特許第5787186号(P5787186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787186
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】シール
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20150910BHJP
   F16J 15/32 20060101ALI20150910BHJP
   F16C 33/74 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   F16C33/78 Z
   F16J15/32 311C
   F16C33/74 Z
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-19459(P2013-19459)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2013-160383(P2013-160383A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2013年2月4日
(31)【優先権主張番号】1251011
(32)【優先日】2012年2月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510057615
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】ウンブロ,リュック
(72)【発明者】
【氏名】リュトー,ドミニク
【審査官】 中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−500482(JP,A)
【文献】 特開昭63−203974(JP,A)
【文献】 特許第5065388(JP,B2)
【文献】 西独国特許第03631887(DE,B)
【文献】 特開2001−031795(JP,A)
【文献】 特開2006−125423(JP,A)
【文献】 実開平05−045336(JP,U)
【文献】 特開平06−185540(JP,A)
【文献】 特開2008−075679(JP,A)
【文献】 実開平07−004963(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/00
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方で、軸方向脚部(3)及び前記軸方向脚部(3)と接続する半径方向脚部(10)を有するキャリアリング(2)の形態の支持体と、他方で、キャリアリング(2)上に配置され且つ前記軸方向脚部(3)を囲むシーリングワッシャ(4)と、を備え、前記キャリアリング(2)が金属材料で作られるシール(1)であって、
前記シーリングワッシャ(4)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)組成物よりなり、前記キャリアリング(2)上における配置が、接着剤による材料接合により達成され、
前記キャリアリング(2)が、高降伏点金属材料の鋼板で作られ
シーリングリップ(7)は、シールされる機械要素(8)に対して適用される前記シーリングワッシャ(4)から形成され、
前記シーリングリップ(7)は、らせん状又はねじ山形状の反発構造(14)を有し、この反発構造(14)は、溝(15)から形成され、前記溝(15)は、非対称三角形状の横断面又はプロファイルを有し、且つ、前記溝(15)の互いに反対側に位置する第1のフランク(14’)と第2のフランク(14”)とを備え、前記第1のフランク(14’)と前記第2のフランク(14”)とは、異なる傾斜度を有するシール。
【請求項2】
一方で、軸方向脚部(3)及び前記軸方向脚部(3)と接続する半径方向脚部(10)を有するキャリアリング(2)の形態の支持体と、他方で、キャリアリング(2)上に配置され且つ前記軸方向脚部(3)を囲むシーリングワッシャ(4)と、を備え、前記キャリアリング(2)が金属材料で作られるシール(1)であって、
前記シーリングワッシャ(4)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)組成物よりなり、前記キャリアリング(2)上における配置が、接着剤による材料接合により達成され、
前記キャリアリング(2)が、高降伏点金属材料の鋼板で作られ、
