【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1に係る蓄電装置100の断面図である。蓄電装置100は、ケース4と、積層型の電極組立体2と、タブ26,46と、正極用導電部材である第1導電部材45及び第2導電部材44と、負極用導電部材である第3導電部材24と、正極電極端子30と、負極電極端子10と、第1電圧端子70と、第2電圧端子82と、絶縁性のガスケット22,42と、電流遮断装置50とを備えている。電極組立体2は、シート状の正極、負極、及びセパレータを備えている。正極は、正極活物質層と正極金属箔とを含む。負極は、負極活物質層と負極金属箔とを含む。セパレータは、正極と負極との間に挟まれてそれぞれを分離する。電極組立体2は、正極、セパレータ、負極が層状にこの順序でそれぞれ多数積層された積層体であり、液状の電解質が含浸されている。
【0025】
ケース4は略直方体形状の箱型部材であり、内部に電極組立体2(タブ26,46を含む)と、第1導電部材45と、第2導電部材44と、第3導電部材24と、ガスケット22,42と、電流遮断装置50とを収容している。ケース4の上端面には、正極電極端子30と、負極電極端子10と、第1電圧端子70とが設けられている。第2電圧端子82は、ケース4の外側に配置されている。電極組立体2の複数の正極金属箔の一端から突出したタブ46が束ねられており、同様に、複数の負極金属箔の一端から突出したタブ26が束ねられている。電極組立体2は、絶縁性のフィルムによって覆われており、タブ46,26において、絶縁性のフィルムから突出している。
【0026】
負極電極端子10は、ボルト14と、内側ナット12と、外側ナット16を備えている。負極電極端子10が配置される位置において、ケース4の上端面には貫通孔が形成されており、その貫通孔にガスケット22が取り付けられている。内側ナット12は、第3導電部材24に形成された貫通孔を貫通して、ガスケット22に取り付けられている。ボルト14は、シール座金を介して、内側ナット12に締結されている。第3導電部材24は、内側ナット12とガスケット22に挟持されている。すなわち、第3導電部材24と内側ナット12とは第4接続部24bにおいて接触しており、電気的に接続されている。ガスケット22は、ケース4の上端面に当接しながらタブ26に向かって平板状に伸びる延伸部を備えている。第3導電部材24の上面は、ガスケット22の延伸部の下面に当接している。なお、負極電極端子10の外側ナット16は、負極電極端子10と配線部材との結線に用いられる。第2電圧端子82は、圧着端子であり、外側ナット16によって負極電極端子10に固定されている。
【0027】
正極電極端子30は、ボルト34と、内側ナット32と、外側ナット36を備えている。正極電極端子30が配置される位置において、ケース4の上端面には貫通孔が形成されており、その貫通孔にガスケット42が取り付けられている。内側ナット32は、第2導電部材44に形成された貫通孔を貫通して、ガスケット42に取り付けられている。ボルト34は、シール座金を介して、内側ナット32に締結されている。第2導電部材44は、内側ナット32とガスケット42に挟持されている。ガスケット42は、ケース4の上端面に当接しながら平板状にタブ46に向かって伸びる延伸部を備えている。第1導電部材45のタブ46側の平面部の上面は、ガスケット42の延伸部の下面に当接している。なお、正極電極端子30の外側ナット36は、正極電極端子30と配線部材との結線に用いられる。蓄電装置100は、電極組立体2とケース4の外部とで、正極電極端子30、及び負極電極端子10を介して相互に電気の授受が可能である。
【0028】
タブ26,46は、電極組立体2からケース4の上端面に向けて伸び、途中で
図1の紙面の表側に向かって屈曲して、ケース4の上端面に略平行な平坦部を有する形状に形成されている。
【0029】
図1に示すように、第3導電部材24は、平板状の導電性部材である。第3導電部材24は、ケース4の上端面に対して略平行に伸びている。第3導電部材24とタブ26は、第3接続部24aにおいて溶接によって固定されている。このように、電極組立体2の負極から負極電極端子10までの負極通電経路は、この順で直列に接続されたタブ26と,第3導電部材24とによって電気的に接続されている。第3導電部材24と、ケース4の上端面との間に、ガスケット22が設けられており、これによって第3導電部材24とケース4とは絶縁されている。
【0030】
図1に示すように、第1導電部材45は、タブ46から電流遮断装置50に向かってケース4の上端面に対して略平行に伸びたのち、ケース4の下方に湾曲して、電流遮断装置50の下方において、再度、ケース4の上端面に略平行に伸びている。第1導電部材45とタブ46は、第1接続部45aにおいて溶接によって固定されている。電流遮断装置50は、その下面側において第1導電部材45と接しており、その上面側において第2導電部材44と接している。つまり、電流遮断装置50は、第1導電部材45と接合された接合部を有し、この接合部が第2接続部45bである。
【0031】
第2導電部材44は、平板状の導電性部材であり、ケース4の上端面に対して略平行に伸びている。正極電極端子30と電流遮断装置50は、第1導電部材44を介して電気的に接続されている。このように、電極組立体2の正極から正極電極端子30までの正極通電経路は、この順で直列に接続されたタブ46と、第1導電部材45と、電流遮断装置50と、第2導電部材44とによって電気的に接続されている。なお、第1導電部材45と、ケース4の上端面との間に、ガスケット42が設けられており、これによって第1導電部材45及び第2導電部材44とケース4とは絶縁されている。
