特許第5787169号(P5787169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787169
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/10 20120101AFI20150910BHJP
   B60W 20/00 20060101ALI20150910BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20150910BHJP
   F16H 61/686 20060101ALI20150910BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20150910BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20150910BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20150910BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20150910BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   B60K6/20 350
   F16H61/02ZHV
   F16H61/686
   F16H63/50
   B60K6/48
   B60K6/547
   B60K6/20 310
   B60L11/14
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-15973(P2012-15973)
(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2013-154723(P2013-154723A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152087
【弁理士】
【氏名又は名称】伏木 和博
(72)【発明者】
【氏名】津田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】田島 陽一
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−111194(JP,A)
【文献】 特開2006−306210(JP,A)
【文献】 特開2005−249078(JP,A)
【文献】 特開2008−207643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 30/20
B60K 6/20 − 6/547
B60L 11/14
F16H 59/00 − 61/12
F16H 61/16 − 61/24
F16H 61/66 − 61/70
F16H 63/40 − 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、前記内燃機関から前記車輪に向かって、切離用係合装置、回転電機、及び変速機構、の順に設けられ、前記変速機構に備えられる複数の変速用係合装置のそれぞれの係合の状態を制御することにより前記変速機構が複数の変速段を切替可能に構成された車両用駆動装置を制御対象とする制御装置であって、
前記切離用係合装置を解放状態から直結係合状態へと移行させつつ停止状態にある前記内燃機関を始動させる内燃機関始動制御を実行する始動制御部と、
前記内燃機関始動制御に際して、複数の前記変速用係合装置のうちの1つを、少なくとも前記切離用係合装置の直結係合時にスリップ係合状態とする始動スリップ制御を実行する始動スリップ制御部と、
前記始動スリップ制御でスリップ係合状態とする前記変速用係合装置を対象係合装置として決定する対象決定部と、を備え、
前記対象決定部は、設定された判定速度に基づいて、車速が前記判定速度以上の場合には、前記始動スリップ制御の開始時における基準変速段を形成するために直結係合状態とされていた前記変速用係合装置であって当該基準変速段から予め定められた特定変速段へと移行させる際に解放される通常解放係合装置を前記対象係合装置として決定し、車速が前記判定速度未満の場合には、前記基準変速段を形成するために直結係合状態とされていた前記変速用係合装置であって前記複数の変速段の変速比の順において前記特定変速段を挟んで前記基準変速段とは反対側の特別変速段へと移行させる際に解放される特別係合装置を前記対象係合装置として決定する制御装置。
【請求項2】
前記対象決定部は、前記判定速度を、複数の変速段のうちのいずれが前記基準変速段であるかに応じて異なる値に設定する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
車速と変速段とに応じて定まる前記変速機構の入力側回転部材の回転速度を同期回転速度とし、
前記対象決定部は、前記基準変速段での前記同期回転速度である基準同期回転速度と前記特定変速段での前記同期回転速度である特定同期回転速度との差分と、予め定められた判定差回転速度とに基づいて、前記判定速度を設定する請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記判定差回転速度が、前記内燃機関始動制御に伴う前記入力側回転部材の回転速度の前記基準同期回転速度からの上昇分と、前記基準変速段から前記特定変速段への移行時の前記変速用係合装置の応答性を考慮して予め定められた余裕代分とに基づいて設定されている請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記余裕代分が、始動開始後における前記内燃機関の回転加速度に応じて設定されている請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記変速用係合装置は、油圧駆動式の係合装置であり、
前記対象決定部は、前記判定速度を、前記始動スリップ制御の開始時の油温に応じて異なる値に設定する請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記変速機構は、少なくとも第一係合装置と第二係合装置とが直結係合状態とされることで形成される第一変速段と、少なくとも前記第一係合装置と第三係合装置とが直結係合状態とされることで形成され前記第一変速段よりも低速段の第二変速段と、少なくとも前記第二係合装置と前記第三係合装置又は第四係合装置とが直結係合状態とされることで形成され前記第二変速段よりも低速段の第三変速段と、を切替可能であり、
前記基準変速段が前記第一変速段であり、前記特定変速段が前記第二変速段であり、前記通常解放係合装置が前記第二係合装置であり、前記特別係合装置が前記第一係合装置である請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記特定変速段は、前記基準変速段に対して低速段側に隣接する隣接変速段である請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、内燃機関から車輪に向かって、切離用係合装置、回転電機、及び変速機構、の順に設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置を制御対象とする制御装置として、特開2008−207643号公報(特許文献1)に記載された装置が既に知られている。以下、この背景技術の欄の説明では、〔〕内に特許文献1における対応する部材名を引用して説明する。この制御装置では、EVモードからHEVモードへの切り替えに際して、変速機構〔自動変速機AT〕に備えられる複数の変速用係合装置〔締結要素〕の1つがスリップ係合状態とされる。その状態で、切離用係合装置〔始動クラッチCL1〕を係合させると共に、回転電機〔モータジェネレータMG〕の回転速度を上昇させて内燃機関〔エンジンE〕をクランキングする。このような所定の変速用係合装置のスリップにより、その間における不安定なトルクが車輪に伝達されて始動ショックが生じるのを緩和している。
