(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記管理装置は、前記無線デバイスを識別する識別情報と、前記無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させるか否かを示すフラグとが対応付けられたテーブルを格納する格納部を備えており、当該無線デバイスから得られる識別情報に対応するフラグに基づいて当該無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させるか否かを制御する請求項1記載の無線通信システム。
前記無線デバイスを識別する識別情報と、前記無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させるか否かを示すフラグとが対応付けられたテーブルを格納する格納部を備えており、
前記制御部は、当該無線デバイスから得られる識別情報に対応するフラグに基づいて当該無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させるか否かを制御する
ことを特徴とする請求項4記載の管理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の無線通信システムにおいて、無線ネットワークを介して無線通信を行う無線機器は、上述した省電力動作を行うか否かに拘わらず、無線ネットワークに参入している状態(ジョイン(Join)状態)にある。ここで、ジョイン状態とは、具体的には以下の(a)〜(c)に示す状態の全てが満たされている状態をいう。
(a)無線通信システムと時刻同期している状態
(b)暗号化通信の設定が完了しており、他の無線機器との間で行われる通信のセキュリティが確立されている状態
(c)一定の無線帯域(タイムスロット及びチャネル)が割り当てられている状態
【0008】
ジョイン状態にある無線機器は、管理装置で作成された通信スケジュールに従って無線信号を送信又は受信できるため、リアルタイム性(伝送遅延(レイテンシー)が殆ど生じないこと)が実現できるというメリットがある。しかしながら、ジョイン状態にある無線機器は、一定の無線帯域(タイムスロット及びチャネル)を占有するため、無線ネットワークに参入可能な無線機器の数が制限されてしまうという問題がある。
【0009】
例えば、1秒間のタイムスロット数が「100」であり、チャネル数が「16」である無線通信システムにおいて、各無線機器が1秒間に1回だけ無線通信を行うと仮定した場合には、無線ネットワークに参入可能な無線機器の最大数は「1600」に制限される。実際には、使用されるタイムスロット及びチャネルについてある程度の余裕を考慮すると、無線ネットワークに参入可能な無線機器の数は「1000」程度に制限されると考えられる。
【0010】
また、従来の無線通信システムでは、上述した通り、各無線機器が定期的にクロックアップデートを行って時刻を互いに同期させる必要がある。このクロックアップデートは、データの送受信を行わない場合でも定期的に行う必要があるため、無線機器の消費電力を低減することができない要因になっている。無線機器の消費電力が大きいと、その分だけ容量の大きな高価な電池を搭載せざるを得ず、電池のコストを含めた無線機器のコストの低減が困難であるという問題がある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも多くの無線デバイスを無線ネットワークに参入させることが可能であり、更には無線デバイスの消費電力を低減することが可能な無線通信システム、管理装置、無線デバイス、及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の無線通信システムは、無線ネットワーク(N1)を介した無線通信が行われる無線通信システム(1)において、前記無線ネットワークに参入すべき時刻である参入予定時刻(Q1)になった場合に、前記無線ネットワークへの参入要求を行う無線デバイス(11a〜11d)と、前記参入要求を行った無線デバイスを前記無線ネットワークに参入させ、当該無線デバイスの前記無線ネットワークを介した無線通信が完了した場合に、当該無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させる管理装置(15)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、無線ネットワークへの参入要求を送信した無線デバイスを無線ネットワークに参入させる処理が行われ、無線ネットワークに参入した無線デバイスの無線ネットワークを介した無線通信が完了すると、その無線デバイスを無線ネットワークから離脱させる処理が行われる。
また、本発明の無線通信システムは、前記管理装置が、当該無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させる前に、当該無線デバイスに対して、前記無線ネットワークに参入すべき次回の時刻を前記参入予定時刻として設定することを特徴としている。
また、本発明の無線通信システムは、前記管理装置が、前記無線デバイスを識別する識別情報と、前記無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させるか否かを示すフラグとが対応付けられたテーブル(Q3)を格納する格納部(33)を備えており、当該無線デバイスから得られる識別情報に対応するフラグに基づいて当該無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させるか否かを制御することを特徴としている。
また、本発明の無線通信システムは、前記管理装置の格納部に格納されたテーブルの内容を設定可能な上位管理装置(17、18)を備えることを特徴としている。
本発明の管理装置は、複数の無線デバイス(11a〜11d)で形成される無線ネットワーク(N1)の管理を行う管理装置(15)において、前記無線ネットワークへの参入要求を行った無線デバイスを前記無線ネットワークに参入させ、当該無線デバイスの前記無線ネットワークを介した無線通信が完了した場合に、当該無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させる制御部(34)を備えることを特徴としている。
また、本発明の管理装置は、当該無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させる前に、当該無線デバイスに対して、前記無線ネットワークに参入すべき次回の時刻を参入予定時刻(Q1)として設定する設定部(34a)を備えることを特徴としている。
