(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787107
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】ガラス板梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/86 20060101AFI20150910BHJP
B65D 85/48 20060101ALI20150910BHJP
B65D 81/107 20060101ALI20150910BHJP
B65D 19/44 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
B65D85/38 R
B65D85/48
B65D81/04
B65D19/44 D
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-120872(P2013-120872)
(22)【出願日】2013年6月7日
(62)【分割の表示】特願2009-4793(P2009-4793)の分割
【原出願日】2009年1月13日
(65)【公開番号】特開2013-224182(P2013-224182A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2013年6月7日
(31)【優先権主張番号】特願2008-333333(P2008-333333)
(32)【優先日】2008年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】野田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】古沢 章
(72)【発明者】
【氏名】友澤 昌人
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/105190(WO,A1)
【文献】
実開昭48−065680(JP,U)
【文献】
実公昭38−026294(JP,Y1)
【文献】
特開2006−264786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/86
B65D 19/44
B65D 81/107
B65D 85/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットの基台部の上方に、複数枚のガラス板を平置きで積層してなるガラス板積層体が収容されると共に、前記基台部の上部に前記ガラス板積層体の荷重を受けるガラス板受け部が配設され、且つ、該ガラス板受け部の上部に緩衝体を介して前記ガラス板積層体が載置されるように構成したガラス板梱包体において、
前記緩衝体は、複数の緩衝基片からなり、これら複数の緩衝基片は、前記ガラス板受け部の上面の略全領域に亘って点在していると共に、各緩衝基片の弾性が二種以上に相違していることを特徴とするガラス板梱包体。
【請求項2】
パレットの基台部の上方に、複数枚のガラス板を平置きで積層してなるガラス板積層体が収容されると共に、前記基台部の上部に前記ガラス板積層体の荷重を受けるガラス板受け部が配設され、且つ、該ガラス板受け部の上部に緩衝体を介して前記ガラス板積層体が載置されるように構成したガラス板梱包体において、
前記緩衝体は、複数の緩衝基片からなり、これら複数の緩衝基片は、前記ガラス板受け部の上面の略全領域に亘って点在していると共に、個々の緩衝基片が二種以上の弾性を有する二層以上の積層体からなることを特徴とするガラス板梱包体。
【請求項3】
前記複数の緩衝基片は、均等な配列密度で点在していることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス板梱包体。
【請求項4】
前記ガラス板受け部は、枠材を格子状に組み立てた枠組み体であると共に、前記複数の緩衝基片は、前記枠材の上面の上に配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のガラス板梱包体。
【請求項5】
前記緩衝基片の幅方向寸法は、前記枠材の上面の幅方向寸法と略同一またはそれよりも短尺であって、前記緩衝基片の幅方向と直交する方向の寸法は、前記幅方向寸法と略同一であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のガラス板梱包体。
【請求項6】
前記枠組み体は、枠材を縦横に配列させてなり、縦枠材の上面と横枠材の上面とが同一面上に位置していることを特徴とする請求項4または5に記載のガラス板梱包体。