【0003】
特許文献1でも認識されているように、上記のような内燃機関の始動を伴うモード切替に際して、変速機構における目標変速段が変更される場合がある。例えば、車両駆動のために大きな駆動力が必要となった場合等に、内燃機関の始動と共にダウンシフト(変速比が相対的に大きい変速段への変更)が要求される場合がある。このような場合を考慮して、特許文献1の制御装置では、内燃機関始動制御の開始時に形成されていた変速段からその変速段に隣接する変速段へと移行させる際に解放される変速用係合装置を、上記の「所定の変速用係合装置」としてスリップさせる。このように、始動ショック緩和のためのスリップ制御と変速のためのスリップ制御とを共通化させることで、内燃機関始動要求と変速要求とが重なった場合でも各制御を円滑に実行することが可能となっている。
【0004】
ところで、変速機構における入力側回転部材の実際の回転速度は、内燃機関始動制御に伴って上昇する。このときの上昇分は、車速や変速段によらずに同程度であるとみなすことができる。これに対して、変速段の変更に伴う同期回転速度の仮想的な上昇分は、各変速段の変速比にも応じて、車速に比例して定まることとなる。そのため、車速次第では、内燃機関始動制御に伴って上昇する入力側回転部材の回転速度が、変更後の変速段での同期回転速度を超えてしまう(変速進行度が100%に達してしまう)場合がある。その結果、変速制御が直ちに終了してしまうと共に、その後に入力側回転部材の回転速度の引き込みが発生し(本願の図16を参照)、快適な走行性を確保できない可能性がある。なお、入力側回転部材の回転速度の上昇を、スリップさせる変速用係合装置への供給油圧を調整することで抑制することも不可能ではないが(本願の図17を参照)、それに合わせて車輪に伝達されるトルクも急増し、やはり快適な走行性を確保できない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−207643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、内燃機関始動制御と変速制御とが重なった場合に、車速によらずに、快適な走行性を確保しつつ各制御を円滑に実行することができる制御装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、前記内燃機関から前記車輪に向かって、切離用係合装置、回転電機、及び変速機構、の順に設けられ、前記変速機構に備えられる複数の変速用係合装置のそれぞれの係合の状態を制御することにより前記変速機構が複数の変速段を切替可能に構成された車両用駆動装置を制御対象とする制御装置の特徴構成は、前記切離用係合装置を解放状態から直結係合状態へと移行させつつ停止状態にある前記内燃機関を始動させる内燃機関始動制御を実行する始動制御部と、前記内燃機関始動制御に際して、複数の前記変速用係合装置のうちの1つを、少なくとも前記切離用係合装置の直結係合時にスリップ係合状態とする始動スリップ制御を実行する始動スリップ制御部と、前記始動スリップ制御でスリップ係合状態とする前記変速用係合装置を対象係合装置として決定する対象決定部と、を備え、前記対象決定部は、設定された判定速度に基づいて、車速が前記判定速度以上の場合には、前記始動スリップ制御の開始時における基準変速段を形成するために直結係合状態とされていた前記変速用係合装置であって当該基準変速段から予め定められた特定変速段へと移行させる際に解放される通常解放係合装置を前記対象係合装置として決定し、車速が前記判定速度未満の場合には、前記基準変速段を形成するために直結係合状態とされていた前記変速用係合装置であって前記複数の変速段の変速比の順において前記特定変速段を挟んで前記基準変速段とは反対側の特別変速段へと移行させる際に解放される特別係合装置を前記対象係合装置として決定する点にある。
【0008】
なお、「解放状態」は、対象となる係合装置により係合される2つの係合部材間で回転及びトルクが伝達されない状態を意味する。「スリップ係合状態」は、2つの係合部材が差回転速度を有する状態でトルクを伝達可能に係合されている状態を意味する。「直結係合状態」は、2つの係合部材が一体回転する状態で係合されている状態を意味する。
【0009】
この特徴構成によれば、始動スリップ制御でスリップ係合状態とする変速用係合装置(対象係合装置)を、車速と判定速度との関係に応じて適切に決定することができる。つまり、車速が判定速度以上の場合には、内燃機関始動制御に伴って変速が進行したとしても特定変速段への変速の終点までには余裕がある場合が多いと考えられるので、従来と同様に、通常解放係合装置を対象係合装置とする。一方、車速が判定速度未満の場合には、通常解放係合装置ではなく、特別係合装置を対象係合装置とする。この特別係合装置は、変速比の順において特定変速段を挟んで基準変速段とは反対側の特別変速段へと移行させる際に解放される変速用係合装置である。特別係合装置を対象係合装置とすることで、車速が比較的低い場合であっても、内燃機関始動制御に伴う変速の進行後において、特別変速段への変速の終点までにある程度の余裕を生じさせることができる。このように、いずれの場合にも、内燃機関の始動後に変速制御が直ちに終了してしまうことを回避でき、快適な走行性を確保することができる。また、いずれの場合にも、始動ショック緩和のためのスリップ制御と、特定変速段又は特別変速段への変速のためのスリップ制御とを共通化させることで、内燃機関始動制御及び変速制御の双方を円滑かつ迅速に実行することができる。
【0010】
ここで、前記対象決定部は、前記判定速度を、複数の変速段のうちのいずれが前記基準変速段であるかに応じて異なる値に設定すると好適である。
【0011】
内燃機関始動制御に伴う変速の進行度合いは、車速だけでなく、内燃機関始動制御及び始動スリップ制御の開始時における変速段にも依存する。この構成によれば、複数の変速段のうちのいずれの変速段が基準変速段であるかに応じてそれぞれ適切に設定される判定速度に基づいて、そのような判定速度と車速との関係に応じて対象係合装置を適切に決定することができる。
【0012】
また、車速と変速段とに応じて定まる前記変速機構の入力側回転部材の回転速度を同期回転速度とし、前記対象決定部は、前記基準変速段での前記同期回転速度である基準同期回転速度と前記特定変速段での前記同期回転速度である特定同期回転速度との差分と、予め定められた判定差回転速度とに基づいて、前記判定速度を設定すると好適である。
【0013】
この構成によれば、基準同期回転速度と特定同期回転速度との差分が予め定められた判定差回転速度以上となるように、判定速度を設定することができる。これにより、車速が判定速度以上の場合に、その車速での基準同期回転速度と特定同期回転速度との間に判定差回転速度以上の差回転速度を確保できる。また、車速が判定速度未満の場合には、その車速での基準同期回転速度と特定同期回転速度との差回転速度は判定差回転速度未満となり得るが、基準同期回転速度と特別変速段での同期回転速度との間には判定差回転速度以上の差回転速度を確保し易い。よって、内燃機関始動制御に伴って変速機構の入力側回転部材の回転速度が上昇したとしても、所定の変速段(車速に応じて特定変速段又は特別変速段)での同期回転速度に達するまでに、ある程度の余裕を確保することができる。従って、快適な走行性を有効に実現することができる。なお、「変速機構の入力側回転部材」は、変速機構における動力伝達経路に沿った最も内燃機関側の回転部材である。
【0014】
