特許第5786918号(P5786918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5786918樹脂封止金型およびこれを用いた樹脂封止装置、樹脂封止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786918
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】樹脂封止金型およびこれを用いた樹脂封止装置、樹脂封止方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20150910BHJP
   B29C 33/18 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   H01L21/56 R
   B29C33/18
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-220430(P2013-220430)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-82607(P2015-82607A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2013年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】第一精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100103012
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 隆宣
(72)【発明者】
【氏名】力丸 誠
【審査官】 原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−153146(JP,A)
【文献】 特開2007−307766(JP,A)
【文献】 特開2007−109831(JP,A)
【文献】 特開2005−225133(JP,A)
【文献】 特開2004−074461(JP,A)
【文献】 特開2004−098364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口するキャビティの周囲に設けた接合面にフィルム吸引孔を配置した下金型と、
前記キャビティを被覆し、かつ、外周縁部を前記フィルム吸引孔に吸着,保持される離型フィルムと、
前記下金型の接合面に圧接する押圧面を有する枠形状を有し、前記押圧面に設けたフィルム吸引孔で前記離型フィルムの外周縁部を吸着,保持するとともに、前記離型フィルムの上面に供給された樹脂材を前記離型フィルムとともに搬送する樹脂材供給ローダと、からなり、
前記離型フィルムの外周縁部を前記下金型の接合面と前記樹脂材供給ローダの押圧面とで挟持する樹脂封止金型であって、
前記キャビティと前記接合面との間に前記接合面よりも一段高い環状突部を設けたことを特徴とする樹脂封止金型。
【請求項2】
前記環状突部の上端部のうち、外周縁部に位置決め用環状突起部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止金型。
【請求項3】
前記環状突部の外側基部に、フィルム吸引孔を備えた環状吸着外溝部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂封止金型。
【請求項4】
前記キャビティの隅部に、環状吸着内溝部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂封止金型。
【請求項5】
前記下金型の接合面が傾斜面であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の樹脂封止金型
【請求項6】
前記下金型の外周縁部に接合面を備えた切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の樹脂封止金型
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の樹脂封止金型を有することを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項8】
下金型の開口するキャビティの周囲に設けた接合面に配置したフィルム吸引孔に、前記キャビティを被覆する離型フィルムの外周縁部を吸着,保持するとともに、内面に密着した前記離型フィルムで被覆された前記キャビティ内で、基板に実装した電子部品を樹脂材で樹脂封止する樹脂封止方法であって、
前記下金型の接合面に圧接する押圧面を有する枠形状を有し、かつ、前記押圧面に設けたフィルム吸引孔で前記離型フィルムの外周縁部を吸着,保持する樹脂材供給ローダで、前記離型フィルムの上面に供給された樹脂材を前記離型フィルムとともに前記下金型まで搬送し、
前記キャビティと前記接合面との間に前記接合面よりも一段高く設けた環状突部を前記離型フィルムで被覆するとともに、前記離型フィルムの外周縁部を、前記下金型の接合面に対向配置される押圧面を有する前記樹脂材供給ローダで、前記下金型の接合面に押圧して前記離型フィルムを張設した後、前記離型フィルムの外周縁部を前記下金型のフィルム吸引孔で吸着,保持することを特徴とする樹脂封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂封止金型、特に、離型フィルムを用いた樹脂封止金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、離型フィルムを用いた樹脂封止金型としては、例えば、樹脂モールド金型のパーティング面に吸着支持したリリースフィルムを介して被成形品をクランプすることにより樹脂モールドするリリースフィルムを用いる樹脂モールド装置において、前記パーティング面に、前記リリースフィルムのたるみ分をエア吸引してたるみを吸収するたるみ吸収溝を設けたことを特徴とするリリースフィルムを用いる樹脂モールド装置に使用される樹脂封止金型がある(引用文献1)。
