特許第5787046号(P5787046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787046
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/40 20150101AFI20150910BHJP
【FI】
   H04B1/40
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-512279(P2015-512279)
(86)(22)【出願日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2013082684
(87)【国際公開番号】WO2014171033
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2015年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-88288(P2013-88288)
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】竹松 佑二
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−055241(JP,A)
【文献】 特開2011−055446(JP,A)
【文献】 特開平04−306906(JP,A)
【文献】 特開平09−289423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38− 1/58
H04B 1/04
H03F 1/00− 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域の高周波信号が通過する第1の信号経路と、第2の周波数帯域の高周波信号が通過する第2の信号経路とが設けられた多層基板を備える高周波モジュールにおいて、
前記第1の信号経路は、
第1の増幅回路と、前記第1の増幅回路の後段に接続された第1の整合回路と、前記第1の整合回路の後段に接続された第1のフィルタ回路とを備え、
前記第2の信号経路は、
第2の増幅回路と、前記第2の増幅回路の後段に接続された第2の整合回路と、前記第2の整合回路の後段に接続された第2のフィルタ回路とを備え、
前記第1の信号経路の前記第1の増幅回路の後段から前記第1のフィルタ回路の前段までの部分と、前記第2の信号経路の前記第2の増幅回路の後段から前記第2のフィルタ回路の前段までの部分とが、前記多層基板において平面視で少なくとも1回交差している
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
前記第1の増幅回路は、前記多層基板の第1の領域に配置され、
前記第2の増幅回路は、前記多層基板の第2の領域に配置され、
前記第1のフィルタ回路は、前記第2の領域に配置され、
前記第2のフィルタ回路は、前記第1の領域に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記第1の増幅回路は、前記多層基板の第1の領域に配置され、
前記第2の増幅回路は、前記多層基板の第2の領域に配置され、
前記第1の整合回路は、前記第2の領域に配置され、
前記第2の整合回路は、前記第1の領域に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とが2回以上交差していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項5】
前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とが交差する箇所において、前記第1の信号経路に第1の方向性結合器が設けられ、前記第2の信号経路に第2の方向性結合器が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とが交差する箇所において、前記第1の信号経路に第3のフィルタ回路が設けられ、前記第2の信号経路に第4のフィルタ回路が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の周波数帯域の高周波信号が通過する第1の信号経路と、第2の周波数帯域の高周波信号が通過する第2の信号経路とが設けられた多層基板を備える高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図13(a),(b)に示すように、それぞれ異なる周波数帯域の送信信号(高周波信号)が通過する複数の信号経路が設けられた多層基板501を備えるマルチバンド対応の高周波モジュール500が提供されている。図13は従来のモジュールを示す図であって、(a)は平面図、(b)は回路ブロック図である。高周波モジュール500は、800MHz帯の送信信号が通過する第1の信号経路502と、1.9GHz帯の送信信号が通過する第2の信号経路503とを備えている。また、各信号経路502,503には、パワーアンプPAと、パワーアンプPAの後段に接続された分波器DPXとが設けられている。また、一般的には、各パワーアンプPAのそれぞれには、増幅回路504と、増幅回路504の後段に接続された整合回路505とが含まれている。
【0003】
また、マルチバンド対応の高周波モジュール500では、各信号経路502,503間の干渉を防止するため、多層基板501が各周波数帯域用の複数の領域A,Bに分割されている。そして、分割配置された各領域A,Bのそれぞれに、対応する周波数帯域用の信号経路502,503が配置され、各信号経路502,503それぞれに、パワーアンプPAおよび分波器DPX等の各種部品が配置される。また、各領域A,B間にグランド電極が配置されることにより、各領域A,Bのそれぞれに配置された各信号経路502,503間の干渉が防止されている。
【0004】
また、高周波モジュール500では、各信号経路502,503が配置された各領域A,Bのそれぞれにおいて、パワーアンプPAおよび分波器DPX間の干渉を防止するため、次のような対策が講じられている。すなわち、パワーアンプPA用のグランド電極と、分波器DPX用のグランド電極とが、電気的に分離された状態で多層基板501内に個別に設けられている。
【0005】
ところで、一般的に、入力された所望の周波数帯域の高周波信号の整数倍の高調波成分がパワーアンプPAにおいて発生し、高調波成分を含む高周波信号がパワーアンプPAから出力される。しかしながら、パワーアンプPAから出力された高調波成分を含む高周波信号が所望の周波数帯域の信号のみを通過させるフィルタ機能を備えた分波器DPXに入力されることにより、高周波信号から不要な高調波成分が除去されて、所望の周波数帯域の送信信号が分波器DPXから出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−124202号公報(段落0020〜0033,0057、図1図3など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、GSM(登録商標)(Global System for Mobile