また、前記判定差回転速度が、前記内燃機関始動制御に伴う前記入力側回転部材の回転速度の前記基準同期回転速度からの上昇分と、前記基準変速段から前記特定変速段への移行時の前記変速用係合装置の応答性を考慮して予め定められた余裕代分とに基づいて設定されていると好適である。
【0015】
内燃機関始動制御に伴い、制御装置による積極的要因及び内燃機関の自立運転開始による受動的要因により、変速機構の入力側回転部材の回転速度は基準同期回転速度から上昇する。また一般に、係合装置の制御では、実情を考慮すればある程度の制御遅れが生じることはやむを得ない。そのため、基準変速段から特定変速段への移行時に、解放状態から直結係合状態へと移行される変速用係合装置の制御遅れに応じて、入力側回転部材の回転速度は更に上昇し得る。この点に鑑み、上記の構成によれば、内燃機関始動制御に伴う入力側回転部材の回転速度の上昇分と変速用係合装置の応答性を考慮に入れた余裕代分とに基づいて、判定差回転速度を適切に決定することができる。
【0016】
また、前記余裕代分が、始動開始後における前記内燃機関の回転加速度に応じて設定されていると好適である。
【0017】
内燃機関の回転速度が基準同期回転速度を超えて更に上昇した状態では、当該内燃機関と変速機構の入力側回転部材とが同期回転しているとみなすことができる。また、通常解放係合装置の制御遅れ時間は、ある程度定量的に決定することができる。この点に鑑み、上記の構成によれば、入力側回転部材と同期回転する内燃機関の回転加速度に応じて、制御遅れ時間にも基づいて、変速用係合装置の応答性を考慮に入れた余裕代分を適切に設定することができる。
【0018】
また、前記変速用係合装置は、油圧駆動式の係合装置であり、前記対象決定部は、前記判定速度を、前記始動スリップ制御の開始時の油温に応じて異なる値に設定すると好適である。
【0019】
変速用係合装置が油圧駆動式の係合装置である場合には、その応答性は油温に依存する。そのため、内燃機関始動制御に伴う変速の進行度合いは、車速だけでなく、内燃機関始動制御及び始動スリップ制御の開始時の油温にも依存する。この構成によれば、油温に応じて適切に設定される判定速度に基づいて、そのような判定速度と車速との関係に応じて対象係合装置を適切に決定することができる。
【0020】
また、前記変速機構は、少なくとも第一係合装置と第二係合装置とが直結係合状態とされることで形成される第一変速段と、少なくとも前記第一係合装置と第三係合装置とが直結係合状態とされることで形成され前記第一変速段よりも低速段の第二変速段と、少なくとも前記第二係合装置と前記第三係合装置又は第四係合装置とが直結係合状態とされることで形成され前記第二変速段よりも低速段の第三変速段と、を切替可能であり、前記基準変速段が前記第一変速段であり、前記特定変速段が前記第二変速段であり、前記通常解放係合装置が前記第二係合装置であり、前記特別係合装置が前記第一係合装置であると好適である。
【0021】
この構成によれば、高速段から低速段に向かって第一変速段、第二変速段、及び第三変速段の順に切替可能に構成された変速機構を備えた車両用駆動装置に対して、本発明を好適に適用することができる。
【0022】
また、前記特定変速段は、前記基準変速段に対して低速段側に隣接する隣接変速段であると好適である。
【0023】
基準変速段と隣接変速段との間では変速比の差が小さく、車速次第では快適な走行性を確保できない可能性が相対的に高い。この点に鑑み、上記のように特定変速段が隣接変速段である構成に対して、本発明を特に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】車両用駆動装置の概略構成を示す模式図である。
図2】変速機構の内部構成を示す模式図である。
図3】変速機構の作動表である。
図4】制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図5】判定速度の設定方法を説明するための説明図である。
図6】油温及び目標変速段と判定速度との関係を規定したマップの一例である。
図7】第5速段の形成時の変速機構の状態を示す模式図である。
図8】対象係合装置決定処理に従った各部の動作状態の一例を示すタイムチャートである。
図9】対象係合装置決定処理に従った各部の動作状態の一例を示すタイムチャートである。
図10】第6速段の形成時の変速機構の状態を示す模式図である。
図11】対象係合装置決定処理に従った各部の動作状態の一例を示すタイムチャートである。
図12】対象係合装置決定処理に従った各部の動作状態の一例を示すタイムチャートである。
図13】対象係合装置決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図14】別実施形態における変速機構の作動表である。
図15】別実施形態における変速機構の作動表である。
図16】従来仕様における各部の動作状態を示すタイムチャートである。
図17】従来仕様における各部の動作状態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る制御装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る制御装置3は、駆動装置1を制御対象としている。ここで、駆動装置1は、車輪15の駆動力源として内燃機関11及び回転電機12の双方を備えた車両(ハイブリッド車両)を駆動するための車両用駆動装置(ハイブリッド車両用駆動装置)である。以下、本実施形態に係る制御装置3について、詳細に説明する。
【0026】
なお、以下の説明では、「駆動連結」とは、2つの回転部材が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を意味し、当該2つの回転部材が一体的に回転するように連結された状態、或いは1つ以上の伝動部材(軸、歯車機構、ベルト等)を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。
【0027】
また、「係合圧」は、係合装置において係合される2つの係合部材間を相互に押し付け合う圧力を表す。「解放圧」は、係合装置が定常的に解放状態(解放した状態)となる圧を表す。「解放境界圧」は、係合装置が解放状態とスリップ係合状態(スリップ係合した状態)との境界状態となる圧(解放側スリップ境界圧)を表す。「係合境界圧」は、係合装置がスリップ係合状態と直結係合状態(直結係合した状態)との境界状態となる圧(係合側スリップ境界圧)を表す。「完全係合圧」は、係合装置が定常的に直結係合状態となる圧を表す。
【0028】
1.駆動装置の構成
制御装置3による制御対象となる駆動装置1の構成について説明する。本実施形態に係る駆動装置1は、図1に示すように、内燃機関11と車輪15とを結ぶ動力伝達経路に回転電機12を備えていると共に、内燃機関11と回転電機12との間に切離用係合装置CLdを備え、回転電機12と車輪15との間に変速機構13を備えている。すなわち、駆動装置1は、内燃機関11と車輪15とを結ぶ動力伝達経路に、内燃機関11から車輪15に向かって、切離用係合装置CLd、回転電機12、及び変速機構13、の順に備えている。これらは、駆動装置ケース(図示せず)内に収容されている。
【0029】
内燃機関11は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン等)である。内燃機関11は、駆動装置1の入力部材としての入力軸Iに駆動連結されている。本例では、内燃機関11のクランクシャフト等の内燃機関出力軸が入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。内燃機関11は、切離用係合装置CLdを介して回転電機12に駆動連結されている。
【0030】