シーリングリップ(7)が形成される追加のシーリングワッシャ(11)は、前記キャリアリング(2)上に載置され、
前記シーリングリップ(7)は、らせん状又はねじ山形状の反発構造(14)を有し、この反発構造(14)は、溝(15)から形成され、前記溝(15)は、非対称三角形状の横断面又はプロファイルを有し、且つ、前記溝(15)の互いに反対側に位置する第1のフランク(14’)と第2のフランク(14”)とを備え、前記第1のフランク(14')と前記第2のフランク(14”)とは、異なる傾斜度を有するシール
【請求項3】
前記軸方向脚部(3)が組みつけられた前記シーリングワッシャ(4)の部分(4’)は、前記キャリアリング(2)の半径方向脚部(10)が組みつけられる前記シーリングワッシャ(4)の部分(4”)の厚みよりも特に薄い調節された厚みを有する請求項1又は2に記載のシール。
【請求項4】
前記シーリングワッシャ(4)は前記軸方向脚部(3)の自由端を越えて突出して突出部(6)を形成する請求項1〜3の何れか一項に記載のシール。
【請求項5】
前記突出部(6)は、中心軸の方向へ半径方向内方に湾曲される請求項に記載のシール。
【請求項6】
埃防止リップ(9)が前記シーリングワッシャ(4)から形成される請求項1〜の何れか一項に記載のシール。
【請求項7】
シーリングリップ(7)および埃防止リップ(9)は、前記シーリングワッシャ(4)の内端部の分離および整形によって前記シーリングワッシャ(4)から形成されることを特徴とする請求項に記載のシール。
【請求項8】
前記シーリングワッシャ(4)は、前記軸方向脚部(3)又はその延長方向とは反対側の半径方向脚部(10)の側を覆う請求項1〜の何れか一項に記載のシール。
【請求項9】
前記シーリングワッシャ(4)が前記軸方向脚部(3)とは反対側の半径方向脚部(10)の側に載置され、且つ追加のシーリングワッシャ(11)が前記軸方向脚部(3)に向けられる半径方向脚部(10)の側に載置される請求項に記載のシール。
【請求項10】
前記シーリングワッシャ(4)および追加のシーリングワッシャ(11)は、共に前記軸方向脚部(3)とは反対側の半径方向脚部(10)の側に載置される請求項9に記載のシール。
【請求項11】
前記シーリングワッシャ(4)は、少なくとも部分的に追加のシーリングワッシャ(11)を覆う請求項10に記載のシール。
【請求項12】
前記シーリングワッシャ(4)は、シーリングワッシャの形態の要素(16)によって少なくとも部分的に覆われる請求項1〜11の何れか一項に記載のシール。
【請求項13】
前記シーリングワッシャの形態の要素(16)は、機械要素(8)に向けられる自由端によって、埃防止リップ(9)を構成する請求項12に記載のシール。
【請求項14】
前記溝(15)は、前記シーリングリップ(7)がシールされる機械要素(8)に適用される場合に、支持平面(PA)に関して、より小さな勾配で傾斜した第1のフランク又はサイド(14’)、および、より大きな勾配で傾斜した第2のフランク又はサイド(14”)よりなる請求項1〜13の何れか一項に記載のシール。
【請求項15】
前記シール(1)を受けることが意図された穴(12)に前記シール(1)を載置し且つ前記シーリングリップ(7)を機械要素(8)に対して適用した後、前記反発構造(14)を形成する溝(15)のターンの、前記より小さな勾配を有する第1のフランク(14’)は、外部環境(ME)へ向けるように変位し、前記より大きな勾配を有する第2のフランク(14”)は、シールされる内部環境(MI)へ向けるように変位する、請求項1〜14の何れか一項に記載のシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向脚部を有するキャリアリングの形態の支持体と、キャリアリング上に載置又は配置され且つ外周上の軸方向脚部を囲む、好ましくはそれを完全に覆うシーリングワッシャと、を備えるシールに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、ケーシングや類似の包装材料における穴又は同様の開口に取り付けられることが意図されるシールに関し、このシールは、このケーシングと回転軸やシャフトのような前記穴を通過する移動機械やモータ要素との間にシーリングを提供するためである。
【背景技術】
【0003】
このタイプのシールは、一般的にその外周及び内周において円形構造を有し、金属の支持リングを包含する。
【0004】