【請求項7】
前記枠組み体は、枠材を縦横に配列させてなり、縦枠材の上面と横枠材との上面とに前記緩衝基片が位置していることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載のガラス板梱包体。
【請求項8】
前記緩衝体は、前記複数の緩衝基片の上部を覆うように配置された可撓性シートを有することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のガラス板梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板梱包体に係り、詳しくは、パレットの基台部の上方にガラス板積層体を収容してなるガラス板梱包体の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(サーフェイスエミッションディスプレイを含む)およびエレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板に代表される各種のガラス板は、近年、大型化が推進されているのが実情である。その一例として、液晶ディスプレイ用ガラス基板においては、一辺の長さが2000mmを超えるに至り、且つ板厚も0.7mmのものが普及されて薄肉化が伴うに至っている。このように大型且つ薄肉のガラス板は、破損が生じ易いことから、梱包して輸送する際の取り扱いが極めて困難化され、特に梱包形態が重要視されているのが実情である。
【0003】
この種のガラス板の梱包形態は、パレットの基台部の上方に収容されるガラス板積層体として、複数枚のガラス板を平置き(略水平姿勢)で積層し、この状態で梱包することが有利とされている(例えば、特許文献1〜3参照)。すなわち、この種のガラス板を縦姿勢(傾斜姿勢)で積層して梱包したのでは、ガラス板の下辺近傍に生じる応力集中に起因して、梱包時および輸送時に当該ガラス板が破損するという事態を招く。これに対して、この種のガラス板を平置きで積層して梱包すれば、当該ガラス板は面接触により支持されるため、上記の如きガラス板の一部の辺近傍への応力集中が生じなくなり、このような観点からガラス板の破損を抑制することが期待できる。
【0004】
ところで、パレットの基台部上に平置きでガラス板積層体を収容してなるガラス板梱包体の輸送手段としては、航空輸送、海上輸送、トラック輸送、あるいはフォークリフトでの荷扱い等が挙げられるが、これら全ての場合において、ガラス板梱包体には、上下方向、前後方向および左右方向への衝撃が連続的に作用することから、ガラス板積層体の積層姿勢を崩し且つ各ガラス板に加わる面圧力を増大させる要因となる。
【0005】
この場合、外的な輸送環境による衝撃の発生自体は回避することができないことを考慮すれば、その発生した衝撃をガラス板梱包体の構造面で適切に吸収して、各ガラス板に悪影響を及ぼさないようにすることが重要となる。しかも、ガラス板梱包体における各ガラス板は、輸送後もその積載位置に正確に保持されていなければならず、前後方向や左右方向への衝撃に起因してガラス板が前後左右にズレを生じた場合には、ガラス板の取り出し時にエラー等を招来するため、生産ラインへの投入が不可能となる。
【0006】
そこで、特許文献4によれば、板状体収容箱(ガラス板収容箱)の内部にガラス板積層体を平置きで収容すると共に、そのガラス板収容箱を、上張り材を有する台座(基台部)の上方に配置し、且つ、ガラス板収容箱の底板と、基台部(上張り材)との間に、振動吸収材を介装した梱包形態が開示されている。この梱包形態によれば、振動吸収材の作用により、輸送時等にガラス板積層体に加わる上下方向への衝撃を吸収すると共に、ガラス板収容箱の内側面により各ガラス板の前後左右へのズレを防止することが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−106419号公報
【特許文献2】特開2007−39091号公報
【特許文献3】特開2007−39092号公報
【特許文献4】特開2006−264786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献4に記載されているガラス板収容箱は、容易に変形したり形状が崩れたりすれば収容箱としての機能が損なわれて本来の作用効果を得ることができないものであるため、剛体でなければならない。したがって、ガラス板積層体を直接的に支持しているのは、剛体からなるガラス板収容箱であって、このガラス板収容箱が振動吸収材による振動吸収作用を受ける直接的な対象物となる。
【0009】
