(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
操作者の手動による調色パターンの選択を可能とし、該手動により何れかの調色パターンが選択された場合には、前記優先度に関わらず手動で選択された調色パターンが優先されることを特徴とする請求項3に記載の客室用照明装置。
前記照明手段が前記制御手段から前記調色パターン情報を受信できなかった場合には、通信不良時用に予め用意してある調色パターンに基づき前記照明手段は調色されることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の客室用照明装置。
前記制御手段は複数用意されており、何れか1つの制御手段が通常は作動して前記照明手段を調色し、該1つの制御手段に不具合が生じた場合には、他の制御手段を作動させて前記照明手段を調色することを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の客室用照明装置。
前記照明手段は、前記制御手段とは別に調色制御部を備え、該調色制御部は前記制御手段に対して各種情報を送受信可能であることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載の客室用照明装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1に記載された従来の技術では、鉄道車両の客室内に設けられていても、調色の機能はなく単色で点灯させるだけのものであった。そのため、客室内の照明雰囲気は特に変化することもなく固定化されており、照明では単調な空間しか演出することができないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2,3に記載された従来の技術では、調光のみならず調色の機能もあるが、調色の契機が時刻や屋外環境に限られたものであり、その調色の単調さは否めなかった。そのため、乗物用の照明に適用したとしても、乗物の移動に伴う状況の変化や乗物独自の特性に応じた調色の制御を実現できるものではなく、やはり照明では単調な空間しか演出することができなかった。
【0007】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、特に乗物の客室内を照らす照明として、様々な状況に応じて多様な調色制御を可能とし、照明によって快適な客室空間を演出することができる照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]乗物(1)に搭載され、該乗物(1)の客室内を照らすための客室用照明装置(10)において、
前記客室内に設けられた照明手段(11)と、該照明手段(11)による照明を調整する制御手段(20,14)と、各種情報を検知するモニター手段(23)とを有し、
前記照明手段(11)は、調色可能なものであり、
前記モニター手段で検知される各種情報は、走行位置、時刻、日
付の少なくとも何れかの分類を含むように分けられ、それぞれの分類ごとに
別々に用意された複数の調色パターンが備えられており、
前記制御手段(20,14)は、前記モニター手段(23)で検知される各種情報の分類ごとに、それぞれ
の分類に対応した各調色パターンに基づき前記照明手段(11)を調色することを特徴とする客室用照明装置(10)。
【0009】
[2]乗物(1)には複数の客室が備わり、
前記客室ごとに一ないし複数の照明手段(11)が設けられており、
前記制御手段(20,14)は、前記照明手段(11)を個々または客室単位で調色可能であることを特徴とする前記[1]に記載の客室用照明装置(10)。
【0010】
[3]前記
各種情報の分類ごとに、それぞれ優先度が定められており、複数の
分類の調色パターンが重複した場合には、優先度の高い
分類の調色パターンが選択されることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の客室用照明装置(10)。
【0011】
[4]操作者の手動による調色パターンの選択を可能とし、該手動により何れかの調色パターンが選択された場合には、前記優先度に関わらず手動で選択された調色パターンが優先されることを特徴とする前記[3]に記載の客室用照明装置(10)。
【0012】
[5]前記照明手段(11)が前記制御手段(20,14)から前記調色パターン情報を受信できなかった場合には、通信不良時用に予め用意してある調色パターンに基づき前記照明手段(11)は調色されることを特徴とする前記[1],[2],[3]または[4]に記載の客室用照明装置(10)。