【0032】
図2に示すように、電流遮断装置50は、金属製のダイアフラム56と、支持部材52とを備えている。ダイアフラム56は、中央部56a及び両端部56b,56cにおいて平坦であり、中央部56aから両端部56b,56cに向かって一部湾曲しながら斜め上方に伸びている。ダイアフラム56は、両端部56b,56cにおいて第2導電部材44に接合するとともに、中央部56aにおいて第1導電部材45と接合している。ダイアフラム56の中央部56aと第1導電部材45は、互いに接合する第2接続部45bにおいて溶接によって固定されている。支持部材52が、ダイアフラム56と第1導電部材45を支持している。ダイアフラム56の両端部56b,56cと第1導電部材45との間には絶縁性の支持部材52が存在している。第1導電部材45には、第2接続部45bの近傍において、刻印部55が形成されている。刻印部55においては、第1導電部材45の厚さが薄くなっている。
【0033】
ケース4内の圧力が所定値より低い場合には、
図2に示すように、ダイアフラム56の中央部56aは第1導電部材45の方向に突出している。第1導電部材45と第2導電部材44がダイアフラム56を介して電気的に接続されており、正極電極端子30と電極組立体2の正極との正極通電経路が接続されている。
【0034】
ケース4内の圧力が所定値以上に上昇すると、
図3に示すように、刻印部55が破断し、ダイアフラム56が変形して中央部56aが反転し、第1導電部材45から離れる方向に突出する。これによって、ダイアフラム56と第1導電部材45が非導通となり、第1導電部材45と第2導電部材44が非導通となって、正極電極端子30と電極組立体2の正極との正極通電経路が遮断される。
【0035】
第1電圧端子70は、突出部72と、ナット76とを備えている。
図1及び
図4に示すように、突出部72は、第1導電部材45と一体に形成されており、突出部72の下端72aは、第1導電部材45の上面に固定されている。すなわち、突出部72は、第1電圧端子70から第1導電部材45に亘って設けられており、第1電圧端子70は、第1接続部45aと第2接続部45bとの間に接続されている。第1電圧端子70が配置される位置において、ケース4の上端面及びガスケット42には、それぞれ貫通孔4a,42aが形成されており、貫通孔4a,42aに、ケース4の内側から外側に向けて突出部72が挿入されている。突出部72の外表面には、ねじ溝が形成されており、ナット76を締結することができる。これによって、第1電圧端子70及び第1導電部材45がケース4及びガスケット42に対して固定される。なお、第1電圧端子70のナット76によって、第1電圧端子70を電圧監視ユニットに接続するための配線部材80がケース4の外側に結線される。つまり、第1電圧端子70は、電圧監視ユニットに接続可能である。また、負極電極端子10の外側ナット16によって、第2電圧端子82を電圧監視ユニットに接続するための配線部材がケース4の外側に結線される。つまり、第2電圧端子82は、電圧監視ユニットに接続可能である。
【0036】
図5は、実施例1に係る蓄電装置モジュール200の回路図である。蓄電装置モジュール200は、電圧監視ユニット210と、蓄電ユニット220と、電力負荷230とを備えている。
【0037】
蓄電ユニット220は、直列に接続された蓄電装置100を複数有している。それぞれの蓄電装置100(最も低電位側に配置された1つの蓄電装置を除く)の負極電極端子10は、隣接する蓄電装置100の正極電極端子30に、バスバー等の電流容量が比較的高い配線部材によって接続されている。複数の蓄電装置100のうち、最も高電位側に配置された蓄電装置100の正極電極端子30と、最も低電位側に配置された蓄電装置100の負極電極端子10は、車両等の電力負荷230に接続されている。バスバー等の配線部材は、外側ナット36,16によって、正極電極端子30、負極電極端子10に固定される。
【0038】
電圧監視ユニット210は、アナログ/デジタル変換部(A/D変換部)211と、マルチプレクサ(MUX)212とを備えている。
【0039】
それぞれの蓄電装置100において、正極の電圧を検知するための第1電圧端子70は、電流遮断装置(CID)50と正極との間に接続しており、負極の電圧を検知するための第2電圧端子82は、負極電極端子10に接続している。なお、第1電圧端子70及び第2電圧端子82を流れる電流値は、正極電極端子30及び負極電極端子10を流れる電流値の1/1000以下であるため、第1電圧端子70及び第2電圧端子82、またはこれらに接続する配線部材としては、圧着端子等の電流容量が比較的小さい配線部材を用いることができる。
【0040】
MUX212は、複数の蓄電装置100の第1電圧端子70および第2電圧端子82(負極電極端子10に接続されている)に接続されており、複数の蓄電装置100の第1電圧端子70および第2電圧端子82からの入力信号を処理して、1つの出力信号をアナログ/デジタル変換部(A/D変換部)211に出力する。A/D変換部211は、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、表示装置(図示しない)等に出力信号213を出力する。
【0041】
比較のため、従来の蓄電装置モジュール800の回路図を
