特許第5786790号(P5786790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5786790電線保護材用組成物、電線保護材及びワイヤーハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786790
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】電線保護材用組成物、電線保護材及びワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20150910BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150910BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20150910BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20150910BHJP
   H01B 7/24 20060101ALI20150910BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20150910BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20150910BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C08L23/14
   C08K3/22
   C08K5/13
   C08K5/3445
   H01B7/24
   H01B7/00 301
   H01B7/34 B
   H02G3/04
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-98754(P2012-98754)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-227373(P2013-227373A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正史
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−345979(JP,A)
【文献】 特開2002−128963(JP,A)
【文献】 特開平5−078530(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125924(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/105329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B7/29
H01B7/00
H01B7/24
H02G3/04
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体を構成するモノマーの60〜95質量%がプロピレン単量体であり、MFRが0.5〜5g/10分、かつ融点が150℃以上であるポリプロピレン、難燃性付与剤として臭素系難燃剤及び三酸化アンチモン、耐熱寿命改善剤としてフェノール系酸化防止剤、イミダゾール系酸化防止剤、及び金属酸化物を含有し、
前記ポリプロピレンは、引張り強さが20〜35MPa、23℃におけるシャルピー衝撃強さが10kJ/m以上であり、
前記ポリプロピレン100質量部に対し、前記臭素系難燃剤及び前記三酸化アンチモンを合計量で1.5〜15質量部、前記フェノール系酸化防止剤を0.1〜3質量部、前記イミダゾール系酸化防止剤を0.1〜3質量部、前記金属酸化物を0.1〜3質量部配合してなることを特徴とする電線保護材用組成物。
【請求項2】
前記金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化錫から選択される少なくとも1種の金属酸化物であることを特徴とする請求項1記載の電線保護材用組成物。
【請求項3】
更にリン系酸化防止剤を前記ポリプロピレン100質量部に対し0.1〜3質量部配合してなることを特徴とする請求項1記載の電線保護材用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線保護材用組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなることを特徴とする電線保護材。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両部品、電気・電子機器部品等に用いられる、例えばコルゲートチューブ等の電線束を保護するための電線保護材、該電線保護材に用いられる電線保護材用組成物、及び前記電線保護材を用いたワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車電線の保護材として、特許文献1に記載されているように、ポリオレフィンに特定の臭素系難燃剤を配合してなる難燃性組成物からなる難燃性コルゲートチューブが公知である。この難燃性コルゲートチューブは難燃性を有するものの、ポリオレフィンを使用しているため、一般に連続使用可能温度による耐熱性区分は80〜90℃程度である。電線保護材は、更に高い耐熱性が要求されている。
【0003】
近年、火災や焼却の際にハロゲンガスが発生しないように、塩化ビニル樹脂や臭素系難燃剤等のハロゲン化合物を使用しない、ノンハロゲン系組成物が提案されている。例えば、コルゲートチューブ等の保護材の組成物ではないが、電線保護材用組成物として、ポリプロピレン樹脂にハロゲン原子を含まない難燃剤を配合してなるノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が公知である(例えば特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−186293号公報
