特許第5787131号(P5787131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787131
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】電動モータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20150910BHJP
   H02K 11/00 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   H02K5/22
   H02K11/00 X
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-17021(P2011-17021)
(22)【出願日】2011年1月28日
(65)【公開番号】特開2012-161112(P2012-161112A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2013年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−065055(JP,U)
【文献】 特開2007−143295(JP,A)
【文献】 特開2008−219972(JP,A)
【文献】 特開2008−211945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/00− 11/04
H02K 29/00− 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルおよび第2コイルとを含む電動モータと、
前記第1コイルに電力を供給するための第1パワー回路が形成された第1パワー基板と、
前記第2コイルに電力を供給するための第2パワー回路が形成され且つ前記第1パワー基板と別部材を用いて形成された第2パワー基板と、
前記電動モータの軸方向に関して前記第1および第2コイルに隣接し、且つ、前記電動モータの中心軸線を取り囲むように配置され、前記第1および第2パワー基板を収容するハウジングと、
複数の導電部材とこれらの導電部材を前記ハウジング内で互いに結合する第1結合部とを含み、前記第1コイルと前記第1パワー回路とを、前記第1コイルに樹脂製の保持部材で保持された第1モータバスバーユニットを介して電気的に接続するための第1バスバーと、
複数の導電部材とこれらの導電部材を前記ハウジング内で互いに結合する第2結合部とを含み、前記第2コイルと前記第2パワー回路とを、前記第1コイルに樹脂製の保持部材で保持された第2モータバスバーユニットを介して電気的に接続するための第2バスバーと、を備え、
前記中心軸線の軸方向から見たとき、前記第1および第2結合部は、前記中心軸線を中心として点対称に配置されて互いに離隔し、
前記第1および第2バスバーは、前記中心軸線の軸方向から見て、前記中心軸線を中心として点対称に配置されており、
前記第1および第2コイルは、互いの配線太さが等しくされ、また、互いの配線長さ等しくなるように、前記中心軸線の軸方向から見て、前記中心軸線と交差する基準軸線を中心として線対称に配置されており、
前記第1および第2パワー基板は、前記ハウジングの平坦な内底面に沿い、前記中心軸線の軸方向から見たとき、前記中心軸線と交差する基準軸線を挟んで互いに対向するように離隔して配置されており、
前記中心軸線の軸方向から見たとき、前記第1および第2パワー基板の外郭部は、前記中心軸線を中心として点対称に配置され、且つ、前記基準軸線を中心として線対称に配置にされていることを特徴とする電動モータユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記第1および第2バスバーと、前記第1および第2パワー基板と、前記第1および第2パワー回路の駆動を制御する制御回路が形成された制御基板と、各前記パワー回路と前記制御回路とを接続する接続線とを、樹脂部材を含むモジュールで保持したサブアセンブリが構成されている電動モータユニット。
【請求項3】
請求項において、前記中心軸線の軸方向から見たとき、前記第1および第2パワー基板が相対向する第1方向と直交する第2方向に沿って、前記第1および第2結合部が相対向し、
前記第1および第2結合部は、前記ハウジングに形成された開口部に露呈するように配置されていることを特徴とする電動モータユニット。
【請求項4】
請求項において、前記第1および第2パワー回路の駆動を制御する制御回路が形成され前記ハウジング内に配置された制御基板が、前記第1結合部と前記第2結合部との間に配置されていることを特徴とする電動モータユニット。
【請求項5】
請求項3または4において、前記ハウジングは、前記第1および第2結合部を取り囲む周壁を含み、前記開口部は、前記周壁の一部を切り欠くことにより形成されていることを特徴とする電動モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動パワーステアリング装置に備えられる電動モータユニットは、ステータコイルを備えている。このコイルに電力が供給されると、電動モータのロータが回転する。ロータの出力は、減速機構等を介してステアリングシャフトに伝達され、運転者の操舵を補助する操舵補助力となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−188123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コイルには、駆動回路基板からバスバーを介して電力が供給される。電動パワーステアリング装置は、車室内やエンジンルーム内の狭いスペースに配置する必要があるので、バスバーも可及的にコンパクトなレイアウトにする必要がある。
しかしながら、十分な操舵トルクを発生するためには、コイルに大電流を流す必要がある。このため、バスバーも太くする必要があり、電動モータの周辺の構造を小型化し難い。また、バスバーやコイルに大電流を流すため、電力の損失が大きくなってしまう。また、駆動回路基板は、発熱要素としてのスイッチング素子を含んでいるので、電動モータユニットに関して、高い放熱性能が求められている。
【0005】
