【実施例】
【0032】
図1(a)〜(f)に示す第1実施例の壁体構造及びその施工方法は、以下に説明する外装材1を、下地(リップ溝形鋼)2に係合する取付部材4と、外装材1に係合する係着部材5とからなる保持部材3を用いて下地2に固定するものであって、その後に説明する第1〜第3の工程を順次繰り返して実施するものである。
【0033】
前記外装材1は、壁パネルであって、係着部材5が係合する対象部材であって、面板部11の長さ方向に沿う側縁12,13に、相互に係合する側縁係合部121、側縁係止部131を有する構成である。詳しくは面板部11の両側縁12,13をそれぞれ裏面側へ折り曲げ(折曲片122,132)、一方は外方(面板部11の外側)へ延在(延在片123)させた端縁に、表面側へ折り返して突出する略く字状の側縁係合部121を設け、他方は内方(面板部11側)へ延在(延在片133)させた端縁に前記側縁係合部121へ係合する側縁係止部131を設けた。
【0034】
前記下地2としてのリップ溝形鋼(C形鋼、シーチャンネル)は、取付部材4が係合する対象部材であって、一方のフランジ22に設けられた内向き片(リップ)21が、取付部材4(内側係合部41)が係合する被係合部である。なお、フランジ22は、取付状態において、係着部材5の一部(基板部52)が、載乗する被載乗部である。
【0035】
前記保持部材3は、横方向に配される胴縁(下地)であるリップ溝形鋼(C形鋼)2に係合する内側係合部41を有する取付部材4と、外装材1に係合する外側係合部51を有する係着部材5と、前記取付部材4と前記係着部材5を連結する締着手段であるボルト6a,ナット6bとからなり、ナット6bを緩めた状態で係着部材5をボルト6aを軸として旋回状に回動可能である。
【0036】
前記取付部材4は、前述のように下地(C形鋼)2に係合する内側係合部41を有する構成であり、図示実施例の取付部材4は、略平坦状の接板部42の下端を略直角状に折り曲げ(添接部43)、更にその下端を略く字状に折り曲げて内側係合部41を設けた形状であり、前記接合部42には、締着手段(ボルト)6aが挿通する孔が設けられている。このように取付部材4は、略矩形状の板材素材を同方向に折り曲げ加工して成形される簡易な形状である。
そして、前記接板部42は、係着部材5の基板部52と重合状に配され、略く字状の内側係合部41が、C形鋼2の内向き片(リップ)21に対して係合する。
【0037】
前記係着部材5は、前述のように外装材1に係合する外側係合部51を有する構成であり、図示実施例の係着部材5は、略平坦状の基板部52の左側の側端を略く字状に折り曲げて外側係合部51を設けた形状であり、前記基板部52の一方端には、締着手段(ボルト)6aが挿通する孔が設けられている。このように係着部材5も、前記取付部材4と同様に略矩形状の板材素材を同方向に折り曲げ加工して成形される簡易な形状である。
そして、前記基板部52は、取付部材4の接板部42と重合状に配され、略く字状の外側係合部51が、外装材1の側縁係合部121の外側に重合状に係合する。なお、基板部52は、取付状態において、前記C形鋼2の一部(フランジ22)に載乗する載乗部でもある。
【0038】
前記締着手段は、前述のように前記取付部材4と前記係着部材5を連結するものであり、図示実施例では締着手段はボルト6a(ナット6b)であり、説明するまでもなく汎用品を適宜に用いることができる。
このボルト6aを、取付部材4及び係着部材5の接合部42,52の孔にそれぞれ貫通させ、ナット6bを取り付けて一体化されるが、ナット6bの締め付けを緩めた状態で両部材4,5の接板部42,基板部52を重合状に一体化してC形鋼2に取り付けることができ、接板部42,基板部52の重合状態を維持したまま係着部材5をボルト6aを軸として回動させることができ、ナット6bを強固に締め付けることにより、強固に一体化させることができる。
【0039】
以下、第1〜第3の各工程について説明する。
