特許第5786885号(P5786885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786885
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】建設機械のスイングブラケット
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/36 20060101AFI20150910BHJP
   E02F 3/32 20060101ALI20150910BHJP
   E02F 9/14 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   E02F3/36 B
   E02F3/32 B
   E02F9/14 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-81110(P2013-81110)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-202022(P2014-202022A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2014年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】平垣内 聡
(72)【発明者】
【氏名】中谷 光夫
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−076314(JP,A)
【文献】 特開2005−113528(JP,A)
【文献】 特開平09−209385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/36
E02F 3/32
E02F 3/38
E02F 9/14
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体に垂直軸を中心として左右に首振り回動可能に取付けられ、下端部の左右一側面に、上記首振り回動の駆動源としてのスイングシリンダの一端が取付けられるスイングシリンダ取付部が突設され、このスイングシリンダ取付部は、上下に間隔を置いて対向配置された一対の支持腕を備えた建設機械のスイングブラケットにおいて、
上記スイングシリンダ取付部の付け根部分に補強部を設け、この補強部は、上記両支持腕に跨る縦リブであって上記左右一側面である外側面を有するものと、この縦リブに対して上記外側面及び上記一対の支持腕と反対の側の位置で連なる前後及び上下のリブと、により、上記縦リブを奥壁として上記スイングシリンダ取付部の突出方向と反対側が開放する箱状に構成したものであり、
上記一対の支持腕は上記縦リブの外側面から突出することを特徴とする建設機械のスイングブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショベル等の建設機械においてブームを左右にスイングさせるためのスイングブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ショベルは、図6に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が地面に対して垂直となる軸Oのまわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2に、ブーム3、アーム4、バケット5、及びこれらを作動させるブーム、アーム、バケット各シリンダ(油圧シリンダ)6,7,8から成る作業用のアタッチメント9が取付けられて構成される。
【0004】
図6中、10は上部旋回体2上に設けられた運転席、11は運転席を上から覆うキャノピである。
【0005】
なお、この明細書において、「前後」「左右」は、運転席10に着座したオペレータから見た方向性をいう。
【0006】
ここで、スイング式のショベルにおいては、上部旋回体2の前部にスイングブラケット12がスイングピン(縦軸)13を中心として左右に首振り回動自在に取付けられ、このスイングブラケット12にブームフット(ブーム3の基端部)がブームフットピン14によって、またブームシリンダ6の一端がブームシリンダピン15によってそれぞれ左右方向の水平軸まわりにそれぞれ回動自在に取付けられる。
【0007】
さらに、スイングブラケット12を首振り回動させるスイングシリンダ16の一端がスイングブラケット12にスイングシリンダピン17によって垂直軸まわりに回動自在に取付けられる。
【0008】
こうして、ブーム3(アタッチメント9全体)がブームフットピン14を中心として起伏自在で、かつ、スイングピン13を中心として左右にスイング自在に構成される。
【0009】
以上の構成は特許文献1,2に示されている。
【0010】
従来のスイングブラケット12の構成を図7図10に示す。
【0011】
スイングブラケット12は、鋳型成形により、上端部にブームフット取付部18、前面の上下方向中間部にブームシリンダ取付部19、下端部の右側面にスイングシリンダ取付部20がそれぞれ設けられて成っている。
【0012】
なお、これら各取付部18〜20以外の部分(隣り合う取付部同士をつなぐ部分)を「本体」といい、符号「21」を付して示す。
【0013】
各取付部18〜20のうち、ブームフット取付部18及びブームシリンダ取付部19はそれぞれ左右に間隔を置いて対向配置された一対の支持腕18a,18b、19a,19bを、またスイングシリンダ取付部20は上下に間隔を置いて対向配置された一対の支持腕20a,20bをそれぞれ備え、各支持腕18a,18b、19a,19b、20a,20bに、取付ピン(図6中のブームフットピン14、ブームシリンダピン15、スイングシリンダピン17)が挿入されるピン穴22が設けられている。
【0014】
図8中、23は上部旋回体2に前向きに突設された側面視コの字形のスイングブラケット取付部である。また、図8,10中、24はスイングブラケット取付部23に取付けられるスイングブラケット12の主取付部、25は図6中のスイングピン13が挿入されるスイングピン穴である。
【0015】
従来、このスイングブラケット12の補強構造、とくにスイングシリンダ取付部20とその周辺の補強構造として、図9に示すようにスイングシリンダ取付部20の付け根部分において、上側支持腕20aの上面と、これの上方に連なる本体右側面部とに跨ってほぼ三角形の縦リブ26が一体に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−176548号公報
【特許文献1】特開2004−68290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、上記従来の補強構造によると、縦リブ26の、上側支持腕20a及び本体右側面部に対する接続部分(止端。図9の破線丸囲い部分)に応力集中が起こり、この高応力部分が破損するおそれがあった。
