特許第5786735号(P5786735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786735
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】永久磁石製造方法及び界磁子製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   H02K15/03 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-16226(P2012-16226)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-158127(P2013-158127A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】青田 桂治
(72)【発明者】
【氏名】浅野 能成
(72)【発明者】
【氏名】芳之内 優
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−254092(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/079516(WO,A1)
【文献】 実開昭58−127864(JP,U)
【文献】 国際公開第2010/150362(WO,A1)
【文献】 特開昭58−222767(JP,A)
【文献】 特開2002−141239(JP,A)
【文献】 特開2010−183684(JP,A)
【文献】 特開2010−183685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H01F 7/02
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1方向(Z’)と、前記第1方向に垂直な第2方向(H’,Θ’)とに延在し、前記第1方向及び前記第2方向のいずれにも垂直な第3方向(R’)に平行に着磁された永久磁石(300)を、前記第2方向における中央(H0’)において前記第1方向に沿って分割して、第1の磁石(301)及び第2の磁石(302)を得る工程:但し、
前記永久磁石は、
前記第2方向についての一方側に第1端部(301a)を、
前記第2方向についての他方側に第2端部(302a)を、
前記第2方向についての前記中央よりも前記第1端部及び前記第2端部において大きな保磁力を、
それぞれ有し、
前記第1の磁石は前記第1端部を有し、
前記第2の磁石は前記第2端部を有する;
(b)前記第1の磁石及び前記第2の磁石を再配置して合成された永久磁石(30A)を得る工程:但し前記第1端部と前記第2端部とが隣接する;
を備えた永久磁石製造方法。
【請求項2】
前記永久磁石(300)は、前記第1方向についての中央(Z0’)よりも前記第1方向についての両端の方が高い保磁力を有する、請求項1記載の永久磁石製造方法。
【請求項3】
(a)第1方向(Z’)と、前記第1方向に垂直な第2方向(H’,Θ’)とに延在し、前記第1方向及び前記第2方向のいずれにも垂直な第3方向(R’)に平行に着磁された永久磁石を、前記第2方向についての中央(H0’)において前記第1方向に沿って分割し、前記第1方向についての中央(Z0’)において前記第2方向に沿って分割して、第1乃至第4の磁石(303〜306)を得る工程:但し、
前記永久磁石は、
前記第2方向についての一方側に第1端部(303a,305a)を、
前記第2方向についての他方側に第2端部(304a,306a)を、
前記第1方向についての一方側に第3端部(303b,304b)を、
前記第1方向についての他方側に第4端部(305b,306b)を、
前記第2方向についての中央よりも前記第1端部及び前記第2端部において大きな保磁力を、
それぞれ有し、
前記第1の磁石(303)は前記第1端部の一部(303a)と前記第3端部の一部(303b)とを有し、
前記第2の磁石(304)は前記第2端部の一部(304a)と前記第3端部の他部(304b)とを有し、
前記第3の磁石(305)は前記第1端部の他部(305a)と前記第4端部の一部(305b)とを有し、
前記第4の磁石(306)は前記第2端部の他部(306a)と前記第4端部の他部(306b)とを有する;
(b)前記第1の磁石、前記第2の磁石、前記第3の磁石、前記第4の磁石を再配置して合成された永久磁石(30B)を得る工程:但し、
前記第1端部の前記一部(303a)と前記第2端部の前記一部(304a)とが隣接し、
前記第1端部の前記他部(305a)と前記第2端部の前記他部(306a)とが隣接し、
前記第3端部の前記一部(303b)と前記第4端部の前記一部(305b)とが隣接し、
