(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放射能汚染された施設の建屋を覆うようにこの外周に上屋を新設するとともに、この上屋の中に揚重手段を設置し、この上屋の中で前記建屋躯体の解体、除染、細断、容器収納の一連の作業を行う放射能汚染施設の解体方法であって、
遠隔操作により前記建屋躯体をブロック状に切り出して、前記建屋の上方から下方に向けて順次解体し、切り出したブロック状の前記建屋躯体を前記揚重手段で揚重して前記上屋内に設けた汚染度が前記建屋よりも低い作業エリアに運搬して、この作業エリアで除染するようにし、
前記建屋躯体をなすスラブ上に設けた穿孔手段を遠隔操作して前記スラブに貫通穴を設け、この貫通穴の上方から自動伸長手段および上部拡幅手段を備える柱状の支保工を挿入して前記スラブ下面と下階のスラブ上面との間に配置し、前記支保工を介して前記スラブの荷重を一時的に下階のスラブに支持させた後、前記スラブを切り出すことを特徴とする放射能汚染施設の解体方法。
【背景技術】
【0002】
従来の原子力発電施設の廃止措置計画に伴う解体方法では、発電所建屋を最終バウンダリーとするために、建屋内部に設置された機器・配管類の撤去が優先される。つまり、
図18のフロー図に示すように、機器・配管類の撤去が終了した後に放射能汚染したコンクリート表面をはつり工法により除染し、サーベイ作業を経て管理区域を解除する。そして最終的に建屋は、一般の建築物と同様に上方から下方に順次解体されることになる。
【0003】
なお、原子力発電施設などの解体方法に関する従来の技術としては、例えば、特許文献1〜3が知られている。ここで、特許文献1は原子力設備の解体に関するものであり、原子炉格納容器の内壁面の放射性物質を除去した後、所定の大きさに解体して容器に収納してトンネルを通じてタービン建屋に運搬し、このタービン建屋の中で容器内の解体物を細断し除染作業を行うものである。
【0004】
また、特許文献2は原子炉建屋の解体に関するものであり、建屋の一部を下層階において解体していく工程と、その上方の建屋をリフトダウンさせる工程とを繰り返すことによって建屋を下方から上方に順次解体するものである。
【0005】
また、特許文献3はボイラー建屋の解体に関するものであり、建屋の一部の荷重を揚重手段で吊り支持して建屋の一部と残りの部分とを切り離した後、建屋の一部を下部から解体する工程と、揚重手段で建屋の一部を降下させる工程とを繰り返すことによって建屋の一部を下方から上方に向けて順次先行解体するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る放射能汚染施設の解体方法の対象となる施設の正面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る放射能汚染施設の解体方法の対象となる施設の平面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る放射能汚染施設の解体方法による建屋解体手順を示す概略図である。
【
図4】
図4は、床と機器・配管類とを一体的に切り出す手順1を示す図である。
【
図5】
図5は、床と機器・配管類とを一体的に切り出す手順2を示す図である。
【
図6】
図6は、床と機器・配管類とを一体的に切り出す手順3を示す図である。
【
図7】
図7は、床と機器・配管類とを一体的に切り出す手順4を示す図である。
【
図8】
図8は、躯体切り出し後の処理手順を例示するフロー図である。
【
図9】
図9は、作業エリアの配置レイアウトを示す平面図である。
【
図10】
図10は、建物躯体を単独で切り出す手順1を示す図である。
【
図11】
図11は、建物躯体を単独で切り出す手順2を示す図である。
【
図12】
図12は、建物躯体を単独で切り出す手順3を示す図である。
【
図13】
図13は、建物躯体を単独で切り出す手順4を示す図である。
【
図14】
図14は、躯体切り出し後の処理手順を例示するフロー図である。
【
図18】
