特許第5787163号(P5787163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5787163-車両用表示装置の防水構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787163
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】車両用表示装置の防水構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   B60R16/02 610B
   B60R16/02 622
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-251731(P2011-251731)
(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公開番号】特開2013-107419(P2013-107419A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2014年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高野 均
【審査官】 常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−085786(JP,A)
【文献】 特開2002−044838(JP,A)
【文献】 特開2002−010451(JP,A)
【文献】 特開2002−184514(JP,A)
【文献】 特開2005−261048(JP,A)
【文献】 特開2004−125920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車両に搭載され、車両情報を表示する表示手段と、
前記表示手段による表示を視認可能に前記表示手段を収納するケースと、
このケースの外部と接続するための配線と、
前記ケースに収納され、前記配線と接続されるとともに前記表示手段を駆動する電子部品を実装する回路基板と、
前記配線が挿通される配線管と、
前記配線管を挿通し、前記ケースの開口を覆う弾性変形可能な防水部材と、を備え、
前記防水部材は、
前記配線管をテープからなる接着部材にて固定するための筒状の内壁部と、
前記接着部材の全部を覆うとともに前記接着部材に接触する外壁部と、を設けることを特徴とする車両用表示装置の防水構造。
【請求項2】
前記接着部材、前記配線管、前記防水部材の前記内壁部と前記外壁部とが積層された位置に、前記外壁部の外周から結束する固定部材を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報を表示する車両用表示装置の防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用表示装置にあっては、例えば、ケースの内部に指針による指示を行う速度計や燃料計や温度計などの各種の表示器を収納固定するとともに、各表示器を駆動するための回路基板を収納固定している。また、場合によっては液晶表示装置からなる表示器をケース内に収納固定するとともに、この液晶表示器を駆動するための回路基板をケース内に収納固定している。
【0003】
また、前記回路基板からケースの外部側へと電気的に引き回し形成するために、回路基板に接続した配線コードなどを介してケースに設けた開口を通じてケースの内部側から外部側へと引き出し形成している。この際、例えば、特許文献1などに記載されているように、配線部材とケースの開口部との間の防水性を保つために弾性部材からなるグロメットに前記配線部材をそれぞれ挿通して水密に保つように構成している。
【0004】
また、配線を挿通したグロメットをケースに組み付ける場合、ケースの内部側からケースの開口部を通じて外部側へと引き出し案内する際に、さらに配線とグロメットとの密着性を保つために、接着部材としてテープを用いて隙間を塞ぐものが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−334982号公報
【特許文献2】特開平10−214532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のような構造を二輪車などの車両用表示装置に適用した場合にあっては、テープ部分が露出することがあり、車両の排熱や太陽光、雨水、テープの経年変化による劣化などからテープによる密着性を保つことができず、グロメットと配線との隙間が発生してしまい、その隙間から電子部品に悪影響を及ぼす埃や水分が入ってしまう虞があり、防水や防塵構造として改善の余地があった。また、テープの部分的な剥がれや粘着部分に付着する汚れなど、外観品位を損なうという問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、上述した課題に着目してなされ、接着部材の劣化を抑制し防水性に優れた車両用表示装置の防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用表示装置の防水構造は、
二輪車両に搭載され、車両情報を表示する表示手段と、
前記表示手段による表示を視認可能に前記表示手段を収納するケースと、
このケースの外部と接続するための配線と、
前記ケースに収納され、前記配線と接続されるとともに前記表示手段を駆動する電子部品を実装する回路基板と、
前記配線が挿通される配線管と、
前記配線管を挿通し、前記ケースの開口を覆う弾性変形可能な防水部材と、を備え、
前記防水部材は、
前記配線管をテープからなる接着部材にて固定するための筒状の内壁部と、
前記接着部材の全部を覆うとともに前記接着部材に接触する外壁部と、を設けることを特徴とする。
【0009】