前記第3端部の前記他部(304b)と前記第4端部の前記他部(306b)とが隣接する;
を備えた永久磁石製造方法。
【請求項4】
前記永久磁石(300)は、前記第1方向についての前記中央(Z0’)よりも前記第1方向についての両端の方が高い保磁力を有する、請求項3記載の永久磁石製造方法。
【請求項5】
前記永久磁石(300)は、その表面から重希土類金属が浸透された焼結磁石である、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の永久磁石製造方法。
【請求項6】
電機子(1)と共に電動機(M)を構成する界磁子(2)を製造する方法であって、
前記界磁子は
前記電動機の回転軸(Z)を中心とする径方向(R)において前記電機子(1)と対向し、
前記回転軸を中心とする周方向(Θ)において環状に配置される界磁磁石と、
前記界磁磁石を挿入する挿入孔(22)を有するコア(21)と
を有し、
当該方法は、
(c)請求項1乃至5のいずれか一つに記載の永久磁石製造方法によって得られる前記合成された永久磁石(30A,30B)を前記界磁磁石として、前記挿入孔へ挿入する工程
を備え、
前記工程(c)において、
前記回転軸と前記第1方向(Z’)とを平行に、かつ、前記合成された永久磁石の前記周方向(Θ)についての中央(H0)での前記径方向と前記第3方向(R’)とを平行に配置する、界磁子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は磁気特性が均一でない永久磁石の製造方法に関し、特に界磁子に設けられる永久磁石を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は電動機Mの構成を例示する斜視図である。当該電動機は電機子1、界磁子2を備えている。換言すれば、界磁子2は電機子1と共に電動機Mを構成する。界磁子2には例えばシャフト4が連結される。
【0003】
界磁子2は、電動機Mの回転軸Zを中心とする径方向Rにおいて、空隙8を介して電機子1と対向する。つまり電動機Mは、いわゆるアキシャルギャップ型と呼ばれる構成を採用している。
【0004】
界磁子2は挿入孔22を有するコア21を有している。挿入孔22には界磁磁石たる永久磁石が挿入される。永久磁石は回転軸Zを中心とする周方向Θにおいて環状に配置される。但し図10では挿入孔22のうち、回転軸Zを介して相互に対向する位置に挿入された一対の永久磁石31,32のみが描かれている。
【0005】
界磁子2に設けられる永久磁石の磁極面は、通常、その周方向Θについての中心位置における径方向Rを法線として配置される。
【0006】
電機子1は、電機子巻線(図示省略)が巻回されるティース11の複数と、ヨーク12とを備えている。ヨーク12は、歯部11の複数を、界磁子2とは反対側で磁気的に連結する。
【0007】
このように永久磁石が界磁の発生源である界磁子を採用する回転電機、特に界磁子を回転子として採用する電動機では、永久磁石の減磁について問題視される。
【0008】
例えば特許文献1では、回転子が回転することによって永久磁石の磁束密度が変動し、それに伴う渦電流による発熱が問題視されている。当該発熱は、永久磁石を高温にし、減磁しやすい状態にする。残留磁束が大きいことで好まれているNd系焼結磁は、その電気抵抗が100〜200μΩ・cmであり、渦電流による発熱は大きな問題となっていた。
【0009】
そして特許文献1では固定子に近い面において渦電流の電流密度が高いことが示されており、磁石表面の保磁力を高める技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−254092号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】後藤、合木、樋口、「高度な解析のためのNd-Fe-B焼結磁石の物性研究」、電気学会静止器研究会資料 SA−10−106,第77−80頁(2010.09.29)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、界磁の発生源である永久磁石が減磁する原因は、回転子の回転、永久磁石の磁束密度の変動、当該変動による渦電流、渦電流による発熱、という連鎖以外にも存在する。それは電機子から界磁子へと供給される磁界である。この点について特許文献1では巻線からの反磁界により減磁しやすいことが指摘されてはいるものの、その減磁されやすい部位についての考察や、対抗策については言及されていない。
【0013】
そこで発明者は、電動機駆動時に電機子から界磁子へと発生する逆磁界中の、永久磁石内部の動作点の分布を検討して下記知見を得た。
【0014】
