特許第5786784号(P5786784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーウェーブの特許一覧

<>
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000002
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000003
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000004
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000005
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000006
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000007
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000008
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000009
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000010
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000011
  • 特許5786784-情報コード読取装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786784
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】情報コード読取装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   G06K7/10 408
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-74509(P2012-74509)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-206129(P2013-206129A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(72)【発明者】
【氏名】石橋 利治
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−165802(JP,A)
【文献】 特開2005−196633(JP,A)
【文献】 特開2010−182057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00−7/14
G02B 3/00−3/14
G02B 7/02−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードからの反射光を受光する受光手段と、
前記情報コードからの前記反射光を集光しつつ前記情報コードの像を前記受光手段にて結像可能に構成され、前記反射光を集光する際の焦点位置を変更可能とされた結像手段と、
前記情報コードの位置又は前記受光手段での受光状態を検出する検出手段と、
前記結像手段での焦点位置の設定及び変更を制御するように構成され、且つ前記検出手段での検出結果に基づいて前記結像手段に対してオートフォーカス制御を行い得る制御手段と、
前記情報コードの読み取りを行う読取モードと、読取条件の登録を行う登録モードとに切り替え可能なモード切替手段と、
少なくとも前記モード切替手段によって前記読取モードに切り替えられた場合に、前記受光手段での前記反射光の受光結果に基づいて前記情報コードの解読を行う解読手段と、
前記モード切替手段によって前記登録モードに切り替えられた場合に、前記結像手段での優先焦点位置を登録する処理を行う登録手段と、
を備え、
前記モード切替手段によって前記読取モードに切り替えられて読み取りを開始する際に、前記制御手段は、前記結像手段の焦点位置が前記登録手段に登録されている前記優先焦点位置となるように当該結像手段を制御し、前記受光手段は、前記結像手段が前記優先焦点位置に設定されているときの結像状態で前記情報コードからの前記反射光を受光し、前記解読手段は、前記優先焦点位置に設定されているときの前記受光手段での受光結果に基づいて前記情報コードの解読を試み、解読成功の場合には当該情報コードの解読結果を出力し、解読失敗の場合には所定の失敗対応処理を行い、
前記登録手段は、前記受光手段、前記結像手段、前記制御手段、及び前記解読手段を有し、
前記モード切替手段によって前記登録モードに設定された場合に、前記制御手段は、前記結像手段に対し焦点位置を複数位置に切り替える切替制御処理を行い、前記受光手段は、前記結像手段が各焦点位置に切り替えられたときの各結像状態で前記情報コードからの前記反射光を受光し、前記解読手段は、前記各焦点位置のときに前記受光手段で得られる各受光結果に基づいて各々の解読処理を行うと共に、切り替えられた前記各焦点位置での得られた複数の解読結果の内、前記解読処理のときの誤り訂正数が最も少ない解読結果を選び、その最も少ない解読結果が得られた場合の焦点位置を前記優先焦点位置として登録することを特徴とする情報コード読取装置。
【請求項2】
前記解読手段は、前記モード切替手段によって前記読取モードに切り替えられて読み取りを開始する際に、前記結像手段が前記優先焦点位置に設定されているときの前記受光手段での受光結果に基づいて前記情報コードの解読を試み、解読成功の場合には当該情報コードの解読結果を出力し、解読失敗の場合には、前記制御手段によってオートフォーカス制御がなされたときの前記受光手段での受光結果に基づいて、前記情報コードの解読を試みることを特徴とする請求項1に記載の情報コード読取装置。
【請求項3】