従来の技術は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)組成物よりなるダイナミックシーリングリップを備えるシーリングワッシャを有するシールを開示している。通常、これらのシールは、エラストマー材料よりなる固定シールよりなる。支持体はエラストマー材料の射出成形によって被覆されており、このエラストマー材料は、ダイナミックシーリングリップ及び固定シールのための取り付けの領域を得るように整形されている。
【0005】
また、例えば特許文献1によって、例えばPTFE組成物よりなる一つ且つ同じ取り付けられたシーリングワッシャが、外部又は内部固定シール及び内部又は外部ダイナミックシーリングリップを形成し、特に生産を容易にして且つコストを減少する、シールが開示されている。
【0006】
これらのタイプのシールは、一般的に楔様式で、対応する受け開口、例えば移動部品、例えば心棒や回転シャフトの通過のために、包装材料やケーシングに形成された穴や対応する貫通開口に取り付けられる。
【0007】
こうした状況下、追加の締着或いは固定手段を使用することなく、穴又は類似の受け開口にシールの剛性の楔止め取り付けを保障し、同時に円形構造を有するシールの外周とシールを受ける穴又は類似の受け開口との間に、最適な固定シーリングのための条件を提供することができることが有利である。
【0008】
この取り付けは、力で又は半径方向ストレス下で実施することができ、軸方向脚部に固定されたシーリングワッシャの部分の圧縮によって固定シーリング(リングとハウジングとの間)を確保することが好ましい。
【0009】
最後に、多くの用途において、例えば、温度変化に起因して、寸法にばらつきがある場合、シールと受け開口との間にシーリングを維持することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2008/009317号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の第1の目的は、上述の要求を満足することができる、本発明の序文で述べられたタイプのシールを提供することであり、具体的には、最適な固定シーリングのための条件を提供することができ、温度変化に起因して寸法にばらつきがある場合、シールと受け開口との間にシーリングを維持することができるシールを提供する。
また、本発明の他の目的は、取り付けが容易であり、キャリアリングの軸方向脚部からワッシャが分離するリスクが顕著に減少するシールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、一方では、軸方向脚部を有するキャリアリングの形態の支持体と、他方では、キャリアリングの上に載置又は配置され且つ外周上の軸方向脚部を囲むシーリングワッシャと、を備え、前記キャリアリングが金属材料で作られるシールであって、キャリアリングが高降伏点金属材料の鋼板で作られる。
【0013】
より具体的には、キャリアリングを形成する材料は、EN10268標準に従う高降伏強度(HYS)を有する、有利にはRe≧210N/mmのような降伏強度Reと、Rm≧350N/mmのような引っ張り降伏強度を有する冷延鋼板、好ましくは指定HC340LA等に対応する鋼板である。
【0014】
本発明において対象とする用途の場合、リングを形成する鋼板は0.6mm〜1.2mm、好ましくは0.8mm〜1.0mmの厚みを有することが有利である。
【0015】
このようにキャリアリングを形成する鋼板の弾性によって、軸方向脚部が、例えば温度変化によって引き起こされる穴、又はハウジングを形成する開口の寸法の変動に従うことができ、従って、異なる使用局面でのシーリングの維持を保障する。
【0016】
望ましい緊密で且つ楔状の取り付けを達成するために、キャリアリングの軸方向脚部へ固定され、この軸方向脚部の外周表面の全体を覆うシーリングワッシャの部分の厚みは、例えば前記脚部への前記ワッシャの圧力の印加(接着接合、転動)中、前記脚部に印加される圧力の強度を調整することによって、穴又は受け開口の内径よりも所定の比率だけ大きなシールの外径を得るように、正確に調整され得る。
【0017】
半径方向ストレス下での緊密な取り付けにおいて起こり得る問題は、シーリングワッシャがケーシングの穴へのシールの取り付け中に外れて、一方では、取り付けが実質的により困難になり、より長く掛かり、他方では、シールの載置中にこのレベルでのワッシャの分離に起因にして、シールが破壊される、又は穴の壁に接触しているシーリング材料の外周でこのシーリング材料が少なくとも部分的に欠けるという事実である。
【0018】
従って、本発明の他の目的は、序文で述べられた、例えば特許文献1に記述されたタイプのシールを改良することであり、それによって、取り付けが容易であり、有利にはキャリアリングの軸方向脚部からワッシャが分離するリスクが顕著に減少する、或いは排除できることである。
