(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の空気浄化装置は、
・液ガス比(処理対象空気量に対する浄化水所要量の比)がたとえば3〜4L/m
3程度と大きく、しかも多量の浄化水を循環使用するためにポンプ動力に要するエネルギー使用量が大きい、
・液ガス比が大きいにも関わらず除去効率が必ずしも良くない、
・空気中の有機物を水で除去する場合、微生物の繁殖が著しくメンテナンス費用が嵩む、
・微生物対策として配管経路に水フィルタを設置したり、循環水槽に殺菌灯が必要となるなど、除去装置が複雑になりコスト高である、
といった問題がある。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明はイニシャルコストおよびランニングコストの軽減を図りつつ優れた浄化効果の得られる有効適切な空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、クリーンルームを対象としてその室内空気を浄化するための空気浄化装置であって、処理対象空気を下部から導入し上部から導出する充填塔と、前記充填塔内に充填されて処理対象空気が接触しつつ上向き流として通過可能かつ浄化水を保水可能な親水性を有する充填材と、前記充填材の上方から浄化水を噴霧して該浄化水を前記充填材に保水せしめる浄化水供給機構とを具備してなり、処理対象空気を前記充填材に接触させつつ前記充填塔内を通過させることにより、処理対象空気中の汚染物質を前記充填材が保水している浄化水に溶解せしめて処理対象空気を浄化する構成と
し、前記充填材は、布材とメッシュ材とを熱融着してなる成型布と、メッシュ材を波形に成型してなるスペーサとが交互に積層されてなり、前記成型布と前記スペーサとが縦姿勢とされた状態で前記充填塔内に配置されていて、前記スペーサに形成されている波形が水平な横波とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の空気浄化装置であって、前記浄化水供給機構はオゾン水を含む浄化水を供給可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気浄化装置は、充填塔内に充填した充填材に浄化水を保水せしめ、その充填材に処理対象空気を接触させつつ通過させることによって、汚染物質を充填材が保水している浄化水に溶解させて除去するので、優れた浄化性能が得られることはもとより、従来一般の水スプレー方式の浄化装置に比べて構成が簡便であり、また少量の浄化水を充填材に対して単に噴霧すれば良いので浄化水の所要水量が格段に少なくて済み、そのためのポンプ動力も大幅に削減でき、したがってイニシャルコストおよびランニングコストを十分に軽減できるものである。
特に、浄化水にオゾン水を添加可能に構成することによって微生物の繁殖も有効に防止することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の空気浄化装置の実施形態を
図1〜
図4を参照して説明する。
図1は本発明の空気浄化装置10を備えた空調設備1の全体概略構成を示すものである。この空調設備1はクリーンルームを対象とするもので、
図1に示すように本実施形態の空気浄化装置10の前段および後段に一次空調機2および二次空調機5を備え、処理対象空気であるクリーンルームからのリターン空気RAを一次空調機2においてHEPAフィルタ3に通して微生物粒子を除去するとともに、冷却コイル4に通して露点温度まで冷却した後、本実施形態の空気浄化装置10に導入して汚染物質を除去し、それを通過して浄化された空気を二次空調機5が備えるファン6により送風してHEPAフィルタ7に通すとともに必要に応じて加熱コイル8により所望温度に調整したうえで、給気SAとしてクリーンルームに戻るように循環させることを基本とする。
【0013】