前記登録手段は、前記モード切替手段によって前記登録モードに設定された場合に、前記検出手段での検出結果に基づいて基準焦点位置を設定する基準焦点位置設定手段を備え、前記制御手段は、前記結像手段での焦点位置を前記基準焦点位置から前方側及び後方側にずらして複数位置に切り替えるように前記切替制御処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報コード読取装置。
【請求項4】
前記結像手段の焦点位置を前記優先焦点位置に設定する優先設定制御を解除するための解除方法を表示可能な表示部と、
前記解除方法に従った操作が可能な操作部と、
を備え、
前記制御手段は、前記解除方法に従って前記操作部が操作された場合に前記優先設定制御を解除し、前記結像手段に対しオートフォーカス制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の情報コード読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報コード読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報コードを読み取る情報コード読取装置は、レンズ等の結像手段によって受光センサ上に情報コードの像を結像しておりこの結像状態のときに受光センサにて得られた撮像画像に基づいて情報コードを解読している。この種の情報コード読取装置では、焦点位置が一定とされた結像手段が用いられることが一般的であり、この構成のものでは、所定の適正距離付近に情報コードが配置されたときにぼけ等が少ない状態(即ち、ピントが合った状態)で撮像されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−182057公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように焦点位置が一定に定められた一般的構造のものは、情報コードが様々な距離で撮像されることが想定される用途に適用できないという問題がある。例えば、結像手段の焦点位置が近距離用に設定された構成では、遠距離に配された情報コードを撮像した場合に、不適切な焦点位置に起因する画像のぼけが大きくなり、情報コードを構成する情報単位要素(バーコードを構成するバーや二次元コードを構成するセル等)を正確に判別できなくなってしまうため、解読の失敗を招きやすくなる。
【0005】
上記のような問題を抱える一方、この種の読取装置の分野では、高機能化、汎用性の要求が高くなってきており、様々な距離の情報コードを良好に読み取ることが求められている。例えば、携帯型のものでは、工場や店舗などにおいて近距離に配された製品や商品の情報コードを読み取ることを主目的としつつも、突発的に遠距離の情報コード(例えば、遠距離に位置するフォークリフトやトラックなどに積まれた段ボールに付された情報コードなど)についても良好に読み取ることが望まれるようなケースが多々ある。また、据置型のものでも同様の要求が大きく、例えば、工場の多品種ラインでは、特定種類の製品の情報コードを読み取ることを想定しつつ、当該特定製品とは異なる位置を流れる製品或いは当該特定製品とは大きさ又は高さの異なる製品に付された情報コードを読み取ることも求められるようなケースがある。しかしながら、焦点位置が固定化された上述の一般的読取装置は、このようなケースに適用することができなかった。
【0006】
一方、このような問題を解消し得る技術として、特許文献1のようなものが提供されている。特許文献1の技術は、結像手段の焦点位置を変更し得るオートフォーカス機能を搭載しており、QRコード(登録商標)のファインダパターンの輝度値からぼけ量が算出すると共に、このぼけ量を減少させるように焦点位置を変更している。この技術を用いると、情報コードがある程度近い位置或いは遠い位置に配置されても情報コードにピントを合わせやすくなるため、上記問題を解消しやすくなる。しかしながら、このようなオートフォーカス機能を搭載した読取装置は、読み取りが行われる度に結像手段を動作させてピントを合わせなければならないため、結像手段において電気的或いは機械的な負荷が非常に大きく、耐久性の面で問題がある。特に、情報コード読取装置は、一般的な家庭用カメラなどと異なり、工場のラインや店舗などにおいて情報コードを短時間で撮像し、読み取ることを求められる場合が多く、撮像頻度が格段に高くなることが多いという特有の事情がある。このため、結像手段の動作頻度も著しく高くなってしまうため、耐久性の面で極めて不利になってしまう。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、情報コードの像を結像手段により結像して読み取りを行う情報コード読取装置において、相対的に近い距離の情報コードであっても遠い距離の情報コードであっても良好に読み取ることが可能であり、且つ、結像手段に対する負荷を確実に抑えることが可能な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、情報コードからの反射光を受光する受光手段と、
前記情報コードからの前記反射光を集光しつつ前記情報コードの像を前記受光手段にて結像可能に構成され、前記反射光を集光する際の焦点位置を変更可能とされた結像手段と、
前記情報コードの位置又は前記受光手段での受光状態を検出する検出手段と、
前記結像手段での焦点位置の設定及び変更を制御するように構成され、且つ前記検出手段での検出結果に基づいて前記結像手段に対してオートフォーカス制御を行い得る制御手段と、
前記情報コードの読み取りを行う読取モードと、読取条件の登録を行う登録モードとに切り替え可能なモード切替手段と、
少なくとも前記モード切替手段によって前記読取モードに切り替えられた場合に、前記受光手段での前記反射光の受光結果に基づいて前記情報コードの解読を行う解読手段と、
前記モード切替手段によって前記登録モードに切り替えられた場合に、前記結像手段での優先焦点位置を登録する処理を行う登録手段と、
を備え、
