(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記視差データ発生部は、複数の基本奥行きモデルそれぞれの画面全体の視差値を示す視差データを、前記非立体画像信号が有する特徴に基づいて合成する合成部を有することを特徴とする請求項1記載の奥行き情報生成装置。
前記中央部分布割合算出部は、前記第1のヒストグラム検出部が検出したヒストグラムと前記第2のヒストグラム検出部が検出したヒストグラムの差分に基づいて前記中央部分布割合データを算出することを特徴とする請求項4記載の奥行き情報生成装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の奥行き情報生成装置、奥行き情報生成方法、奥行き情報生成プログラム、擬似立体画像生成装置の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1において、R,G,B信号である入力信号(オブジェクト信号)は、擬似的な奥行き情報を生成する奥行き情報生成部1に入力される。奥行き情報生成部1は、一実施形態の奥行き情報生成装置を構成する。R,G,B信号は、3原色信号の赤色信号,緑色信号,青色信号である。
【0019】
奥行き情報生成部1に入力されるR,G,B信号は、奥行き情報が明示的にも暗示的にも与えられていない非立体画像を表す画像信号である。奥行き情報生成部1は、奥行き推定データを生成する奥行き推定部211を有する。奥行き推定部211の具体的な構成及び動作については後に詳述する。
【0020】
ステレオペア生成部2には、奥行き情報生成部1への入力信号であるR,G,B信号と、奥行き推定部211によって生成された奥行き推定データとが入力される。ステレオペア生成部2は、右目画像データと左目画像データとのステレオペアを生成する。
【0021】
ステレオペア生成部2は、非立体画像信号に基づいて複数の視点の画像データを生成する複数視点画像データ生成部の一例である。奥行き情報生成部1とステレオペア生成部2とは、一実施形態の擬似立体画像生成装置を構成する。
【0022】
ステレオペア生成部2は、入力されたR,G,B信号をそのまま右目画像データとする。ステレオペア生成部2は、右目画像データ(R,G,B信号)に基づいて左目画像データを生成する。
【0023】
画素シフト部21には、R,G,B信号と奥行き推定データとが入力される。画素シフト部21は、奥行き推定データに基づいてR,G,B信号それぞれの画素をシフトする。
【0024】
例えば左に視点移動する場合、画面より手前に表示するものは近いものほど画像を見る者の内側(鼻側)に見える。そこで、画素シフト部21は、対応部分の画素を奥行き推定データが示す奥行きに応じた量だけ、内側(右側)に移動させる。画面より奥に表示するものは近いものほど画像を見る者の外側に見える。そこで、画素シフト部21は、対応部分の画素を奥行きに応じた量だけ、外側(左側)に移動させる。
【0025】
画素シフト部21によって画素をシフトすると、画像内に、画素が存在しない、いわゆるオクルージョンが発生する場合がある。オクルージョン補償部22は、画素シフト部21より出力されたR,G,B信号のオクルージョンを補償する。
【0026】
オクルージョン補償部22は、オクルージョンの周辺の画素を用いて画素を補間する等の公知の方法によってオクルージョンを補償する。
【0027】
オクルージョン補償部22より出力されたR,G,B信号は、ポスト処理部23に入力される。ポスト処理部23は、入力されたR,G,B信号に対して平滑化処理等のポスト処理を施す。ポスト処理部23によってポスト処理を施すことにより、オクルージョン補償された画像が滑らかとなり、ノイズが軽減される。
【0028】
ポスト処理部23より出力されたR,G,B信号は、左目画像データとなる。左目画像出力部24は左目画像データを出力し、右目画像出力部25は右目画像データを出力する。
【0029】
ステレオペア生成部2には、ステレオ画像表示装置3が接続されている。ステレオ画像表示装置3には、左目画像出力部24より出力された左目画像データと、右目画像出力部25より出力された右目画像データとのステレオペアが入力される。ステレオ画像表示装置3は、入力されたステレオペアに基づいてステレオ画像(立体画像)を表示する。
【0030】
ステレオペア生成部2は、入力されたR,G,B信号をそのまま左目画像データとし、左目画像データ(R,G,B信号)を画素シフトすることによって右目画像データを生成してもよい。
