと送出部5の動きとを連動させる連動機構6と、連続端子9の送出を安定させるための機構である片側ブレーキ部7とを主として備える。以下、各部の構成について、具体的に説明する。
【0033】
<2−1.圧着部2>
圧着部2は、連続端子9に連ねられる複数の端子91のうちの一つの端子91を金型で加締めることによって、端子91を電線に圧着する。圧着部2は、可動支持フレーム21と、シャンク部22と、圧着用の上金型(クリンパ)23と、圧着用の下金型(アンビル)24とを主として備える。その他にも、圧着部2には、連鎖帯92から端子91を裁断するためのカッタ等が含まれる。
【0034】
可動支持フレーム21は、板状の基台210に対して略垂直姿勢で立設された板部211と、板部211の一主面(前面側)に固定された一対のガイドフレーム片212,212とを備える。一対のガイドフレーム片212,212は、基台210に対して略垂直姿勢で、かつ、それらの間に所定間隔をあけた並列姿勢で固定されている。また、一対のガイドフレーム片212,212の下端部は、基台210の上面から離間しており、これらの間で、クリンパ23およびアンビル24を用いた圧着作業が行われる。
【0035】
シャンク部22は、一対のガイドフレーム片212,212間に配設可能な略直方体状に形成されており、その幅寸法は、一対のガイドフレーム片212,212間の間隔寸法よりも幅狭(ここでは僅かに幅狭)に形成されている。そして、シャンク部22は、一対のガイドフレーム片212,212間で、一定姿勢で、上昇位置と下降位置との間で昇降自在にガイドされている。また、シャンク部22の上方には、エアシリンダ等のアクチュエータによって構成される昇降駆動機構部200が配設されており、シャンク部22は、ロッド部201を介して昇降駆動機構部200の駆動力を受けて、昇降移動するようになっている。
【0036】
クリンパ23は、シャンク部22の下部に取付けられている。また、アンビル24は、基台210の上面であってシャンク部22の下方位置(即ち、クリンパ23に対向する下方位置)に、下型固定部240を介して取付けられている。
【0037】
上記の構成を備える圧着部2においては、シャンク部22が昇降移動されることによって、シャンク部22に取り付けられたクリンパ23が昇降移動される。すなわち、シャンク部22の昇降駆動に伴って、アンビル24に対してクリンパ23が接近離間移動することになる。アンビル24上に端子91が配置された状態でシャンク部22が降下されると、クリンパ23がアンビル24に近接移動し、クリンパ23とアンビル24との間でアンビル24上に配置された端子91のバレル部911が加締められて電線の端部と圧着される。なお、これとともに、カッタが当該端子91を連鎖帯92から切断する構成としてもよい。
【0038】
<2−2.経路規定部4>
経路規定部4は、圧着部2に向かって延在する長尺板状のステージ41を備える。ステージ41は、その上面が連続端子9を圧着部2に導くガイド面として機能する。すなわち、連続端子9は、連鎖帯92を−Y側に向けた状態でステージ41上に載置され、後述する送出部5の駆動を受けて圧着部2の方に(すなわち、送出方向(+X方向)に)、送出される。
【0039】
ステージ41の−Y側の端縁には、X軸に沿って延在する長尺の送りガイド42が設けられている。送りガイド42は、ステージ41上の連続端子9の連鎖帯92を案内して、連続端子9がY方向に位置ずれしないように規制する規制部材として機能する。すなわち、連続端子9は、連鎖帯92を送りガイド42に沿わせた状態で送出される。
【0040】
ここで、送りガイド42の+Y側、すなわち、ステージ41上における連鎖帯92の通過領域の上方には、X軸に沿って往復移動される送り爪51(後述する)が配設される。ステージ41上における、この送り爪51の可動領域の下方に相当する位置には、X軸に沿って延在する溝411が形成される。この溝411は、後に明らかになるとおり、送り孔93に差し込まれた爪部512の先端を逃がすための空間として機能する。
【0041】
また、送りガイド42の+Y側の側壁には、+Y側に張り出す張り出し部421が形成される。張り出し部421は、送り爪51の可動領域における−X側の端部付近に相当する部分に延在して配置される。この張り出し部421は、当該端部付近へ移動されてきた送り爪51を、連鎖帯92から離間させるための分離壁として機能する。すなわち、張り出し部421の下面は、ステージ41との間に連鎖帯92が通過可能な隙間を形成しつつステージ41と略平行に延在し、張り出し部421の上面は、−X方向に向かうにつれて斜め上方に傾斜する傾斜面420とされる。−X方向に移動される送り爪51の爪部512は、その可動範囲における−X側の端部付近に到達すると、この傾斜面420を滑り上がることによって、連鎖帯92から離間した状態とされる(
図12参照)。
【0042】
また、送りガイド42における、張り出し部421の形成位置よりも−X側には、切り欠き部422が形成される。この切り欠き部422には、片側ブレーキ部7(後述する)が配設される。切り欠き部422に片側ブレーキ部7の支持板部71が配設されると、当該支持板部71に支持された本体部72が、送りガイド42の+Y側、すなわち、ステージ41上における連鎖帯92の通過領域の上方に配設される。
【0043】
<2−3.送出部5>