切離用係合装置CLdは、内燃機関11と回転電機12とを選択的に駆動連結する係合装置である。切離用係合装置CLdは、解放状態で内燃機関11と回転電機12との間の駆動連結を解除可能である。切離用係合装置CLdは、車輪15及び回転電機12等から内燃機関11を切り離すための内燃機関切離用係合装置として機能する。切離用係合装置CLdは、互いに係合する係合部材間に発生する摩擦力によりトルクの伝達を行うことができる摩擦係合装置(湿式多板クラッチや乾式単板クラッチ等)として構成されている。
【0031】
回転電機12は、ロータとステータとを有して構成され(図示せず)、モータ(電動機)としての機能とジェネレータ(発電機)としての機能との双方を果たすことが可能である。回転電機12のロータは変速入力軸Mと一体回転するように駆動連結されている。回転電機12は、インバータ装置24を介して蓄電装置25(バッテリやキャパシタ等)に電気的に接続されている(図4を参照)。回転電機12は、蓄電装置25から電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関11のトルク等により発電した電力を蓄電装置25に供給して蓄電させる。変速入力軸Mは、変速機構13に駆動連結されており、当該変速機構13における動力伝達経路に沿った最も内燃機関11側の回転部材となっている。本実施形態では、変速入力軸Mが本発明における「入力側回転部材」に相当する。
【0032】
変速機構13は、本実施形態では、変速比(ギヤ比)の異なる複数の変速段を切替可能に構成された自動有段変速機構である。これら複数の変速段を形成するため、変速機構13は、一例として図2に示すように、歯車機構と、この歯車機構の回転要素の係合又は解放を行う複数の変速用係合装置(第一クラッチC1,第一ブレーキB1,・・・)とを備えている。変速用係合装置も、それぞれ摩擦係合装置(湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等)として構成されている。また、変速用係合装置は、それぞれ供給される油圧に応じて動作する油圧サーボ機構を備えた油圧駆動式の係合装置として構成されている。
【0033】
本実施形態では、変速機構13は、複数の変速用係合装置のうちの特定の2つを直結係合状態とすると共にそれ以外を解放状態として、各時点における目標変速段を形成する。本例の変速機構13では、図3の係合表に示すように、第一クラッチC1及び第二ブレーキB2の直結係合状態で第1速段が形成され、第一クラッチC1及び第一ブレーキB1の直結係合状態で第2速段が形成される。その他の変速段に関しても同様である。このようにして、変速機構13は、複数の変速用係合装置(C1,B1,・・・)のそれぞれの係合の状態を制御することにより複数(本例では6つ)の変速段を切替可能である。なお、特定の3つ以上を直結係合状態として目標変速段を形成する構成としても良い。
【0034】
変速機構13は、形成される変速段について設定された変速比に基づいて、変速入力軸Mの回転速度を変速して出力軸Oに伝達する。ここで、変速比は、変速機構13の出力側回転部材としての出力軸Oの回転速度に対する変速入力軸Mの回転速度の比である。本実施形態では、各変速段の変速比は、第1速段から第6速段に向かって段階的に小さくなるように設定されている。また、本実施形態では、相対的に変速比が大きい第1速段側を低速段側とし、相対的に変速比が小さい第6速段側を高速段側とする。
【0035】
駆動装置1の出力部材でもある出力軸Oは、差動歯車装置14を介して左右2つの車輪15に駆動連結されている。出力軸Oに伝達されるトルクは、差動歯車装置14により分配されて2つの車輪15に伝達される。このようにして、駆動装置1は、内燃機関11及び回転電機12の一方又は双方のトルクを車輪15に伝達して車両を走行させることができる。
【0036】
2.制御装置の構成
本実施形態に係る制御装置3の構成について説明する。図4に示すように、本実施形態に係る制御装置3は、複数の機能部を備え、主に回転電機12、切離用係合装置CLd、及び変速用係合装置(C1,B1・・・)を制御する。複数の機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。制御装置3は、内燃機関11を制御する内燃機関制御ユニット21との間でも、情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。制御装置3は、車両の各部に備えられたセンサSe1〜Se6による検出結果の情報を取得可能に構成されている。
【0037】
第一回転センサSe1は、内燃機関11(入力軸I)の回転速度を検出するセンサである。制御装置3は、第一回転センサSe1による検出結果に基づいて内燃機関11の回転加速度を導出することが可能である。第二回転センサSe2は、回転電機12のロータ(変速入力軸M)の回転速度を検出するセンサである。第三回転センサSe3は、出力軸Oの回転速度を検出するセンサである。制御装置3は、第三回転センサSe3による検出結果に基づいて車輪15の回転速度や車速を導出することが可能である。アクセル開度検出センサSe4は、アクセル開度を検出するセンサである。充電状態検出センサSe5は、SOC(state of charge:充電状態)を検出するセンサである。制御装置3は、充電状態検出センサSe5による検出結果に基づいて蓄電装置25の蓄電量を導出することが可能である。油温センサSe6は、各係合装置の油圧サーボ機構に供給される油の温度(油温)を検出するセンサである。
【0038】
内燃機関制御ユニット21は、内燃機関11を制御する。内燃機関制御ユニット21は、内燃機関11の目標トルク及び目標回転速度を決定し、これらの制御目標に応じて内燃機関11の動作を制御する。本実施形態では、内燃機関制御ユニット21は、車両の走行状態に応じて内燃機関11のトルク制御と回転速度制御とを切り替えることが可能である。トルク制御は、内燃機関11に目標トルクを指令し、内燃機関11のトルクをその目標トルクに追従させる制御である。回転速度制御は、内燃機関11に目標回転速度を指令し、内燃機関11の回転速度をその目標回転速度に近づけるようにトルクを決定する制御である。
【0039】
走行モード決定部31は、車両の走行モードを決定する機能部である。走行モード決定部31は、例えばモード選択マップ(図示せず)を参照し、車速、アクセル開度、及び蓄電装置25の蓄電量等に基づいて、駆動装置1で実現すべき走行モードを決定する。本実施形態では、走行モード決定部31が選択可能な走行モードには、電動走行モード(EVモード)とハイブリッド走行モード(HEVモード)とが含まれる。電動走行モードでは、切離用係合装置CLdが解放状態とされ、回転電機12のトルクを車輪15に伝達させて車両を走行させる。ハイブリッド走行モードでは、切離用係合装置CLdが直結係合状態とされ、内燃機関11及び回転電機12の双方のトルクを車輪15に伝達させて車両を走行させる。なお、これら以外の走行モードが選択可能に構成されても良い。
【0040】
目標変速段決定部32は、目標変速段を決定する機能部である。目標変速段決定部32は、例えば変速マップ(図示せず)を参照し、車速及びアクセル開度等に基づいて、変速機構13で形成すべき目標変速段を決定する。本実施形態では、目標変速段決定部32は、第1速段〜第6速段の中から選択される特定の1つの変速段を、目標変速段として決定する。
【0041】
回転電機制御部33は、回転電機12を制御する機能部である。回転電機制御部33は、回転電機12の目標トルク及び目標回転速度を決定し、これらの制御目標に応じて回転電機12の動作を制御する。本実施形態では、回転電機制御部33は、車両の走行状態に応じて回転電機12のトルク制御と回転速度制御とを切り替えることが可能である。トルク制御は、回転電機12に目標トルクを指令し、回転電機12のトルクをその目標トルクに追従させる制御である。回転速度制御は、回転電機12に目標回転速度を指令し、回転電機12の回転速度をその目標回転速度に近づけるようにトルクを決定する制御である。