【0031】
ステレオペア生成部2は、右目画像データと左目画像データのいずれも、入力されたR,G,B信号をそのまま用いるのではなく、画素シフト部21によって画素をシフトさせた左右の別視点の画像データをステレオペアとしてもよい。
【0032】
図2を用いて、奥行き推定部211の具体的構成例及びその動作について説明する。画像入力部111には、R,G,B信号が入力される。画像入力部111は、R,G,B信号のうちのR信号のみを、上部高域成分評価部112と下部高域成分評価部113とに供給する。画像入力部111は、R,G,B信号のうちのR信号及びB信号をオブジェクト信号補正部128に供給する。
【0033】
上部高域成分評価部112は、それぞれのフレームの上部約20%の領域に高域成分がどの程度含まれているかを評価する。例えば、上部高域成分評価部112は、上部約20%の領域を水平8画素、垂直8画素のブロックに分割する。上部高域成分評価部112は、それぞれのブロックにおいて次の式(1)を計算し、ブロックの平均を上部高域成分評価値top_actとする。上部高域成分評価値top_actは、合成部117に入力される。
【0035】
下部高域成分評価部113は、それぞれのフレームの下部約20%の領域に高域成分がどの程度含まれているかを評価する。例えば、下部高域成分評価部113は、下部約20%の領域を水平8画素、垂直8画素のブロックに分割する。下部高域成分評価部113は、それぞれのブロックにおいて上記の式(1)を計算し、ブロックの平均を下部高域成分評価値bottom_actとする。下部高域成分評価値bottom_actは、合成部117に入力される。
【0036】
フレームメモリ114〜116は、擬似立体画像を生成する際の基本となる基本奥行きモデルを記憶している。フレームメモリ114,115,116が記憶している基本奥行きモデルをそれぞれタイプ1,タイプ2,タイプ3とする。
図3,
図4,
図5は、それぞれ、基本奥行きモデルのタイプ1,タイプ2,タイプ3の立体構造の一例を示している。
【0037】
基本奥行きモデルとは画面全体の視差値を決定するためのモデルである。基本奥行きモデルは、平面上のそれぞれの画素を、
図3〜
図5に示すような非平面形状の特性が有する飛び出し方向または奥行き方向にシフトさせるテーブルまたは計算式にて構成することができる。
【0038】
合成部117は、上部高域成分評価値top_act及び下部高域成分評価値bottom_actそれぞれの値に応じて、フレームメモリ114〜116より出力されるタイプ1〜3の基本奥行きモデルを所定の合成比率で合成する。
【0039】
合成部117は、
図6に示す合成比率決定条件に従ってタイプ1〜3の基本奥行きモデルを合成する。
図6の横軸は上部高域成分評価値top_act、縦軸は下部高域成分評価値bottom_actである。
【0040】
図6に示すように、下部高域成分評価値bottom_actが所定の値bms以下であれば、合成部117は、上部高域成分評価値top_actの値にかかわらず、タイプ3の基本奥行きモデルを用いる。即ち、タイプ1,2の合成比率を0にする。
【0041】
下部高域成分評価値bottom_actが値bmsより大きく、所定の値bml以下であれば、合成部117は、上部高域成分評価値top_actの値に応じてタイプ1〜3を次のように合成する。上部高域成分評価値top_actが所定の値tps以下であれば、合成部117は、タイプ1の合成比率を0にして、タイプ2とタイプ3とを合成する。
【0042】
上部高域成分評価値top_actが値tpsより大きく、所定の値tpl以下であれば、合成部117は、タイプ1〜3を合成する。上部高域成分評価値top_actが値tplより大きければ、合成部117は、タイプ2の合成比率を0にして、タイプ1とタイプ3とを合成する。
【0043】
下部高域成分評価値bottom_actが値bmlより大きければ、合成部117は、上部高域成分評価値top_actの値に応じてタイプ1〜3を次のように合成する。上部高域成分評価値top_actが値tps以下であれば、合成部117は、タイプ1,3の合成比率を0にして、タイプ2の基本奥行きモデルを用いる。
【0044】
上部高域成分評価値top_actが値tpsより大きく、値tpl以下であれば、合成部117は、タイプ3の合成比率を0にして、タイプ1とタイプ2とを合成する。上部高域成分評価値top_actが値tplより大きければ、合成部117は、タイプ2,3の合成比率を0にして、タイプ1の基本奥行きモデルを用いる。