しかし、前記樹脂封止金型では、リリースフィルムを樹脂モールド金型のパーティング面に吸着支持する際に前記リリースフィルムにシワやタルミが生じやすく、それらが成形品に転写されて不良品を発生させるという問題点がある。
【0003】
前記問題点を解決する方法の一つとして、例えば、半導体チップの樹脂封止成形用金型を用いて、樹脂成形用の金型キャビティ内に離型フィルムを前記したキャビティの外周囲に設けた吸着孔で吸着することによって被覆させると共に、前記した離型フィルムを被覆した金型キャビティ内で半導体チップを樹脂材料で封止成形する半導体チップの樹脂封止成形方法であって、前記した金型キャビティ内に前記した離型フィルムを被覆させるときに、前記した吸着孔の外周囲に設けた所要形状の吸引孔に前記した離型フィルムの端部を吸引して収容することを特徴とする半導体チップの樹脂封止成形方法において樹脂封止金型が開示されている(引用文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−34066号公報
【特許文献2】特開2009−272398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記樹脂封止金型では、発生したシワやタルミを消失させるため、前記離型フィルムの外周縁部を大きな吸引力で引っ張る必要があり、その大きさに見合った吸引手段を隣り合うように並設している。このため、前記封止金型では前記吸引手段を設置するためのスペースが必要となり、金型の取り付け面積が増大するので、装置が大型化するという問題点がある。
本発明に係る樹脂封止金型は、前記問題点に鑑み、離型フィルムにシワやタルミが生じず、成形品の歩留まりが良い小型の樹脂封止金型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹脂封止金型は、前記課題を解決すべく、開口するキャビティの周囲に設けた接合面にフィルム吸引孔を配置した下金型と、前記キャビティを被覆し、かつ、外周縁部を前記フィルム吸引孔に吸着,保持される離型フィルムと、前記下金型の接合面に圧接する押圧面を有する枠形状を有し、前記押圧面に設けたフィルム吸引孔で前記離型フィルムの外周縁部を吸着,保持するとともに、前記離型フィルムの上面に供給された樹脂材を前記離型フィルムとともに搬送する樹脂材供給ローダと、からなり、前記離型フィルムの外周縁部を前記下金型の接合面と前記樹脂材供給ローダの押圧面とで挟持する樹脂封止金型であって、前記キャビティと前記接合面との間に前記接合面よりも一段高い環状突部を設けた構成としてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記環状突部を介して離型フィルムの外周縁部を引っ張ることができるので、前記離型フィルムにシワやタルミが生じにくくなり、歩留まりの良い小型の樹脂封止金型が得られる。
【0008】
本発明の実施形態としては、前記環状突部の上端部のうち、外周縁部に位置決め用環状突起部を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、基板の位置決め精度が向上し、歩留まりの良い樹脂封止金型が得られる。
【0009】
本発明の他の実施形態としては、前記環状突部の外側基部に、環状吸着外溝部を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、前記環状吸着外溝部が前記離型フィルムの外周縁部を均一に引っ張ることにより、シワやタルミが生じないだけでなく、万一、シワ等が生じていたとしても消失させることができる。
【0010】
本発明の別の実施形態としては、前記キャビティの隅部に、環状吸着内溝部を形成しておいてもよい。
本実施形態によれば、前記離型フィルムを均一に引っ張ることにより、シワやタルミが生じないだけでなく、万一、シワ等が生じていたとしても消失させることができる。
【0011】
本発明の他の実施形態としては、前記下金型の接合面が傾斜面であってもよい。
本実施形態によれば、前記接合面の傾斜面に沿って生じた分力で前記離型フィルムの外周縁部を均一に引っ張ることができ、シワやタルミが生じないだけでなく、万一、シワ等が生じたとしても、これらを消失させることができる。
【0012】
本発明の別の実施形態としては、前記下金型の外周縁部に接合面を備えた切り欠き部を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、前記環状突部および前記切り欠き部の縁部の2点を支点として前記離型フィルムの外周縁部を均一に引っ張ることにより、シワやタルミが生じないだけでなく、万一、シワ等が生じたとしても、これらを消失させることができる。
【0013】
本発明に係る樹脂封止装置としては、前述の樹脂封止金型を有する構成としてある。
【0014】
本発明によれば、前記環状突部を介して離型フィルムの外周縁部を引っ張ることができるので、前記離型フィルムにシワやタルミが生じにくく、歩留まりの良い小型の樹脂封止装置が得られる。
【0015】
本発明に係る樹脂封止方法は、前記課題を解決すべく、下金型の開口するキャビティの周囲に設けた接合面に配置したフィルム吸引孔に、前記キャビティを被覆する離型フィルムの外周縁部を吸着,保持するとともに、内面に密着した前記離型フィルムで被覆された前記キャビティ内で、基板に実装した電子部品を樹脂材で樹脂封止する樹脂封止方法であって、前記下金型の接合面に圧接する押圧面を有する枠形状を有し、かつ、前記押圧面に設けたフィルム吸引孔で前記離型フィルムの外周縁部を吸着,保持する樹脂材供給ローダで、前記離型フィルムの上面に供給された樹脂材を前記離型フィルムとともに前記下金型まで搬送し、前記キャビティと前記接合面との間に前記接合面よりも一段高く設けた環状突部を前記離型フィルムで被覆するとともに、前記離型フィルムの外周縁部を、前記下金型の接合面に対向配置される押圧面を有する前記樹脂材供給ローダで、前記下金型の接合面に押圧して前記離型フィルムを張設した後、前記離型フィルムの外周縁部を前記下金型のフィルム吸引孔で吸着,保持する工程としてある。