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、電力の損失を低減できるとともに、小型化を達成でき、しかも、放熱性能に優れた電動モータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、第1コイル(54)および第2コイル(55)を含む電動モータ(18)と、前記第1コイルに電力を供給するための第1パワー回路(75)が形成された第1パワー基板(31)と、前記第2コイルに電力を供給するための第2パワー回路(80)が形成され且つ前記第1パワー基板と別部材を用いて形成された第2パワー基板(32)と、前記電動モータの軸方向(X1)に関して前記第1および第2コイルに隣接し、且つ、前記電動モータの中心軸線(L1)を取り囲むように配置され、前記第1および第2パワー基板を収容するハウジング(23)と、複数の導電部材(711U,711V,711W,712U,712V,712W)とこれらの導電部材を前記ハウジング内で互いに結合する第1結合部(73U,73V,73W)とを含み、前記第1コイルと前記第1パワー回路とを、前記第1コイルに樹脂製の保持部材(63)で保持された第1モータバスバーユニット(56)を介して電気的に接続するための第1バスバー(71U,71V,71W)と、複数の導電部材(723U,723V,723W,724U,724V,724W)とこれらの導電部材を前記ハウジング内で互いに結合する第2結合部(74U,74V,74W)とを含み、前記第2コイルと前記第2パワー回路とを、前記第1コイルに樹脂製の保持部材で保持された第2モータバスバーユニット(58)を介して電気的に接続するための第2バスバー(72U,72V,72W)と、を備え、前記中心軸線の軸方向から見たとき、前記第1および第2結合部は、前記中心軸線を中心として点対称に配置されて互いに離隔し、前記第1および第2バスバーは、前記中心軸線の軸方向から見て、前記中心軸線を中心として点対称に配置されており、前記第1および第2コイルは、互いの配線太さが等しくされ、また、互いの配線長さ等しくなるように、前記中心軸線の軸方向から見て、前記中心軸線と交差する基準軸線(L2)を中心として線対称に配置されており、前記第1および第2パワー基板は、前記ハウジングの平坦な内底面(41a)に沿い、前記中心軸線の軸方向から見たとき、前記中心軸線と交差する基準軸線を挟んで互いに対向するように離隔して配置されており、前記中心軸線の軸方向から見たとき、前記第1および第2パワー基板の外郭部(31a,32a)は、前記中心軸線を中心として点対称に配置され、且つ、前記基準軸線を中心として線対称に配置にされていることを特徴とする電動モータユニット(33)を提供する(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、第1パワー回路からの電流は第1コイルに流し、第2パワー回路からの電流は第2コイルに流すことにより、電動モータを駆動できる。これにより、各コイルに流す電流を少なくできるので、各コイルでの電力損失を少なくできる。その結果、電動モータ全体としての電力損失を少なくできる。しかも、第1および第2コイルの双方に同時に電力を供給することも可能であるので、各コイルに流す電流が小さくても(電力損失が小さくても)、電動モータの最大出力は十分に大きくできる。また、各コイルに流す電流を小さくできるので、各パワー回路を小さくでき、且つ各コイルを細くできる。その結果、電動モータユニットの小型化を実現できる。しかも、電動モータと同軸的に配置されたハウジングに各パワー基板を収容している結果、電動モータの周辺の空間を有効活用できるので、電動モータユニットの更なる小型化を実現できる。また、電動モータの軸方向から見たときに、各パワー基板を離隔して配置していることにより、各パワー基板からの熱を、効率よくハウジング等の他の部材に伝達できる。これにより、電動モータユニットの放熱性能をより高くできる。
【0008】
また、前記中心軸線の軸方向から見たとき、前記中心軸線と交差する基準直線(L2)を挟んで前記第1パワー基板および前記第2パワー基板が配置されている
このような配置とすることにより、第1パワー基板と第2パワー基板とを軸方向に見たときに離隔配置することができる。
【0009】
また、前記中心軸線の軸方向から見たとき、前記第1パワー基板の外郭部(31a)と、前記第2パワー基板の外郭部(32a)とは、前記中心軸線を中心として点対称に配置にされ、且つ前記基準直線を中心として線対称に配置されている。
すなわち、第1パワー基板の外郭部と、第2パワー基板の外郭部と、を点対称且つ線対称に配置している。これにより、2つのパワー基板を、電動モータの中心軸線を取り囲むように配置できる。したがって、2つのパワー基板が電動モータの径方向に突出する量を少なくでき、電動モータユニットの更なる小型化を実現できる。また、各パワー基板を板状の材料から打ち抜いて形成する場合に、一定の大きさの板材から打ち抜くことのできるパワー基板の数を、より多くできる。これにより、第1パワー基板および第2パワー基板を1枚の材料から効率よく形成できる。
【0011】
また、別体に形成された複数の導電部材を第1結合部で結合して第1バスバーを形成していることにより、各導電部材の形状の自由度を高くできる。その結果、第1バスバーを、他の部品との接触を避けつつ、ハウジング内にコンパクトに配置できる。これにより、電動モータユニットの更なる小型化を実現できる。
第1バスバーと同様に、別体に形成された複数の導電部材を第2結合部で結合して第2バスバーを形成していることにより、各導電部材の形状の自由度を高くできる。その結果、第2バスバーを、他の部品との接触を避けつつ、ハウジング内にコンパクトに配置できる。これにより、電動モータユニットの更なる小型化を実現できる。
また、本発明において、前記第1および第2バスバーと、前記第1および第2パワー基板と、前記第1および第2パワー回路の駆動を制御する制御回路が形成された制御基板と、各前記パワー回路と前記制御回路とを接続する接続線とを、樹脂部材を含むモジュールで保持したサブアセンブリが構成されている場合がある(請求項2)。
【0012】
また、本発明において、前記中心軸線の軸方向から見たとき、前記第1および第2パワー基板が相対向する第1方向(D1)と交差する第2方向(D2)に沿って、前記第1および第2結合部が相対向し、前記第1および第2結合部は、前記ハウジングに形成された開口部(101,102,103)に露呈するように配置されている場合がある(請求項)。
この場合、第1パワー基板と、第2パワー基板と、第1結合部と、第2結合部と、を効率よく配置できる。これにより、ハウジング内におけるデッドスペースを少なくできるので、電動モータユニットの更なる小型化を実現できる。
【0013】
また、前記第1および第2結合部は、前記ハウジングに形成された開口部(101,102,103)に露呈するように配置されているので、下記の利点がある。
すなわち、ハウジングの外部と第1結合部との間、およびハウジングの外部と第2結合部との間は、それぞれ、ハウジング内の部品によって遮られていない。これにより、第1バスバーの導電部材同士を結合する工具(例えば、溶接工具)を、開口部を通してハウジング内に容易に挿入できる。これにより、電動モータユニットの組み立てにかかる手間を少なくできる。
【0014】
また、本発明において、前記第1および第2パワー回路の駆動を制御する制御回路(99)が形成され前記ハウジング内に配置された制御基板(35)が、前記第1結合部と前記第2結合部との間に配置されている場合がある(請求項)。
この場合、制御基板の外側に第1結合部および第2結合部が配置されている。したがって、第1バスバーの導電部材同士を接合させて第1結合部を形成する作業や、第2バスバーの導電部材同士を接合させて第2結合部を形成する作業を行い易い。