そのため、この梱包形態では、ガラス板積層体の自重が、ガラス板収容箱に対する振動吸収能力との関係で軽量であって余裕があるならばともかく、ガラス板梱包体の積載効率を高めるためにガラス板積層体の積層枚数を増加させる必要がある現実に徴すれば、いかにガラス板収容箱に対する振動吸収を行っても、ガラス板の破損を回避することはできない。すなわち、ガラス板の積載枚数を増加させた場合には、ガラス板積層体の重量増に見合うように衝撃吸収機能を強化する必要があり、それと共にガラス板収容箱もさらに強固な剛体構造にする必要がある。
【0010】
したがって、重量の増加したガラス板積層体が、剛性の高められたガラス板収容箱の底板から受ける圧力あるいは応力は相乗的に増大し、特にガラス板積層体の下層部に存在するガラス板の面圧力が不当に大きくなり、当該ガラス板の破損の発生確率が極めて高くなる。その結果、この梱包形態では、近年の輸送コストダウンの要請に応じるためのガラス板の積層枚数の増量には対処不能となる。
【0011】
なお、上記の特許文献2、3には、ガラス板収容箱の外底面に衝撃吸収体を取り付けること、およびガラス板収容箱の内底面に衝撃吸収体を取り付けることが開示されている。しかしながら、これら何れのガラス板収容箱も、四つの側面部が隙間なく連接されているので、上述のようにガラス板の積載枚数増加の要請に応じるべく、収容箱の剛性を高め且つ深さを深くしたならば、ガラス板梱包体の大幅な重量増や材料の不当な無駄等の致命的な欠陥を生じることになる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、ガラス板の積層枚数が増加した場合であってもガラス板積層体に作用する衝撃を適切に緩和することが可能で、且つ材料の不当な無駄等の発生を抑止することが可能なガラス板梱包体を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記技術的課題を解決するために創案された本発明は、パレットの基台部の上方に、複数枚のガラス板を平置きで積層してなるガラス板積層体が収容されると共に、前記基台部の上部に前記ガラス板積層体の荷重を受けるガラス板受け部が配設され、且つ、該ガラス板受け部の上部に緩衝体を介して前記ガラス板積層体が載置されるように構成したガラス板梱包体において、前記緩衝体は、複数の緩衝基片からなり、これら複数の緩衝基片は、前記ガラス板受け部の上面の略全領域に亘って点在していることに特徴づけられる。そして、第1の本発明は、
各緩衝基片の弾性が二種以上に相違している。また、第2の本発明は、個々の緩衝基片が二種以上の弾性を有する二層以上の積層体からなる。この場合、前記緩衝基片を、円柱状や角柱状または立方体形状や直方体形状の柱状体と
することができる。このようにすれば、緩衝基片の製作が極めて容易化されると共に、複数の緩衝基片の固定作業あるいは貼着作業も容易化され
る。ここで、上記の「緩衝体」とは、衝撃吸収体と同義である。
【0014】
このような構成によれば、基台部上のガラス板受け部の上部に複数の緩衝基片が点在して敷設され、それらの緩衝基片の上部にガラス板積層体が載置されているため、ガラス板積層体は複数の緩衝基片による緩衝作用を直接的に受ける。そのため、輸送時等にガラス板積層体に生じる衝撃は、複数の緩衝基片により直接的に緩和されて、ガラス板を破損に至らしめるような衝撃が作用しなくなる。さらに、ガラス板の積層枚数を増量させた場合であっても、ガラス板積層体と複数の緩衝基片との間に生じる圧力の増加に伴って複数の緩衝基片はより柔軟に変形し、隣接する緩衝基片が同程度に変形することでガラス面圧力が分散されることにより、局所的な応力集中がガラス板に作用することもなく、ガラス板の破損の発生確率が低減する。
【0015】
この場合、前記複数の緩衝基片は、均等な配列密度で点在していることが好ましい。
【0016】
以上の構成において、前記ガラス板受け部は、枠材を格子状に組み立てた枠組み体であると共に、前記複数の緩衝基片は、前記枠材の上面の上に配置されていることが好ましい。ここで、上記の「枠材の上面の上に配置されている」は、枠組み体の各枠材の上面に他の部材(例えば、上張り材等)を介した状態でその上に配置されている場合も含む。
【0017】
以上の構成において、前記緩衝基片の幅方向寸法は、前記枠材の上面の幅方向寸法と略同一またはそれよりも短尺であって、前記緩衝基片の幅方向と直交する方向の寸法は、前記幅方向寸法と略同一であるようにすることができる。
【0021】
以上の構成において、前記枠組み体は、枠材を縦横に配列させてなり、縦枠材の上面と横枠材の上面とが同一面上に位置するようにしてもよい。
【0022】
