特許第5786802号(P5786802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786802
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】防爆型電子機器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/06 20060101AFI20150910BHJP
   H02H 9/00 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   H05K5/06 B
   H02H9/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-128448(P2012-128448)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-254800(P2013-254800A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(72)【発明者】
【氏名】田中 琢也
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−154708(JP,A)
【文献】 特開平7−142116(JP,A)
【文献】 特開2003−173839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/06
H02H 9/00
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコネクタを備えた第1の回路基板と、
前記第1のコネクタと嵌合する第2のコネクタを備えた第2の回路基板と、
前記第2のコネクタの外周を囲み、前記第2の回路基板の一面から離間した位置に取り付けられ、前記第1の回路基板に向かって延在するパッキンと、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとにより嵌合された状態で、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板との間に充填される充填剤と、を備え、
前記パッキンは、前記第1と第2のコネクタとの嵌合部分を含む閉空間を形成すること、
を特徴とする防爆型電子機器。
【請求項2】
前記パッキンは、支持部と壁部とから構成され、
前記支持部は、前記第2のコネクタの側面の、前記第2の回路基板の一面から所定の距離だけ離間した位置に、前記第2のコネクタの外周を囲むように取り付けられ、
前記壁部は、前記第1の回路基板に向かって延びるように前記支持部に取り付けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の防爆型電子機器。
【請求項3】
前記壁部は、
前記支持部の一側面から前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとを嵌合したときの前記第1の回路基板の表面までの距離よりも長い長さを有し、
前記パッキンの壁部の上面は、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとを嵌合するときに、前記第1の回路基板の表面から押圧されて、前記第1の回路基板の表面に密着すること
を特徴とする請求項2に記載の防爆型電子機器。
【請求項4】
前記壁部は、前記第1の回路基板から押圧されたときに、前記第1と第2のコネクタの嵌合部分から離間する方向に弾性変形するように形成されていること、
を特徴とする請求項2又は3に記載の防爆型電子機器。
【請求項5】
前記パッキンの壁部は、シリコンエラストマー樹脂から形成されること、
を特徴とする請求項2,3又は4に記載の防爆型電子機器。
【請求項6】
前記第2の回路基板と前記パッキンとの間隔は、前記パッキン近傍に配置された電子部品の高さよりも、所定の距離以上大きいこと、
を特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の防爆型電子機器。
【請求項7】
第1のコネクタを備えた第1の回路基板と、前記第1のコネクタと嵌合する第2のコネクタを備えた第2の回路基板とが、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとにより嵌合された状態で、前記第2のコネクタの前記第2の回路基板の一面から離間した位置に配置され、前記第2のコネクタの外周を囲み、前記第1の回路基板に向かって延在して前記第1の回路基板に接触しているパッキンにより前記第1のコネクタと第2のコネクタとの嵌合部分を含む閉空間を形成し、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板との間に充填剤を充填すること、
を特徴とする防爆型電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防爆型電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製プラント、原油基地、塗装工場などの可燃性ガスや炭鉱などの粉塵が発生する環境下において、防爆型電子機器が使用されている。防爆型電子機器は、例えば、部品の搭載された複数のプリント基板が配置されていて、樹脂製の充填剤をプリント基板やプリント基板上の部品を覆うように充填して、可燃性ガスや粉塵がプリント基板やプリント基板上の部品に接触するのを防止した構成を有する。