【0019】
この更なる目的を達成するために、本発明に従うシーリングワッシャは、軸方向脚部の自由端を越えて突出し、突出部を形成する。好ましくはシーリングワッシャは、全体的に軸方向脚部(即ち、その外周表面)を覆い、且つ後者に対して適用され、シーリングワッシャは、この軸方向脚部へ接合する材料によって組みつけられる。材料接合による組みつけは、キャリアリングとシーリングワッシャとの間に配置される適切な接着製品によって達成される。
【0020】
特許文献1の例に示されているように、シーリングワッシャは、接着剤を載置した後、圧力の印加や転動によって、(特に接着剤に従って)加熱することによって又は加熱することなく、キャリアリングに付着及び固定される。
【0021】
突出部のない場合、(接着剤製品によって形成されたアセンブリ平面の可視縁に対応する)隙間がシーリングワッシャと軸方向脚部との間に形成される。取り付け中、及びシールとケーシング穴の直径の寸法の関数として、大きな力がシール上、半径方向及び軸方向へ働き、軸方向に働く力が、特に剪断(シールは、軸方向脚部の自由端の方向へ軸方向に導入される)によってシーリングワッシャが軸方向脚部から分離する効果を有し得ることが見つけられた。その結果、シールは、破壊され得、或いは少なくとも固定シーリング効果が減少する。
【0022】
本発明に従う突出部は、これらの不利益を克服し、更に取り付けを容易にする。
【0023】
具体的に、突出部は軸方向脚部を覆い、それによって軸方向へ働く力は、シーリングワッシャが剪断(分離)によって軸方向脚部から分離する効果を有することができない。突出部は、半径方向内方に中心軸の方向へ湾曲されるのが好ましい。このように突出部の領域において、面取りのようにシールの外径を減少する直径の減少が得られる。一方、この直径の減少はセンタリングを助ける、従って、位置決めとケーシング穴へのシールの(取り付け中の)案内を容易にするというタスクを実行し、他方、動作中の軸方向の力は、シーリングワッシャが軸方向脚部に対して適用される効果を有する。それは、剪断応力に対抗し、それによって、シーリングワッシャが取り付け中にキャリアリングから分離され得ない。このように突出部は、周方向に円錐台形状の脚部を構成し、少なくとも部分的に半径方向脚部の端縁、特に外縁の基部領域を覆う。
【0024】
シーリングワッシャは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)組成物よりなることが好ましい。変形傾向を軽減するために、PTFE組成物は、少なくとも軸方向脚部と関連する領域に、繊維強化物、例えばガラス繊維強化部を備えることができる。固定シールのための材料としてのPTFEの使用は、PTFE製の固定シールは極端に低い摩擦係数を有するため、取り付け力を減少する。
【0025】
エラストマー材料と比較すると、PTFEは弾性がかなり低い。しかしながらPTFEは、固定シールとしての使用に適することが分かった。局所圧縮や拡大移動によるエラストマーシールで補償される形状の差異は、材料の局所移動によって、即ち制限された変形の進行によってPTFE製の固定シールで補償される。しかしながら、本発明内での変形の進行は局所的に制限され、固定シールのプレストレスが維持され、且つそれによってシールがケーシング穴に確実に不動化されることが好ましい。
【0026】
上述の緊密な取り付け状態において、突出部によって提供される利点は、全て、正確な漏れ防止取り付けのためにより有益且つ重要である。
【0027】
調整された外径とリング上へのワッシャの固定を達成する転動中、結果として生じる材料の変位は、少なくとも部分的に前記突出部を形成できる。
【0028】
圧縮シールを形成するワッシャ部分の厚みは、前記キャリアリングの半径方向脚部が組みつけられた前記シーリングワッシャの部分の厚みよりも薄く、例えば転動動作中のワッシャのこの部分の厚みの約20%〜30%の減少に対応する比率約0.7〜0.8、好ましくは比率約0.75を有する。
【0029】
シーリングリップは、例えばシャフトや回転心棒のようなシールされる機械要素に対しての適用のために、シーリングワッシャから形成され得る。このように本発明に従うシールは、この場合、二つの構成要素:キャリアリングおよびシーリングワッシャのみを有する。シーリングワッシャは、例えばねじ切り溝である、反発構造を有するシーリングリップの領域に装備されることができる。この反発構造は、僅かな摩擦ストレスを有するダイナミックシーリングを改良する。