前記モード切替手段によって前記読取モードに切り替えられて読み取りを開始する際に、前記制御手段は、前記結像手段の焦点位置が前記登録手段に登録されている前記優先焦点位置となるように当該結像手段を制御し、前記受光手段は、前記結像手段が前記優先焦点位置に設定されているときの結像状態で前記情報コードからの前記反射光を受光し、前記解読手段は、前記優先焦点位置に設定されているときの前記受光手段での受光結果に基づいて前記情報コードの解読を試み、解読成功の場合には当該情報コードの解読結果を出力し、解読失敗の場合には所定の失敗対応処理を行い、
前記登録手段は、前記受光手段、前記結像手段、前記制御手段、及び前記解読手段を有し、
前記モード切替手段によって前記登録モードに設定された場合に、前記制御手段は、前記結像手段に対し焦点位置を複数位置に切り替える切替制御処理を行い、前記受光手段は、前記結像手段が各焦点位置に切り替えられたときの各結像状態で前記情報コードからの前記反射光を受光し、前記解読手段は、前記各焦点位置のときに前記受光手段で得られる各受光結果に基づいて各々の解読処理を行うと共に、切り替えられた前記各焦点位置での得られた複数の解読結果の内、前記解読処理のときの誤り訂正数が最も少ない解読結果を選び、その最も少ない解読結果が得られた場合の焦点位置を前記優先焦点位置として登録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、モード切替手段によって読取モードに切り替えられて読み取りを開始する際に、結像手段の焦点位置が登録手段に登録されている優先焦点位置となるように当該結像手段を制御し、その優先焦点位置で読取動作を行っている。このようにすることで、ユーザが希望する焦点位置(優先焦点位置)での読み取りを優先的に行うことができ、闇雲に最適焦点位置を検出する構成と比較して動作負担を抑えることができる。特に、優先条件で読み取りが成功した場合にはオートフォーカス制御が行われないため、オートフォーカス制御に起因する機械的負担や処理時間の遅延を極力抑えることができる。また、解読失敗の場合には所定の失敗対応処理を行うため、次善の対策が可能となる。
特に、前記登録手段が、前記受光手段、前記結像手段、前記制御手段、及び前記解読手段を有している。そして、前記モード切替手段によって前記登録モードに設定された場合に、前記制御手段は、前記結像手段に対し焦点位置を複数位置に切り替える切替制御処理を行い、前記受光手段は、前記結像手段が各焦点位置に切り替えられたときの各結像状態で前記情報コードからの前記反射光を受光し、前記解読手段は、前記各焦点位置のときに前記受光手段で得られる各受光結果に基づいて各々の解読処理を行うと共に、切り替えられた前記各焦点位置での得られた複数の解読結果の内、前記解読処理のときの誤り訂正数が最も少ない解読結果を選び、その最も少ない解読結果が得られた場合の焦点位置を前記優先焦点位置として登録する。
読取環境や撮像対象の表面状態などによっては、距離だけで最適焦点位置が決まらない場合もあるが、上記方法によれば実際に読み取った上で、解読に適した画像が得られたとき(誤り訂正数が最も小さいとき)の焦点位置を優先焦点位置とすることができる。従って、より解読成功確率の高い焦点位置を優先焦点位置として読み取りを行うことができる。
【0010】
請求項2の発明では、前記解読手段は、前記モード切替手段によって前記読取モードに切り替えられて読み取りを開始する際に、前記結像手段が前記優先焦点位置に設定されているときの前記受光手段での受光結果に基づいて前記情報コードの解読を試み、解読成功の場合には当該情報コードの解読結果を出力し、解読失敗の場合には、前記制御手段によってオートフォーカス制御がなされたときの前記受光手段での受光結果に基づいて、前記情報コードの解読を試みている。
優先焦点位置での解読が失敗した場合、撮像対象の情報コードの位置が想定している位置(優先焦点位置に適した位置)からずれている可能性が高い。従って、優先焦点位置での解読が失敗した場合には、オートフォーカス制御によってピントを合わせた上で解読を行えば、解読成功確率を高めることができる。
【0012】
請求項の発明では、前記登録手段は、前記モード切替手段によって前記登録モードに設定された場合に、前記検出手段での検出結果に基づいて基準焦点位置を設定する基準焦点位置設定手段を備え、前記制御手段は、前記結像手段での焦点位置を前記基準焦点位置から前方側及び後方側にずらして複数位置に切り替えるように前記切替制御処理を行っている。
このように情報コードの位置又は受光手段での受光状態を検出し、基準焦点位置という目処をつけた上で前後にずらして優先焦点位置の検出(即ち、誤り訂正数が最も小さくなる位置の検出)を行うようにすれば、誤り訂正数が最も小さくなる位置を闇雲に探す方法と比較して優先焦点位置の設定処理を大幅に短縮できる。
【0013】
請求項の発明では、前記結像手段の焦点位置を前記優先焦点位置に設定する優先設定制御を解除するための解除方法を表示可能な表示部と、前記解除方法に従った操作が可能な操作部と、を備え、前記制御手段は、前記解除方法に従って前記操作部が操作された場合に前記優先設定制御を解除し、前記結像手段に対しオートフォーカス制御を行っている。
この方法によれば、ユーザが任意に優先設定状態を解除することができ、必要に応じてオートフォーカス制御を優先させることもできる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る情報コード読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
図2図2は、液体レンズに印加される印加電圧値と焦点距離との関係を示す図表である。
図3図3は、図1の情報コード読取装置で行われる登録モードでの登録処理の流れを例示するフローチャートである。
図4図4は、図3の登録処理で行われる優先焦点位置検出処理の流れを例示するフローチャートである。
図5図5(A)は、ぼけていない状態のQRコードを示す図であり、図5(B)は、図5(A)の測定線上におけるファインダパターンの各輝度値を示すグラフである。
図6図6(A)は、ぼけている状態のQRコードを示す図であり、図6(B)は、図6(A)の測定線上におけるファインダパターンの各輝度値を示すグラフである。