送出部5は、圧着部2における圧着動作に連動して、ステージ41に載置された連続端子9を、端子91ひとつ分ずつ、圧着部2に向けて送出する。送出部5は、具体的には、送り爪51を備え、この送り爪51が、連続端子9の連鎖帯92に形成された送り孔93に引っ掛けられた状態で、送出方向(+X方向)に移動されることによって、連続端子9が圧着部2に向けて送出される。
【0044】
送り爪51は、長尺状の部材であり、上述したとおり、送りガイド42の+Y側、すなわち、ステージ41上における連鎖帯92の通過領域の上方に配設される。送り爪51は、具体的には、揺動部材61(後述する)の下端部に軸部511を介して揺動自在に支持されている。また、送り爪51の一端部には、爪部512が設けられている。爪部512は、先端にいくにつれて、X軸に沿う長さが短くなる先細形状とされており、その先端が、ステージ41上の連続端子9の連鎖帯92に形成された送り孔93に引っ掛かり可能に構成されている。爪部512の先端部分は、より具体的には、+X側(送出方向の下流側)の辺が略鉛直であり、−X側(送出方向の上流側)の辺が傾斜した先細形状に形成されている。したがって、爪部512は、送り爪51が送出方向(ステージ41に沿ってアンビル24に近づく方向であり、+X方向)に移動する場合にのみ、送り孔93に引っ掛かり、送出方向と逆の戻り方向(ステージ41に沿ってアンビル24から遠ざかる方向であり、−X方向)に移動する場合には、連鎖帯92の上を滑って、送り孔93に引っ掛からないようになっている。
【0045】
送り爪51における爪部512が設けられている側とは逆側の端部には、付勢部材52が連結固定されている。付勢部材52は、ここではコイルバネであり、伸長状態で、その一端部が揺動部材61に連結固定されるとともに、他端部が送り爪51の端部に連結固定されている。付勢部材52は、送り爪51の一端部に設けられている爪部512を、ステージ41に向けて付勢する。これによって、送り爪51が送出方向(+X方向)に移動する際に、爪部512が、より確実に、送り孔93に引っ掛かることになる。
【0046】
上述したとおり、送り爪51は、揺動部材61の下端部に、軸部511を介して揺動自在に支持されている。この揺動部材61は、後に明らかになるように、圧着部2における圧着動作と連動して鉛直面内を揺動し、これに伴って、送り爪51が、X軸に沿う所定の可動範囲内を往復移動する。ここで、送り爪51は、揺動部材61の下端部が1回往復移動される毎に、連続端子9を端子91ひとつ分ずつ送出方向(+X方向)に送出する。すなわち、揺動部材61の下端部が+X方向に移動されると、爪部512が、ステージ41上の連続端子9の連鎖帯92の送り孔93に引っ掛かって、連続端子9を送出方向(+X方向)に端子91ひとつ分だけ送出する。一方、揺動部材61の下端が−X方向に移動される際は、送り爪51の先端は連鎖帯92の送り孔93には引っ掛からず、連続端子9を戻り方向(−X方向)に後退させずに送り爪51だけが−X方向に移動される。
【0047】
ただし、上述したとおり、送り爪51の可動範囲における−X側の端部付近に相当する部分には、送りガイド42に設けられた張り出し部421が形成されており、−X方向に移動される送り爪51の爪部512は、その可動範囲における−X側の端部付近に到達すると、張り出し部421の傾斜面420を滑り上がることによって、連鎖帯92から離間した状態とされる。つまり、送り爪51は、その可動範囲における−X側の端部付近においては、ステージ41上の連続端子9と完全に非接触の状態とされる(
図12参照)。
【0048】
ところで、送出部5においては、端子91の送り過ぎを抑制するための態様が実現されている。この態様について、
図4を参照しながらより具体的に説明する。
図4は、ステージ41をXZ面に沿って切断した図であり、送り爪51が連続端子9を送出している様子が模式的に示されている。
【0049】
上述したとおり、送り爪51の爪部512は、先端にいくにつれて、X軸に沿う長さが短くなる先細形状であるところ、この爪部512は、これが送り孔93に引っ掛けられた状態において、爪部512が送り孔93の長尺方向(連鎖帯92の延在方向に沿う方向)に沿うほぼ全体を塞いだ状態となる位置まで、送り孔93に深く差し込まれる。上述したとおり、ステージ41には、送り爪51の可動範囲の下方に相当する位置に、X軸に沿って延在する溝411が形成されており、送り孔93に差し込まれた爪部512の先端は、この溝411内に入り込んだ状態となる。つまり、溝411は、送り孔93に差し込まれた爪部512の先端を逃がすための空間として機能する。
【0050】
上述したとおり、送り爪51は、爪部512が送り孔93に引っ掛かった状態で+X方向に移動されることによって、連続端子9を端子91ひとつ分ずつ送出方向(+X方向)に送出するところ、上記の構成としておけば、送り爪51が停止した時に、連続端子9が慣性運動によって送出方向に微小に位置ずれしてしまうといった事態が生じにくい。すなわち、送出方向への制動力が無くても、端子91の送り過ぎが生じにくい。
【0051】
なお、爪部512の差し込みの深さを調整するのに加えて(あるいは、これに代えて)、爪部512を、その最先端のX軸に沿う長さが、送り孔93の長尺長さ(連鎖帯92の延在方向に沿う長さ)と略同一か、当該長尺長さよりも僅かに小さい寸法に予め形成しておいてもよい。この構成によっても、爪部512が送り孔93に引っ掛けられた状態において、爪部512が送り孔93の長尺方向に沿うほぼ全体を塞いだ状態となり、端子91の送り過ぎの抑制が実現される。