Communications)規格やCDMA(Code Division Multiple Access)規格、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)規格など、複数の通信規格による通信をサポートする携帯電話や携帯情報端末などの通信携帯端末が急速に普及している。これらの通信携帯端末が備えるマザー基板には、上記したように、周波数の異なる送信信号および受信信号を分波する分波器DPXや送信信号を増幅するパワーアンプPA、受信信号を増幅するローノイズアンプ等を備えるマルチバンド対応の高周波モジュール500が搭載される。
【0008】
ところが、通信携帯端末の小型化が進み、これらの機器に搭載される高周波モジュール500のさらなる小型化が要求されている。したがって、高周波モジュール500の小型化が進むことにより、次のような問題が生じている。すなわち、高周波モジュール500の小型化を図るために多層基板501が小型化されることにより、多層基板501の各領域A,Bのそれぞれに配置されるパワーアンプPAおよび分波器DPX間の信号経路の物理的な距離が縮まると共に、各信号経路502,503が最短距離で配線される。すなわち、配線による損失が最も小さくなる距離を最短距離と呼ぶ。また、パワーアンプPAおよび分波器DPXのそれぞれに対応して多層基板501に設けられるグランド電極も小型化されている。
【0009】
パワーアンプPAおよび分波器DPX間の信号経路の物理的な距離が縮まっているのに伴い、グランド電極も小型化されるため、小型化されたグランド電極が本来の機能を発揮することができない。したがって、パワーアンプPAから出力された高出力の高周波信号が、多層基板501に設けられた分波器DPXを含む各種の部品や配線電極に干渉するという問題が生じている。具体的には、パワーアンプPAや高周波モジュール500の出力側と、パワーアンプPAの入力側との間にグランド電極や空間等を介した帰還ループが形成され、出力信号がパワーアンプPAへの入力信号に干渉することにより、パワーアンプPAにおいて発生する高調波信号がパワーアンプPAにて増幅され、分波器DPXでは十分に減衰されずに出力されるという問題が生じている。また、パワーアンプPAから出力された不要な高調波成分を含む高周波信号が、分波器DPXに入力されずにグランド電極や空間等を介して高周波モジュール500の出力端子から直接出力されることにより、高周波モジュール500のRF特性が劣化するという問題が生じている。
【0010】
この発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、高調波信号が増幅回路において発生するのが抑制されると共に、不要な高調波成分を含む高周波信号が出力されるのが防止されたマルチバンド対応の高周波モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明の高周波モジュールは、第1の周波数帯域の高周波信号が通過する第1の信号経路と、第2の周波数帯域の高周波信号が通過する第2の信号経路とが設けられた多層基板を備える高周波モジュールにおいて、前記第1の信号経路は、第1の増幅回路と、前記第1の増幅回路の後段に接続された第1の整合回路と、前記第1の整合回路の後段に接続された第1のフィルタ回路とを備え、前記第2の信号経路は、第2の増幅回路と、前記第2の増幅回路の後段に接続された第2の整合回路と、前記第2の整合回路の後段に接続された第2のフィルタ回路とを備え、前記第1の信号経路の前記第1の増幅回路の後段から前記第1のフィルタ回路の前段までの部分と、前記第2の信号経路の前記第2の増幅回路の後段から前記第2のフィルタ回路の前段までの部分とが、前記多層基板において平面視で少なくとも1回交差していることを特徴とする高周波モジュール。
【0012】
このように構成された発明では、第1の周波数帯域の高周波信号が通過する第1の信号経路は、第1の増幅回路と、第1の増幅回路の後段に接続された第1の整合回路と、第1の整合回路の後段に接続された第1のフィルタ回路とを備えている。また、第2の周波数帯域の高周波信号が通過する第2の信号経路は、第2の増幅回路と、第2の増幅回路の後段に接続された第2の整合回路と、第2の整合回路の後段に接続された第2のフィルタ回路とを備えている。そして、第1の信号経路の第1の増幅回路の後段から第1のフィルタ回路の前段までの部分と、第2の信号経路の第2の増幅回路の後段から第2のフィルタ回路の前段までの部分とが、多層基板において平面視で少なくとも1回交差している。
【0013】
したがって、第1の信号経路と第2の信号経路とが多層基板において平面視で少なくとも1回交差しているので、第1の増幅回路および第1のフィルタ回路間の第1の信号経路の物理的な距離と、第2の増幅回路および第2のフィルタ回路間の第2の信号経路の物理的な距離とが、信号経路が最短経路で配線される従来の構成と比較すると十分に長くなる。そのため、第1の増幅回路および第1のフィルタ回路間の第1の信号経路と、第2の増幅回路および第2のフィルタ回路間の第2の信号経路とに対して、従来よりも大型化されたグランド電極を配置することができる。また、従来のように、増幅回路およびフィルタ回路等の各機能ごとにグランド電極を電気的に分離して独立して設けずにグランド電極を大型化しても、第1の増幅回路および第1のフィルタ回路間の第1の信号経路と、第2の増幅回路および第2のフィルタ回路間の第2の信号経路とが十分に長く、グランド電極が本来の機能を発揮することができるので、高周波モジュールの接地状態が理想的な状態に近づき安定する。
【0014】
したがって、第1の増幅回路および第2の増幅回路から出力された高出力の高周波信号が、それぞれ、多層基板に設けられた第1のフィルタ回路および第2のフィルタ回路や、第1の信号経路および第2の信号経路に干渉するのを防止することができる。具体的には、第1の増幅回路および第2の増幅回路それぞれの出力側と入力側との間にグランド電極や空間等を介した帰還ループが形成されるのが防止されるので、第1の増幅回路および第2の増幅回路それぞれの出力信号がそれぞれの入力信号に干渉することにより高調波信号が第1の増幅回路および第2の増幅回路のそれぞれにおいて発生するのを抑制することができる。
【0015】
また、第1の増幅回路および第2の増幅回路から出力された不要な高調波成分を含む高周波信号が、それぞれ、第1のフィルタ回路および第2のフィルタ回路に入力されずにグランド電極や空間等を介してや高周波モジュールから直接出力されるのを防止することができる。したがって、不要な高調波成分を含む高周波信号が出力されるのが防止されて優れたRF特性を有するマルチバンド対応の高周波モジュールを提供することができる。
【0016】
また、前記第1の増幅回路は、前記多層基板の第1の領域に配置され、前記第2の増幅回路は、前記多層基板の第2の領域に配置され、前記第1のフィルタ回路は、前記第2の領域に配置され、前記第2のフィルタ回路は、前記第1の領域に配置されるとよい。
【0017】