図7図7(A)は、液体レンズに1V刻みで印加される印加電圧値とぼけ量との関係を示す図表であり、図7(B)は、液体レンズに0.1V刻みで印加される印加電圧値とぼけ量との関係を示す図表である。
図8図8は、図1の情報コード読取装置で行われる読取モードでの読取処理の流れを例示するフローチャートである。
図9図9(A)は、優先設定制御を解除するための解除画面の表示例を説明する説明図であり、図9(B)は、図9(A)とは異なる表示例を説明する説明図である。
図10図10(A)は、読取対象物までの距離測定方法の一例を説明する説明図であり、図10(B)は、図10(A)の方法での距離測定の際に得られる撮像画像を示す説明図である。
図11図11(A)は、他の実施形態に関し、ぼけている状態のQRコードを示す図であり、図11(B)は、図11(A)の測定線上におけるタイミングパターンおよびクワイエットゾーンの各輝度値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る情報コード読取装置の一実施形態について図を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る情報コード読取装置20の電気的構成を示すブロック図である。図2は、液体レンズ27に印加される印加電圧値と焦点距離との関係を示す図表である。
【0016】
図1に示すように、情報コード読取装置20は、主に、照明光源21、受光センサ23、液体レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、操作部42、液晶表示器46等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、電源スイッチ41、電池49等の電源系と、から構成されている。なお、これらは、図略のプリント配線板に実装あるいは図略のハウジング内に内装されている。
【0017】
光学系の照明光源21は、照明光Lfを発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられる拡散レンズ、集光レンズ等とから構成されている。本実施形態では、受光センサ23を挟んだ両側に照明光源21が設けられており、図略のハウジングの読取口を介して読取対象物Rに向けて照明光Lfを照射可能に構成されている。この読取対象物Rは、例えば、包装容器や包装用紙あるいはラベルといった表示媒体に相当するもので、その表面には二次元コードとして例えばQRコードQが印刷されている。
【0018】
受光センサ23は、情報コードからの反射光を受光する受光手段の一例に相当するものであり、読取対象物RやQRコードQに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を二次元に配列したエリアセンサが、これに相当する。この受光センサ23は、液体レンズ27を介して入射する入射光をこの受光面23aで受光可能に図略のプリント配線板に実装されている。
【0019】
液体レンズ27は、外部から読取口を介して入射する入射光を集光して受光センサ23の受光面23aに像を結像可能な結像光学系として機能する。本実施形態では、照明光源21から照射された照明光LfがQRコードQに反射して読取口に入射する反射光Lrを集光することにより、受光センサ23の受光面23aにQRコードQのコード画像を結像可能にしている。特に、液体レンズ27は、図2に示すように、制御回路40の駆動回路(図略)から印加される印加電圧に応じてその焦点位置が受光センサ23に近くなる方向或いは遠ざかる方向に変更可能(即ち焦点距離が変更可能)に構成されている。
液体レンズ27は、結像手段の一例に相当するものであり、QRコードQなどの情報コードからの反射光を集光しつつ情報コードの像を受光センサ23(受光手段)にて結像可能に構成され、反射光を集光する際の焦点位置を変更可能とされている。
【0020】
次に、マイコン系の構成概要を説明する。マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、操作部42、LED43、ブザー44、液晶表示器46、通信インタフェース48等から構成されている。このマイコン系は、その名の通り、マイコン(情報処理装置)として機能し得る制御回路40およびメモリ35を中心に構成されるもので、上述した光学系によって撮像されたQRコードQの画像信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理し得るものである。また制御回路40は、当該情報コード読取装置20の全体システムに関する制御も行っている。
【0021】
光学系の受光センサ23から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、メモリ35に入力されると、画像データ蓄積領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ23およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0022】
メモリ35は、半導体メモリ装置で、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当する。このメモリ35のうちのRAMには、上述した画像データ蓄積領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域や読取条件テーブルも確保可能に構成されている。またROMには、後述する読取処理、評価処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明光源21、受光センサ23等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。
【0023】