【0052】
再び
図2、
図3を参照する。送出部5は、揺動部材61に対する送り爪51のX軸に沿う位置を調整する送り位置調整ボルト53をさらに備える。送り位置調整ボルト53によって、揺動部材61に対する送り爪51のX軸に沿う位置を調整することによって、端子91の送り位置を調整することができる。つまり、送り位置調整ボルト53は、端子91の送り位置を調整するための調整機構として機能する。
【0053】
端子圧着装置1のオペレータは、端子91の圧着処理に先立って、送り位置調整ボルト53を用いて、端子91の送り位置を調整する。ただし、この調整は厳密に行う必要はなく、少なくとも、端子91の送り位置が後述する適正範囲内にくるように調整されれば十分である。
【0054】
ここで、端子91の送り位置の適正範囲について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、当該適正範囲を説明するための図である。
【0055】
クリンパ23の底面には、端子91のバレル部911を拘束する凹型の成形面(凹型面)231が形成される。この凹型面231は、バレル部911を誘い込みやすくするために、開口端に行くにつれて幅が広がった形状とされているところ、端子91は、少なくとも、この凹型面231に拘束される範囲内に送出される必要がある。具体的には、
図5に示されるように、端子91のバレル部911の−X側の端縁が、凹型面231の開口端における−X側の端縁M2と一致するような端子91の位置を「−X側最大ずれ位置P1」とし、端子91のバレル部911の+X側の端縁が、凹型面231の開口端における+X側の端縁と一致するような端子91の位置を「+X側最大ずれ位置」とした場合、端子91は、−X側最大ずれ位置P1よりも+X側であり、かつ、+X側最大ずれ位置よりも−X側の範囲内に、送出されなければならない。
【0056】
ところが、上記の範囲内に送出されたとしても、端子91は必ずしも適切に圧着されない。すなわち、端子91を適切に圧着するためには、端子91は、そのバレル部911の中心Cが、X軸について、凹型面231の中心軸M1と一致するような位置(理想圧着位置P0(
図13参照))で、加締められる必要がある。ここで、後に明らかになるように、この実施の形態に係る端子圧着装置1では、圧着対象となる端子91が、理想圧着位置P0よりも送出方向の上流側(−X側)の位置(すなわち、バレル部911の中心Cが、X軸について、凹型面231の中心軸M1より−X側にずれた位置)に送出された場合であっても、端子91を適切に圧着することができる。
【0057】
そこで、端子圧着装置1においては、−X側最大ずれ位置P1より+X側であって、理想圧着位置P0よりも−X側の範囲が、送り位置の適正範囲とされる。つまり、端子圧着装置1においては、端子91は、当該適正範囲内のどこかの位置に送出されればよい。したがって、端子91の送り位置を厳密に調整する必要がなく、調整作業が簡易化される。ただし、送出部5による端子91の送り位置には一定の送り誤差が生じることを見越しておく必要があり、少なくとも、当該誤差を考慮した上で、端子91が適正範囲内に送出されるように、送り位置の調整を行っておく必要がある。
【0058】
<2−4.連動機構6>
再び
図2、
図3を参照する。連動機構6は、圧着部2の動き(具体的には、シャンク部22の昇降動作)と送出部5の動き(具体的には、送り爪51の往復動作)とを連動させる機構であり、揺動部材61と、伝達部材62とを主として備える。
【0059】
揺動部材61は、一対のガイドフレーム片212,212の外側方であって、ステージ41の上方位置において、板部211に軸部611を介して揺動自在に支持されている。軸部611の中心軸は、送出方向(+X方向)に略直交するとともに、基台210に対して略水平姿勢であり、これによって、揺動部材61の下端部が、X軸に沿って揺動するようになっている。また、揺動部材61には、下方に向けてアンビル24側に斜め傾斜するカム溝612が形成されている。
【0060】
伝達部材62は、一端がシャンク部22に一体的に連結固定され、シャンク部22の昇降に連動して昇降する。伝達部材62は、当該固定端部から、一方のガイドフレーム片212に形成された溝を通って、揺動部材61のカム溝612に向けて延出して自由端部に連なっている。この自由端部には、カム溝612内を移動可能な突部621が形成されている。
【0061】
上記の構成において、伝達部材62がシャンク部22の昇降に連動して昇降すると、その昇降の動きが、突部621およびカム溝612を介して、揺動部材61を揺動させる動きとして伝達されるようになっている。すなわち、シャンク部22が最上方位置から垂直に押し下げられると、シャンク部22とともに突部621も垂直に下降する。ここで、カム溝612は下方に向かうにつれて+X方向に湾曲している。したがって、突部621が垂直に下降していくと、これがカム溝612の内壁に摺接して揺動部材61を−Y方向からみて時計回り方向に回転させる。すると、揺動部材61の下端部は−X方向に移動し、上述したとおり、当該下端部に取り付けられている送り爪51が−X方向(戻り方向)に移動されることになる。一方、シャンク部22が最下方位置から垂直に引き上げられると、シャンク部22とともに突部621も垂直に上昇する。突部621が垂直に上昇していくと、これが突部621の内壁に摺接して揺動部材61を−Y方向からみて反時計回り方向に回転させる。すると、揺動部材61の下端部は+X方向に移動し、上述したとおり、当該下端部に取り付けられている送り爪51が+X方向(送出方向)に移動されることになる。このように、連動機構6は、シャンク部22の昇降動作に連動させて、送り爪51をX軸に沿って往復移動させるように構成されている。