【0015】
また、本発明において、前記ハウジングは、前記第1および第2結合部を取り囲む周壁(42)を含み、前記開口部(102,103)は、前記周壁の一部を切り欠くことにより形成されている場合がある(請求項)。
この場合、周壁の開口部から工具をハウジング内に挿入することにより、各結合部の形成作業を容易に行うことができる。
【0016】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用操舵装置としての電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
図2】電動パワーステアリング装置の主要部の一部を破断して示した側面図である。
図3】電動モータユニットの主要部を分解した斜視図であり、第1ハウジングと、モータハウジング本体とが分離された状態を示している。
図4】電動モータユニットの主要部を分解した斜視図であり、第1ハウジングと、モータハウジング本体とが結合された状態を示している。
図5】ステータの主要部を軸方向と直交する方向に切断した断面図である。
図6】ECUの一部を軸方向から見たときの模式的な平面図である。
図7】(A)は、電動モータユニットの製造に関する要点を説明するための模式的な一部断面図であり、(B)は、溶接作業を説明するための平面図である。
図8】本発明の別の実施形態の主要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用操舵装置としての電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール2と、ステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0019】
本実施形態では、操舵補助機構5がステアリングシャフト6にアシスト力(操舵補助力)を与える例に則して説明する。しかしながら、本発明を、操舵補助機構5が後述するピニオン軸にアシスト力を与える構造や、操舵補助機構5が後述するラック軸にアシスト力を与える構造に適用することも可能である。
ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。
【0020】
ステアリングシャフト6の周囲に配置されたトルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に入力された操舵トルクを検出する。トルクセンサ11のトルク検出結果は、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)12に入力される。また、車速センサ30からの車速検出結果が、ECU12に入力される。中間軸7は、ステアリングシャフト6と転舵機構4とを連結している。
【0021】
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構と、を含む。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示せず)を介して転舵輪3が連結されている。
ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端(図1では下端)には、ピニオン16が設けられている。
【0022】
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の途中部には、上記ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることで、転舵輪3を転舵することができる。
【0023】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための伝達機構としての減速機構19とを含む。減速機構19は、駆動ギヤとしてのウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合う従動ギヤとしてのウォームホイール21とを含む。減速機構19は、ギヤハウジング22内に収容されている。
【0024】
ウォーム軸20は、図示しない継手を介して電動モータ18の回転軸(図示せず)に連結されている。ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6に一体回転可能に連結されている。
電動モータ18がウォーム軸20を回転駆動すると、ウォーム軸20によってウォームホイール21が回転駆動される。これにより、ウォームホイール21およびステアリングシャフト6は、一体回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸20を回転駆動することで、転舵輪3が転舵されるようになっている。
【0025】
電動モータ18は、ECU12によって制御される。ECU12は、トルクセンサ11からのトルク検出結果、車速センサ30からの車速検出結果等に基づいて電動モータ18を制御する。具体的には、ECU12では、トルクと目標アシスト量との関係を車速毎に記憶したマップを用いて目標アシスト量を決定し、電動モータ18の発生するアシスト力を目標アシスト量に近づけるように制御する。
【0026】
図2は、電動パワーステアリング装置1の主要部の一部を破断して示した側面図である。図3は、電動パワーステアリング装置1の電動モータユニット33の主要部を分解した斜視図であり、第1ハウジング23と、モータハウジング本体27とが分離された状態を示している。図4は、電動モータユニット33の主要部を分解した斜視図である。図4では、第1ハウジング23と、モータハウジング本体27とが結合された状態が示され、且つ、サブアセンブリ98が第1ハウジング23から離隔した状態が示されている。
【0027】
図2を参照して、ECU12と、電動モータ18とによって、電動モータユニット33が形成されている。ECU12は、ECUハウジングとしての第1ハウジング23と、第1パワー基板31および第2パワー基板32と、モジュール34と、制御基板35と、回転位置センサ36と、を含んでいる。第1ハウジング23は、第1パワー基板31と、第2パワー基板32と、モジュール34と、制御基板35と、回転位置センサ36と、を収容し、且つ保持している。
【0028】
第1ハウジング23は、第2ハウジング24に接触している。第2ハウジング24は、第2ハウジング24を塞ぐ蓋として設けられている。
第1ハウジング23および第2ハウジング24は、それぞれ、一端が開放した概ね円筒状に形成されている。第1および第2ハウジング23,24の互いの端部は、突き合わされ、且つ固定ねじ25により互いに締結されている。
【0029】
電動モータ18は、モータハウジング26と、回転軸40と、ロータ51と、ステータ52と、を含んでいる。モータハウジング26は、筒状のモータハウジング本体27と、上記の第1ハウジング23とにより構成されている。モータハウジング本体27は、第1ハウジング23に、図示しないねじ部材を用いて固定されている。