【0030】
反発構造を形成するねじ切り溝のターンと交互に起こる、突出する螺旋状ねじ山の厚みは、キャリアリングの軸方向及び半径方向脚部が組みつけられるシーリングワッシャの夫々の部分の厚みよりも厚いことが有利である。
【0031】
例えば前記突起の厚みは、例えば軸方向脚部に適用されるシーリングワッシャの部分の厚みの約1.6〜1.7倍に等しい。
【0032】
反発構造は、例えば特許文献1(図4とそれに対応する記述参照)に概略的に記述され且つ表されているように、リング上へのワッシャの圧力(転動)の印加中、印やダイスによる刻印によって形成されることが有利である。
【0033】
更に、この反発構造は、実質的に三角形横断面を有する複数ターンの螺旋溝よりなることが有利である。
【0034】
この三角形横断面は、(溝の底を形成するエッジに関して)非対称である構造又はプロファイルを有することができ、非対称の配向の関数として、漏れを防止するように分離される二つの側の一方又は二つの環境の一方に向けられる反発動作を、シールされる回転心棒やシャフトの回転中に、予期しない方法で提供することを可能とする。
【0035】
他の構成に従って或いは更に、埃防止リップは、シーリングワッシャから形成され得る。埃防止リップは、シールされる機械要素の方向へ軸方向に突出するが、機械要素上には載っていない。シーリングワッシャがPTFE組成物よりなる場合、埃防止リップも、PTFE組成物からなっていてよい。
【0036】
変形例では、シーリングリップおよび埃防止リップは、前記シーリングワッシャの内端部の分離および整形によってシーリングワッシャから形成され得る。
【0037】
他の特徴に従って、半径方向脚部は、キャリアリングの軸方向脚部に接続され得、シーリングワッシャは、軸方向脚部とは反対側の半径方向脚部の側部を覆うことができる。このようにシーリングワッシャは、キャリアリングの一側部を覆う。それは、シーリングワッシャによって覆われるキャリアリングの側部が腐食性流体によって影響を受ける場合、特に有利である。PTFE組成物よりなるシーリングワッシャは、多様な腐食性流体に対して抵抗性がある。
【0038】
シーリングリップが形成される追加のシーリングワッシャは、キャリアリング上に載置され得る。ここで有利には、シーリングワッシャと追加のシーリングワッシャのための材料の選択が、それらの夫々の使用の関数として最適化され得る。このようにシーリングワッシャは、変形する傾向が特に低く改良された接着性を有する材料よりなること、追加のシーリングワッシャは、摩擦係数が減少された材料よりなることが可能である。
【0039】
シーリングワッシャは、軸方向脚部とは反対側の半径方向脚部の側に載置され得、且つ追加のシーリングワッシャは、軸方向脚部に向けられる半径方向脚部側に配置され得る。この構成によって、シーリングワッシャは、半径方向脚部の各側に配置される。これは、二つのシーリングワッシャの材料が相容れない場合、特に有利である。
【0040】
シーリングワッシャおよび追加のシーリングワッシャは、軸方向脚部とは反対側の半径方向脚部の側に載置され得る。この構成の場合、二つのシーリングワッシャが同じ側に載置される。ここで、一方のシーリングワッシャは、少なくとも部分的に他方のシーリングワッシャを覆い、それによって、外側のシーリングワッシャが内側のシーリングワッシャを更に締め付けるため、締め付けが単純化される。この構成は、また、シーリングリップが形成されるシーリングワッシャが取り付け中にキャリアリングの方向へ押圧ストレスを受け、外れることができないので取り付けに関して有利である。追加の構成に従って、シーリングワッシャは、少なくとも部分的に追加のシーリングワッシャを覆うことができる。この構成の場合、ダイナミックシーリングリップが、この追加のシーリングワッシャから形成される。一方では、追加のシーリングワッシャがキャリアリングに固定され、他方では、埃防止リップが形成されるシーリングワッシャによって覆われるので、追加のシーリングワッシャは、特に信頼できる方法で固定される。
【0041】
シーリングワッシャは、ワッシャの形態の要素によって少なくとも部分的に覆われることができる。埃防止リップは、この要素から形成され得る。この要素は、ここでは非常に多様な材料からなることができ、想定される材料は、エラストマー又は金属材料、プラスチック又は不織材料製のワッシャである。
【0042】