【0042】
油圧制御部34は、各係合装置(CLd,C1,B1,・・・)への油圧の供給を制御する機能部である。油圧制御部34は、決定された走行モード及び目標変速段等に応じて各係合装置に対する油圧指令を出力し、油圧制御装置28を介して各係合装置に供給される油圧を制御する。油圧制御部34は、油圧指令に応じて比例ソレノイド等で各係合装置への供給油圧を連続的に制御可能である。これにより、各係合装置の係合圧の増減をそれぞれ連続的に制御して、各係合装置の係合の状態を制御する。例えば、油圧制御部34は、対象となる係合装置への供給油圧を解放境界圧未満とすることにより、当該係合装置を解放状態とする。また、油圧制御部34は、対象となる係合装置への供給油圧を係合境界圧以上とすることにより、当該係合装置を直結係合状態とする。また、油圧制御部34は、対象となる係合装置への供給油圧を解放境界圧以上係合境界圧未満のスリップ係合圧とすることにより、当該係合装置をスリップ係合状態とする。なお、係合装置のスリップ係合状態では、2つの係合部材が相対回転する状態で、回転速度が高い方の係合部材から低い方の係合部材に向かってトルクが伝達される。
【0043】
始動制御部41は、内燃機関始動制御を実行する機能部である。始動制御部41は、回転電機制御部33及び油圧制御部34を協調的に制御することで、内燃機関始動制御を実行する。始動制御部41は、例えば電動走行モードでの走行中に内燃機関始動条件が成立した場合に内燃機関始動制御を開始する。内燃機関始動条件は、停止状態にある内燃機関11を始動させるための条件であり、車両が内燃機関11のトルクを必要とする状況となった場合に成立する。例えば電動走行モードでの走行中に、回転電機12のトルクだけでは車両を駆動するために必要なトルクが得られない状態となった場合等に、内燃機関始動条件が成立する。
【0044】
内燃機関始動制御において、始動制御部41は、切離用係合装置CLdへの供給油圧を制御して、図8等にも示すように、当該切離用係合装置CLdを解放状態からスリップ係合状態を経て最終的には直結係合状態とする。始動制御部41は、これと並行して回転電機12の回転速度制御を実行し、スリップ係合状態の切離用係合装置CLdを介して伝達される回転電機12のトルクにより、停止状態にある内燃機関11を始動させる。このように、始動制御部41は、内燃機関始動制御を実行することにより、切離用係合装置CLdを解放状態から直結係合状態へと移行させつつ停止状態にある内燃機関11を始動させる。
【0045】
始動スリップ制御部42は、内燃機関始動制御に際して、始動スリップ制御を実行する機能部である。始動スリップ制御部42は、油圧制御部34を制御することで始動スリップ制御を実行する。始動スリップ制御部42は、複数の変速用係合装置のうちの1つ(後述する対象係合装置CLo)への供給油圧を制御して、当該対象係合装置CLoを直結係合状態からスリップ係合状態へと移行させる。始動スリップ制御部42は、切離用係合装置CLdがスリップしている状態の所定時期に、対象係合装置CLoをスリップ係合状態へと移行させる。すなわち、始動スリップ制御部42は、対象係合装置CLoを、少なくとも切離用係合装置CLdの直結係合時にスリップ係合状態とする。このような対象係合装置CLoのスリップにより、内燃機関始動制御中における回転電機12の回転速度制御を適切に実行することができる。また、内燃機関11の始動に伴う不安定なトルクが車輪15に伝達されて始動ショックが生じるのを緩和することができる。
【0046】
このような構成において、本実施形態に係る制御装置3は、始動スリップ制御でスリップ係合状態とする対象係合装置CLoを、駆動装置1及び制御装置3が搭載された車両の走行速度である車速と、設定された判定速度Vjとに基づいて決定する点に特徴を有する。以下、2通りの場面を想定して、この点について詳細に説明する。
【0047】
<第1の想定例>
本実施形態では、まず、変速機構13において第5速段が形成された状態で車両が電動走行モードで走行している場面を想定する。本実施形態では、図3及び図7に示すように、第二クラッチC2及び第三クラッチC3の直結係合状態、並びに他の変速用係合装置の解放状態で第5速段が形成される。この状態で、内燃機関始動要求と変速要求(ここでは、変速比が相対的に大きい変速段への移行要求であるダウンシフト要求)とをほぼ同時期に受ける場面を想定する。
【0048】
本想定例では、内燃機関始動制御及びそれに伴う始動スリップ制御の開始時に形成されていた第5速段が、本発明における「基準変速段」及び「第一変速段」に相当する。また、第5速段よりも本想定例では1段分だけ低速段の第4速段が、本発明における「特定変速段」に相当し、更に「隣接変速段」及び「第二変速段」に相当する。また、第4速段よりも本想定例では1段分だけ低速段の第3速段が、本発明における「第三変速段」に相当する。また、第4速段は第一クラッチC1及び第二クラッチC2の直結係合状態で形成され、第3速段は第一クラッチC1及び第三クラッチC3の直結係合状態で形成される。本想定例では、第二クラッチC2が本発明における「第一係合装置CL1」に相当し、第三クラッチC3が本発明における「第二係合装置CL2」に相当し、第一クラッチC1が本発明における「第三係合装置CL3」に相当する。
【0049】
通常の変速制御を考慮した場合、基準変速段から隣接変速段(特定変速段の一例;以下同様)への変速段の移行時には、両方の変速段を形成するために共通となる変速用係合装置を直結係合状態としたままで、それ以外の(非共通の)変速用係合装置を解放させる。この解放される変速用係合装置を、通常解放係合装置CLnと定義する。また、基準変速段を形成するために直結係合状態とされていた変速用係合装置であって、各変速段の変速比の順(変速段の並び順)において隣接変速段を挟んで基準変速段とは反対側の変速段である特別変速段へと移行させる際に解放される変速用係合装置を、特別係合装置CLsと定義する。なお、特別変速段は、各変速段の変速比について注目した場合に、基準変速段からの変速比の変化方向が隣接変速段と同じ方向であって、かつ、基準変速段からの変速比の差が隣接変速段よりも大きい変速段でもある。また、「変速比の順」は、大きい側から小さい側に向かう順、又は小さい側から大きい側に向かう順のいずれかである。また、特別変速段は、基準変速段における通常解放係合装置CLnとしての第三クラッチC3を基準変速段との間で共通化する変速段でもある。本想定例では、第二係合装置CL2としての第三クラッチC3が通常解放係合装置CLnとなり、第一係合装置CL1としての第二クラッチC2が特別係合装置CLsとなる。
【0050】
同期回転速度算出部43は、車速と変速段とに応じて定まる変速入力軸Mの回転速度である同期回転速度Nsを算出する機能部である。車速の情報は、第三回転センサSe3の検出結果に基づいて(例えば比例演算により)導出することができる。同期回転速度算出部43は、車速とその時点で形成されている変速段について予め規定された変速比との積算値に比例する同期回転速度Nsを算出する。なお、車速と車輪15の回転速度や出力軸Oの回転速度とは比例関係にあるので、これらのうちのいずれかと各変速段の変速比とに基づいて同期回転速度Nsを算出する構成としても実質的に同じである。
【0051】
同期回転速度算出部43は、変速段毎に、それぞれの変速段での同期回転速度Nsを算出する。ここでは、第n速段での同期回転速度Nsを第n同期回転速度Nsnと表す。また、基準変速段での同期回転速度Nsを基準同期回転速度Nsaと定義し、隣接変速段(特定変速段)での同期回転速度Nsを隣接同期回転速度(特定同期回転速度の一例;以下同様)Nsbと定義し、特別変速段での同期回転速度Nsを特別同期回転速度Nscと定義する。本想定例では、第五同期回転速度Ns5が基準同期回転速度Nsaとなり、第四同期回転速度Ns4が隣接同期回転速度Nsbとなり、第三同期回転速度Ns3が特別同期回転速度Nscとなる(図5図8図9も参照)。