また、本発明の管理装置は、前記無線デバイスを識別する識別情報と、前記無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させるか否かを示すフラグとが対応付けられたテーブル(Q3)を格納する格納部(33)を備えており、前記制御部が、当該無線デバイスから得られる識別情報に対応するフラグに基づいて当該無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させるか否かを制御することを特徴としている。
本発明の無線デバイスは、無線ネットワーク(N1)を介して無線通信を行う無線デバイス(11a〜11d)において、前記無線ネットワークに参入すべき時刻である参入予定時刻(Q1)を記憶する記憶部(24)と、前記記憶部に記憶された前記参入予定時刻になった場合に、前記無線ネットワークへの参入要求を行う制御部(25)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の無線デバイスは、前記記憶部が、前記参入予定時刻に加えて、前記無線ネットワークへの参入要求を行うために前回必要であった通信リソースに関する第1情報、及び前記無線ネットワークにおける時刻と自機の時刻との偏差を示す第2情報を記憶し、前記制御部が、前記記憶部に記憶された前記参入予定時刻と前記第1,第2情報とを用いて前記無線ネットワークに参入するための処理を行うことを特徴としている。
また、本発明の無線デバイスは、前記制御部が、予め規定された事象が生じた場合には、前記参入予定時刻に拘わらず、前記無線ネットワークへの参入要求を行うことを特徴としている。
本発明の無線通信方法は、無線ネットワーク(N1)を介して無線通信を行う無線通信方法であって、前記無線ネットワークに参入すべき時刻である参入予定時刻(Q1)になったときに、前記無線ネットワークへの参入要求を行う第1ステップ(S13)と、前記参入要求を行った無線デバイス(11a〜11d)を前記無線ネットワークに参入させ、当該無線デバイスによって前記無線ネットワークを介した無線通信を行う第2ステップ(S15、S22)と、前記無線ネットワークを介した無線通信が完了したときに、当該無線デバイスを前記無線ネットワークから離脱させる第3ステップ(S27)とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無線ネットワークへの参入要求を送信した無線デバイスを無線ネットワークに参入させ、無線ネットワークに参入した無線デバイスの無線ネットワークを介した無線通信が完了すると、その無線デバイスを無線ネットワークから離脱させているため、従来よりも多くの無線デバイスを無線ネットワークに参入させることが可能であるという効果がある。また、無線デバイスを無線ネットワークから離脱させることで、従来必要であった時刻補正(クロックアップデート)が不要となるため、無線デバイスの消費電力を低減することができるという効果があり、これにより電池のコストを含めた無線デバイスのコストを低減することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による無線通信システム、管理装置、無線デバイス、及び無線通信方法について詳細に説明する。
【0016】
〈無線通信システムの全体構成〉
図1は、本発明の一実施形態による無線通信システムの全体構成を示す図である。
図1に示す通り、本実施形態の無線通信システム1は、無線デバイス11a〜11d、無線デバイス12、無線ルータ13a,13b、バックボーンルータ14a,14b、システムマネージャ15(管理装置)、ゲートウェイ16、監視制御装置17(上位管理装置)、及び端末装置18(上位管理装置)を備えており、無線ネットワークN1を介したTDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)方式による無線通信が可能である。この無線通信システム1は、例えばプラントや工場等(以下、これらを総称する場合には、単に「プラント」という)に構築される。
【0017】
ここで、無線通信システム1が構築されるプラントには、無線ネットワークN1、バックボーンネットワークN2、及び制御ネットワークN3が設けられている。無線ネットワークN1は、プラントの現場に設置された機器(無線デバイス11a〜11d、無線デバイス12、無線ルータ13a,13b、及びバックボーンルータ14a,14b)によって実現されて、システムマネージャ15によって管理されるネットワークである。尚、無線ネットワークN1を形成する無線デバイス、無線ルータ、及びバックボーンルータの数は任意である。
【0018】
バックボーンネットワークN2は、無線通信システム1の基幹となる有線ネットワークであり、バックボーンルータ14a,14b、システムマネージャ15、及びゲートウェイ16が接続される。制御ネットワークN3は、バックボーンネットワークN2の上位に位置づけられる有線ネットワークであり、ゲートウェイ16、監視制御装置17、及び端末装置18が接続される。
【0019】
無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12は、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントに設置されるフィールド機器であり、監視制御装置17の制御の下で動作する。これら無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12は何れも、電池を電源として省電力動作(例えば、間欠動作)を行い、ISA100.11aに準拠したTDMA方式による無線通信が可能である。但し、上記の無線デバイス11a〜11dと無線デバイス12とは、無線ネットワークN1に参入している状態(ジョイン(Join)状態)を維持するか否かにおいて大きく相違する。
【0020】
具体的に、無線デバイス11a〜11dは、無線ネットワークN1に参入した後に予定された無線通信(無線ネットワークN1を介した無線通信)が完了すると、システムマネージャ15の管理の下で無線ネットワークN1から離脱(リーブ(Leave))する。これに対し、無線デバイス12は、従来の無線デバイスと同様に、システムマネージャ15の管理の下で無線ネットワークN1に参入した後はジョイン状態を維持する。
【0021】
