(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ばね受け部材は、前記2つのばねにて挟持されるばね受け板部(340)と、前記ばね受け板部の一端側から前記ロッドの軸方向に沿って延びる円筒状のばね受け第1筒部(343)と、前記ばね受け板部の他端側から前記ロッドの軸方向に沿って延びる円筒状のばね受け第2筒部(344)とを備え、
前記ばね受け第1筒部内に前記2つのばねのうち一方のばねの端部が挿入され、前記ばね受け第2筒部内に前記2つのばねのうち他方のばねの端部が挿入されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電磁弁。
前記アーマチャは、前記2つのばねのうち前記アーマチャ側のばねの端部が挿入される凹部(220)を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電磁弁。
【背景技術】
【0002】
従来、ノーマリーオープン型の電磁弁において、通電量に応じた磁気吸引力を駆動手段に発生させ、磁気吸引力とばね荷重と流体力との釣り合いによって弁体の位置を制御して、流体の圧力を制御するものが知られている。
【0003】
このノーマリーオープン型の電磁弁では、全開状態から駆動手段に通電開始した際の流体の圧力変化量を小さくするために、通電開始時のばね荷重を小さくし、一方、弁開度が小さい状態から駆動手段への通電を停止した際に、摺動抵抗に抗して確実に開弁させるために、磁気吸引力が大きい作動領域(すなわち、ノーマリーオープン型の電磁弁においては、弁開度が小さい作動領域)ではばね荷重を大きくするのが望ましい。
【0004】
そして、ノーマリーオープン型の電磁弁のこのような要求は、磁気吸引力が小さい作動領域ではばね定数を小さくし、磁気吸引力が大きい作動領域ではばね定数を大きくすることにより、達成することができる。
【0005】
一方、ノーマリークローズ型の電磁弁において、通電量に応じた磁気吸引力を駆動手段に発生させ、磁気吸引力とばね荷重と流体力との釣り合いによって弁体の位置を制御して、流体の圧力を制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、この電磁弁は、弁体の位置に応じてばね定数を変化させるようにしている。具体的には、2つのばねを直列に配置し、2つのばねの間にばね受け部材を配置している。そして、磁気吸引力が小さい作動領域(すなわち、ノーマリークローズ型の電磁弁においては、弁開度が小さい作動領域)では、ばね受け部材が係止部に係止されていて、一方のばねのみが撓んでそのばねのばね荷重のみがアーマチャに作用し、磁気吸引力が大きい作動領域(すなわち、ノーマリークローズ型の電磁弁においては、弁開度が大きい作動領域)では、ばね受け部材が係止部から離れて、2つのばねがともに撓んでそれらの合成ばね荷重がアーマチャに作用するようになっている。
【0007】
そして、2つのばねを直列に配置しているため、ばね受け部材が係止部から離れたときの2つのばねの合成ばね定数は、一方のばねのばね定数よりも小さくなる。換言すると、磁気吸引力が小さい作動領域ではばね定数が大きく、磁気吸引力が大きい作動領域ではばね定数が小さくなる。
【0008】
また、他の具体例では、2つのばねを並列に配置し、磁気吸引力が小さい作動領域では、一方のばねのばね荷重のみがアーマチャに作用し、磁気吸引力が大きい作動領域では、2つのばねのばね荷重がともにアーマチャに作用するようになっている。
【0009】
したがって、磁気吸引力が小さい作動領域ではばね定数が小さく、磁気吸引力が大きい作動領域ではばね定数が大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された2つのばねを直列に配置した電磁弁では、磁気吸引力が小さい作動領域ではばね定数が大きく、磁気吸引力が大きい作動領域ではばね定数が小さくなる。
【0012】
したがって、2つのばねを直列に配置する構成をノーマリーオープン型の電磁弁に適用しても、ノーマリーオープン型の電磁弁における上記した要求(すなわち、通電開始時のばね荷重を小さくし、磁気吸引力が大きい作動領域ではばね荷重を大きくすること)を達成することができない。
【0013】