【0016】
本発明によれば、前記環状突部を介して離型フィルムの外周縁部を引っ張って前記離型フィルムを張設できるので、前記離型フィルムにシワやタルミが生じにくく、歩留まりの良い樹脂封止方法が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図Aおよび図Bは本発明に係る樹脂封止金型の第1実施形態の下型を示す平面図および正面断面図である。
図2図Aおよび図B図1の樹脂封止金型に樹脂材を供給する樹脂材供給ローダを示す平面図および正面断面図である。
図3図Aおよび図B図1の樹脂封止金型に図2の樹脂材供給ローダを位置決めした状態を示す平面図および正面断面図である。
図4】樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図5図4に続く樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図6図5に続く樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図7図6に続く樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図8図7に続く樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図9図8に続く樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図10図9に続く樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図11図10に続く樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図12図11に続く樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図13図12に続く樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図14図13に続く樹脂封止工程を説明するための概略断面図である。
図15図Aないし図Dは樹脂封止工程を説明するための要部拡大断面図である。
図16図Aないし図Cは本発明に係る樹脂封止金型の第2,第3,第4実施形態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る樹脂封止金型の実施形態を、図1ないし図16の添付図面に従って説明する。
第1実施形態に係る樹脂封止金型は、図1ないし図15に示すように、下金型である下型10(図1)および上型40(図4)からなるものであり、前記下型10に樹脂材供給ローダ50(図2)を介して樹脂材62が供給される。
【0019】
前記下型10は、断面C字形を有する下型本体11と、前記下型本体11と同一平面形状を有し、かつ、コイルバネ12を介して載置した下型枠体20と、前記下型本体11および前記下型枠体20内に収納されたキャビティブロック30とで形成されている。
また、前記下型枠体20の環状の接合面21のうち、その内周縁部に沿って前記接合面21よりも一段高い環状突部22を突設してある。前記環状突部22は後述する離型フィルム61にシワやタルミの発生を防止するためのものである。さらに、前記環状突部22の上端部のうち、外周縁部には位置決め用環状突起部23が形成されている。前記位置決め用環状突起部23は後述する基板60を位置決めする機能を有するとともに、前記離型フィルム61に線接触することにより、シワやタルミの発生をより一層効果的に防止するためのものである。
そして、前記環状突部22の外側基部に沿って環状吸着外溝部24が形成されているとともに、前記環状吸着外溝部24の底面には所定のピッチでフィルム吸引孔25が形成されている。
【0020】
さらに、前記下型枠体20の内側面とキャビティブロック30の上面とでキャビティ31が形成されているとともに、前記キャビティ31の隅部に沿って環状吸着内溝部32が形成されている。そして、前記環状吸着内溝部32はフィルム吸引孔33に連通している。
【0021】
一方、前記上型40は、図4に示すように、前記下型10を被覆可能な平面形状を有し、その底面の外周縁部に沿ってシール材41を環状に埋設してあるとともに、前記シール材41の内側に基板60を吸着,保持するための基板吸引孔42を所定のピッチで設けてある。
【0022】
前記樹脂材供給ローダ50は、図2に示すように、前記下型10を被覆可能な平面形状を有し、特に、前記下型枠体20の接合面21に圧接する押圧面51を備えた枠形状である。そして、前記押圧面51には、離型フィルム61を吸着,保持するためのフィルム吸引孔52を所定のピッチで設けてある。また、前記樹脂材供給ローダ50は、前記離型フィルム61の上面に所定量の粉状あるいは粒状の樹脂材62を散布,堆積し、前記下型10に搬送して供給する。
【0023】
次に、前記樹脂封止金型による成形方法を、図4ないし図15に基づいて説明する。
まず、上下に開いた下型10および上型40の間に、図示しない基板供給ローダを介して樹脂封止される基板60が搬入された後、前記基板供給ローダが上昇して前記基板60を前記上型40の下面に当接させる。そして、前記上型40の基板吸引孔42が前記基板60を吸引し、吸着,保持する(図5)。
【0024】