上記の空調設備1に備えられている本実施形態の空気浄化装置10は、処理対象空気としてのリターン空気RAを下部から導入し上向き流として上部から導出する充填塔11と、充填塔11内に充填されて処理対象空気が接触しつつ通過可能かつ浄化水を保水可能な親水性を有する充填材12と、その充填材12の上方から浄化水を噴霧して充填材12に浄化水を保水せしめる浄化水供給機構20とを具備するものである。
なお、図示例の充填塔11内には最下部に整流板30が設置され、最上部にはエリミネータ31が設置されている。また、充填塔11の下方には充填材12から流下ないし滴下する浄化水を受けて回収するための排水槽32が設けられている。
【0014】
本実施形態の空気浄化装置10において用いる充填材12としては、
図2(a)に示すように、ポリエステルからなる布材13aとポリプロピレンからなるメッシュ材13bとを一体に熱融着してなる成型布13と、ポリプロピレンからなるメッシュ材を波形に成型してなるスペーサ14とが交互に積層されてなるもので、処理対象空気が十分に接触しつつかつ低圧力損失で支障なく通過可能なものである。
【0015】
上記のポリエステルからなる布材13aとしては、糸の撚り数が大きく、布の織り方を梨地組織とし、布の仕上げ工程で溶解減量化を図り、空隙率を高くすることで親水性に優れるポリエステル布が好適に採用可能である。
なお、同様に親水性に優れる布材として木綿材を用いることも考えられるが、本実施形態で使用する充填材は親水性のみならずオゾンに対する耐久性も必要であるので、その点で木綿材は適当ではなく上記のようにポリエステル布が最適である。
【0016】
そして、本実施形態では、
図2(a)に示すように上記の成型布13と上記のスペーサ14とをいずれも縦姿勢とし、かつスペーサ14に形成されている波形を水平な横波14aとした状態で(つまり波形を水平横方向に形成した状態で)、それらを交互に積層して(b)に示すように底部に保持メッシュ15aを有する角形筒状の収納容器15内に収納することにより、それら成型布13とスペーサ14とを多重に積層した1ユニットの充填材12を構成し、それを充填塔11内に交換可能な状態で装着するようにしている。
なお、スペーサ14に形成されている波形を鉛直な縦波として形成することでも良く、その場合は処理対象空気が縦波に沿ってそのまま上方に流れるので圧力損失の点では有利であるが、上記のように波形を横波14aとして形成した方が浄化水の保水性の点で有利であるし、また処理対象空気に対する充填材12の接触面積をより大きく確保できるので、その点で上記のように波形を横波14aとすることが好適である。
【0017】
一方、浄化水供給機構20は、熱交換器21と、給水ポンプ22と、オゾン水発生機23と、噴霧ノズル24とを具備し、熱交換器21によって処理対象空気の露点温度まで冷却された浄化水を給水ポンプ22によってオゾン発生機23に通し、オゾン水を添加した浄化水を給水管路25によって噴霧ノズル24に供給して充填材12の上方から噴霧することによって、オゾン水を含む浄化水を充填材12に保水せしめるようになっている。
【0018】
なお、上記のオゾン発生機23としては、浄化水を直接的に電解してオゾンを発生させる方式のものが好適に採用可能であるが、気中の酸素をオゾン化して浄化水に溶解させる方式のものも採用可能である。
また、充填塔11へ給水する浄化水中のオゾン濃度はたとえば1.5〜5ppm程度の低濃度で良く、オゾン水を浄化水に対して必ずしも常時連続的に添加することなく間欠的ないし断続的に添加することでも良いが、いずれにしてもオゾン水の添加量やその濃度を調整可能としておくことが好ましい。そのためには、図示例のようにオゾン水発生機23にバイパス管路26およびそれを開閉する電磁弁27を備えておいて、オゾン水発生機23を間欠的ないし断続的に運転して浄化水へのオゾン水の添加量やその濃度を最適に調整するように構成としておくと良い。あるいは、それに代えて、オゾン水を貯留するオゾン水槽を別途設けておいて、そこから浄化水に対してオゾン水を適宜供給することによってオゾン水の添加量や濃度を調整するようにしても良い。
【0019】
上記構成の空気浄化装置10は、充填塔11内において処理対象空気が上向き流として充填材12を通過する際に、処理対象空気中の汚染物質が充填材12に保水されている浄化水に自ずと接触し、それにより汚染物質が浄化水に溶解して除去されることにより処理対象空気が浄化される。