【0018】
また、縦リブ26による補強効果が下側支持腕20bには十分に及ばないため、この下側支持腕20bの破損のおそれもあった。
【0019】
この課題に対し、スイングシリンダ取付部20の付け根部分において、たとえば両側支持腕20a,20bに跨る広い部分(たとえば図9中に斜線を付して示す楕円部分)の肉厚を大きくとることによって、応力集中を避けながら補強効果を高めることが考えられる。
【0020】
ところが、この構造では補強による重量増加が顕著(たとえば数kg増)となってスイングブラケット12の取り扱い及びコストの点できわめて不利となるため、得策でない。
【0021】
また、両側支持腕20a,20bの外側への突出長さを短くすることによって付け根部分にかかる荷重を小さくすることも考えられる。しかし、こうすると図6,8のスイングシリンダ16の左右の動きが制限される等の弊害が生じるため現実的でない。
【0022】
そこで本発明は、応力集中及び重量増加を抑え、かつ、スイングシリンダの動きが制限される等の弊害を招くことなく、十分な補強効果を得ることができる建設機械のスイングブラケットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体に垂直軸を中心として左右に首振り回動可能に取付けられ、下端部の左右一側面に、上記首振り回動の駆動源としてのスイングシリンダの一端が取付けられるスイングシリンダ取付部が突設され、このスイングシリンダ取付部は、上下に間隔を置いて対向配置された一対の支持腕を備えた建設機械のスイングブラケットにおいて、上記スイングシリンダ取付部の付け根部分に補強部を設け、この補強部は、上記両支持腕に跨る縦リブであって上記左右一側面である外側面を有するものと、この縦リブに対して上記外側面及び上記一対の支持腕と反対の側の位置で連なる前後及び上下のリブと、により、上記縦リブを奥壁として上記スイングシリンダ取付部の突出方向と反対側が開放する箱状に構成したものであり、上記一対の支持腕は上記縦リブの外側面から突出する。
【0024】
このように、スイングシリンダ取付部の付け根部分に、両側支持腕に跨る縦リブを奥壁として前後、上下のリブを備えた箱状(凹み状)の補強部を設け、上記縦リブの外側面から上記スイングシリンダ取付部の一対の支持腕を突出させたから、従来の三角形リブの止端部分のような応力集中部分がなく、しかも箱構造によってブラケット重量の増加を抑えながら、高い補強効果を得ることができる。
【0025】
また、両側支持腕の突出長さを短くした場合のようなスイングシリンダの動きが制限される等の弊害が生じるおそれもない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、応力集中及び重量増加を抑え、かつ、スイングシリンダの動きが制限される等の弊害を招くことなく、十分な補強効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態にかかるスイングブラケットの斜視図である。
図2図1の一部拡大図である。
図3】同ブラケットの右側面図である。
図4】同、前面図である。
図5図4のV−V線断面図である。
図6】スイング式のショベルの概略側面図である。
図7】従来のスイングブラケットの斜視図である。
図8】同ブラケットの右側面図である。
図9】同、前面図である。
図10図9のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態を図1図5によって説明する。
【0029】
実施形態にかかるスイングブラケット30において、
(i) 鋳型成形により、上端部にブームフット取付部31、前面の上下方向中間部にブームシリンダ取付部32、下端部の右側面にスイングシリンダ取付部33がそれぞれ設けられて成る点、
(ii) 各取付部31〜33のうち、ブームフット取付部31及びブームシリンダ取付部32は、それぞれ左右に間隔を置いて対向配置された一対の支持腕31a,31b、32a,32bを、またスイングシリンダ取付部33は上下に間隔を置いて対向配置された一対の支持腕33a,33bをそれぞれ備えている点、
(iii) 各支持腕31a,32b、32a,32b、33a,33bに、取付ピン(図6中のブームフットピン14、ブームシリンダピン15、スイングシリンダピン17)が挿入されるピン穴34が設けられている点
は、図7図10に示す従来のスイングブラケット12と同じである。
【0030】
各図において、35は本体(隣り合う取付部同士をつなぐ部分)である。
【0031】
また、図3中、36はスイングブラケット30の主取付部、37は図6中のスイングピン13が挿入されるスイングピン穴である。
【0032】
このスイングブラケット30においては、図1,2,4,5に示すように、スイングシリンダ取付部33の付け根部分に補強部38が設けられている。
【0033】
この補強部38は、両側支持腕33a,33bに跨る縦リブ39と、この縦リブ39に連なる前リブ40、後リブ41、上リブ42、下リブ43により、縦リブ39を奥壁としてスイングシリンダ取付部33の突出方向と反対側(左側)が開放する箱状(凹み状)に構成されている。
【0034】
いいかえれば、箱構造の補強部38の縦リブ39の外側に一対の支持腕33a,33bが突設されてスイングシリンダ取付部33が形成されている。
【0035】
なお、補強部38の断面形状や広さは種々選択可能である。たとえば水平断面形状として、図5に示すほぼ四角形のほか、奥が半円形となった形状等としてもよい。あるいは、前後のリブ40,41や上下のリブ42,43が外向きまたは内向きに湾曲した形状としてもよい。
【0036】
一方、図4に示すように、従来のスイングブラケット12において三角形の縦リブ26(図9参照)が設けられていた部分、すなわち、上側支持腕33aと本体右側面部が連続する角部Aは、応力集中が発生しないように円弧状のなだらかな曲面とされている。
【0037】
この構成によると、箱構造の補強部38により、スイングブラケット30全体の重量増加を抑えながら、とくにスイングシリンダ取付部33に対する高い補強効果を得ることができる。
【0038】
しかも、図9に示す従来の三角形リブ26の止端部分(破線丸囲い部分)のような応力集中部分がないため破損のおそれがないとともに、両側支持腕33a,33bの突出長さを短くした場合のようなスイングシリンダの動きが制限される等の弊害が生じるおそれもない。
【0039】
加えて、補強部38は、鋳型成形によって他の部分(本体35及び各取付部31〜33)と同時に成形することができるため、生産性、コストの点でも有利となる。
【符号の説明】
【0040】
1 下部走行体
2 上部旋回体
30 スイングブラケット
31 ブームフット取付部
32 ブームシリンダ取付部
33 スイングシリンダ取付部
33a,33b 支持腕
38 補強部
39 補強部を構成する縦リブ
40 前リブ
41 後リブ
42 上リブ
43 下リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10