また、ギヤハウジング22は、ウォーム軸20が収容された筒状の駆動ギヤ収容ハウジング28と、ウォームホイール21が収容された筒状の従動ギヤ収容ハウジング29と、上記の第2ハウジング24とにより構成されている。
【0030】
図4を参照して、第1ハウジング23は、電動モータ18の回転軸40の中心軸線L1(以下、単に中心軸線L1ともいう。)を取り囲むように配置されている。第1ハウジング23は、底壁41と、周壁42と、を含んでいる。底壁41は、回転軸40の軸方向X1(以下、単に軸方向X1ともいう。)と直交するように配置されている。底壁41は、ヒートシンクとしての機能を有しており、底壁41に接触する各パワー基板31,32からの熱を、第1ハウジング24の外部に効率的に排出可能である。底壁41のうち、第1ハウジング23の内側を向く底面41aは、平坦に形成されている。なお、この底壁41の一部の厚みを他の部分よりも増すことにより、底壁41の放熱性能を向上させてもよい。
【0031】
底壁41の中央には、電動モータ18のための回転軸挿通孔41bが形成されている。また、底壁41には、第1バスバー挿通孔41cと、第2バスバー挿通孔41dとが形成されている。
周壁42は、底壁41の外周部から軸方向X1の一方X11側(第2ハウジング24側)に向けて延びており、ECU室37を取り囲む環状に形成されている。本実施形態において、周壁42は、円環状に形成されている。周壁42と底壁41とによって、ECU室37が形成されている。
【0032】
図2を参照して、電動モータ18の回転軸40は、モータハウジング本体27の内部を挿通し、且つ、第1ハウジング23内を挿通している。回転軸40は、回転軸挿通孔41bを通って、第1ハウジング23内に延びている。第1ハウジング23は、後述する第1および第2コイル54,55と軸方向X1に隣接している。回転軸40およびウォーム軸20は、同軸上に並べて配置されており、両者は、継手39を介して同軸的に動力伝達可能に連結されている。
【0033】
ウォーム軸20は、第1軸受46および第2軸受47を介して、駆動ギヤ収容ハウジング28に両端支持されている。回転軸40は、第1ハウジング23の底壁41に保持された第3軸受48と、モータハウジング本体27に保持された第4軸受49とによって、回転可能に支持されている。
本実施形態では、電動モータ18としてブラシレスモータが用いられている。モータハウジング26内には、ロータ51およびステータ52が収容されている。ロータ51は、回転軸40と一体回転可能に連結されている。ロータ51は、ステータ52に取り囲まれている。
【0034】
ステータ52は、モータハウジング本体27の内周に固定されている。ステータ52は、ステータコア53と、第1コイル54と、第2コイル55とを含む。
ステータコア53は、環状のヨーク50と、このヨーク50の内周から径方向内方へ突出する複数のティース53と、を含む。ヨーク50は、モータハウジング本体27の内周面に焼き嵌め等によって固定されている。図5は、ステータ52の主要部を軸方向X1と直交する方向に切断した断面図である。図5を参照して、ティース53は、周方向C1に等間隔に複数配置されている。
【0035】
第1コイル54および第2コイル55は、互いに別部材を用いて形成されており、独立して制御される。第1および第2コイル54,55は、それぞれ、ティース53に巻回されている。軸方向X1から見たとき、第1コイル54の全体と、第2コイル55の全体とは、電動モータ18の中心軸線L1を中心として点対称に配置されている。
また、軸方向X1から見たとき、第1コイル54の全体と、第2コイル55の全体とは、電動モータ18の中心軸線L1を通る基準直線L2を中心として、線対称に配置されている。具体的には、例えば、軸方向X1から見たとき、基準直線L2の一方側(図5の上側)には、第1コイル54が配置されており、基準直線L2の他方側(図5の下側)には、第2コイル55が配置されている。上記の構成により、第1コイル54の配線の長さおよび太さと、第2コイル55の配線の配線および太さとを、可及的に等しくできる。
【0036】
これにより、第1コイル54におけるインピーダンスと、第2コイル55におけるインピーダンスとが実質的に揃えられている。なお、第1コイル54および第2コイル55の配置は、一例であり、上記の態様に限定されない。
第1コイル54は、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルを含む。また、第2コイル55は、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルを含む。
【0037】
図2を参照して、第1コイル54は、第1パワー基板31から電力が供給されるように構成されている。第1コイル54と第1パワー基板31とは、第1モータバスバーユニット56と、第1バスバー71U,71V,71Wと、を介して、電気的に接続されている。
また、第2コイル55は、第2パワー基板32から電力が供給されるように構成されている。第2コイル55と第2パワー基板32とは、第2モータバスバーユニット58と、第2バスバー72U,72V,72Wと、を介して、電気的に接続されている。
【0038】
第1および第2モータバスバーユニット56,58は、それぞれ、モータハウジング本体27と第1ハウジング23とにより区画されるモータ室38内に収容されている。
第1モータバスバーユニット56は、第1コイル54に結合されている。第2モータバスバーユニット58は、第2コイル55に結合されている。
第1および第2モータバスバーユニット56,58は、合成樹脂製の環状の保持部材63に保持されている。保持部材63は、第1および第2コイル54,55等に保持されている。
【0039】
図6は、ECU12の一部を軸方向X1から見たときの模式的な平面図である。図6では、制御基板35が取り外された状態が示されている。図2および図6を参照して、第1バスバー71U,71V,71Wは、第1コイル54と、第1パワー基板31に形成された第1パワー回路75と、を電気的に接続するために設けられている。
なお、第1バスバー71U,71V,71Wの構成は、同様であるので、以下では、主に第1バスバー71Uについて説明する。
【0040】
第1バスバー71Uは、銅線等の導電線(導電部材)を複数結合させることにより形成されている。
第1バスバー71Uは、複数の導電部材としての第1および第2導電部材711U,712Uを含んでいる。第1導電部材711Uは、第1モータバスバーユニット56に、溶接等によって導通可能に結合されている。図4および図6を参照して、第1導電部材711Uは、底壁41のバスバー挿通孔41cを挿通している。第1導電部材711Uの一端部711bUは、ECU室37内において軸方向X1と平行に延びており、周壁42に隣接している。すなわち、第1導電部材711Uの一端部711bUは、電動モータ18の径方向R1(以下、単に径方向R1ともいう。)に関して、ECU室37の外端部に配置されている。