本発明の可能な実施の形態として及び制限が生じないという暗黙の了解の下、本発明に従うシールの2乃至3の例示の実施の形態が、以下に、図面を参照してより詳細に説明される。この図面は夫々図解で示す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の第一の実施の形態に従う、取り付け状態におけるシーリングワッシャを有するシールの断面図である。
図2】本発明の第二の実施の形態に従う、シーリングワッシャと追加のシーリングワッシャを有するシールの断面図である。
図3】本発明の第三の実施の形態に従う、シーリングワッシャが追加のシーリングワッシャを覆うシールの断面図である。
図4】本発明の第四の実施の形態に従う、シーリングワッシャとワッシャの形態の要素を備えるシールの断面図である。
図5図1のシールと同じタイプのシールであって、シーリングリップが特定の形状を有し且つワッシャがキャリアリングを越えて突出しない状態を示す断面図である。
図6A図5に表されたシールのシーリングリップを形成する端部の要部を示した図である。
図6B図6Aに表されたシーリングリップの一部分を他のスケールで詳細に示す図である。
図7図1に表された実施の形態の変形例を構成するシールの断面図である。
図8図1に表されたシールの製造の設備を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明に従うシール1が、図1乃至5及び7において、異なる変形例の形態で表されている。従って、図1は、ケーシング13のケーシング穴12をシーリングするためのシール1を表している。外部環境MEから内部環境MIを分離するシール1は、金属材料から作られたキャリアリング2を有し、このキャリアリング2は、軸方向脚部3を備えている。更に、シール1は、PTFE組成物よりなるシーリングワッシャ4を有し、このシーリングワッシャ4は、キャリアリング2上に載置され且つ外周上で軸方向脚部3を囲んでいる。半径方向脚部10は、キャリアリング2の軸方向脚部3に接続され、シーリングワッシャ4は、軸方向脚部3とは反対側の半径方向脚部10の側を覆う。シーリングワッシャ4は、接着剤製品の層によって材料接合によりキャリアリング2に組みつけられる。シーリングワッシャ4は、それが軸方向脚部3の自由端5を越えて突出し、突出部6を形成するように構成される。突出部6は中心軸の方向へ半径方向内方に湾曲され、直径における減少部を形成している。更にシーリングリップ7は、シールされる機械要素8に対して適用されるシーリングワッシャから形成され、支持平面PAを有する。シーリングリップ7は、ねじ山の形態の反発構造14を備える。
【0045】
図2は、プラスチック材料で作られたキャリアリング2を有するシール1を表し、このキャリアリング2は、軸方向脚部3を備える。更にシール1は、PTFE組成物よりなるシーリングワッシャ4を有し、このシーリングワッシャ4は、キャリアリング2上に載置され且つ外周上で軸方向脚部3を囲んでいる。シーリングワッシャ4は、接着剤製品の層によって材料接合によりキャリアリング2に組みつけられる。シーリングワッシャ4は、それが軸方向脚部3の自由端5を越えて突出し、従って、突出部6を形成するように構成される。突出部6は、中心軸の方向へ半径方向内方に湾曲され、直径における減少部を形成している。埃防止リップ9が、シーリングワッシャ4から形成される。追加のシーリングワッシャ11がシーリングワッシャ4とは反対側のキャリアリング2の側に、即ち、軸方向脚部3に向けられる半径方向脚部10の側に載置される。一方で、この追加のシーリングワッシャ11は、PTFE組成物よりなる。シーリングリップ7は、この追加のシーリングワッシャ11から形成される。シーリングリップ7は、ねじ山の形態の反発構造14を備える。
【0046】
図3図2に従うシール1を表し、シーリングワッシャ4および追加のシーリングワッシャ11は、軸方向脚部3とは反対側の半径方向脚部10の側に載置され、シーリングワッシャ4は、少なくとも部分的に追加のシーリングワッシャ11を覆う。
【0047】
図4は、図1に従うシール1を表し、部分的にシーリングワッシャ4を覆うワッシャの形態の要素16が、半径方向脚部10とは反対側のシーリングワッシャ4に締め付けられている。埃防止リップ9は、その要素16から形成され、要素は不織材よりなる。
【0048】
図5は、図1又は図4(後者の場合、更に、埃防止リップ9を有する)に表されたものと同じタイプのシール1を表すが、突出部6を備えておらず、種々の同じ構成部品が同じ参照番号によって示される。
【0049】
図5は、より明白に、軸方向脚部3が組みつけられるシーリングワッシャ4の部分4’が、キャリアリング2の半径方向脚部10が組みつけられたシーリングワッシャ4の部分4”の厚みよりも特に薄い調整された厚みを有し得ることを示している。