このように構成すると、第1の信号経路に設けられた第1のフィルタ回路は、第1の増幅回路が配置された多層基板の第1の領域と異なる第2の領域に配置されている。また、第2の信号経路に設けられた第2のフィルタ回路は、第2の増幅回路が配置された多層基板の第2の領域と異なる第1の領域に配置されている。そのため、第1のフィルタ回路および第2のフィルタ回路の配置が第1の領域と第2の領域との間で入れ換わっているので、第1の信号経路の第1の増幅回路の後段から第1のフィルタ回路の前段までの部分と、第2の信号経路の第2の増幅回路の後段から第2のフィルタ回路の前段までの部分とが、多層基板において確実に平面視で少なくとも1回交差する。したがって、第1の増幅回路および第1のフィルタ回路間の第1の信号経路の物理的な距離と、第2の増幅回路および第2のフィルタ回路間の第2の信号経路の物理的な距離とが十分に長く、不要な高調波成分を含む高周波信号が出力されるのが防止されて優れたRF特性を有する高周波モジュールを提供することができる。
【0018】
また、前記第1の増幅回路は、前記多層基板の第1の領域に配置され、前記第2の増幅回路は、前記多層基板の第2の領域に配置され、前記第1の整合回路は、前記第2の領域に配置され、前記第2の整合回路は、前記第1の領域に配置されるとよい。
【0019】
このように構成すると、第1の信号経路に設けられた第1の整合回路は、第1の増幅回路が配置された多層基板の第1の領域と異なる第2の領域に配置されている。また、第2の信号経路に設けられた第2の整合回路は、第2の増幅回路が配置された多層基板の第2の領域と異なる第1の領域に配置されている。そのため、第1の整合回路および第2の整合回路の配置が第1の領域と第2の領域との間で入れ換わっているので、第1の信号経路の第1の増幅回路の後段から第1のフィルタ回路の前段までの部分と、第2の信号経路の第2の増幅回路の後段から第2のフィルタ回路の前段までの部分とが、多層基板において確実に平面視で少なくとも1回交差する。したがって、第1の増幅回路および第1のフィルタ回路間の第1の信号経路の物理的な距離と、第2の増幅回路および第2のフィルタ回路間の第2の信号経路の物理的な距離とが十分に長く、不要な高調波成分を含む高周波信号が出力されるのが防止されて優れたRF特性を有する高周波モジュールを提供することができる。
【0020】
また、前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とが2回以上交差しているとよい。
【0021】
このようにすれば、第1の信号経路と第2の信号経路とが2回以上交差しているため、各信号経路をさらに長くすることができ、不要な高調波成分を含む高周波信号が出力されるのが防止されて、より一層優れたRF特性を有する高周波モジュールを提供することができる。
【0022】
また、第1の増幅回路および第1のフィルタ回路間の第1の信号経路の物理的な距離と、第2の増幅回路および第2のフィルタ回路間の第2の信号経路の物理的な距離とが十分に長いので、当該部分において、第1の信号経路および第2の信号経路のそれぞれに方向性結合器やフィルタ回路等をさらに設けることができる。
【0023】
そこで、前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とが交差する箇所において、前記第1の信号経路に第1の方向性結合器が設けられ、前記第2の信号経路に第2の方向性結合器が設けられているとよい。
【0024】
このように構成すれば、第1の方向性結合器により、第1の増幅回路から出力された高周波信号を第1の信号経路から取り出すことができるので、取り出した高周波信号の信号レベル等を検波回路等により検出することができる。また、第2の方向性結合器により、第2の増幅回路から出力された高周波信号を第2の信号経路から取り出すことができるので、取り出した高周波信号の信号レベル等を検波回路等により検出することができる。また、第1の信号経路と第2の信号経路とが交差することにより信号経路(配線パターン)が長くなるので、各方向性結合器の方向性を改善することができる。したがって、例えばアンテナからの反射波による高周波信号等を除外することができ、各増幅回路から出力された高周波信号のみを各方向性結合器により検出することができる。
【0025】
また、前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とが交差する箇所において、前記第1の信号経路に第3のフィルタ回路が設けられ、前記第2の信号経路に第4のフィルタ回路が設けられているとよい。
【0026】
このように構成すれば、第1の信号経路および第2の信号経路それぞれに配置された第3のフィルタ回路および第4のフィルタ回路により、第1の増幅回路および第2の増幅回路それぞれから出力される高周波信号に含まれる高調波成分を減衰させることができるので、さらに優れたRF特性を有する高周波モジュールを提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1の増幅回路および第2の増幅回路から出力された高出力の高周波信号が、それぞれ、多層基板に設けられた第1のフィルタ回路および第2のフィルタ回路や、第1の信号経路および第2の信号経路に干渉するのを防止することができるので、高調波信号が第1の増幅回路および第2の増幅回路のそれぞれにおいて発生するのを抑制することができ、不要な高調波成分を含む高周波信号が出力されるのが防止されて優れたRF特性を有するマルチバンド対応の高周波モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の高周波モジュールの第1実施形態を示す図である。
図2図1の高周波モジュールが備える多層基板の各絶縁層を示す平面図であって、(a)〜(e)はそれぞれ異なる絶縁層を示す。
図3】平面視での第1の信号経路および第2の信号経路を示す図であって、(a)は増幅回路の前段の信号経路を示し、(b)は増幅回路の後段の信号経路を示す。
図4図1の高周波モジュールの第1の信号経路から出力される高周波信号に含まれる高調波成分の電力密度を示す図であって、(a)は第2高調波成分の電力密度を示し、(b)は第3高調波成分の電力密度を示す。
図5図1の高周波モジュールの第2の信号経路から出力される高周波信号に含まれる高調波成分の電力密度を示す図であって、(a)は第2高調波成分の電力密度を示し、(b)は第3高調波の電力密度を示す。
図6】本発明の高周波モジュールの第2実施形態を示す図である。
図7】本発明の高周波モジュールの第3実施形態を示す図である。
図8】本発明の高周波モジュールの第4実施形態を示す図である。
図9】本発明の高周波モジュールの第5実施形態を示す図である。
図10】本発明の高周波モジュールの第6実施形態を示す図である。
図11】本発明の高周波モジュールの第7実施形態を示す図である。
図12】本発明の高周波モジュールの第8実施形態を示す図である。
図13】従来の高周波モジュールを示す図であって、(a)は平面図、(b)は回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