まず、第1の工程では、予めボルト6aを、取付部材4及び係着部材5の接合部42,52の各孔にそれぞれ挿通させ、ナット6bを緩く取り付けて非分離状態で一体化しておき、該保持部材3を構成する取付部材4の内側係合部41を、
図1(a)に示すようにC形鋼2の内向き片(リップ)21に係合させて取り付ける。なお、内側係合部41を内向き片21に浅く係合させると、図示するように係着部材5がフランジ22上に起立する状態とすることができる。
【0040】
次に、第2の工程では、
図1(a)にも示すように取付部材4の内側係合部41を、C形鋼2の内向き片21に係合させつつ保持部材3をC形鋼2に沿ってスライド移動させ、続いて
図1(b),(c)に示すように係着部材5をC形鋼2側から見て右回り(=同図では外装材1側から見ているため矢印表示は左回り)に回動させて外側係合部51を外装材1の側縁係合部121に係合させる。具体的にはC形鋼2の内向き片21に浅く係合させていた内側係合部41を、深く係合させることにより、図示矢印のように係着部材5が回動して外装材1の側縁係合部121に係合させることができる。
このように、第1実施例の第2の工程では、前記パターン1の態様にて保持部材3を所定位置へ配置し、係着部材5を外装材1に係合させるものである。
また、この図示実施例では、外装材1の側縁係合部121を表面側へ突出する略く字状に成形し、外側係合部51をそれより一回り大きな略く字状に成型したので、係着部材5を回動させることにより、外側係合部51を側縁係合部121の外側に容易に係合することができる。
なお、この第2の工程における係着部材5の回動は、
図2(a)の右半にも示す通りであり、左側端に位置していた外側係合部51が、ボルト6aを軸としてC形鋼2側から見て右回り(=同図でも外装材側から見ているため矢印表示は左回り)に旋回状に回動することにより、右側端に位置するものとなる。
【0041】
続いて、第3の工程では、ナット6bをC形鋼2側から締め付けて保持部材3を一体的にC形鋼2及び外装材1に固定すると共に、外装材1をC形鋼2に固定して
図1(d)、及び
図2(b),(c)の状態を得る。
そして、C形鋼2と外装材1とが、内側係合部41と外側係合部51との間に挟まれるように強固に固定され、極めて取付強度が高い壁体構造が得られる。
なお、この第1実施例では、この締め付け状態において、
図2(b),(c)に示すように係着部材5の基板部52が、C形鋼2のフランジ22に表面に載乗するようにしたので、係着部材5がC形鋼2のフランジ22に表面に安定に支持され、その結果、外装材1の取り付けが確実かつ強固に行われるものとなる。
【0042】
最後に、新たな外装材1の側縁係止部131を、取り付けた外装材1の側縁係合部121に係止して
図1(e)及び
図2(c)の状態を得る。
そして、
図1(f)に示すように前記第1〜第3の工程を順次繰り返して最終的に
図3(a)〜(c)に示す壁体構造を得ることができる。
この壁体構造では、外装材1が確実に保持部材3に保持されて強固にC形鋼2に取り付けられたものとなり、しかもC形鋼2側(=外装材1の裏面側)から施工されているため、外装材1の表面にビス等が打ち込まれた痕跡がある筈もなく、美麗な外観を呈するものである。
【0043】
図4(a),(b)には、前記第2の工程において、係着部材5の回動のみを行う態様(=前記パターン2)を示し、
図4(c),(d)には、前記第2の工程における保持部材3のC形鋼2に沿うスライドのみを行う態様(=前記パターン3)を示した。
即ち
図4(a),(b)では、保持部材3を予め特定したC形鋼2の適正位置に取り付け、その位置にて回動させることにより、係着部材5を外装材1に係合させる。
また、
図4(c),(d)では、保持部材3を予め回動させた状態(=取付状態)でC形鋼2の任意の箇所に取り付け、C形鋼2に沿ってスライドさせることにより、係着部材5を外装材1に係合させる。
【0044】
図5(a)〜(c)に示す第2実施例では、外装材1B及び保持部材3Bの構成が、前記第1実施例とは以下の点で異なる。