【特許文献2】特開2005−15760号公報
【特許文献3】特開2011−111469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、上記ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物をコルゲートチューブ等の保護材に用いることを試みた。しかしながら、上記従来の難燃性樹脂組成物を用いた保護材は、特に自動車用途のコルゲートチューブとして用いた場合に、要求される難燃性、破断伸び、耐熱老化性、ブリード、成形性、耐摩耗等の諸特性を十分満足することができなかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、電線保護材として要求される諸特性を十分満足することが可能である、電線保護材用組成物、電線保護材及びワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る電線保護材用組成物は、
重合体を構成するモノマーの60〜95質量%がプロピレン単量体であり、MFRが0.5〜5g/10分、かつ融点が150℃以上であるポリプロピレン、難燃性付与剤として臭素系難燃剤及び三酸化アンチモン、耐熱寿命改善剤としてフェノール系酸化防止剤、イミダゾール系酸化防止剤、及び金属酸化物を含有し、
前記ポリプロピレンは、引張り強さが20〜35MPa、23℃におけるシャルピー衝撃強さが10kJ/m以上であり、
前記ポリプロピレン100質量部に対し、前記臭素系難燃剤及び前記三酸化アンチモンを合計量で1.5〜15質量部、前記フェノール系酸化防止剤を0.1〜3質量部、前記イミダゾール系酸化防止剤を0.1〜3質量部、前記金属酸化物を0.1〜3質量部配合してなることを要旨とするものである。
【0008】
上記電線保護材用組成物は、前記金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化錫から選択される少なくとも1種の金属酸化物であることが好ましい。
【0009】
上記電線保護材用組成物は、更にリン系酸化防止剤を前記ポリプロピレン100質量部に対し0.1〜3質量部配合してなることが好ましい。
【0010】
本発明に係る電線保護材は、上記の電線保護材用組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなることを要旨とするものである。
【0011】
本発明に係るワイヤーハーネスは、上記の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されていることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電線保護材用組成物は、重合体を構成するモノマーの60〜95質量%がプロピレン単量体であり、MFRが0.5〜5g/10分、かつ融点が150℃以上であるポリプロピレン、難燃性付与剤として臭素系難燃剤及び三酸化アンチモン、耐熱寿命改善剤としてフェノール系酸化防止剤、イミダゾール系酸化防止剤、及び金属酸化物を含有し、前記ポリプロピレンは、引張り強さが20〜35MPa、23℃におけるシャルピー衝撃強さが10kJ/m以上であり、前記ポリプロピレン100質量部に対し、前記臭素系難燃剤及び前記三酸化アンチモンを合計量で1.5〜15質量部、前記フェノール系酸化防止剤を0.1〜3質量部、前記イミダゾール系酸化防止剤を0.1〜3質量部、前記金属酸化物を0.1〜3質量部配合してなるものであるから、臭素系難燃剤等の難燃性付与剤の添加量が少量で良く、電線保護材として要求される諸特性を十分満足することが可能である保護材が得られる。
【0013】
本発明の電線保護材は、上記の電線保護材用組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなるものであるから、自動車用コルゲートチューブ等に用いた場合に、要求される難燃性、破断伸び、耐熱老化性、ブリード、成形性、耐摩耗等の諸特性性を十分満足することができる。
【0014】
本発明のワイヤーハーネスは、上記の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されているものであるから、十分な難燃性を有すると共に、機械的特性等の諸特性の優れた自動車用等に好適なワイヤーハーネスが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の電線保護材用組成物は、例えば下記の成分から構成することができる。
〔基材樹脂〕
(A)ポリプロピレン
〔難燃性付与剤〕
(B)臭素系難燃剤
(C)三酸化アンチモン
〔耐熱寿命改善剤〕
(D)フェノール系酸化防止剤
(E)イミダゾール系酸化防止剤
(F)金属酸化物
(G)リン系酸化防止剤
【0016】
以下、上記(A)〜(G)成分について説明する。上記(A)ポリプロピレンは、基材樹脂として用いられる。ポリプロピレンは、重合体を構成するモノマーの60〜95質量%がプロピレン単量体であり、プロピレン単量体以外の他の単量体と共重合された共重合体である。他の単量体としては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、非共役ポリエン等が挙げられる。
【0017】
上記炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1テトラデセンなどが挙げられる。また、上記非共役ポリエンとしては、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
【0018】
ポリプロピレンは、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンのいずれでも良い。またポリプロピレンは、その分子構造は、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンのいずれでも良い。
【0019】