【0045】
合成部117によって
図6に示す合成比率決定条件に従って合成した画面全体の視差値を示すデータは、加算器119に入力される。
【0046】
複数のタイプの基本奥行きモデルを上部高域成分評価値top_act及び下部高域成分評価値bottom_actに応じて合成する構成は必須の構成ではないが、好ましい構成である。少なくとも1つのタイプの基本奥行きモデルを用いて、画面全体の視差値を示すデータを発生する構成であればよい。
【0047】
オブジェクト信号補正部128は、R信号とB信号とに基づいて補正オブジェクト信号を生成する。補正オブジェクト信号は、合成部117より出力されたデータが示す画面全体の視差値に対して付加される付加的な視差値のデータである。
【0048】
R信号を用いる理由の1つは、順光に近い環境で、かつ、画面内の明度が大きく異ならない条件で、R信号の大きさが被写体の凹凸の程度と一致する確立が高いからである。他の理由の1つは、赤色等の暖色は色彩学における前進色であり、寒色よりも奥行き方向の手前に認識されやすいからである。
【0049】
B信号を用いる理由の1つは、物理法則的一般論(空気遠近法)により、光線の散乱により遠くにあるものほど、青寄りに見えるからである。
【0050】
従って、R信号とB信号とを用いて補正オブジェクト信号を生成すれば、手前側に存在している被写体をより手前側へと補正し、奥側に存在している被写体をより奥側へと補正することが可能となる。
【0051】
図7を用いて、オブジェクト信号補正部128の具体的構成例及びその動作について説明する。
図7において、RB割合算出部280には、R信号とB信号とが入力される。
【0052】
RB割合算出部280は、式(2)に示す計算式によってR信号とB信号との割合を算出してRB_rate信号を出力する。RB_rate信号はR信号とB信号との割合を示す信号である。RB割合算出部280は、R信号とB信号とを用いて、赤色と青色との割合を示す色割合データを生成する色割合データ生成部である。
【0053】
RB_rate=(0.5×R)+{0.5×(255-B)} …(2)
【0054】
R信号とB信号をそれぞれ8ビットとし、X軸にB信号、Y軸にR信号、Z軸に式(2)で得られるRB_rate信号をとると、RB_rate信号は
図8に示すように表される。
図8では、RB_rate信号の値の大きさによってRt1〜Rt5までの5つの領域に分けている。
【0055】
式(2)より、R信号が大きければRB_rate信号の値は大きくなり、B信号が大きければRB_rate信号の値は小さくなる。従って、赤や黄のような暖色は領域Rt5に含まれ、青やシアンのような寒色は領域Rt1に含まれる。
【0056】
RB割合算出部280は、式(3)に示す計算式によって、RB_rate信号の大きさの中心を0基準に変更したRB_out信号を出力する。
【0057】
RB_out=RB_rate-128 …(3)
【0058】
RB_out信号は
図9に示すように表される。式(3)によって、
図8におけるRB_rate信号が128を超える領域Rt5側の部分はプラスとなり、128未満の領域Rt1Rt5側の部分はマイナスとなる。プラスは飛び出し方向、マイナスは引っ込み方向である。
【0059】
従って、RB_rate信号を式(3)によって
図9に示すようなRB_out信号に変換すると、赤の強い部分を手前側、青の強い部分を奥側へと配置させることができる。
【0060】
RB割合算出部280は、R信号とB信号とを用いて、暖色系が正の値、寒色系が負の値をとる色データを生成する色データ生成部である。
【0061】
RB_rate信号は画像特徴検出部281に入力され、RB_out信号は出力切換部286に入力される。画像特徴検出部281は、ヒストグラム検出部282a,282bを有する。
【0062】
一例として、ヒストグラム検出部282aは
図10に示す領域RnA
LRにおけるRB_rate信号のヒストグラムを検出し、ヒストグラム検出部282bは、
図10に示す領域RnB
CTRにおけるRB_rate信号のヒストグラムを検出する。
【0063】
図10に示す例は、1フレームまたは1フィールドである1画面の有効映像期間を水平方向4領域、垂直方向4領域の16の領域に分割している。左上側の2つの領域と右上側の2つの領域とを合わせた4つの領域を領域RnA