【0045】
前記外装材1Bは、一方側の側縁12には、
図5(a),(b)に示すように側縁係合部124が、表面側へ突出状に設けられる点で前記第1実施例の側縁係合部121と同様であるが、略く字状ではなく、略垂直状に立ち上がって傾斜状に下向きとなる形状である。また、延在片122と側縁係合部124との隅部には、断面略矩形状の弾性止水材7が長さ方向に取り付けている。
さらに、他方側の側縁13には、延在片133は存在せず、折曲片132の下端から跳ね上がり状に側縁係止部134が設けられている。
【0046】
前記保持部材3Bは、取付部材4及び締着手段(ボルト6a及びナット6b)については前記第1実施例と同様であるが、
図5(a)に示すように押出成形材である係着部材5Bが用いられ、該係着部材5Bに形成された溝部53にボルト6aの頭部を収容して保持する形状であり、外側係合部54は、前記側縁係合部124の外側に重合状に係合する点で前記第1実施例の外側係合部51とほぼ同様である。
【0047】
前記構成の外装材1B及び保持部材3Bを用いる第2実施例でも、前記第1実施例とほぼ同様に第1〜第3の工程を実施して壁体構造を施工することができる。
但し、この第2実施例における第1の工程では、予めボルト6aを、係着部材5Bの溝部53に保持させた状態で取付部材4の接合部42の孔に挿通させ、ナット6bを取り付けて一体化しておく。
また、第3の工程の後に、新たな外装材1Bの側縁係止部134を、取り付けた外装材1Bの側縁係合部124に係止するが、側縁係合部124の内部に弾性止水材7が配設されているため、内側から弾性反発力が作用し、側縁係合部124と側縁係止部134との係合がより確実に維持されるものとなり、その上、当該部位からの浸水を阻止する止水作用も果たされる。
【0048】
図6に示す第3実施例は、下地(胴縁)としてリップ溝形鋼(C形鋼、シーチャンネル)を用いた点では、前記第1実施例と同様であるが、配設方向が逆(開口が下向き)のC形鋼2Bである点で異なり、用いる保持部材3(取付部材4、係着部材5)については全く同様であるから、図面に同一部号を付して説明を省略する。
【0049】
この第3実施例では、下地(胴縁)2Bとして、開口が下向きになるように配設したC形鋼を用いたので、
図6(a)に示すように、第1の工程では、前記保持部材3をC形鋼2Bの内向き片(リップ)21に係合させた状態で、係着部材5がC形鋼2Bからぶら下げるように取り付けられる。
次に、第2の工程では、
図6(b)及び
図6(e)右半に示すように、保持部材3のC形鋼2Bに沿うスライド及び係着部材5のC形鋼2B側から見て左回り(=これらの図面では外装材1側から見ているため矢印表示は右回り)の回動を併用して外装材1に係合させる。
また、その後の、
図6(c)に示す第3の工程や、
図6(d)に示す新たな外装材1を配設する工程は、前記第1実施例と同様に行うことができる。
【0050】
図7に示す第4実施例は、下地(胴縁)として角柱状の木製胴縁2Cを用いた点で異なり、用いる保持部材3IVは、取付部材4IVについては、断面略コ字状の包持部44を内側係合部として設け、該包持部44の上下端に係着部材5と接する接板部45,45を設けた構成であり、各接板部45には、締着手段であるボルト6aを側端から挿着可能な切欠孔451を形成している。係着部材5IVについて、基板部52の一方端ばかりでなく他方端にも締着手段(ボルト)6aが挿通する孔が設けられている。
【0051】
この第4実施例では、下地(胴縁)2Cとして、角柱状の木製胴縁を用いたので、
図7(a)に示すように、第1の工程では、前記取付部材4IVの一方(図面では下方側)の接板部45と係着部材5IVの他方端とを締着手段としてのボルト6a(図示しないが、ナット6bは緩く取り付けておく)にて非分離状態で一体化しておき、この状態で木製胴縁2Cに沿わせ、取付部材4IVの包持部44をその外周に包持状に係合する。この状態では、前記第1実施例と同様に、係着部材5IVが木製同縁2C上に起立する状態となっており、木製同縁2Cを挟んで取付部材4IVの接板部45,45が上下に対向状に配されている。