図18は、従来の原子力発電施設の廃止措置計画に伴う解体手順を示す概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る放射能汚染施設の解体方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、建屋内外全体の機器・配管類および表面が放射能漏れ事故などによりFP(核分裂生成物)およびU(ウラン)で汚染されている原子力発電施設を例にとり説明するが、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1および
図2に示すように、本発明に係る放射能汚染施設の解体方法は、放射能汚染された施設10の建屋12を覆うようにこの外周に上屋14を新設するとともに、この上屋14の中に天井クレーン16(揚重手段)、汚染度が建屋12よりも低い作業エリア18を設置し、この上屋14の中で建屋躯体の解体、除染、細断、容器収納の一連の作業を行うことを前提とするものである。なお、
図1において点線部2は爆発事故等により消失した建屋の天井部分である。
【0017】
上屋14は、複数の鉄骨柱20と、これを支えるSC壁(鋼板コンクリート構造壁)22と、トラス構造の天井屋根15とを有する略直方体状の構造物であり、鉄骨柱20間をシート状物で被覆することにより建屋12を外部から遮蔽する。
【0018】
SC壁22は、2枚の鋼板間にコンクリートを充填した壁構造であり、その基礎は地表面GL以下に根入れされる。SC壁22の基礎下には地盤改良体26を構築し、上屋14の外周地下には止水壁24を構築する。
【0019】
また、天井屋根15下の天井クレーン16は、鉄骨柱20に設けたレール21に沿って上屋14内を走行可能に構成する。
【0020】
建屋12の解体方法としては、
図3(1)〜(5)に示すように、上屋14の中で天井クレーン16を用いて建屋躯体の上方から下方に向けて順次解体撤去していく。
【0021】
より具体的には、建屋躯体をなす床、梁、壁等のコンクリートは、後述する手順により遠隔操作でブロック状に切り出される。そして、切り出したブロック状の建屋躯体を天井クレーン16で揚重して上屋14内の作業エリア18に運搬し、この作業エリア18で除染作業等の後工程の作業を行うことになる。
【0022】
(建屋躯体の切り出し手順)
次に、建屋躯体をなす床等のコンクリートの切り出し手順について、床と機器・配管類とを一体的に切り出す場合と、機器・配管類が既に撤去されている建屋躯体を単独で切り出す場合とに分けて説明する。
【0023】
[床と機器・配管類とを一体的に切り出す場合]
まず、機器・配管類が床に付いた状態で、床と機器・配管類とを一体的に切り出す場合について
図4〜
図7を参照しながら説明する。なお、
図4〜
図7の各図において(1)は平面断面図、(2)は正面断面図である。
【0024】
図4に示すように、梁38を有する床36(スラブ)の下面側には配管類30やレール34が取り付けてある。下階の床37にはタンク28(機器類)が据え付けられ、壁40の側面には配管類32が取り付けてある。まず、配管類30、レール34を切断するための複数の開口42を床36に開ける。この開口42は、床36上に配置した図示しないコアボーリング装置、ワイヤーソー装置またはダイヤモンドブレード装置などを遠隔操作することで穿孔することができる。
【0025】
次に、
図5に示すように、開口42を通じて床36の下側にある配管類30、レール34を切断面30a、34aにて切断する。
【0026】
次に、
図6に示すように、床36上の複数個所にエポキシアンカーなどのアンカーボルト44を取り付け、アンカーボルト44を介して天井クレーン16で吊り上げた状態にする。次いで、床36と壁40および梁38との境界部分36aを切断位置として、図示しないワイヤーソー装置等を遠隔操作して床36を切断する。そして、配管類30やレール34とともに切り出したブロック状の床36を天井クレーン16で揚重して撤去する。同様に、梁38を切断後、揚重して撤去する。
【0027】
最後に、
図7に示すように、床36や梁38が撤去された青天井の状態でタンク28、壁40に設置された配管類32を揚重して撤去する。この後、上記と同様に壁40を切断後、揚重して撤去する。
【0028】