図11及び図12はそれぞれ図10の永久磁石31,32における減磁作用の分布を示す斜視図である。電動機駆動時に逆磁界の影響が強い領域51と、弱い領域52とを、永久磁石31,32のそれぞれにおいて描いている。図11では回転軸Zよりも遠い側(つまり電機子に近い側)が、図12では回転軸Zに近い側(つまり電機子から遠い側)が、それぞれ示されている。
【0015】
永久磁石31,32はそれぞれの位置における径方向Rに対して垂直に延在している。そして径方向Rにも回転軸Zにも垂直な、幅方向Hの中央H0に関して、領域51及び領域52は線対称に拡がっている。より具体的には、領域51は中央H0近傍に、領域52は幅方向Hの端近傍に、それぞれ分布する。
【0016】
よって永久磁石31,32としては、減磁作用に対抗すべく、領域51が分布する位置、即ち中央H0近傍で、保磁力が高く分布する特性を持つことが望ましい。
【0017】
しかしながら、通常の製造方法で得られる永久磁石では、その中央近傍で保磁力が高い特性を有しない。逆に、特許文献1で示されるように、中央近傍で保磁力が低い(つまり端において保磁力が高い)特性を有する永久磁石であれば製造することはできる。
【0018】
なるほど、特許文献1では、端において保磁力が高い永久磁石を複数個設ける技術が開示されている。しかしながら、特許文献1は、上述のように渦電流による発熱という観点でかかる永久磁石を複数個設けているに過ぎず、従って中央近傍で保磁力を高めるための工夫についてまでは触れられていない。
【0019】
そこで本発明は、その中央において保磁力が高い永久磁石を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明にかかる永久磁石製造方法の第1の態様は、(a)第1方向(Z’)と、前記第1方向に垂直な第2方向(H’,Θ’)とに延在し、前記第1方向及び前記第2方向のいずれにも垂直な第3方向(R’)に平行に着磁された永久磁石(300)を、前記第2方向における中央(H0’)において前記第1方向に沿って分割して、第1の磁石(301)及び第2の磁石(302)を得る工程を備える。
【0021】
但し前記永久磁石は、前記第2方向についての一方側に第1端部(301a)を、前記第2方向についての他方側に第2端部(302a)を、前記第2方向についての前記中央よりも前記第1端部及び前記第2端部において大きな保磁力を、それぞれ有する。
【0022】
また前記第1の磁石は前記第1端部を有し、前記第2の磁石は前記第2端部を有する。
【0023】
そして当該第1の態様は、(b)前記第1の磁石及び前記第2の磁石を再配置して合成された永久磁石(30A)を得る工程を更に備える。
【0024】
但し前記第1端部と前記第2端部とが隣接する。
【0025】
この発明にかかる永久磁石製造方法の第2の態様は、その第1の態様であって、前記永久磁石(300)は、前記第1方向についての中央(Z0’)よりも前記第1方向についての両端の方が高い保磁力を有する。
【0026】
この発明にかかる永久磁石製造方法の第3の態様は、(a)第1方向(Z’)と、前記第1方向に垂直な第2方向(H’,Θ’)とに延在し、前記第1方向及び前記第2方向のいずれにも垂直な第3方向(R’)に平行に着磁された永久磁石を、前記第2方向についての中央(H0’)において前記第1方向に沿って分割し、前記第1方向についての中央(Z0’)において前記第2方向に沿って分割して、第1乃至第4の磁石(303〜306)を得る工程を備える。
【0027】
但し前記永久磁石は、前記第2方向についての一方側に第1端部(303a,305a)を、前記第2方向についての他方側に第2端部(304a,306a)を、前記第1方向についての一方側に第3端部(303b,304b)を、前記第1方向についての他方側に第4端部(305b,306b)を、前記第2方向についての中央(H0)よりも前記第1端部及び前記第2端部において大きな保磁力を、それぞれ有する。
【0028】
また前記第1の磁石(303)は前記第1端部の一部(303a)と前記第3端部の一部(303b)とを有し、前記第2の磁石(304)は前記第2端部の一部(304a)と前記第3端部の他部(304b)とを有し、前記第3の磁石(305)は前記第1端部の他部(305a)と前記第4端部の一部(305b)とを有し、前記第4の磁石(306)は前記第2端部の他部(306a)と前記第4端部の他部(306b)とを有する。そして当該第2の態様は、(b)前記第1の磁石、前記第2の磁石、前記第3の磁石、前記第4の磁石を再配置して合成された永久磁石(30B)を得る工程を更に備える。
【0029】
但し、前記第1端部の前記一部(303a)と前記第2端部の前記一部(304a)とが隣接し、前記第1端部の前記他部(305a)と前記第2端部の前記他部(306a)とが隣接し、前記第3端部の前記一部(303b)と前記第4端部の前記一部(305b)とが隣接し、前記第3端部の前記他部(304b)と前記第4端部の前記他部(306b)とが隣接する。