【0062】
<2−5.片側ブレーキ部7>
片側ブレーキ部(片側制動部)7は、送出方向について送り爪51の上流側(−X側)において、ステージ41上に載置される連続端子9の連鎖帯92に当接して、連続端子9の、送出方向(+X方向)と逆向きの戻り方向(−X方向)への移動を、制動する。ただし、片側ブレーキ部7は、連続端子9の送出方向への移動は、制動しない。つまり、片側ブレーキ部7は、連続端子9の送出方向の移動を妨げることなく、連続端子9の戻り方向の移動だけを妨げる。
【0063】
以下において、片側ブレーキ部7について、
図2、
図3に加え、
図6〜
図9を参照しながら具体的に説明する。
図6は、片側ブレーキ部7の全体の構成を模式的に示す側面図である。
図7は、片側ブレーキ部7の本体部72の構成を模式的に示す側面図である。
図8は、本体部72を、
図7の矢印K方向から見た図である。
図9は、揺動された状態の本体部72を模式的に示す側面図である。
【0064】
<i.構成>
片側ブレーキ部7は、支持板部71と、本体部72と、付勢部材73と、解除レバー74とを主として備える。
【0065】
本体部72は、
図7に示されるように、略平板状の部材であり、下方部分721と、その上方に配置された上方部分722とが、互いに一体化された形状となっている。下方部分721は、円板の一部を弦に沿って切り取った形状であって、弦を上に向けた姿勢とされる。また、上方部分722は、略矩形の長尺板状であって、長尺方向を下方部分721の弦に沿わせるようにして配置される。ただし、下方部分721の弦の長さは、上方部分722の長尺方向の長さよりも短く、下方部分721は上方部分722の長尺方向に沿う一方の側(以下「本体部72の前側」という)に偏在して配置される。
【0066】
下方部分721の下側面(弧状面領域)720には、その弧方向に沿って、複数個の押圧刃723,723,・・,723が配列されて設けられる。弧方向に沿って最も前側に配置される押圧刃723は、例えば、弧方向について弧状面領域720の略中央に相当する位置に形成される。なお、押圧刃723の個数は何個であってもよく、図示される個数に限られるものではない。
【0067】
一群の押圧刃723,723,・・,723のそれぞれは、下方に向けて尖る断面V字の形状を有している。そして、一群の押圧刃723,723,・・,723それぞれの先端位置は、1個の仮想円qの円周上に配列される。なお、各押圧刃723の弧状面領域720からの突出長さは互いに略同一であってもよく、この場合、仮想円qは、弧状面領域720を規定する円と同心の円となる。
【0068】
一群の押圧刃723,723,・・,723のそれぞれは、同様の構成を備えている。すなわち、各押圧刃723は、より具体的には、頂部7230を挟んで、前側の面(前側面)7231と後ろ側の面(後側面)7232とから形成される。頂部7230は、本体部72の左右方向に沿って延在する。また、頂部7230の延在方向に沿う両端部7233,7233のそれぞれは、
図8に示されるように、角丸形状に形成されている。また、各押圧刃723の前側面7231は、仮想円qの半径方向に沿う面とされる。また、各押圧刃723の後側面7232は、仮想円qの半径方向に対して傾斜する面とされる。
【0069】
本体部72の主面には、左右に貫通する軸穴724が設けられる。この軸穴724は、その中心Rが、仮想円qの中心Qよりも後方側にくるように形成される。すなわち、軸穴724は、各押圧刃723の頂部7230の延在方向と平行な方向に沿って貫通形成され、その中心Rが、各押圧刃の前側面7231を通る仮想面よりも後方側に形成される。
図3に示されるように、この軸穴724には、固定ネジ701が、支持板部71に形成された貫通穴714を介して挿通されて締結される。これによって、本体部72が、略板状の部材である支持板部71の一方の主面に、固定ネジ701を介して揺動自在に支持される。以下において、本体部72の揺動軸を、「揺動軸R」とも示す。
【0070】
片側ブレーキ部7は、本体部72を下方に付勢(例えば、弾性付勢)する付勢部材73を備える。付勢部材73は、具体的には、例えばコイルバネであり、縮短状態で、その一端部が、本体部72の上端面における前方の端部付近に形成された収容穴725の底面に当接されるとともに、他端部が、支持板部71の上端に突設された天板部712の下面に当接される。ただし、付勢部材73と本体部72との当接位置(すなわち、付勢力の作用位置)Tは、揺動軸Rよりも前側にくるように形成される。これによって、支持板部71に支持された本体部72(具体的には、本体部72の前側部分)が、下方に付勢されることになる。
【0071】