制御回路40は、情報コード読取装置20全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなるもので、メモリ35とともに情報処理装置を構成し得るもので情報処理機能を有する。この制御回路40には、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置(周辺装置)と接続可能に構成されており、本実施形態の場合、電源スイッチ41、操作部42、LED43、ブザー44、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。また、制御回路40は、上述した駆動回路を介して液体レンズ27に接続されている。
【0024】
これにより、例えば、電源スイッチ41や操作部42の監視や管理、またインジケータとして機能するLED43の点灯・消灯、ビープ音やアラーム音を発生可能なブザー44の鳴動のオンオフ、さらには読み取ったQRコードQによるコード内容を画面表示可能な液晶表示器46の画面制御や外部装置とのシリアル通信を可能にする通信インタフェース48の通信制御等を可能にしている。また、上記駆動回路を駆動することで液体レンズ27の焦点距離を調整可能にしている。なお、通信インタフェース48に接続される外部装置には、当該情報コード読取装置20の上位システムに相当するホストコンピュータHST等が含まれる。
【0025】
電源系は、電源スイッチ41、電池49等により構成されており、制御回路40により管理される電源スイッチ41のオンオフによって、上述した各装置や各回路に、電池49から供給される駆動電圧の導通や遮断が制御されている。なお、電池49は、所定の直流電圧を発生可能な2次電池で、例えば、リチウムイオン電池等がこれに相当する。また、電池49によることなく、例えば、通信インタフェース48を介して接続されるホストコンピュータHST等の外部装置から電力供給を受ける構成を採る場合もあり、この場合には当該電池49は不要となる。
【0026】
次に登録モードでの登録処理について説明する。
本実施形態では、操作部42に対して第1の所定操作がなされたときに制御回路40によって図3の処理が行われるようになっている。また、操作部42に対して第2の所定操作がなされたときに図8の処理が行われるようになっている。
【0027】
なお、制御回路40がモード切替手段の一例に相当し、情報コードの読み取りを行う読取モード(図8の処理を行う)モードと、読取条件の登録を行う登録モード(図3の処理を行うモード)とに切り替え可能に構成されている。本実施形態では、図3の登録処理が開始されてから当該登録処理が終了するまでが登録モードであり、図8の読取処理が開始されてから当該読取処理が終了するまでが読取モードとなっている。
【0028】
図3の処理では、まず、優先焦点位置を検出する処理が行われる(S1)。なお、この処理については、図4図6等を用いて説明する。図4は、優先焦点位置検出処理の流れを例示するフローチャートである。また、図5(A)は、ぼけていない状態のQRコードQを示す図であり、図5(B)は、図5(A)の測定線L上におけるファインダパターンFPの各輝度値を示すグラフである。図6(A)は、ぼけている状態のQRコードQを示す図であり、図6(B)は、図6(A)の測定線L上におけるファインダパターンFPの各輝度値を示すグラフである。なお、図5(B)および図6(B)において、縦軸は輝度値を示し、明色では数値が高くなり暗色では数値が低くなる。
【0029】
図3のS1に示す優先焦点位置検出処理が開始されると、まず、図4のステップS101において、時間計測処理(計時処理)が行われる。この計時処理では、制御回路40が有するクロック装置等の計時装置(図略)により、S1の処理開始からの時間が計測されることになる。
【0030】
その後、S103にて画像取得処理が行われる。この画像取得処理は、当該処理実施時において受光センサ23による受光結果に基づいてQRコードQの画像データを生成し、メモリ35に記憶する処理である。なお、QRコードQの画像データを生成し、メモリ35に記憶する流れは上述した通りである。
【0031】
次に、ステップS105において、デコード処理がなされる。この処理では、ステップS103にて取得された画像データに対して上述したデコード処理が実施される。そして、上記デコード処理が正常になされQRコードQのデコードが成功していると判定されると(S107でYes)、S107にてYesに進み、そのデコード成功時点での焦点距離(焦点位置)が記録される(S127)。なお、本実施形態の構成では、印加電圧値と焦点距離とが対応しているため、S127では焦点距離そのものを記録してもよく、印加電圧値を記録して焦点距離を特定できるようにしてもよい。また、S127では、焦点距離(焦点位置)と共に、S105でのデコードの際の誤り訂正数も記録される。なお、本実施形態で記録される誤り訂正数は、誤りが生じていたセルの数としてもよく、誤りが生じていたコード語の数としてもよい。そして、時間tが許容最大処理時間(予め設定された一定時間)ta以上になったか否かが判断され(S129)、許容最大処理時間ta未満の場合には焦点距離を変更し(S131)、再びS103以降の処理を行う。S131での焦点位置の変更方法(焦点距離の変更方法)は、後述するS115、S125と同様の方法で行うことができる。
【0032】
一方、S107において上記デコード処理が失敗したと判定されると、ステップS107にてNoに進み、ステップS109において、特定パターン検出処理がなされる。この処理では、ステップS103にて取得した画像データから、特定パターンとしてQRコードの位置を検出するためのパターンであるファインダパターンFPを検出する処理がなされる。QRコードの位置検出パターンの検出処理は公知であるので詳細は省略するが、概要としては明色セル、暗色セルの並びが特定の比率(1:1:3:1:1)となる部位を検出するように処理が行われる。
【0033】
そして、ステップS111において、ファインダパターンFPが検出されたか否かが判定され、S103にて取得した画像データにぼけ等が生じており、ファインダパターンFPが正常に検出されない場合(S111でNo)、ステップS113において、経過時間tが許容最大処理時間ta以上であるか否かが判定される。
【0034】