このように、本発明によれば、床の下側に設置された機器・配管類を部屋内部に作業員が進入することなく床上より安全に撤去することができる。また、床上や壁に設置された機器・配管類は天井スラブ(上階の床)が無い青天井の状態で遠隔性、揚重性に優れた解体ができる。
【0029】
撤去された大判のブロック状の床36(スラブ)、梁38、壁40、タンク28、配管類30、32、レール34等は、それぞれ天井クレーン16により作業エリア18に運搬された後、除染、細断、容器収納される。この作業エリア18におけるこの後の処理手順については、
図8に例示するように、ステップS1、S2、S3の各工程を経たものとなる。このように、本発明によれば、床等の躯体を大判のブロック状に切り出し、建屋外部の安全な作業エリアで除染、細断、容器収納等を行うため、並行作業が可能であり、工期の短縮が図れる。
【0030】
ここで、
図8の処理手順においては、以下の(1)〜(5)を前提条件としている。
(1)解体対象部位のスラブ(床)等のコンクリートは放射化していないものとし、表面に付着したFP、Uを除染すればCL(放射性物質として扱う必要のないもの)になるものとする。
(2)機器・配管類がスラブ(床)に付いた状態でスラブ(床)と機器・配管類とを一体的に切り出し、上屋内の作業エリアで機器・配管類を取り外すものとする。
(3)ブロック状に切り出されたスラブ(床)等のコンクリートは、細断時のクロスコンタミネーションを避けるために表面除染を行った後に細断するものとする。
(4)コンクリート表面のはつり片、粉体は、局所集塵およびはつりエリアのバリア内換気によりほぼ100%回収できるものとする。
(5)はつり作業時の浸透によるクロスコンタミネーション回避のため、液体を用いたはつりは行わないものとする。
【0031】
図8のステップS1は、スラブ(床)をブロック状に切断した後、天井クレーンにより揚重し、コンテナ(上屋)内の作業スペース(作業エリア)に移動し、架台上に載せ、スラブ(床)から配管類を撤去するものである。なお、撤去した配管類は後述するステップS3の工程により処理される。
【0032】
配管類が撤去されたコンクリートは、架台より地面作業床に降ろされる。続いて、ここにバリアを設置し、コンクリート表側表面をスパイキーハンマーなどのはつり装置ではつる。表裏を反転して裏側表面をはつる。なお、このコンクリート表面のはつり除染により生じる粉体は後述するステップS2の工程により処理される。
【0033】
表面がはつられたコンクリートを細断エリアに移動して、CL検認用容器の収納形状に細断した後、CL検認用容器に収納してCL検認を行う。この後、破砕、粒度調整等の再生処理を行ってから路盤材などに再利用する。
【0034】
ステップS2は、コンクリート表面の除染により生じたFP、U等の粉体の処理に関するものである。FP、U等の粉体は処分容器に収納され、モルタルを充てんした後、表面線量を測定して一時保管され、最終的に埋設処分される。
【0035】
ステップS3は、汚染配管類の除染処理に関するものであり、ブラストなどの物理的手法や化学的手法により汚染配管類を除染した後、ステップS31、S32の工程に分かれて処理される。ステップS31では、FP、Uの粉体、スラッジを処分容器に収納し、モルタル・砂を充てんした後、表面線量を測定して一時保管され、最終的に埋設処分される。
【0036】
ステップS32では、金属母材をガス切断などにより細断し、放射能レベルが比較的低いもの(L2)、放射能レベルが極めて低いもの(L3)、放射性物質として扱う必要のないもの(CL)に分けて処理する。L2については容器収納後、ステップS31に移行してモルタル・砂を充てんした後、表面線量を測定して一時保管され、最終的に埋設処分される。L3については、フレコン(フレキシブルコンテナバッグ)に収納して素堀トレンチ内等に処分される。CLについては、検認容器に収納して検認後、再利用に供される。
【0037】
なお、作業エリア18は、
図9に示すように、はつりエリア18a、細断エリア18b、容器収納・充てんエリア18c、配管類撤去エリア18d、配管類細断エリア18e、金属容器収納・充てんエリア18fからなる。作業エリア18には、天井クレーン16とは別に作業エリア専用の門型クレーン18gを設けている。また、上屋14の外側の敷地には、充てんモルタルなどを製造するエリア46を設けている。