このように、無線デバイス11a〜11dが無線ネットワークN1から離脱するのは、無線通信を行う必要が無い場合に通信リソースを開放することによって、従来よりも多くの無線デバイスを無線ネットワークN1に参入可能にするためである。また、ジョイン状態を維持する場合に必要となるクロックアップデート(定期的な時刻同期)を無くすことで、無線デバイス11a〜11dの消費電力を低減するためである。
【0022】
ここで、無線デバイス11a〜11dが無線ネットワークN1から離脱している状態(リーブ状態)とは、具体的には以下の(A)〜(C)に示す状態の全てが満たされている状態をいう。
(A)無線通信システムとの時刻同期が維持されていない状態
(B)他の無線機器との間で行われる通信のセキュリティが確立されていない状態
(C)無線帯域(タイムスロット及びチャネル)が割り当てられていない状態
【0023】
また、上記の無線デバイス11a〜11dと無線デバイス12とは、無線ネットワークN1への参入するタイミングも相違する。具体的に、無線デバイス11a〜11dは、無線ネットワークN1に参入した後は無線ネットワークN1から離脱することを前提とするものであるため、システムマネージャ15によって設定される参入予定時刻(無線ネットワークN1に参入すべき時刻)になったタイミングでジョイン要求を行う。これに対し、無線デバイス12は、無線ネットワークN1に参入した後はジョイン状態を維持するものであるため、基本的には作業者からの指示があったタイミングで、システムマネージャ15に対して無線ネットワークN1への参入要求(ジョイン要求)を行う。尚、無線デバイス11a〜11dの詳細については後述する。
【0024】
無線ルータ13a,13bは、無線デバイス11a〜11d、無線デバイス12、及びバックボーンルータ14a,14bとの間でISA100.11aに準拠した無線通信を行い、無線デバイス11a〜11d、無線デバイス12、及びバックボーンルータ14a,14bとの間で送受信されるデータを中継する。これら無線ルータ13a,13bも、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12と同様に、電池を電源として間欠動作等の省電力動作を行う。尚、
図1では、無線デバイス12がバックボーンルータ14aに直接接続されている状態を図示しているが、無線デバイス12は、無線デバイス1a〜11dと同様に、無線ルータ13,13bを介してバックボーンルータ14a,14bに接続されることもある。
【0025】
また、無線ルータ13a,13bは、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12に対して定期的に広告パケットを送信する。この広告パケットは、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12を無線ネットワークN1に接続させるため、或いは無線ネットワークN1に参入している無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12の時刻を同期させるために用いられるものである。尚、ここでは、説明を簡単にするために、無線ルータ13a,13bの双方が広告パケットを送信するものとするが、無線ルータ13a,13bのうちの何れか一方のみが広告パケットを送信するものであっても良い。
【0026】
バックボーンルータ14a,14bは、無線ネットワークN1とバックボーンネットワークN2とを接続し、無線ネットワークN1とバックボーンネットワークN2との間で送受信されるデータの中継を行う。このバックボーンルータ14a,14bは、例えばバックボーンネットワークN2から供給される直流電力、或いはバックボーンネットワークN2とは別の経路を介して供給される直流電力により連続して動作し、上記の無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信を行う。
【0027】
システムマネージャ15は、例えば商用電源から供給される電力により連続して動作し、無線ネットワークN1を介して行われる無線通信の制御を行う。具体的には、無線デバイス11a〜11d、無線デバイス12、無線ルータ13a,13b、バックボーンルータ14a,14b、及びゲートウェイ16に対する通信リソース(タイムスロット及びチャネル)の割り当て制御を行って、無線ネットワークN1を介したTDMAによる無線通信を実現する。
【0028】
また、システムマネージャ15は、無線ネットワークN1に対して無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12等を参入させる処理(参入処理)を行うとともに、無線ネットワークN1から無線デバイス11a〜11dを離脱させる処理(離脱処理)を行う。ここで、システムマネージャ15は、無線デバイスの識別子と無線ネットワークN1から無線デバイスを離脱させるか否かを示すフラグとが対応付けられているデバイス情報に基づいて上記の離脱処理を行う。また、システムマネージャ15は、無線ネットワークN1から無線デバイス11a〜11dを離脱させる際には、無線デバイス11a〜11dに対し、無線ネットワークN1に参入すべき次回の時刻を参入予定時刻として設定する処理を行う。尚、システムマネージャ15の詳細については後述する。
【0029】
ゲートウェイ16は、バックボーンネットワークN2と制御ネットワークN3とを接続し、無線デバイス11a〜11d、無線デバイス12、システムマネージャ15等と、監視制御装置17及び端末装置18との間で送受信される各種データの中継を行う。このゲートウェイ16を設けることで、セキュリティを維持しつつ、バックボーンネットワークN2と制御ネットワークN3とを相互に接続することができる。
【0030】
監視制御装置17は、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12等の監視及び管理を行う。具体的に、監視制御装置17は、ゲートウェイ16を介して無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12から測定データを収集することによって無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12等の監視を行う。また、監視制御装置17は、収集した測定データに基づいて無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12の制御量を求め、ゲートウェイ16を介して無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12に設定することによって、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12を制御する。また、監視制御装置17は、システムマネージャ15に格納されている上記のデバイス情報の設定や変更を行う。