【0052】
対象決定部44は、始動スリップ制御でスリップ係合状態とする変速用係合装置を対象係合装置CLoとして決定する機能部である。対象決定部44は、車速と設定された判定速度Vj(図8等を参照)とに基づいて対象係合装置CLoを決定する。上述したように、車速の情報は、第三回転センサSe3の検出結果に基づいて(例えば比例演算により)導出することができる。判定速度Vjは、対象係合装置CLoの選択のための車速についての判定しきい値であり、判定速度設定部45により設定される。なお、図4には、対象決定部44に判定速度設定部45が含まれる形態を例示している。
【0053】
判定速度設定部45(対象決定部44)は、基準同期回転速度Nsaと隣接同期回転速度Nsbとの差分ΔNsと、予め定められた判定差回転速度ΔNjとに基づいて、判定速度Vjを設定する。ここで、判定速度Vjの設定方法について、図5を参照して説明する。図5には、内燃機関始動制御の実行に伴う、内燃機関11及び回転電機12の回転速度の典型的な推移形態を模式的に示している。この図に示すように、判定差回転速度ΔNjは、内燃機関始動制御に伴う変速入力軸Mの回転速度の基準同期回転速度Nsaからの上昇分Aと、基準変速段から隣接変速段への移行時の変速用係合装置の応答性を考慮して予め定められた余裕代分Bとに基づいて設定されている。
【0054】
内燃機関始動制御に伴う変速入力軸Mの回転速度の基準同期回転速度Nsaからの上昇分Aには、制御装置3の制御による積極的要因に基づく第一上昇分Aαと、内燃機関11の自立運転開始による受動的要因に基づく第二上昇分Aβとが含まれる。内燃機関始動制御及び始動スリップ制御の実行中、通常解放係合装置CLnを適切にスリップ係合状態とすると共に回転電機12のトルクにより内燃機関11の回転速度を上昇させるため、基準同期回転速度Nsaよりも所定速度分だけ高い回転速度を目標回転速度として、回転電機12の回転速度制御が実行される。この目標回転速度と基準同期回転速度Nsaとの差分が、上記の積極的要因に基づく第一上昇分Aαである。また、内燃機関11の自立運転が開始されて初爆トルク(内燃機関11の何れかの気筒で混合気が最初に爆発する際に発生するトルク)が発生すると、内燃機関11と同期回転する回転電機12及び変速入力軸Mの回転速度が一時的に急上昇する。このときの上昇分が、上記の受動的要因に基づく第二上昇分Aβである。
【0055】
また一般に、油圧駆動式の係合装置の制御では、実情を考慮すれば、油圧指令の出力に対して実油圧の追従及び係合圧の追従が遅れる(ある程度の制御遅れが生じる)ことはやむを得ない。そのため、基準変速段から隣接変速段への移行時には、直結係合状態から解放状態へと移行される通常解放係合装置CLn(第二係合装置CL2である第三クラッチC3)の制御遅れに応じて、変速入力軸Mの回転速度は更に上昇し得る。このときの制御遅れ時間は、ある程度定量的に決定することができるので、当該制御遅れ時間と始動開始後における内燃機関11の回転加速度とに基づいて、これらの積算値として、変速入力軸Mの回転速度の更なる上昇分を推定することができる。このようにして算出される推定上昇分が、変速用係合装置(ここでは、通常解放係合装置CLn)の応答性を考慮して予め定められた余裕代分Bである。なお、基準変速段から隣接変速段への移行時に解放状態から直結係合状態へと移行される変速用係合装置(第三係合装置CL3である第一クラッチC1)の応答性も考慮して、余裕代分Bが定められても良い。
【0056】
図5に示すように、本実施形態では、内燃機関始動制御に伴う変速入力軸Mの回転速度の上昇分A(第一上昇分Aαと第二上昇分Aβとの和)と、変速用係合装置の応答性を考慮した余裕代分Bとの和に一致するように、判定差回転速度ΔNjが設定されている。そして、基準同期回転速度Nsaと隣接同期回転速度Nsbとの差分ΔNsが、上記のように設定された判定差回転速度ΔNjに一致するように、判定速度Vj(図8等を参照)が設定される。すなわち、基準同期回転速度Nsaと隣接同期回転速度Nsbとの差分ΔNsが判定差回転速度ΔNjに一致するような特定の車速が算出され、その特定の車速が判定速度Vjとして設定される。
【0057】
なお、基準同期回転速度Nsaや隣接同期回転速度Nsbは、変速機構13で形成された変速段の変速比に応じて異なるものとなり、それに応じて両者間の差分ΔNsも異なり得る。また、油の流動性(粘性)は油温に依存するため、変速用係合装置の応答性も油温に応じて異なり得る。これらの点を考慮して、判定速度設定部45(対象決定部44)は、始動スリップ制御の開始時の目標変速段(複数の変速段のうちのいずれの変速段が基準変速段であるか)、及び、始動スリップ制御の開始時の油温の双方に応じて、判定速度Vjを異なる値に設定する。本実施形態では、油温及び目標変速段と判定速度Vjとの関係を規定した判定速度規定マップ(図6を参照)が整備されている。
【0058】
図6に示すように、判定速度規定マップによれば、目標変速段が相対的に高速段側となるに従って判定速度Vjが段階的に高くなるように、目標変速段と判定速度Vjとの関係が規定されている。また、特定の目標変速段について注目した場合には、油温が高くなるに従って判定速度Vjが次第に低くなるように、油温と判定速度Vjとの関係が規定されている。このような判定速度規定マップが、メモリ等の記憶装置に記録されて制御装置3に備えられている。判定速度設定部45(対象決定部44)は、判定速度規定マップと、内燃機関始動制御及びそれに伴う始動スリップ制御の開始時の油温及び目標変速段(基準変速段)とに基づいて、判定速度Vjを設定する。
【0059】
対象決定部44は、車速が判定速度Vj以上の場合には、隣接変速段への移行時に解放される通常解放係合装置CLn(本想定例では、第二係合装置CL2としての第三クラッチC3)を、対象係合装置CLoとして決定する。これにより、始動スリップ制御部42は、始動スリップ制御において、特別係合装置CLs(本想定例では、第一係合装置CL1としての第二クラッチC2)を直結係合状態に維持させたままで、通常解放係合装置CLnをスリップ係合状態に移行させる。
【0060】
車速が判定速度Vj以上の場合には、図8にも示すように、その車速での基準同期回転速度Nsaと隣接同期回転速度Nsbとの差分ΔNsは、判定差回転速度ΔNj以上となる。そのため、内燃機関始動制御に伴って変速が進行し、変速入力軸Mの回転速度がある程度上昇したとしても、隣接同期回転速度Nsbに達するまでには上記で説明した余裕代分B以上の差回転速度を確保することができる。よって、内燃機関始動制御と基準変速段から隣接変速段への変速制御とが重なった場合に、解放状態へと移行される通常解放係合装置CLn(第二係合装置CL2である第三クラッチC3)等の制御遅れを考慮しても、基準変速段から隣接変速段への変速制御を円滑に実行することができる。
【0061】
車速が判定速度Vj未満の場合には、図9にも示すように、その車速での基準同期回転速度Nsaと隣接同期回転速度Nsbとの差分ΔNsは、判定差回転速度ΔNj未満となる。そのため、仮に基準変速段から隣接変速段への変速制御を行うと仮定すれば、通常解放係合装置CLnの制御遅れも考慮した上昇後の変速入力軸Mの回転速度は、隣接同期回転速度Nsbを超えてしまう。そこで、対象決定部44は、車速が判定速度Vj未満の場合には、通常解放係合装置CLnではなく、それとは異なる特別係合装置CLsを対象係合装置CLoとして決定する。すなわち、対象決定部44は、特別変速段への移行時に解放される特別係合装置CLs(本想定例では、第一係合装置CL1としての第二クラッチC2)を対象係合装置CLoとして決定する。これにより、始動スリップ制御部42は、始動スリップ制御において、通常解放係合装置CLnを直結係合状態に維持させたままで、特別係合装置CLsをスリップ係合状態に移行させる。