片側ブレーキ部7は、さらに、その制動状態を解除するための解除レバー74を備える。解除レバー74は、略棒状の長尺部材であり、その一端が、本体部72の上端面における後方の端部付近に形成されたネジ穴726に締結固定され、当該固定端部から、切り欠き部713(支持板部71の天板部712に形成された切り欠き部713)を介して天板部712の上方に向けて延在し、自由端部が天板部712の上側に突出した状態とされる。ただし、解除レバー74と本体部72との連結位置Uは、揺動軸Rよりも後側にくるように形成される。この構成において解除レバー74を下側に押すと、本体部72が、付勢部材73の付勢力に逆らう方向に回動することになる。
【0072】
<ii.ステージ41に対する位置関係>
本体部72は、上述したとおり、支持板部71の一方の主面に、固定ネジ701を介して揺動自在に支持される。本体部72を支持した支持板部71は、
図2、
図3に示されるように、ステージ41に対して略垂直姿勢で立設される。すなわち、送りガイド42には、支持板部71を配設するための切り欠き部422が形成されており、送りガイド42の−Y側の側壁面であって、切り欠き部422の下方には、2箇所のネジ穴423,423が形成されている。一方、支持板部71の下方であって、送りガイド42に形成された2箇所のネジ穴423,423のそれぞれに対応する各位置にも、ネジ穴711が設けられている。各ネジ穴711にワッシャー702を介在させてネジ703が挿通され、これがステージ41のネジ穴423に締結されることによって、本体部72を支持した支持板部71が、ステージ41に対して固定される。
【0073】
本体部72を支持した支持板部71がステージ41に対して固定された状態において、本体部72は、その下面がステージ41に対向し、その前後軸が連続端子9の送出方向(X軸方向)に沿い、かつ、その前側が送出方向の下流側(+X側)に向くように配置される。したがって、本体部72の弧状面領域720は、その弧方向を、送出方向に沿わせるような姿勢で、ステージ41上の連鎖帯92と対向配置されることになる。したがって、一群の押圧刃723,723,・・,723の配列方向が送出方向に沿うことになり、全ての押圧刃723,723,・・,723が、連鎖帯92と対向配置されることになる。さらに、各押圧刃723は、その頂部7230が、送出方向と略直交する方向に延在するとともに、ステージ41に対して略水平に延在するような姿勢となる。また、各押圧刃723の前側面7231が送出方向の下流側(+X側)に配置され、後側面7232が送出方向の上流側(−X側)に配置されることになる。
【0074】
また、揺動軸Rは、各押圧刃723の前側面7231を通る仮想面よりも、送出方向の上流側(−X側)側に配置され、送出方向と略直交するとともに、ステージ41に対して略水平に延在することとなる。このため、本体部72が揺動軸Rを中心に揺動されると、弧状面領域720が、回転しつつ連続端子9に対して接近離間移動することになる。
【0075】
上述したとおり、本体部72は、付勢部材73により下方に付勢されており、当該付勢力の作用位置Tは、揺動軸Rの前側(すなわち、送出方向の下流側(+X側))にある。したがって、付勢部材73からの付勢力を受けて、弧状面領域720がステージ41上の連続端子9に向けて付勢され、当該弧状面領域720に形成された押圧刃723(より具体的には、弧状面領域720に形成された一群の押圧刃723,723,・・,723のうちの少なくとも1個の押圧刃723)が、当該連続端子9に押しあてられた状態となる。
【0076】
また、上述したとおり、本体部72には、解除レバー74が着設されており、その連結位置Uは、揺動軸Rの後側(すなわち、送出方向の上流側(−X側))にある。したがって、解除レバー74が下側に押されると、本体部72が、付勢部材73の付勢力に逆らう方向に回動し、弧状面領域720に形成された押圧刃723が、連続端子9から離間した状態となる。つまり、オペレータは、解除レバー74の自由端部を下側に押すことによって、片側ブレーキ部7の制動を解除することができる。
【0077】
<iii.制動の態様>
片側ブレーキ部7が、連続端子9の送出方向の移動を妨げることなく、連続端子9の戻り方向の移動だけを妨げる態様について説明する。
【0078】
上述したとおり、片側ブレーキ部7がステージ41に取り付けられた状態において、付勢部材73が、本体部72の弧状面領域720を、ステージ41上の連続端子9(具体的には、連続端子9の連鎖帯92)に向けて付勢する。すると、弧状面領域720に形成された複数の押圧刃723,723,・・,723のうちの少なくとも一つの押圧刃723は、その前側面7231(すなわち、送出方向の下流側(+X側)に配置されている面)が、連鎖帯92の上面に対して略垂直であり、その後側面7232(すなわち、送出方向の上流側(−X側)に配置されている面)が、連鎖帯92の上面に対して傾斜するような姿勢で、連続端子9に押しあてられた状態となる。このような姿勢で連続端子9に押しあてられる押圧刃723を、以下、「実効押圧刃」ともいう。
図7の例では、最も前側に配置されている押圧刃723が実効押圧刃となっている。ただし、ここでいう、「連鎖帯92の上面に対して略垂直」とは、連鎖帯92の上面と前側面7231とがなす角度が90度である場合だけでなく、当該角度がほぼ90度(すなわち、90度からのずれが、無視できる程度(例えば、±5度程度))である場合を含む。したがって、一群の押圧刃723,723,・・,723のうちの複数の押圧刃723が、実効押圧刃となり得る。
【0079】