すなわち、処理対象空気であるクリールームからのリターン空気RAは一次空調機2から充填塔11の下部に導入され、整流板30により整流されて均一流となって上方に向かって流れて充填材12を通過するが、その際に浄化水を保水していて濡れ面となっている充填材12の表面に接触して汚染物質(特に有機物)が浄化水に溶解し、それにより処理対象空気が浄化される。
浄化された空気はエリミネータ31により微細な水滴が除去されて充填塔11の上部から導出され、二次空調機5によりクリーンルームに循環する。
一方、充填材12に噴霧された浄化水は、充填材12に保水された状態で次第に流下ないし滴下していきつつ処理対象空気と向流接触して上記のように汚染物質を溶解し、汚染物質を溶解した浄化水は最終的には充填塔11の下部から排水槽32に回収されて適宜処理され排水される。
【0020】
本実施形態の空気浄化装置10によれば、処理対象空気を充填材12に保水せしめた浄化水に接触させてその浄化水に汚染物質を溶解させて除去するので、充填材12に対して少量の浄化水を噴霧して保水させることのみで、以下に示す実施例で実証されるように優れた浄化効果が得られるものである。
【0021】
(実施例1)
梨地組織のポリエステルからなる布材13aと20メッシュのポリプロピレンからなるメッシュ材13bとを熱融着させた成型布13と、10メッシュのポリプロピレンからなるメッシュ材に横波14aを形成したスペーサ14とを積層した充填材12を用いる。充填材12の断面サイズは294mm×294mmとし、その長さ(高さ)を300mm、600mm、900mm、1200mmの4種とした。
処理対象空気量を7.9m
3/min、浄化水の噴霧量を0.62L/min(液ガス比は約0.08L/m
3)、充填塔11内の通過風速を1.5m/sとした。
【0022】
浄化対象の汚染物質を空気中の有機溶剤PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)成分とした場合における除去性能とドレン温度との関係を
図3に示す。図中の直線は充填材12の長さが300mm、900mm、1200mmの場合における回帰直線である。
本実施例では、ドレン温度が13.5℃の場合において、充填材長さ900mmで除去率80%、充填材長さ1200mmで除去率85%が得られた。また、充填材長さ600mmでは70%程度、300mmでも60%程度の除去率が得られた。
有機溶剤の気液平衡におけるヘンリー定数は吸収液体温度が低いほど小さくなることが知られているので、本実施例による測定結果の除去率はドレン温度に依存しており、吸収理論に整合していることが確認された。
【0023】
なお、上記実施例1に対する比較例として、充填材サイズが同じく294mm×294mm、長さ900mmのユニットに一般の充填塔で使用される汎用のボール状充填材(φ27mm)を充填して同一条件で処理した場合、除去率は35%程度に過ぎず、本発明の空気除去装置の除去性能は格段に優れていることが確認された。
【0024】
(実施例2)
図1に示した空気浄化装置10において充填材12は上記実施例1と同様のものとし、充填材12の断面サイズを300mm×300mm、長さ900mmとしたユニットを8本設置し、処理空気量65.9m
3/min、浄化水の噴霧量6.2L/min(液ガス比は約0.09L/m
3)、塔内風速を1.5m/sとした場合、ドレン温度10℃においてPGMEA成分の除去率は90%であり、実施例1と同様に従来の充填材による場合に比べて格段に優れた除去率が得られた。
【0025】
(実施例3)
図1に示した空気浄化装置10において充填材12は実施例2と同様のものとし、PGMEAを含む空気処理量57.3m
3/min、浄化水の噴霧量8L/min(液ガス比は約0.14L/m
3)、塔内風速1.3m/sとし、オゾン水発生機23を使用してオゾン水を間欠的に噴霧した場合(濃度1.5ppmのオゾン水を含む浄化水と、オゾン水を含まない浄化水とを12時間ごとに交互に噴霧した場合)、ドレン中の微生物濃度を継続的に測定した。
