【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、
本発明は、一方では、軸方向脚部を有するキャリアリングの形態の支持体と、他方では、キャリアリングの上に載置又は配置され且つ外周上の軸方向脚部を囲むシーリングワッシャと、を備え、前記キャリアリングが金属材料で作られるシールであって、キャリアリングが高降伏点金属材料の
鋼板で作られ
る。
【0013】
より具体的には、キャリアリングを形成する材料は、EN10268標準に従う高降伏強度(HYS)を有する、有利にはRe≧210N/mm
2のような降伏強度Reと、Rm≧350N/mm
2のような引っ張り降伏強度を有する冷延鋼板、好ましくは指定HC340LA等に対応する鋼板である。
【0014】
本発明において対象とする用途の場合、リングを形成する
鋼板は0.6mm〜1.2mm、好ましくは0.8mm〜1.0mmの厚みを有することが有利である。
【0015】
このようにキャリアリングを形成する
鋼板の弾性によって、軸方向脚部が、例えば温度変化によって引き起こされる穴、又はハウジングを形成する開口の寸法の変動に従うことができ、従って、異なる使用局面でのシーリングの維持を保障する。
【0016】
望ましい緊密で且つ楔状の取り付けを達成するために、キャリアリングの軸方向脚部へ固定され、この軸方向脚部の外周表面の全体を覆うシーリングワッシャの部分の厚みは、例えば前記脚部への前記ワッシャの圧力の印加(接着接合、転動)中、前記脚部に印加される圧力の強度を調整することによって、穴又は受け開口の内径よりも所定の比率だけ大きなシールの外径を得るように、正確に調整され得る。
【0017】
半径方向ストレス下での緊密な取り付けにおいて起こり得る問題は、シーリングワッシャがケーシングの穴へのシールの取り付け中に外れて、一方では、取り付けが実質的により困難になり、より長く掛かり、他方では、シールの載置中にこのレベルでのワッシャの分離に起因にして、シールが破壊される、又は穴の壁に接触しているシーリング材料の外周でこのシーリング材料が少なくとも部分的に欠けるという事実である。
【0018】
従って、本発明の他の目的は、序文で述べられた、例えば特許文献1に記述されたタイプのシールを改良することであり、それによって、取り付けが容易であり、有利にはキャリアリングの軸方向脚部からワッシャが分離するリスクが顕著に減少する、或いは排除できることである。
【0019】
この更なる目的を達成するために、本発明に従うシーリングワッシャは、軸方向脚部の自由端を越えて突出し、突出部を形成する。好ましくはシーリングワッシャは、全体的に軸方向脚部(即ち、その外周表面)を覆い、且つ後者に対して適用され、シーリングワッシャは、この軸方向脚部へ接合する材料によって組みつけられる。材料接合による組みつけは、キャリアリングとシーリングワッシャとの間に配置される適切な接着製品によって達成される。
【0020】
特許文献1の例に示されているように、シーリングワッシャは、接着剤を載置した後、圧力の印加や転動によって、(特に接着剤に従って)加熱することによって又は加熱することなく、キャリアリングに付着及び固定される。
【0021】
突出部のない場合、(接着剤製品によって形成されたアセンブリ平面の可視縁に対応する)隙間がシーリングワッシャと軸方向脚部との間に形成される。取り付け中、及びシールとケーシング穴の直径の寸法の関数として、大きな力がシール上、半径方向及び軸方向へ働き、軸方向に働く力が、特に剪断(シールは、軸方向脚部の自由端の方向へ軸方向に導入される)によってシーリングワッシャが軸方向脚部から分離する効果を有し得ることが見つけられた。その結果、シールは、破壊され得、或いは少なくとも固定シーリング効果が減少する。
【0022】
本発明に従う突出部は、これらの不利益を克服し、更に取り付けを容易にする。
【0023】
具体的に、突出部は軸方向脚部を覆い、それによって軸方向へ働く力は、シーリングワッシャが剪断(分離)によって軸方向脚部から分離する効果を有することができない。突出部は、半径方向内方に中心軸の方向へ湾曲されるのが好ましい。このように突出部の領域において、面取りのようにシールの外径を減少する直径の減少が得られる。一方、この直径の減少はセンタリングを助ける、従って、位置決めとケーシング穴へのシールの(取り付け中の)案内を容易にするというタスクを実行し、他方、動作中の軸方向の力は、シーリングワッシャが軸方向脚部に対して適用される効果を有する。それは、剪断応力に対抗し、それによって、シーリングワッシャが取り付け中にキャリアリングから分離され得ない。このように突出部は、周方向に円錐台形状の脚部を構成し、少なくとも部分的に半径方向脚部の端縁、特に外縁の基部領域を覆う。
【0024】
シーリングワッシャは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)組成物よりなることが好ましい。変形傾向を軽減するために、PTFE組成物は、少なくとも軸方向脚部と関連する領域に、繊維強化物、例えばガラス繊維強化部を備えることができる。固定シールのための材料としてのPTFEの使用は、PTFE製の固定シールは極端に低い摩擦係数を有するため、取り付け力を減少する。
【0025】
エラストマー材料と比較すると、PTFEは弾性がかなり低い。しかしながらPTFEは、固定シールとしての使用に適することが分かった。局所圧縮や拡大移動によるエラストマーシールで補償される形状の差異は、材料の局所移動によって、即ち制限された変形の進行によってPTFE製の固定シールで補償される。しかしながら、本発明内での変形の進行は局所的に制限され、固定シールのプレストレスが維持され、且つそれによってシールがケーシング穴に確実に不動化されることが好ましい。