LRとしている。中央部の4つの領域を領域RnB
CTRとしている。領域RnA
LRの面積と領域RnB
CTRの面積とは同じであることが好ましい。
【0064】
領域RnA
LRは画面の周辺部で背景と考えられる領域であり、領域RnB
CTRは画面の中央部で注目被写体が位置すると考えられる領域である。
【0065】
図11を用いて、ヒストグラム検出部282a,282bの具体的構成例及びその動作について説明する。ヒストグラム検出部282a,282bは、判定部821,累積カウント部822,保持部823を有する。
【0066】
判定部821は、16個の判定器821a〜821pを有する。累積カウント部822は、16個の累積カウンタ822a〜822pを有する。保持部823は、16個のレジスタ823a〜823pを有する。
【0067】
RB_rate信号は、判定器821a〜821pそれぞれに入力される。RB_rate信号のレベルは0〜255の256階調である。判定器821a〜821pには、RB_rate信号が取り得るレベルを16のレベル領域に分割したそれぞれのレベル領域が設定されている。判定器821a〜821pは、それぞれ、入力されたRB_rate信号の画素毎に画素レベルが設定されているレベル領域に含まれるか否かを判定する。
【0068】
RB_rate信号を分割するレベル領域の数は16に限定されない。分割するレベル領域の数は適宜設定すればよい。
【0069】
例えば、判定器821aには、RB_rate信号のレベルとして0以上16未満が設定されており、入力されたRB_rate信号の画素レベルが0以上16未満であれば“1”を出力し、そうでなければ“0”を出力する。判定器821b〜821pも同様に、入力されたRB_rate信号の画素レベルが設定されているレベル領域に含まれていれば“1”を出力し、そうでなければ“0”を出力する。
【0070】
累積カウンタ822a〜822pは、判定器821a〜821pの出力を累積してカウントする。判定器821a〜821pのカウント値は、ヒストグラム検出部282aであれば領域RnA
LR内のそれぞれのレベル領域に含まれる画素の総数を示し、ヒストグラム検出部282bあれば領域RnB
CTR内のそれぞれのレベル領域に含まれる画素の総数を示している。
【0071】
レジスタ823a〜823pは、累積カウンタ822a〜822pがカウントしたカウント値を保持する。
【0072】
以上のようにして、ヒストグラム検出部282aは領域RnA
LRにおけるヒストグラムデータHist_Aを生成し、ヒストグラム検出部282bは領域RnB
CTRにおけるヒストグラムデータHist_Bを生成する。
【0073】
図12の(a),(b)は、それぞれ、ヒストグラムデータHist_A,Hist_Bの一例をグラフ化したものである。
図12の(a),(b)において、横軸は256階調を16分割した階調iを、縦軸は頻度を示している。領域RnA
LRでは中間階調に画像データが集中しており、領域RnB
CTRでは高階調(暖色系)に画像データが集中している。
【0074】
本実施形態では、1フレームまたは1フィールド毎にヒストグラムデータHist_A,Hist_Bを生成しているが、複数フレームまたは複数フィールド毎にヒストグラムデータHist_A,Hist_Bを生成してもよい。ヒストグラム検出部282a,282bは、画面の所定単位(時間単位)毎にヒストグラムデータHist_A,Hist_Bを生成すればよい。但し、1フレームまたは1フィールド毎にヒストグラムデータHist_A,Hist_Bを生成することが好ましい。
【0075】
図7に戻り、ヒストグラムデータHist_A,Hist_Bは中央部分布割合算出部283に入力される。中央部分布割合算出部283は、式(4)に示す計算式によって、中央部分布割合データHist_Centerを算出する。式(4)中のABSは絶対値を意味する。中央部分布割合データHist_Centerは、注目被写体が画面の周辺部(背景)を除く中央部に集中して分布している程度を示す。
【0077】
中央部分布割合データHist_Centerの値が大きいほど、領域RnA
LRと領域RnB
CTRとで、分布している色に差があるということである。中央部分布割合算出部283は、画面の周辺部である領域RnA
LRにおける色と画面の中央部である領域RnB