【0031】
端末装置18は、例えばプラントの運転員によって操作され、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12の監視及び制御等を行うために用いられる。具体的に、端末装置18は、キーボードやポインティングデバイス等の入力装置、液晶表示装置等の表示装置を備えており、監視制御装置17で得られた無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12の監視結果を表示装置に表示して運転員に提供するとともに、運転員が入力装置を操作して入力した指示を監視制御装置17に出力して、その指示に基づいた制御を監視制御装置17に行わせる。また、端末装置18は、監視制御装置17と同様に、システムマネージャ15に格納されている上記のデバイス情報の設定や変更が可能である。
【0032】
〈無線デバイス11a〜11dの構成〉
図2は、本発明の一実施形態による無線デバイスの要部構成を示すブロック図である。尚、無線デバイス11a〜11dは同様の構成であるため、ここでは無線デバイス11aを代表させて説明する。また、理解を容易にするために、無線デバイス11aは、工業プロセスにおける各種の状態量(例えば、圧力、温度、流量等)を測定するセンサ機器であるものとする。
図2に示す通り、無線デバイス11aは、測定部21、無線通信部22、時計部23、不揮発性メモリ24(記憶部)、及び制御部25を備える。
【0033】
測定部21は、圧力計、温度計、流量計等の測定器を備えており、工業プロセスにおける各種の状態量(圧力、温度、或いは流量等)を測定し、その測定結果を示すプロセス値を出力する。無線通信部22は、制御部25の制御の下で、無線ネットワークN1を介した無線通信を行う。尚、無線通信部22で行われる無線通信は、無線通信規格ISA100.11aに準拠したものである。
【0034】
時計部23は、時刻を計時して現在の時刻を示す時刻データを制御部25に出力する。具体的に、時計部23は、±数十ppm(parts per million:100万分の1)程度の精度で振動する水晶振動子を備えており、この水晶振動子の振動周波数を検出することによって時刻を計時する。時計部23で計時される時刻は、無線デバイス11aが無線ネットワークN1に参入するときに制御部25によって補正される。これは、無線ルータ13aやシステムマネージャ15と同期させるためである。
【0035】
不揮発性メモリ24は、無線デバイス11aが無線ネットワークN1に参入するために必要となる参入予定時刻Q1及びルータ情報Q2を記憶する。参入予定時刻Q1は、無線ネットワークN1から離脱した状態にある無線デバイス11aが、無線ネットワークN1に参入すべきおおよその時刻を示す情報である。この参入予定時刻Q1は、無線デバイス11aが無線ネットワークN1から離脱する際に、システムマネージャ15によって設定される。
【0036】
ルータ情報Q2は、無線デバイス11aが無線ネットワークN1から離脱する前に接続されていた親ルータ(無線ルータ13a,13b或いはバックボーンルータ14a,14b:
図1に示す例では、無線ルータ13a)を示す情報である。具体的に、ルータ情報Q2は、「広告パケットホッピングパターン情報」(第1情報)、「広告パケット受信リンク情報」(第1情報)、及び「時刻偏差情報」(第2情報)を含む。上記の「広告パケットホッピングパターン情報」は、親ルータが広告パケットを定期的(例えば、4秒毎)に送信するために用いるチャネルの遷移順を示す情報である。上記の「広告パケット受信リンク情報」は、親ルータが送信する広告パケットを受信するためのリンク情報(オフセット及び周期)を示す情報である。上記の「時刻偏差情報」は、親ルータと無線デバイス11aとの時刻偏差を示す情報である。
【0037】
ルータ情報Q2のうちの上記の「広告パケットホッピングパターン情報」及び「広告パケット受信リンク情報」は、無線デバイス11aが無線ネットワークN1に参入した後にシステムマネージャ15によって設定される。これに対し、ルータ情報Q2のうちの上記の「時刻偏差情報」は、親ルータから定期的に送信される広告パケットを無線デバイス11aが受信することによって、無線デバイス11aの制御部25が算出する。具体的に、親ルータが広告パケットを送信する間隔をT1[sec]とし、無線デバイス11aが親ルータからの広告パケットを受信する間隔をT2[sec]とすると、制御部25は、以下の(1)式を用いて、時刻偏差D[ppm]を求める。
D=(T2−T1)/T1×1000000 …(1)
【0038】
制御部25は、無線デバイス11aの動作を統括して制御する。例えば、制御部25は、測定部21を制御して工業プロセスにおける各種の状態量を測定させ、無線通信部22を制御して無線デバイス11aを無線ネットワークN1へ参入させ、或いは無線通信部22を制御して測定部21で測定されたプロセス値を、無線ネットワークN1を介して監視制御装置17に向けて送信させる。
【0039】
この制御部25は、探索期間算出部25a及びイベント検出部25bを備える。探索期間算出部25aは、無線デバイス11aが無線ネットワークN1に参入する際に、親ルータを探索する期間を算出する。このように、親ルータの探索期間を算出するのは、無線デバイス11aが無線ネットワークN1に参入する際の電力消費量を極力低減するためである。無線デバイス11aが無線ネットワークN1に参入するには、まず親ルータを探索する必要がある。親ルータを探索するには、複数のチャネルをサーチする必要があることから無線デバイス11aの消費電力が大きくなり、親ルータの探索が長期間に亘って行われると無線デバイス11aで電力が無駄に消費されてしまう。そこで、無線デバイス11aの電力消費量を極力低減するために、探索期間算出部25aで探索期間を求めて、親ルータを探索する期間を制限するようにしている。
【0040】
具体的に、探索期間算出部25aは、無線デバイス11aが無線ネットワークN1から離脱する直前に広告パケットを受信した時刻をt0とすると、以下の(2)式を用いて、親ルータの探索を開始する探索開始時刻t1を求める。
t1=t0+(T2×n)−(T2×n)×D/1000000×S …(2)