ステップS113にて経過時間tが許容最大処理時間ta未満であると判定されると(S113でNo)、ステップS115において、焦点距離変更処理がなされる。この処理では、制御回路40の駆動回路により印加される電圧に応じて、液体レンズ27がその焦点距離を変更するように調整される。具体的には、液体レンズ27には初期電圧として例えば1Vが印加されており、この焦点距離変更処理により、例えば2Vに変更した電圧が液体レンズ27に印加される。すなわち、電圧を2Vに決定することにより、この印加電圧に応じた焦点距離が決定されることとなる。このように変更した印加電圧は、ステップS117における印加電圧記憶処理によりメモリ35に記憶される。そして、ステップS103に戻り、S115にて変更された焦点距離の液体レンズ27を介した反射光Lrが受光センサ23に受光されることにより、この受光結果に基づく画像データが取得され、この画像データに対して上述したステップS105以降の処理がなされる。
【0035】
一方、ステップS111にてファインダパターンFPが正常に検出されたと判断される場合には(S111でYes)、ステップS119において、ぼけ量算出処理がなされる。この処理では、測定線L上にてファインダパターンFPを構成する各輝度値において所定の位置の振幅X(図5の例では、ファインダパターンFPを構成する外枠の暗セル(黒セル)とその暗セル(黒セル)の内側の明セル(白セル)の輝度差が振幅Xに相当)と振幅Y(図5の例では、ファインダパターンFP内部の明セル(白セル)と中心部の暗セル(黒セル)との輝度差が振幅Yに相当)との差からぼけ量F=Y−Xとして算出する。なお、ファインダパターンFPを構成する一の明色セルの輝度値とこの一の明色セルと異なる他の明色セルの輝度値との差からぼけ量を算出してもよいし、ファインダパターンFPを構成する一の暗色セルの輝度値とこの一の暗色セルと異なる他の暗色セルの輝度値との差からぼけ量を算出してもよい。
【0036】
具体的には、図5(A)に示すように、ファインダパターンFPがぼけていない場合には、図5(B)に示すように、振幅Xと振幅Yとの差が小さくなることからぼけ量Fが小さくなる。一方、図6(A)に示すように、ファインダパターンFPがぼけている場合には、図6(B)に示すように、振幅Xと振幅Yとの差が大きくなることからぼけ量Fが大きくなる。なお、現段階では、ステップS107にてNoと判定された後、ステップS111にてYesと判定されているので、図6(A)に示すように、ファインダパターンFPがぼけており、ぼけ量Fは大きくなっている。現段階では、液体レンズ27には2Vの電圧が印加されており、ステップS119によりぼけ量Fが、例えば、10として算出される。
【0037】
次に、ステップS121において、印加電圧およびぼけ量記憶処理がなされ、印加電圧とこの印加電圧に応じたぼけ量Fがメモリ35に記憶される。そして、ステップS123にて経過時間tが許容最大処理時間ta未満であると判定されると(S123でNo)、ステップS125において、焦点距離変更処理がなされる。この処理では、ぼけ量Fが増加するまで液体レンズ27に対して1V刻みで変更した電圧が印加される。そして、ぼけ量Fが増加すると、0.1V刻みで変更した電圧が印加される。すなわち、電圧を所定値に決定することにより、この印加電圧に応じた焦点距離が決定されることとなる。
【0038】
図7(A)は、液体レンズに1V刻みで印加される印加電圧値と焦点距離との関係を示す図表であり、図7(B)は、液体レンズに0.1V刻みで印加される印加電圧値と焦点距離との関係を示す図表である。なお、図7(A)で示すぼけ量はあくまで例示であり、どのような単位系とするかは様々である。
【0039】
具体的には、ステップS125にて2Vから3Vに変更された電圧が液体レンズ27に印加される。これにより焦点距離が変更された液体レンズ27により、ステップS101にて画像データが取得され、再び、ステップS119にてぼけ量Fが例えば6として算出される(図7(A)参照)。
【0040】
そして、ぼけ量Fが減少していることから、ステップS125にて3Vから4Vに変更された電圧が液体レンズ27に印加される。これにより焦点距離が変更された液体レンズ27により、ステップS101にて画像データが取得され、再び、ステップS119にてぼけ量Fが例えば10として算出される。
【0041】
そして、ぼけ量Fが増加していることから、ステップS125にて2Vと3Vとの間にて0.1V刻みで変更された電圧が液体レンズ27に印加される。このように0.1V刻みで電圧が液体レンズ27に印加される場合、図7(B)からわかるように、液体レンズ27に2.7Vの電圧を印加する場合が0.1V刻みでは最もぼけ量Fが小さくなることがわかる。
【0042】
このように、ぼけ量Fを小さくするように液体レンズ27に印加される印加電圧を変更することで、画像データが鮮明になることからステップS105によりQRコードQのデコードが成功していると判定されると、当該焦点距離調整処理を終了する。一方、経過時間tが許容最大処理時間ta以上になると、ステップS113またはS123にてYesと判定されて、焦点距離調整処理を終了する。
本実施形態では、制御回路40が検出手段の一例に相当し、情報コードの位置又は前記受光手段での受光状態を検出するように機能する。
【0043】
図4の例では、計測時間tが許容最大処理時間taに達するまでの間、S107にてYesと判断される毎に、S127にてデコード成功時の焦点距離及び誤り訂正数が記録されることになる。そして、計測時間tが許容最大処理時間taに達した場合、(S113、S123、S129にてYesと判断され、図4の処理を終了する。図4の処理が終わると、図3のS2のように、一定時間(図4の処理において計測時間tが許容最大処理時間taまでの時間)の間に読み取りが成功したか否かが判断され、読み取りが成功している場合、即ち、S127にて焦点距離が記録されている場合にはS2にてYesに進み、S127で記録された焦点距離の中から、誤り訂正数の最も少ないデコードがなされたときの焦点距離を選択し、その焦点距離で特定される焦点位置を優先焦点位置として記録する(S3)。なお、S3で記録される内容は、優先焦点位置を特定し得る値であれば、印加電圧値であってもよく、焦点距離であってもよい。なお、一定時間(計測時間tが許容最大処理時間taまでの時間)の間に読み取りが成功していない場合には、S2にてNoに進み、この場合、読取条件の更新は行わないことになる。