【0003】
複数のプリント基板は、例えば、一方のプリント基板の表面に雄コネクタ、他方のプリント基板の表面に雌コネクタを取り付けて、雄コネクタと雌コネクタを嵌合して接続される。この接続状態において、プリント基板間に充填剤を充填した場合、雄コネクタと雌コネクタとの嵌合部の隙間から、コネクタ内部に充填剤が浸入して、コネクタ接合部に電気接点障害が生じる場合がある。かかる観点から、防爆型電子機器では接続状態を確保するためにコネクタ内部への充填剤の浸入を禁止している。
【0004】
この問題を解決するため、特許文献1は、プリント基板に配置されたコネクタの外周を囲むようにコネクタパッキンを壁状に配置し、プリント基板に対向配置される部材支持板でコネクタパッキンを押圧してコネクタを密閉した後に、プリント基板と部材支持基板の間に充填剤を充填して、コネクタ内部への充填剤の浸入を防止する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−154708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術によれば、コネクタ接合部への充填剤の浸入を防止できるので、電気接点障害の問題を解決でき、性能を確保することができる。しかしながら、特許文献1に記載されたコネクタパッキンは、プリント基板に直に取り付けられることから、プリント基板のコネクタパッキンを配置した領域及びその近傍に電子部品を配置できず、プリント基板の電子部品の設置面積が小さくなるという問題がある。
【0007】
電子機器の高密度実装化に伴い、電子部品の設置面積を確保するという課題は、無線機以外の他の防爆型電子機器についても同様に存在する。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、電子部品の設置面積を大きくする構造を備えた防爆型電子機器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る防爆型電子機器は、
第1のコネクタを備えた第1の回路基板と、
前記第1のコネクタと嵌合する第2のコネクタを備えた第2の回路基板と、
前記第2のコネクタの外周を囲み、前記第2の回路基板の一面から離間した位置に取り付けられ、前記第1の回路基板に向かって延在するパッキンと、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとにより嵌合された状態で、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板との間に充填される充填剤と、を備え、
前記パッキンは、前記第1と第2のコネクタとの嵌合部分を含む閉空間を形成すること、
を特徴とする。
【0010】
例えば、前記パッキンは、支持部と壁部とから構成され、前記支持部は、前記第2のコネクタの側面の、前記第2の回路基板の一面から所定の距離だけ離間した位置に、前記第2のコネクタの外周を囲むように取り付けられ、前記壁部は、前記第1の回路基板に向かって延びるように前記支持部に取り付けられている。
【0011】
例えば、前記壁部は、前記支持部の一側面から前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとを嵌合したときの前記第1の回路基板の表面までの距離よりも長い長さを有し、前記パッキンの壁部の上面は、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとを嵌合するときに、前記第1の回路基板の表面から押圧されて、前記第1の回路基板の表面に密着する。
【0012】
例えば、前記壁部は、前記第1の回路基板から押圧されたときに、前記第1と第2のコネクタの嵌合部分から離間する方向に弾性変形するように形成されている。
【0013】
例えば、前記パッキンの壁部は、シリコンエラストマー樹脂などの押圧されたときに弾性変形するような材料から形成される。
【0014】
例えば、前記第2の回路基板と前記パッキンとの間隔は、前記パッキン近傍に配置された電子部品の高さよりも、所定の距離以上大きい。
【0015】
また、本発明の第2の観点に係る防爆型電子機器の製造方法は、
第1のコネクタを備えた第1の回路基板と、前記第1のコネクタと嵌合する第2のコネクタを備えた第2の回路基板とが、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとにより嵌合された状態で、前記第2のコネクタの前記第2の回路基板の一面から離間した位置に配置され、前記第2のコネクタの外周を囲み、前記第1の回路基板に向かって延在して前記第1の回路基板に接触しているパッキンにより前記第1のコネクタと第2のコネクタとの嵌合部分を含む閉空間を形成し、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板との間に充填剤を充填すること、