CTRにおける色との差の程度を検出することにより、注目被写体が中央部に分布している程度を示す中央部分布割合データを算出する。
【0078】
中央部分布割合データHist_Centerは、リーク型積分回路284に入力される。リーク型積分回路284は、
図13に示すように、加算器2841と、レジスタ2842と、乗算器2843,2844を有する。リーク型積分回路284は、
図13に示す構成によって、中央部分布割合データHist_Centerに対して、時間方向にリーク型の積分処理を施す。
【0079】
加算器2841は、入力された中央部分布割合データHist_Centerと乗算器2843の出力とを加算する。レジスタ2842は、加算器2841の出力を保持する。乗算器2843は、レジスタ2842の出力に15/16を乗算して、加算器2841へと出力する。乗算器2844は、レジスタ2842の出力に1/16を乗算して、リーク型の積分処理を施した中央部分布割合データHist_Center_Leakを出力する。
【0080】
リーク型積分回路284によって中央部分布割合データHist_Centerに対してリーク型の積分処理を施すことにより、オブジェクト信号補正部128によって生成される補正オブジェクト信号は、画像の変化によって急激には変化しない。従って、ステレオペア生成部2によって生成されるステレオペアによるステレオ画像は緩やかに変化することになり、より自然な画質とすることができる。
【0081】
リーク型積分回路284を設けることは必須ではないが、設けることが好ましい。
【0082】
リーク型積分回路284より出力された中央部分布割合データHist_Center_Leakは、ゲイン算出部285に入力される。ゲイン算出部285には、画像情報として、奥行き情報生成部1に入力される画像データの水平幅データH_widthと垂直幅データV_widthも入力される。
【0083】
ゲイン算出部285は、画面の位置に応じて、また、中央部分布割合データHist_Center_Leakの値に応じて、ゲインを算出する。
図14を用いて、画面の位置に応じたゲインの設定について説明する。
図14は、画面の水平方向の位置に応じたゲインの特性を示している。
図14の(a)〜(c)において、H_Numは水平の画素番号である。
【0084】
図14の(a)は比較のため従来におけるゲインの特性を示している。横軸の左端部が画面の左端部であり、従来は、水平方向の左端部からH_widthで示す右端部まで一定のゲイン1である。
【0085】
これに対して、本実施形態では、正側では
図14の(b)に示すゲインを用い、負側では
図14の(c)に示すゲインを用いる。
【0086】
図14の(b)に示す正側のゲインは次の式(5)で表される。Gain_Pは正側のゲインを示し、p11,p12,p13,p14は画面の水平位置を示すパラメータ、up_lim,lw_limはゲインの上限値と下限値を示すパラメータである。p11,p12,p13,p14,up_lim,lw_limはそれぞれ適宜設定すればよい。
【0087】
If(H_Num<p11) Gain_P=lw_lim;
If(H_Num<p12) Gain_P=(up_lim-lw_lim)×(H_NUM-p11)/(p12-p11)+lw_lim;
If(H_Num<p13) Gain_P= up_lim;
If(H_Num<p14) Gain_P=(up_lim-lw_lim)×(p14-H_Num)/(p14-p13)+lw_lim;
If(H_Num<H_width) Gain_P= lw_lim;
…(5)
【0088】
正側のゲインは式(5)に示す計算式によって、画面中央部により大きなゲインがかかるように重み付け補正される。画面中央部における正側のゲインは、中央部分布割合データHist_Center_Leakの値に応じて、ゲイン1から上限値up_limまでの範囲で可変される。
【0089】
画面周辺部のp11までの部分及びp14以降の部分における正側のゲインは、中央部分布割合データHist_Center_Leakの値に応じて、ゲイン1から下限値lw_limまでの範囲で可変される。
【0090】
図14の(c)に示す負側のゲインは次の式(6)で表される。Gain_Mは負側のゲインである。
【0091】
If(H_Num<p11) Gain_M=up_lim;
If(H_Num<p12) Gain_M=(up_lim-lw_lim)×(p12-H_NUM)/(p12-p11)+lw_lim;