少なくとも1個の押圧刃723が、上記のような姿勢で連続端子9に押しあてられると、連続端子9は、送出方向(+X方向)へは移動できるものの、戻り方向(−X方向)へは移動できない状態となる。
【0080】
すなわち、連続端子9が戻り方向(−X方向)に移動しようとした場合、実効押圧刃となる押圧刃723が、当該移動方向と直交する方向から連鎖帯92を押しつけるため、連鎖帯92は当該方向に移動することができない。さらに、上述したとおり、本体部72は、押圧刃723の前側面7231(送出方向の下流側(+X側)に配置される面)を通る仮想面よりも送出方向の上流側(−X側)に配置された揺動軸Rを中心に、揺動可能とされている。したがって、連続端子9が戻り方向(−X方向)に移動しようとした場合、連鎖帯92からの摩擦力を受けて、本体部72は、押圧刃723の先端が連鎖帯92に近づく方向に微量に揺動する。したがって、実効押圧刃となる押圧刃723は、より強く連鎖帯92に押しあてられることとなり、これによって、連続端子9の送出方向への移動が確実に制動される。
【0081】
一方、連続端子9が送出方向(+X方向)に移動しようとした場合、実効押圧刃となる押圧刃723を含む全ての押圧刃723,723,・・,723が、当該移動方向に沿うように傾斜した面の側から連鎖帯92にあたった状態となっているため、連鎖帯92の当該方向への移動は妨げられない。さらに、上述したとおり、本体部72は、押圧刃723の前側面7231を通る仮想面よりも送出方向の上流側(−X側)に配置された揺動軸Rを中心に、揺動可能とされている。したがって、連続端子9が送出方向(−X方向)に移動しようとした場合、連鎖帯92からの摩擦力を受けて、本体部72は、押圧刃723の先端が連鎖帯92から遠ざかる方向に微量に揺動する。したがって、連続端子9が、押圧刃723に妨げられることなく、送出方向へスムースに移動できる。
【0082】
ところで、複数の押圧刃723,723,・・,723のうちのどれが実効押圧刃となるかは、処理対象となる連続端子9の連鎖帯92の厚みによって変わってくる。例えば、ある連続端子(第1の連続端子)9aが処理対象であった場合に、最も+X側の第1の押圧刃723が実効押圧刃であったとする(
図7)。ここで、第1の連続端子9aよりも連鎖帯92の厚みが厚い第2の連続端子9bが処理対象となった場合、本体部72が、揺動軸Rを中心に、+Y側から見て時計回りに微少量だけ揺動された状態となる(
図9)。すなわち、仮想円qの中心Qが揺動軸Rを中心とする円弧に沿って上方に微小に移動し、その結果、弧状面領域720が微少に回転しつつ微少に上方に移動する。すると、第1の押圧刃723よりも−X側の押圧刃723が実効押圧刃となる。
図9の例では、最も−X側に配置されている押圧刃723が実効押圧刃となっている。つまり、連鎖帯92の厚みが変わると実効押圧刃となる押圧刃723も変化し、連鎖帯92の厚みが厚いほど−X側の押圧刃723が実効押圧刃となる。つまり、この片側ブレーキ部7は、各種の厚みの連鎖帯92に対応することができる。すなわち、各種の連続端子9に対応することが可能となる。
【0083】
<3.端子圧着装置1の動作>
端子圧着装置1の動作について、
図10〜
図12を参照しながら具体的に説明する。
図10には、送り爪51が送出方向に移動されている際の様子が模式的に示されている。
図11には、送り爪51が戻り方向に移動されている際の様子が模式的に示されている。
図12には、端子91がクリンパ23に拘束されている状態の様子が模式的に示されている。なお、
図10〜
図12においては、説明の便宜上、一部の部品のみを模式的に表している。
【0084】
シャンク部22(図示省略)が最下方位置から最上方位置まで垂直に押し上げられると、
図10に示されるように、クリンパ23は垂直上方向に移動する(矢印AR1)。その一方で、シャンク部22が最下方位置から最上方位置まで垂直に押し上げられると、これに応じて連動機構6が、送り爪51を+X方向に移動させる(矢印AR10)。上述したとおり、送り爪51が+X方向に移動される間、送り爪51の爪部512は、ステージ41上の連続端子9の連鎖帯92の送り孔93に引っ掛かった状態となる。送り爪51が、その爪部512が送り孔93に引っ掛かった状態で+X方向に移動されることによって、連続端子9が+X方向に端子91ひとつ分だけ送出される(矢印AR100)。ただし、片側ブレーキ部7は、連続端子9の送出方向の移動については、これを制動しない。
【0085】
シャンク部22が最上方位置に到達すると、送り爪51は、その可動範囲内において最も+X側の位置(最下流位置)に到達して停止する。このとき、アンビル24上(すなわち、クリンパ23の下方)の適正範囲内のどこかの位置に、新たな端子91が配置された状態となる。なお、上述したとおり、爪部512が送り孔93に引っ掛けられた状態において、爪部512が送り孔93の長尺方向に沿うほぼ全体を塞いだ状態とされるので、片側ブレーキ部7の送出方向への制動力がなくとも、送り爪51が停止した時に、連続端子9が慣性運動によって送出方向に微小に位置ずれしてしまうといった事態(すなわち、送り過ぎ)は生じにくい。
【0086】
続いて、シャンク部22が最上方位置から垂直に押し下げられると、