また、前記枠組み体は、枠材を縦横に配列させてなり、縦枠材の上面と横枠材との上面とに前記緩衝基片が位置するようにしてもよい。
【0023】
以上の構成において、前記緩衝体は、前記複数の緩衝基片の上部を覆うように配置された可撓性シートを有していてもよい。ここで、「可撓性シート」は、緩衝作用を行うものであってもよく、緩衝作用を行わないものであってもよいが、あくまでも主たる緩衝作用を行うのは緩衝基材であることが好ましく、したがって可撓性シートは緩衝基材に比して剛性あるいは硬度が高いことが好ましい。
【0024】
このようにすれば、可撓性シートが緩衝基材の上部を覆うことにより、枠組み体の各枠材の上面に沿う態様で緩衝基材が配置されているが故に緩衝基材が存在しなくなっている複数の穴部あるいは凹部が可撓性シートにより覆われることになり、ガラス板積層体の下端面の支持が全領域に亘って良好に行われ得ることになる。
【0025】
以上の構成において、前記ガラス板受け部は、枠材を格子状に組み立てた枠組み体であって、該枠組み体の各枠材の上面が、前記ガラス板受け部の上面とされていることが好ましい。
【0026】
このようにすれば、ガラス板受け部の骨格をなす枠組み体の上面が、ガラス板受け部の上面とされるため、ガラス板積層体の重量を受けるために必要な剛性および強度を充分に確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、輸送時等にガラス板積層体に生じる衝撃は、複数の緩衝基片により直接的に緩和されて、ガラス板を破損に至らしめるような衝撃が作用しなくなると共に、ガラス板の積層枚数を増量させた場合であっても、ガラス板積層体と複数の緩衝基片との間に生じる圧力の増加に伴って複数の緩衝基片はより柔軟に変形し、隣接する緩衝基片が同程度に変形することでガラス面圧力が分散されることにより、局所的な応力集中がガラス板に作用することもなく、ガラス板の破損の発生確率が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るガラス板梱包体の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】上記第1実施形態に係るガラス板梱包体の要部を示す斜視図である。
【
図3】上記第1実施形態に係るガラス板梱包体の要部を示す斜視図である。
【
図4】上記第1実施形態に係るガラス板梱包体の要部を示す斜視図である。
【
図5】上記第1実施形態に係るガラス板梱包体の要部を示す斜視図である。
【
図6】上記第1実施形態に係るガラス板梱包体を二段積みした状態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るガラス板梱包体の要部を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るガラス板梱包体の要部を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係るガラス板梱包体の全体構成を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第5実施形態に係るガラス板梱包体の要部を示す斜視図である。
【
図11】本発明の第5実施形態に係るガラス板梱包体の要部を示す斜視図である。
【
図12】本発明の第6実施形態に係るガラス板梱包体の要部を示す斜視図である。
【
図13】本発明の第6実施形態に係るガラス板梱包体の要部を示す斜視図である。
【
図14】本発明の実施例に対応する比較例で使用したガラス板梱包体の要部を示す概略正面図である。
【
図15】上記比較例で使用したガラス板梱包体の要部を示す概略正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、ガラス板としてFPD用(特に液晶ディスプレイ用)の略矩形のガラス基板(縦方向寸法が1000〜3500mm、横方向寸法が1000〜3500mm、板厚が0.3〜0.7mm)を対象とする。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガラス板梱包体の全体構成を示す斜視図である。同図に示すように、このガラス板梱包体1は、パレット2の構成要素である平面視が略矩形の基台部3の上面部に、ガラス板の大きさに対応した広さを有する平面視が略矩形のガラス板受け部4が一体的に固定されている。このガラス板受け部4は、基台部3の上面部の周縁よりも内方側位置から起立(隆起)して形成され、したがって基台部3の上面部の周縁近傍は、全周に亘って所定幅部分が露出している。そして、このガラス板受け部4の上面部には、その略全領域に亘って緩衝体5が敷設されると共に、緩衝体5の上面部には、複数枚(例えば50〜300枚)のガラス板の相互間に合紙や発泡樹脂シート等の保護シートを介装してなるガラス板積層体6が載置されている。なお、ガラス板積層体6の最上部においては、保護シートの上面にそれよりも厚肉で硬度の高い発泡体シート(緩衝材またはクッション材)が積載されている。