本発明の高周波モジュールの第1実施形態について、図1図5を参照して説明する。図1は本発明の高周波モジュールの第1実施形態を示す図、図2図1の高周波モジュールが備える多層基板の各絶縁層を示す平面図であって、(a)〜(e)はそれぞれ異なる絶縁層を示し、図3は平面視での第1の信号経路および第2の信号経路を示す図であって、(a)は増幅回路の前段の信号経路を示し、(b)は増幅回路の後段の信号経路を示す。
【0030】
また、図4図1の高周波モジュールの第1の信号経路から出力される高周波信号に含まれる高調波成分の電力密度を示す図であって、(a)は第2高調波成分の電力密度を示し、(b)は第3高調波成分の電力密度を示す。また、図5図1の高周波モジュールの第2の信号経路から出力される高周波信号に含まれる高調波成分の電力密度を示す図であって、(a)は第2高調波成分の電力密度を示し、(b)は第3高調波の電力密度を示す。
【0031】
なお、図1および図2では、本発明にかかる主要な構成のみ図示されており、その他の構成は説明を簡易なものとするため図示省略されている。また、後で説明する第2実施形態〜第5実施形態を示す図6図12についても、図1と同様に主要な構成のみ図示されているため、以下ではその説明は省略する。
【0032】
(構成)
図1に示す高周波モジュール1は、通信機能を備える携帯電話や携帯情報端末などの通信携帯端末が備えるマザー基板等に搭載されるものである。この実施形態では、第1の周波数帯域(Band13)の送信信号(高周波信号)が通過する第1の信号経路SL1と、第2の周波数帯域(Band17)の送信信号(高周波信号)が通過する第2の信号経路SL2とが設けられた多層基板2を備えている。
【0033】
第1の信号経路SL1には、第1の増幅回路31および第1の増幅回路31の後段に接続された第1の整合回路41を含む第1のパワーアンプPA1と、第1の整合回路41の後段に接続された第1の送信フィルタ回路51(本発明の「第1のフィルタ回路」に相当)を含む分波器DPX1が設けられている。また、第2の信号経路SL2には、第2の増幅回路32および第2の増幅回路32の後段に接続された第2の整合回路42を含む第2のパワーアンプPA2と、第2の整合回路42の後段に接続された第2の送信フィルタ回路52(本発明の「第2のフィルタ回路」に相当)を含む分波器DPX2が設けられている。なお、各分波器DPX1,DPX2それぞれに含まれる受信信号用の受信フィルタ回路は、説明を簡易なもとするため図示省略されている。
【0034】
第1、第2のパワーアンプPA1,PA2それぞれは、第1の信号経路SL1および第2の信号経路SL2それぞれに入力される第1、第2の周波数帯域の送信信号の信号レベルを増幅するものである。第1、第2の増幅回路31,32はそれぞれヘテロ接合型バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタ等の一般的な電力増幅素子により形成される。第1、第2の整合回路41,42は各増幅回路31,32におけるそれぞれの出力インピーダンスを所定の値(例えば50Ω)に整合させるものである。
【0035】
第1、第2の分波器DPX1,DPX2それぞれは、送信信号および受信信号を分離するものである。第1、第2の送信フィルタ回路51,52および受信フィルタ回路はそれぞれSAW(弾性表面波)フィルタ素子やBAW(バルク弾性波)フィルタ素子、LCフィルタ、誘電体フィルタ等の一般的なフィルタ回路により形成される。また、第1の送信フィルタ回路51は第1の周波数帯域の高周波信号を通過させ、第2のフィルタ回路52は第2の周波数帯域の高周波信号を通過させる、帯域通過型のフィルタに構成されている。
【0036】
また、第1のパワーアンプPA1(第1の増幅回路31、第1の整合回路41)は多層基板2の第1の領域Aに配置され、第2のパワーアンプPA2(第2の増幅回路32、第2の整合回路42)は多層基板2の第2の領域Bに配置されている。また、第1の分波器DPX1(第1の送信フィルタ回路51)は多層基板2の第2の領域Bに配置され、第2の分波器DPX2(第2の送信フィルタ回路52)は多層基板2の第1の領域Aに配置されている。
【0037】
また、多層基板2の第2の領域Bにおける裏面に、第1の周波数帯域の送信信号が外部から入力される第1の入力電極21aと、当該送信信号が外部に出力される第1の出力電極21bとが設けられており、第1の入力電極21aと第1の出力電極21bとの間に第1の信号経路SL1が形成されている。また、多層基板2の第1の領域Aにおける表面に、第1のパワーアンプPA1が実装される実装電極21c,21dが設けられ、第1の入力電極21aと実装電極21cとが多層基板2内の配線電極により接続されている。また、多層基板2の第2の領域Bにおける表面に、第1の分波器DPX1が実装される実装電極21e,21fが設けられ、多層基板2内の配線電極により、実装電極21d,21eが接続され、実装電極21fと第1の出力電極21bとが接続されている。
【0038】
また、多層基板2の第1の領域Aにおける裏面に、第2の周波数帯域の送信信号が外部から入力される第2の入力電極22aと、当該送信信号が外部に出力される第2の出力電極22bとが設けられており、第2の入力電極22aと第2の出力電極22bとの間に第2の信号経路SL2が形成されている。また、多層基板2の第2の領域Bにおける表面に、第2のパワーアンプPA2が実装される実装電極22c,22dが設けられ、第2の入力電極22aと実装電極22cとが多層基板2内の配線電極により接続されている。また、多層基板2の第1の領域Aにおける表面に、第2の分波器DPX2が実装される実装電極22e,22fが設けられ、多層基板2内の配線電極により、実装電極22d,22eが接続され、実装電極22fと第2の出力電極22bとが接続されている。
【0039】
また、両パワーアンプPA1,PA2の前段において、第1の信号経路SL1および第2の信号経路SL2が多層基板2において平面視で交差している。そして、第2の領域Bに配置された第1の入力電極21aと第1の領域Aに配置された実装電極21cとが接続され、第1の領域Aに配置された第2の入力電極22aと第2の領域Bに配置された実装電極22cとが接続されている。
【0040】
また、第1の信号経路SL1の第1のパワーアンプPA1の後段から分波器DPX1の前段までの部分と、第2の信号経路SL2のパワーアンプPA2の後段から分波器DPX2の前段までの部分とが、多層基板2において平面視で交差している。そして、第1の領域Aに配置された実装電極21dと第2の領域Bに配置された実装電極21eとが接続され、第2の領域Bに配置された実装電極22dと第1の領域Aに配置された実装電極22eとが接続されている。
【0041】
また、第1のパワーアンプPA1および第2のパワーアンプPA2の後段で第1の信号経路SL1と第2の信号経路SL2とが交差する箇所において、第1の信号経路SL1に第1の方向性結合器61(カプラ)が設けられ、第2の信号経路SL2に第2の方向性結合器62(カプラ)が設けられている。第1、第2の方向性結合器61,62それぞれは、各パワーアンプPA1,PA2それぞれから出力される送信信号(高周波信号)を取り出して検波回路等により検出し、検出された高周波信号の信号レベルに基づいて各パワーアンプPA1,PA2を制御するためのものである。