図8に示す。蓄電装置モジュール800は、電圧監視ユニット810と、蓄電ユニット820と、電力負荷230とを備えている。蓄電ユニット820は、直列に接続された複数の蓄電装置700を有している。A/D変換部811及びMUX812は、A/D変換部211及びMUX212と同様であり、A/D変換部811は、MUX812から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、出力信号813を出力する。
【0042】
従来の蓄電装置700は、第1電圧端子70を備えていない。このため、電圧監視ユニット810の正極側の入力は、正極電極端子30に接続される。それぞれの蓄電装置700において、正極の電圧を検知するための電圧端子は、電流遮断装置(CID)を介して正極と接続している。
【0043】
このため、複数の蓄電装置700のうちのいずれかに含まれる電流遮断装置50が作動し、正極通電経路を遮断すると、蓄電ユニット820全体の出力電圧とほぼ同程度の高電圧が印加される。すなわち、電圧監視ユニット810に高電圧が印加されて、電圧監視ユニット810の破壊の要因となる。
【0044】
上記のとおり、蓄電装置100では、電流遮断装置50が設置されている第1電極(正極)側において、電圧監視ユニット210に接続される第1電圧端子70は、電流遮断装置50よりも第1電極により近い、第1導電部材45に接続されている。このため、蓄電装置100を直列に接続した蓄電ユニット220と、電圧監視ユニット210とを備えた蓄電装置モジュール200では、電流遮断装置50が作動して蓄電ユニット220を流れる電流が遮断されても、第1電圧端子70と正極との接続が維持され、電圧監視ユニット210に高電圧が印加されることがない。蓄電装置100を用いて構成した蓄電ユニット220を用いれば、電圧監視ユニットの構造を変えることなく、電流遮断装置50の作動時に電圧監視ユニットが破壊されないようにすることができる。すなわち、従来の蓄電装置モジュール800の蓄電ユニット820の各蓄電装置を蓄電装置100に置き換えれば、電圧監視ユニット810の入力端子の接続を変更するだけで、装置を追加または改造等を行わずそのまま利用して、電流遮断装置50の作動時に電圧監視ユニットが破壊されない蓄電装置モジュール200を得ることができる。
【0045】
また、蓄電装置100では、電流遮断装置50が作動しても、第1電圧端子70と正極との電気的接続は維持されるため、第1電圧端子70と負極電極端子10とを用いて、電極組立体2を放電させることが可能となる。
【0046】
また、蓄電装置100では、第1電圧端子70の突出部72は、第1導電部材45と一体に形成されているため、突出部72をケース4に対して固定することによって、第1導電部材45とケース4との位置決めを容易に行うことができる。
【0047】
また、蓄電装置100では、一般に用いられている配線部材を第2電圧端子82として用いて、ケース4の外側で負極電極端子10に接続しているため、低コストである点において有利である。
【0048】
(変形例)
図6に示すように、第1電圧端子70においては、突出部372は、第1導電部材345と別部材であってもよい。突出部372は、頭部372aを備えたボルト形状の部材であり、第1導電部材345に設けられた貫通孔によって第1導電部材345に固定されていてもよい。また、突出部372が第1導電部材345の貫通孔に通された状態で、突出部372と第1導電部材345とを溶接や接着等によって固定してもよい。
【0049】
また、
図7に示すように、第1電圧端子470と第1導電部材445がケース4の平面方向に離れて設置されており、ケース4内で配線478によって接続されていてもよい。第1電圧端子470は、ケース4及びガスケット442を貫通する突出部472と、ナット476を備えており、突出部472のケース4内に位置する部分に、配線478の第1端部478aが溶接によって固定されている。実施例1と同様に、タブ446は、屈曲されており、その上面において第1導電部材445と接している。タブ446と第1導電部材445には貫通孔(図示しない)が設けられており、貫通孔に部材447が挿入されている。屈曲されたタブ446の下面と、部材447との間に、配線478の第2端部478bが挟持されており、互いに溶接によって固定されている。ナット476とケース4によって、電圧監視ユニットに接続する配線部材480が挟持されている。
【0050】
また、蓄電装置100は、上記に説明した種々の第1電圧端子と同様の形態を有する第2電圧端子を有していてもよく、これによって、ケース4と第3導電部材24とを固定する等の上記と同様の作用効果を得ることができる。ケース4を貫通する第2電圧端子を設ける場合には、対になる第1電圧端子と同様の形態を有していることが好ましい。第1電圧端子の部品と第2電圧端子の部品の一部または全部を共通化することができ、コスト面等において有利である。
【0051】
なお、上記の実施例では、電流遮断装置を設置する第1極性の電極が正極であり、第2極性の電極が負極である場合を例示して説明したが、逆であってもよい。すなわち、上記の実施例では、電流遮断装置及び第1電圧端子を正極通電経路上に配置したが、その逆に、負極通電経路上に配置してもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態及び実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0053】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。