【0038】
このように、本発明によれば、建屋からコンクリートを大判のブロック状で切り出した後にはつり除染し、その後に細断するため、クロスコンタミネーションの発生が抑制される。これにより、FPおよびUの汚染廃棄物低減が図れる。
【0039】
[建屋躯体を単独で切り出す場合]
次に、機器・配管類が既に撤去された状態で建屋躯体(床、梁、壁)を単独で切り出す場合について
図10〜
図13を参照しながら説明する。なお、
図10〜
図12の各図において(1)は平面断面図、(2)は正面断面図である。
【0040】
まず、
図10に示すように、床36上の複数個所にエポキシアンカーなどのアンカーボルト44を取り付け、アンカーボルト44を介して天井クレーン16で吊り上げた状態にする。次いで、床36と壁40および梁38との境界部分36aを切断位置として、図示しないワイヤーソー装置等を遠隔操作して床36を切断する。そして、切り出したブロック状の床36を天井クレーン16で揚重して撤去する。
【0041】
同様にして、
図11に示すように、梁38を天井クレーン16で吊り上げた状態としておき、前後端部38aを切断位置として切断後、揚重して撤去する。
【0042】
次に、
図12に示すように、壁40を天井クレーン16で吊り上げた状態としておき、下端部および側端部40aを切断位置として切断後、揚重して撤去する。
【0043】
撤去したブロック状の床36(スラブ)、梁38、壁40は、それぞれ天井クレーン16により作業エリア18のはつりエリア18aに運搬され、そのコンクリート表面はスパイキーハンマーなどのはつり装置48ではつり取られる。このエリアにおけるこの後の処理手順については、
図14に例示するように、ステップS1、S2の各工程を経たものとなる。
【0044】
ここで、
図14の処理手順においては、以下の(1)〜(4)を前提条件としている。
(1)解体対象部位のスラブ(床)等のコンクリートは放射化していないものとし、表面に付着したFP、Uを除染すればCL(放射性物質として扱う必要のないもの)になるものとする。
(2)ブロック状に切り出されたスラブ(床)等のコンクリートは、細断時のクロスコンタミネーションを避けるために表面除染を行った後に細断するものとする。
(3)コンクリート表面のはつり片、粉体は、局所集塵およびはつりエリアのバリア内換気によりほぼ100%回収できるものとする。
(4)はつり作業時の浸透によるクロスコンタミネーション回避のため、液体を用いたはつりは行わないものとする。
【0045】
図14のステップS1では、スラブ(床)をブロック状に切断した後、天井クレーンにより揚重し、コンテナ(上屋)内の作業スペース(作業エリア)に移動し、ここにバリアを設置し、コンクリート表側表面をスパイキーハンマーなどのはつり装置ではつる。表裏を反転して裏側表面をはつる。なお、このコンクリート表面のはつり除染により生じる粉体は後述するステップS2の工程により処理される。
【0046】
表面がはつられたコンクリートを細断エリアに移動して、CL検認用容器の収納形状に細断した後、CL検認用容器に収納してCL検認を行う。この後、破砕、粒度調整等の再生処理を行ってから路盤材などに再利用する。
【0047】
ステップS2は、コンクリート表面の除染により生じたFP、U等の粉体の処理に関するものである。FP、U等の粉体は処分容器に収納され、モルタルを充てんした後、表面線量を測定して一時保管され、最終的に埋設処分される。
【0048】
(建屋躯体を切り出す際の支保工および吊り治具)
次に、建屋躯体を切り出す際に用いる支保工および吊り治具の構成および作用について
図15〜
図17を参照しながら説明する。なお、
図15〜
図17の各図において(1)は平面図、(2)は正面断面図である。
【0049】
図15に示すように、床36(スラブ)上にコアボーリング装置50(穿孔手段)を配置し、床36の外周側に複数の貫通穴52を設ける。この貫通穴52は支保工設置用のものであり、その径は例えばφ200mm程度、設置ピッチは例えば2m程度としてよい。なお、コアボーリング装置50は建屋12の外部から遠隔操作する。