を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子部品の設置面積を大きくする構造を備えた防爆型電子機器及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る防爆無線機の構造を示す断面図である。
図2】(a)と(b)は、それぞれ、第1のコネクタと第2のコネクタの接続部の形態の例を示す図である。
図3】パッキンの構造を示す拡大図である。
図4】(a)〜(d)は、実施形態1に係る防爆無線機の製造手順を示す図である。
図5】(e)〜(g)は、実施形態1に係る防爆無線機の製造手順を示す概略断面図である。
図6】(a)は、第1のコネクタを第1の回路基板に接続する他の例を示す断面図、(b)はその製造工程を示す断面図である。
図7】第1の回路基板から押圧されたときのパッキンの壁部の他の変形状態を示す断面図である。
図8】パッキンの支持部の変形例を示す断面図である。
図9】充填剤の充填形態の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態に係る防爆型電子機器とその製造方法を、防爆無線機を例に説明する。
【0019】
本実施形態の防爆無線機100は、図1に示すように、第1の回路基板1と、第2の回路基板2と、シャシ3と、第1のコネクタ4と、第2のコネクタ5と、パッキン6と、充填剤7と、を備えている。実際には、防爆無線機100は、外装ケースで覆われて、電子機器としての体を成しているが、本願の説明に際して、防爆無線機100の内部構成をより明確に示すために、図中では外装ケースを省略している。
【0020】
第1の回路基板1および第2の回路基板2は、集積回路、抵抗器、コンデンサなどの電子部品8を実装したリジッド型のプリント基板である。第1の回路基板1には、第1のコネクタ4が、第2の回路基板2には第2のコネクタ5が配置されている。
【0021】
シャシ3は、箱型に形成された金属製の容器から構成される。シャシ3には、第1の回路基板1と第2の回路基板2が、図示していないリブ等を介して、第1のコネクタ4と第2のコネクタ5が嵌合した状態で、平行に取り付けられている。
【0022】
第1のコネクタ4は、雄コネクタから構成され、プラスチックなどの硬質樹脂材料で形成された保持部材9で抱持されて、第1の回路基板1の一面に取り付けられている。第1のコネクタ4には、例えば、図2(a)に例示するように、ソケット状に導電部(接続端子)4aが形成され、或いは、図2(b)に示すように、弾性部材で付勢されて突没可能なピン状に導電部(接続端子)4bが形成されている。導電部4a、4bは図示せぬ配線を介して、第1の回路基板1に形成された電源線、接地線、信号線等のプリント配線に接続されている。
【0023】
第2のコネクタ5は、雌コネクタから構成され、第2の回路基板2の一面に取り付けられ、第1のコネクタ4を着脱可能に抱持する。第2のコネクタ5の凹部は、第1のコネクタ4の凸部と同形同寸に形成され、嵌合可能に構成されている。第2のコネクタ5の側部と底部は、例えば、プラスチックなどの硬質樹脂材料で形成されている。第2のコネクタ5の凹部には、例えば、図2(a)に示すように、第1のコネクタ4の導電部4aに嵌合するピン状の導電部5a、図2(b)に示すように、ピン状に形成された導電部4bに接触するソケット状導電部5bが形成される。導電部5a、5bは図示せぬ配線を介して、第2の回路基板2に形成された電源線、接地線、信号線等のプリント配線に接続されている。
【0024】
従って、第1のコネクタ4を第2のコネクタ5に嵌合すると、第1の回路基板1上の配線と第2の回路基板2上の配線とが電気的に接続され、ボードツーボードコネクタが形成される。このように2枚の基板間をボードツーボードコネクタで接続すると、2枚の基板間の間隔をコネクタの高さと同じ大きさまで薄くできるので、防爆無線機を薄型に構成できる。パッキン6を要することで、充填された防爆無線機の薄型化に資することができる。
【0025】
図1に示すパッキン6は、防爆無線機100の製造段階で、第1のコネクタ4と第2のコネクタ5の嵌合部の隙間から、未硬化状態の充填剤7がコネクタ内(コネクタ4と5の隙間)に浸入するのを防止する部材であり、支持部10と支持部10に取り付けられる壁部11とを備える。
【0026】
支持部10は、プラスチックなどの硬質絶縁性樹脂材料等からコネクタ周囲に形成される。図3に拡大して示すように、支持部10は、第2の回路基板2の主面から離間した位置において、第2のコネクタ5の側面の外周に、例えば、熱接着により取り付けられる。支持部10の取り付け位置と第2の回路基板2との間隔L2は、第2の回路基板2の第2のコネクタ5近傍に取り付けた電子部品8の高さL1よりも所定の距離以上大きい。このため、電子部品8を第2のコネクタ5の比較的近傍に配置することができる。なお、所定の距離とは、第2の回路基板2の第2のコネクタ5近傍に取り付けた電子部品8との絶縁距離を確保できる距離のことである。
【0027】