【0030】
この発明にかかる永久磁石製造方法の第4の態様は、その第3の態様であって、前記永久磁石(300)は、前記第1方向についての前記中央(Z0’)よりも前記第1方向についての両端の方が高い保磁力を有する。
【0031】
この発明にかかる永久磁石製造方法の第5の態様は、その第1乃至第4の態様のいずれかであって、前記永久磁石(300)は、その表面から重希土類金属が浸透された焼結磁石である。
【0032】
この発明にかかる永久磁石の製造方法は、電機子(1)と共に電動機(M)を構成する界磁子(2)を製造する方法である。前記界磁子は前記電動機の回転軸(Z)を中心とする径方向(R)において前記電機子(1)と対向し、前記回転軸を中心とする周方向(Θ)において環状に配置される界磁磁石と、前記界磁磁石を挿入する挿入孔(22)を有するコア(21)とを有する。当該製造方法は、(c)この発明にかかる永久磁石製造方法の第1乃至第5の態様のいずれかの永久磁石製造方法によって得られる前記合成された永久磁石(30A,30B)を前記界磁磁石として、前記挿入孔へ挿入する工程を備える。
【0033】
但し前記工程(c)において、前記回転軸と前記第1方向(Z’)とを平行に、かつ、前記合成された永久磁石の前記周方向(Θ)についての中央(H0)での前記径方向と前記第3方向(R’)とを平行に配置する。
【発明の効果】
【0034】
この発明にかかる永久磁石製造方法の第1の態様によれば、第2方向の中央において保磁力が高い永久磁石を得ることができる。
【0035】
この発明にかかる永久磁石製造方法の第2の態様によれば、第1方向の端部において、第2方向の位置によらずに保磁力が高い永久磁石を得ることができる。
【0036】
この発明にかかる永久磁石製造方法の第3の態様によれば、第2方向の中央において保磁力が高い永久磁石を得ることができる。
【0037】
この発明にかかる永久磁石製造方法の第4の態様によれば、第1方向の中央において、第2方向の位置によらずに保磁力が高い永久磁石を得ることができる。
【0038】
この発明にかかる永久磁石製造方法の第5の態様によれば、永久磁石が有する保磁力の第2方向における分布を実現する。
【0039】
この発明にかかる界磁子製造方法によれば、減磁耐性の強い電動機に資する界磁子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】界磁子を回転軸に沿って見た平面図である。
図2】永久磁石を回転軸に沿って見た平面図である。
図3】永久磁石を回転軸に沿って見た平面図である。
図4】第1の実施の形態にかかる永久磁石の製造方法に用いられる永久磁石を示す図である。
図5】永久磁石を製造する方法を第3方向から見て示す図である。
図6】永久磁石を製造する方法を第3方向から見て示す図である。
図7】第2の実施の形態にかかる永久磁石の製造方法に用いられる永久磁石を示す図である。
図8】永久磁石を製造する方法を第3方向から見て示す図である。
図9】永久磁石を製造する方法を第3方向から見て示す図である。
図10】電動機の構成を例示する斜視図である。
図11】永久磁石における減磁作用の分布を示す斜視図である。
図12】永久磁石における減磁作用の分布を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本実施の形態でも図10は参照される。図1図10に示された界磁子2を回転軸Zに沿って見た平面図である。ここでは四つの挿入孔22がコア21に設けられており、それぞれに永久磁石30が界磁磁石として設けられている。永久磁石30はそれぞれの位置において径方向R、周方向Θが把握されるので、図1において径方向R、周方向Θは4つ示されている。
【0042】
図2は永久磁石30の形状が平板である場合を示し、回転軸Zに沿って見た平面図である。当該平板の周方向Θについての中央H0において、回転軸Z及び径方向Rに垂直な方向は幅方向Hに相当する。よって当該中央H0は幅方向Hの中央でもある。そして着磁方向は幅方向H及び回転軸Zのいずれにも垂直な径方向Rに平行である。
【0043】
図3は永久磁石30の形状が回転軸Zに沿って見て円弧状である場合を示し、回転軸Zに沿って見た平面図である。ここでは円弧が、永久磁石30が配置される位置における周方向Θに沿って延在する場合が例示されている。当該円弧の周方向Θについての中央H0において、回転軸Z及び径方向Rに垂直な方向は周方向Θに相当する。そして着磁方向は、中央H0における径方向Rではなく、周方向Θ及び回転軸Zのいずれにも垂直な方向(これは着磁された位置における径方向)に平行となる。
【0044】
これらの永久磁石30の着磁方法については周知技術であるので、ここでは触れない。
【0045】
第1の実施の形態.