ポリプロピレンは、230℃のMFR(メルトフローレイト)が0.5〜5g/10分である。尚、本発明において、MFRは、全て230℃で測定した値のことである。上記ポリプロピレンのMFRは、好ましくは1.0〜4.0g/10分の範囲内である。ポリプロピレンのMFRが0.5g/10分未満になると、ブロー成形ではパリソンが膨らみ難く、成形機への負荷も大きくなり成形が困難になる。ポリプロピレンのMFRが5g/10分を超えると、ブロー成形ではパリソンが割れやすくなり成形が困難になる。MFRが上記範囲内であると、成形性及び耐老化性が優れた成形体が得られる。
【0020】
ポリプロピレンは融点が150℃以上である。更に好ましくは融点が160℃以上である。融点が150℃未満では、耐加熱変形性が不十分である。
【0021】
難燃性付与剤は、(B)臭素系難燃剤と(C)三酸化アンチモンを併用する。上記(B)臭素系難燃剤は、例えば、エチレンビス(ペンタブロモベンゼン)〔別名:ビス(ペンタブロモフェニル)エタン〕、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、テトラブロモビスフェノールS(TBBPS)、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、TBBA−カーボネイト・オリゴマー、TBBA−エポキシ・オリゴマー、臭素化ポリスチレン、TBBA−ビス(ジブロモプロピルエーテル)、ポリ(ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモベンゼン(HBB)等が挙げられる。
【0022】
また上記(C)三酸化アンチモンは、例えば、鉱物として産出される三酸化アンチモンを粉砕処理して微粒化したものを用いることができる。三酸化アンチモンを臭素系難燃剤と併用することで、臭素系難燃剤の使用量を減らすことができる。
【0023】
難燃性付与剤の配合量は、ポリプロピレン100質量部に対し、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの合計量で、1.5〜15質量部の範囲内である。難燃性付与剤の配合量が、1.5質量部未満では難燃性が不十分となる虞があり、15質量部を超えると耐熱老化性が低下する虞がある。また素系難燃剤と三酸化アンチモンの配合比は、質量比で、臭素系難燃剤:三酸化アンチモン=1:1〜4:1の範囲内であるのが、添加効率の点から好ましい。
【0024】
耐熱寿命改善剤として、少なくとも(D)フェノール系酸化防止剤、(E)イミダゾール系酸化防止剤、(F)金属酸化物が用いられる。耐熱寿命改善剤の配合量は、ポリプロピレン100質量部に対し、(D)、(E)、(F)がそれぞれ0.1〜3質量部の範囲内である。上記3種を上記特定の配合量で併用することにより、成形の際の混練りが可能であり、得られた電線保護材は、耐熱老化性、ブリード性等を満足することができる。
【0025】
上記(D)フェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることができる。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、3,3’,3”,5,5’5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピノキ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもいずれでも良い。
【0026】
また(D)フェノール系酸化防止剤としては、上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外に、モノフェノール系、ジフェノール系、トリフェノール系、及びポリフェノール系酸化防止剤等を用いることができる。
【0027】
上記(E)イミダゾール系酸化防止剤は、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、4−メルカプトメチルベンズイミダゾール、5−メルカプトメチルベンズイミダゾール等や、これらの亜鉛塩などが挙げられる。
【0028】
上記(F)金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化錫等から選択される少なくとも1種の金属酸化物を用いるのが好ましい。これらは1種単独で使用しても、或いは2種以上を併用して用いても、いずれでも良い。
【0029】
耐熱寿命改善剤としては、更に(G)リン系酸化防止剤を前記ポリプロピレン100質量部に対し、0.1〜3質量部配合することもできる。リン系酸化防止剤を配合することにより、加工安定性が向上するという効果が得られる。上記リン系酸化防止剤としては、ジフェニルノニルフェニルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0030】
本発明の電線保護材用組成物は、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種安定剤、耐候剤、銅害防止剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、非ハロゲン難燃剤、充填剤等の添加剤を添加してもよい。
【0031】
本発明の電線保護材用組成物を調製するには、上記の各成分を公知の混合方法で混合すればよい。混合の際の配合順序、混合方法などは特に限定されない。具体的な混合方法としては、例えば、タンブラー式ブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、押出機(単軸、二軸)、バンバリミキサー、加圧ニーダー、ロールなどの通常用いられる混練機を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0032】