但し、上記(2)式中のT2は無線デバイス11aが親ルータからの広告パケットを受信していた間隔[sec]であり、Dは上記の(1)式で求められる時刻偏差であり、Sは広告パケットの受信が安全に行われるために設定される安全率(任意の値)であり、nは上述した参入予定時刻Q1を広告パケットの受信間隔T2で除算して得られる商である。
【0041】
また、探索期間算出部25aは、以下の(3)式を用いて、探索を継続する探索期間Tを求める。
T=(T2×n)×D/1000000×S×2 …(3)
従って、無線デバイス11aが無線ネットワークN1に参入する際には、上記の(2)式で得られる探索開始時刻t1から上記の(3)式で得られる探索期間Tが終了するまでの間(つまり、探索終了時刻t2(=t1+T)になるまでの間)、無線デバイス11aによる親ルータの探索が行われる。
【0042】
イベント検出部25bは、無線デバイス11aの内部で発生する様々なイベントのうち、予め設定されたイベント(事象)の発生を検出する。例えば、イベント検出部25bは、無線デバイス11aの内部で異常が生じた場合に、その旨を示すイベントを検出する。このようなイベント検出部25bを設けるのは、無線ネットワークN1から離脱している無線デバイス11aを、強制的に無線ネットワークN1に参入させるためである。つまり、無線デバイス11aは、無線ネットワークN1から離脱すると、基本的にシステムマネージャ15によって設定された参入予定時刻Q1(正確には、上記の探索開始時刻t1)になるまで無線ネットワークN1に参入しない。無線ネットワークN1から離脱している状態で異常が生じた場合には、早急に無線ネットワークN1に参入してその旨を監視制御装置17に伝える必要があるため、強制的に無線ネットワークN1に参入させるようにしている。
【0043】
〈システムマネージャ15の構成〉
図3は、本発明の一実施形態による管理装置としてのシステムマネージャの要部構成を示すブロック図である。
図3に示す通り、システムマネージャ15は、通信部31、時計部32、格納部33、及び制御部34を備える。通信部31は、制御部34の制御の下で、バックボーンネットワークN2を介した通信を行う。時計部32は、無線デバイス11aに設けられる時計部23と同様に、時刻を計時して現在の時刻を示す時刻データを制御部34に出力する。但し、システムマネージャ15の時計部32で計時される時刻は、無線ネットワークN1を介して無線通信を行う無線機器の基準となるものであるため、無線デバイス11aに設けられる時計部23よりも高い精度で時刻を計時する。
【0044】
格納部33は、例えばハードディスク等の外部記憶装置で実現され、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12を無線ネットワークN1から離脱させるか否かを制御するためのデバイス情報Q3を格納する。
図4は、システムマネージャで用いられるデバイス情報の一例を示す図である。
図4に示す通り、デバイス情報Q3は、「EUI64」,「タグ」,「デバイスタイプ」,「リーブフラグ」(フラグ),「更新周期」等が対応付けられたテーブル形式の情報である。
【0045】
上記「EUI64」は、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12を一意に識別するために無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12の各々に割り当てられた64ビットの識別情報である。上記「タグ」は、例えばプラントの現場で作業を行う作業者が無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12の識別を容易にするために無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12の各々に付される情報である。上記「デバイスタイプ」は、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12の種類を示す情報である。
【0046】
上記「リーブフラグ」は、無線ネットワークN1から無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12を離脱させるか否かを示す情報である。「リーブフラグ」は、値が「1」である場合には、無線デバイスを無線ネットワークN1から離脱させる旨を示し、値が「0」である場合には、無線デバイスを無線ネットワークN1から離脱させずにジョイン状態を維持する旨を示す。「更新周期」は、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12が測定したプロセス値を監視制御装置17に送信すべき周期を示す情報である。
【0047】
図4に示す例において、下二桁の値が「01」〜「04」である「EUI64」は、無線デバイス11a〜11dにそれぞれ割り当てられたものであり、下二桁の値が「05」である「EUI64」は、無線デバイス12に割り当てられたものである。無線デバイス11a〜11dは、システムマネージャ15の管理の下で無線ネットワークN1から離脱するものであるため、下二桁の値が「01」〜「04」である「EUI64」に対応する「リーブフラグ」は値が「1」に設定されている。これに対し、無線デバイス12は、システムマネージャ15の管理の下で無線ネットワークN1に参入した後はジョイン状態を維持するものであるため、下二桁の値が「05」である「EUI64」に対応する「リーブフラグ」は値が「0」に設定されている。
【0048】
制御部34は、システムマネージャ14の動作を統括して制御する。例えば、無線ネットワークN1を介したTDMAによる無線通信を実現するために、無線ネットワークN1を介して無線通信を行う無線機器(無線デバイス11a〜11d、無線デバイス12、無線ルータ13a,13b、バックボーンルータ14a,14b)及びゲートウェイ16に対する通信リソース(タイムスロット及びチャネル)の割り当て制御を行う。
【0049】
ここで、制御部34によって割り当てられる通信リソースについて説明する。
図5は、本発明の一実施形態において割り当てられる通信リソースを説明するための図である。尚、
図5に示す図は、横軸に時間をとり、縦軸にチャネル(無線通信周波数)をとっている。
図5において、横軸方向の1マスは1つのタイムスロットを示しており、縦軸方向の1マスは1つのチャネルを示している。但し、図示の簡単化のために、
図5においてはチャネルを10チャネルのみ図示している。
【0050】