図11に示されるように、クリンパ23は垂直下方向に移動する(矢印AR2)。その一方で、シャンク部22が最上方位置から垂直に押し下げられると、これに応じて連動機構6が、送り爪51を−X方向に移動させる(矢印AR20)。上述したとおり、送り爪51が−X方向に移動される間、送り爪51の爪部512は、ステージ41上の連鎖帯92の送り孔93には引っ掛からず、連続端子9を−X方向に後退させずに送り爪51だけが−X方向に移動される。ただし、片側ブレーキ部7は、連続端子9の戻り方向の移動については、これを制動するので、送り爪51が送り孔93に引っ掛からない状態で−X方向に移動する際に、送り爪51に追従して連続端子9が−X方向に位置ずれを起こすといった事態は生じない。
【0087】
シャンク部22が最下方位置付近の所定位置(最下方付近位置)に到達すると、
図12に示されるように、アンビル24上に配置されていた端子91がクリンパ23の凹型面231に拘束される。そして、シャンク部22が最下方付近位置からさらに降下されて、最下方位置まで到達する間に、クリンパ23とアンビル24との間で端子91のバレル部が変形されて(すなわち、端子91が加締められて)、電線の端部と圧着される。ただし、端子91がクリンパ23の凹型面231に拘束開始されるのとほぼ同時に、送り爪51は、張り出し部421の形成位置に到達し、傾斜面420を滑り上がることによって、連鎖帯92から離間した状態とされる。つまり、端子91が凹型面231に拘束開始されてから加締められるまでの間、送り爪51と連続端子9とは完全に非接触の状態とされる。
【0088】
上述したとおり、片側ブレーキ部7は、連続端子9の送出方向の移動については、これを制動しない。したがって、端子91が凹型面231に拘束開始されてから加締められるまでの間、端子91は、送出方向には、完全に自由に動ける状態となっている(以下、この状態を「片側フリー状態」ともいう)。この構成によると、端子91に対して適切な圧着処理を施すことができる。その理由について、
図13を参照しながら説明する。
図13は、端子91に対して圧着処理が施される際の様子を示す図である。
【0089】
クリンパ23によって適切な圧着処理を施すためには、端子91が理想圧着位置P0と厳密に位置合わせされた状態で加締められる必要がある。というのも、もしも、端子91が凹型面231の中央からずれた位置で加締められてしまうと、端子91のバレル部911は、
図16に示されるような左右非対称の形状となり、これでは圧着不良、通電不良等の不都合が生じる可能性が高くなってしまうからである。
【0090】
上述したとおり、送給部3にて送出される端子91は、適正範囲内に送出される。つまり、端子91は、クリンパ23に確実に拘束される範囲内において、理想圧着位置P0よりも−X側にずれた位置に送出される可能性がある(
図13の上段)。
【0091】
ここで、上記の実施の形態においては、端子91がクリンパ23の凹型面231に拘束された状態(
図13の中段)において、連続端子9は、送出方向(+X方向)には自由に動ける片側フリー状態となっている。したがって、端子91が理想圧着位置P0から−X側にずれた位置に送出されても、クリンパ23が降下するにつれて、端子91は凹型面231の内壁に導かれて送出方向(+X方向)に自然に移動され(すなわち、凹型面231の中央に向けて自然に移動され)(自然位置補正)、最終的に必ず理想圧着位置P0、すなわち、凹型面231の中央で加締められることになる(
図13の下段)。このように凹型面231の中央で加締められた場合、電線と圧着固定されたバレル部911の巻き形状が、
図14に示されるような左右対称の形状となる。このように適切な形状で電線と圧着固定された端子91においては、圧着不良、通電不良等の不都合は生じにくい。また、上記の実施の形態においては、端子91が加締められる際に端子91が片側フリー状態となっているので、電線と圧着固定された端子91においてバレル部911と端子部との関係が適切に維持されやすい。具体的には、端子部に対するバレル部911のねじれ量(ローリング)が小さく抑えられる。また、端子部に対するバレル部911の左右の曲がり量(ツイスト)も小さく抑えられる。また、端子部に対するバレル部911の前後の位置ずれ量も小さく抑えられる。また、端子部に対するバレル部911の上下の位置ずれ量も小さく抑えられる。このように、端子圧着装置1においては、端子91が加締められる間、連続端子9を片側フリー状態とすることによって、端子91に対して適切な圧着処理を施すことができるのである。
【0092】
<4.効果>
上述したとおり、上記の実施の形態によると、片側ブレーキ部7が、連続端子9の送出方向への移動を制動せずに、戻り方向への移動を制動する。この構成によると、上述したとおり、圧着対象となる端子91が、理想圧着位置P0よりも送出方向の上流側の位置に送出されている場合であっても、端子91に対して適切な圧着処理を行うことができる。
【0093】
また、上記の実施の形態に係る片側ブレーキ部7によると、連続端子9の送出方向への移動は、常に制動されない状態となっている。例えば、通常のブレーキ部材(例えば、連続端子を一定の圧力で抑えつけて連続端子の送出方向および戻り方向の移動を妨げる部材)が搭載されている既存の端子圧着装置において、端子91が凹型面231に拘束開始されてから加締められるまでの間だけ、ブレーキを解除させようとした場合、ブレーキ部材を連続端子に対して昇降移動させるための機構や、ブレーキ部材を昇降移動させるタイミングをとるための機構等を設ける必要があり、装置構成が複雑になり、耐久性が低くなる可能性も高まる。上記の実施の形態においては、既存の端子圧着装置において、ブレーキ部材に代えて片側ブレーキ部7を搭載することによって、簡易かつ安価に、圧着処理の処理性能を向上させることができる。