【0013】
[6]前記制御手段(20)は複数用意されており、何れか1つの制御手段(20)が通常は作動して前記照明手段(11)を調色し、該1つの制御手段(20)に不具合が生じた場合には、他の制御手段(20)を作動させて前記照明手段(11)を調色することを特徴とする前記[1],[2],[3],[4]または[5]に記載の客室用照明装置(10)。
【0014】
[7]前記照明手段(11)は、前記制御手段(20)とは別に調色制御部(14)を備え、該調色制御部(14)は前記制御手段(20)に対して各種情報を送受信可能であることを特徴とする前記[1],[2],[3],[4],[5]または[6]に記載の客室用照明装置(10)。
【0015】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の客室用照明装置(10)によれば、飛行機や鉄道車両等の乗物(1)の客室内を照らす照明手段(11)は調色可能なものである。乗物(1)に搭載されたモニター手段(23)で検知される各種情報は、走行位置、時刻、日
付の少なくとも何れかの分類を含むように分けられ、それぞれの分類ごとに
別々に用意された複数の調色パターンが備えられている。制御手段(20,14)は、前記モニター手段(23)で検知される各種情報の分類ごとに、それぞれ
の分類に対応した各調色パターンに基づき照明手段(11)を調色する。
【0016】
すなわち、モニター手段(23)によって各種情報が検知されると、その情報が制御手段(20,14)へ出力される。そして、制御手段(20,14)は、入力した情報に対応した調色パターンを選択して、この調色パターンに基づき照明手段(11)は調色される。これにより、各種情報に応じた様々な調色が可能となる。
【0017】
ここで照明手段(11)は、例えば光源として調色可能なLEDを備えて成り、その具体的な形態は直接照明または間接照明の別を問わない。また、具体的な調色の方法も、特定の方法に限られることなく、周知の何れかの調色方法を採用すれば良い。また、各種情報は前述したように、乗物(1)の移動に伴ない変化する走行位置や
、日時を特定する時刻、日付の少なくとも何れかの分類を含むように分けられ、
その他、走行位置が市街地か郊外であるか等の環境や天気等の外部状況等の様々な事象に関する情報が考えられる。
【0018】
また、前記[2]に記載の客室用照明装置(10)によれば、乗物(1)には複数の客室が備わっており、客室ごとに一ないし複数の照明手段(11)が設けられている。そして、制御手段(20,14)は、照明手段(11)を個々または客室単位で調色可能である。これにより、同じ客室内でもシルバーシートの周り等の特定領域だけを調色したり、あるいは、女性専用車両やグリーン車等の特定車両だけを調色したりすることができる。
【0019】
また、前記[3]に記載の客室用照明装置(10)によれば、前記
各種情報の分類ごとにそれぞれ優先度が定められており、複数の
分類の調色パターンが重複した場合には、優先度の高い
分類の調色パターンが選択される。この優先度の順に選択された調色パターンに基づいて、照明手段(11)は調色される。なお、同位の優先度の
分類の調色パターンが重複した場合には、予め定めた順位に基づいて調色パターンを選択すると良い。
【0020】
また、前記[4]に記載の客室用照明装置(10)によれば、操作者の手動による調色パターンの選択を可能とする。そして、手動により何れかの調色パターンが選択された場合には、前記優先度に関わらず手動で選択された調色パターンが優先される。よって、手動で選択された調色パターンに基づき照明手段(11)は調色される。ここで操作者は、主として乗務員が該当する。
【0021】
また、前記[5]に記載の客室用照明装置(10)によれば、照明手段(11)が制御手段(20,14)から調色パターン情報を受信できなかった場合には、通信不良時用に予め用意してある調色パターンに基づき照明手段(11)は調色される。これにより、制御手段(20,14)の故障や断線時でも、所定の調色は可能となる。なお、制御手段(20,14)から例えば予め決めた間隔で調色パターンを送信するように設定し、照明手段(11)では、一定時間以上の受信がないときは通信不良とみなすように設定すると良い。
【0022】
また、前記[6]に記載の客室用照明装置(10)によれば、制御手段(20)は複数用意されており、何れか1つの制御手段(20)が通常は作動して照明手段(11)を調色するが、該1つの制御手段(20)に不具合が生じた場合には、他の制御手段(20)を作動させて照明手段(11)を調色する。これにより、制御手段(20)の故障や断線時でも、本来の調色パターンに基づく調色制御が可能となる。