【0062】
ここで、基準同期回転速度Nsaと特別同期回転速度Nscとの差分は、判定差回転速度ΔNj以上となり易い。そのため、内燃機関始動制御に伴って変速が進行し、変速入力軸Mの回転速度がある程度上昇したとしても、特別同期回転速度Nscに達するまでには上記で説明した余裕代分B以上の差回転速度を確保することができる。よって、内燃機関始動制御と変速制御とが重なった場合に、解放状態へと移行される特別係合装置CLs(第一係合装置CL1である第二クラッチC2)等の制御遅れを考慮しても、基準変速段から特別変速段への変速制御を円滑に実行することができる。
【0063】
このように、対象決定部44は、通常解放係合装置CLn及び特別係合装置CLsの中から、車速と判定速度Vjとの大小関係に応じて対象係合装置CLoを適切に決定する。よって、車速によらずに、変速制御を円滑に実行することができ、快適な走行性を確保することができる。また、いずれの場合にも、始動ショック緩和のためのスリップ制御(始動スリップ制御)と、変速(隣接変速段又は特別変速段への移行)のためのスリップ制御とを共通化させることで、内燃機関始動制御及び変速制御の双方を円滑かつ迅速に実行することができる。
【0064】
なお、特別係合装置CLsが対象係合装置CLoとされた場合には、変更後の目標変速段が隣接変速段であったとしても、変速制御により強制的に特別変速段へと移行されることになる。このような場合には、内燃機関始動制御の終了後に、特別変速段から隣接変速段への変速制御を実行すれば良い。例えば本想定例のように、特別変速段と隣接変速段とで第三係合装置CL3としての第一クラッチC1が共通化されている構成では、通常解放係合装置CLn(第二係合装置CL2)としての第三クラッチC3を解放させると共に、特別係合装置CLs(第一係合装置CL1)としての第二クラッチC2を係合させれば良い(図示は省略)。或いは、車速が判定速度Vj未満の場合には、変更後の目標変速段が特別変速段である場合にのみ変速制御を継続し、それ以外の場合には変速制御を禁止する構成としても良い。この場合、対象係合装置CLoとしての特別係合装置CLsは、内燃機関始動制御の終了に伴って再度直結係合状態に戻されると好適である。
【0065】
<第2の想定例>
次に、変速機構13において第6速段が形成された状態で車両が電動走行モードで走行している場面を想定する。本実施形態では、図3及び図10に示すように、第二クラッチC2及び第一ブレーキB1の直結係合状態、並びに他の変速用係合装置の解放状態で第6速段が形成される。この状態で、内燃機関始動要求と変速要求(ここではダウンシフト要求)とをほぼ同時期に受ける場面を想定する。
【0066】
本想定例では、内燃機関始動制御及びそれに伴う始動スリップ制御の開始時に形成されていた第6速段が、本発明における「基準変速段」及び「第一変速段」に相当する。また、第6速段よりも本想定例では1段分だけ低速段の第5速段が、本発明における「特定変速段」に相当し、更に「隣接変速段」及び「第二変速段」に相当する。また、第5速段よりも複数段分(本想定例では3段分)だけ低速段の第2速段が、本発明における「第三変速段」に相当する。そして、第六同期回転速度Ns6が基準同期回転速度Nsaとなり、第五同期回転速度Ns5が隣接同期回転速度(特定同期回転速度の一例)Nsbとなり、第二同期回転速度Ns2が特別同期回転速度Nscとなる(図11図12も参照)。
【0067】
また、第5速段は第二クラッチC2及び第三クラッチC3の直結係合状態で形成され、第2速段は第一クラッチC1及び第一ブレーキB1の直結係合状態で形成される。本想定例では、第二クラッチC2が本発明における「第一係合装置CL1」に相当し、第一ブレーキB1が本発明における「第二係合装置CL2」に相当し、第三クラッチC3が本発明における「第三係合装置CL3」に相当し、第一クラッチC1が本発明における「第四係合装置CL4」に相当する。更に、本想定例では、第二係合装置CL2としての第一ブレーキB1が通常解放係合装置CLnとなり、第一係合装置CL1としての第二クラッチC2が特別係合装置CLsとなる。
【0068】
本想定例では、基準変速段が第6速段であり、第1の想定例における基準変速段(第5速段)よりも高速段である。そのため、判定速度設定部45(対象決定部44)は、図6の判定速度規定マップに従い、第1の想定例における判定速度Vjよりも高い判定速度Vjを設定する(図11等を参照)。そして、対象決定部44は、車速と判定速度Vjとに基づいて対象係合装置CLoを決定する。
【0069】
対象決定部44は、車速が判定速度Vj以上の場合には、通常解放係合装置CLn(本想定例では、第二係合装置CL2としての第一ブレーキB1)を、対象係合装置CLoとして決定する。これにより、始動スリップ制御部42は、始動スリップ制御において、特別係合装置CLs(本想定例では、第一係合装置CL1としての第二クラッチC2)を直結係合状態に維持させたままで、通常解放係合装置CLnをスリップ係合状態に移行させる。一方、車速が判定速度Vj未満の場合には、対象決定部44は、通常解放係合装置CLnではなく、特別係合装置CLsを対象係合装置CLoとして決定する。これにより、始動スリップ制御部42は、始動スリップ制御において、通常解放係合装置CLnを直結係合状態に維持させたままで、特別係合装置CLsをスリップ係合状態に移行させる。
【0070】
このように、本想定例でも、対象決定部44は、通常解放係合装置CLn及び特別係合装置CLsの中から、車速と判定速度Vjとの大小関係に応じて対象係合装置CLoを適切に決定することができる。よって、内燃機関始動制御と変速制御とが重なった場合に、車速によらずに、快適な走行性を確保しつつ各制御を円滑かつ迅速に実行することができる。
【0071】
なお、変更後の目標変速段が特別変速段とは異なる場合の処理に関しては、第1の想定例と同様に考えることができる。
【0072】
3.対象係合装置決定処理の処理手順
本実施形態に係る対象係合装置決定処理の処理手順について、図13のフローチャートを参照して説明する。
【0073】
対象係合装置決定処理では、目標変速段決定部32により決定された目標変速段の情報が、判定速度設定部45により取得される(ステップ#1)。また、油温センサSe6により検出された油温の情報が、判定速度設定部45により取得される(#2)。これらの情報と判定速度規定マップとに基づいて、判定速度設定部45により判定速度Vjが設定される(#3)。また、第三回転センサSe3による検出結果に基づいて導出される車速の情報が、対象決定部44により取得される(#4)。ステップ#1〜#4の各処理が、内燃機関始動要求があるまで(#5:No)繰り返し実行される。これにより、目標変速段、油温、及び車速の情報が逐次取得されると共に、判定速度Vjが逐次更新される。
【0074】
この状態で、内燃機関始動要求を受けると(#5:Yes)、対象決定部44により、その時点での目標変速段(基準変速段)が対象変速段であるか否かが判定される(#6)。ここで、本実施形態では、高速段側の連続する1つ以上の変速段(高速側変速段)が、対象変速段とされている。より具体的には、低速段側の連続する2つ以上の変速段(本例では第1速段〜第4速段)をそれぞれ形成するために共通して直結係合状態とされる変速用係合装置(本例では第一クラッチC1)の解放状態で形成される変速段が、対象変速段とされている。本例では、第5速段又は第6速段が対象変速段となる。従って本例では、ステップ#6では、対象決定部44により、基準変速段が第5速段又は第6速段であるか否かが判定される。