【0050】
特に、部分4’の厚みAは、約0,75Bの厚みであることができ、ここで、Bは部分4”の厚みである。
【0051】
同様に、部分4’の厚みAは、溝15を形成する凹状ターンと交互となる、反発構造14の突出ターン15’の厚みCよりも薄い。
【0052】
厚みAとCは、実質的に関係A=0.6Cとすることが有利である。
【0053】
ストレスがない場合且つ円筒形円形受け開口12に設けられるシール1に対して、軸方向脚部3は、軸方向脚部3の自由端の方向へ僅かに広がる円錐台スリーブを形成するのが有利である。広がり角度は0.5°〜5.0°とすることができ、半径方向脚部10に対して直角のシール1の外径は、開口の又は穴12の内径と実質的に同一である。
【0054】
このように、シール1は、軸方向脚部3での弾性湾曲ストレスで開口12に取り付けられ、従って、開口12の内壁に対する軸方向脚部3を覆うシーリングワッシャ4の部分の圧力下で所定位置でのロッキング(固定)と保障された適用を確実とする。
【0055】
また、図5に描かれているように、且つ図6A図6Bにおいてより正確に、更に本発明の有利な特徴に従って、シーリングリップ7は、ねじ山の形態のらせん状反発構造14を有することができ、らせん状反発構造14は、好ましくは実質的に非対称三角形状の横断面又はプロファイルを有する、異なる傾斜の互いに反対側に位置するフランク14’および14”を有する溝15よりなる。
【0056】
本発明に従って、この溝15は、シーリングリップ7がシールされる機械要素8に対して適用されると、支持平面PAに関して、より小さな勾配で傾斜した第1のフランク又はサイド14’、および、より大きな勾配で傾斜した第2のフランク又はサイド14”よりなる。
【0057】
反発構造14を形成する溝15のターンの、より小さな勾配を有する第1のフランク14’は、シール1を受けるように意図されている穴12へシール1を配置し且つ機械要素8に対してリップ7を適用した後に、外部環境MEへ向けられ、より大きな勾配を有する第2のフランク14”はシールされる内部環境MIに向けられる。
【0058】
反発構造14のそのような整形は、シールされる環境に向けられる好適な反発方向を有するダイナミックなシールの提供を可能とする。
【0059】
図6Aおよび6Bは、非制限例として、反発構造14を形成する溝15の可能な実施の形態を示す。
【0060】
平面PAに関するシーリングリップ7の傾斜αの角度は、ストレスがない場合、15°〜75°であることができる。
【0061】
三角形断面を有する溝15の角度開口β(即ち、第1および第2のフランク14’ および14”によって形成される角度)は、60°〜120°とすることができる。
【0062】
更に、反発構造を形成する螺旋のピッチPは、0.2mm〜1.0mmとすることができ、溝15の深さh(溝15の底と溝のターン間の突起15’の頂部との間の距離)は、0.05mm〜0.5mmとすることができる。
【0063】
図7は、図1のシール1の変形例を表し、シーリングリップ7と埃防止リップ9が、適切な細分割、及びシーリングワッシャ4の内縁を形成する部分の整形によって、同じシーリングワッシャ4から形成される。
【0064】
図8は、概略的に且つ断面図で、L形状の横断面のキャリアリング2とシーリングワッシャ3から始める、特に図1に表されたシール1の製造の設備を示す。当業者は、モールドの閉鎖(二つの部品17と17’を一緒にする)中、シーリングワッシャ4は、一方では半径方向脚部10の内縁を越えて突出する突出部、及び他方ではリップ7上の反発構造14の同時形成を伴って、リング2上に転動されることを理解する。
【0065】
勿論、本発明は、記述され且つ添付図面に表された実施の形態には制限されない。特に、種々の要素の構成の観点から又は技術的に等価な置き換えによる、それによって本発明の範囲から逸脱することなく、変更は可能なままである。更に、異なる変形実施の形態の特定の特徴同士が組み合わされてもよい。
【0066】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 シール
2 キャリアリング
3 軸方向脚部
4 シーリングワッシャ
4’,4” 部分
6 突出部
7 シーリングリップ
8 機械要素
9 埃防止リップ
10 半径方向脚部
11 追加のシーリングワッシャ
14 反発構造
14’,14” フランク
15 溝
16 要素
ME 外部環境
MI 内部環境
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8