そして、図6に示すように、前記下型10と前記上型40との間に樹脂材供給ローダ50が位置決めされた後、前記樹脂材供給ローダ50が下降することにより(図7)、前記離型フィルム61が下型枠体20の環状突部22に設けた位置決め用環状突起部23に当接する。このとき、離型フィルム61は樹脂材供給ローダ50のフィルム吸引孔52により吸着された状態にあるので、前記離型フィルム61にはシワやタルミが生じない。
さらに、前記樹脂材供給ローダ50が下降することにより、樹脂材供給ローダ50の押圧面51が下型枠体20の接合面21に当接し、前記離型フィルム61の外周縁部を機械的に引っ張る。このため、万一、前記離型フィルム61にシワやタルミが生じていても、前記離型フィルム61が引き伸ばされるので、シワやタルミが消失する。
ついで、前記下型枠体20の環状吸着外溝部24に設けたフィルム吸引孔25が前記離型フィルム61を前記環状突部22に沿って吸引し、吸着,保持する(図8)。このため、シワ,タルミの発生,残存を防止できる。
さらに、前記キャビティ31の隅部に形成した環状吸着内溝部32からフィルム吸引孔33を介して前記離型フィルム61を吸引する。これにより、前記離型フィルム61全体が、キャビティ31の底面、すなわち、前記キャビティブロック30の上面、および、前記キャビティ31の内側面に密着する(図9)。その後、前記樹脂材供給ローダ50が退出する(図10)。
【0025】
以上の成形工程の一部を、より詳細に図示して説明すると、図15Aに示すように、前記樹脂材供給ローダ50が下降することにより、前記離型フィルム61が下型枠体20の環状突部22に設けた位置決め用環状突起部23に当接する。さらに、前記樹脂材供給ローダ50が下降することにより、樹脂材供給ローダ50の押圧面51が下型枠体20接合面21に当接する(図15B)。そして、前記下型枠体20の環状吸着外溝部24に設けたフィルム吸引孔25,26が前記離型フィルム61を前記環状突部22に沿って吸引し、シワやタルミを完全に消失させる(図15C)。ついで、前記キャビティ31の隅部に形成した環状吸着内溝部32で吸引し、前記キャビティブロック30の上面および環状突部22の内側面に前記離型フィルム61を吸着,保持する(図15D)。これら一連の成形工程により、前記離型フィルム61にシワやタルミが生ぜず、万一、シワやタルミが生じたとしても、消失させることができる。なお、フィルム吸引孔26は、説明の便宜上、図1図3ないし図14には図示していない。
【0026】
ついで、図11に示すように、前記下型10を上昇させ、前記下型枠体20の接合面21を上型40のシール材41に当接させるとともに、前記下型10の環状突部22と前記上型40の下面とで前記基板60を挟持する。このとき、前記環状突部22の上端部に設けた位置決め用環状突起部23が前記基板60を位置決めする。
さらに、前記キャビティ31内の空気を図示しない吸引孔を介して真空引きした後(図12)、前記下型10を更に上昇させることにより、コイルバネ12を圧縮させて前記キャビティブロック30を上昇させる。そして、前記キャビティブロック30が樹脂材62を加熱,溶融させて前記基板60の下面に押し付けることにより(図13)、前記基板60の下面に実装した電子部品が樹脂封止され、成形品63が得られる。
【0027】
そして、前記樹脂材62が固化した後、前記下型10を引き下げ(図14)、前記下型枠体20と前記上型40との間に図示しないアンローダを搬送,下降し、前記成形品63を搬出する。
【0028】
本発明に係る樹脂封止金型の第2実施形態は、図16A示すように、前記第1実施形態とほぼ同様であり、異なる点は環状突部22の外側基部に環状吸着外溝部を設けない点である。本実施形態によれば、下型10の製造が容易になるという利点がある。
【0029】
また、第3実施形態は、図16Bに示すように、下型枠体20の接合面27および樹脂材供給ローダ50の押圧面53をそれぞれ傾斜面とした点である。本実施形態によれば、下型枠体20の接合面27に樹脂材供給ローダ50の押圧面53が当接すると、前記接合面27,押圧面53に沿って生じた分力が、前記離型フィルム61の外周縁部を引っ張る引張力となるので、シワやタルミがより一層生じにくくなるという利点がある。
【0030】
さらに、第4実施形態は、図16Cに示すように、前記下型枠体20の傾斜した接合面21の外周縁部に切り欠き部28を形成する一方、前記樹脂材供給ローダ50に前記切り欠き部28に嵌合する段部54を形成し、その下端面を前記切り欠き部28の接合面29に当接する押圧面55とした点である。前記段部54の下面にはフィルム吸引孔52が連通している。
【0031】
本実施形態によれば、前記樹脂材供給ローダ50の段部54に設けたフィルム吸引孔52が、前記離型フィルム61の外周縁部を吸着,保持し、環状突部22の位置決め用環状突起部23および切り欠き部28の角部を介して引っ張る。このため、機械的引張力がより大きくなり、シワやタルミがより一層生じにくくなり、万一、生じたとしても、これらを消失させることができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る樹脂封止金型は、前述の実施形態に限らず、他の形態の樹脂封止金型に適用してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
10:下型(下金型)
11:下型本体
12:コイルバネ
20:下型枠体
21,27,29:接合面
22:環状突部
23:位置決め用環状突起部
24:環状吸着外溝部
25,26:フィルム吸引孔
28:切り欠き部
30:キャビティブロック
31:キャビティ
32:環状吸着内溝部
33:フィルム吸引孔
40:上型
41:シール材
42:基板吸引孔
50:樹脂材供給ローダ
51,53,55:押圧面
52:フィルム吸引孔
54:段部
60:基板
61:離型フィルム
62:樹脂材
63:成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16