【0042】
第1の方向性結合器61は、第1の信号経路SL1に形成されたコイルパターン61aと、コイルパターン61aが形成された絶縁層の同一面内または当該絶縁層に隣接する絶縁層に形成されたコイルパターン61bとを備えている。また、コイルパターン61bの一端は多層基板2の裏面に設けられた信号取出し用の第1の取出電極21gに接続され、その他端は多層基板2の裏面に設けられた外部の終端抵抗への接続用の第1の終端抵抗接続用電極21jに接続されている。
【0043】
第2の方向性結合器62は、第2の信号経路SL2に形成されたコイルパターン62aと、コイルパターン62aが形成された絶縁層の同一面内または当該絶縁層に隣接する絶縁層に形成されたコイルパターン62bとを備えている。また、コイルパターン62bの一端は多層基板2の裏面に設けられた信号取出し用の第2の取出電極22gに接続され、その他端は多層基板2の裏面に設けられた外部の終端抵抗への接続用の第2の終端抵抗接続用電極22jに接続されている。
【0044】
(多層基板)
次に、第1の信号経路SL1および第2の信号経路SL2が形成される多層基板2について図2および図3を参照して説明する。
【0045】
多層基板2は、この実施形態では、図2(a)〜(e)に示すように、5層の絶縁層2a〜2eを備え、最下層の絶縁層2eから最上層の絶縁層2aまで、各絶縁層2a〜2eが順番に積層されて形成されている。また、多層基板2の表面を形成する絶縁層2aの表面には、実装電極21c,21d,21e,22c,22d,22eを含む複数の実装電極が形成されており、各パワーアンプPA1,PA2や整合回路(図示省略)や各分波器DPX1,DPX2、スイッチIC(図示省略)、ローノイズアンプ(図示省略)等の高周波回路部品、チップ抵抗やチップコンデンサ、チップコイル等のセラミック積層部品(図示省略)などの各種の電子部品が各実装電極に実装される。
【0046】
また、多層基板2の裏面を形成する絶縁層2eの裏面には、各入力電極21a,22aおよび各出力電極21b,22bと、各取出電極21g,22gおよび各終端抵抗接続用電極21j,22jとを含む外部接続用の信号電極23と、接地用のグランド電極24とが形成されている。また、各絶縁層2b,2c,2dには、面内電極やビア導体(層間接続導体:図示省略)を含む内部配線電極が形成されており、各絶縁層2b,2c,2dに形成された内部配線電極が多層基板2内で接続されることにより、各信号経路SL1,SL2が形成される。
【0047】
具体的には、絶縁層2bには、面内電極101b,102b,201b,202bが形成され、絶縁層2cには、面内電極101c,102c,201c,202cが形成され、絶縁層2dには、面内電極201d,202dが形成され、次のように各面内電極が図示省略されたビア導体により層間接続されることにより各信号経路SL1,SL2が形成される。
【0048】
すなわち、絶縁層2cの面内電極101cの一端101c1が絶縁層2eの第1の入力電極21aに接続され、その他端101c2が絶縁層2bの面内電極101bの一端101b1に接続される。また、絶縁層2bの面内電極101bの他端101b2が絶縁層2aの実装電極21cに図示省略されたビア導体と配線パターンで接続されることにより、第1のパワーアンプPA1の前段の第1の信号経路SL1が形成される。また、絶縁層2bの面内電極201bの一端201b1が絶縁層2aの実装電極21dに接続され、その他端201b2が絶縁層2cの面内電極201cを介して絶縁層2dの面内電極201dの一端201d1に接続される。また、絶縁層2dの面内電極201dの他端201d2が絶縁層2aの実装電極21eに接続されることにより、第1のパワーアンプPA1および第1の分波器DPX1間の第1の信号経路SL1が形成される。
【0049】
一方、絶縁層2cの面内電極102cの一端102c1が絶縁層2eの第2の入力電極22aに接続され、その他端102c2が絶縁層2bの面内電極102bの一端102b1に接続される。また、絶縁層2bの面内電極102bの他端102b2が絶縁層2aの実装電極22cに図示省略されたビア導体と配線パターンで接続されることにより、第2のパワーアンプPA2の前段の第2の信号経路SL2が形成される。また、絶縁層2bの面内電極202bの一端202b1が絶縁層2aの実装電極22dに接続され、その他端202b2が絶縁層2cの面内電極202cの一端202c1に接続される。また、絶縁層2cの面内電極202cの他端202c2が絶縁層2dの面内電極202dの一端202d1に接続され、絶縁層2dの面内電極201dの他端202d2が絶縁層2aの実装電極22eに接続されることにより、第2のパワーアンプPA2および第2の分波器DPX2間の第2の信号経路SL1が形成される。
【0050】
以上のように各信号経路SL1,SL2が形成されることにより、図3(a)に示すように、両パワーアンプPA1,PA2の前段において、第1の信号経路SL1および第2の信号経路SL2が多層基板2において平面視で交差している。また、図3(b)に示すように、第1の信号経路SL1の第1のパワーアンプPA1の後段から分波器DPX1の前段までの部分と、第2の信号経路SL2のパワーアンプPA2の後段から分波器DPX2の前段までの部分とが、多層基板2において平面視で2回以上交差している。
【0051】
なお、多層基板2は、この実施形態では、セラミックグリーンシートにより形成された複数の絶縁層2a〜2eが積層されて焼成されることで一体的にセラミック積層体として形成される。すなわち、各絶縁層2a〜2eを形成するセラミックグリーンシートは、アルミナおよびガラスなどの混合粉末が有機バインダおよび溶剤などと一緒に混合されたスラリーが成型器によりシート化されたものであり、約1000℃前後の低い温度で、低温焼成できるように形成されている。そして、所定形状に切り取られたセラミックグリーンシートに、レーザー加工などによりビアホールが形成され、形成されたビアホールにAgやCuなどを含む導体ペーストが充填されたり、ビアフィルめっきが施されることにより層間接続用のビア導体が形成され、導体ペーストによる印刷により種々の面内電極が形成されて、各絶縁層が形成される。
【0052】
また、各絶縁層に形成される面内電極およびビア導体によりコンデンサやコイルなどの回路素子が形成されたり、形成されたコンデンサやコイルなどの回路素子によりフィルタ回路や整合回路などが形成されてもよい。また、多層基板2は、樹脂やポリマー材料などを用いて形成されていてもよい。また、多層基板2の層数等は上記した構成に限られるものではなく、高周波モジュール1の使用目的等に応じて、適宜、設計変更すればよい。
【0053】
(高周波特性)
次に、高周波モジュール1の高周波(RF)特性について図4および図5を参照して説明する。なお、図4(a),(b)および図5(a),(b)において、横軸は高周波モジュールから出力される高周波信号の出力電力[dBm]を示し、縦軸は高周波モジュールから出力される高周波信号に含まれる高調波成分の電力密度[dBm/MHz]を示す。また、各図において、■はこの実施形態の高周波モジュール1の実施例における高周波特性を示し、◆は従来構成の高周波モジュールである比較例における高周波特性を示す。