また、前記接着部材、前記配線管、前記防水部材の前記内壁部と前記外壁部とが積層された位置に、前記外壁部の外周から結束する固定部材を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、車両情報を表示する車両用表示装置の防水構造に関し、接着部材の劣化を抑制し防水性に優れた車両用表示装置の防水構造を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態である表示器を示す断面図。
図2】同上の表示器の配線を挿通する防水部材を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付した図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、二輪車両に搭載される表示器(車両用表示装置)Aを示す断面図である。表示器Aは、二輪車両のハンドル中央付近で雨水等かかりやすい箇所に設置され、液晶表示パネル(表示手段)1と、ケース2と、回路基板3と、グロメット(防水部材)4と、配線5と、配線管6と、ビス7、固定部材8とを備えている。
【0014】
液晶表示パネル1は、二輪車両の利用者が視認可能なようにハンドルの中央近くに設けられ、残りのエネルギー容量(残燃料量)や車両の走行速度、各機構の状態を示すインジケータ、警報内容などの車両情報を画像表示するものである。また、液晶表示パネル1は、回路基板3と接続されて駆動信号を得るとともに、この回路基板3に実装されたバックライト11によって、透過照明されて表示できる。
【0015】
なお、この場合、液晶表示パネル1の表示領域以外を覆い隠すための見返しパネル12や、液晶表示パネル1とバックライト11との間に、光拡散シートなどの光学部材13を介在させて、照明むらを低減させて液晶表示パネル1の視認性を高めている。
【0016】
この場合、液晶表示パネル1は、薄膜トランジスタを用いて駆動制御され、詳述しない車両利用者の操作や、車両の状態に応じて画面切換えして、所望の表示を出力することができる。
【0017】
ケース2は、表示側ケース21と、背面側ケース22とで構成され、液晶表示パネル1や回路基板3を保持するとともに収納する。
【0018】
表示側ケース21は、液晶表示パネル1の表示出力を透過する窓部21aと、背面側ケース22と接続するための固定部(取り付け用穴)21bとを有しており、この場合、窓部21aとなる透明な合成樹脂材をインサート成型して遮光な固定部21bとともに形成されてなる。
【0019】
背面側ケース22は、遮光(有色)な合成樹脂材を用いて形成され、液晶表示パネル1や回路基板3を図示しないビスやフックなどで固定保持することができる。また、背面側ケース22がこの固定保持した状態にて、液晶表示パネル1側から前記表示側ケース21で覆い塞ぐようにして、表示側ケース21を組み付けることができる。
【0020】
この場合、背面側ケース22は、側面側における表示側ケース21との当接箇所に防水パッキン22aを一周に渡って介在させるとともに、固定部21bにビス締めされて、表示側ケース21と水密に接続している。なお、背面側ケース22の背面側には、後述する回路基板3のコネクタを臨む開口22bやグロメット4を嵌める縁部22cと、縁部22cの同心円状に設けられる凹状の溝部22dとが設けられている。なお、縁部22cや溝部22dは、開口22bを囲むように一週に渡って形成される。
【0021】
回路基板3は、スペーサ31によって液晶表示パネル1と所定間隔離れた位置で、背面側ケース22に保持され、ガラスエポキシ樹脂を用いた基板に銅箔パターンからなる回路配線が印刷形成された硬質プリント配線板からなる。
【0022】
また、回路基板3は、図示しない配線を介して液晶表示パネル1と接続し、車両情報を入力し所定プログラムによって演算するためのインターフェース回路やマイクロコンピュータ(演算手段)や、液晶表示パネル1を駆動制御するための駆動回路、液晶表示パネル1を透過照明するためのバックライト11、外部からの信号(車両情報)を入力したり、車両からの電源を供給するなどの複数の配線5を接続するためのコネクタ33などの電子部品を実装している。なお、コネクタ33は、背面側ケース22の開口22bに対応した位置に設けられる。
【0023】
グロメット4は、合成ゴムからなる弾性材からなり、ケース2の縁部22cや溝部22dの形状に沿って接する嵌合部41を一端側に設け、配線5を挿通するとともに嵌合部41よりも径小な筒状の内壁部42を他端側に設けている。また、この内壁部42の外周を覆う外壁部43を設けており、外壁部43は、図2に示すように、折り曲げて変形させることができる。また、嵌合部41と内壁部42とを傾斜状(円錐状)に接続する連結部44とが設けられる。なお、グロメット4は、合成ゴムではなく、弾性を有する樹脂材料を適用することもできる。
【0024】
この場合、嵌合部41には、背面側ケース22の溝部22dの形状に対応する凸状の凸部42aが設けられている。また、グロメット4は、嵌合部41側と内壁部42側との両端が開口する筒状になっており、回路基板3に実装されたコネクタ33に対応するコネクタ33aと図示しない複数のコネクト端子に接続される配線5とを覆うものである。また、図1に示す、組み付け状態にあっては、嵌合部41の一端開口部は、ケース2の縁部22cや溝部22dによって水密にされ嵌合し、内壁部42の他端開口部は、テープTや配線管6によって隙間無く設けられる。
【0025】
配線5は、コネクタ33aに接続される複数の被膜導線コードで、電源線や各種信号線として利用される。この場合、配線5は、コネクタ33a付近で束ねられ、グロメット4や配線管6を挿通して、表示器Aと外部機器との電気的な接続を行うようにしている。また、配線5のコネクタ33a側は、特にグロメット4によって覆われている。
【0026】