【0023】
さらに、前記[7]に記載の客室用照明装置(10)によれば照明手段(11)は、制御手段(20)とは別に調色制御部(14)を備え、該調色制御部(14)は制御手段(20)に対して各種情報を送受信可能とする。これにより、照明手段(11)における実際の状況を制御手段(20,14)側でも把握することが可能となり、いわゆるフィードバック制御を行うこともできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る客室用照明装置によれば、特に乗物の客室内を照らす照明として、様々な状況に応じて多様な調色制御が可能であり、照明によって快適な客室空間を演出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明を代表する実施の形態を説明する。
本実施の形態に係る客室用照明装置10は、乗物に搭載され、該乗物の客室内を照らすものである。ここで乗物とは、鉄道車両、飛行機、自動車等と様々なものが存在するが、以下に、鉄道車両1に搭載する場合について説明する。
【0027】
図1は、鉄道車両1に搭載した客室用照明装置10の一例を概略的に示すブロック図であり、
図2は、同装置10の一例を詳細に示すブロック図である。
図1、
図2における鉄道車両1では、先頭車両1Aと、これに続く車両1Bの2両のみを示したが、1両だけ、あるいは3両以上の編成でも良い。なお、先頭車両1Aには、客室の他に乗務員室が設けられている。
【0028】
鉄道車両1において、客室用照明装置10は、車両1A,1Bごとの客室内に設けられた照明手段11と、該照明手段11による照明を調整する制御手段20と、各種情報を検知するモニター手段23とを有している。本実施の形態では、後述するがモニター手段23は、制御手段20の機能の一部として構成されている。なお、照明手段11は、車両1A,1Bごとの客室内にそれぞれ4つずつ図示し、制御手段20は、先頭車両1Aの乗務員室に1つだけ図示したが、これらの数は一例にすぎない。
【0029】
照明手段11は、客室内の例えば天井部分等に設けられており、配光の形態は直接照明または間接照明の別を問わないものである。照明手段11は、調色可能な光源12を備えており、この光源12の種類は特に限定されないが、LEDランプであることが好ましい。LEDランプは、調色および調光の制御が容易なだけでなく、小型である、低消費電力である、長寿命である等の利点がある。
【0030】
図2に示すように、本実施の形態では、各照明手段11ごとに光源12は、昼白色のLEDランプである光源A12Aと、色温度の異なる電球色のLEDランプである光源B12Bとを組み合わせて成る。以下、光源A12Aと光源B12Bを総称する場合は光源12と表記する。光源12の具体的な調色の方法としては、例えば、昼白色の光源A12Aと電球色の光源B12Bの点灯ないし消灯の組み合わせで調色することができる。
【0031】
ここで具体的な組み合わせとしては、何れか一方のみ点灯させた場合(2色)と、両方とも点灯させた場合(1色)の計3色(3段階)が考えられる。また、光源A12Aと光源B12Bをそれぞれ何等分かに分けて、組み合わせ数(調色のパターン数)を適宜増やしても良く、あるいは、個々の発光レベルを電圧や電流の調整により無段階に制御し、様々な色温度を作り出すこともできる。他にも、PWM制御を利用する等、他の周知の調色方法を採用しても良い。
【0032】
また、
図2に示すように、照明手段11は、前述の光源12の他にも、後述する制御手段20との間で各種信号を送受信するための送受信部13と、光源12の発光を直接制御する調色制御部14を備えている。調色制御部14は、次述する制御手段20からの制御信号を受信し、光源12の点灯駆動を直接制御するものである。なお、照明手段11は、その他図示省略したが、光源12等を収納するケーシングや、光源12の発光面側を覆うレンズないし透光カバー等を備えている。
【0033】
図3は、単方向通信用の制御手段20Aの詳細を示すブロック図であり、
図4は、双方向通信用の制御手段20Bの詳細を示すブロック図である。制御手段20Aは、前記光源12へ制御信号を出力するだけであるが、制御手段20Bは、前記照明手段11や他の制御手段との間で、互いに制御信号等を送受信することができるものである。以下、制御手段20Aと制御手段20Bを総称する場合は制御手段20と表記する。
【0034】