その結果、
図4に示すように400日間にわたって細菌濃度、真菌濃度のいずれも100cfu/mL以下であった。400日後に充填材を観察したところ、充填材は清浄で微生物の付着は全く見られなかった。このことから、濃度1.5ppmのオゾン水を間欠噴霧することで微生物繁殖を防止できることが確認できた。
【0026】
以上のように、本発明の空気浄化装置は従来一般の浄化装置に比較して格段に優れた浄化性能が得られることはもとより、処理対象空気を単に充填塔11内を上向き流として通過させ、かつ充填塔11内の充填材12に対して少量の浄化水を噴霧して保水せしめるだけの簡便な構成であるので、従来一般の水スプレー方式の浄化装置に比べて構成が遙かに簡便であってイニシャルコストを軽減できるものである。
【0027】
特に本発明の空気浄化装置は、従来の多段水スプレー方式の浄化装置に比べて浄化水の所要水量を大きく削減し得て効率的な運転が可能であり、したがってランニングコストを十分に軽減し得るものである。
すなわち、従来の多段水スプレー方式の浄化装置では多量の浄化水を処理対象空気に対して直接的に噴霧することで浄化効果を得るものであるから、多量の浄化水を必要とするばかりでなく多量の浄化水を循環使用するために多大なポンプ動力を必要とするのに対し、本発明の空気浄化装置は浄化水を保水せしめた充填材12に処理対象空気を接触させつつ通過させるものであり、したがって多量の浄化水を循環使用することなく少量の浄化水をワンパス方式で単に充填材12に対して補給水として噴霧するだけで十分である。
それ故に、本発明によれば浄化水の所要量を大幅に削減し得て、液ガス比を従来の3〜4L/m
3程度から上記実施例のように0.08L/m
3程度と従来の1/30程度にまで大幅に削減できるし、そのためのポンプ動力もわずかで済み、したがってランニングコストを十分に軽減可能である。
【0028】
しかも、上記実施形態のように浄化水供給機構20にオゾン水発生機23を備えて浄化水にオゾン水を添加可能に構成することによって、微生物の繁殖を有効に防止でき、それにより空気浄化装置10を長期にわたって連続運転することも可能であるから、この点においても保守費を軽減することができ、高度の清浄度が要求されるクリーンルームに適用する空気浄化装置として極めて有効なものである。
【0029】
以上で本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態はあくまで好適な一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜の設計的変更や応用が可能である。
【0030】
たとえば、空気浄化装置10の構成要素である充填塔11の形態や大きさ、その内部に充填する充填材12の具体的な仕様、浄化水供給機構20の構成等、各部の具体的な構成は、除去すべき汚染物質の種類や汚染程度、要求される清浄度、処理風量その他の諸条件を考慮して最適な処理を行い得るように最適設計すれば良い。
【0031】
特に、浄化水供給機構20は充填材12に対して必要最小限の浄化水を噴霧してそれに保水させることが可能なものであれば良いから、その限りにおいて浄化水供給機構20の構成は任意に設計可能である。
なお、浄化水供給機構20には上記実施形態のようにオゾン水発生機23を備えることが好ましく、それにより微生物の繁殖を有効に防止できるのでそのように構成することが最適ではあるが、微生物の繁殖が想定されないような場合等においてオゾン水発生機23が不要であれば省略しても差し支えない。
【0032】
また、本発明の空気浄化装置は上記実施形態のようにクリーンルームを対象とする空調設備1に組み込んで使用することが現実的であるが、必ずしもそうすることはなく、処理対象空気の循環手段を別途用意すれば本発明の空気浄化装置を単独で使用することも可能である。
勿論、本発明の空気浄化装置を上記のように空調設備に組み込む場合においても、その空調設備全体の構成は、処理対象空気を本発明の空気浄化装置に通しつつ循環させる構成とする限りにおいて任意である。