【0026】
上述の緊密な取り付け状態において、突出部によって提供される利点は、全て、正確な漏れ防止取り付けのためにより有益且つ重要である。
【0027】
調整された外径とリング上へのワッシャの固定を達成する転動中、結果として生じる材料の変位は、少なくとも部分的に前記突出部を形成できる。
【0028】
圧縮シールを形成するワッシャ部分の厚みは、前記キャリアリングの半径方向脚部が組みつけられた前記シーリングワッシャの部分の厚みよりも薄く、例えば転動動作中のワッシャのこの部分の厚みの約20%〜30%の減少に対応する比率約0.7〜0.8、好ましくは比率約0.75を有する。
【0029】
シーリングリップは、例えばシャフトや回転心棒のようなシールされる機械要素に対しての適用のために、シーリングワッシャから形成され得る。このように本発明に従うシールは、この場合、二つの構成要素:キャリアリングおよびシーリングワッシャのみを有する。シーリングワッシャは、例えばねじ切り溝である、反発構造を有するシーリングリップの領域に装備されることができる。この反発構造は、僅かな摩擦ストレスを有するダイナミックシーリングを改良する。
【0030】
反発構造を形成するねじ切り溝のターンと交互に起こる、突出する螺旋状ねじ山の厚みは、キャリアリングの軸方向及び半径方向脚部が組みつけられるシーリングワッシャの夫々の部分の厚みよりも厚いことが有利である。
【0031】
例えば前記突起の厚みは、例えば軸方向脚部に適用されるシーリングワッシャの部分の厚みの約1.6〜1.7倍に等しい。
【0032】
反発構造は、例えば特許文献1(
図4とそれに対応する記述参照)に概略的に記述され且つ表されているように、リング上へのワッシャの圧力(転動)の印加中、印やダイスによる刻印によって形成されることが有利である。
【0033】
更に、この反発構造は、実質的に三角形横断面を有する複数ターンの螺旋溝よりなることが有利である。
【0034】
この三角形横断面は、(溝の底を形成するエッジに関して)非対称である構造又はプロファイルを有することができ、非対称の配向の関数として、漏れを防止するように分離される二つの側の一方又は二つの環境の一方に向けられる反発動作を、シールされる回転心棒やシャフトの回転中に、予期しない方法で提供することを可能とする。
【0035】
他の構成に従って或いは更に、埃防止リップは、シーリングワッシャから形成され得る。埃防止リップは、シールされる機械要素の方向へ軸方向に突出するが、機械要素上には載っていない。シーリングワッシャがPTFE組成物よりなる場合、埃防止リップも、PTFE組成物からなっていてよい。
【0036】
変形例では、シーリングリップおよび埃防止リップは、前記シーリングワッシャの内端部の分離および整形によってシーリングワッシャから形成され得る。
【0037】
他の特徴に従って、半径方向脚部は、キャリアリングの軸方向脚部に接続され得、シーリングワッシャは、軸方向脚部とは反対側の半径方向脚部の側部を覆うことができる。このようにシーリングワッシャは、キャリアリングの一側部を覆う。それは、シーリングワッシャによって覆われるキャリアリングの側部が腐食性流体によって影響を受ける場合、特に有利である。PTFE組成物よりなるシーリングワッシャは、多様な腐食性流体に対して抵抗性がある。
【0038】
シーリングリップが形成される追加のシーリングワッシャは、キャリアリング上に載置され得る。ここで有利には、シーリングワッシャと追加のシーリングワッシャのための材料の選択が、それらの夫々の使用の関数として最適化され得る。このようにシーリングワッシャは、変形する傾向が特に低く改良された接着性を有する材料よりなること、追加のシーリングワッシャは、摩擦係数が減少された材料よりなることが可能である。
【0039】
シーリングワッシャは、軸方向脚部とは反対側の半径方向脚部の側に載置され得、且つ追加のシーリングワッシャは、軸方向脚部に向けられる半径方向脚部側に配置され得る。この構成によって、シーリングワッシャは、半径方向脚部の各側に配置される。これは、二つのシーリングワッシャの材料が相容れない場合、特に有利である。
【0040】
シーリングワッシャおよび追加のシーリングワッシャは、軸方向脚部とは反対側の半径方向脚部の側に載置され得る。この構成の場合、二つのシーリングワッシャが同じ側に載置される。ここで、一方のシーリングワッシャは、少なくとも部分的に他方のシーリングワッシャを覆い、それによって、外側のシーリングワッシャが内側のシーリングワッシャを更に締め付けるため、締め付けが単純化される。この構成は、また、シーリングリップが形成されるシーリングワッシャが取り付け中にキャリアリングの方向へ押圧ストレスを受け、外れることができないので取り付けに関して有利である。追加の構成に従って、シーリングワッシャは、少なくとも部分的に追加のシーリングワッシャを覆うことができる。この構成の場合、ダイナミックシーリングリップが、この追加のシーリングワッシャから形成される。一方では、追加のシーリングワッシャがキャリアリングに固定され、他方では、埃防止リップが形成されるシーリングワッシャによって覆われるので、追加のシーリングワッシャは、特に信頼できる方法で固定される。
【0041】
シーリングワッシャは、ワッシャの形態の要素によって少なくとも部分的に覆われることができる。埃防止リップは、この要素から形成され得る。この要素は、ここでは非常に多様な材料からなることができ、想定される材料は、エラストマー又は金属材料、プラスチック又は不織材料製のワッシャである。
【0042】
本発明の可能な実施の形態として及び制限が生じないという暗黙の了解の下、本発明に従うシールの2乃至3の例示の実施の形態が、以下に、図面を参照してより詳細に説明される。この図面は夫々図解で示す。