制御手段20は、前記照明手段11と伝送路を介して接続されており、各照明手段11の調色ないし調光を含む照明に関する制御を実行する。
図3および
図4に示すように、制御手段20は、
図1および
図2にも示した送受信部21、
図2に示した設定情報記憶部22と判定部23の他、
図3および
図4に示すように、調色パターン設定部24、調色データ生成部25等を備えている。かかる制御手段20は、具体的にはCPUと、CPUで実行するプログラムや各種の固定的データを記憶するROM、プログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶するためのRAM等を主要部とする回路で構成される。
【0035】
送受信部21は、
図3に示す単方向通信用の制御手段20Aでは、情報を変調して送信する変調・送信部21Aのみから構成されるが、
図4に示す双方向通信用の制御手段20Bでは、前記変調・送信部21Aと、受信した情報を復調する受信・復調部21Bとから構成される。また、制御手段20は、内部時計26を有しており、日付および時刻を取得可能となっている。
【0036】
図2に示した設定情報記憶部22は、詳しくは
図3および
図4に示すように、時刻に基づく調色パターンの設定情報を記憶する時刻・調色パターン設定情報ROM22a、日付に基づく調色パターンの設定情報を記憶する日付・調色パターン設定情報ROM22b、位置に基づく調色パターンの設定情報を記憶する位置・調色パターン設定情報ROM22cを備えている。
【0037】
判定部23は、前記設定情報記憶部22から各種調色パターンの設定情報や、走行中の位置情報(地点情報)を入力すると共に、次述する調色パターン設定部24からの情報を入力して、これらの情報に基づき各種判定を実行して、その判定結果を後述する調色データ生成部25に出力したり、前記照明手段11における現在点灯中の調色情報を判定して外部に出力するものである。
【0038】
このような判定部23は、各種情報を検知する「モニター手段」を構成するものとなる。特に前記位置情報は、例えば、鉄道車両1に備えられた速度発電機(図示せず)から車輪回転数(に応じたパルス信号)として受信し、これに基づき鉄道車両1の現在の走行位置を算出したり、一般的なGPS機能を利用したものでも良い。
【0039】
調色パターン設定部24は、個々の照明手段11を識別する識別IDを記憶した照明手段識別ID情報ROM27や、車両(号車)ごとに照明手段11を識別する別の識別IDを記憶した照明手段識別ID情報ROM28、それに前記判定部23(モニター手段)で判定(検知)される各種情報に対応した複数の調色パターンを記憶した調色パターン記憶部29からそれぞれ情報を入力する他、乗務員操作に基づく情報も入力し、これらの情報に基づいて所定の調色パターンを設定するものである。
【0040】
この調色パターン設定部24で設定された調色パターンは、前記判定部23と次述する調色データ生成部25に出力される。なお、前記乗務員操作に基づく情報には、乗務員が任意に調色パターンを手動で選択した際の操作に基づくマニュアル調色情報の他、乗務員が車両(号車)または個々の照明手段11ごとに調色パターンを選択した際の操作に基づく情報も含まれる。
【0041】
調色データ生成部25は、前記判定部23や前記調色パターン設定部24から出力された情報に基づいて、実際に照明手段11の点灯を調色するための所定の調色データを生成する。この調色データに基づいて、後述する照明手段11の調色制御部14によって調色パターンが生成される。この調色データ生成部25で生成された調色データは、前述した送受信部21の変調・送信部21Aから制御信号として照明手段11に出力される。
【0042】
なお、
図1に示した例では、制御手段20を、先頭車両1Aの乗務員室に1つだけ設けているが、
図5に示すにように、先頭車両1Aのみならず、例えば最後尾の車両1Nにも設けても良い。この場合、通常は先頭車両1Aの制御手段20が作動しているが、この制御手段20に何らかの不具合が生じた時に、車両1Nにある制御手段20を作動させるように設定すると良い。
【0043】
図6は、単方向通信用の照明手段11の詳細を示すブロック図であり、
図7は、双方向通信用の照明手段11の詳細を示すブロック図である。
図6のうち、
図6(a)は、照明手段11ごとの識別IDを使用しない場合のブロック図であり、
図6(b)は、識別IDを使用する場合のブロック図である。先ず、
図6(a)に示すように、照明手段11の送受信部13(
図2参照)は、単方向通信用であるため、前記制御手段20から入力した制御情報を復調する受信・復調部131と、復調した制御信号や他からの信号の受信を判定して調色制御部14に送信する受信判定部133とから成る。