If(H_Num<p13) Gain_M=lw_lim;
If(H_Num<p14) Gain_M=(up_lim-lw_lim)×(H_Num-p3)/(p14-p13)+lw_lim;
If(H_Num<H_width) Gain_M=up_lim;
…(6)
【0092】
負側のゲインは式(6)に示す計算式によって、画面周辺部により大きなゲインがかかるように重み付け補正される。画面周辺部のp11までの部分及びp14以降の部分における負側のゲインは、中央部分布割合データHist_Center_Leakの値に応じて、ゲイン1から上限値up_limまでの範囲で可変される。
【0093】
画面中央部における負側のゲインは、中央部分布割合データHist_Center_Leakの値に応じて、ゲイン1から下限値lw_limまでの範囲で可変される。
【0094】
図14では、画面の水平方向の位置に応じてゲインを異ならせるように設定しているが、画面の垂直方向の位置に応じてゲインを異ならせるように設定してもよい。垂直方向の位置に応じてゲインを異ならせる場合も、
図14と同様の特性とすればよい。
【0095】
画面の水平方向及び垂直方向の双方で、位置に応じてゲインを異ならせるように設定してもよい。
【0096】
領域RnB
CTRの左端部をp12、右端部をp13としてもよい。即ち、
図14での画面中央部とは、
図10に示す画面中央の領域RnB
CTRと同じでもよいし、同じでなくてもよい。画面周辺部におけるp11,p12の位置は適宜設定すればよい。
図14での画面周辺部とは、
図10に示す画面の周辺部である領域RnA
LRと同じでなくてよい。
【0097】
図15において、実線は、中央部分布割合データHist_Center_Leakの値に応じて可変される、画面中央部において直線状になっている正側のゲインと画面周辺部において直線状になっている負側のゲインを示している。一点鎖線は、中央部分布割合データHist_Center_Leakの値に応じて可変される、画面周辺部において直線状になっている正側のゲインと画面周辺部において直線状になっている負側のゲインを示している。
【0098】
図15に示すように、中央部分布割合データHist_Center_Leakの値が所定の値r11以下であれば、画面中央部における正側のゲイン及び画面周辺部における負側のゲインは1であり、画面周辺部における正側のゲイン及び画面中央部における負側のゲインも1である。この場合、正側のゲイン及び負側のゲインはいずれも画面の位置にかかわらず1となる。
【0099】
中央部分布割合データHist_Center_Leakの値が大きくになるに従って、画面中央部における正側のゲイン及び画面周辺部における負側のゲインは順次大きくなり、所定の値r12以上で上限値up_limとなり、一定となる。
【0100】
中央部分布割合データHist_Center_Leakの値が大きくになるに従って、画面周辺部における正側のゲイン及び画面中央部における負側のゲインは順次小さくなり、値r12以上で下限値lw_limとなり、一定となる。
【0101】
図14の(b)に示す正側のゲインは、RB割合算出部280によって生成された色データ(RB_out信号)における正の値に乗じるゲインである。正側のゲインは、画面の中央部において、中央部分布割合データHist_Center_Leakが大きくなるに従って大きくなる特性を有する。
【0102】
図14の(c)に示す負側のゲインは、RB割合算出部280によって生成された色データ(RB_out信号)における負の値に乗じるゲインである。負側のゲインは、画面の周辺部において、中央部分布割合データHist_Center_Leakが大きくなるに従って大きくなる特性を有する。
【0103】
図7に戻り、以上のようにして算出された正側のゲインGain_Pは乗算器288に供給され、負側のゲインGain_Mは乗算器287に供給される。
【0104】
出力切換部286は、入力されたRB_out信号が負の場合には、RB_out信号を乗算器287に供給し、RB_out信号が正の場合には、RB_out信号を乗算器288に供給する。
【0105】
乗算器287は、負のRB_out信号に対してゲインGain_Mを乗算する。乗算器288は、正のRB_out信号に対してゲインGain_Pを乗算する。加算器289は、乗算器287の出力と乗算器288の出力とを加算して、補正オブジェクト信号(補正非立体画像信号)として出力する。