図5において、斜線が付されたマスは制御部34によって割り当てられた通信リソースを示しており、斜線が付されていないマスは制御部34による割り当てが行われていない通信リソースを示している。例えば、
図5において、符号R1が付されたマスは、バックボーンルータ14aが無線ルータ13aに対してデータを送信するために割り当てられた通信リソースを示しており、符号R2が付されたマスは、バックボーンルータ14aが無線デバイス12に対してデータを送信するために割り当てられた通信リソースを示している。このように、制御部34は、無線ネットワークN1を介して行われる無線通信の各々に対して互いに重複しないように通信リソースの割り当てを行う。
【0051】
また、制御部34は、無線ネットワークN1へのジョイン要求があった場合には、そのジョイン要求を行った無線デバイスを無線ネットワークN1に参入させる処理を行う。また、格納部22に格納されたデバイス情報Q3を参照して、無線ネットワークN1から無線デバイス11a〜11dを離脱させる処理を行う。
【0052】
この制御部34は、無線ネットワークN1から離脱させる無線デバイスに対して、無線ネットワークN1に参入すべき次回の時刻を参入予定時刻Q1として設定する参入予定時刻設定部34aを備える。参入予定時刻設定部34aは、格納部22に格納されたデバイス情報Q3の「更新周期」を参照し、無線デバイス11a〜11dに設定される参入予定時刻Q1が分散するように参入予定時刻Q1の設定を行う。これは、無線デバイス11a〜11dが同時に無線ネットワークN1に参入しないようにするためである。
【0053】
〈無線通信システムの動作〉
次に、上記構成における無線通信システム1の動作について説明する。以下では、システムマネージャ15の制御の下で、無線デバイス11aが無線ネットワークN1に対して参入及び離脱する動作を中心に説明する。
図6は、本発明の一実施形態による無線デバイスの動作を示すフローチャートであり、
図7は、本発明の一実施形態による管理装置としてのシステムマネージャの動作を示すフローチャートである。また、
図8は、本発明の一実施形態による無線通信システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0054】
尚、システムマネージャ15の格納部33には、
図4に示すデバイス情報Q3が格納されているものとする。つまり、無線デバイス11a〜11dに割り当てられた「EUI64」に対応するリーブフラグの値が「1」に設定され、無線デバイス12に割り当てられた「EUI64」に対応するリーブフラグの値が「0」に設定されたデバイス情報Q3が格納されているものとする。このデバイス情報Q3は、例えばプラントの運転員が、端末装置18を操作して
図4に示すデバイス情報Q3を入力し、入力したデバイス情報Q3のダウンロードの指示を行うことにより、システムマネージャ15の格納部33に格納される。
【0055】
図6に示すフローチャートは、例えば無線デバイス11aが無線ネットワークN1から離脱してリーブ状態になったときに開始される。また、
図7に示すフローチャートは、例えば予め規定された一定の周期で開始される。
図6に示すフローチャートの処理が開始されると、まず親ルータの探索を開始すべき時間である探索開始時刻t1になったか否かが無線デバイス11aの制御部25で判断される(ステップS11)。尚、ここでは説明を簡単にするために、無線デバイス11aが無線ネットワークN1に前回参入していたときに、前述した(2),(3)式によって求められる探索開始時刻t1及び探索期間Tが探索期間算出部25aによってそれぞれ求められているものとする。
【0056】
探索開始時刻になっていないと判断した場合(判断結果が「NO」である場合)には、ステップS11の処理が繰り返し行われる。これに対し、探索開始時刻になったと判断した場合(判断結果が「YES」である場合)には、無線デバイス11aの制御部25は、
図8に示す通り、リーブ状態を解除して無線ネットワークN1に参入するためのジョイン処理を開始する(
図8中の時刻t11)。ジョイン処理が開始されると、無線デバイス11aの制御部25は、まず無線ネットワークN1を管理するシステムマネージャ15と無線通信を行うために、親ルータの探索処理を行う(ステップS12)。
【0057】
図9は、本発明の一実施形態で行われる親ルータの探索処理を説明するための図である。親ルータの探索処理が開始されると、無線デバイス11aの制御部25は、まず不揮発性メモリ24からルータ情報Q2を読み出して、無線デバイス11aが無線ネットワークN1から離脱する前に接続されていた親ルータ(ここでは、無線ルータ13aとする)を示す情報を得る。そして、ルータ情報Q2に含まれる無線ルータ13aについての「広告パケットホッピングパターン情報」、「広告パケット受信リンク情報」、及び「時刻偏差情報」を用いて、無線ルータ13aから送信される広告パケットを受信する処理を行う。
【0058】
具体的には、
図9に示す通り、探索開始時刻t1から探索期間Tが終了するまでの間(つまり、探索終了時刻t2(=t1+T)になるまでの間)、無線ルータ13aからチャネルA(Ch.A)を介して送信される広告パケットを受信する処理が行われる。ここで、広告パケットの送信に用いられる複数のチャネルA〜D(Ch.A〜Ch.D)のうち、最初に広告パケットを受信すべきチャネル(
図9に示す例では、チャネルA(Ch.A))は、ルータ情報Q2に含まれる「広告パケットホッピングパターン情報」及び「広告パケット受信リンク情報」に基づいて決定される。
【0059】
尚、
図9に示す例では、無線ルータ13aからチャネルA(Ch.A)を介して送信された広告パケットの受信に失敗している。このように、広告パケットの受信に失敗した場合には、
図9に示す通り、広告パケット受信間隔T2が経過した後に、ルータ情報Q2に基づいて無線ルータ13aから次のチャネルを介して送信される広告パケットを受信する処理が行われる。つまり、時刻t3(探索開始時刻t1から広告パケット受信間隔T2が経過した時刻)から探索終了時刻t4(=t3+T)になるまでの間)、無線ルータ13aからチャネルB(Ch.B)を介して送信される広告パケットを受信する処理が行われる。尚、予め規定された回数だけ連続して広告パケットの受信に失敗した場合には、従来と同様の方法で親ルータの探索が行われる。
【0060】
無線ルータ13aからの広告パケットを受信すると、親ルータの探索処理が終了する(
図9中の「成功」の時)。尚、無線ルータ13aからの広告パケットを受信した場合には、無線デバイス11aの制御部25によって時計部23で計時される時刻が補正され、これにより無線デバイス11aと無線ルータ13aとが同期する。親ルータの探索処理が終了すると、