図4は、本実施の形態にかかる永久磁石の製造方法に用いられる永久磁石300を示す図である。永久磁石300は第1方向Z’及び第1方向Z’と垂直な第2方向H’(あるいは第2方向Θ’)とに延在し、第1方向Z’及び第2方向H’,Θ’のいずれにも垂直な第3方向R’に沿って見た図である。当該永久磁石300が平板である場合には、第2方向H’は直線方向であり、当該永久磁石300が平板である場合には第2方向Θ’は当該円弧に沿った円弧状の方向である。いずれの場合も、着磁方向は、第1方向及び第2方向に垂直な方向に平行である。
【0046】
永久磁石300の第1方向Z’から見た形状は、平板状であっても円弧状であっても、当該平板や当該円弧は第3方向R’と直交する。
【0047】
永久磁石300の保磁力は端部が中央より高い。具体的には、永久磁石300の保磁力は第2方向H’,Θ’についての一方側に端部301aを、他方側に端部302aを、それぞれ有している。そして第2方向H’,Θ’における中央H0’よりも端部及301a,302aにおいて大きな保磁力を有する。領域61の保磁力は領域62の保磁力よりも高い。
【0048】
このような永久磁石300は、周知の方法によって製造されるので、その詳細は省略する。例えば特許文献1にはその概略が示されており、永久磁石300として、その表面から重希土類金属が浸透された焼結磁石が採用される。
【0049】
図5及び図6は、永久磁石300から永久磁石30Aを製造する方法を第3方向から見て示す図である。図4に示される中央H0’において、永久磁石300を第1方向Z’に沿って分割して、図5に示されるように一対の磁石301,302を得る。但し磁石301は端部301aを、磁石302は端部302aを、それぞれ有する。
【0050】
そして図6に示されるように、磁石301,302を再配置して、合成された永久磁石30Aを得る。この永久磁石30Aは上述の永久磁石30として採用される。具体的には、端部301a,302aが隣接するように再配置される。新たな中央H0’は端部301a,302aが隣接する位置となる。
【0051】
永久磁石300が第1方向Z’から見た形状が平板状である場合はもちろん永久磁石30Aを平板状にすることができる。また永久磁石300が第1方向Z’から見た形状が円弧状である場合にも永久磁石30Aを円弧状にすることができる。
【0052】
これにより、新たな永久磁石30Aの中央H0’近傍では領域61が配置され、第2方向R’,Θ’の中央H0’において保磁力が高い永久磁石を得ることができる。
【0053】
永久磁石30Aを界磁子2の挿入孔22に挿入するに際しては、回転軸Zと第1方向とを平行に、かつ、前記合成された永久磁石の第2方向H’,Θ’における中央H0’での第3方向R’と、径方向Rとを平行に配置する。これにより中央H0’を中央H0に合わせることができる。
【0054】
上述のように、電動機駆動時に逆磁界の影響が強い領域51は中央H0近傍に分布するので、永久磁石30Aは界磁子2において減磁に強い永久磁石30として機能する。換言すれば、減磁耐性の強い電動機に資する界磁子2が得られる。
【0055】
図4に示されるように、永久磁石300は、第1方向Z’における中央には領域62が、両端には領域61が、それぞれ分布する。つまり永久磁石300は、その中央よりも両端の方が高い保磁力を有する。よって図6に示されるように、永久磁石30Aは第1方向Z’の両端近傍で領域61を有することになる。つまり、第1方向Z’の端部において、第2方向R’,Θ’の位置によらずに保磁力が高い永久磁石30Aを得ることができる。
【0056】
第2の実施の形態.