一方、特許文献1に記載された2つのばねを並列に配置した電磁弁では、磁気吸引力が小さい作動領域ではばね定数が小さく、磁気吸引力が大きい作動領域ではばね定数が大きくなるため、2つのばねを並列に配置する構成をノーマリーオープン型の電磁弁に適用した場合、ノーマリーオープン型の電磁弁の上記した要求を達成することができる。しかしながら、ばねを並列に設置するため、磁極面が小さくなり、発生磁気吸引力が小さくなるという問題が生じる。
【0014】
本発明は上記点に鑑みて、ノーマリーオープン型の電磁弁において、磁極面が小さくなることを回避しつつ、通電開始時のばね荷重を小さくし、磁気吸引力が大きい作動領域ではばね荷重を大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、磁気回路を構成するとともに、ハウジング孔(102)および流体が流れる流体通路(16)を有するハウジング(10)と、ハウジング孔内に配置されたスリーブ(12)と、スリーブ内に摺動自在に挿入されたロッド(14)と、ハウジングに一体化されるとともに、流体通路と連通する流体通路孔(180)および流体通路孔の開口部を囲む弁座(181)を有するバルブボデー(18)と、ロッドの一端に接合されて流体通路孔の開度を変化させる弁体(20)と、ロッドの他端に接合され、磁気吸引力を受けて作動するアーマチャ(22)と、通電量に応じた磁気吸引力を発生してアーマチャを閉弁向きに駆動する駆動手段(10、24、30、32)と、磁気吸引力に対抗する向きにアーマチャを付勢するばね手段(34、36、38)とを備え、磁気吸引力と、ばね手段のばね荷重と、流体が弁体に及ぼす流体力との釣り合いによって弁体の位置を制御し、駆動手段に通電されていないときには流体通路孔が全開となる電磁弁において、ばね手段は、スリーブとアーマチャとの間で且つロッドの軸方向に沿って直列に配置された圧縮コイルばねよりなる2つのばね(36、38)と、2つのばねの間に配置され、弁体の位置が中間位置よりも全閉位置側に近い作動領域でスリーブまたはアーマチャに当接するばね受け部材(34)とを備え、弁体の位置が中間位置よりも全開位置側に近い作動領域では、アーマチャの移動に伴って2つのばねの撓み量がともに変化し、弁体の位置が中間位置よりも全閉位置側に近い作動領域では、ばね受け部材がスリーブまたはアーマチャに当接することにより、2つのばねのうち一方のばねの撓み量が変化しないように構成されていることを特徴とする。
【0016】
これによると、2つのばねを直列に配置しているため、2つのばねを並列に配置する場合と比較して磁極面が大きくなる。また、弁体の位置が中間位置よりも全開位置側に近い作動領域では、直列に配置された2つのばねの撓み量がともに変化するため合成ばね定数が小さくなり、弁体の位置が中間位置よりも全閉位置側に近い作動領域では、2つのばねのうち一方のばねの撓み量が変化しないためばね定数が大きくなる。
【0017】
したがって、ノーマリーオープン型の電磁弁において、磁極面が小さくなることを回避しつつ、通電開始時のばね荷重を小さくし、磁気吸引力が大きい作動領域ではばね荷重を大きくすることができる。
【0018】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係る電磁弁は、圧縮着火式内燃機関用蓄圧式燃料噴射装置において、コモンレール内の高圧燃料を低圧部に排出する流路を開閉してコモンレール内の燃料圧力を制御する電磁弁として用いられる。
【0021】
図1〜3に示すように、電磁弁は、磁性体金属製で磁気回路を形成する円筒状のハウジング10を備えている。ハウジング10には、円筒状のハウジング第1筒部100と円筒状のハウジング第2筒部101とが、軸方向に連続して形成されている。
【0022】
ハウジング第1筒部100には、その径方向中心部に円柱状空間のハウジング第1孔102が形成されている。ハウジング第2筒部101には、ハウジング第1孔102よりも内径が大きい円柱状空間のハウジング第2孔103が形成されている。
【0023】
ハウジング第1孔102内には、ステンレス等の非磁性体金属よりなる円筒状のスリーブ12が配置されている。スリーブ12内には、磁性体金属よりなる円柱状のロッド14が摺動自在に挿入されている。
【0024】