【0044】
調色制御部14は、前記受信判定部133を介して受信した前記調色データに基づき調色パターンを生成する調色パターン生成部141と、個々の光源12ごとに設けられ、各光源12の駆動を前記調色パターン生成部141からの調色パターンに基づき直接制御する調光制御部142とから成る。
図6に示す例では、調光制御部142によって個々の光源12を調光することで、各光源12の発光レベルの割合を調整し、意図する調色パターンの色温度で点灯できるように構成されている。なお、厳密には調色制御部14も、前記制御手段20と共に、照明手段11(光源12)の照明を調整する「制御手段」に該当する。
【0045】
また、
図6(b)に示す照明手段11のブロック図は、前記受信判定部133に識別ID設定部15が接続されている以外は、前述した
図6(a)に示すブロック図と同一である。ここで識別ID設定部15は、操作者(乗務員)の手動によって、個々の照明手段11ごとに、あるいは車両(号車)ごとに照明手段11の調色パターンを選択するためのスイッチであり、照明手段11を識別するための識別IDは、前述した照明手段識別ID情報ROM27,28から取得する。なお、識別ID設定部15は、照明手段11ではなく、乗務員室にある制御手段20に設け、制御手段20で集中的に操作できるように構成しても良い。
【0046】
図7に示す双方向通信用の照明手段11のブロック図では、前述した
図6(b)に示すブロック図とは、送受信部13(
図2参照)の構成のみが異なる。すなわち、
図7において送受信部13(
図2参照)は、双方向通信用であるため、前記制御手段20から入力した制御情報を復調する受信・復調部131の他、照明手段11の点灯に関する情報を変調して送信する変調・送信部132も備えている。また、前記受信判定部133も備えている。なお、
図7では識別ID設定部15を備えているが、識別ID設定部15を省いて構成しても良い。
【0047】
次に、本実施の形態に係る客室用照明装置10の作用について説明する。
本実施の形態に係る客室用照明装置10によれば、鉄道車両1の客室内を照らす照明手段11は、調光が容易なLEDランプから成る光源12を備え、この光源12は色温度の異なる複数の光源12A,12Bを組み合わせて成る。よって、各光源12A,12Bの発光レベルの様々な組み合わせにより、予め定めた調色パターンである所望の色温度に調色することができる。
【0048】
照明手段11の調色に際しては、
図4において、モニター手段を成す制御手段20の判定部23によって各種情報が検知されると、判定部23は、その情報に対応した調色パターンに関する情報を、前記各パターン設定情報ROM22a〜22cや調色パターン記憶部29等から取得する。ここで判定部23は、検知した各種情報のうち現時点の状況に該当するものを特定し、これに合致した調色パターンを照合する。この調色パターンは、制御手段20から照明手段11の送受信部13を介して調色制御部14に送信され、調色制御部14の制御によって前記調色パターンに基づき光源12が調色される。
【0049】
このように客室用照明装置10では、各種情報に応じた様々な調色が可能となる。各種情報とは、鉄道車両1の移動に伴ない変化する地点情報や、当該地点が市街地か郊外であるか等の環境や天気等の外部状況、それに日時を特定するカレンダー情報や時刻情報等と、様々な事象に関する
分類が考えられる。以下、具体的な事例に基づき、
図8〜
図11のフローチャートに沿って説明する。
【0050】
図8は、走行位置に応じて調色する制御の流れを示すフローチャートである。
最初に、制御手段20の判定部23は、前述したように車輪回転数やGPS等からの地点情報に基づいて走行位置情報を取得する(ステップS101)。続いて判定部23は、走行位置に関する調色パターン情報を取得する(ステップS102)。このとき判定部23は、前記位置・調色パターン設定情報ROM22c等のデータにアクセスする(ステップS103)。
【0051】
そして、判定部23は、走行位置情報と取得した調色パターンとを照合する(ステップS104)。次いで、前記照合で該当した調色パターンに基づき、照明手段11の光源12を調色する(ステップS105)。ここで具体的な調色パターンとしては、例えば、始発駅から中間地点の駅までは昼白色または寒色系に調色し、中間地点の駅から終点駅にかけては電球色または暖色系に調色すること等が考えられる。このように、走行位置によって照明手段11の色味を変えることができる。
【0052】