【0031】
さらに、ガラス板受け部4の四側面4aには、複数の押え板7の下端部がそれぞれ止め具を用いて着脱可能に取り付けられ、これらの押え板7によってガラス板積層体6の水平方向移動が規制されている。詳述すると、この押え板7は、ガラス板受け部4の一側面4aにつき二枚、計八枚が取り付けられ、この八枚の押え板7の幅方向寸法を総和した寸法は、ガラス板積層体6の周方向全長の1/2よりも短尺とされている。また、基台部3の四隅、詳しくは基台部3の上面部の露出部分における四隅には、このガラス板梱包体1を複数段に積み重ねる際に上段のガラス板梱包体を支持する支柱8が立設され、これらの支柱8は着脱可能に取り付けられている。この場合、四本の支柱8は何れも、パレット2の基台部3よりも外方側に突出していない状態で配設されている。なお、基台部3には、フォークリフトのフォークが挿脱されるフォーク用穴9が形成されている。
【0032】
次に、このガラス板梱包体1を構成している各要素について詳細に説明する。
図2は、パレット2の基台部3とガラス板受け部4とを示す斜視図である。同図に示すように、基台部3は、アルミ合金等の金属からなる枠材3bを格子状に組み立てた枠組み体であると共に、ガラス板受け部4も、アルミ合金等の金属からなる枠材4bを格子状に組み立てた枠組み体である。詳述すると、ガラス板受け部4は、縦枠材4bと横枠材4bとを縦横に配列させた枠組み体であって、縦枠材4bの上面と横枠材4bの上面とは同一面上に位置している。そして、基台部3は、ガラス板受け部4よりも、縦方向寸法、横方向寸法および高さ方向寸法が長尺であって、この基台部3の上にガラス板受け部4が溶接等によって一体的に固定されている。
【0033】
図3は、上記のガラス板受け部4の上面に、緩衝体5の構成要素である緩衝基材5aを敷設した状態を示す斜視図である。同図に示すように、緩衝基材5aは、複数の立方体状または直方体状(円柱状等であってもよい)の緩衝基片5bからなり、これら複数の緩衝基片5bは、ガラス板受け部4の上面の略全領域に亘って均等な配列密度で点在するように配設されている。詳述すると、複数の緩衝基片5bは、ガラス板受け部4を構成する枠組み体の各枠材4bの上面に沿う態様で、それら枠材4bの上面(縦枠材4b及び横枠材4bの双方の上面)に相互に離隔して固定または貼着されている。そして、これらの緩衝基片5bは、例えば、ゴム、スポンジゴム、樹脂、発泡樹脂、シリコーン等の緩衝材からなり、緩衝基片5bの幅方向寸法aは、枠材4bの上面の幅方向寸法bと略同一あるいはそれよりも短尺である。また、緩衝基片5bの幅方向と直交する方向(水平面上で幅方向と直交する方向)の寸法は、幅方向寸法aと略同一とされている。なお、緩衝基片5bの個数は、50個〜500個が好ましく、100個〜300個がより好ましい。
【0034】
図4は、上記のガラス板受け部4の上部に敷設される緩衝体5の全体構造を示す斜視図である。同図に示すように、緩衝体5は、上述の複数の緩衝基片5bと、これら複数の緩衝基片5bの上部にその緩衝基片5bの配設領域の全域を覆うように敷かれた略矩形の可撓性シート5cとから構成されている。この可撓性シート5cは、僅かに緩衝作用を行い得る発泡倍率が3〜5倍の比較的硬い発泡樹脂シートであって、この実施形態では、ポリプロピレン3倍発泡樹脂シート(商品名:パロニア(登録商標))が用いられている。
【0035】
図5は、上記の緩衝体5(厳密には可撓性シート5c)の上部にガラス板積層体6が載置され、且つガラス板受け部4に複数の押え板7が取り付けられた状態を示す斜視図である。同図に示すように、緩衝体5の上部には、特に複数の緩衝基片5bによる緩衝作用を直接受けるようにガラス板積層体6が載置され、緩衝体5およびガラス板積層体6の外方側を取り囲むように複数の押え板7がガラス板受け部4の側面4aに着脱可能に取り付けられている。この場合、各押え板7は、アルミ合金等の金属で形成され、各押え板7の内側面には、ガラス板積層体6の側面6aとの間に隙間が生じないようにしてガラス板積層体6の水平方向ズレを抑制するための弾性を有するスペーサが貼着されている。また、これらの押え板7は、相互に離隔して配置されると共に、ガラス板積層体6の対向する少なくとも二つの側面6aの幅方向中央部に、押え板7の幅方向寸法よりも長尺な隙間Sが形成されている。そして、ガラス板受け部4の側面4aと、基台部3の測面3aとの水平方向における離隔寸法T1(T2)は、押え板の板厚寸法t1よりも長尺とされている。