スリーブ12は、ハウジング第1孔102よりも短くなっており、ハウジング第1孔102における軸方向中間部に位置している。これにより、ハウジング第1孔102の空間のうち、スリーブ12よりもハウジング第2孔103側の空間は、後述するばね受け部材34等が収容される収容部として機能し、スリーブ12よりも反ハウジング第2孔側の空間は、燃料が流通する流体通路16として機能する。流体通路16は、図示しない燃料タンクに接続される。
【0025】
ハウジング第1筒部100の端部には、円筒状のバルブボデー18がかしめにより固定されている。このバルブボデー18には、その径方向中心部に、流体通路16と連通する流体通路孔180が形成されている。また、バルブボデー18には、流体通路16側の面に、流体通路孔180を囲むテーパ状の弁座181が形成されている。流体通路孔180は、図示しないコモンレールに接続される。
【0026】
ロッド14におけるバルブボデー18側の端部には、金属よりなる球状の弁体20が接合されている。弁体20は、ロッド14とともにロッド14の軸方向に移動することにより、流体通路孔180の開度(以下、弁開度という)を変化させるようになっている。
【0027】
ロッド14における反バルブボデー側の端部には、磁性体金属製で磁気回路を形成する円筒状のアーマチャ22が接合されている。アーマチャ22は、ハウジング第2孔103内に配置されている。アーマチャ22には、後述するばねの端部が挿入される凹部220が形成されている。
【0028】
アーマチャ22におけるハウジング第1筒部100に対向する面であるアーマチャ磁極面221と、ハウジング第1筒部100におけるアーマチャ22に対向する面であるハウジング磁極面104との間に、エアギャップGが形成されている。
【0029】
そして、磁気吸引力によりアーマチャ22がハウジング磁極面104側に吸引され、アーマチャ22とともにロッド14および弁体20がバルブボデー18側に移動するようになっている。換言すると、磁気吸引力によりアーマチャ22がハウジング磁極面104側に吸引されると、弁開度が小さくなるように構成されている。
【0030】
以下、本明細書では、ロッド14、弁体20、およびアーマチャ22を一括して、可動部材14、20、22という。
【0031】
ハウジング第2筒部101内には、磁性体金属製で磁気回路を形成する有底円筒状のステータコア24がアーマチャ22に対向して配置されている。そして、ハウジング10とステータコア24は、ステンレス等の非磁性体金属よりなるリング状のカラー26を介して溶接にて気密的に接合されている。
【0032】
カラー26は、ハウジング10とステータコア24との間の磁束の流れを制限するものであり、より詳細には、カラー26の内周面の一部がアーマチャ22の外周面に対向しており、アーマチャ22をバイパスしてハウジング10とステータコア24間で流れる磁束を抑制する。
【0033】
ステータコア24の底部には、ロッド14に対向してストッパ28が配置されている。そして、ロッド14がストッパ28に当接することにより、可動部材14、20、22のステータコア24側への移動範囲が規制される。
【0034】
ハウジング第2筒部101内で且つステータコア24の外周側には、通電時に磁界を形成する円筒状のコイル30が配置されている。また、ハウジング第2筒部101の端部には、磁性体金属製で磁気回路を形成する円板状のリテーニングナット32が螺合されている。なお、ハウジング10、ステータコア24、コイル30、およびリテーニングナット32は、本発明の駆動手段を構成している。
【0035】
ハウジング第1孔102の空間のうち、スリーブ12よりもハウジング第2孔103側の空間には、非磁性体金属または樹脂よりなる円筒状のばね受け部材34、圧縮コイルばねよりなる第1ばね36、および圧縮コイルばねよりなる第2ばね38が配置されている。ばね受け部材34は、ハウジング第1筒部100に対して摺動自在である。また、第1ばね36および第2ばね38は、スリーブ12とアーマチャ22との間で且つロッド14の軸方向に沿って直列に配置されている。
【0036】
そして、第1ばね36および第2ばね38により、弁開度が大きくなる向き(すなわち開弁向き)に可動部材14、20、22が付勢されている。したがって、この電磁弁は、ノーマリーオープン型の電磁弁である。なお、ばね受け部材34、第1ばね36、および第2ばね38は、本発明のばね手段を構成している。
【0037】
ばね受け部材34は、第1ばね36および第2ばね38にて挟持される平板状のばね受け板部340を備えている。
【0038】