【0054】
図4(a),(b)に示すように、実施例では、第1の信号経路SL1に第1の周波数帯域(Band13)の送信信号が入力されたときに高周波モジュール1から出力される高周波信号に含まれる第2高調波(図4(a))および第3高調波(図4(b)の電力密度の大きさが、比較例と比べると出力電力の全域に渡って抑制されている。また、図5(a),(b)に示すように、実施例では、第2の信号経路SL2に第2の周波数帯域(Band17)の送信信号が入力されたときに高周波モジュール1から出力される高周波信号に含まれる第2高調波(図5(a))および第3高調波(図5(b))の電力密度の大きさが、比較例と比べると出力電力の全域に渡って抑制されている。
【0055】
以上のように、この実施形態では、第1の周波数帯域の高周波信号が通過する第1の信号経路SL1は、第1の増幅回路31と、第1の増幅回路31の後段に接続された第1の整合回路41と、第1の整合回路41の後段に接続された第1の送信フィルタ回路51とを備えている。また、第2の周波数帯域の高周波信号が通過する第2の信号経路SL2は、第2の増幅回路32と、第2の増幅回路32の後段に接続された第2の整合回路42と、第2の整合回路42の後段に接続された第2の送信フィルタ回路52とを備えている。そして、第1の信号経路SL1の第1の整合回路41の後段から第1の送信フィルタ回路51の前段までの部分と、第2の信号経路SL2の第2の整合回路42の後段から第2の送信フィルタ回路52の前段までの部分とが、多層基板2において少なくとも1回交差している。
【0056】
したがって、第1の信号経路SL1と第2の信号経路SL2とが多層基板2において平面視で少なくとも1回交差しているので、第1の増幅回路31および第1の送信フィルタ回路51間の第1の信号経路SL1の物理的な距離と、第2の増幅回路32および第2の送信フィルタ回路52間の第2の信号経路SL2の物理的な距離とが、各信号経路が最短経路で配線される従来の構成と比較すると十分に長くなる。そのため、第1の増幅回路31および第1の送信フィルタ回路51間の第1の信号経路SL1と、第2の増幅回路32および第2の送信フィルタ回路52間の第2の信号経路SL2とに対して、従来よりも大型化された接地用のグランド電極を、多層基板2の裏面や内部の絶縁層に配置することができる。
【0057】
また、従来のように、増幅回路31,32および送信フィルタ回路51,52等の各機能ごとにグランド電極を電気的に分離して独立して設けずにグランド電極24を大型化しても、第1の増幅回路31および第1の送信フィルタ回路51間の第1の信号経路SL1と、第2の増幅回路32および第2の送信フィルタ回路52間の第2の信号経路SL2とが十分に長く、グランド電極24が本来の機能を発揮することができるので、高周波モジュール1の接地状態が理想的な状態に近づき安定する。
【0058】
したがって、第1の増幅回路31および第2の増幅回路32から出力された高出力の高周波信号が、それぞれ、多層基板2に設けられた第1の送信フィルタ回路51および第2の送信フィルタ回路52や、第1の信号経路SL1および第2の信号経路SL2に干渉するのを防止することができる。具体的には、第1の増幅回路31および第2の増幅回路32それぞれの出力側と入力側との間にグランド電極24や空間等を介した帰還ループが形成されるのが防止されるので、第1の増幅回路31および第2の増幅回路32それぞれの出力信号がそれぞれの入力信号に干渉することにより高調波信号が第1の増幅回路31および第2の増幅回路32のそれぞれにおいて発生するのを抑制することができる。
【0059】
また、第1の増幅回路31および第2の増幅回路32から出力された不要な高調波成分を含む高周波信号が、それぞれ、第1の送信フィルタ回路51および第2の送信フィルタ回路52に入力されずにグランド電極24や空間等を介してや高周波モジュール1から直接出力されるのを防止することができる。したがって、不要な高調波成分を含む高周波信号が出力されるのが防止されて優れたRF特性を有するマルチバンド対応の高周波モジュール1を提供することができる。
【0060】
また、両パワーアンプPA1,PA2の前段において、第1の信号経路SL1および第2の信号経路SL2が多層基板2において平面視で交差しているので、第1の入力電極21aおよび第1の出力電極21bが多層基板2の同じ第2の領域Bに配置され、第2の入力電極22aおよび第2の出力電極22bが多層基板2の同じ第1の領域Aに配置される。したがって、高周波モジュール1を外部接続する際に、各電極21a,21b,22a,22bの配置を間違って外部接続するのを防止することができる実用的な構成の高周波モジュール1を提供することができる。
【0061】
また、第1の信号経路SL1(第1の周波数帯域)および第2の信号経路SL2(第2の周波数帯域)が同時に使用されない通信システムに高周波モジュール1が搭載されることにより、次のような効果を奏することができる。すなわち、第1の信号経路SL1が使用されている際には第2の信号経路SL2が使用されないので、第2の信号経路SL2を通過する第2の周波数帯域の高周波信号が第1の信号経路SL1から出力される第1の周波数帯域の高周波信号に影響を与えるのを防止することができる。また、第2の信号経路SL2が使用されている際には第1の信号経路SL1が使用されてないので、第1の信号経路SL1を通過する第1の周波数帯域の高周波信号が第2の信号経路SL2から出力される第2の周波数帯域の高周波信号に影響を与えるのを防止することができる。したがって、高周波モジュール1のRF特性をさらに向上させることができる。
【0062】
また、第1の信号経路SL1に設けられた第1の分波器DPX1(第1の送信フィルタ回路51)は、第1のパワーアンプPA1(第1の増幅回路31)が配置された多層基板2の第1の領域Aと異なる第2の領域Bに配置されている。また、第2の信号経路SL2に設けられた第2の分波器DPX2(第2の送信フィルタ回路52)は、第2のパワーアンプPA2(第2の増幅回路32)が配置された多層基板2の第2の領域Bと異なる第1の領域Aに配置されている。
【0063】
そのため、第1の分波器DPX1および第2の分波器DPX2の配置が第1の領域Aと第2の領域Bとの間で入れ換わっているので、第1の信号経路SL1の第1のパワーアンプPA1の後段から第1の分波器DPX1の前段までの部分と、第2の信号経路SL2の第2のパワーアンプPA2の後段から第2の分波器DPX2の前段までの部分とが、多層基板2において確実に平面視で少なくとも1回交差する。したがって、第1のパワーアンプPA1および第1の分波器DPX1間の第1の信号経路SLの物理的な距離と、第2のパワーアンプPA2および第2の分波器DPX2間の第2の信号経路SL2の物理的な距離とが十分に長く、不要な高調波成分を含む高周波信号が直接出力電極に出力されるのが防止されて優れたRF特性を有する高周波モジュール1を提供することができる。
【0064】