【0041】
図6を参照して、第2導電部材712Uは、ECU室37内に配置されており、モジュール34の一部を構成している。第2導電部材712Uの一端部712bUは、軸方向X1と平行に延びており、第1導電部材711Uの一端部711bUに隣接している。これらの一端部711bU,712bUは、溶接等により、導通可能に結合されており、第1結合部73Uを構成している。第2導電部材712Uの他端部は、第1パワー基板31の近傍に配置されており、第1パワー基板31に形成された第1パワー回路75に、第1ボンディングワイヤ64を介して電気的に接続されている。
【0042】
第1バスバー71Uと同様に、第1バスバー71Vは、第1および第2導電部材711V,712Vを含んでいる。第1導電部材711Vの一端部711bVと、第2導電部材712Vの一端部712bVとは、溶接等によって導通可能に結合されている。これらの一端部711bV,712bVによって、第1結合部73Vが形成されている。第2導電部材712Vの他端部は、第1ボンディングワイヤ64を介して第1パワー回路75に電気的に接続されている。
【0043】
また、第1バスバー71Uと同様に、第1バスバー71Wは、第1および第2導電部材711W,712Wを含んでいる。第1導電部材711Wの一端部711bWは、第2導電部材712Wの一端部712bWに溶接等によって導通可能に結合されている。これらの一端部711bW,712bWによって、第1結合部73Wが形成されている。第2導電部材712Wの他端部は、第1ボンディングワイヤ64を介して第1パワー回路75に電気的に接続されている。
【0044】
図2および図6を参照して、第2バスバー72U,72V,72Wは、第2コイル55と、第2パワー基板32に形成された第2パワー回路80と、を電気的に接続するために設けられている。なお、第2バスバー72U,72V,72Wの構成は、同様であるので、以下では、主に第2バスバー72Uについて説明する。
第2バスバー72Uは、第1バスバー71Uと同様に、銅線等の導電線(導電部材)を複数結合させることにより形成されている。
【0045】
第2バスバー72Uは、複数の導電部材としての第3および第4導電部材723U,724Uを含んでいる。第3導電部材723Uは、第2バスバーユニット58に、溶接等によって導通可能に結合されている。図4および図6を参照して、第3導電部材723Uは、底壁41のバスバー挿通孔41dを挿通している。第3導電部材723Uの一端部723bUは、ECU室37内において、軸方向X1と平行に延びており、周壁42に隣接している。すなわち、第3導電部材723Uの一端部723bUは、径方向R1に関して、ECU室37の外端部に配置されている。
【0046】
図6を参照して、第4導電部材724Uは、ECU室37内に配置されており、モジュール34の一部を構成している。第4導電部材724Uの一端部724bUは、軸方向X1と平行に延びており、第3導電部材723Uの一端部723bUに隣接している。これらの一端部723bU,724bUは、溶接等により、導通可能に結合されており、第2結合部74Uを構成している。第4導電部材724Uの他端部は、第2パワー基板32の近傍に配置されており、第2パワー基板32に形成された第2パワー回路80に、第2ボンディングワイヤ65を介して電気的に接続されている。
【0047】
第2バスバー72Uと同様に、第2バスバー72Vは、第3および第4導電部材723V,724Vを含んでいる。第3導電部材723Vの一端部723bVと、第4導電部材724Vの一端部724bVとは、溶接等によって導通可能に結合されている。これらの一端部723bV,724bVによって、第2結合部74Vが形成されている。第4導電部材724の他端部は、第2ボンディングワイヤ65を介して第2パワー回路80に電気的に接続されている。
【0048】
また、第2バスバー72Uと同様に、第2バスバー72Wは、第3および第4導電部材723W,724Wを含んでいる。第3導電部材723Wの一端部723bWは、第4導電部材724Wの一端部724bWに溶接等によって導通可能に結合されている。これらの一端部724bW,724bWによって、第2結合部74Wが形成されている。第4導電部材724Wの他端部は、第2ボンディングワイヤ65を介して第2パワー回路80に電気的に接続されている。
【0049】
第1バスバー71U,71V,71Wと、第2バスバー72U,72V,72Wとは、軸方向X1から見たとき、電動モータ18の中心軸線L1(中心点)を中心として点対称に配置されている。
また、軸方向X1から見たとき、第1結合部73U,73V,73Wと、第2結合部74U,74V,74Wとは、電動モータ18の中心軸線L1を中心として点対称に配置されている。
【0050】
ここで、軸方向X1から見たとき、第1パワー基板31と第2パワー基板32とが相対向する方向を第1方向D1と規定する。また、軸方向X1から見たとき、第1結合部73U,73V,73Wと、第2結合部74U,74V,74Wとが相対向する方向を第2方向D2と規定する。
軸方向X1から見たとき、第1方向D1と、第2方向D2とは、交差(直交)している。第1結合部73U,73V,73Wと、第1パワー基板31と、第2結合部74U,74V,74Wと、第2パワー基板32は、周方向C1に並んで配置されている。
【0051】
図2および図6を参照して、第1パワー基板31は、第1ハウジング23の底壁41上に配置されており、この底壁41に接触している。本実施形態において、第1パワー基板31は、絶縁層と導電層とが交互に積層された多層回路基板である。なお、第1パワー基板31は、1つの絶縁層を有する単層回路基板であってもよい。
軸方向X1から見たとき、第1パワー基板31は、湾曲状に形成されている。より具体的には、第1パワー基板31は、電動モータ18の中心軸線L1を中心とする環状板の一部を切り取った形状(本実施形態では、円弧状)に形成されている。軸方向X1から見たとき、第1パワー基板31の外郭部31aは、内径部31bと、外径部31cと、一端部31dと、他端部31eと、を含んでいる。軸方向X1から見たとき、内径部31bおよび外径部31cは、それぞれ、円弧形形状である。より具体的には、軸方向X1から見たとき、内径部31bおよび外径部31cは、それぞれ、劣弧となっている。本実施形態において、内径部31bおよび外径部31cが設けられている範囲は、中心軸線L1回りに45°程度となっている。一端部31dおよび他端部31eは、それぞれ、径方向R1に沿って延びている。
【0052】
第1パワー基板31には、第1パワー回路75が形成されている。第1パワー回路75は、第1コイル54に電力を供給するために設けられている。第1パワー回路75は、スイッチング素子としての第1FET76を6つ備えている。第1FET76は、第1パワー基板31に実装されている。第1パワー回路75は、第1FET76を用いたブリッジ回路や、電流検出回路を含んでいる。第1パワー回路75は、第1端子77U,77V,77Wと、電源端子78,79と、を含んでいる、これら5つの端子77U,77V,77W,78,79は、第1パワー基板31の外郭部31aに隣接して配置されている。第1端子77U,77V,77Wには、それぞれ、第1ボンディングワイヤ64が接合されている。