ばね受け板部340には、その径方向中心部に、ロッド14が摺動自在に挿入されるばね受け板部孔341が形成されている。
【0039】
また、ばね受け板部340には、その内周部に、ロッド14が挿入された状態でばね受け板部340よりもスリーブ12側の空間とばね受け板部340よりもアーマチャ22側の空間とを連通させる連通路342が形成されている。連通路342は、ばね受け板部340の周方向に沿って等間隔に3つ配置されている。
【0040】
そして、流体通路16とアーマチャ22が配置された空間は、ロッド14とスリーブ12のすき間、および連通路342を介して連通し、連通路342の通路面積は、ロッド14とスリーブ12のすき間の通路面積よりも大きく設定されている。これにより、流体通路16とアーマチャ22が配置された空間との間で燃料が容易に移動可能になるため、アーマチャ22が作動する際の流体抵抗を小さくすることができる。
【0041】
また、ばね受け部材34は、ばね受け板部340における外周側で且つスリーブ12側の端面からロッド14の軸方向に沿って且つスリーブ12側に向かって延びる円筒状のばね受け第1筒部343と、ばね受け板部340におけるアーマチャ22側の端面からロッド14の軸方向に沿って且つアーマチャ22側に向かって延びる円筒状のばね受け第2筒部344とを備えている。
【0042】
第1ばね36は、少なくともその一部がばね受け第1筒部343に挿入され、一端側端面がばね受け板部340に当接し、他端側端面がスリーブ12に当接している。そして、第1ばね36は、ばね受け第1筒部343とロッド14とによってばね径方向の位置決めがなされている。
【0043】
第2ばね38は、その一部がばね受け第2筒部344に挿入され、一端側端面がばね受け板部340に当接し、他端側端部がアーマチャ22の凹部220に挿入されている。そして、第2ばね38は、第2筒部344と凹部220とロッド14とによってばね径方向の位置決めがなされている。
【0044】
図1に示すように、ロッド14がストッパ28に当接した状態では、弁体20は弁座181から最も離れていて流体通路孔180が全開になっており、弁開度が最大になっている。そして、弁体20の位置が中間位置よりも全開位置側に近い作動領域では、ばね受け第1筒部343の先端はスリーブ12に当接しないようになっている。
【0045】
また、
図4に示すように、弁体20の位置が中間位置よりも全閉位置側に近い作動領域では、ばね受け第1筒部343の先端がスリーブ12に当接するようになっている。
【0046】
ばね受け第2筒部344の先端とアーマチャ22は、弁体20の位置に拘わらず当接しないようになっている。
【0047】
次に、本実施形態に係る電磁弁の作動を説明する。
【0048】
可動部材14、20、22は、第1ばね36および第2ばね38のばね荷重により開弁向きに付勢されるとともに、コモンレール内の高圧燃料が弁体20に及ぼす流体力によって開弁向きに付勢される。
【0049】
また、可動部材14、20、22は、コイル30に通電しているときには、アーマチャ磁極面221とハウジング磁極面104との間に発生する磁気吸引力によって閉弁向きに付勢される。
【0050】
ここで、ハウジング10とロッド14との間の磁束の流れが、非磁性体製のスリーブ12によって抑制されるため、アーマチャ磁極面221とハウジング磁極面104との間の磁束密度を高めて、磁気吸引力を大きくすることができる。
【0051】
そして、コイル30に通電されていないとき、すなわち磁気吸引力が発生していないときには、ばね荷重および流体力により、可動部材14、20、22は全開位置に駆動される。このときには、流体通路孔180は全開であり、コモンレール内の高圧燃料は流体通路孔180や流体通路16を介して燃料タンクに排出されるが、コモンレール内の燃料圧力(以下、レール圧という)が例えば20MPa程度に維持されるように、流体通路孔180の通路面積が設定されている。
【0052】
かかる状態からコイル30に通電すると磁気吸引力が発生し、ばね荷重および流体力に抗して、可動部材14、20、22が閉弁向きに駆動される。そして、コイル30に供給される電流の増加に伴って弁開度が漸減してレール圧が漸増する。
【0053】