なお、本実施形態では、制御回路40及びメモリ35が登録手段の一例に相当し、モード切替手段によって登録モードに切り替えられた場合に、結像手段での優先焦点位置を登録する処理を行うように機能する。
【0044】
次に、読取モードでの読取処理について説明する。
図8の読取処理は、例えば操作部42に対して所定操作がなされたときに実行されるものであり、まず、図3のS3で登録された登録条件(即ち、優先焦点位置を特定する印加電圧値或いは焦点距離)にて読み取りを行う(S21)。そして、具体的には、例えばS3で記録された印加電圧値を印加して液体レンズ27を動作させ、その状態で情報コードを撮像すると共に当該情報コードのコード画像のデコードを試みる。そして、この登録条件(優先焦点位置)で解読が成功した場合には、S22にてYesに進み、読取処理を終了する。
【0045】
一方、S21での読み取り(優先焦点位置での読み取り)が失敗した場合には、S22にてNoに進み、例えば図4と同様のオートフォーカス制御(例えばぼけ量Fが最も小さくなる印加電圧値を選定して撮像、読み取りを行う制御)によって情報コードの読み取りを行う(S23)。そして、このようなオートフォーカス制御による読み取りが成功した場合にはS24にてYesに進み、読取処理を成功状態で終了する。オートフォーカス制御でも読み取りが成功しなかった場合にはS24にてNoに進み、読取処理自体を一旦終了する(S25)。そして、このような場合、S25の後に、液晶表示器46(表示部)に図9のような解除画面を表示し、所定の解除処理がなされたか否かを判断する。例えば、S25の後に、図9(A)のように優先読み取りを終了する旨のマークを表示する場合、この表示に対して所定操作がなされたとき(例えば、図9(A)の表示がタッチパネル上での表示であり、優先(×)の部分がタッチされた場合)に優先読み取りを解除する。或いは、S25の後に、図9(B)のように優先読み取りを解除するための操作方法を表示する場合、この操作方法に従って操作がなされたときに優先読み取りを解除する。読取処理の終了後、上述のような所定の解除操作(解除処理)がなされた場合には、S26にてYesに進み、通常読み取り処理に移行する(S27)。なお、通常読み取り処理は、優先焦点位置での読み取りを行わず、オートフォーカス制御によって読み取りを行う処理である(例えば、図4のような流れで読み取りを行う)。
【0046】
本実施形態では、制御回路40が制御手段の一例に相当し、結像手段での焦点位置の設定及び変更(具体的には、液体レンズ27に印加する印加電圧値の設定及び変更)を制御するように構成されている。また、検出手段での検出結果に基づいて結像手段に対してオートフォーカス制御を行い得るように構成され、モード切替手段によって読取モードに切り替えられた場合に、結像手段の焦点位置が登録手段に登録されている優先焦点位置となるように当該結像手段を制御するように機能する。
【0047】
本実施形態では、制御回路40が解読手段の一例に相当し、少なくともモード切替手段によって読取モードに切り替えられた場合に、受光手段での反射光の受光結果に基づいて情報コードの解読を行うように機能し、更に、モード切替手段によって読取モードに切り替えられて読み取りを開始する際に、優先焦点位置に設定されているときの受光手段での受光結果に基づいて情報コードの解読を試み、解読成功の場合には当該情報コードの解読結果を出力し、解読失敗の場合には所定の失敗対応処理を行うように機能する。なお、失敗対応処理は、図9のような解除画面の表示及びそれに伴う解除に限られるものではなく、例えばエラー情報の報知(例えば、優先焦点位置で読み取りができなかった旨の報知等)などであってもよい。
【0048】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態の構成では、図8のように、モード切替手段によって読取モードに切り替えられて読み取りを開始する際に、結像手段の焦点位置が登録手段に登録されている優先焦点位置となるように当該結像手段を制御し、その優先焦点位置で読取動作を行っている。このようにすることで、ユーザが希望する焦点位置(優先焦点位置)での読み取りを優先的に行うことができ、闇雲に最適焦点位置を検出する構成と比較して動作負担を抑えることができる。特に、優先条件で読み取りが成功した場合にはオートフォーカス制御が行われないため、オートフォーカス制御に起因する機械的負担や処理時間の遅延を極力抑えることができる。また、解読失敗の場合には所定の失敗対応処理を行うため、次善の対策が可能となる。
【0049】
また、図8のように、解読手段は、モード切替手段によって読取モードに切り替えられて読み取りを開始する際に、結像手段が優先焦点位置に設定されているときの受光手段での受光結果に基づいて情報コードの解読を試み、解読成功の場合には当該情報コードの解読結果を出力し、解読失敗の場合には、制御手段によってオートフォーカス制御がなされたときの受光手段での受光結果に基づいて、情報コードの解読を試みている。
優先焦点位置での解読が失敗した場合、撮像対象の情報コードの位置が想定している位置(優先焦点位置に適した位置)からずれている可能性が高い。従って、優先焦点位置での解読が失敗した場合には、オートフォーカス制御によってピントを合わせた上で解読を行えば、解読成功確率を高めることができる。
【0050】
また、登録手段が、受光手段、結像手段、制御手段、及び解読手段を有している。そして、モード切替手段によって登録モードに設定された場合に、制御手段は、結像手段に対し焦点位置を複数位置に切り替える切替制御処理を行い、受光手段は、結像手段が各焦点位置に切り替えられたときの各結像状態で情報コードからの反射光を受光し、解読手段は、各焦点位置のときに受光手段で得られる各受光結果に基づいて各々の解読処理を行うと共に、切り替えられた各焦点位置での得られた複数の解読結果の内、解読処理のときの誤り訂正数が最も少ない解読結果を選び、その最も少ない解読結果が得られた場合の焦点位置を優先焦点位置として登録する。