【0053】
第2パワー基板32は、第1ハウジング23の底壁41上に配置されており、この底壁41に接触している。第2パワー基板32は、第1パワー基板31とは別部材を用いて形成されている。本実施形態において、第2パワー基板32は、第1パワー基板31と同様の回路基板(例えば、多層回路基板)である。軸方向X1から見たとき、基準直線L2を挟んで前記第1パワー基板31および前記第2パワー基板32が並んでおり、互いに離隔している。軸方向X1から見たとき、基準軸線L2は、中心軸線L1と交差する直線であり、第2方向D2に沿って延びている。
【0054】
軸方向X1から見たとき、第2パワー基板32と、第1パワー基板31とは、中心軸線L1を中心として、点対称に配置とされている、また、軸方向X1から見たとき、第1パワー基板31の外郭部31aと、第2パワー基板32の外郭部32aとは、中心軸線L1を中心として点対称に配置され、且つ、基準直線L2を中心として、線対称に配置されている。第1パワー基板31と第2パワー基板32とは中心軸線L1を挟んで相対向している。
【0055】
第2パワー基板32には、第2パワー回路80が形成されている。第2パワー回路80は、第2コイル55に電力を供給するために設けられている。第2パワー回路80は、第1パワー回路75とは独立して動作可能に構成されている。これにより、第1コイル54と第2コイル55とに独立して電力を供給することが可能であり、且つ第1コイル54への電力供給と第2コイル55への電力供給とを連動させることが可能とされている。
【0056】
軸方向X1から見たとき、第1パワー回路75と第2パワー回路80とは、中心軸線L1を中心として、点対称に配置されている。上記のように、第1および第2パワー基板31,32を点対称に配置し、且つ第1および第2パワー回路75,80を点対称に配置している。
すなわち、第1パワー基板31および第1パワー回路75は、それぞれ、第2パワー基板32および第2パワー回路80と同一の構成を有しており、部品の共通化が実現されている。第2パワー回路80は、スイッチング素子としての第2FET81を6つ備えている。第2パワー回路80は、第2FET81を用いたブリッジ回路や、電流検出回路を含んでいる。第2パワー回路80は、第2端子82U,82V,82Wと、電源端子83,84と、を含んでいる。各第2端子82U,82V,82Wには、それぞれ、第2ボンディングワイヤ65が結合されている。
【0057】
モジュール34は、車両のバッテリ(図示せず)からの電力を各パワー回路75,80に伝達するために設けられている。また、モジュール34は、第1および第2パワー回路75,80からの電力を、それぞれ、第1および第2コイル54,55に伝達するために設けられている。
モジュール34は、種々の電気素子を樹脂によって一括して保持する構造を有している。これにより、複数の電気素子を一括して第1ハウジング23に組み付けることができるので、第1ハウジング23内への各電気素子の組み付けにかかる手間を少なくできる。
【0058】
モジュール34は、樹脂部材85と、第2導電部材712U,712V,712Wと、第4導電部材724U,724V,724Wと、電源バスバー86,87と、コンデンサ88,89と、コイル90と、リレー91と、を含んでいる。
樹脂部材85は、合成樹脂製の絶縁性の部材である。樹脂部材85は、第1ハウジング23の底壁41上に配置されている。樹脂部材85は、底壁41に、図示しないねじ部材や、爪部材等を用いて固定されている。
【0059】
樹脂部材85は、底壁41に受けられたベース92と、ベース92から突出する複数の突出部93と、を含んでいる。ベース92の中心に形成された挿通孔92cには、電動モータ18の回転軸40が挿通されている。また、ベース92には、第1枠部92aおよび第2枠部92bが形成さている。第1および第2枠部92a,92bは、それぞれ、ベース92を軸方向X1に貫通することにより形成されている。軸方向X1から見たとき、第1および第2枠部92a,92bの内周面の形状は、それぞれ、第1パワー基板31の外郭部31aおよび第2パワー基板32の外郭部32aの形状に合致している。第1および第2枠部92a,92bには、それぞれ、第1および第2パワー基板32が嵌め込まれており、これらのパワー基板31,32が、図示しないねじ部材や爪部材によって固定されている。
【0060】
突出部93は、制御基板35を保持するために設けられており、周方向C1に離隔して複数(例えば、4個)配置されている。図4および図6を参照して、各突出部93の内側面には、それぞれ、第1凹部94が形成されている。各第1凹部94は、制御基板35の外形形状に対応して形成されている。
樹脂部材85には、2つの第2凹部95,95が形成されている。第2凹部95,95は、第2方向D2に関するベース92の両端部に形成されている。各第2凹部95,95は、ベース92を径方向R1の内方に窪ませた形状とされている。第2凹部95,95には、それぞれ、第1結合部73U,73V,73Wおよび第2結合部74U,74V,74Wが配置されている。
【0061】
ベース92は、各第2導電部材712U,712V,712Wの大部分、および各第4導電部材724U,724V,724Wの大部分を埋設し、且つ保持している。
図6を参照して、電源バスバー86,87は、金属板をプレス成形して形成されている。各電源バスバー86,87の第1端部86a,87aは、ベース92の外周面側に露呈している。これらの第1端部86a,87aは、図示しないバッテリの正極および負極に電気的に接続されるように構成されている。
【0062】
各電源バスバー86,87の中間部は、樹脂部材85に埋設されている。これにより、各電源バスバー86,87は、樹脂部材85に保持されている。また、各電源バスバー86,87の中間部は、対応するコンデンサ88,89、コイル90およびリレー91に電気的に接続されている。これにより、各パワー回路75,80の電流のリップルが抑制可能とされ、かつ、フェール時において各パワー回路75,80の電流を遮断可能とされている。電源バスバー86は、途中で2つに分岐されており、第2端部86bおよび第3端部86cを含んでいる。電源バスバー87は、途中で2つに分岐されており、第2端部87bおよび第3端部87cを含んでいる。電源バスバー86の第2端部86bと電源バスバー87の第2端部87bは、それぞれ、第3ボンディングワイヤ66を介して、第1パワー回路75の電源端子78,79に電気的に接続されている。電源バスバー86の第3端部86cと電源バスバー87の第3端部87cは、それぞれ、第4ボンディングワイヤ67を介して、第2パワー回路80の電源端子83,84に電気的に接続されている。
【0063】