図7は、本実施の形態にかかる永久磁石の製造方法に用いられる永久磁石300を示す図である。図7には、図4に対し、第1方向Z’についての中央Z0’も追加して示している。その他の構成は第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0057】
つまり、永久磁石300は第1方向Z’について中央Z0’よりも両端において、第2方向H’,Θ’について中央H0’よりも両端において、いずれも保磁力が高い。
【0058】
図8及び図9は、永久磁石300から永久磁石30Bを製造する方法を第3方向から見て示す図である。図7に示される中央H0’において永久磁石300を第1方向Z’に沿って分割し、中央Z0’において永久磁石300を第2方向H’に沿って分割し、四個の磁石303,304,305を得る。但し、磁石303は端部303a,303bを有し、磁石304は端部304a,304bを有し、磁石305は端部305a,305bを有し、磁石306は端部306a,306bを有する。
【0059】
ここで、端部303b,304bは、永久磁石300の第1方向Z’についての一方側の端部の一部であり、端部305b,306bは、永久磁石300の第1方向Z’についての他方側の端部の一部であり、端部303a,305aは、永久磁石300の第2方向H’,Θ’についての一方側の端部の一部であり、端部304a,306aは、永久磁石300の第2方向H’,Θ’についての他方側の端部の一部である。
【0060】
よってこれらの端部303a,303b,304a,304b,305a,305b,306a、306bにおいて保磁力が高い領域61が分布し、中央Z0’近傍かつ中央H0’近傍に保磁力が低い領域62が分布する。
【0061】
そして図9に示されるように、磁石303,304.305.306を再配置して、合成された永久磁石30Bを得る。この永久磁石30Bは上述の永久磁石30として採用される。
【0062】
具体的には、端部303a,304aが隣接し、端部305a,306aが隣接し、端部303b,305bが隣接し、端部304b,306bが隣接するように再配置される。新たな中央H0’は端部303a,304aが隣接し、端部305a,306aが隣接する位置となる。また新たな中央Z0’は端部303b,305bが隣接し、端部304b,306bが隣接する位置となる。
【0063】
永久磁石300が第1方向Z’から見た形状が平板状である場合はもちろん永久磁石30Bを平板状にすることができる。また永久磁石300が第1方向Z’から見た形状が円弧状である場合にも永久磁石30Bを円弧状にすることができる。
【0064】
これにより、新たな永久磁石30Bの新たな中央H0’近傍や新たな中央Z0’近傍では領域61が配置され、第2方向R’,Θ’の中央H0’や第1方向Z’の中央Z0’において保磁力が高い永久磁石を得ることができる。
【0065】
永久磁石30Bを界磁子2の挿入孔22に挿入するに際しては、回転軸Zと第1方向とを平行に、かつ、前記合成された永久磁石の第2方向H’,Θ’における中央H0’での第3方向R’と、径方向Rとを平行に配置する。これにより中央H0’を中央H0に合わせることができる。
【0066】
上述のように、電動機駆動時に逆磁界の影響が強い領域51は中央H0近傍に分布するので、永久磁石30Bは界磁子2において減磁に強い永久磁石30として機能する。換言すれば、減磁耐性の強い電動機に資する界磁子2が得られる。
【0067】
また、永久磁石30Bは第1方向Z’の中央近傍で領域61を有することになる。つまり、第1方向Z’の中央において、第2方向R’,Θ’の位置によらずに保磁力が高い永久磁石30Bを得ることができる。
【0068】
変形.
上述のように、永久磁石30A,30Bを得るための再配置に際して、端部を隣接させるために接着剤を採用しても良い。あるいは挿入孔22の寸法や形状を工夫して、再配置がくずれないようにしてもよい。
【0069】
あるいは当該再配置を、挿入孔22への磁石301〜306への挿入によって実現してもよい。つまり当該再配置は、挿入孔22へ挿入することによって、磁石301〜306が上記実施の形態で示されるように隣接するように位置決めされて実現されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 電機子
2 界磁子
21 コア
22 挿入孔
30A,30B (合成された)永久磁石
300〜306 永久磁石
301a.302a,303a,303b,304a,304b,305a,305b,306a、306b 端部
R 径方向
R’ 第3方向
H’,Θ’ 第2方向
H0’ (第2方向の)中央
M 電動機
Z 回転軸
Z’ 第1方向
Z0’ (第1方向の)中央
Θ 周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12