壁部11は、第1の回路基板1で押圧されたときに弾性変形する材料、例えば、シリコンエラストマー樹脂などで筒状に形成される。壁部11は、第2のコネクタ5を囲って第1の回路基板1に向かって延びるように、例えば、超音波溶着によって、支持部10の一側面に取り付けられる。壁部11は、壁部11が取り付けられる支持部10の一側面から第1のコネクタ4と第2のコネクタ5を嵌合したときの第1の回路基板1の表面までの距離よりも長い長さを有する。このため、第1のコネクタ4と第2のコネクタ5とを嵌合したときに、図3に破線で示すように、壁部11の上面は、第1の回路基板1の表面と接触して、第1の回路基板1の表面から押圧されて、第1の回路基板1に密着される。壁部11は、例えば、第1のコネクタ4と第2のコネクタ5の嵌合部に対して、外側(離間する方向)に膨らんだ円弧状に変形される。変形後の壁部11と第1の回路基板1に搭載された電子部品8の距離は、防爆に関する規格であるIEC60079−0もしくはIEC60079−11で規定された離隔距離を満たす。
【0028】
充填剤7は、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂であり、可燃性ガスや粉塵が電子部品8と接触するのを防止するために、第1の回路基板1と第2の回路基板2の間の空間と、第2の回路基板2とシャシ3の底面との間の空間に充填される。ただし、充填剤7は、第2のコネクタ5とパッキン6と第1の回路基板1により形成されている閉(気密)空間内には充填されていない。
【0029】
電子部品8は、無線機を構成する種々の電子パーツであり、例えば、抵抗素子、容量素子等の受動素子、半導体チップ、表示装置、各種スイッチ、ボタン、表示装置、などを含む。
例えば、第1の回路基板1の上面(露出面)にはユーザインタフェースである、キースイッチ、ボタン等の操作用パーツと液晶表示素子等の表示パネル等、もしくはレンズ等の外部に露出する必要がある部品が配置され、第1の回路基板1の裏面や第2の回路基板2には、露出の必要のない部品が配置される。
【0030】
空隙12のサイズ、第1のコネクタ4と第2のコネクタ5の周辺に配置する電子部品8の位置は、防爆に関する基準であるIEC600790−0もしくはIEC600790−11を満たすように、電子部品8に印加される電圧と近接する部品との離隔距離に基づいて設定されている。このため、図3に示すように、各電子部品8は、パッキン6から印加電圧により定まる所定距離だけ離れた限界ラインLLより遠い位置に配置されている。
【0031】
次に、図4図5を参照しながら、防爆無線機100の製造方法を説明する。
【0032】
まず、図4(a)に示すように、プリント配線が施された第1の回路基板1の所定位置に第1のコネクタ4,電子部品8等を配置する。
また、図4(b)に示すように、プリント配線が施された第2の回路基板2の所定位置に第2のコネクタ5,電子部品8等を配置する。さらに、第2のコネクタ5の所定位置に、支持部10を熱接着等により固定し、さらに、支持部10に壁部11を取り付ける。
【0033】
次に、図4(c)に示すように、シャシ3の底面と対向するように、第2の回路基板2をシャシ3内に配置する。
【0034】
続いて、図4(d)に示すように、第2の回路基板2の一端に設けた第1の充填剤注入口30aから、熱硬化性の充填剤7を注入する。充填剤7によって、第2の回路基板2とシャシ3の底面の間の空間30cの空気が、第2の回路基板2の他端に設けた第1の空気排出口30bから押し出される。充填後、加熱し、空間30c内に充填された充填剤7を硬化する。
【0035】
次に、図5(e)に示すように、第1のコネクタ4の凸部と第2のコネクタ5の凹部が向かい合うように、第1の回路基板1を第2の回路基板2に対向配置させ、図中に矢印で示した方向に、第1の回路基板1を移動させ、第1のコネクタ4の凸部の先端を第2のコネクタ5の凹部に挿入する。
【0036】
第1のコネクタ4の凸部を第2のコネクタ5の凹部にさらに押し込むと、図5(f)に示すように、第1の回路基板1の表面と、パッキン6の壁部11の上面が接触する。
【0037】
第1のコネクタ4の凸部を第2のコネクタ5の凹部にさらに押し込むと、図5(g)に示すように、第1のコネクタ4は、第2のコネクタ5に嵌合される。これにより、図2に示した第1のコネクタ4の導電部4aと第2のコネクタ5の導電部5a又は4bと5bが接続し、第1の回路基板1と第2の回路基板2とは電気的に接続される。
このとき、パッキン6の壁部11の上面は、第1の回路基板1から押圧されて、第1の回路基板1に密着される。また、パッキン6の壁部11は、図3破線で示すように、第1のコネクタ4と第2のコネクタ5の嵌合部に対して、外側に膨らんだ円弧状に変形する。
【0038】
これにより、第1の回路基板1に接続された第1のコネクタ4と第2の回路基板2に配置された第2のコネクタ5とが接続された状態で、第1の回路基板1と第2の回路基板2とをシャシ3に配置すると共に、第2のコネクタ5の第2の回路基板1の一面から離間した位置に配置され、第2のコネクタ5の外周を囲み、第1の回路基板1に向かって延び、上面が第1の回路基板1に接触しているパッキン6により第1のコネクタ4と第2のコネクタ5の接続部分を含む閉空間を形成する。
【0039】
続いて、図5(g)に示すように、第1の回路基板1の一端に設けた第2の充填剤注入口40aから、未硬化の充填剤7を、充填剤7の上面が第1の回路基板1に達するまで注入する。注入された充填剤7によって、第1の回路基板1と第2の回路基板2の間の空間40cの空気が、第1の回路基板1の他端に設けた第2の空気排出口40bから押し出される。