【0094】
また、上記の実施の形態によると、押圧刃723(具体的には、複数の押圧刃723,723,・・,723のうちの少なくとも一つの押圧刃723)が、前側面7231(送出方向の下流側に配置される面)が、連続端子9に対して垂直であり、後側面7232(送出方向の上流側に配置される面)が連続端子9に対して傾斜するような姿勢で、連続端子9に押しあてられ、これによって、連続端子9の戻り方向への移動だけが制動される。この構成によると、上述したとおり、簡易な構成で、連続端子9の送出方向への移動を制動せずに戻り方向への移動を制動することができる。
【0095】
また、上記の実施の形態によると、本体部72が、各押圧刃723の前側面7231(送出方向の下流側に配置される面)を通る仮想面よりも上流側に配置された揺動軸Rを中心に、揺動可能に軸支されている。この構成によると、上述したとおり、連続端子の戻り方向への移動を確実に制動しつつ、連続端子の送出方向への移動をスムースに行わせることができる。
【0096】
また、上記の実施の形態によると、複数個の押圧刃723,723,・・,723が、本体部72の弧状面領域720に、その弧方向に沿って配列されて設けられる。この構成によると、上述したとおり、厚みが異なる各種の連続端子9に対応することができる。すなわち、厚みが異なる各種の連続端子9のそれぞれについて、その送出方向への移動を制動せずに戻り方向への移動を制動することができる。
【0097】
また、上記の実施の形態によると、複数の押圧刃723,723,・・,723それぞれの先端位置が、仮想円qの円周上に配列され、各押圧刃723の前側面7231(送出方向の下流側に配置される面)が、当該仮想円qの半径方向に沿う面とされる。この構成によると、厚みが異なる各種の連続端子9のそれぞれについて、確実に、その送出方向への移動を制動せずに戻り方向への移動を制動することができる。
【0098】
また、上記の実施の形態によると、解除レバー74を操作して、片側ブレーキ部7の本体部72を、押圧刃723の先端を連続端子9から離間させる方向に揺動させることができる。したがって、必要に応じて、片側ブレーキ部7の制動を簡単に解除することができる。
【0099】
また、上記の実施の形態によると、各押圧刃723の頂部7230が、送出方向と直交する方向に延在するように配置されるところ、当該頂部7230の延在方向に沿う両端部のそれぞれが、角丸形状とされる。この構成によると、連続端子9に押しあてられた押圧刃723の頂部7230の角で連続端子9が削られてしまう、といった事態が生じにくく、削り屑等のパーティクルの発生が抑制される。
【0100】
また、上記の実施の形態によると、送り爪51が送り孔93に引っ掛けられた状態において、爪部512が、送り孔93の送出方向に沿う幅の全体を塞いだ状態とされる。この構成によると、上述したとおり、端子91の送り過ぎが生じにくくなる。
【0101】
また、上記の実施の形態によると、圧着部2において端子91がクリンパ23の凹型面231に拘束されてから加締められるまでの間、送り爪51が連続端子9と非接触の状態とされる。この構成によると、上述したとおり、端子91が凹型面231に拘束されてから加締められるまでの間、圧着対象となる端子91の送出方向への移動が完全にフリーの状態となる。したがって、理想圧着位置P0よりも送出方向の上流側(−X側)に送出された端子91が、理想圧着位置P0まで特にスムースに移動できる。
【0102】
<5.変形例>
上記の実施の形態に係る片側ブレーキ部7は、本体部72に複数の押圧刃723,723,・・,723が形成される構成であったが、本体部72には必ずしも複数の押圧刃723,723,・・,723を設けなくともよく、例えば、
図15に示されるように、本体部72aに、1個の押圧刃723のみを設ける構成としてもよい。ただし、上述したとおり、本体部72に複数の押圧刃723,723,・・,723を設けておけば、連鎖帯92の厚みが異なる各種の連続端子9に対応することができるという利点が得られる。
【0103】
また、上記の実施の形態において、圧着部2、経路規定部4、送出部5、および、連動機構6の構成は、上記に説明したものに限られるものではない。例えば圧着部は、クリンパ23とアンビル24とが相対的に接近移動する構成であればよく、例えば、クリンパ23とアンビル24との両方が動く構成であってもよいし、クリンパ23がアンビル24に対して接近離間移動する構成であってもよい。また、送出部は、例えば、別途のエアシリンダ等のアクチュエータで送り込む機構であってもよい。
【0104】
また、片側ブレーキ部7は、連続端子9の送出方向の移動を妨げることなく、連続端子9の戻り方向の移動だけを妨げることができるものであればよく、必ずしも上述した構成である必要はない。例えば、一対のローラ部材で連続端子9の連鎖帯92を上下から挟み込むように設け、連鎖帯92の上方に配置されたローラ部材を−Y方向から見て反時計回り方向にのみ回動可能とし、連鎖帯92の下方に配置されたローラ部材を−Y方向から見て時計回り方向にのみ回動可能とする。この構成によっても、連続端子9の送出方向の移動を妨げることなく、連続端子9の戻り方向の移動だけを妨げる片側ブレーキ部を実現することができる。