ここで、第1ばね36のばね定数をk1、第2ばね38のばね定数をk2、第1ばね36および第2ばね38の合成ばね定数をKとすると、弁開度が大きい作動領域(すなわち、磁気吸引力が小さく、弁体20の位置が中間位置よりも全開位置側に近い作動領域)では、ばね受け第1筒部343の先端はスリーブ12に当接しないため、直列に配置された第1ばね36および第2ばね38の撓み量がともに変化し、K=(k1/k1+k2)・k2、となる。
【0054】
一方、弁開度が小さい作動領域(すなわち、磁気吸引力が大きく、弁体20の位置が中間位置よりも全閉位置側に近い作動領域)では、ばね受け第1筒部343の先端がスリーブ12に当接してばね受け部材34の移動が規制され、第1ばね36の撓み量は変化しないため、第2ばね38の撓み量のみが変化し、K=k2、となる。
【0055】
そして、(k1/k1+k2)<1であるため、弁開度が大きい作動領域では合成ばね定数Kが小さくなり、弁開度が小さい作動領域では合成ばね定数Kが大きくなる。これにより、
図5に示すように、弁開度が全開から中間開度に変化する過程ではばね荷重は緩やかに増加し、弁開度が中間開度から全閉に変化する過程ではばね荷重は急激に増加する。換言すると、弁開度が大きい作動領域ではばね荷重が小さく、弁開度が小さい作動領域ではばね荷重が大きくなる。
【0056】
なお、k1=k2としてもよいし、k1≠k2でもよい。因みに、k1=k2とした場合は、弁開度が大きい作動領域では、K=1/2・k2、となる。
【0057】
図6は、コイル30に供給される電流をステップ状に増加させた場合のレール圧の変化を示している。この
図6において、実線は本実施形態に係る電磁弁のレール圧変化を示し、破線はばねを1本用いた従来の電磁弁のレール圧変化を示している。
【0058】
この
図6に示すように、コイル30に供給される電流をステップ状に増加させた場合、レール圧は、ある時点で上昇を開始し、その後ステップ状に漸増する。そして、本実施形態に係る電磁弁は、通電開始時(すなわち、全開時)のばね荷重が小さいため、レール圧の上昇開始時の圧力変化量が小さくなる。具体的には、本実施形態に係る電磁弁は、レール圧の上昇開始時の圧力変化量を、従来の電磁弁と比較して60%低減することができる。
【0059】
一方、磁気吸引力が大きく弁開度が小さい作動領域でのばね荷重は大きいため、磁気吸引力が大きい作動状態のときにコイル30への通電を停止した際に、摺動抵抗に抗して確実に開弁させることができる。
【0060】
上記のように、本実施形態では、第1ばね36および第2ばね38を直列に配置しているため、2つのばねを並列に配置する場合と比較して、アーマチャ磁極面221およびハウジング磁極面104を大きくすることができる。また、弁体20の位置が中間位置よりも全開位置側に近い作動領域では合成ばね定数Kを小さく、弁体20の位置が中間位置よりも全閉位置側に近い作動領域では合成ばね定数Kを大きくすることができる。
【0061】
したがって、ノーマリーオープン型の電磁弁において、アーマチャ磁極面221およびハウジング磁極面104が小さくなることを回避しつつ、通電開始時のばね荷重を小さくし、磁気吸引力が大きい作動領域ではばね荷重を大きくすることができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、ハウジング10とバルブボデー18を別部材として形成した後に一体化したが、ハウジング10とバルブボデー18を1つの部材として形成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ばね受け第1筒部343の先端とスリーブ12は、弁体20の位置が中間位置よりも全開位置側に近い作動領域では当接せず、弁体20の位置が中間位置よりも全閉位置側に近い作動領域では当接し、一方、ばね受け第2筒部344の先端とアーマチャ22は、弁体20の位置に拘わらず当接しないようにしたが、ばね受け第1筒部343の先端とスリーブ12が、弁体20の位置に拘わらず当接せず、一方、ばね受け第2筒部344の先端とアーマチャ22が、弁体20の位置が中間位置よりも全開位置側に近い作動領域では当接せず、弁体20の位置が中間位置よりも全閉位置側に近い作動領域では当接するようにしてもよい。この場合、弁体20の位置が中間位置よりも全閉位置側に近い作動領域では、第2ばね38の撓み量は変化せず、第1ばね36の撓み量のみが変化する。
【0064】
さらに、上記実施形態では、本発明を、コモンレール内の燃料圧力を制御する電磁弁に適用したが、本発明は、他の用途における流体圧力を制御する電磁弁にも適用することができる。