このとき、第2のコネクタ5、パッキン6,及び第1の回路基板1は、閉じた気密空間を形成し、充電剤7が第1のコネクタ4と第2のコネクタ5の接続部分に浸入するのを防止する。
【0040】
充填完了後、加熱して、空間40c内に充填された充填剤7を硬化させる。以上で、充填剤7が充填された防爆無線機100が完成する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の防爆無線機100は、第2の回路基板2から所定の距離だけ離間して(浮かせて)、パッキン6を第2のコネクタ5の外側面に取り付けている。このため、パッキン6を第2の回路基板2上に直接配置する構成に比較して、第2のコネクタ5の周辺まで電子部品8を配置でき、第2の回路基板2上の電子部品の設置面積を大きくできる。そのため、同数の電子部品を備える場合、回路基板を小型に設計できるので、防爆無線機の小型化に資する。
【0042】
上記実施形態は、例示であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲において、自在に変形、応用あるいは改良して実施できる。
【0043】
例えば、上記実施形態では、保持部材9で抱持して、第1のコネクタ4をリジッド基板である第1の回路基板1に取り付ける例について示したが、図6(a)に例示するように、第1の回路基板1としてフレキシブルプリント基板を用いる場合や、第1の回路基板12に第1のコネクタ4を直に固定するのではなく、第1の回路基板1に、ケーブル13を介して、第1のコネクタ4を接続して配置する(備える)こともできる。この場合には、図6(b)に示すように、第1のコネクタ4を第2のコネクタ5に嵌合した後で、第1の回路基板1をシャシ3に固定することが可能となる。
また、このような構成にすれば、第1の回路基板1を下方に凸となるように変形して、シャシ3に取り付けることができるので、第1の回路基板1と第2の回路基板2の間に充填する充填剤7の量を少なくできる。また、フレキシブルプリント基板は、リジッド基板に比べて軽量なので、防爆無線機の軽量化に資することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、パッキン6の壁部11が、第1のコネクタ4と第2のコネクタ5の嵌合部に対して、外側に円弧状に膨らむように変形する例を示したが、壁部11の変形の態様はこれに限られない。例えば、パッキン6の壁部11は、図7に示すように、支持部10から第1の回路基板1に向かうにつれて、ハの字状に広がる形状に変形されてもよい。図1に示した例と支持部10の取り付け位置と壁部11の長さが同じ場合、壁部11がこのように変形すれば、垂直方向への壁部11の縮みは大きくなって、壁部11が第1の回路基板1を押し返す力は大きくなる。そのため、図1に示した例と比べて、第1の回路基板1と支持部10との間で、壁部11を強固に固定できる。その他、壁部11の変形の形態は任意であるが、第1の回路基板1からの押圧により、第1のコネクタ4と第2のコネクタ5との接続部分より離れる方向に変形することが望ましい。
【0045】
また、図8に示すように、パッキン6を構成する支持部10を、例えば、第1のコネクタ4と第2のコネクタ5との接続部分まで延在し、接続部分を支持部10でカバーするように構成してもよい。
【0046】
また、パッキン6の壁部11が第1の回路基板1に直接接触する例を示したが、第1の回路基板1に壁部11の上端部と圧接或いは嵌合する受け部を形成してもよい。
【0047】
また、充填剤7を、第1の回路基板1と同一面まで充填する例を説明したが、図9に示すように、充填剤7と第1の回路基板1との間に空隙が形成されてもよい。
【0048】
また、シャシ3の下側に第2の回路基板2,上側に第1の回路基板1を配置する例を示したが、シャシ3の上側に第2の回路基板2,下側に第1の回路基板1を配置する構成でもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、第1の回路基板1の両面に、集積回路、抵抗器、コンデンサなどの電子部品8を配置する例について示したが、配置される部品はこれに限られず、任意である。
また、回路基板が2枚の例を示したが、回路基板は3枚以上でもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、第2の回路基板2とシャシ3の間のみの充填、硬化を行い、次に第1の回路基板1を嵌合後に再度充填、硬化を行ったが、複数回に分ける充填方法に限らず、第1の回路基板1を嵌合後、一度に充填を行い、硬化させる方法も適用可能である。
【0051】
さらに、防爆型無線機100の例を示したが、複数の回路基板を備えているならば、他の防爆型の電子機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 第1の回路基板
2 第2の回路基板
3 シャシ
4 第1のコネクタ
5 第2のコネクタ
6 パッキン
7 充填剤
8 電子部品
9 保持部材
10 支持部
11 壁部
12 空隙
13 ケーブル
30a 第1の充填剤注入口
30b 第1の空気排出口
30c 空間
40a 第2の充填剤注入口
40b 第2の空気排出口
40c 空間
100 防爆無線機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9