【0036】
このような状態で基台部3の四隅に支柱を立設することにより、
図1に示すガラス板梱包体1が得られ、ストレッチフィルムあるいはフィルム状シート等でガラス板積層体6の周囲を覆って埃等から保護すると共に、必要に応じて、締結部材を用いることができる。すなわち、押え板7相互間の離隔隙間Sを利用しつつベルトや締め付け金具等の締結部材を用いてガラス板積層体6の最上部に基台部3側への押圧力あるいは引き込み力を付与させて保持した状態で、各種の輸送等が行われる。この場合、
図6に示すように、同一の構成とされた複数(図例では二つ)のガラス板梱包体1を製作しておき、下段のガラス板梱包体1における四本の支柱8の上端に形成した凸部8aを、上段のガラス板梱包体1における基台部3の下面に形成した凹部(図示略)に嵌合させることにより、ガラス板梱包体1を複数段に一体化した状態で各種の輸送等を行うことが可能となる。
【0037】
以上のような構成を備えたガラス板梱包体1によれば、パレット2の基台部3上に一体的に固設されたガラス板受け部4の上面部に、複数の緩衝基片5bと可撓性シート5cとからなる緩衝体5が敷設され、その緩衝体5の上面部に、ガラス板積層体6が載置されているため、ガラス板積層体6は緩衝体5による緩衝作用を直接的に受ける。そのため、輸送時等にガラス板積層体6に生じる衝撃は、緩衝体5により直接的に緩和されて、ガラス板の破損の発生確率が大幅に低減する。さらに、ガラス板の積層枚数を増量させた場合であっても、ガラス板積層体6と緩衝体5との間に生じる圧力の増加に伴って緩衝体はより柔軟に変形し、隣接する緩衝材料が同程度に変形することでガラス面圧力が分散されることにより、局所的な応力集中がガラス板に作用することもなく、ガラス板の破損の発生確率が効果的に低減する。しかも、ガラス板積層体6の水平方向移動を規制する押え板7は、複数が相互に離隔して取り付けられているため、箱の場合のようにガラス板積層体6の全周が隙間なく箱側面部によって取り囲まれている場合と比較して、軽量化が図られると共に材料の無駄も生じなくなる。しかも、押え板7は、着脱可能に取り付けられているため、ガラス板積層体6の積み降ろし時に押え板7を取り外すことができ、作業性の大幅な改善が図られる。
【0038】
図7は、本発明の第2実施形態に係るガラス板梱包体1の要部を示す斜視図である。この第2実施形態に係るガラス板梱包体1が、上述の第1実施形態に係るガラス板梱包体1と相違するところは、ガラス板受け部4の上面部に配列されている複数の緩衝基片5bの単位面積当たりの個数密度(個数面密度)が、中央部で大きく、外周側に移行するに連れて漸次小さくされている点にある。すなわち、上述の第1実施形態の場合のように、複数の緩衝基片5bをガラス板受け部4の上面部に全域の個数面密度が等しくなるように配列させたならば、ガラス板が大型薄肉である場合に、そのガラス板積層体6が自重で撓み変形を来し易く、特に中央部が沈むように変形する傾向にある。そこで、この第2実施形態の場合のように、中央部に移行するに連れて個数面密度が漸次大きくなるように緩衝基片5bを配列させれば、個々の緩衝基片5bがガラス板積層体6から受ける面圧力を等しくすることができ、ガラス板積層体6を水平姿勢に維持して支持することが可能となる。なお、中央部での緩衝基片5bの個数面密度を、その周辺領域での緩衝基片5bの個数面密度の1.15〜1.45倍、より好ましくは1.3倍として、中心から同心円上に等密度帯を形成することが好ましい。その他の構成は、上述の第1実施形態と同一であるので、
図7において共通する構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0039】
図8は、本発明の第3実施形態に係るガラス板梱包体1の要部を示す斜視図である。この第3実施形態に係るガラス板梱包体1が、上述の第1実施形態に係るガラス板梱包体1と相違するところは、二種以上(図例では三種)の弾性を有する緩衝基片5bを全域に亘って均一な個数面密度で配列させた点にある。詳述すると、同図面において、中央部の色の濃い緩衝基片5bが最も弾性変形し難く、外周側に移行するに連れてつまり緩衝基片5bの色が薄くなるに連れて弾性変形し易くなっている。したがって、この第3実施形態に
おいても、上述の第2実施形態と同様に、各緩衝基片5bの上部に載置されたガラス板積層体6を水平姿勢に維持して支持することが可能となる。その他の構成は、上述の第1実施形態と同一であるので、