なお、図示するように係着部材5IVの他方側(図面では上方側)の孔にもボルト6aを取り付けている(図示しないが、ナット6bは緩く取り付けている)。
次に、第2の工程では、
図7(b)に示すように取付部材4IVの包持部44を、木製胴縁2Cに係合させつつ保持部材3IVを木製同縁2IVに沿ってスライド移動させ、続いて
図7(b),(c)に示すように係着部材5IVをC形鋼2側から見て右回り(=同図では外装材1側から見ているため矢印表示は左回り)に回動させて外側係合部51を外装材1の側縁係合部121に係合させる。
なお、係着部材5IVの回動により、それに伴って他方側の孔に取り付けていたボルト6aも移動し、木製同縁2Cの下方側に配していた接板部45に臨み、その切欠孔451へ取り付けられる。
その後の、
図7(c)に示す第3の工程では、図示しないが、上下の締着手段としてのナット6bを締め付ければよく、その後の
図7(d)に示す新たな外装材1を配設する工程については、前記第1実施例と同様に行うことができる。
【0052】
図8に示す第5実施例は、下地(胴縁)としてH形鋼2Dを用いた点で異なり、用いる保持部材3Vは、係着部材5について前記第1実施例と全く同様であるが、取付部材4Vについては、弾性によりH形鋼2Dのフランジ23の裏面側に沿うバネ片46を内側係合部として設けた構成である。前記バネ片46は成形時に意図的に添接部43との角度を少なくとも取付状態より鋭角状に形成したものであり、弾性に抗して取り付けるため、弾性回復力がバネ片46に作用する。なお、取付部材4Vの添接部43やバネ片46は、外装材1側から見た斜視図である
図8(a)〜(d)に加え、その断面図である
図8(f)を参照されたい。
【0053】
この第5実施例では、下地(胴縁)として、H形鋼2Dを用いたので、
図8(f)に示すように、第1の工程では、前記保持部材3VをH形鋼2Dのフランジ23に弾性に抗して係合させた状態で、
図8(a)に示すように係着部材5がH形鋼2D上に起立状に取り付けられる。
次に、第2の工程では、
図8(b)及び
図8(e)右半に示すように、保持部材3VのH形鋼2Dに沿うスライド及び係着部材5のH形鋼2D側から見て右回り(=これらの図面では外装材1側から見ているため矢印表示は左回り)の回動を併用して外装材1に係合させるものであり、実質的に前記第1実施例と全く同様である。
また、その後の、
図8(c)に示す第3の工程や、
図8(d)に示す新たな外装材1を配設する工程は、前記第1実施例と同様に行うことができる。
【0054】
図9に示す第6実施例は、下地(胴縁)として縦片24と横片25とから構成されるL形鋼2Eを用いた点で異なり、用いる保持部材3Vは、前記第5実施例と全く同様であるため、図面に同一符号を付して説明を省略する。なお、前記第5実施例と同様に、取付部材4IVの添接部43やバネ片46は、外装材1側から見た斜視図である
図9(a)〜(d)に加え、その断面図である
図9(f)を参照されたい。
【0055】
この第6実施例では、下地(胴縁)としてL形鋼2Eを用いたので、
図9(f)に示すように、第1の工程では、前記保持部材3VをL形鋼2Eの縦片24に弾性に抗して係合させた状態で、
図9(a)に示すように係着部材5がL形鋼2E上に起立状に取り付けられる。
次に、第2の工程では、
図9(b)及び
図9(e)右半に示すように、保持部材3VのL形鋼2Eに沿うスライド及び係着部材5のL形鋼2E側から見て右回り(=これらの図面では外装材1側から見ているため矢印表示は左回り)の回動を併用して外装材1に係合させるものであり、実質的に前記第1実施例と全く同様である。
また、その後の、
図9(c)に示す第3の工程や、
図9(d)に示す新たな外装材1を配設する工程は、前記第1実施例と同様に行うことができる。