読取環境や撮像対象の表面状態などによっては、距離だけで最適焦点位置が決まらない場合もあるが、上記方法によれば実際に読み取った上で、解読に適した画像が得られたとき(誤り訂正数が最も小さいとき)の焦点位置を優先焦点位置とすることができる。従って、より解読成功確率の高い焦点位置を優先焦点位置として読み取りを行うことができる。
【0051】
また、登録手段は、モード切替手段によって登録モードに設定された場合に、検出手段での検出結果に基づいて基準焦点位置を設定する基準焦点位置設定手段を備え、制御手段は、結像手段での焦点位置を基準焦点位置から前方側及び後方側にずらして複数位置に切り替えるように切替制御処理を行うようにすることができる。
例えば、各距離又は各ぼけ量に対応付けてそれぞれ焦点距離を予め定めておき、図4の処理の初期段階で事前に読取対象物までの距離を計測したり、或いは、S109、S119のような処理を行ってぼけ量を算出し、計測された距離又はぼけ量に対応する焦点位置(基準焦点位置)をデフォルトの位置として図4のような処理を行うようにすることができる。そして、S115、S125、S131で焦点距離を変更する場合には、このデフォルトの位置から前方又は後方に徐々にずらすように焦点位置を変更するようにすればよい。
このように情報コードの位置又は受光手段での受光状態を検出し、基準焦点位置という目処をつけた上で前後にずらして優先焦点位置の検出(即ち、誤り訂正数が最も小さくなる位置の検出)を行うようにすれば、誤り訂正数が最も小さくなる位置を闇雲に探す方法と比較して優先焦点位置の設定処理を大幅に短縮できる。
【0052】
また、結像手段の焦点位置を優先焦点位置に設定する優先設定制御を解除するための解除方法を表示可能な表示部と、解除方法に従った操作が可能な操作部と、を備え、制御手段は、解除方法に従って操作部が操作された場合に優先設定制御を解除し、結像手段に対しオートフォーカス制御を行っている。
この方法によれば、ユーザが任意に優先設定状態を解除することができ、必要に応じてオートフォーカス制御を優先させることもできる。
【0053】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
【0055】
上記実施形態では、オートフォーカス制御の方法として、ぼけ量を検出し、それに応じて液体レンズ27に印加する印加電圧値を調整する方法を例示したが、いわゆるアクティブ方式のオートフォーカス制御などであってもよい。この場合、例えば、図10(A)のように、受光センサ23の受光面と直交する基準軸Gの方向に対して所定角度θ傾いたレーザ光を照射し、図10(B)のようなレーザ光の撮像結果(基準軸Gの位置G1とレーザ光の位置L1の距離)に基づいて撮像対象物Rまでの距離を計測すればよい(勿論、撮像対象物までの距離計測方法は、他の公知方法を用いてもよい)。そして、撮像対象物Rまでの距離に応じて公知の方法で焦点位置を調整(即ち焦点距離を調整)すればよい。或いは、公知のコントラスト検知式、位相差検知式のオートフォーカス制御であってもよい。
【0056】
図11(A)は、ぼけている状態のQRコードQを示す図であり、図11(B)は、図11(A)の測定線L上におけるタイミングパターンTPおよびクワイエットゾーンQZの各輝度値を示すグラフである。
上述したステップS119におけるぼけ量算出処理では、測定線L上でのファインダパターンFPの各輝度値からぼけ量Fを算出することに限らず、測定線L上での明色セルおよび暗色セルが交互に配列されるタイミングパターンTPにおける明色セルの輝度値と、QRコードQの外縁部であって明色セルのみから構成されるクワイエットゾーンQZの輝度値との差からぼけ量Fを算出してもよい。
具体的には、図11(A)に示すように、QRコードQがぼけている場合には、図11(B)に示すように、タイミングパターンTPにおける明色セルの輝度値と、クワイエットゾーンQZの輝度値との差が大きくなることからぼけ量Fが大きくなる。このようにしても、ぼけ量Fを確実に算出することができる。
【0057】
本実施形態に係る情報コード読取装置20は、QRコードQに対して焦点距離調整処理を実施することによりぼけに起因する認識不良を抑制することに限らず、タイミングパターンTPおよびクワイエットゾーンQZ等が既定される二次元コード、例えば、Data Matrixコードに対して焦点距離調整処理を実施することによりぼけに起因する認識不良を抑制してもよい。
【0058】
ぼけ量Fは、ファインダパターンFPを構成する各輝度値において所定の位置の振幅Xと振幅Yとの差からぼけ量F=Y−Xとして算出することに限らず、所定の位置の輝度勾配から算出してもよい。
【0059】
ステップS115,S125では、1V刻みで印加電圧を変更することに限らず、0.1V刻みで印加電圧を変更してもよいし、ぼけ量F等に応じて刻み幅を調整してもよい。
【0060】
液体レンズ27により、QRコードQからの反射光Lrをその焦点距離を変更させて受光センサ23の受光面23aに対して集光させることに限らず、この液体レンズ27に代えて、例えば、モータ等で焦点距離を変更可能な焦点距離変更手段を採用してもよい。
【0061】
ステップS113,123では、経過時間tが許容最大処理時間ta以上であると判定される場合にYesと判定されて焦点距離調整処理が終了することに限らず、全パターン、例えば、予め設定された刻み幅の全てのパターンの印加電圧を液体レンズ27に印加してもデコード成功と判定されない場合にYesと判定されて焦点距離調整処理が終了してもよい。
【符号の説明】
【0062】
20…情報コード読取装置
23…受光センサ(受光手段)
27…液体レンズ(結像手段)
35…メモリ(登録手段)
40…制御回路(検出手段、制御手段、モード切替手段、解読手段、登録手段)
42…操作部
46…液晶表示器(表示部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11