図8において共通する構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図9は、本発明の第4実施形態に係るガラス板梱包体1の全体構成を示す斜視図である。この第4実施形態に係るガラス板梱包体1が、上述の第1実施形態に係るガラス板梱包体1と相違するところは、ガラス板積層体6が対向する二側面6a間の中央部(図例では左右方向の中央部)で窪むような態様に湾曲して緩衝体5の上面部に載置されている点にある。このようにガラス板積層体6が湾曲して載置されている由来は、
図10に示すように、ガラス板受け部4の上面に配列されている複数の緩衝基片5bが、ガラス板受け部4
の上面部における左右方向の中央線(対向する二側縁4cの相互間の中央線)Xを基準として左右対称に且つ中央線Xから遠ざかるに連れて漸次密になる状態(個数面密度が漸次大きくなる状態)で配列されていることによるものである。このように複数の緩衝基片5bをガラス板受け部4の上面部に配列し且つその上に可撓性シート5cを敷いた状態で、該可撓性シート5cの上面部にガラス板積層体6を載置すれば、
図11に示すように、中央線X付近の緩衝基片5bの圧縮量が大きく、中央線Xから遠ざかるに連れて緩衝基片5bの圧縮量が小さくなるため、ガラス板積層体6は上述の態様で湾曲することになる。このようにガラス板積層体6を湾曲させて支持すれば、湾曲方向への横ズレが生じ難くなり、水平方向の衝撃に対して安定した位置を保持できることになる。その他の構成は、上述の第1実施形態に係るガラス板梱包体1と同一であるので、
図9〜
図11において共通する構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図12は、本発明の第5実施形態に係るガラス板梱包体1の要部を示す斜視図である。この第5実施形態に係るガラス板梱包体1が、上述の第1実施形態に係るガラス板梱包体1と相違するところは、個々の緩衝基片5bが、二種以上(図例では二種)の弾性を有する二層以上の積層体からなる点にある。このようにすれば、振動に対してさらに安定した状態でガラス板積層体6を支持することが可能となる。すなわち、通例において、防振機構を持った構造体は、特定の振動周波数(固有振動数)に共振して、振動が増幅される場合がある。しかしながら、この第5実施形態のように、異種の弾性を有する緩衝材を組み合わせて個々の緩衝基片5bを作製すれば、防振機構に減衰の機能を所有させることができ、共振による振動の増幅を防止することが可能となる。その他の構成は、上述の第1実施形態に係るガラス板梱包体1と同一であるので、
図12において共通する構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図13は、本発明の第6実施形態に係るガラス板梱包体1の要部を示す斜視図である。この第6実施形態に係るガラス板梱包体1が、上述の第1実施形態に係るガラス板梱包体1と相違するところは、個々の緩衝基片5bが、ガラス板受け部4の枠組み体を構成する枠材4bの上面に沿って直線上に延びる形態を有し、これらの緩衝基片5bが全て連接された状態で配列されている点にある。なお、必要箇所の緩衝基片5bを短くするなどして、各緩衝基片5bが離隔して配列されていてもよい。以上のようにすれば、各緩衝基片5bを、ガラス板受け部4の枠組み体の各枠材4に対して面倒且つ煩雑性を省力化して取り付けることができ、作業性の向上が図られる。その他の構成は、上述の第1実施形態に係るガラス板梱包体1と同一であるので、
図13において共通する構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0043】
以上の実施形態では、緩衝体5を構成する緩衝基材5aとして、複数の緩衝基片5bを使用したが、これに代えて、ガラス板受け部4の上面部に対応する略矩形の緩衝基材から、枠組み体の各枠材4bが存在しない部位を抜いてなる一枚の緩衝基材を使用してもよい。
【実施例1】
【0044】
本発明者等は、上述のガラス板梱包体1の作用効果を確認すべく、本発明の実施例1〜4と、比較例との対比を、以下に示すようにして行った。
【0045】
本発明の実施例1は、次の通りである。第1に、パレット2の基台部3、ガラス板受け部4、押え板7、および支柱8をアルミ合金製とし、基本的には、
図1に示す構成のガラス板梱包体1を作製した。第2に、ガラス板積層体6として、横方向寸法が2200mm、縦方向寸法が2500mm、厚みが0.7mmのガラス板を200枚積層し、これらのガラス板の相互間に発泡樹脂シートを介装した。第3に、横方向寸法が70mm、縦方向寸法が70mm、厚みが30mmのスポンジゴムからなる200個の緩衝基片5bを、