【0050】
次に、
図16(1)、(2)に示すように、柱状の支保工54を貫通穴52の上方から天井クレーン16で挿入し床36下面と下階の床37上面との間に配置する。この支保工54の径は、例えば貫通穴52よりも小径のφ150mm程度としてよい。
【0051】
ここで、支保工54は、遠隔操作により自身の長さを自動的に伸長する図示しない自動伸長手段と、上部拡幅手段とが備わっており、自動で床36、37間に固定される。
図16(3)の要部拡大図に示すように、上部拡幅手段は、棒状部54aに設けた軸部54bと、軸部54bに頂点を回転自在に取り付けられた直角三角形状のロック片54cとからなり、ロック片54cは貫通穴52を通り抜けた際に開いて床36下面と当接状態となる。なお、この上部拡幅手段は、傘における止め金等の他の手段で構成してもよい。また、支保工54の上端には、貫通穴52より大径の突起部54dが設けてあり貫通穴52に入らないようになっている。支保工54を壁40近辺に複数配置することで、床36の荷重は支保工54を介して一時的に下階の床37に伝達されることになる。
【0052】
次に、
図17(1)、(2)に示すように、床36(スラブ)の中央側に複数の貫通穴56を設ける。この貫通穴56は吊り治具設置用のものであり、その径は例えばφ100mm程度としてよい。なお、貫通穴56は貫通穴52と同時期に設けてもよい。そして、天井クレーン16を用いて貫通穴56に吊り治具58を挿入し、床36に取り付ける。
【0053】
ここで、吊り治具58は、
図17(3)の正面図、(4)の側面図に示すように、胴部58aと、胴部58aの下部に設けられ、軸58d周りに回転するアゴ部58bを進退自在に格納する長孔58cとを備える。また、胴部58aの上部には天井クレーン用のフック係合孔58eと、突起部58fとが設けてある。アゴ部58bが吊り治具58の下部を拡幅する下部拡幅手段として機能する。
【0054】
図17(3)は、アゴ部58bが回転して長孔58cから突出した状態を示している。通常時にこの状態でバランスするようにバネ等を用いて構成しておけば、長孔58c内にアゴ部58bを格納した状態で吊り治具58を貫通穴56に挿入すると、アゴ部58bは自動的に回転および突出して吊り治具58の下部を拡幅する。これにより、アゴ部58bが床36下面に当接した状態となり床荷重を物理的に受けることができる。このため、アンカーを用いた場合のように引抜けるおそれはない。
【0055】
続いて、
図17(1)、(2)に示すように、床36と壁40および梁38との境界部分36aを切断位置として、図示しないワイヤーソー装置等を遠隔操作して床36を切断する。切り出した床36を吊り治具58を介して天井クレーン16で揚重して運搬する。このような手順により、天井クレーン16を支保工として占有することなく床36(スラブ)を撤去することができる。
【0056】
なお、本発明では、作業員が解体エリアに長時間滞在できない、あるいは、アクセスが困難な建屋を対象としており、基本的に建屋で行う全ての作業は遠隔装置に対する遠隔操作による。ここで、遠隔装置を採用しない場合には、例えば解体エリアの空間線量が下がるまで極めて長期間放置する必要があり現実的ではない。また、人が近寄れるようにするために躯体表面や機器表面・内部の除染作業が必要となるが、この除染作業も遠隔装置によらなければ工期が長期化しコストが膨大になるおそれがあるという問題がある。
【0057】
以上説明したように、本発明によれば、放射能汚染された施設の建屋を覆うようにこの外周に上屋を新設するとともに、この上屋の中に揚重手段を設置し、この上屋の中で前記建屋躯体の解体、除染、細断、容器収納の一連の作業を行う放射能汚染施設の解体方法であって、遠隔操作により前記建屋躯体をブロック状に切り出して、前記建屋の上方から下方に向けて順次解体し、切り出したブロック状の前記建屋躯体を前記揚重手段で揚重して前記上屋内に設けた汚染度が前記建屋よりも低い作業エリアに運搬して、この作業エリアで除染するようにしたので、作業員が建屋躯体の解体エリアに立ち入らずに施設の建屋を短期間で解体することができ、作業員の被曝に対する安全性の確保が可能である。