【0075】
基準変速段が対象変速段ではない場合には(#6:No)、対象決定部44により、車速によらずに一律に、その基準変速段での通常解放係合装置CLnが対象係合装置CLoとして決定される(#8B)。なお、図3には、各変速段での通常解放係合装置CLnを「●(黒丸)」で示している。一方、基準変速段が対象変速段である場合には(#6:Yes)、対象決定部44により、その時点での車速が判定速度Vj未満であるか否かが判定される(#7)。車速が判定速度Vj以上である場合には(#7:No)、対象決定部44により、その基準変速段での通常解放係合装置CLnが対象係合装置CLoとして決定される(#8B)。車速が判定速度Vj未満である場合には(#7:Yes)、対象決定部44により、その基準変速段での特別係合装置CLsが対象係合装置CLoとして決定される(#8A)。なお、図3には、各対象変速段での特別係合装置CLsを「◎(二重丸)」で示している。以上で、対象係合装置決定処理を終了する。
【0076】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係る制御装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0077】
(1)上記の実施形態では、制御装置3が、6つの変速段を切替可能な変速機構13を備えた駆動装置1を制御対象とする例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、4つの変速段を切替可能な変速機構13を備えた駆動装置1も、制御装置3による制御対象となり得る。このような変速機構13としては公知の各種構成を利用することができるので詳細な説明は省略し、その係合表のみを一例として図14に示す。なお、図14には、図3と同様、各変速段での通常解放係合装置CLnを「●(黒丸)」で示し、各対象変速段での特別係合装置CLsを「◎(二重丸)」で示している。この場合であっても、上記の実施形態と同様の考え方に基づいて、対象係合装置CLoを適切に決定することができる。特に、本例における対象変速段に含まれる第4速段での走行中、内燃機関始動制御と変速制御とが重なった場合に、車速によらずに、快適な走行性を確保しつつ各制御を円滑かつ迅速に実行することができる。
【0078】
(2)また、8つの変速段を切替可能な変速機構13を備えた駆動装置1も、制御装置3による制御対象となり得る。このような変速機構13としては公知の各種構成を利用することができるので詳細な説明は省略し、その係合表のみを一例として図15に示す。図15の表記は、図3図14と同様である。この場合であっても、上記の実施形態と同様の考え方に基づいて、対象係合装置CLoを適切に決定することができる。特に、本例における対象変速段に含まれる第6速段〜第8速段での走行中、内燃機関始動制御と変速制御とが重なった場合に、車速によらずに、快適な走行性を確保しつつ各制御を円滑かつ迅速に実行することができる。なお、切替可能な変速段の数は4つ,6つ,8つに限られず、3つ以上の任意の数であって良い。
【0079】
(3)上記の実施形態では、判定速度設定部45が、始動スリップ制御の開始時の基準変速段及び油温の双方に応じて判定速度Vjを設定する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば変速用係合装置が電磁式の係合装置として構成される場合等には、変速用係合装置の応答性はほぼ一定となり得る。よって、そのような場合には、判定速度設定部45が基準変速段のみに基づいて判定速度Vjを設定する構成としても好適である。また、例えば図14を参照して説明した4つの変速段を切替可能な変速機構13を備える駆動装置1を制御対象とする場合等には、対象変速段となり得る基準変速段が1つに限られる。よって、そのような場合には、判定速度設定部45が油温のみに基づいて判定速度Vjを設定する構成としても好適である。或いは、判定速度設定部45が、更に蓄電装置25の蓄電量等にも基づいて判定速度Vjを設定する構成としても良い。
【0080】
(4)上記の実施形態では、判定速度設定部45が、内燃機関始動制御に伴う変速入力軸Mの回転速度の上昇分Aと、所定の余裕代分Bとに基づいて判定差回転速度ΔNjを設定する構成を例として説明した。また、判定速度設定部45が、その余裕代分Bを、始動開始後における内燃機関11の回転加速度に応じて設定する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、判定速度設定部45が、それらの余裕代分Bや判定差回転速度ΔNjを一律に設定する構成としても良い。
【0081】
(5)上記の実施形態では、制御装置3による制御対象となる駆動装置1において、回転電機12のロータが変速入力軸Mと常時一体回転する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、駆動装置1が、回転電機12と変速機構13との間に締結用係合装置を有する流体継手(例えばトルクコンバータ)や専用の伝達用係合装置等を備え、回転電機12のロータがこれらを介して変速入力軸Mに駆動連結された構成としても良い。このような構成の駆動装置1も、制御装置3による制御対象となり得る。
【0082】
(6)上記の実施形態では、基準変速段に対して低速段側に隣接する(基準変速段よりも1段分だけ低速段の)隣接変速段が特定変速段であり、基準変速段から隣接変速段へと移行させる際に解放される変速用係合装置を通常解放係合装置CLnとする例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、基準変速段と特定変速段とは必ずしも隣接していなくても良く、変速比の順においてこれらの間に他の変速段が介在されていても良い。このような構成の変速機構13を備えた駆動装置1も、制御装置3による制御対象となり得る。
【0083】
(7)上記の実施形態では、制御装置3が各機能部31〜45を備えている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。上記で説明した機能部の割り当ては単なる一例であり、複数の機能部を組み合わせたり、1つの機能部を更に区分けしたりすることも可能である。
【0084】
(8)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置を制御対象とする制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 :駆動装置(車両用駆動装置)
3 :制御装置
11 :内燃機関
12 :回転電機
13 :変速機構
15 :車輪
41 :始動制御部
42 :始動スリップ制御部
44 :対象決定部
M :変速入力軸(入力側回転部材)
C1 :第一クラッチ(変速用係合装置)
C2 :第二クラッチ(変速用係合装置)
C3 :第三クラッチ(変速用係合装置)
B1 :第一ブレーキ(変速用係合装置)
B2 :第二ブレーキ(変速用係合装置)
CL1 :第一係合装置
CL2 :第二係合装置
CL3 :第三係合装置
CL4 :第四係合装置
CLn :通常解放係合装置
CLs :特別係合装置
CLo :対象係合装置
Vj :判定速度
ΔNj :判定差回転速度
Nsa :基準同期回転速度
Nsb :隣接同期回転速度(特定同期回転速度)
Nsc :特別同期回転速度
ΔNs :基準同期回転速度と隣接同期回転速度(特定同期回転速度)との差分
A :内燃機関始動制御に伴う変速入力軸の回転速度の上昇分
B :余裕代分
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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