図9は、現在時刻に応じて調色する制御の流れを示すフローチャートである。
最初に、制御手段20の判定部23は、現在時刻情報を取得する(ステップS111)。ここで現在時刻情報は、制御手段20に備えられている内部時計26から常時取得することができる(ステップS112)。続いて判定部23は、時刻に関する調色パターン情報を取得する(ステップS113)。このとき判定部23は、前記時刻・調色パターン設定情報ROM22a等のデータにアクセスする(ステップS114)。
【0053】
そして、判定部23は、現在時刻情報と取得した調色パターンとを照合する(ステップS115)。次いで、前記照合で該当した調色パターンに基づき、照明手段11の光源12を調色する(ステップS116)。ここで具体的な調色パターンとしては、例えば、朝から日中は昼白色または寒色系に調色し、夕方から夜にかけては電球色または暖色系に調色すること等が考えられる。このように、時刻によって照明手段11の色味を変えることができる。
【0054】
図10は、日付に応じて調色する制御の流れを示すフローチャートである。
最初に、制御手段20の判定部23は、現在日付情報を取得する(ステップS121)。ここで現在日付情報も、制御手段20に備えられている内部時計26から常時取得することができる(ステップS122)。続いて判定部23は、日付に関する調色パターン情報を取得する(ステップS123)。このとき判定部23は、前記日付・調色パターン設定情報ROM22b等のデータにアクセスする(ステップS124)。
【0055】
そして、判定部23は、現在日付情報と取得した調色パターンとを照合する(ステップS125)。次いで、前記照合で該当した調色パターンに基づき、照明手段11の光源12を調色する(ステップS126)。このように、日付によって照明手段11の色味を変えることができる。なお、日付に基づく調色には、毎日異なるような数多の調色パターンを用意しても良いが、所定の日数分だけ用意した調色パターンを繰り返しローテーションさせても良い。
【0056】
また、時刻や日付の他にも、同じく内部時計26から取得可能な曜日や季節に関する情報に基づいて、照明手段11を調色するように制御しても良い。例えば、季節に基づき調色する場合には、春はウグイス色に調色し、夏は水色に調色し、秋から冬にかけては暖色系に調色したり、あるいは、もっとパターンを単純化して、春から夏にかけては昼白色に調色し、秋から冬にかけては電球色に調色することも考えられる。
【0057】
図11は、号車(車両)に応じて調色する制御の流れを示すフローチャートである。
最初に、制御手段20の判定部23は、全ての照明手段11の識別ID情報を取得する(ステップS131)。ここで、照明手段11ごとの識別ID情報は、一方の照明手段識別ID情報ROM27から調色パターン設定部24を介して取得する(ステップS132)。続いて判定部23は、号車(車両)ごとの照明手段11の識別ID情報も取得する(ステップS133)。ここで、号車(車両)ごとの照明手段11の識別ID情報は、もう一方の照明手段識別ID情報ROM28から調色パターン設定部24を介して取得する(ステップS134)。
【0058】
そして、判定部23は、識別ID設定部15等による乗務員操作によって入力された情報等に基づいて、所定の調色パターン情報を取得する(ステップS125)。このとき判定部23は、所定の調色パターンが記憶されている調色パターン記憶部29、あるいは各調色パターン設定情報ROM22a〜22c等のデータにアクセスする(ステップS136)。次いで、調色データ生成部25により所定の調色データを生成して(ステップS137)、該調色データに既に取得してある前記識別IDを付加してから(ステップS138)、照明手段11にデータ送信して(ステップS139)、照明手段11の光源12を調色する。
【0059】
このように制御手段20は、照明手段11を個々または客室単位で調色することが可能である。具体的には例えば、女性専用車両だけを薄いピンク色や電球色に調色し、それ以外の車両を昼白色に調色したり、あるいは、同じ車両の客室内でも、シルバーシートや車椅子エリア等、特定エリアの照明手段11だけを電球色または暖色系に調色し、それ以外のエリアの照明手段11は昼白色または寒色系に調色すること等が考えられる。このように、照明手段11に個々あるいは号車(車両)ごとに識別可能な識別IDを付与しておくことにより、照明手段11を個別あるいは号車(車両)単位で様々な調色を行うことができる。
【0060】
ところで、前述した各調色パターンには、それぞれ
の分類ごとに優先度を表すフラグデータが付加されており、このフラグデータから優先度の高い