【0106】
乗算器287,288及び加算器289は、色データ(RB_out信号)における正の値にゲインGain_Pを乗算し、色データ(RB_out信号)における負の値にゲインGain_Mを乗算して、両者を加算して補正非立体画像信号を出力する振幅補正部として動作している。
【0107】
オブジェクト信号補正部128より出力された補正オブジェクト信号は、正のRB_out信号に対しては
図14の(b)に示すゲインGain_Pが乗算され、負のRB_out信号に対しては
図14の(c)に示すゲインGain_Mが乗算されているので、画面中央部に位置する注目被写体を手前側に、画面周辺部の背景を奥側に補正することになる。
【0108】
以上のようにして生成された補正オブジェクト信号は、
図2の加算器119に入力される。加算器119は、合成部117より出力された画面全体の視差値を示すデータと補正オブジェクト信号とを加算して、奥行き推定データとして出力する。
【0109】
図16を用いて、本実施形態による効果について説明する。
図16において、(a)は従来の処理による擬似立体画像であり、(b)は本実施形態の処理による擬似立体画像である。
図16の(a)の擬似立体画像は、特許文献1に記載されている画面全体の視差値を示すデータに対してR信号をそのまま加算する処理による画像である。
【0110】
図16の(a),(b)は、シフト量0〜255を黒から白までのグレースケールで表現している。シフト量0は奥行き方向の視差が最大の状態、シフト量128は視差が0の状態、シフト量255は飛び出し方向の視差が最大の状態である。
【0111】
図16の(a),(b)は、画面の中央部に注目被写体(象の画像)が存在しており、注目被写体の周囲が背景となっている画像の例である。この画像の場合には、合成部117において基本奥行きモデルのタイプ1が選択される。従って、注目被写体は基本奥行きモデルが示す視差値によって奥行き方向へと移動してしまう。従来では、
図16の(a)に示すように、注目被写体の立体の程度が限定的である。
【0112】
これに対して、本実施形態によれば、オブジェクト信号補正部128によって生成した補正オブジェクト信号によって、注目被写体が手前側(飛び出し側)、背景が奥側となるように、個別に重み付けしている。
【0113】
従って、
図16の(b)に示すように、注目被写体の飛び出し方向へのシフト量が大きくなり、注目被写体と背景との分離感が向上し、立体効果が大きく改善されていることが分かる。
【0114】
本実施形態によれば、画面の中央部に注目被写体が存在している程度に応じて画面中央部を飛び出させ、画面周辺部を引っ込ませることができ、画像の絵柄に応じて適切な飛び出し及び引っ込みの程度とすることができる。
【0115】
以上説明した本実施形態においては、ステレオペア生成部2が2視点の画像データを生成し、ステレオ画像表示装置3が2視点の画像データに基づいて立体画像を表示する構成を示している。3視点以上の画像データを生成し、3視点以上の画像データに基づいて立体画像を表示するいわゆる多視点画像表示装置によって立体画像を表示してもよい。
【0116】
ステレオ画像表示装置3は、偏光めがねを用いたプロジェクションシステム、時分割表示と液晶シャッタめがねとを組み合わせたプロジェクションシステムもしくはディスプレイシステム、レンチキュラ方式のステレオディスプレイ、アナグリフ方式のステレオディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ等のいずれでもよい。
【0117】
プロジェクタシステムは、ステレオペアのそれぞれの画像データを投射する2台のプロジェクタで構成することができる。
【0118】
本実施形態の奥行き情報生成装置または擬似立体画像生成装置をハードウェアによって構成してもよいし、コンピュータプログラムによるソフトウェアによって構成してもよい。
【0119】
コンピュータに以上説明した奥行き情報生成装置及び方法、や似立体画像生成装置及び方法と同様の処理を実行させる場合、奥行き情報生成プログラムや擬似立体画像生成プログラムを記録媒体より読み出してコンピュータにインストールさせてもよいし、奥行き情報生成プログラムや擬似立体画像生成プログラムを、ネットワークを介してコンピュータにインストールさせてもよい。
【0120】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。