図9に示す通り、無線デバイス11aから無線ルータ13aに対してジョイン要求が送信される(ステップS13:第1ステップ)。無線ルータ13aから送信されたジョイン要求は、無線ルータ13a及びバックボーンルータ14a,14bの何れか一方を介してシステムマネージャ15に送信される。
【0061】
システムマネージャ15では、
図7に示すフローチャートが予め規定された一定の周期で実行され、制御部34でジョイン要求の有無が判断されている(ステップS21)。ジョイン要求が無いと判断した場合(判断結果が「NO」の場合)には、
図7に示す一連の処理が終了する。これに対し、無線デバイス11aからのジョイン要求が送信されてくると、ステップS21の判断結果が「YES」になり、制御部34は、ジョイン要求を行った無線デバイス11aを無線ネットワークN1に参入させる処理を行う(ステップS22:第2ステップ)。
【0062】
具体的に、システムマネージャ15の制御部34は、ジョイン要求を行った無線デバイス11aが無線ネットワークN1への参入が許可されているものであるか否かを確認し、無線ネットワークN1への参入が許可されているものである場合には、無線ネットワークN1への参入を許可する旨を示す情報(ジョイン許可情報)を無線デバイス11aに送信する。このジョイン許可情報が送信されてくると、無線デバイス11aは、無線ネットワークN1に参入する(ステップS14)。これにより、無線デバイス11aは、システムマネージャ15の制御部34によって割り当てられた通信リソースを用いて、無線ネットワークN1を介した無線通信が可能になる。
【0063】
また、システムマネージャ15の制御部34は、格納部33に格納されたデバイス情報Q3を読み出して、無線ネットワークN1に参入した無線デバイス11aが、無線ネットワークN1から離脱させるべきものであるか否かを確認する(ステップS23)。ここで、
図4に示すデバイス情報Q3では、無線デバイス11aに割り当てられた「EUI64」(下二桁の値が「01」である「EUI64」)に対応するリーブフラグの値が「1」に設定されているため、制御部34は、無線デバイス11aが無線ネットワークN1から離脱させるべきものであることを確認する。
【0064】
無線ネットワークN1に参入した無線デバイス11aは、
図8に示す通り、無線ルータ13aがスリープ状態からアクティブ状態に遷移するタイミングで、測定部21で測定されたプロセス値を、監視制御装置17に向けて送信する(
図8中の時刻t12:ステップS15:第2ステップ)。他方、システムマネージャ15の制御部34は、ステップS23で確認した内容に基づいて、無線デバイス11aが離脱させるべき無線デバイスであるか否かを判断する(ステップS24)。ここでは、ステップS23の処理で、無線デバイス11aが無線ネットワークN1から離脱させるべきものであることが確認されているため、判断結果は「YES」になる。尚、仮に、ステップS24の判断結果が「NO」になった場合には、
図7に示す一連の処理が終了する。
【0065】
ステップS24の判断結果が「YES」になると、無線デバイス11aによる監視制御装置17へのプロセス値の送信処理が完了したか否かが判断される(ステップS25)。プロセス値の送信処理が完了していないと判断した場合(判断結果が「NO」の場合)には、ステップS25の処理が継続される。これに対し、プロセス値の送信処理が完了したと判断した場合(判断結果が「YES」の場合)には、システムマネージャ15の制御部34に設けられた参入予定時刻設定部34aは、無線デバイス11aが無線ネットワークN1に参入すべき次回の時刻を参入予定時刻Q1として設定する(ステップS26)。
【0066】
参入予定時刻設定部34aによって設定された参入予定時刻Q1は、無線ネットワークN1を介して無線デバイス11aに送信される。無線デバイス11aの制御部25は、無線ネットワークN1を介して送信されてきた参入予定時刻Q1を取得して不揮発性メモリ24の参入予定時刻Q1に記憶させる(ステップS16)。尚、無線デバイス11aの制御部25は、無線ネットワークN1に参入している間に、ルータ情報Q2を取得して不揮発性メモリ24に記憶させる処理を行う。また、ルータ情報Q2が不揮発性メモリ24に記憶される度に、無線デバイス11aの制御部25に設けられた探索期間算出部25aは、前述した(2),(3)式を用いて探索開始時刻t1及び探索期間Tをそれぞれ算出する。
【0067】
システムマネージャ15からの参入予定時刻Q1を取得すると、無線デバイス11aの制御部15は、システムマネージャ15からの離脱指示(無線ネットワークN1から無線デバイス11aを離脱させる旨を示す指示)の有無を判断する(ステップS17)。離脱指示が無いと判断した場合(判断結果が「NO」である場合)には、ステップS17の処理が繰り返し行われる。
【0068】
システムマネージャ15の制御部34は、参入予定時刻設定部34aによる無線デバイス11aへの参入予定時刻Q1の設定が完了すると、無線ネットワークN1から無線デバイス11aを離脱させる指示を行う(ステップS27:第3ステップ)。この指示が無線ネットワークN1を介して無線デバイス11aで受信されると、ステップS17の判断結果が「YES」になり、無線デバイス11aは、無線ネットワークN1から離脱してリーブ状態になる(
図8中の時刻t13:ステップS18)。無線デバイス11aがリーブ状態になることによって、無線デバイス11aに割り当てられていた通信リソースは開放される。
【0069】
無線デバイス11aがリーブ状態になると、
図6に示すフローチャートの処理が再び開始されて、以上説明した動作と同様の動作が行われる。つまり、次の探索開始時刻(
図8中の時刻t14)になったか否かの判断を開始し(ステップS11)、時刻t14になったと判断した場合(ステップS11の判断結果が「YES」の場合)には、ジョイン要求を送信して無線ネットワークN1に参入する処理を行う(ステップS12〜S14)。そして、
図8中の時刻t15においてプロセス値の送信等の処理を行い(ステップS15,S16)、
図8中の時刻t16においてシステムマネージャ15からの離脱指示があった場合に、無線ネットワークから離脱してリーブ状態になる(ステップS17,S18)。
【0070】