図7に示す第2実施形態の態様、つまり中央部の個数面密度を周辺部の個数面密度の1.3倍にして配列した。第4に、可撓性シート5cとして、厚みが10mmのポリプロピレン3倍発泡樹脂シート(商品名:パロニア(登録商標))を使用した。
【0046】
本発明の実施例2は、ガラス板積層体6のガラス板相互間に紙を介装し、その他の構成については上記の実施例1と同一とした。
【0047】
本発明の実施例3は、次の通りである。第1に、パレット2の基台部3、ガラス板受け部4、押え板7、および支柱8をアルミ合金製とし、基本的には、
図9に示す構成のガラス板梱包体1を作製した。第2に、ガラス板積層体6として、横方向寸法が2200mm、縦方向寸法が2500mm、厚みが0.7mmのガラス板を100枚積層し、これらのガラス板の相互間に発泡樹脂シートを介装した。第3に、横方向寸法が55mm、縦方向寸法が55mm、厚みが30mmのスポンジゴムからなる270個の緩衝基片5bを、
図10に示す第4実施形態の態様で配列した。第4に、可撓性シート5cとして、厚みが10mmのポリプロピレン3倍発泡樹脂シート(商品名:パロニア(登録商標))を使用した。
【0048】
本発明の実施例4は、ガラス板積層体6のガラス板相互間に紙を介装し、その他の構成については上記の実施例3と同一とした。
【0049】
比較例は、次の通りである。第1に、
図14に示すように、パレット2の基台部3およびその上方の突設部3xをアルミ合金製とし、両者を溶接で一体化すると共に(
図2に示す構造と同一)、突設部3xの上方に防振ゴム11を介してアルミ合金製の格子状のガラス板受け部4を設置し、その上面部に厚みが5mmの一枚のゴムシート12を敷設した。第2に、
図15に示すように、ガラス板積層体6として、横方向寸法が2200mm、縦方向寸法が2500mm、厚みが0.7mmのガラス板を相互間に紙を介装して200枚積層し、このガラス板積層体6をゴムシート12の上面部に載置した。第3に、ガラス板受け部4の側面にガラス板積層体6の水平方向移動を規制する押え板7を固定すると共に、基台部3の四隅に支柱(図示略)を立設して、最終的にガラス板梱包体1を得た。
【0050】
以上の実施例1〜4および比較例について、トラックの荷台上に同種のガラス板梱包体を一段で三列に積載し、輸送を行った。その結果を、下記の表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
上記のトラック輸送の結果として、表1を参酌すれば、実施例1〜4は何れも、ガラス板の横ズレおよび破損は生じなかったが、比較例のみについて、各ガラス板梱包体におけるガラス板積層体の最下位のガラス板が破損した。この破損位置は、ガラス板受け部4の枠材の位置と一致した。なお、比較例においては、ガラス板の積層枚数を150枚とすることにより破損がなくなり、さらに100枚まで減らすことによって防振機能が発揮されなくなり、再度破損が3枚発生した。
【0053】
次に、以上の実施例1〜4および比較例について、トラックの荷台上に同種のガラス板梱包体を三段で三列に積載し、輸送を行った。その結果を、下記の表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
この場合のトラック輸送の結果として、表2を参酌すれば、実施例1〜4は何れも、ガラス板の横ズレおよび破損は生じなかったが、比較例のみについて、破損が多発して9つのガラス板梱包体における合計破損枚数は11枚となり、破損位置は全てガラス板積層体の最下位付近であった。また、比較例は、段積みされたことにより、他のガラス板梱包体と連結された基台部の重量が実質的に増加し、これにより防振機能もかなり低下した。そのため、ガラス板積層体に生じる振動を吸収できず、ガラス板の横ズレも8mm発生した。この場合には、ガラス板の積載枚数を100〜150枚に減らしても、破損枚数が減少したものの、適切に防止することは不可能であった。一方、実施例1〜4では、それぞれの特性が活用され、100枚および200枚という軽量および重量のガラス板積層体を無事に輸送することができた。
【符号の説明】
【0056】
1 ガラス板梱包体
2 パレット
3 基台部
3a 基台部の側面
4 ガラス板受け部(枠組み体)
4a ガラス板受け部の側面
4b 枠材
4c ガラス板受け部の側縁
5 緩衝体
5a 緩衝基材
5b 緩衝基片
5c 可撓性シート
6 ガラス板積層体
6a ガラス板積層体の側面
7 押え板
8 支柱
a 緩衝基片の幅方向寸法
b 枠材の上面の幅方向寸法
t1 押え板の板厚
T1 ガラス板受け部の側面と基台部の側面との水平方向の離隔寸法
T2 ガラス板受け部の側面と基台部の側面との水平方向の離隔寸法
X 中央線