また、第1の信号経路SL1の第1のパワーアンプPA1の後段から第1の分波器DPX1の前段までの部分と、第2の信号経路SL2の第2のパワーアンプPA2の後段から第2の分波器DPX2の前段までの部分とが2回以上交差しているため、各信号経路SL1,SL2をさらに長くすることができ、不要な高調波成分を含む高周波信号が直接出力電極に出力されるのが防止されて、より一層優れたRF特性を有する高周波モジュール1を提供することができる。
【0065】
また、第1のパワーアンプPA1および第1の分波器DPX1間の第1の信号経路SL1の物理的な距離と、第2のパワーアンプPA2および第2の分波器DPX2間の第2の信号経路SL2の物理的な距離とが十分に長いので、当該部分において、第1の信号経路SL1および第2の信号経路SL2のそれぞれに方向性結合器やフィルタ回路等をさらに設けることができる。
【0066】
そこで、この実施形態では、第1の信号経路SL1と第2の信号経路SL2とが交差する箇所において、図2においては図示省略されているが、第1の信号経路SL1に第1の方向性結合器61が設けられ、第2の信号経路SL2に第2の方向性結合器62が設けられているので、次のような効果を奏することができる。すなわち、第1の方向性結合器61により、第1のパワーアンプPA1から出力された高周波信号を第1の信号経路SL1から取り出すことができるので、取り出した高周波信号の信号レベル等を検波回路等により検出することができる。また、第2の方向性結合器62により、第2のパワーアンプPA2から出力された高周波信号を第2の信号経路SL2から取り出すことができるので、取り出した高周波信号の信号レベル等を検波回路等により検出することができる。
【0067】
また、第1の信号経路SL1と第2の信号経路SL2とが交差することにより信号経路(配線パターン)が長くなるので、各方向性結合器61,62の結合量や方向性を改善することができる。したがって、例えばアンテナからの反射波による高周波信号等を除外することができ、各増幅回路31,32から出力された高周波信号のみを各方向性結合器61,62により検出することができる。
【0068】
<第2実施形態>
本発明の高周波モジュールの第2実施形態について、図6を参照して説明する。図6は本発明の高周波モジュールの第2実施形態を示す図である。
【0069】
この実施形態の高周波モジュール1aが上記した第1実施形態の高周波モジュール1と異なるのは、図6に示すように、第1の信号経路SL1と第2の信号経路SL2とが交差する箇所において、第1の信号経路SL1に第3のフィルタ回路71が設けられ、第2の信号経路SL2に第4のフィルタ回路72が設けられている点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0070】
第3のフィルタ回路71および第4のフィルタ回路72は、上記した第1の送信フィルタ回路51および第2の送信フィルタ回路52と同様に帯域通過型のフィルタに構成されてもよいし、帯域遮断型のフィルタに構成されてもよい。また、第3のフィルタ回路71および第4のフィルタ回路72は、上記した第1の送信フィルタ回路51および第2の送信フィルタ回路52と同様に、SAW(弾性表面波)フィルタ素子やBAW(バルク弾性波)フィルタ素子、LCフィルタ、分布定数線路型フィルタ、誘電体フィルタ等の一般的なフィルタ回路により形成される。
【0071】
このように構成すると、上記した実施形態と同様の効果を奏することができると共に、以下の効果を奏することができる。すなわち、第1の信号経路SL1および第2の信号経路SL2それぞれに配置された第3のフィルタ回路71および第4のフィルタ回路72により、第1のパワーアンプPA1および第2のパワーアンプPA2それぞれから出力される高周波信号に含まれる高調波成分を減衰させることができるので、さらに優れたRF特性を有する高周波モジュール1aを提供することができる。
【0072】
なお、上記した第1実施形態と同様に、第1の方向性結合器61および第2の方向性結合器62がさらに設けられていてもよい。
【0073】
<第3実施形態>
本発明の高周波モジュールの第3実施形態について、図7を参照して説明する。図7は本発明の高周波モジュールの第3実施形態を示す図である。
【0074】
この実施形態の高周波モジュール1bが上記した第1実施形態の高周波モジュール1と異なるのは、図7に示すように、第1のパワーアンプPA1および第2のパワーアンプPA2の前段において、第1の信号経路SL1と第2の信号経路SL2とが交差していない点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0075】
このように構成しても、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0076】
なお、この実施形態においても、上記した第1の方向性結合器61および第2の方向性結合器62や、第3のフィルタ回路71および第4のフィルタ回路72がさらに設けられていてもよい。また、後で説明する第4実施形態および第5実施形態においても同様であるため、以下ではその説明は省略する。
【0077】
<第4実施形態>
本発明の高周波モジュールの第4実施形態について、図8を参照して説明する。図8は本発明の高周波モジュールの第4実施形態を示す図である。
【0078】
この実施形態の高周波モジュール1cが上記した第1実施形態の高周波モジュール1と異なるのは、図8に示すように、第1の増幅回路31は、多層基板2の第1の領域Aに配置されて実装電極21c,21hに実装され、第2の増幅回路32は、多層基板2の第2の領域Bに配置されて実装電極22c,22hに実装され、第1の整合回路41は、第2の領域Bに配置されて実装電極21d,21iに実装され、第2の整合回路42は、第1の領域Aに配置されて実装電極22d,22iに実装されている点である。また、第1の増幅回路31および第2の増幅回路32の後段であって、第1の整合回路41および第2の整合回路42の前段において、第1の信号経路SL1と第2の信号経路SL2とが交差している。さらに、第1の入力電極21aと第1の増幅回路31とを接続する配線経路SL1と、第2の入力電極22aと第2の増幅回路32とを接続する配線経路SL2は交差していない。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0079】
このように構成しても、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、第1の信号経路SL1に設けられた第1の整合回路41および第1の分波器DPX1は、第1の増幅回路31が配置された多層基板2の第1の領域Aと異なる第2の領域Bに配置されている。また、第2の信号経路SL2に設けられた第2の整合回路42および第2の分波器DPX2は、第2の増幅回路32が配置された多層基板2の第2の領域Bと異なる第1の領域Aに配置されている。
【0080】