分類の調色データが優先して選択されるように設定されている。具体的には例えば、各調色パターンデータのうち、それぞれのヘッダデータの6ビット目に2ビットの優先度フラグを割り当てる。ここで2ビットの例として、「00」は優先度が最高ランク、「01」は優先度が高ランク、「10」は優先度が中ランク、「11」は優先度が低ランク等と定めておく。
【0061】
そして、制御手段20の判定部23は、前記各調色パターンから読み込まれた、それぞれの調色パターンデータから前記2ビットを識別することで、優先度を判定することができる。例えば、前述した時刻に関する調色パターンが最高ランクで、他の日付に関する調色パターンや走行位置に関する調色パターン等が何れも高ランク以下であった場合には、時刻に関する調色パターンで照明手段11は調色される。
【0062】
また、同じランクの優先度の調色パターンが重複する場合もあり得るため、各調色パターン
の分類ごとに予め順位付けを行っておくと良い。例えば、優先度が重複した場合、前述した例では、時刻<日付<走行位置というように予め順位付けを行う。これにより、例えば、日付と走行位置に関する各調色パターンが、それぞれ最も高い同じ優先度のフラグであった場合は、走行位置>日付の順位付けであるために、走行位置に関する調色パターンで照明手段11は調色される。
【0063】
さらに、前述したように、乗務員(操作者)の手動操作(乗務員操作)によっても調色パターンの選択が可能であるが、該手動操作により何れかの調色パターンが選択された場合には、前記優先度に関わらず手動操作で選択された調色パターンが優先されるように設定されている。これにより、例えば、走行位置に関する調色パターンに基づき調色されている場合でも、乗務員の手動操作によって、他の調色パターンが選択されたり、前述したように個々の照明手段11ごと、あるいは号車(車両)単位での調色が選択された場合には、これらの手動で選択された調色パターンに切り替わって、照明手段11は調色されることになる。
【0064】
また、制御手段20および照明手段11が、
図3、
図6に示した単方向通信用に構成されている場合に、照明手段11が制御手段20からの制御信号(調色パターン情報)を正常に受信できなかった時は、通信不良時用に予め用意してある調色パターンに基づき照明手段11は調色される。これにより、制御手段20自体の故障や断線等が原因で通信不良が生じても、所定の調色は可能となる。
【0065】
ここでの非常用の調色パターンは適宜定めれば良い。また、通信不良に関する判断は、例えば、制御手段20からは予め決めた間隔で制御信号を送信するように設定しておき、受信側である照明手段11で、一定時間以上の受信が無いときは通信不良とみなすように定めておくと良い。かかる場合、照明手段11は、自身の調色制御部14によって光源12を調色することになる。
【0066】
また、制御手段20および照明手段11が、
図4、
図7に示した双方向通信用に構成されている場合には、特に照明手段11も双方向通信機能を備え、照明手段11の受信判定部133から制御手段20に向けて情報を送信することも可能となる。これにより、照明手段11における実際の状況を、制御手段20側でも把握することができるだけでなく、いわゆるフィードバック制御を行うことも可能となる。なお、制御手段20における制御装置の入出力を、2系統に分けるように構成しても良い。
【0067】
さらに、
図5に示したように、制御手段20を、同一または異なる車両内に複数設けても良い。このように、制御手段20を複数設けた場合には、何れか1つの制御手段20が通常は作動して照明手段11の調色等の制御を行うが、万一この制御手段20に不具合が生じた場合には、他の制御手段20を作動させて照明手段11の調色等の制御を行うように設定する。これにより、制御手段20の故障や断線時でも、本来の調色パターンに基づく調色制御が可能となる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、乗物として鉄道車両に適用した例を説明したが、これに限らず飛行機や自動車等の様々な乗物に適用することができる。
【0069】
また、前記モニター手段を成す制御手段20の判定部23によって検知される情報は、前述の時刻や日付、走行位置等に限定されることはなく、他に例えば、走行位置が市街地か郊外であるか等の環境や天気等の外部状況、あるいは運行時のイベントによって調色するようにしても面白い。イベントに関しては、具体的には、日本シリーズ期間中は暖色系に調色したり、お祭り開催中は寒色系に調色すること等が考えられる。