図2および図6を参照して、上記の構成により、車両のバッテリからの電流は、電源バスバー86、87、第1パワー回路75、第1バスバー71U,71V,71W、および第1モータバスバーユニット56を介して第1コイル54に流れる。
同様に、車両のバッテリからの電流は、電源バスバー86,87、第2パワー回路80、第2バスバー72U,72V,72W、および第2モータバスバーユニット58を介して第2コイル55に流れる。
【0064】
制御基板35は、図3および図4に示すように、各パワー基板31,32に対して、軸方向X1に離隔して配置されている。制御基板35は、パワー基板31と同様の回路基板(例えば、多層回路基板)を用いて形成されている。制御基板35は、第1方向D1に延びる矩形の第1部分35aと、第1部分35aから第2方向D2に突出する第2部分35bと、を含んでいる。第1部分35aには、2つのねじ挿通孔35dが形成されている。これらのねじ挿通孔35dを挿通するねじ部材97が、ベース92に固定されることにより、制御基板35は、ベース92に固定されている。
【0065】
モジュール34の樹脂部材85には、各パワー基板31,32に加え、制御基板35が固定されている。これにより、モジュール34、各パワー基板31,32および制御基板35が互いに組み付けられてなるサブアセンブリ98が形成されている。サブアセンブリ98を一括して第1ハウジング23に組み付けることができるので、電動モータユニット33の組み付けの手間を格段に低減できる。
【0066】
第1方向D1に関する第1部分35aの両端部は、第1ハウジング23に形成された一対の保持凹部23aに嵌め込まれている。
第2部分35bは、第2方向D2に関する第1部分35aの両端部から第2方向D2に沿って突出している。各第2部分35bは、樹脂部材85の対応する突出部93の第1凹部94に受けられている。
【0067】
制御基板35には、制御回路99が形成されている。制御回路99は、第1パワー回路75および第2パワー回路80の駆動をそれぞれ制御するために設けられている。制御回路92は、各パワー回路75,80を制御するドライバと、このドライバを制御するCPUとを含む。制御基板35は、トルクセンサ11(図1参照)等からの制御信号が入力されるように構成されている。制御回路99と各パワー回路75,80とは、軸方向X1と平行に延びる接続線100を介して電気的に接続されている。制御基板35は、第2方向D2に関して、第1結合部73U,73V,73Wと、第2結合部74U,74V,74Wとの間に配置されている。
【0068】
図4および図6を参照して、第1および結合部73U,73V,73W,74U,74V,74Wは、軸方向X1から見たときに、第1ハウジング23の第1開口部101に露呈している。第1開口部101は、軸方向X1の一方X11側(図4において上側)を向いている。
また、周壁42の一部を切り欠くことにより、第2開口部102および第3開口部103が形成されている。第2開口部102は、第1結合部73U,73V,73Wと、第2方向D2(径方向R1)に隣接して配置されている。第1結合部73U,73V,73Wは、第2開口部102から第1ハウジング23の外側に露呈している。第2開口部102には、この第2開口部102を塞ぐ蓋104が取り付けられている。
【0069】
第3開口部103は、第2結合部74U,74V,74Wと第2方向D2(径方向R1)に隣接して配置されている。第2結合部74U,74V,74Wは、第3開口部103から第1ハウジング23の外側に露呈している。第3開口部103には、この第3開口部103を塞ぐ蓋105が取り付けられている。第3開口部103と、第2開口部102とは、第2方向D2に相対向している。
【0070】
上記の構成により、蓋104を取り外した状態のとき、第1結合部73U,73V,73Wの溶接用の工具を、第2開口部102からECU室37内に挿入可能である。同様に、蓋105を取り外した状態のとき、第2結合部74U,74V,74Wの溶接用の工具を、第3開口部103からECU室37内に挿入可能である。
次に、電動モータユニット33の組み立ての主要点について説明する。
【0071】
図7(A)に示すように、矩形状のプリント配線基板材料からなる材料110をパンチ111でプレス加工する。これにより、第1パワー基板31および第2パワー基板32を形成する。なお、図7(A)において、パワー基板31,32は、材料110から打ち抜かれた状態を示している。このとき、パワー基板31,32は、180°未満の円弧状に形成される結果、1枚の材料110から取り出すことのできるパワー基板の数が、多くされている。次に、各パワー基板31,32のそれぞれにFET76,81(図示せず)等を実装することにより、パワー回路75,80を形成する。
【0072】
次に、図4に示すように、モジュール34と、パワー基板31,32と、制御基板35と、を用意する。そして、モジュール34の樹脂部材85にパワー基板31,32をそれぞれ組み付け、且つ、制御基板35を樹脂部材85に固定することにより、サブアセンブリ98を組み立てる。第1および第2パワー回路75,80と、制御回路99とは、接続線100を介して電気的に接続されている。次いで、検査装置(図示せず)を用いて、パワー回路75,80と、制御回路99との間の導通試験を行う。
【0073】
次に、第1導電部材711U,711V,711Wの一端部711bU,711bV,711bW、および第3導電部材723U,723V,723Wの一端部723bU,723bV,723bWが挿通された状態の第1ハウジング23内に、導通試験に合格したサブアセンブリ98を収容する。
これにより、図7(B)に示すように、第1開口部102の近傍において、一端部711bU,711bV,711bWが、それぞれ、一端部712bU,712bV,712bWに隣接する。この状態で、溶接用の工具112を、第2開口部102を通してECU室37内に挿入し、溶接作業を行う。これにより、第1結合部73U,73V,73Wが形成される。
【0074】
同様に、第3開口部103の近傍において、一端部723bU,723bV,723bWは、それぞれ、一端部724bU,724bV,724bWに隣接している。この状態で、溶接用の工具112を、第3開口部103を通してECU室37内に挿入し、溶接作業を行う。これにより、第2結合部74が形成される。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1パワー回路75からの電流は第1コイル54に流し、第2パワー回路80からの電流は第2コイル55に流すことにより、電動モータ18を駆動する。これにより、各コイル54,55に流す電流を少なくできるので、各コイル54,55での電力損失を少なくできる。その結果、電動モータ18全体としての電力損失を少なくできる。しかも、第1および第2コイル54,55の双方に同時に電力を供給することも可能であるので、各コイル54,55に流す電流が小さくても(電力損失が小さくても)、電動モータ18の最大出力は十分に大きくできる。
【0075】