以上の通り、本実施形態では、無線ネットワークN1に参入すべき時刻である参入予定時刻になったときに、無線デバイス11aが無線ネットワークN1へのジョイン要求を行い、システムマネージャ15がジョイン要求を行った無線デバイス11aを無線ネットワークN1に参入させて無線ネットワークN1を介した無線通信を行わせている。そして、無線ネットワークN1を介した無線通信が完了したときに、システムマネージャ15が無線デバイス11aを無線ネットワークN1から離脱させるようにしている。
【0071】
このように、本実施形態では、無線ネットワークN1から無線デバイス11aを離脱させることによって、その無線デバイス11aに割り当てられていた通信リソースを開放しているため、従来よりも多くの無線デバイスを無線ネットワークN1に参入させることが可能である。また、無線デバイス11aを無線ネットワークN1から離脱させることで、従来必要であったクロックアップデートを省略することができるため、無線デバイスの消費電力を低減することができ、その結果として電池のコストを含めた無線デバイスのコストを低減することができる。
【0072】
尚、上述した実施形態における無線デバイス11aは、監視制御装置17に対するプロセス値の送信を完了した後はリーブ状態になり、次の探索開始時刻になるまでリーブ状態を維持する。このため、監視制御装置17は、無線デバイス11aがリーブ状態になる前に無線デバイス11aから送信されたプロセス値を受信することはできるものの、無線デバイス11aとの間でリアルタイムでの通信を行うことは基本的にはできない。但し、監視制御装置17が、ゲートウェイ16を介してシステムマネージャ15の格納部33に格納されたデバイス情報Q3に含まれるリーブフラグを動的に変更することでリアルタイム通信を実現することができる。
【0073】
図10は、本発明の一実施形態による無線通信システムの他の動作を説明するためのタイミングチャートである。尚、ここでは、上述した実施形態と同様に、システムマネージャ15の制御の下で、無線デバイス11aが無線ネットワークN1に対して参入及び離脱する動作を例に挙げて説明する。まず、無線デバイス11aについてのリーブフラグの値が「1」に設定されている場合には、上述した第1実施形態と同様に、参入予定時刻になったときにリーブ状態にある無線デバイス11aが無線ネットワークN1に参入し、プロセス値を送信した後は無線デバイス11aがリーブ状態になる動作が行われる(時刻t21〜t22)。
【0074】
いま、無線デバイス11aがリーブ状態である時刻t23において、監視制御装置17が無線デバイス11aへ、時刻t22での通信より多くの回数の通信(例えば、プロセス値に加え、無線デバイス11aのパラメータを変更するための通信等)をする必要が生じたとする。すると、監視制御装置17は、ゲートウェイ16を介してシステムマネージャ15にアクセスし、格納部33に格納されたデバイス情報Q3に含まれる無線デバイス11aについてのリーブフラグの値を「0」に変更する。尚、無線デバイス11aは、システムマネージャ15の格納部33に格納されたデバイス情報Q3が変更されたか否かに拘わらず次の参入予定時刻t24になるまでリーブ状態を維持する。
【0075】
参入予定時刻t24になると、無線デバイス11aはリーブ状態を解除し、無線ネットワークN1へのジョイン要求を送信して無線ネットワークN1に参入する。ここで、システムマネージャ15の格納部33に格納されたデバイス情報Q3に含まれる無線デバイス11aについてのリーブフラグの値が「0」に変更されているため、無線デバイス11aは、無線デバイス12と同様に、無線ネットワークN1から離脱されずにジョイン状態を維持する。これにより、無線デバイス11aは、
図10に示す通り、監視制御装置17との間でリアルタイム通信を行うことが可能になる(時刻t25〜t26)。
【0076】
尚、
図6に示すフローチャートでは、プロセス値の送信(ステップS15)及び参入予定時刻の取得(ステップS16)を行った後は、無線デバイス11aは、離脱指示の待ち状態になっている(ステップS17)。しかしながら、無線ネットワークN1から離脱されずにジョイン状態が維持される場合には、無線デバイス11aは、離脱指示の待ち状態になったとしても無線通信が可能であるため、上述した監視制御装置17との間のリアルタイム通信を行うことができる。
【0077】
いま、時刻t26において、監視制御装置17と無線デバイス11aとの間の通信が完了したとすると、監視制御装置17は、ゲートウェイ16を介してシステムマネージャ15にアクセスし、格納部33に格納されたデバイス情報Q3に含まれる無線デバイス11aについてのリーブフラグの値を「1」に変更する。すると、システムマネージャ15の制御部34は、無線デバイス11aを直ちに無線ネットワークN1から離脱させる。これにより、無線デバイス11aはリーブ状態になり、次の参入予定時刻t27になるまでリーブ状態を維持する。
【0078】
尚、次の参入予定時刻t27では、システムマネージャ15の格納部33に格納されたデバイス情報Q3に含まれる無線デバイス11aについてのリーブフラグの値が「1」に設定されている。このため、上述した第1実施形態と同様に、リーブ状態にある無線デバイス11aが無線ネットワークN1に参入し、プロセス値を送信した後は無線デバイス11aがリーブ状態になる動作が行われる(時刻t27〜t28)。
【0079】
尚、以上では、監視制御装置17が、無線デバイス11aへ通信をする必要が生じたときに、システムマネージャ15の格納部33に格納されたデバイス情報Q3を変更する例について説明した。しかしながら、例えばプラントの運転員が、必要に応じて端末装置18を操作してシステムマネージャ15の格納部33に格納されたデバイス情報Q3を変更するようにしても良い。
【0080】
以上、本発明の一実施形態による無線通信システム、管理装置、無線デバイス、及び無線通信方法について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、ISA100.11aに準拠した無線通信を行う無線通信システムを例に挙げて説明したが、本発明はWirelessHART(登録商標)に準拠した無線通信を行う無線通信システムにも適用することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、バックボーンルータ14a,14b、システムマネージャ15、及びゲートウェイ16がそれぞれ別々の装置として実現されている例について説明した。しかしながら、これらのうちの任意の2つ以上の装置を1つの装置として実現することも可能である。更に、上記実施形態では、無線デバイス11a〜11d及び無線デバイス12がフィールド機器である場合を例に挙げて説明したが、これらはフィールド機器に限定されるものではない。