配線管6は、合成ゴムからなり、グロメット4の内壁部42に外嵌された状態にて、内壁部42とともにテープTが巻かれて水分等が内部へ入らないようにして接続状態が保持される。この際、外壁部43を折り曲げておくことで、テープTを巻く作業が容易に行える。なお、外壁部43にスリットを形成することで、折り曲げる作業も容易にすることもできる。なお、配線管6は、配線5の撓みを損なわないように、合成ゴムなどの可撓性部材を用いることが好適であるが、防水性を有し、配線5を挿通する筒状のものであれば代替できる。例えば、配線5の撓みが必要ない場合には、合成樹脂等からなる硬質なものを適用できる。
【0027】
なお、配線管6をテープTにてグロメット4に固定した後、外壁部43を元に戻してテープTで巻かれた配線管6の端部を覆うようにしている。この場合、テープTは、外壁部43によって全部が覆われるようにしており、太陽光の照射や水、埃の付着を低減するとともに、外観上隠れた状態となる。
【0028】
ビス7は、図1に示す状態から一対のコネクタ33,33aが接続され、嵌合部41が縁部22cに嵌め込まれ、嵌合部の一部が背面側ケース22の溝部22dに入れ込まれた状態にて、表示器Aを車両に組み付けるための取り付け具である。ビス7は、表示モニタAを金属フレーム(フレーム部材)Bとともに、背面側ケース22に設けられる固定部(取り付け用穴)22eに螺合されて、図2に示すように、金属フレームB上に表示器Aが組み付けられる。
【0029】
なお、金属フレームBには、グロメット4の嵌合部41を挿通するとともにケース2の開口22bに保持するための切り欠き部(孔)B1と、上述したビス7と同様な固定部材の挿通用の穴B2が複数用意されている。この場合、金属フレームBが嵌合部41に対して一周に渡って当たるように切り欠き部B1が設けられる。また、穴B2やこれに対応する固定部22eは、開口22bを周囲に複数設けられ、少なくとも一つは、嵌合部41の近傍箇所に設けられるため、ビス7によって嵌合部41の一部を強く圧縮して変形できる。
【0030】
従って、ビス7によって表示器Aが組み付けられることによって、切り欠き部B1の周囲が抑え部分としてグロメット4の一部を圧縮して弾性変形する程度に押し圧した状態で固定保持でき、更なる水密な構造を得ることができる。また、グロメット4がケース2と金属フレームBとによって挟まれることや、更に、溝部22dに入り込んだ嵌合部41によって、グロメット4が抜けにくい構造となるため、車体の強い振動や、配線5の押し出しなどが多少生じても防水構造を確保できる。なお、表示器Aが車体から外された状態にあっては、グロメット4のケース2との前記嵌め込みを解除するだけで、容易にコネクタの脱着作業を行うことができる。さらに、金属フレームBには、固定部材8によってグロメットを保持するためのアーム部B3が連続して設けられる。
【0031】
固定部材8は、結束バンドやクランプを適用でき、内壁部42と外壁部43との間に配線管6とテープTが積層された部分を外壁部43の外周から束ねて固定する。この際、アーム部Bを固定部材8と外壁部43との間に介在させることによって、変形可能なグロメット4や配線5、配線管6の位置を規制することができる。
【0032】
特に、配線管6を含めて結束することで、配線管6の抜け止めとして有利である。また、テープTは、グロメット4の外壁部43に接触して覆われており、太陽光の照射や、水、埃等の付着を防止できるため、劣化を抑制することができるだけでなく、固定部材8による外からの結束によって、剥がれることを防止できる。また、テープTや配線5が、グロメット4や配線管6によって覆われているため、外観的にも煩雑でなく、整然な印象を与えることができる。
【0033】
斯かる車両用表示装置(表示器)の防水構造にあっては、車両情報を表示する液晶表示パネル1と、液晶表示パネル1による表示を視認可能に液晶表示パネル1を収納するケース2と、このケース2の外部と接続するための配線5と、ケース2に収納され、配線5と接続されるとともに液晶表示パネル1を駆動する電子部品を実装する回路基板3と、配線5を挿通する配線管6と、配線管6を挿通し、ケース2の開口22bを覆う弾性変形可能なグロメット4と、を備え、グロメット4は、配線管6をテープTにて固定するための筒状の内壁部42と、テープTを覆う外壁部43とを設けてなる。
【0034】
従って、例えば、二輪車両などに搭載される雨滴に晒されやすい表示器に適用した場合であっても、テープ部分が露出することを防止し、車両の排熱や太陽光、雨水、テープの経年変化などによる劣化を抑制することができ、テープによる密着性を保つことができ、接着部材の劣化を抑制し、グロメット4の隙間から埃や水分が入りにくくなるため、防水性に優れた車両用表示装置の防水構造となる。また、テープの部分的な剥がれや粘着部分に付着する汚れなど、外観品位を損なうことを抑止できる。
【0035】
また、テープT、配線管6、グロメット4の内壁部42と外壁部43とが積層された位置に、外壁部43の外周から結束する固定部材8を備えてなることで、外壁部43とテープTや配線管6との密着性を向上でき、上述した効果を高めることができる。
【0036】
本発明の車両用表示装置の防水構造を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、車両に搭載して各種車両情報を表示する車両用表示装置に関して、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される表示装置の防水構造として適用でき、特に、建設機械などの特殊車輌や水上バイク,スノーモービル,船舶、あるいはオートバイなどの水面を移動する移動体の計器や雨滴に晒される環境で使用される計器の防水構造として好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 液晶表示パネル(表示手段)
2 ケース
3 回路基板
4 グロメット(防水部材)
5 配線
6 配線管
7 ビス
8 固定部材
A 表示器(車両用表示装置)
T テープ(接着部材)
図1
図2