また、各コイル54,55に流す電流を小さくできるので、各パワー回路75,80を小さくでき、且つ、各コイル54,55を細くできる。その結果、電動モータユニット33の小型化を実現できる。しかも、電動モータ18と同軸的に配置された第1ハウジング23に各パワー基板31,32を収容している結果、電動モータ18の周辺の空間を有効活用できるので、電動モータユニット33の更なる小型化を実現できる。
【0076】
また、軸方向X1から見たときに、各パワー基板31,32を離隔して配置していることにより、各パワー基板31,32からの熱を、効率よく第1ハウジング23に伝達できる。これにより、電動モータユニット33の放熱性能をより高くできる。
より具体的には、軸方向X1から見たときに、基準直線L2を挟んで第1パワー基板31および第2パワー基板32が並んでいるようにすることで、第1パワー基板31と第2パワー基板32とを離隔配置することができる。
【0077】
また、軸方向X1から見たとき、第1パワー基板31の外郭部31aと、第2パワー基板32の外郭部32aとは、中心軸線L1を中心に点対称に配置されている。また、軸方向X1から見たとき、第1パワー基板31の外郭部31aと、第2パワー基板32の外郭部32aとは、基準直線L2を中心に線対称に配置されている。
これにより、2つのパワー基板31,32を、電動モータ18の中心軸線L1を取り囲むように配置できる。したがって、2つのパワー基板31,32が径方向R1に突出する量を少なくでき、電動モータユニット33の更なる小型化を実現できる。また、2つのパワー基板31,32を、1枚の板状の基板材料から打ち抜いて形成する場合に、一定の大きさの材料110から打ち抜くことのできるパワー基板31,32の数を、より多くできる。これにより、第1パワー基板31および第2パワー基板32を1枚の材料から効率よく形成できる。
【0078】
さらに、別体に形成された第1および第2導電部材711U,712Uで第1バスバー71Uを形成していることにより、各導電部材711U,712Uの形状の自由度を高くできる。その結果、第1バスバー71Uを、他の部品との接触を避けつつ、第1ハウジング23内にコンパクトに配置できる。これにより、電動モータユニット33の更なる小型化を実現できる。第1バスバー71V,71Wも同様である。
【0079】
また、別体に形成された第3および第4導電部材723U,724Uで各第2バスバー72を形成していることにより、各導電部材723U,724Uの形状の自由度を高くできる。その結果、第2バスバー72Uを、他の部品との接触を避けつつ、第1ハウジング23内にコンパクトに配置できる。これにより、電動モータユニット33の更なる小型化を実現できる。第2バスバー72V,72Wも同様である。
【0080】
さらに、軸方向X1から見たとき、第2方向D2に沿って第1結合部73U,73V,73Wと、第2結合部74U,74V,74Wとが相対向している。これにより、第1パワー基板31と、第2パワー基板32と、第1結合部73U,V,Wと、第2結合部74U,74V,74Wと、を効率よく配置できる。これにより、第1ハウジング23内におけるデッドスペースを少なくできるので、電動モータユニット33の更なる小型化を実現できる。
【0081】
また、第1結合部73U,73V,73Wおよび第2結合部74U,74V,74Wは、それぞれ、第2開口部102および第3開口部103に露呈するように配置されている。これにより、第1ハウジング23の外部と第1結合部73U,73V,73Wとの間、および第1ハウジング23の外部と第2結合部74U,74V,74Wとの間は、それぞれ、第1ハウジング23内の部品によって遮られていない。
【0082】
これにより、第1バスバー71Uの一端部711bU,712bU同士を溶接する工具112を、第2開口部102を通して第1ハウジング23内に容易に挿入できる。第1バスバー71V,71Wおよび第2バスバー72U,72V,72Wについても同様である。これにより、電動モータユニット33の組み立ての手間を少なくできる。
本実施形態では、サブアセンブリ98を第1ハウジング23内に組み付けた状態で、第1結合部73U,73V,73Wの溶接作業と、第2結合部74U,74V,74Wの溶接作業と、を行うことができる。したがって、サブアセンブリ98の各パワー回路75,80と、制御回路99との間の導通試験を経た後に上記の溶接作業を行うことができる。
【0083】
これにより、不具合のあるパワー回路75,80や、制御回路99を含むサブアセンブリ98にコイル54,55を接続してしまう無駄な作業を抑制できる。その結果、不良品の発生を低減できる。
また、制御基板35は、第2方向D2に関して、第1結合部73U,73V,73Wと第2結合部74U,74V,74Wとの間に配置されている。これにより、制御基板35の外側に、第1結合部73U,73V,73Wおよび第2結合部74U,74V,74Wが配置されている。したがって、これらの結合部の形成ための溶接作業を行い易い。
【0084】
また、径方向R1の外側に向けて開口する第2および第3開口部102,103から工具112を第1ハウジング23内に挿入することにより、各結合部73U〜73W,74U〜74Wにおける溶接作業を容易に行うことができる。
本発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0085】
例えば、各パワー基板31,32の外郭部31a,32aは、軸方向X1から見たときに、点対称に配置されていなくてもよい。また、各パワー基板31,32の外郭部31a,32aは、軸方向X1から見たときに、線対称に配置されていなくてもよい。
また、軸方向X1から見たとき、第1および第2パワー回路75,80は、点対称でなくてもよく、例えば、図8に示すように基準直線L2を中心とする線対称な配置でもよい。
【0086】
さらに、周壁42の第2開口部102および第3開口部103は、なくてもよい。
また、第1導電部材711Uと、第2導電部材712Uとは、溶接に限らず、半田付け等の他の固定手段によって固定されてもよい。他の溶接箇所についても同様である。
【符号の説明】
【0087】
18…電動モータ、23…第1ハウジング(ハウジング)、31…第1パワー基板、31a…第1パワー基板の外郭部、32…第2パワー基板、32a…第2パワー基板の外郭部、33…電動モータユニット、35…制御基板、42…周壁、54…第1コイル、55…第2コイル、71U,71V,71W…第1バスバー、711U,711V,711W…第1導電部材、712U,712V,712W…第2導電部材、72U,72V,72W…第2バスバー、723U,723V,723W…第3導電部材、724U,724V,724W…第4導電部材、73U,73V,73W…第1結合部、74U,74V,74W…第2結合部、75…第1パワー回路、80…第2パワー回路、99…制御回路、101,102,103…開口部、D1…第1方向、D2…第2方向、L1…電動モータの中心軸線、L2…基準直線、X1…中心軸線の軸方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8