本発明の電線保護材は、上記の電線保護材用組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなるものである。具体的な電線保護材の形状は、特に限定されず、電線、或いは電線束を保護可能な形状であればよい。電線保護材の形状としては、電線束の外周を覆い、内部の電線束を外部環境等から保護する役割を有するものである。具体的な電線保護材の形状としてコルゲートチューブが挙げられる。コルゲートチューブの製造は、例えばチューブを押し出した後、金型により蛇腹状のコルゲートチューブに成形することができる。
【0033】
本発明のワイヤーハーネスは、上記の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されているものである。
【0034】
ワイヤーハーネスに用いられる電線束は、絶縁電線のみがひとまとまりに束ねられた単独電線束、あるいは、絶縁電線と他の絶縁電線とが混在状態でひとまとまりに束ねられた混在電線束等を用いることができる。単独電線束及び混在電線束に含まれる電線本数は、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。尚、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0036】
[供試材料及び製造元等]
実施例及び比較例において使用した供試材料を製造元、商品名等とともに示す。ポリプロピレンについては、MFR、融点、引張り強さ、シャルピー衝撃強さ等を表中に示した。
【0037】
(A:ポリプロピレン)
〔1〕ブロックPP1:日本ポリプロ社製、商品名「EC9」
〔2〕ブロックPP2:プライムポリマー社製、商品名「J356HP」
〔3〕ブロックPP3:プライムポリマー社製、商品名「J704UG」
〔4〕ブロックPP4:プライムポリマー社製、商品名「J705UG」
〔5〕ブロックPP5:日本ポリプロ社製、商品名「EG8」
〔6〕ホモPP:プライムポリマー社製、商品名「E203GP」
〔7〕PPエラストマー:住友化学社製、商品名「エスポレックス817」
【0038】
(B:臭素系難燃剤)
・アルベマール社製、商品名「SAYTEX8010」
(C:三酸化アンチモン)
・鈴裕化学社製、商品名「AT−3CNLP」
(D:フェノール系酸化防止剤)
・BASF社製、商品名「IRGANOX1010」
(E:イミダゾール系酸化防止剤)
・川口化学社製、商品名「アンテージMB」
(F:酸化亜鉛)
・ハクスイテック社製、商品名「亜鉛華2種」
(G:リン系酸化防止剤)
・BASF社製、商品名「IRGAFOS168」
(H:水酸化マグネシウム)
・神島化学工業社製、商品名「マグシーズN−4」
【0039】
[電線保護材の作製]
表1〜表4の実施例1〜11、比較例1〜16に示す成分を二軸混練機を用いて混練温度220℃にて混合した後、ペレタイザーにてペレット状に成形して各組成物を得た。次いで得られた各組成物からダンベル試験片、及びコルゲートチューブを成形して各種評価を行った。評価結果を表1〜4に合わせて示す。尚、ダンベル試験片は、ペレットを220℃で加熱圧縮して得られた140mm×140mm×1mmのシートからJIS 3号ダンベル型で打抜いて作製した。コルゲートチューブは、220℃ブロー押出成形でΦ10mmのコルゲートチューブを200mm長さに成形した。各種評価の具体的な方法は以下の通りである。
【0040】
〔難燃性試験〕
JIS K−7201に準拠し、Φ10mmのコルゲートチューブを200mmの長さにカットして試験片とし、試験片が点火してから180秒以内に消炎する最大酸素濃度を測定した。判定基準は、最大酸素濃度22以上を合格とし、それ以外を不合格とした。
【0041】
〔引張り強さ、破断伸び〕
厚さ1mmのJIS 3号ダンベル試験片を用い、引張速度50mm/minで引張り試験を行い、引張強さ、破断伸びを測定した。引張強さは、25MPa以上を合格とし、それ以外を不合格とした。破断伸びは、500%以上を合格(○)とし、600%以上を良好(◎)とし、500%未満を不合格(×)とした。
【0042】
〔耐熱老化性〕
厚さ1mmのJIS 3号ダンベル試験片を用い、150℃で熱老化試験を実施し、破断時伸び50%になる耐熱寿命を求めた。150℃耐熱寿命が1000時間以上〜1300時間未満を合格(○)とし、1300時間以上〜1500時間未満を良好(◎)とし、1500時間以上を優良(◎◎)とし、1000時間未満を不合格(×)とした。
【0043】
〔ブリード〕
厚さ1mmのJIS 3号ダンベル試験片を用いた上記150℃耐熱老化性試験の実施中に、150℃×500時間の時点で試験片表面が白くなっていたら、ブリードにより不合格とし、それ以外を合格とした。
【0044】
〔成形性〕
横型コルゲーターでのブロー成形で成形不能、もしくは、ノズル部にカスが溜まり、製品に異物が付着する、製品表面に添加剤がブリードするものを成形性不合格とし、それ以外を合格とした。
【0045】
〔耐磨耗性〕
金属棒に通したΦ10mmのコルゲートチューブを100mm長さに切断したものを試験片とし、規定された研磨布粗さ150番の摩耗テープに接するように試験片を固定し、荷重450gf、テープ速度1500mm/minで移動させ、金属棒とテープが接するまでのテープ長さを読み取った。摩耗テープ距離8000mm以上を合格とし、それ以外を不合格とした。
【0046】
〔衝撃試験〕
規定本数の電線を収容したΦ10mmのコルゲートチューブに200g鋼球を50cmの高さから自由落下させて、状態を観察した。判定基準は、目視確認できる亀裂、割れ、変形の無ければ合格とし、それ以外は不合格とした。
【0047】
〔加熱変形性〕
規定本数の電線を収容したΦ10mmのコルゲートチューブを静置状態で150℃の恒温槽に1時間投入した後の寸法変化を測定した。判定基準は、投入前後の最外径垂直方向の寸法変化率が2%以下の場合を合格とし、それ以外を不合格とした。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
表1〜2に示すように、実施例1〜11は、各種評価において合格又は良好以上の評価が得られた。これに対し、比較例1〜16は、表3〜4に示すように各種評価を全て満足することができなかった。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。