そのため、第1の整合回路42および第1の分波器DPX1と、第2の整合回路42および第2の分波器DPX2とが、その配置が第1の領域Aと第2の領域Bとの間で入れ換わっているので、第1の信号経路SL1の第1の増幅回路31の後段から第1の分波器DPX1の前段までの部分と、第2の信号経路SL2の第2の増幅回路32の後段から第2の分波器DPX2の前段までの部分とが、多層基板2において確実に平面視で少なくとも1回交差する。したがって、第1の増幅回路31および第1の分波器DPX1間の第1の信号経路SL1の物理的な距離と、第2の増幅回路32および第2の分波器DPX2間の第2の信号経路SL2の物理的な距離とが十分に長く、不要な高調波成分を含む高周波信号が出力されるのが防止されて優れたRF特性を有する高周波モジュール1cを提供することができる。
【0081】
<第5実施形態>
本発明の高周波モジュールの第5実施形態について、図9を参照して説明する。図9は本発明の高周波モジュールの第5実施形態を示す図である。
【0082】
この実施形態の高周波モジュール1dが上記した第4実施形態の高周波モジュール1cと異なるのは、図9に示すように、第1の増幅回路31および第1の分波器DPX1は、多層基板2の第1の領域Aに配置され、第2の増幅回路32および第2の分波器DPX2は、多層基板2の第2の領域Bに配置され、第1の整合回路41は、第2の領域Bに配置され、第2の整合回路42は、第1の領域Aに配置されている点である。また、第1の増幅回路31および第2の増幅回路32の後段であって、第1の整合回路41および第2の整合回路42の前段において、第1の信号経路SL1と第2の信号経路SL2とが交差し、第1の整合回路41および第2の整合回路42の後段であって、第1の分波器DPX1および第2の分波器DPX2の前段において、第1の信号経路SL1と第2の信号経路SL2とが交差している。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0083】
このように構成しても、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0084】
また、第1の信号経路SL1および第2の信号経路SL2が多層基板2において平面視で2回以上(偶数回以上)交差しているので、第1の入力電極21aおよび第1の出力電極21bが多層基板2の同じ第1の領域Aに配置され、第2の入力電極22aおよび第2の出力電極22bが多層基板2の同じ第2の領域Bに配置される。したがって、高周波モジュール1を外部接続する際に、各電極21a,21b,22a,22bの配置を間違って外部接続するのを防止することができる実用的な構成の高周波モジュール1dを提供することができる。
【0085】
<第6実施形態>
本発明の高周波モジュールの第6実施形態について、図10を参照して説明する。図10は本発明の高周波モジュールの第6実施形態を示す図である。
【0086】
この実施形態の高周波モジュール1eが上記した第1実施形態の高周波モジュール1と異なるのは、図10に示すように、コイルパターン61bの他端が高周波モジュール1eに内蔵された終端抵抗Rを介してグランド電極24に接続され、コイルパターン62bの他端が高周波モジュール1eに内蔵された終端抵抗Rを介してグランド電極24に接続されている点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0087】
このように構成しても、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0088】
<第7実施形態>
本発明の高周波モジュールの第7実施形態について、図11を参照して説明する。図11は本発明の高周波モジュールの第7実施形態を示す図である。
【0089】
この実施形態の高周波モジュール1fが上記した第1実施形態の高周波モジュール1と異なるのは、図11に示すように、コイルパターン61bの他端が終端抵抗Rを介してグランド電極24に接続され、コイルパターン61bの一端がコイルパターン62bの他端に接続されている点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0090】
このように構成しても、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0091】
<第8実施形態>
本発明の高周波モジュールの第8実施形態について、図12を参照して説明する。図12は本発明の高周波モジュールの第8実施形態を示す図である。
【0092】
この実施形態の高周波モジュール1gが上記した第1実施形態の高周波モジュール1と異なるのは、図12に示すように、コイルパターン61bの一端がコイルパターン62bの他端に接続されている点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0093】
このように構成しても、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0094】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、上記した実施形態が備える構成をどのように組み合わせてもよい。すなわち、第1の信号経路の第1の増幅回路の後段から第1のフィルタ回路の前段までの部分と、第2の信号経路の第2の増幅回路の後段から第2のフィルタ回路の前段までの部分とが、多層基板において平面視で少なくとも1回交差していればよい。
【0095】
また、高周波モジュールにおいて使用される周波数帯域は上記した例に限定されるものではなく、高周波モジュールが搭載される通信機器等で使用される通信帯域等に応じて、適宜、周波数帯域を変更すればよい。また、高周波モジュールに通信経路がさらに設けられていてもよく、GPSシステムやBluetooth(登録商標)規格による通信システム、通話用やデータ通信用の複数の通信規格による通信を行う通信システム等に使用される通信経路を設けることで、高周波モジュールをマルチバンドおよびマルチモードに対応させることができる。
【0096】
また、上記した実施形態では、分波器を備える高周波モジュールを例に挙げて説明されているが、本発明の第1のフィルタ回路および第2のフィルタ回路として、それぞれ、単体のフィルタ回路が多層基板に搭載されていてもよい。また、第1の増幅回路および第2の増幅回路それぞれの前段にフィルタ回路がさらに設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
第1の周波数帯域の高周波信号が通過する第1の信号経路と、第2の周波数帯域の高周波信号が通過する第2の信号経路とが設けられた多層基板を備える高周波モジュールに本発明を広く適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g 高周波モジュール
2 多層基板
31 第1の増幅回路
32 第2の増幅回路
41 第1の整合回路
42 第2の整合回路
51 第1の送信フィルタ回路(第1のフィルタ回路)
52 第2の送信フィルタ回路(第2のフィルタ回路)
61 第1の方向性結合器
62 第2の方向性結合器
71 第3のフィルタ回路
72 第4のフィルタ回路
A 第1の領域
B 第2の領域
SL1 第1の信号経路
SL2 第2の信号経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図13